(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明の実施形態にかかるパワー半導体素子用の保護膜、該保護膜を形成するための感光性樹脂組成物について、詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
本発明のパワー半導体素子(以下、「パワーデバイス」ともいう)用の保護膜は、特定のポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物を熱硬化して得られる硬化レリーフパターンからなり、パワー半導体素子保護膜として好適に用いることができる特性を有している。
【0048】
本実施形態における「パワーデバイス」について、以下に説明する。
パワーデバイスとは、1W以上の電力を制御できる能力を持つ半導体素子を指す。一般的な半導体素子が、信号の制御を主な機能とするのに対して;
パワーデバイスは、電力を扱うという点で大きく異なる。パワーデバイスには、取り扱う電力の種類、周波数などの違いにより、例えばダイオード、サイリスタ、GTO(Gate Turn−Off Thyristor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの様々な種類がある。
一般的な半導体素子と異なり、パワーデバイスは大きな電力を取り扱うために、その表面に形成される保護膜には優れた電気特性が求められる。この電気特性には、例えば耐電圧、体積抵抗など
が包含される。また、大きな電力を取り扱うための電極の形成には、強力な酸・塩基水溶液を用いるため、保護膜にも優れた酸耐性・塩基耐性が求められる。
【0049】
本実施形態におけるパワー半導体素子の保護膜について説明する。本実施形態によるパワー半導体素子の保護膜は、(A)下記一般式(1):
【化11】
{式(1)中、n
1、及びn
2は、各々独立に、0〜2の整数であり、ただし、0≦n
1+n
2≦2の関係を満たし;
X
1は2価の有機基であり、Y
1は(2+n
1+n
2)価の有機基であり、ただし、X
1若しくはY
1、又はこれらの双方は、炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造又は炭素数3〜30の脂環式構造を有する有機基を有し;
R
1は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基である。}
で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を硬化することにより、得られる。
【0050】
<ポリベンゾオキサゾール前駆体>
本実施の形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体は、前記一般式(1)で表される構造を有する。
【0051】
前記一般式(1)中のX
1若しくはY
1、又はこれらの双方は、炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造又は炭素数3〜30の脂環式構造を有する有機基を有する。
【0052】
脂肪族鎖状構造又は脂環式構造を有する有機基は、X
1、及びY
1のどちらに存在していてもよいし、これらの双方が有していてもよい。X
1若しくはY
1、又はこれらの双方が脂肪族鎖状構造又は脂環式構造を有する有機基を有することにより、該ポリベンゾオキサゾール前駆体を硬化させて得られる保護膜は、電気特性、並びに、耐酸性、及びアルカリ性が、極めて良好ものとなる。
前記の脂肪族鎖状構造、及び脂環式構造としては、特に限定はないが、例えば下記一般式(2)〜(12)から選択される少なくとも一つの構造を挙げることができる。これらの構造を有することにより、得られる保護膜の電気特性、並びに、耐酸性、及び耐アルカリ性がより良くなる点で望ましい。
【0054】
{式(2)中、R
2、及びR
3は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり;
m
2は1〜30の整数である。}
【0056】
{式(3)中、R
4〜R
9は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり;
m
3〜m
5は、各々独立に、1〜6の整数である;
m
6は0〜3の整数であり;そして
Aは−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−NHCO−、−C(CF
3)
2−、−C≡C−、−R
10C=CR
11−の構造群から選択される構造であり、ただし、前記R
10〜R
11は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。}
【0058】
{式(4)〜(8)中、R
12〜R
55は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり;
m
7〜m
20 は、各々独立に、1〜6の整数であり;そして
Bは単結合又は2価の有機基である。}
【0060】
{式(9)、及び(10)中、R
67、R
69、R
70、R
73、R
75、及びR
76は、各々独立に、水素原子又はメチル基であり;
R
68、及びR
74は、各々独立に、水素原子、メチル基又は水酸基であり;
R
71、R
72、R
77、及びR
78は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり;そして
m
30、及びm
31は、各々独立に、1〜6の整数である。}
【0062】
{式(11)、及び(12)中、R
79〜R
86は、各々独立に、水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり;
m
32、及びm
33は、各々独立に、1〜6の整数である。)
【0063】
前記構造式(2)〜(12)において、各構造の炭素数の合計は30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、1〜15であることが更に好ましい。
これらの構造は、下記ジアミン、ジカルボン酸を用いることにより、得られる。
【0064】
前記構造(2)としては、例えばメチレン基、ハロゲン化メチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、炭素数2〜30のハロゲン化アルキレン基(例えばヘキサフロロ−2,2−プロピレニレン基など)などを挙げることができる。
【0065】
X
1又はY
1の有する脂肪族鎖状構造又は脂環式構造としては、
得られる硬化膜の体積抵抗値、耐薬品性の観点から、前記の構造(2)、(4)、(6)、及び(9)〜(11)より成る群から選ばれる構造であることがより好ましく;
得られる硬化膜の体積抵抗値の観点から、前記の構造(2)、(9)、及び(11)より成る群から選ばれる構造であることが、さらに好ましい。
【0066】
前記一般式(1)中のX
1は、前記構造式(2)〜(12)より成る群から選ばれる構造そのものであることが、特に好ましい。
前記一般式(1)中のY
1は、前記構造式(2)〜(12)より成る群から選ばれる構造そのものであってもよいし、これら以外の構造を有していてもよい。
【0067】
本実施の形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体は、
前記一般式(1)で示される繰り返し単位のみから成り、且つ式(1)中のX
1及びY
1が、各々単一の基から成る単独重合体であってもよいし;
前記一般式(1)で示される繰り返し単位のみから成るが、X
1若しくはY
1又はこれらの双方が互いに相違する式(1)構造を有する共重合体であってもよいし;或いは、
前記一般式(1)で示される繰り返し単位ととともに、その他の繰り返し単位を有する共重合体であっても良い。
【0068】
本実施の形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体が、X
1若しくはY
1又はこれらの双方が互いに相違する式(1)構造を有する共重合体である場合、特に好ましくは、
該ポリベンゾオキサゾール前駆体が下記一般式(1−1)、及び下記一般式(1−2):
【0070】
{式(1−1)、及び(1−2)中、R
1、n
1、及びn
2は、各々、前記一般式(1)におけるのと同じ意味であり;
X
1−1は、各々独立に、メチレン基、ハロゲン化メチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、及び炭素数2〜30のハロゲン化アルキレン基から成る群より選択され;
Y
1−1は脂肪族鎖状構造又は脂環式構造を有する炭素数1〜30の(2+n
1+n
2)価の炭化水素基であり;
Y
1−2は(2+n
1+n
2)価の芳香族基であり;ただし、
式(1−1)中のX
1、R
1、n
1、及びn
2と、式(1−2)中のX
1、R
1、n
1、及びn
2とは、互いに同一であっても各々相違していてもよい。}
のそれぞれで表される繰り返し単位の双方を含む場合である。
【0071】
前記一般式(1−2)中のn1、及びn2としては、各々、0であることが好ましい。 この場合のY
1−2は2価の芳香族基であり、具体的には例えば、フェニレン基、−Ph−O−Ph−基(Ph=フェニレン基)、ナフタレニレン基などを挙げることができる。
この場合のポリベンゾオキサゾール前駆体における前記一般式(1−1)で示される繰り返し単位と前記一般式(1−2)で示される繰り返し単位との比は、両繰り返し単位の合計に対する前記一般式(1−1)で示される繰り返し単位の割合として、10質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましい。
【0072】
本実施の形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体が、前記一般式(1)で示される繰り返し単位ととともに、その他の繰り返し単位を有する共重合体である場合、該その他の繰り返し単位としては、下記一般式(2−1):
【0074】
{式(2−1)中、X
2は脂肪族鎖状構造又は脂環式構造を有する炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり;
Y
2は2価の芳香族基である。}
で示される繰り返し単位が好ましい。
【0075】
前記一般式(2−1)中のX
2としては、前記構造式(2)〜(12)より成る群から選ばれる構造が挙げられ、より具体的にはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基、下記式
【0077】
(式中、*は結合手を表す。)
で表される基などを;
Y
2としては、前記一般式(1−2)中のY
1−2について提示したのと同じ芳香族基などを、
それぞれ挙げることができる。
【0078】
本実施の形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体は、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を、ポリベンゾオキサゾール前駆体の全部に対して、20質量%以上有することが好ましく、60質量%以上有することがより好ましい。このような割合において前記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を用いることは、得られる硬化膜の体積抵抗値及び耐薬品性の観点から好ましい。
【0079】
本実施の形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量は、重量平均分子量として、3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。ここで分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算して得た値である。
【0080】
本実施の形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体は、そのベンゼン環比率が85%以下である。このベンゼン環比率は、70%以下であることが
好ましい。このようなベンゼン環比率のポリベンゾオキサゾール前駆体を用いることは、得られる硬化膜の体積抵抗値、耐薬品性の観点から好ましい。
ここで、ベンゼン環比率とは、重合体が有するベンゼン環の炭素数が、該重合体が有するカルボニル基以外の全炭素数に占める割合を、百分率で表した値である。
【0081】
<ポリベンズオキサゾール前駆体の製造方法>
上記のようなポリベンゾオキサゾール前駆体は、例えばジアミンと、ジカルボン酸と、から合成することができる。
使用するジアミン、及びジカルボン酸の種類を適当に選択使用することにより、所望の繰り返し単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体が得られる。
前記一般式(1)におけるX
1としては、構造(2)又は(3)が好ましい。
前記一般式(1)において、X
1が構造(2)である繰り返し単位を与えるジアミンとしては、例えば下記式:
【0083】
(式中nは1〜6の整数である。)
のそれぞれで表される化合物、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどを;
前記一般式(1)において、X
1が構造(3)である繰り返し単位を与えるジアミンとしては、例えば下記式:
【0085】
(式中nは1〜6の整数である。)
のそれぞれで表される化合物、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホンなどを、
それぞれ挙げることができる。
上記のうち、前記一般式(1)においてX
1が構造(2)である繰り返し単位を与えるものとして例示したジアミンは、前記一般式(1−1)及び前記一般式(1−2)のそれぞれで表される繰り返し単位を与えるものとしても使用することができる。
【0086】
前記一般式(2−1)を与えるジアミンとしては、例えばイソホロンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、シクロブタンジアミンなどを挙げることができる。
【0087】
ジアミンとしては、上記のジアミンから選択されるもののみを使用してもよいし;
その他のジアミンを併用してもよい。
ここで使用可能なその他のジアミンとしては、例えば4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシビフェニル、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどのほか;
【0088】
シリコーン基の入ったジアミンとして、市販品である商品名「LP−7100」、「X−22−161AS」、「X−22−161A」、「X−22−161B」、「X−22−161C」、「X−22−161E」(いずれも信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
本実施の形態において、ジアミンは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ジアミンの選択、及び複数種のジアミンを使用する場合の使用割合については、当業者であれば、ポリベンゾオキサゾール前駆体が有すべき所望の繰り返し単位の構成を考慮して容易に設定することができる。
【0089】
前記一般式(1)におけるY
1としては、
構造(2)〜(5)、(9)、(11)又は(12)そのものである場合、或いは
脂環式構造(ただし、構造(4)、(6)、(9)又は(11)に該当する場合を除く)である場合、
構造(2)及び脂環式構造の双方を含む構造(ただし、構造(5)、(7)、(10)若しくは(12)に該当する場合を除く)である場合、又は
脂環式構造及び芳香環の双方を含む構造である場合が好ましい。
前記一般式(1)において、Y
1が構造(2)である繰り返し単位を与えるジカルボン酸としては、例えばマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸などを;
【0090】
前記一般式(1)において、Y
1が構造(3)である繰り返し単位を与えるジカルボン酸としては、例えば下記一般式:
【0092】
(式中、Eは炭素数1〜6の炭化水素基、式中nは1〜6の整数である。)
のそれぞれで示されるジカルボン酸などを、
それぞれ挙げることができる。
これらの中でも、得られる保護膜の伸度、及び安定性の観点から、炭素数2〜20の脂肪族鎖状構造又は炭素数3〜30の脂環式構造を有するジカルボン酸が好ましい。
【0093】
前記一般式(1)において、Y
1が構造(4)である繰り返し単位を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0095】
(式中、Z は炭素数1〜6の炭化水素基である。)
のそれぞれで表される化合物などが;
前記一般式(1)において、Y
1が構造(5)である繰り返し単位を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0097】
(式中、Z は炭素数1〜6の炭化水素基である。)
のそれぞれで表される化合物などが、それぞれ挙げられる。
前記一般式(1)において、Y
1が構造(9)である繰り返し単位を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0099】
のそれぞれで表される化合物などが挙げられる。これら4つの化合物のうち、左上の化合物が好ましい。
前記一般式(1)において、Y
1が構造(11)である繰り返し単位を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0100】
【化26】
のそれぞれで表される化合物などが;
前記一般式(1)において、Y
1が構造(12)である繰り返し単位を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0102】
(式中、Z は炭素数1〜6の炭化水素基であり;
Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり;
sは0〜6の整数であり;そして
rは1〜6の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などが、それぞれ挙げられる。
前記一般式(1)において、Y
1が脂環式構造(ただし、構造(4)、(6)、(9)又は(11)に該当する場合を除く)である場合、該構造を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0104】
のそれぞれで表される化合物などを;
前記一般式(1)において、Y
1が構造(2)及び脂環式構造の双方を含む構造(ただし、構造(5)、(7)、(10)又は(12)に該当する場合を除く)である場合、該構造を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0106】
(式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり;
sは0〜6の整数であり;そして
rは0〜6の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などを;
前記一般式(1)において、Y
1が脂環式構造及び芳香環の双方を含む構造である場合、該構造を与えるジカルボン酸としては、例えば下記式:
【0108】
(式中、Rは1〜6の炭化水素基であり;
sは0〜6の整数であり;そして
rは0〜6の整数である。)
のそれぞれで表される化合物などを、それぞれ好ましいものとして挙げられる。
上記以外に、前記一般式(1)におけるY
1を与えるジカルボン酸としては、例えば2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0109】
次に、前記一般式(2−1)におけるY
2を与えるジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジカルボキシジフェニルエーテル、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系ジカルボン酸を挙げることができる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0110】
ジカルボン酸としては、上記のジカルボン酸から選択されるもののみを使用してもよいし;
その他のジカルボン酸を併用してもよい。
ここで使用可能なその他のジカルボン酸としては、例えば4,4'−ジカルボキシテトラフェニルシランなどが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
本実施の形態において、ジカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ジカルボン酸の選択、及び複数種のジカルボン酸を使用する場合の使用割合については、当業者であれば、ポリベンゾオキサゾール前駆体が有すべき所望の繰り返し単位の構成を考慮して容易に設定することができる。
【0111】
本実施形態におけるポリベンゾオキサゾール前駆体は、前記のようなジアミン、及びジカルボン酸から合成できる。具体的には、ジカルボン酸をジハライド誘導体に変換した後、前記ジアミンとの反応を行うことにより合成できる。ジカルボン酸のジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0112】
ジカルボン酸のジクロリド誘導体は、ジカルボン酸に塩素化剤を作用させて合成することができる。塩素化剤としては、通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、例えば塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リンなどが使用できる。
【0113】
ジカルボン酸のジクロリド誘導体を合成する具体的な方法としては、ジカルボン酸誘導体、及び塩素化剤を溶媒中で反応させるか、或いは
ジカルボン酸を過剰の塩素化剤中で反応させた後、塩素化剤の過剰分を留去する方法で合成できる。前記反応溶媒としは、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼンなどが使用できる。
【0114】
塩素化剤の使用量としては、
溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸の1モルに対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましく;
塩素化剤中で反応させる場合は、ジカルボン酸の1モルに対して、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。前記いずれも場合であっても、反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。反応時間は、10分〜5時間程度とすることができる。
【0115】
前記のようにして得られたジカルボン酸のジクロリド誘導体とジアミンとの反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に有機溶媒中で行うことが好ましい。両者の使用割合は、ジカルボン酸のジクロリド誘導体の1モルに対するジアミンの使用量として、0.90〜1.00モルとすることが好ましく、0.95〜1.00モルとすることがより好ましい。
前記脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基が使用される。有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが使用できる。前記いずれの反応形態による場合でも、反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましく;
反応時間は、10分〜5時間程度とすることができる。
【0116】
<パワー半導体素子保護膜形成用の感光性樹脂組成物>
本実施形態におけるパワー半導体素子保護膜は、(A)成分として前記のようなポリベンゾオキサゾール前駆体を含有し、更に少なくとも(B)光酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0117】
[(B)光酸発生剤]
本実施形態における感光性樹脂組成物は、(B)光酸発生剤を含有することにより、紫外線、電子線、X線などに代表される活性光線(放射線)に感応して樹脂パターンを形成できる。この感光性樹脂組成物は、ネガ型(現像により未照射部が溶出するもの)又はポジ型(現像により照射部が溶出するもの)のいずれであってもよい。
【0118】
本実施形態における(B)光酸発生剤としては、例えば、(i)トリクロロメチル−s−トリアジン類、(ii)ジアリールヨードニウム塩類、(iii)トリアリールスルホニウム塩類、(iv)ジアゾケトン化合物、(v)スルホン化合物、(vi)スルホン酸化合物、(vii)スルホンイミド化合物、(viii)オキシムエステル化合物、(ix)ジアゾメタン化合物、(x)キノンジアジド化合物などが挙げられる。これらの化合物の具体例としては、それぞれ、以下の化合物を挙げることができる:
【0119】
(i)トリクロロメチル−s−トリアジン類
トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メチルチオフェニル)ビス(4,6−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(2−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオ−β―スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メチルチオ−β―スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メチルチオ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジンなど。
【0120】
これらのうち、2−(3−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジンから成る群より選択される1種以上が好ましい。
【0121】
(ii)ジアリールヨードニウム塩類
ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホナートなど。
【0122】
これらのうち、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、及び4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテートから成る群より選択される1種以上が好ましい。
【0123】
(iii)トリアリールスルホニウム塩類
トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルーp−トルエンスルホナートなど。
【0124】
これらのうち、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、及び4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテートから成る群より選択される1種以上が好ましい。
【0125】
(iv)ジアゾケトン化合物
1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物など。具体例としてはフェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物など。
【0126】
(v)スルホン化合物
β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物、及びこれらの化合物のα−ジアゾ化合物など。具体例として、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタンなど。
【0127】
(vi)スルホン酸化合物
アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類など。好ましい具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジル−p−トルエンスルホネートなど。
【0128】
(vii)スルホンイミド化合物
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドなど。
【0129】
(viii)オキシムエステル化合物
2−[2−(4−メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)]−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン]−2−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(BASF社製、商品名「イルガキュアPAG121」)、[2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン]−2−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(BASF社製、商品名「イルガキュアPAG103」)、[2−(n−オクタンスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン]−2−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(BASF社製、商品名「イルガキュアPAG108」)、α−(n−オクタンスルフォニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド(BASF社製、商品名「CGI725」)など。
【0130】
(ix)ジアゾメタン化合物
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンなど。
【0131】
(x)キノンジアジド化合物
前記のキノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ベンゾキノンジアジド構造又は1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は、例えば、米国特許第2,772,972号明細書、米国特許第2,797,213号明細書、米国特許第3,669,658号明細書等により公知である。
キノンジアジド化合物のうち、1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物を、以下、「NQD化合物」ともいう。このNQD化合物は、以下詳述する複数のフェノール性水酸基を有する化合物(以下「ポリヒドロキシ化合物」ともいう。)の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、及び該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0132】
NQD化合物は、常法に従って、ナフトキノンジアジドスルホン酸を、クロルスルホン酸又は塩化チオニル等でスルホニルクロライドとし、得られたナフトキノンジアジドスルホニルクロライドと、ポリヒドロキシ化合物とを縮合反応させることにより得られる。例えば、ポリヒドロキシ化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロライド又は1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロライドの所定量とを、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン等の適当な溶媒中、好ましくはトリエチルアミンなどの塩基性触媒の存在下で反応させてエステル化を行い、得られた生成物を水洗、乾燥することにより得ることができる。
【0133】
感度、及び伸度などの硬化膜物性の観点から好ましいNQD化合物の例としては、例えば、下記一般式群のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
【0135】
{式中、Qは、水素原子、又は下記式群:
【0137】
のいずれかで表されるナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基であるが、すべてのQが同時に水素原子であることはない。}
【0138】
NQD化合物としては、
4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、及び5−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれか一方を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を用いることができ;
同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、及び5−ナフトキノンジアジドスルホニル基の双方を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を用いることができ、;或いは
4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物との混合物を使用してもよい。
これらのNQD化合物は、単独で使用しても2種類以上混合して使用してもよい。
【0139】
本実施形態において樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂組成物として使用される場合、前記の(B)光酸発生剤が放射線照射を受けて酸を発生し、発生した酸が前記(A)ポリベンズオキサゾール前駆体と後述の架橋剤との架橋反応を引き起こすことにより、放射線照射部が現像液に不溶となる。
ネガ型の感光性樹脂組成物における(B)光酸発生剤としては、感度の観点から、前記(viii)オキシムエステル化合物が特に好ましい。
【0140】
感光性樹脂組成物がネガ型である場合の、(B)光酸発生剤の配合量は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜40質量部であることがより好ましい。該配合量が0.1質量部以上であれば感度の向上効果を好ましく得ることができ、該配合量が50質量部以下であれば硬化膜の機械物性が良好となる。
【0141】
本実施形態では、樹脂組成物はポジ型の感光性樹脂組成物として使用することも可能である。この場合の(B)光酸発生剤としては、硬化後の物性の観点からキノンジアジド化合物が好ましい。これはキノンジアジド化合物が硬化時に熱分解し、硬化後の膜中に残存する量が極めて低いためである。
【0142】
感光性樹脂組成物がポジ型である場合の(B)光酸発生剤の使用量は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1〜70質量部であり、より好ましくは1〜40質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。この使用量が0.1質量部以上であれば良好な感度が得られ、70質量部以下であれば硬化膜の機械物性が良好である。
【0143】
[その他の成分]
本実施形態における感光性樹脂組成物は、前記のような(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、及び(B)光酸発生剤を含有するが、これら以外に、必要に応じて、例えば(C)架橋剤、熱酸発生剤、シランカップリング剤、染料、溶解促進剤などを更に含有していてもよい。
【0144】
−(C)架橋剤−
(C)架橋剤は、本実施形態における感光性樹脂組成物を用いて形成されたレリーフパターンを加熱硬化する際に、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体と架橋し得るか、又は架橋剤自身が架橋ネットワークを形成するような化合物である。本実施形態における樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂組成物である場合、該感光性樹脂組成物は(C)架橋剤を好ましく含有する。また、ポジ型の感光性樹脂組成物が(C)架橋剤を含有していてもよい。
このような(C)架橋剤は分子内に架橋基を2個以上有する化合物であることが好ましい。この架橋性基としては、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基(オキシラニル基)、イソシアネート基、マレイミド基などを挙げることができる。このような架橋性基を有する(C)架橋剤を含有する感光性樹脂組成物から形成された硬化膜は、その熱特性、機械特性、及び耐薬品性が極めて向上されたものとなる。
【0145】
(C)架橋剤の具体例としては、例えば以下のとおりである。
メチロール基、及びアルコキシメチル基から成る群より選択される1種以上の架橋性基を含有する化合物として、例えば、
ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニルなどの他;
【0146】
商品名で、例えば、
サイメル(登録商標)300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174(以上、三井サイテック社製);
UFR65、300(以上、三井サイテック社製);
マイコート102、105(以上、三井サイテック社製);
ニカラック(登録商標)MX−270、−280、−290(以上、三和ケミカル社製);
ニカラックMS―11、ニカラックMW―30、−100、−300、−390、−750(以上、三和ケミカル社製);
DML−OCHP、DML−MBPC、DML−BPC、DML−PEP、DML−34X、DML−PSBP、DML−PTBP、DML−PCHP、DML−POP、DML−PFP、DML−MBOC、BisCMP−F、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−BisOC−P、DMOM−PTBT、TMOM−BP、TMOM−BPA、TML−BPAF−MF(以上、本州化学工業社製)
などが挙げられる。
【0147】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグルシジルエーテル、1,1,2,2−テトラ(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、オルソセカンダリーブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテルなどのオキシラン化合物の他;
【0148】
商品名で、例えば、
YDB−340、YDB−412、YDF−2001、YDF−2004(以上、新日鐵化学(株)製);
NC−3000−H、EPPN−501H、EOCN−1020、NC−7000L、EPPN−201L 、XD−1000、EOCN−4600(以上、日本化薬(株)製);
エピコート(登録商標)1001、エピコート1007、エピコート1009、エピコート5050、エピコート5051、エピコート1031S、エピコート180S65、エピコート157H70、YX−315−75(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製);
EHPE3150 、プラクセルG402、PUE101、PUE105(以上、ダイセル化学工業(株)製);
エピクロン(登録商標)830、850、1050、N−680、N−690、N−695、N−770、HP−7200、HP−820、EXA−4850−1000(以上、DIC社製);
デナコール(登録商標)EX−201、EX−251、EX−203、EX−313、EX−314、EX−321、EX−411、EX−511、EX−512、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−711、EX−731、EX−810、EX−911、EM−150(以上、ナガセケムテックス社製);
エポライト(登録商標)70P、エポライト100MF(以上、共栄社化学製)などが挙げられる。
【0149】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアナート、1,3−フェニレンビスメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン―4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの他;
商品名で、例えば
タケネート(登録商標)500、600(以上、三井化学社製);
コスモネート(登録商標)NBDI、ND(以上、三井化学社製);
デュラネート(登録商標)17B−60PX、TPA−B80E、MF−B60X、MF−K60X、E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)
などが挙げられる。
【0150】
また、ビスマレイミド基を有する化合物としては、例えば
4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼンなどの他、
商品名で、例えば
BMI−1000、BMI−1100、BMI−2000、BMI−2300、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5100、BMI−7000、BMI−TMH、BMI−6000、BMI−8000(以上、大和化成工業(株)製)
などが挙げられる。
しかし(C)架橋剤は、熱架橋可能な化合物であれば、これらに限定されない。
【0151】
(C)架橋剤を使用する場合の配合量としては、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、0.1〜40質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。該配合量が0.1質量部以上であれば、得られる硬化膜の熱物性、及び機械強度が良好であり、40質量部以下であれば組成物のワニス状態での安定性、及び熱硬化膜の伸度が良好である。
【0152】
−熱酸発生剤−
熱酸発生剤は、硬化温度を下げた場合でも、良好な硬化物の熱物性、及び機械的物性を発現させるという観点から、本実施形態における感光性樹脂組成物に配合することができる。
【0153】
熱酸発生剤としては、例えばカルボン酸エステル類、環状カルボン酸エステル類、スルホン酸エステル類、環状スルホン酸エステル類、芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、熱により酸が発生する化合物であれば限定されない。
熱酸発生剤を使用する場合の配合量としては、(A)ポリベンズオキサゾール前駆体100質量部に対し、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。配合量が0.1質量部以上であれば熱硬化後のパターン形状を保持する効果が良好であり、一方、配合量が30質量部以下であればリソグラフィー性能に悪影響がなく、かつ組成物の安定性が良好である。
【0154】
−シランカップリング剤−
シランカップリング剤としては、例えば
フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p−トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ−p−トリルシラン、トリフェニルシラノール、及び下記構造のそれぞれで表されるシランカップリング剤から成る群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0156】
シランカップリング剤を使用する場合の配合量としては、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
【0157】
−染料−
染料としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーンなどが挙げられる。染料の配合量としては、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0158】
−溶解促進剤−
溶解促進剤としては、水酸基又はカルボキシル基を有する化合物が好ましい。
水酸基を有する化合物の例としては、例えば直鎖状フェノール化合物、非直鎖状フェノール化合物、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物とをモル比1対2で反応させて得られる化合物、ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンと1,2−シクロヘキシルジカルボン酸無水物とをモル比1対2で反応させて得られる化合物、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミドなどが挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の例としては、例えば3−フェニル乳酸、4−ヒドロキシフェニル乳酸、4−ヒドロキシマンデル酸、3,4−ジヒドロキシマンデル酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸、2−メトキシ−2−(1−ナフチル)プロピオン酸、マンデル酸、アトロラクチン酸、α−メトキシフェニル酢酸、O−アセチルマンデル酸、イタコン酸などを挙げることができる。
【0159】
溶解促進剤を使用する場合の配合量としては、(A)ポリベンズオキサゾール前駆体100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0160】
[溶剤]
本実施形態における感光性樹脂組成物は、前記の(A)ポリベンズオキサゾール前駆体、及び(B)光酸発生剤、並びに必要に応じて配合されるその他の成分が、好ましくは溶剤中に溶解されて構成される溶液組成物として調製される。
ここで使用される溶剤としては、例えばアミド類、スルホキシド類、ウレア類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などが挙げられる。
【0161】
これらの具体例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、モルフォリン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、アニソール、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどを挙げることができる。中でも、(A)ポリベンズオキサゾール前駆体の溶解性、感光性樹脂組成物の安定性、及び基板への接着性の観点から、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールから成る群より選択される1種以上が好ましい。
【0162】
本発明の感光性樹脂組成物における溶剤の使用量は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、好ましくは100〜1,000質量部であり、より好ましくは120〜700質量部であり、更に好ましくは125〜500質量部の範囲である。
【0163】
<パワー半導体素子の保護膜の製造方法>
本実施形態の別の態様は、
(1)上述した本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する塗膜形成工程、
(2)前記塗膜を露光する露光工程、
(3)前記露光後の塗膜を現像してレリーフパターンを形成する現像工程、及び
(4)得られたレリーフパターンを加熱する加熱工程
を含む、パワー半導体素子の保護膜の形成方法を提供する。この方法の一例を以下に説明する。
【0164】
(1)塗膜形成工程
先ず、本実施形態の感光性樹脂組成物を、適当な支持体又は基板、例えばシリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板、SiCウェハー、GaNウェハーなどに塗布する。ここでいう基板には、未加工の基板以外に、例えば半導体素子又は表示体素子が表面に形成された基板も含む。この時、形成するパターンと支持体との耐水接着性を確保するため、予め支持体又は基板にシランカップリング剤などの接着助剤を塗布しておいてもよい。感光性樹脂組成物の塗布はスピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティングなどにより行うことができる。
【0165】
次いで、80〜140℃において30〜600秒程度のプリベークを行って溶剤を除去することにより、感光性樹脂組成物の塗膜を形成する。溶媒除去後の塗膜の厚さとしては、1〜500μmが好ましい。
【0166】
(2)露光工程
次に、前記のようにして得られた塗膜を露光する。露光用の活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などが使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。パターンの解像度、及び取り扱い性の点で、光源波長は水銀ランプのg線、h線又はi線の領域であることが好ましく、単独でも2つ以上の光線を混合して用いてもよい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション又はステッパ−が特に好ましい。露光後、必要に応じて、80〜140℃において10〜300秒程度、塗膜を再度加熱してもよい。
【0167】
(3)現像工程
次に、前記露光後の塗膜を現像して、レリーフパターンを形成する。
この現像工程においては、適当な現像液を用いて、例えば浸漬法、パドル法、回転スプレー法などの適宜の方法から選択して現像を行うことができる。現像により、塗膜から、露光部(ポジ型の場合)又は未露光部(ネガ型の場合)が溶出除去され、レリーフパターンを得ることができる。
【0168】
現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ類;
エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩類など
の水溶液の他、
前記の水溶液に、例えばメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、又は界面活性剤を適当量添加した水溶液などを使用することができる。これらの中で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。該水溶液におけるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度は、好ましくは0.5〜10質量%であり、更に好ましくは1〜5質量%である。
【0169】
現像後、リンス液により洗浄を行い、現像液を除去することにより、レリーフパターンを得ることができる。リンス液としては、例えば蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどを、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0170】
(4)加熱工程
最後に、前記のようにして得られたレリーフパターンを加熱することにより、硬化レリーフパターン(保護膜)を得ることができる。加熱温度は150℃〜500℃が好ましく、150℃〜400℃がより好ましい。本実施形態における材料は優れた耐熱性を有するから、この加熱温度を例えば280℃以上としても、良好な特性を有する保護膜を得ることができる。加熱時間は、15〜300分とすることができる。
この加熱処理は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンなどにより行うことが出来る。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては、空気を用いてもよく、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いることもできる。また、より低温にて熱処理を行う必要が有る場合には、真空ポンプなどを利用して減圧下に加熱を行ってもよい。
【0171】
<パワー半導体素子>
本実施形態におけるパワー半導体素子(パワーデバイス)は、前記のようにして形成された保護膜を有する。具体的には、パワー半導体素子におけるチップの表面に形成された保護膜を有する。該保護膜は、ソース電極とゲート電極との間、及び/又はソース電極とドレイン電極と間の絶縁性を確保する目的で使用される。そして、この保護膜は、外部電極を引き出すためにパターニングして用いられる。
この保護膜には、
動作時にチップが高温になるために耐熱性及び放熱性が、
動作性能向上のために高い絶縁性が、
製造プロセス中に薬液にふれるために高い耐薬品性が求められる。
前記のようなパワー半導体素子に、前記の保護膜を用いることにより、絶縁信頼性及び実装信頼性が向上し、性能が長時間劣ることなく使用することが可能となる。
【実施例】
【0172】
以下、実施例、及び比較例により、本実施形態を具体的に説明する。しかしながら本発明は、これらに限定されるものではない。
以下において、形成した膜の膜厚は、膜厚測定装置(大日本スクリーン製造社製 ラムダエース)を用いて測定した。
[実施例1]
<ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成>
容量2Lのセパラブルフラスコ中で、ジアミンとしての2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン197.8g(0.54mol)、ピリジン75.9g(0.96mol)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)692gを室温(25℃)で混合攪拌して溶解させた後、水浴により8℃に冷却した。ここに、別途ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)398g中に酸クロライドとしてのドデカン二酸ジクロライド128。3g(0.48mol)を溶解させた溶液を滴下ロートより滴下した。滴下に要した時間は80分、反応液の最高到達温度は12℃であった。滴下終了から3時間撹拌を継続した後、得られた反応液を12リットルの水に高速攪拌下で滴下して、重合体を分散析出させた。析出した重合体を回収し、水洗、及び脱水した後に真空乾燥を施すことにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。
このようにして合成されたポリベンゾオキサゾール前駆体についてGPC(高速液体クロマトグラフィー)を測定した。重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で15,000であった。また、溶出曲線は単一のシャープなピークを示したことから、単一組成物が得られたことを確認した。
GPCの分析条件を以下に記す。
【0173】
測定装置:島津製作所製 GPC
カラム:昭和電工社製 商品名 Shodex 805/804/803直列
容離液:テトラヒドロフラン 40℃
流速:1.0ml/分
検出器:昭和電工製 商品名 Shodex RI SE−61
【0174】
<ベンゼン環比率の算出>
前記で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体について、ベンゼン環比率を下記式により算出した:
ベンゼン環比率(%);(ポリマーユニット内のベンゼン環の炭素数/ポリマーユニット内のカルボニル基以外の全炭素数)×100
従って、本実施例におけるポリベンゾオキサゾール前駆体のベンゼン環比率は、以下のように算出された。
ドデカン二酸ジクロライド(A−3):ベンゼン環炭素数;0、カルボニル基以外の全炭素数;10
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(B−3):ベンゼン環炭素数;12、カルボニル基以外の全炭素数;15
ベンゼン環比率;(0+12)/(10+15)×100=48.0%
なお、前記ベンゼン環比率の単位である百分率の基準はモルである。
【0175】
<体積抵抗値の測定>
前記で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体をγ−ブチロラクトンに溶解して得た濃度37質量%の溶液を、6インチ・シリコンウエハー上に、スピンコーター(東京エレクトロン社製 クリーントラックMark8)を用いて塗布し、125℃において180秒間乾燥した後、昇温式オーブン(光洋サーモシステム社製 VF200B)を用いて窒素雰囲気下、350℃において1時間加熱して、膜厚7.0μmの硬化膜を得た。この硬化膜を、10cm×10cmの大きさにカットし、希フッ化水素酸水溶液に一晩浸してフィルム片を剥離した後、乾燥させ、自立膜を得た。
体積抵抗測定装置(日置電気社製 ULTRA MEGOHMMETER SM−8220)を用いて、23℃45%RH、及び75℃85%RH(エスペック社製 PR−2KT)の2つの条件で、前記自立膜のそれぞれに100Vの電圧を1分間かけた後の体積抵抗値を測定した。測定は、各湿温度についてそれぞれ5回行い、平均値をとって当該温湿度条件における体積抵抗値とした。結果を表1に記載した。
【0176】
<感光性樹脂組成物の製造>
前記で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、感光性ナフトキノンジアジド化合物として下記式(Q−1)で表される化合物18重量部を、γ−ブチロラクトン(GBL)に溶解させた後、1μmのフィルターで濾過することにより、固形分濃度37質量%の感光性樹脂組成物を調製した。
【0177】
【化34】
【0178】
(前記式中、Qは下記式で表される1価の基である。)
【0179】
【化35】
【0180】
<感光性樹脂組成物の評価>
(1)パターニング特性の評価
スピンコーター(東京エレクトロン社製 クリーントラックMark8)を用いて、前記で得た感光性樹脂組成物を6インチ・シリコンウエハー上にスピン塗布し、ホットプレート上125℃において180秒間プリベークして評価用膜を得た。この膜の初期膜厚は、露光、及び現像後に350℃において1時間キュアした場合の硬化後樹脂膜厚で7μmとなるように調整した。
この塗膜に、i線(365nm)の露光波長を有するステッパー(ニコン社製 NSR2005i8A)を用いて、テストパターン付きレチクルを介して、段階的に露光量を変えてパターンが解像する最小露光量を調べ、該露光量において露光した。
前記露光後の膜につき、アルカリ現像液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製 AZ300MIFデベロッパー、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用いて23℃の条件下で、現像後膜厚が初期膜厚の85%となるように現像時間を調整して現像した後、純水にてリンスを行うことにより、ポジ型のレリーフパターン(硬化膜)を形成した。
【0181】
<耐酸性の測定>
前記で得られた硬化膜を30質量%のHNO
3水溶液に5分浸漬した後、クロスカット試験(硬化膜に1mm間隔で10行10列の碁盤目状の切り込みを入れ、セロテープ(登録商標)による引き剥がしによって100マスのうち何マス剥がれたかにより基板/樹脂膜間の接着特性の評価を行う試験)を行った。剥離の全くなかった場合を耐酸性「良好」、1マスでも剥離した場合を耐酸性「不良」として評価した。結果は表1に記載した。
<耐アルカリ性の測定>
前記で得られた硬化膜を10質量%のNaOH水溶液に5分浸漬した後、クロスカット試験を行い、剥離の全くなかった場合を耐アルカリ性「良好」、1マスでも剥離した場合を耐アルカリ性「不良」として評価した。結果は表1に記載した。
【0182】
<樹脂膜を有するSiCウエハーの作製>
4インチSiCウエハー(新日鉄住金製)上に、前記で得られた感光性樹脂組成物を、硬化後の膜厚が約10μmとなるように回転塗布した後、ホットプレート上で120℃において180秒間プリベークを行い、塗膜を形成した。この塗膜に、i線(365nm)の露光波長を有するステッパNSR2005i8A(ニコン社製)を用いて、露光量500mJ/cm
2のi線を、テストパターン付きレチクルを介して照射して露光した次に、現像機D−SPIN(SOKUDO社製)を用いて23℃において2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 AZ−300MIF(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いて100秒間現像を行った。これを純水でリンスした後、縦型キュア炉VF200B(光洋サーモシステム社製)を用いて、窒素雰囲気下、350℃において1時間硬化を行うことにより、硬化レリーフパターン(硬化膜)を得た。得られたパターンは、剥がれ、クラックなどが観察されずない良好なパターンであった。
【0183】
<保護膜を有するGaNウエハーの作製>
前記<保護膜を有するSiCウエハーの作製>において、SiCウエハーの代わりに4インチGaNウエハー(住友電気工業製)を用いた他は、前記SiCウエハーの場合と同様にして、硬化レリーフパターン(保護膜)を有するGaNウエハーを作製した。得られたパターンは、剥がれ、クラックなどが観察されない良好なパターンであった。
【0184】
[実施例2〜3
9]
前記実施例1の<ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成>において、酸クロライド、及びジアミンとして、それぞれ、表1記載のものを表1に記載の量にて使用した他は実施例1におけるのと同様にしてポリベンゾオキサゾール前駆体を合成し、各種の評価を行った。
実施例4、5、9、10、14〜18、20、22、24〜30、32、34、及び37〜39は比較例である。
評価結果は表1に示した。
表1において、酸クロライド又はジアミンの名称(略称)が2つ記載されている場合には、2種類のモノマーを表に記載の使用比(モル比)にて、その合計量が、酸クロライドについては0.48モル、ジアミンについては0.54モルとなるように混合使用したことを示す。
【0185】
ベンゼン環比率についても、前記実施例1におけるのと同様に算出した。共重合体については、それぞれのポリマーユニットについて計算したベンゼン環比率に、共重合比を乗じて和をとることにより、ポリマー全体のベンゼン環比率を算出した。参考のため、2種の酸クロリドを混合して使用した実施例2のポリベンゾオキサゾール前駆体についてのベンゼン環比率の計算例を下記に示した。
ドデカン二酸ジクロライド(A−3):ベンゼン環炭素数;0、カルボニル基以外の全炭素数;10
4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロライド(A−1):ベンゼン環炭素数;12、カルボニル基以外の全炭素数;12
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(B−3):ベンゼン環炭素数;12、カルボニル基以外の全炭素数;15
A−3/B−3ユニットのベンゼン環比率;(0+12)/(10+15)×100=48.0%
A−1/B−3ユニットのベンゼン環比率;(12+12)/(12+15)×100=88.9%
A−3/B−3ユニットとA−1/B−3ユニットとの共重合モル比;0.8:0.2
ポリマー全体のベンゼン環比率;48.0×0.8+88.9×0.2=56.2%
【0186】
なお、<保護膜を有するSiCウエハーの作製>及び<樹脂膜を有するGaNウエハーの作製>においては、実施例26のみ、露光後、現像前に、ホットプレートを用いて120℃において180秒間の加熱を行った。
<保護膜を有するSiCウエハーの作製>及び<樹脂膜を有するGaNウエハーの作製>においては、いずれの実施例の場合も、剥がれ、クラックなどが観察されない良好なパターンが得られた。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
表1に記載の酸クロライド、及びジアミンの略称は、それぞれ、以下の化合物を示す。
[酸クロライド]
【0190】
【化36】
【0191】
【化37】
【0192】
[ジアミン]
【0193】
【化38】
【0194】
<半導体素子の製造>
[実施例40]
図1〜3に示す手順により、半導体素子を製造した。
基板として、半導体セルが回路でつながれて形成された第1表面電極2(ニッケル電極)を有するシリコン基板(基板厚み500μm)1を用いた(
図1(a))。
前記の基板上に、めっきレジスト(商品名「ZPN103」、ネガ型環化ゴムレジスト、日本ゼオン製)をコートした(
図1(b))。その後、露光、及び現像処理を行い、第1表面電極2上にコンタクトホールが貫通して形成された20μm膜厚のレジスト膜10を形成した。
次いで、電解めっき法を用いて前記コンタクトホール内にコンタクト電極4を作製した(
図1(c))。専用剥離液を用い、レジスト膜10を剥離してコンタクト電極4を露出させた(
図2(d))。
前記のように処理した基板上に、前記実施例1で調製した感光性樹脂組成物を、キュア後膜厚が17〜18μmの膜厚になるように塗布し90℃で6分プリベークした(
図2(e))。次いでこのプリベーク膜上に、実施例5で調製した感光性樹脂組成物を、キュア後膜厚が5μm程度になるように塗布した(
図2(f))。この、重ね塗りしたプリベーク膜を、350℃において1時間のキュア条件で熱硬化して、積層ポリベンゾオキサゾール膜(絶縁膜3)を形成した(
図3(g))。この積層ポリベンゾオキサゾール膜の積層面は完全に一体化しており、剥離することは無かった。
【0195】
前記で形成した、シリコン基板1上の積層ポリベンゾオキサゾール膜を、切削加工装置(DAS8920、株式会社ディスコ社製)を用いて切削加工してコンタクト電極4を削り出した(
図3(g))。
次いで、コンタクト電極4と接触し、絶縁膜表3の面上に伸びる第2表面電極5を、スパッタ法により作製した(
図3(h))。ここで、絶縁膜3bの切削面は、ベンゾオキサゾール骨格を有する樹脂からなる。その熱膨張率は15ppm/℃であり、
銅からなる第2表面電極5と熱膨張率が近似しており、銅との密着性に優れていた。
更に、バックグラインドテープによりポリベンゾオキサゾール面を固定した後、シリコン基板裏面を研磨加工してシリコン基板を厚み100μmまで薄板化した。薄膜化したシリコン基板は、反ることが無く、平坦であり、欠けも見られなかったので、安定して次工程に進めることが出来た。また、前記研磨加工後にも、第2表面電極5と積層ポリベンゾオキサゾール膜との間には、層間隔離が見られなかった。
最後に、裏面電極6をスパッタ法にて積層した。
ダイサーを用いてポリベンゾオキサゾール面からチップを分割したところ、反り、及び欠けのない半導体素子を得ることが出来た。