(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475441
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】圧電素子駆動式バルブ及び圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/02 20060101AFI20190218BHJP
F16K 7/14 20060101ALI20190218BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20190218BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20190218BHJP
H01L 41/083 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
F16K31/02 A
F16K7/14 A
H01L41/09
H01L41/053
H01L41/083
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-177202(P2014-177202)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-50645(P2016-50645A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−203779(JP,A)
【文献】
特表2003−534512(JP,A)
【文献】
特開2011−117499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/00− 7/20
F16K 31/00−31/05
H01L 41/293
H02N 2/00− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路及び弁座を設けた本体と、本体の弁座に当離座して流体通路を開閉する弁体と、圧電素子の伸長を利用して前記弁体を開閉駆動する圧電アクチュエータとを備えた圧電素子駆動式バルブにおいて、
少なくとも二つの圧電アクチュエータを、両端面が対向する圧電アクチュエータのそれぞれの端面と当接するとともに、両圧電アクチュエータの配線を引き出し可能な筒状のスペーサを介して一直線上に配設したことを特徴とする圧電素子駆動式バルブ。
【請求項2】
少なくとも二つの圧電アクチュエータを一直線上に収容して支持する有底筒状のアクチュエータボックスを更に有し、当該アクチュエータボックスは、一方の圧電アクチュエータを収容する第1筒部と、他方の圧電アクチュエータを収容する第2筒部と、第1筒部と第2筒部とを着脱自在に連結して一方の圧電アクチュエータと他方の圧電アクチュエータとの間にスペーサの収容空間を形成する筒状の連結体とから成り、前記連結体に配線を引き出せる開口部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項3】
弁体が自己弾性復帰型の金属ダイヤフラムにより形成されていると共に、アクチュエータボックスが本体側に移動自在に支持されており、アクチュエータボックスの基端部周壁を通過してアクチュエータボックスの底壁上面に対向する上壁を有する割りベースと、アクチュエータボックスの底壁と割りベースの上壁との間に介設されてアクチュエータボックスを弁座側へ押圧付勢して弁体を弁座へ当座させる弾性体とを備え、圧電アクチュエータが伸長したときに弾性体の弾性力に抗してアクチュエータボックスを移動させて前記弁体が弁座から離座することを特徴とする請求項2に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項4】
スペーサは、周壁に配線を引き出せる開口部又は切欠部を備えた円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3の何れかに記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項5】
スペーサの周壁に、開口部又は切欠部を円周方向に一定の間隔で複数個形成したことを特徴とする請求項4に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項6】
スペーサは、配線を引き出せる円形の柵構造又は円形の格子構造に形成されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3の何れかに記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項7】
スペーサと、アクチュエータボックスの第1筒部、第2筒部及び連結体とをそれぞれ同じインバー材により形成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の圧電素子駆動式バルブ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置。
【請求項9】
弁体より下流側の流体通路に配設されたオリフィスと、弁体とオリフィスの間の流体通路に配設された圧力センサと、圧力センサの検出値に基づいて一方の圧電アクチュエータ及び他方の圧電アクチュエータを制御する制御部とを更に有することを特徴とする請求項8に記載の流量制御装置。
【請求項10】
弁体の上流側に配設した熱式の流量センサによって圧電アクチュエータを制御することを特徴とする請求項8に記載の流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造設備や化学産業設備、薬品産業設備、食品産業設備等の流体供給ラインに介設されて流体の流量制御を行う圧電素子駆動式バルブ及び圧電素子駆動式バルブを備えた
流量制御装置の改良に係り、特に、圧電素子の変位量を大きくすることができると共に、配線等に支障を来たさない圧電素子駆動式バルブ及び圧電素子駆動式バルブを備えた
流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前から、半導体製造設備や化学産業設備等の流体供給ラインにおいては、圧電素子駆動式バルブ及び圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置が広く利用されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7参照)。
【0003】
図9は従前の圧電素子駆動式バルブ30及び圧電素子駆動式バルブ30を備えた流量制御装置の一例を示すものである。
【0004】
即ち、前記流量制御装置は、圧電素子駆動式バルブ30と、圧電素子駆動式バルブ30の本体31の上流側にボルト(図示省略)により締め付け固定され、本体31の流体通路31aに連通する入口側流体通路32aを形成した入口側ブロック32と、本体31と入口側ブロック32との間に介設されたシール用のガスケット33と、圧電素子駆動式バルブ30の本体31の下流側にボルト(図示省略)により締め付け固定され、本体31の流体通路31aに連通する出口側流体通路34aを形成した出口側ブロック34と、本体31と出口側ブロック34との間に介設された流量制御用のガスケット型オリフィス35と、圧電素子駆動式バルブ30の本体31に配設され、ガスケット型オリフィス35の上流側の圧力を検出する圧力センサ36と、圧電素子駆動式バルブ30を制御する制御部37等から構成されており、ガスケット型オリフィス35の上流側圧力によりオリフィス通過流量を演算しながら圧電素子駆動式バルブ30の開閉によりオリフィス通過流量を制御するようにしたものである。
【0005】
また、前記圧電素子駆動式バルブ30は、流体通路31a及び弁座31bを設けた本体31と、弁座31bに当離座する弁体38(金属ダイヤフラム)と、弁体38の外周縁部を本体31側へ気密状に押圧する押えアダプター39と、押えアダプター39を本体31側へ押圧する半割り構造の割りベース40と、押えアダプター39及び割りベース40を本体31側へ固定するベース押え41と、ベース押え41に昇降自在に支持されたアクチュエータボックス42と、アクチュエータボックス42の下端に挿着され、弁体38に当接するダイヤフラム押え43と、割りベース40とアクチュエータボックス42との間に介設され、アクチュエータボックス42を下方へ押圧附勢する弾性体44と、アクチュエータボックス42内に収容され、下端側が下部受台45を介して割りベース40に支持された圧電アクチュエータ46と、アクチュエータボックス42の上端部に螺着され、圧電アクチュエータ46の上端側を上部受台47及びスラストベアリング48を介して位置調整可能に支持する調整用袋ナット49等から成り、電圧の印加によって圧電アクチュエータ46が伸長すると、アクチュエータボックス42がベース押え41に支持された状態で弾性体44の弾性力に抗して上昇し、これに伴って弁体38がその弾性力により弁座31bから離座して流体通路31aを開放し、また、圧電アクチュエータ46への印加電圧を解除すると、圧電アクチュエータ46が伸長状態から元の長さ寸法に復帰すると共に、アクチュエータボックス42が弾性体44の弾性力により押し下げられ、これに伴って弁体38がダイヤフラム押え43により下方へ押圧されて弁座31bへ当座して流体通路31aを閉鎖するノーマルクローズ型の圧電素子駆動式バルブ30に構成されている。
【0006】
ところで、圧電素子を用いた圧電アクチュエータ46は、推力が大きくて応答性やコントロール特性に優れているが、圧電素子の変位量が非常に小さく、ストロークを大きくできないと云う問題がある。
【0007】
尚、前記問題を解決するため、圧電素子の変位量を梃子構造の変位拡大機構により拡大して弁棒に伝達するようにした圧電素子駆動式バルブが開発されている(例えば、特許文献2及び特許文献6参照)。
【0008】
しかし、前記圧電素子駆動式バルブは、圧電アクチュエータと弁棒との間に複雑な構造の変位拡大機構を組み込まなければならず、組み立て等に手数がかかると云う別の問題が発生することになる
【0009】
一方、圧電素子の変位量を大きくして圧電アクチュエータのストロークを大きくするには、二つの圧電アクチュエータを上下に積み重ねた構造の圧電素子駆動式バルブとすれば良いが、このような圧電素子駆動式バルブは未だ開発されていないのが現状である。
【0010】
また、二つの圧電アクチュエータをただ単に上下に積み重ねた圧電素子駆動式バルブにおいては、配線等に問題を生じることになる。
【0011】
尚、長尺状の圧電アクチュエータを作製すれば、ストロークを大きくすることができるが、圧電素子を積層するタイプの圧電アクチュエータにおいては、圧電素子を長尺化すると、圧電素子全体が反ったりすることがあり、精度の良い長尺状の圧電アクチュエータを作製することができないと云う問題がある。また、圧電素子を長尺化すると、横方向(軸線に直交する方向)からの外力に対して弱くなり、横方向からの衝撃により圧電素子が破損し易いと云う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−120832号公報
【特許文献2】特開2004−197754号公報
【特許文献3】特開2005−149075号公報
【特許文献4】特開2007−192269号公報
【特許文献5】特許2008−249002号公報
【特許文献6】特許2009−204045号公報
【特許文献7】特許2011−117499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、複雑な機構を用いることなく、圧電素子の変位量を大きくすることができると共に、配線等に支障を来たさない圧電素子駆動式バルブ及び圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、流体通路及び弁座を設けた本体と、本体の弁座に当離座して流体通路を開閉する弁体と、圧電素子の伸長を利用して前記弁体を開閉駆動する圧電アクチュエータとを備えた圧電素子駆動式バルブにおいて、少なくとも二つの圧電アクチュエータを、
両端面が対向する圧電アクチュエータのそれぞれの端面と当接するとともに、両圧電アクチュエータの配線を引き出し可能な
筒状のスペーサを介して一直線上に
配設したことに特徴がある。
【0015】
本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、少なくとも二つの圧電アクチュエータを一直線上に収容して支持する有底筒状のアクチュエータボックスを更に有し、当該アクチュエータボックスは、一方の圧電アクチュエータを収容する第1筒部と、他方の圧電アクチュエータを収容する第2筒部と、第1筒部と第2筒部とを着脱自在に連結して一方の圧電アクチュエータと他方の圧電アクチュエータとの間にスペーサの収容空間を形成する筒状の連結体とから成り、前記連結体に配線を引き出せる開口部を形成したことに特徴がある。
【0016】
本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、弁体が自己弾性復帰型の金属ダイヤフラムにより形成されていると共に、アクチュエータボックスが本体側に移動自在に支持されており、アクチュエータボックスの基端部周壁を通過してアクチュエータボックスの底壁上面に対向する上壁を有する割りベースと、アクチュエータボックスの底壁と割りベースの上壁との間に介設されてアクチュエータボックスを弁体側へ押圧付勢して弁体を弁座へ当座させる弾性体とを備え、圧電アクチュエータが伸長したときに弾性体の弾性力に抗してアクチュエータボックスを移動させて前記弁体が弁座から離座することに特徴がある。
【0017】
本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、スペーサが、周壁に配線を引き出せる開口部又は切欠部を備えた円筒状に形成されていることに特徴がある。
【0018】
本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、スペーサの周壁に、開口部又は切欠部を円周方向に一定の間隔で複数個形成したことに特徴がある。
【0019】
本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、スペーサが、配線を引き出せる円形の柵構造又は円形の格子構造に形成されていることに特徴がある。
【0021】
本発明に係る圧電素子駆動式バルブは、スペーサとアクチュエータボックスの第1筒部、第2筒部及び連結体とをそれぞれ同じインバー材により形成したことに特徴がある。
【0022】
本発明に係る流量制御装置は、上記した圧電素子駆動式バルブを備えていることに特徴がある。
【0023】
本発明に係る流量制御装置は、弁体より下流側の流体通路に配設されたオリフィスと、弁体とオリフィスの間の流体通路に配設された圧力センサと、圧力センサの検出値に基づいて一方の圧電アクチュエータ及び他方の圧電アクチュエータを制御する制御部とを更に有することに特徴がある。
【0024】
本発明に係る流量制御装置は、弁体の上流側に配設した熱式の流量センサによって圧電アクチュエータを制御することに特徴がある。
【発明の効果】
【0025】
本発明の圧電素子駆動式バルブは、少なくとも二つの圧電アクチュエータを、配線を引き出し可能なスペーサを介して上下一直線上に配設する構成としているため、圧電アクチュエータを一つだけ使用した従来の圧電素子駆動式バルブに比較して圧電素子の変位量を大きくすることができ、その結果、ストロークが大きくなって大流量の流体を制御することができる。
【0026】
本発明の圧電素子駆動式バルブは、二つの圧電アクチュエータをスペーサを介して配設する構成としているため、従来の圧電素子駆動式バルブのように圧電アクチュエータと弁棒との間に複雑な構造の変位拡大機構を組み込む必要もなく、組み立てを簡単且つ容易に行える。
【0027】
本発明の圧電素子駆動式バルブは、スペーサが配線を引き出し可能な構成となっているため、二つの圧電アクチュエータを配設しても配線が可能となる。
特に、開口部又は切欠部を複数個形成したスペーサ、或いは、円形の柵構造又は円形の格子構造に形成したスペーサを用いた場合には、配線をスペーサのどの方向へも引き出すことができ、至極便利である。
【0028】
本発明の圧電素子駆動式バルブは、スペーサと圧電アクチュエータを収容するアクチュエータボックスとを熱膨張係数の小さい同じ材料により形成しているため、熱によるスペーサとアクチュエータボックスの伸縮量を合わせることができ、その結果、上段の圧電アクチュエータの上端に隙間ができることがなく、圧電アクチュエータの圧電素子の伸長時にその発生力をアクチュエータボックスへ確実且つ良好に伝達するとこができ、高精度な流量制御を行える。
【0029】
本発明の流量制御装置は、少なくとも二つの圧電アクチュエータをスペーサを介して一直線上に配設して成る圧電素子駆動式バルブを備えているため、大流量の流体を高精度で制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置の断面図である。
【
図2】圧電素子駆動式バルブに用いる割りベースの平面図である。
【
図4】圧電素子駆動式バルブに用いるアクチュエータボックスの分解断面図である。
【
図5】圧電素子駆動式バルブに用いるスペーサの斜視図である。
【
図9】従来の圧電素子駆動式バルブを備えた流量制御装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る圧電素子駆動式バルブ1を備えた流量制御装置を示し、当該流量制御装置は、圧電素子駆動式バルブ1と、圧電素子駆動式バルブ1の本体7の上流側にボルト(図示省略)により締め付け固定され、本体7の流体通路7aに連通する入口側流体通路2aを形成した入口側ブロック2と、本体7と入口側ブロック2との間に介設されたシール用のガスケット3と、圧電素子駆動式バルブ1の本体7の下流側にボルト(図示省略)により締め付け固定され、本体7の流体通路7aに連通する出口側流体通路4aを形成した出口側ブロック4と、本体7と出口側ブロック4との間に介設された流量制御用のガスケット型オリフィス5と、圧電素子駆動式バルブ1の本体7に配設され、ガスケット型オリフィス5の上流側の圧力を検出する圧力センサ6と、圧電素子駆動式バルブ1を制御する制御部(図示省略)等から構成されており、ガスケット型オリフィス5の上流側圧力によりオリフィス通過流量を演算しながら圧電素子駆動式バルブ1の開閉によりオリフィス通過流量を制御する圧力式の流量制御装置となっている。
【0032】
尚、入口側ブロック2、出口側ブロック4、ガスケット型オリフィス5、圧力センサ6及び制御部(図示省略)は、従来公知のものと同様構造に構成されているため、ここではその詳細な説明を省略する。
また、
図1に示す圧電素子駆動式バルブ1を備えた流量制御装置は、装置自体を縦向きに配置して使用している。
【0033】
前記圧電素子駆動式バルブ1は、
図1に示す如く、本体7と、弁体8と、押えアダプター9と、割りベース10と、ベース押え11と、有底筒状のアクチュエータボックス12と、ダイヤフラム押え13と、弾性体14と、下部受台15と、上下二段の二つの圧電アクチュエータ16と、スペーサ17と、上部受台18と、スラストベアリング19と、調整用袋ナット20と、ロックナット21等を備えており、電圧の印加によって二つの圧電アクチュエータ16が伸長すると、アクチュエータボックス12がベース押え11に支持された状態で弾性体14の弾性力に抗して上昇し、これに伴って弁体8がその弾性力により弁座7cから離座して流体通路7aを開放し、また、二つの圧電アクチュエータ16への印加電圧を解除すると、二つの圧電アクチュエータ16が伸長状態から元の長さ寸法に復帰すると共に、アクチュエータボックス12が弾性体14の弾性力により押し下げられ、これに伴って弁体8がダイヤフラム押え13により下方へ押圧されて弁座7cへ当座して流体通路7aを閉鎖するノーマルクローズ型の圧電素子駆動式バルブ1に構成されている。
【0034】
具体的には、前記本体7は、ステンレス材等の金属材によりブロック状に形成されており、流体通路7aと、流体通路7aに連通して弁室の一部を形成する上方が開放された凹部7bと、弁室の底面に形成された環状の弁座7cとを備えている。
【0035】
前記弁体8は、耐久性、耐食性、耐熱性に優れた金属材により中央部が僅かに上方へ膨出した逆皿型に形成された自己弾性復帰型の金属ダイヤフラムから成り、弁座7cと対向するように凹部7b内へ配置されてその外周縁部が押えアダプター9等により本体7側へ気密状に保持固定され、下方への押圧により弁座7cへ当座すると共に、押圧力の喪失時にその弾性力により弁座7cから離座するようになっている。
尚、金属ダイヤフラムの材質は、ステンレス鋼やインコネル、その他の合金鋼であっても良く、また、金属ダイヤフラムは、1枚の金属ダイヤフラムを使用するか、或いは、複数枚のダイヤフラムを積層した金属ダイヤフラムであっても良く、更に、金属ダイヤフラムの形状は、平板状であっても良い。
【0036】
前記押えアダプター9は、ステンレス材等の金属材により環状に形成されており、本体7の凹部7b内に挿入されて弁体8(金属ダイヤフラム)の外周縁部を本体7側へ気密状に押圧固定するものである。
【0037】
前記割りベース10は、
図2及び
図3に示す如く、ステンレス材等の金属材により形成された半割り状の一対の割りベース片10′から成り、各割りベース片10′をアクチュエータボックス12の下端部(基端部)に両側から対向状に組み付け、この状態で各割りベース片10′とアクチュエータボックス12の下端部とを本体7の凹部7b内に挿入すると共に、当該凹部7b内にベース押え11の下端部を挿入し、ベース押え11をボルト22により本体7へ締め付け固定することによって、押えアダプター9を押圧しつつ本体7の凹部7bに保持固定されている。
また、割りベース10を構成する二つの割りベース片10′は、短い円筒部10aと、円筒部10aの下端に連設されて本体7の凹部7b内に挿入される鍔部10bと、円筒部10aの上端に連設された上壁10cと、上壁10cに形成されてアクチュエータボックス12の周壁の一部が挿通される挿通孔10dと、上壁10cに連設されてアクチュエータボックス12の下端部周壁に形成したガイド穴12dに挿通され、アクチュエータボックス12の底壁12c上面に対向する嵌合部10eとをそれぞれ備えている。
更に、割りベース10の嵌合部10eとアクチュエータボックス12の底壁12cとの間には、アクチュエータボックス12を下方へ押圧附勢してダイヤフラム押え13を介して弁体8の中央部分を弁座7cへ当座させる複数枚の皿バネから成る弾性体14が介設されている。
【0038】
前記ベース押え11は、ステンレス材等の金属材により筒状に形成されており、下端部外周面には、本体7の凹部7bの内周縁部に対向するフランジ部11aが形成されていると共に、内周面には、複数本のOリング23が一定間隔毎に嵌着されている。
このベース押え11は、ボルト22により本体7側へ起立姿勢で固定されており、アクチュエータボックス12を本体7側へ昇降自在に支持すると共に、弁体8の外周縁部、押えアダプター9及び割りベース10の鍔部10bを本体7側へ押圧固定するためのものである。
【0039】
前記アクチュエータボックス12は、
図1に示す如く、熱膨張係数の小さい材料(好ましくは、2×10
−6/K以下)により有底筒状に形成されており、二つの圧電アクチュエータ16、弾性体14、下部受台15及びスペーサ17を一直線上に収容支持した状態でその下端部がベース押え11にOリング23を介して昇降自在に挿入支持されている。
【0040】
即ち、前記アクチュエータボックス12は、下段(一方)の圧電アクチュエータ16、弾性体14及び下部受台15を収容する有底筒状の第1筒部12Aと、上段(他方)の圧電アクチュエータ16を収容する第2筒部12Bと、第1筒部12Aと第2筒部12Bとを着脱自在に連結して下段(一方)の圧電アクチュエータ16と上段(他方)の圧電アクチュエータ16との間にスペーサ17等の収容空間を形成する筒状の連結体12Cとを備えており、弁体8の中央部を下方へ押し下げる作用をするものである。
【0041】
前記第1筒部12Aは、
図4に示す如く、インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー等のインバー材により有底筒状に形成されており、下段の圧電アクチュエータ16を収納し且つ下端部がベース押え11内にOリング23を介して上下方向へ摺動自在に挿入された筒状の大径部12aと、大径部12aの下端に一体的に設けられ、弾性体14及び下部受台15を収納する筒状の小径部12bとから成る。
また、小径部12bの内方には、底壁12cが一体的に設けられており、底壁12cの上方空間に弾性体14及び下部受台15が収納され、底壁12cの下方空間にダイヤフラム押え13が挿入固定されている。
更に、大径部12aと小径部12bの境界部分の周壁には、割りベース10の嵌合部10eが挿入される縦長のガイド穴12dが対向状に形成されている。
そして、大径部12aの上端部外周面には、連結体12Cが着脱自在に螺着される雄ネジ12eが形成されている。
【0042】
前記第2筒部12Bは、
図4に示す如く、インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー等のインバー材により筒状に形成されており、内方に上段の圧電アクチュエータ16を収納するものである。
この第2筒部12Bの下端部外周面には、連結体12Cが着脱自在に螺着される雄ネジ12fが形成されていると共に、第2筒部12Bの上端部外周面には、調整用袋ナット20及びロックナット21が上下方向へ移動調整自在に螺着される雄ネジ12fが形成されている。
【0043】
前記連結体12Cは、
図4に示す如く、インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー等のインバー材により筒状に形成されており、第1筒部12Aと第2筒部12Bとを連結して内方にスペーサ17やリード端子16c、コネクタ(図示省略)等を収容するものである。
この連結体12Cの両端部内周面には、第1筒部12Aの雄ネジ12e及び第2筒部12Bの雄ネジ12fにそれぞれ着脱自在に螺着される雌ネジ12gが形成されていると共に、周壁には、配線を引き出せる開口部12hが形成されている。
尚、
図1及び
図4においては、連結体12Cの開口部12hを一つとしているが、連結体12Cの周壁に円周方向に沿って開口部12hを一定の間隔で複数個形成しても良い。この場合、配線を連結体12Cのどの方向へも引き出すことができる。
【0044】
前記上下二段の圧電アクチュエータ16は、
図1に示す如く、何れも一端部が閉塞された金属製のケーシング16a内に積層型の圧電素子(図示省略)を収容し、ケーシング16aの他端部を段付きのベース16bで密封状に封止すると共に、当該ベース16bからリード端子16cが突出した状態となっており、圧電素子の伸縮に伴ってケーシング16aの先端部に設けた半球状の変位部16dが圧電アクチュエータ16の軸心に沿って往復移動する積層型の圧電アクチュエータ16に構成されている。
【0045】
下段の圧電アクチュエータ16は、
図1に示す如く、その半球状の変位部16dが下を向く状態でアクチュエータボックス12の第1筒部12A内に収容されており、その下端部(変位部16d)が割りベース10の嵌合部10eに下部受台15を介して支持されていると共に、リード端子16cがスペーサ17内に位置している。
尚、下部受台15は、ステンレス材等の金属材により円盤状に形成されており、その上面中心部には、下段の圧電アクチュエータ16の半球状の変位部16dが位置決めされた状態で嵌合される円錐状の受溝が形成されている。
【0046】
一方、上段の圧電アクチュエータ16は、
図1に示す如く、その半球状の変位部16dが上を向く状態でアクチュエータボックス12の第2筒部12B内に収容されており、その下端部(段付きのベース16b)がスペーサ17を介して下段の圧電アクチュエータ16に積み重ねられていると共に、その上端部(変位部16d)が第2筒部12Bの上端部に上下方向へ移動調整自在に螺着した調整用袋ナット20に上部受台18及びスラストベアリング19を介して位置調整可能に支持されている。
また、上段の圧電アクチュエータ16のリード端子16cは、下段の圧電アクチュエータ16のリード端子16cと同様にスペーサ17内に位置している。
尚、上部受台18は、ステンレス材等の金属材により円盤状に形成されており、その下面中心部には、上段の圧電アクチュエータ16の半球状の変位部16dが位置決めされた状態で嵌合される円錐状の受溝が形成されている。
【0047】
而して、前記上下二段の圧電アクチュエータ16は、電圧の印加により上方へ伸長してアクチュエータボックス12を弾性体14の弾性力に抗して上方へ押し上げるようになっている。
【0048】
前記スペーサ17は、熱によるスペーサ17とアクチュエータボックス12の伸縮量を合わせるため、アクチュエータボックス12と同じように熱膨張係数の小さい材料(好ましくは、2×10
−6/K以下)により形成されている。
【0049】
即ち、スペーサ17は、
図5に示す如く、インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー等のインバー材により円筒状に形成されており、その周壁には、配線を引き出せる四角形状の開口部17aが一つ形成されている。
また、スペーサ17の上端面及び下端面には、上段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16b及び下段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16bに緊密に嵌合する段付き部17bが形成されており、スペーサ17の上端部及び下端部を上下二段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16bに嵌め合せたときに、スペーサ17と上下二段の圧電アクチュエータ16とが軸心同士が一致するように位置決めされて一直線上に配置されるようになっている。
【0050】
図6はスペーサ17の他の例を示し、当該スペーサ17は、周壁に円周方向に沿って開口部17aを一定の間隔で複数個(この例では、4個)形成したものであり、その他の構造は
図5に示すスペーサ17と同じに構造に構成されている。
このスペーサ17は、複数個の開口部17aを備えているため、スペーサ17の開口部17aと連結体12Cの開口部12hとが合致し易くなると共に、配線をスペーサ17のどの方向へも引き出すことができる。
【0051】
尚、上記の実施形態においては、スペーサ17の周壁に開口部17aを形成したが、他の実施形態においては、図示していないが、スペーサ17の上端部周壁又は下端部周壁に配線引き出し用の切欠部を一つ又は複数個形成するようにしても良い。
【0052】
図7はスペーサ17の更に他の例を示し、当該スペーサ17は、インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー等のインバー材により円形の柵構造に構成されており、配線をスペーサ17のどの方向へも引き出すことができる。
このスペーサ17は、環状の上部部材17Aと、上部部材17Aに対向状に配置された環状の下部部材17Bと、上部部材17Aと下部部材17Bとを連結する複数本の棒状連結部材17Cとを備えている。
また、スペーサ17の上部部材17Aの上面及び下部部材17Bの下面には、上段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16b及び下段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16bに緊密に嵌合する段付き部17bが形成されており、スペーサ17の上端部及び下端部を上下二段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16bに嵌め合せたときにスペーサ17と上下二段の圧電アクチュエータ16とが位置決めされて一直線上に配置されるようになっている。
【0053】
図8はスペーサ17の更に他の例を示し、当該スペーサ17は、インバー、スーパーインバー、ステンレスインバー等のインバー材により円形の格子構造に構成されており、配線をスペーサ17のどの方向へも引き出すことができる。
このスペーサ17は、環状の上部部材17Aと、上部部材17Aに対向状に配置された環状の下部部材17Bと、上部部材17Aと下部部材17Bとを連結する格子状連結部材17Dとを備えている。
また、スペーサ17の上部部材17Aの上面及び下部部材17Bの下面には、上段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16b及び下段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16bに緊密に嵌合する段付き部17bが形成されており、スペーサ17の上端部及び下端部を上下二段の圧電アクチュエータ16の段付きのベース16bに嵌め合せたときにスペーサ17と上下二段の圧電アクチュエータ16とが位置決めされて一直線上に配置されるようになっている。
【0054】
而して、前記圧電素子駆動式バルブ1によれば、制御部(図示省略)から上下二段の圧電アクチュエータ16に駆動電圧が印加されると、上下二段の圧電アクチュエータ16は印加電圧に応じて設定値だけ上方へ伸長する。
これにより、大きな押し上げ力がスペーサ17、上部受台18、スラストベアリング19及び調整用袋ナット20を介してアクチュエータボックス12に働き、当該アクチュエータボックス12がベース押え11にその軸心を保持された状態で弾性体14の弾性力に抗して上記設定値だけ上昇する。その結果、弾性体14がその弾性力によって弁座7cから離座し、圧電素子駆動式バルブ1は開弁状態となる。
尚、圧電素子駆動式バルブ1の開度は、ピエゾ駆動素子14への印加電圧を変動することにより調節されている。
【0055】
一方、上下二段の圧電アクチュエータ16への印加電圧を解除すると、上下二段の圧電アクチュエータ16が伸長状態から元の長さ寸法に復帰すると共に、弾性体14の弾性力によりアクチュエータボックス12が押し下げられ、アクチュエータボックス12の下端に設けたダイヤフラム押え13により弁体8の中央部分が弁座7c側へ押し下げられて弁座7cへ当座し、圧電素子駆動式バルブ1は閉弁状態となる。
【0056】
前記圧電素子駆動式バルブ1は、二つの圧電アクチュエータ16を、配線を引き出し可能なスペーサ17を介して上下一直線上に積み重ねる構成としているため、圧電素子の変位量を大きくすることができ、その結果、ストロークが大きくなって大流量の流体を制御することができる。
また、圧電素子駆動式バルブ1は、二つの圧電アクチュエータ16をスペーサ17を介して積み重ねるだけで良いため、組み立てを簡単且つ容易に行える。
更に、圧電素子駆動式バルブ1は、スペーサ17が配線を引き出し可能な構成となっているため、二つの圧電アクチュエータ16を積み重ねても配線が可能となる。
そして、圧電素子駆動式バルブ1を備えた流量制御装置は、圧電アクチュエータ16を上下に積み重ねているため、大流量の流体を高精度で制御することができる。
【0057】
尚、上記の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を圧力制御式の流量制御装置に用いるようにしたが、他の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を熱式の流量センサによる熱式の流量制御装置に用いるようにしても良い。
【0058】
また、上記の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1をノーマルクローズ型としたが、他の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1をノーマルオープン型としても良い。
【0059】
更に、上記の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1の弁体8に金属ダイヤフラムを使用するようにしたが、他の実施形態においては、金属ダイヤフラム以外の弁体8を使用するようにしても良い。
【0060】
更に、上記の実施形態においては、二つの圧電アクチュエータ16をスペーサ17を介して上下一直線上に積み重ねたが、他の実施形態においては、三つ以上の圧電アクチュエータ16を、配線を引き出し可能なスペーサ17を介して上下一直線上に積み重ねても良い。この場合、各圧電アクチュエータ16の駆動力が各スペーサ17を介して他の圧電アクチュエータ16へ伝わるようにすることは勿論である。また、アクチュエータボックス12は、各スペーサ17に対向する部分で三つ以上に分割し、この分割した三つ以上の部材を連結体12Cを介して着脱自在に連結できるようにすることは勿論である。
【0061】
更に、上記の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を備えた流量制御装置を縦向きに配置して使用したが、他の実施形態においては、圧電素子駆動式バルブ1を備えた流量制御装置を横向き(水平姿勢)に配置して使用しても良い。この場合、二つの圧電アクチュエータ16は、スペーサ17を介して前後又は左右に一直線上に配設されることになる。
【符号の説明】
【0062】
1は圧電素子駆動式バルブ、2は入口側ブロック、2aは入口側流体通路、3はガスケット、4は出口側ブロック、4aは出口側流体通路、5はガスケット型オリフィス、6は圧力センサ、7は本体、7aは流体通路、7bは凹部、7cは弁座、8は弁体(金属ダイヤフラム)、9は押えアダプター、10は割りベース、10′は割れベース片、10aは短い円筒部、10bは鍔部、10cは上壁、10dは挿通孔、10eは嵌合部、11はベース押え、11aはフランジ部、12はアクチュエータボックス、12Aは第1筒部、12Bは第2筒部、12Cは連結体、12aは大径部、12bは小径部、12cは底壁、12dはガイド穴、12eは下部筒部の雄ネジ、12fは上部筒部の雄ネジ、12gは雌ネジ、12hは開口部、13はダイヤフラム押え、14は弾性体、15は下部受台、16は圧電アクチュエータ、16aはケーシング、16bはベース、16cはリード端子、16dは変位部、17はスペーサ、17aは開口部、17bは段付き部、17Aは環状の上部部材、17Bは環状の下部部材、17Cは棒状連結部材、17Dは格子状連結部材、18は上部受台、19はスラストベアリング、20は調整用袋ナット、21はロックナット、22はボルト、23はOリング、24は制御部。