(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術によると、被充填タンクに高圧ガスを充填するときには、被充填タンク内のガス圧力が上昇するに伴って、被充填タンク内のガス温度も上昇する。この結果、被充填タンク内の圧力は、充填されたガスの量による圧力上昇に加え、ガス温度の上昇によっても圧力が上昇する。
【0005】
このため、例えば被充填タンク内のガス圧力が所定の目標圧力となるまでガス充填を行なった場合でも、その後の放熱によって被充填タンク内のガスの温度が低下したときには、被充填タンク内の圧力が温度変化に伴って低下する。この結果、本来であればガス充填を更に行うことができるにもかかわらず、それ以前にガス充填作業が終了される場合があり、当該ガスを燃料としたときの走行可能距離が温度上昇分だけ減じられてしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、被充填タンク内に充填するガスの供給量を温度変化に拘わらずほぼ一定に保つことができ、ガス充填を効率的に行うことができるようにしたガス充填装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発
明は、ガスを燃料として走行する車両に搭載された被充填タンクにガスを充填するためのガス充填経路と、前記ガス充填経路のガスの流れを制御する制御機器と、前記ガス充填経路先端に設けられ、前記被充填タンクの充填口に着脱可能に構成され、前記充填口に接続された状態で前記ガス充填経路から前記被充填タンクへのガス供給を可能にする充填カップリングと、前記被充填タンク内のガスの温度を検知するための温度センサと、前記被充填タンク内のガスの圧力を検知するための圧力センサと、前記
被充填タンク内へのガス充填を終了する際の圧力としての目標圧力を記憶する記憶部を有し、前記圧力センサにより検知された前記ガスの圧力が前記記憶部に記憶された目標圧力に達した場合にガス充填を終了させる制御部と、を備え
たガス充填装置に適用される。
【0008】
この上で、請求項1の発明によると、前記制御部は、前記被充填タンクへのガスの充填中に前記温度センサにより検出された前記被充填タンク内のガスの温度に基づき設定される被充填タンク内へのガス充填を終了する際の目標圧力を繰り返し演算し
、繰り返し演算された目標圧力を前記記憶部に
更新して記憶させ、前記圧カセンサにより検出されるガスの圧力が前記記憶部に記憶されている前記目標圧力よりも低い場合に前記制御機器を制御することにより前記被充填タンクへのガスの充填を行い、前記圧力センサにより検出されるガスの圧力が前記記憶部に記憶されている前記目標圧力以上となった場合に前記制御機器を制御することにより前記被充填タンクへのガスの充填を終了させることを特徴としている。
【0009】
一方、請求項2の発明によると、前記制御部は、前記被充填タンクへのガスの充填中に前記圧力センサおよび温度センサにより検知されるガスの圧力および温度から、前記被充填タンク内のガスの温度が予め定められた温度
に変化した場合に
想定される前記被充填タンク内の圧力を繰り返し演算し、前記
繰り返し演算された圧力が前記記憶部に記憶されている目標圧力よりも低い場合には前記制御機器を制御することにより前記被充填タンクへのガスの充填を行い、前記
繰り返し演算され
た圧力が前記記憶部に記憶されている目標圧力以上となった場合に前記制御機器を制御することにより前記被充填タンクへのガスの充填を終了させることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、ガスを燃料として走行する車両に搭載された被充填タンクにガスを充填するためのガス充填方法であって、前記被充填タンク内のガスの温度を検知する工程と、前記被充填タンク内のガスの圧力を検知する工程と、前記工程で検知されたガスの圧力が目標圧力に達した場合にガス充填を停止させる工程と、を備えてなり、前記被充填タンクへのガスの充填中に前記被充填タンク内のガスの温度に基づき設定される被充填タンク内に充填すべき圧力を繰り返し演算する工程と、
繰り返し演算された圧力を目標圧力として
更新して記憶する工程と、前記記憶された前記目標圧力よりも前記被充填タンク内のガス圧力が低い場合に前記被充填タンクへのガスの充填を許可する工程と、前記被充填タンク内のガス圧力が前記目標圧力以上となった場合に前記被充填タンクへのガスの充填を停止させる工程と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、ガスを燃料として走行する車両に搭載された被充填タンクにガスを充填するためのガス充填方法であって、前記被充填タンク内のガスの温度を検知する工程と、前記被充填タンク内のガスの圧力を検知する工程と、前記被充填タンク内へのガス充填を終了する際の圧力として予め定められた目標圧力を記憶する工程と、前記工程で検知されたガスの圧力が目標圧力に達した場合にガス充填を停止させる工程と、を備えてなり、前記被充填タンクへのガスの充填中に検知される前記ガスの圧力および温度から、前記被充填タンク内のガスの温度が予め定められた温度
に変化した場合に
想定される前記被充填タンク内の圧力を繰り返し演算する工程と、前記
繰り返し演算され
た圧力が予め定められた前記目標圧力よりも低い場合に前記被充填タンクへのガスの充填を許可する工程と、前記
繰り返し演算され
た圧力が前記目標圧力以上となった場合に前記被充填タンクへのガスの充填を停止させる工程と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く、請求項1の発明によれば、ガス充填後において、所定の温度に温度が低下した際の被充填タンク内のガス圧力が所定圧力になるように、被充填タンクにガスを充填している際の目標となるガスの圧力(目標圧力)を繰り返し演算することができ、被充填タンク内のガス圧力が前記目標圧力となった場合にガス充填を終了する。このため、被充填タンクへのガス充填直後においては圧力が所定圧力よりも高いとしても、被充填タンク内のガス温度が所定温度に低下した場合には当該所定圧力となる。よって、被充填タンクへのガス充填作業を、より目標とする圧力状態となるまで続けることができる。請求項3の発明でも、これと同様な効果を奏する。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記被充填タンクへのガスの充填中に圧力センサおよび温度センサにより検知されるガスの圧力および温度から、被充填タンク内のガスの温度が予め定められた温度となった場合における被充填タンク内の圧力を繰り返し演算し、当該圧力が予め定められた目標圧力(固定値)よりも低い場合には前記制御機器を制御することにより前記被充填タンクへのガスの充填を行い、当該圧力が目標圧力以上となった場合に前記制御機器を制御することにより前記被充填タンクへのガスの充填を終了する。このため、被充填タンクへのガス充填直後においてはガスの圧力が所定圧力よりも高いとしても、被充填タンク内のガス温度が所定温度に低下した場合には当該所定圧力(目標圧力)となる。よって、被充填タンクへのガス充填をより目標とする圧力まで充填することができる。請求項4の発明でも、これと同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態によるガス充填装置を、添付図面の
図1ないし
図4に従って詳細に説明する。
【0016】
ここで、
図1ないし
図3は本発明の第1の実施の形態を示している。
図1において、燃料の供給所等に設置されるガス充填装置としての充填ステーション1が示されている。この充填ステーション1は、例えばディスペンサー2を有している。
【0017】
このディスペンサー2内および/またはディスペンサー2の地下部分には、ガス充填経路としての供給配管3が設けられている。この供給配管3は、その一端が例えば水素ガスからなる燃料を貯える貯蔵タンク100(水素ガス源)に連通するように接続されている。供給配管3の他端には、例えば可撓性ホース等からなる充填ホース4を介して充填カップリング5が接続されている。
【0018】
ディスペンサー2は、充填カップリング5、調整弁8、遮断弁9、冷却器10、流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15、充填開始スイッチ16、充填停止スイッチ17、脱圧弁20および制御回路21等を含んで構成されている。調整弁8および遮断弁9は、供給配管3を流れるガスの流量及び圧力を制御する制御機器を構成している。流量計13、圧力センサ14および燃料温度センサ15は、供給配管3を流れるガスの流量、圧力および温度を計測する計測機器を構成している。
【0019】
充填カップリング5は、後述する車両22の燃料タンク23に、例えば水素ガスからなる燃料を供給するため後述の充填口23Aに気密状態で着脱可能に接続されるように構成されている。充填カップリング5には、ガスの充填中にガスの圧力によって充填口23Aから誤って外れることがないように、燃料タンク23の充填口23Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)が設けられている。
【0020】
ディスペンサー2側には、例えば燃料(水素ガス)の非充填時に充填カップリング5が取外し可能に収納されるカップリング収納部6が設けられている。このカップリング収納部6は、充填カップリング5がガス充填を終了して戻される場合に、当該充填カップリング5を収納するものである。
【0021】
車両22の燃料タンク23に燃料を充填するときには、
図1中に二点鎖線で示す如く、充填カップリング5がカップリング収納部6から取外されて車両22(燃料タンク23)の充填口23Aに連結して接続される。このように充填カップリング5を燃料タンク23に接続した状態で、貯蔵タンク100内の燃料(水素ガス)は、供給配管3、充填ホース4および充填カップリング5等を通じて後述の如く車両22の燃料タンク23に充填される。
【0022】
ディスペンサー2側には、それぞれ供給配管3の途中に位置して、例えば手動操作により開,閉される入口弁7と、該入口弁7の下流側に接続され後述の制御回路21によって開,閉されることにより供給配管3を流れる燃料の流量を調整可能に制御する調整弁8と、該調整弁8の下流側に接続された電磁弁または空圧駆動弁などの自動弁からなる遮断弁9とが設けられている。なお、入口弁7は必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを除いてもよい。また、供給配管3の上流側から下流側に向けて設けられている流量計13、調整弁8、遮断弁9の取り付けの順番は、
図1中に示した順番に限定されるものではない。
【0023】
遮断弁9は、供給配管3の途中部位(調整弁8と冷却器10との間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁9は、後述する制御回路21からの制御信号で開,閉されることにより、供給配管3内を流れる燃料の流通を許したり、または遮断したりする。即ち、制御回路21は、充填カップリング5を介して車両22の燃料タンク23に燃料を充填、または充填を停止(終了)するときに、調整弁8と遮断弁9との開,閉弁制御を行うものである。
【0024】
冷却器10は供給配管3内を流れる燃料を冷却する装置である。即ち、該冷却器10は、ガスが充填される車両22の燃料タンク23の温度上昇を防止するために、供給配管3の途中位置で水素ガス(燃料)を冷却するように配設されている。冷却器10は、遮断弁9と充填カップリング5との間に位置する供給配管3の途中部位に設けられた熱交換器11と、該熱交換器11に接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構(図示せず)が搭載されたチラーユニット12とを含んで構成されている。
【0025】
チラーユニット12は、冷却液(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を熱交換器11との間に循環させる。これにより、冷却器10は、供給配管3内を流れる燃料と前記冷却液との間で熱交換を行い、充填カップリング5に供給される燃料の温度を規定温度(例えば、−20℃または−40℃)まで低下させる。
【0026】
ディスペンサー2内には、供給配管3の途中で被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計13が設けられている。この流量計13は、例えば入口弁7と調整弁8との間で供給配管3内を流れる燃料、即ち水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測した流量に比例した数の流量パルスを制御回路21へと出力する。これによって、制御回路21は、車両22の燃料タンク23に対する燃料(水素ガス)の充填量を演算により求めることができ、車両22に対する燃料の払出し量(給油量に相当)を表示器(図示せず)等で表示し、例えば顧客等に表示内容を報知することができる。
【0027】
圧力センサ14は、被充填タンクである燃料タンク23内または、これにほぼ相当する配管途中のガスの圧力Ps(即ち、供給所で充填されるガス圧力としてのステーション圧力)を検知するセンサである。ここで、圧力センサ14は、充填カップリング5の近傍で供給配管3内の圧力Psを測定し、測定した圧力Psに応じた検出信号を制御回路21へと出力する。
【0028】
換言すると、圧力センサ14は、燃料タンク23内のガス圧力(圧力Ps)を検知または検出するために設けられたものであり、燃料タンク23内のガス圧力を直接検知するように燃料タンク23に配置することでもよいが、必ずしもそのように配置しなければならないものではない。即ち、燃料タンク23内のガス圧力の変動に応じ変動する供給配管3内の圧力Psを圧力センサ14で検出することにより、燃料タンク23内のガス圧力を監視することができ、よって、本実施の形態の圧力センサ14は供給配管3内の圧力Psを検出するようにしている。必要ならば、圧力センサ14による圧力検出(測定)値を基にして、燃料タンク23内の実際のガス圧力を計算するのに補正係数を使用してもよい。
【0029】
また、供給配管3の途中には、冷却器10の熱交換器11と圧力センサ14との間に位置して燃料温度センサ15が設けられている。この燃料温度センサ15は、供給配管3内を流れる燃料の温度を検出し、その検出信号を制御回路21へと出力する。なお、圧力センサ14と燃料温度センサ15との供給配管3に設けられる位置は逆にしても良い。
【0030】
ディスペンサー2には、充填開始スイッチ16と充填停止スイッチ17とからなる操作部18が設けられている。操作部18の充填開始スイッチ16は、例えば燃料供給所の作業員等が手動で操作可能な操作スイッチで、ガスの充填を開始する場合に操作される。また、充填停止スイッチ17は、ガス充填中にガスの充填を停止する場合に操作される。そして、充填開始スイッチ16と充填停止スイッチ17とは、操作状態に応じた信号を制御回路21にそれぞれ出力し、制御回路21は、これらの信号に応じて電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる遮断弁9を開または閉とする。
【0031】
遮断弁9と充填ホース4との間に位置(本実施形態では遮断弁9と冷却器10との間に位置)する供給配管3の途中には、例えば充填カップリング5側からガス圧力を脱圧するための脱圧配管19が分岐して設けられている。脱圧配管19の途中には、例えば電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる脱圧弁20が設けられている。この脱圧弁20は、後述の如く充填カップリング5を用いたガス充填作業が完了し、遮断弁9が閉弁されたときに、制御回路21からの信号により開弁制御される。そして、脱圧弁20が開弁したときには、脱圧配管19が大気に開放されることにより、充填カップリング5側のガスが外部に放出されて充填カップリング5の圧力が大気圧に減圧される。
【0032】
制御回路21は、調整弁8および遮断弁9等の制御機器を制御する制御部を構成している。制御回路21は、例えばタイマ機能と記憶部(図示せず)等とを備えたマイクロコンピュータ等の制御装置として構成されている。制御回路21の前記記憶部には、例えば
図2に示す充填制御処理用のプログラム等が格納され、制御回路21は、後述の如く燃料タンク23に対する燃料(例えば、水素ガス)の充填制御処理を行うものである。また、制御回路21の前記記憶部には、後述の数1式による演算式、許容最大圧力Pmax (例えば、82MPa)、規定圧力C等が更新可能に格納されている。ここで、許容最大圧力Pmaxとは、燃料タンク23自体の耐え得る上限圧力、ディスペンサー2の各機器の許容上限圧力、及び、ディスペンサー2自体が充填し得る上限圧力のうち、一番低い上限圧力を意味している。また、規定圧力Cとは、車両22との後述の通信により取得される当該車両22の燃料タンク23内のガスの温度等の燃料供給に関する情報が、通信不良などの何らかの影響によりディスペンサー2(制御回路21)で把握することができない場合に、当該車両22に充填すべき目標圧力として設定される圧力のことである。
【0033】
制御回路21の入力側には、流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15、充填開始スイッチ16、充填停止スイッチ17等が接続されると共に、後述のタンク内ガス温度センサ24が通信回線用の受信器25等を介して接続されている。制御回路21の出力側には、調整弁8、遮断弁9、チラーユニット12、前記表示器および脱圧弁20等が接続されている。ここで、本実施の形態における無線による通信の一例として、車両22の充填口23Aに送信用のコネクタを設けると共に、充填カップリング5の先端に受信用のコネクタを設け、充填カップリング5を充填口23Aに接続することにより両コネクタが近接して通信可能となるようにすることが考えられる。なお、車両22との通信は無線通信に限られるものではなく、有線による通信を行うようにしてもよい。
【0034】
そして、制御回路21は、
図1中に二点鎖線で示す如く、車両22の燃料タンク23の充填口23Aに充填カップリング5を接続した状態で、例えば操作部18の充填開始スイッチ16が閉成(ON)操作されたときに、調整弁8と遮断弁9に開弁信号を出力して調整弁8と遮断弁9を開弁させる。これにより、貯蔵タンク100内の水素ガスによるガスの充填作業が開始される。また、制御回路21は、充填開始スイッチ16が操作された場合、冷却器10を通常の状態で作動させる。一方、ガスの充填を行っていないときに、制御回路21は、冷却器10を停止状態に保持するか、または少量の前記冷却液を循環させる予備冷却状態を保持するように制御する。
【0035】
また、制御回路21は、例えば流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15の測定結果を監視しつつ、調整弁8の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、供給配管3内に供給されるガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0036】
このとき、制御回路21は、流量計13からの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算し、燃料の充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または圧力センサ14により検出したガスの圧力が予め設定された目標圧力(目標充填圧)に達したときに、遮断弁9を閉弁して燃料の充填を停止する。また、充填停止スイッチ17が操作された場合には、例えばガスの充填量や圧力が目標に達していなくても、充填動作を強制的に停止すべく遮断弁9が制御回路21からの信号により閉弁される。
【0037】
水素ガスを燃料として走行する車両22は、一例として
図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両22には、例えば水素ガスまたはCNG(圧縮天然ガス)等のガスを燃料として駆動力を発生する原動機としてのエンジンあるいは燃料電池と電動モータ等の駆動装置(図示せず)と、
図1中に点線で示す燃料タンク23とが設けられている。この燃料タンク23は、水素ガスが充填される被充填タンクを構成し、例えば車両22の後部側に搭載されている。なお、燃料タンク23は、車両22の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成であってもよい。
【0038】
燃料タンク23には、
図1中に二点鎖線で示すように、充填カップリング5が着脱可能に取付けられる充填口23Aが設けられている。そして、車両22の燃料タンク23内には、充填カップリング5が充填口23Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガス等のガス充填が行われる。この間、充填カップリング5は前記ロック機構により充填口23Aに対して不用意に外れることがないようにロックされている。
【0039】
車両22には、燃料タンク23内の燃料(即ち,水素ガス)の温度Ttを検知するために、タンク内ガス温度センサ24(温度センサ)が設けられている。タンク内ガス温度センサ24は、燃料タンク23内のガスの温度Ttを検出すると共に、その検出信号を無線通信等の送信器(図示せず)を介して制御回路21へと出力する。このため、制御回路21の入力側には、無線通信等の受信器25が設けられている。
【0040】
タンク内ガス温度センサ24は、燃料タンク23内または、その近傍に配置するのが好ましい。しかし、本発明にあっては、タンク内ガス温度センサ24により燃料タンク23内のガス温度を検出できればよいのであり、タンク内ガス温度センサ24自体を燃料タンク23内に必ずしも配置する必要はない。例えば、充填カップリング5を燃料タンク23の充填口23Aに連結した状態で、タンク内ガス温度センサ24の温度感知部となる端子部を燃料タンク23の内部に挿入、或いは燃料タンク23の内壁や外壁に接触させることにより、燃料タンク23内のガス温度を検出することができる。タンク内ガス温度センサ24が燃料タンク23内のガス温度を直接検知するものでない場合には、例えばタンク内ガス温度センサ24による温度検出信号を基にして、燃料タンク23内のガス温度を計算するのに補正係数を使用して燃料タンク23内のガス温度を演算するようにしてもよい。
【0041】
第1の実施の形態による充填ステーション1は、上述の如き構成を有するもので、次に、制御回路21による燃料タンク23への燃料(例えば、水素ガス)の充填制御処理について、
図2を参照して説明する。
【0042】
まず、処理動作がスタートすると、ステップ1で充填作業が開始されたか否かを判定する。例えば、燃料供給所の作業員等によって充填カップリング5が車両22の燃料タンク23の充填口23Aに、
図1中に二点鎖線で示す如く接続された状態で、操作部18の充填開始スイッチ16が閉成(ON)操作されたときには、ステップ1で「YES」と判定されるとステップ2の処理へ移行する。
【0043】
次のステップ2では、例えば受信器25からの無線信号により通信が確立されたか否かを判定する。即ち、ステップ2では、車両22側のタンク内ガス温度センサ24から燃料タンク23内の燃料の温度Ttを検知した信号(検出信号)が制御回路21に正常に送信されているか否かを判定する。ステップ2で「YES」と判定したときには、次のステップ3で前記燃料の温度Ttを読込むと共に、圧力センサ14からのガス圧に対応する圧力Psを読込む。
【0044】
次のステップ4では、燃料タンク23内に充填すべきガスの目標圧力Ptを下記の数1式により、プログラムサイクル毎に繰り返し演算する。この場合、目標圧力Ptは、タンク内ガス温度センサ24により検出された燃料タンク23内のガスの温度Ttに基づいて設定される圧力であり、
図3中に示す特性線26(即ち、直線状の1次関数)で表されるものである。
【0046】
ここで、係数Aは、ガスの温度Ttから目標圧力Ptを演算するための定数であり、燃料タンク23内の温度Ttと目標圧力Ptとの比例係数となっている。定数Bは、燃料タンク23内の温度Ttから目標圧力Ptを求めるためのオフセット値(圧力値)であり、燃料タンク23内の温度Ttが、例えば0℃のときの目標圧力でもある。
【0047】
次のステップ5では、圧力センサ14で検出した燃料タンク23内の圧力Psが、許容最大圧力Pmax (一例として82MPa)以上まで上昇しているか否かを判定し、「NO」と判定する間は、次のステップ6に移って燃料タンク23内の圧力Psが、前記数1式による目標圧力Pt以上であるか否かを判定する。ステップ6で「NO」と判定する間は、燃料タンク23内の圧力Psが目標圧力Ptよりも低く、目標には達していない。
【0048】
そこで、この場合は、次のステップ7で遮断弁9を開弁させる。また、遮断弁9が既に開弁している場合には当該開弁状態を保持する。次のステップ8では、調整弁8の開度を制御する。ステップ8による調整弁8の制御は、一例として述べると、制御回路21は、例えば流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15の測定結果をモニタしつつ、調整弁8の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、供給配管3内に供給されるガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0049】
このとき、制御回路21は、流量計13からの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算する。これにより、貯蔵タンク100から車両22の燃料タンク23に払い出されたガスの充填量(質量)を計量することができ、例えば付設の表示器(図示せず)等により、このときの計量値(充填量)を顧客に対して報知することができる。
【0050】
ステップ9では、例えば充填停止スイッチ17により、ガス充填中にガスの充填を停止する操作が行われたか否かを判定する。そして、ステップ9で「NO」と判定する間は、ガスの充填作業を続行する場合であるから、ステップ2の処理に戻って、これ以降の処理を続ける。
【0051】
一方、ステップ5で「YES」と判定したときには、燃料タンク23内の圧力Psが、許容最大圧力Pmax 以上まで上昇しているので、ガスの充填作業を即座に停止させる必要がある。このため、次のステップ10では遮断弁9を閉弁させ、次のステップ11では調整弁8を閉弁させる。これによって、ガスの充填作業を停止させることができる。
【0052】
また、ステップ6で「YES」と判定したときには、燃料タンク23内の圧力Psが目標圧力Ptまで上昇し、水素ガスは目標充填量に達した場合である。このため、次のステップ10では遮断弁9を閉弁させ、次のステップ11では調整弁8を閉弁させる。これにより、これ以上のガス充填作業を迅速に停止させる。
【0053】
なお、ステップ9で「YES」と判定したときには、充填停止スイッチ17が操作された場合であり、この場合は、例えばガスの充填量や圧力が目標値に達していなくても、ステップ10,11の処理によりガスの充填作業を強制的に停止させる。
【0054】
一方、ステップ2で「NO」と判定した場合は、例えば受信器25からの無線信号により、充填ステーション1の制御回路21と車両22との間で通信が確立されていない場合(即ち、車両22側のタンク内ガス温度センサ24から燃料の温度Ttに対応した検出信号が制御回路21に送信されていない場合)である。そして、このように通信が確立できない場合には、燃料タンク23内の温度Tt(正確には温度Ttの検出信号)を充填ステーション1側では用いることなく、圧力センサ14で検出したガスの圧力Psのみでガスの充填作業を行う。
【0055】
そこで、次のステップ12では、目標圧力Ptを規定圧力Cに設定する。規定圧力Cは、燃料タンク23内のガス温度の高低にかかわらず固定された目標圧力であり、例えば燃料タンク23のガス充填前の圧力と外気温度とによって予め決められる圧力である。
【0056】
次のステップ13では、圧力センサ14からのガス圧に対応する圧力Psを読込む。次のステップ14では、圧力センサ14で検出した燃料タンク23内の圧力Psが、許容最大圧力Pmax (例えば、82MPa)以上まで上昇しているか否かを判定し、「YES」と判定したときには、前述したステップ10,11の処理によりガスの充填作業を停止させる。
【0057】
一方、ステップ14で「NO」と判定する間は、次のステップ15に移って燃料タンク23内の圧力Psが、目標となる規定圧力C以上であるか否かを判定する。ステップ15で「NO」と判定する間は、燃料タンク23内の圧力Psが目標となる規定圧力Cよりも低いので、次のステップ16〜18にわたる処理を前述したステップ7〜9と同様に行う。そして、ステップ15で「YES」と判定したときには、圧力Psが目標となる規定圧力Cに達しているので、前述したステップ10,11の処理によりガスの充填作業を停止させる。
【0058】
次に、充填カップリング5を用いた燃料タンク23へのガス充填作業が完了して調整弁8および遮断弁9が閉弁され、ガスの充填作業を停止させる場合には、制御回路21からの信号により脱圧弁20が、閉弁状態から開弁制御される。そして、脱圧弁20が開弁したときには、脱圧配管19が大気に開放されることにより、充填カップリング5側のガスが外部に放出されて充填カップリング5の圧力が大気圧に減圧される。このような状態で、充填ステーション1は、次なる充填作業に備えて待機状態となる。
【0059】
かくして、第1の実施の形態によれば、貯蔵タンク100から車両22の燃料タンク23にガスを充填するときに、タンク内ガス温度センサ24により検出された燃料タンク23内のガスの温度Ttに基づき設定される前記数1式による目標圧力Ptを制御回路21によって繰り返し演算する。そして、制御回路21は、圧カセンサ14により検出されるガスの圧力Psが前記目標圧力Ptよりも低い場合に、制御機器(遮断弁9と調整弁8)を開弁制御することにより燃料タンク23へのガスの充填を続行し、前記圧力センサ14により検出されるガスの圧力Psが前記目標圧力Pt以上となった場合には前記遮断弁9と調整弁8を閉弁制御することにより燃料タンク23へのガスの充填を終了させる構成としている。
【0060】
この場合、前記数1式による目標圧力Ptは、タンク内ガス温度センサ24により検出された燃料タンク23内のガスの温度Ttに基づいて、例えば
図3中に示す特性線26の如く可変に設定されている。このため、車両22の燃料タンク23へのガス充填直後において、燃料タンク23内のガスの圧力Psが従来の規定圧力(例えば、前述した規定圧力Cと同等な所定圧力)よりも高いとしても、車両22の燃料タンク23内のガス温度が所定温度に低下した場合には、燃料タンク23内のガスの圧力Psは前記所定圧力となるように変化する。
【0061】
換言すると、第1の実施の形態によれば、燃料タンク23へのガス充填後において、当該タンク23内の温度が所定の温度に低下した際のガス圧力(車両22の燃料タンク23内の圧力)が所定圧力になるように、制御回路21では、車両22の燃料タンク23にガスを充填しているときの目標となるガスの圧力(目標圧力Pt)を繰り返し求めつつ、車両22の燃料タンク23内の圧力Psが目標圧力Ptとなった場合にガス充填を終了する制御を実現することができる。
【0062】
従って、第1の実施の形態によれば、車両22の燃料タンク23へのガス充填作業を、本来の目標とする圧力状態により近付けるように続けることができ、ガスの充填作業を効率的に行うことができる。これにより、当該ガスを燃料としたときの車両22の走行可能距離を増大させることができ、従来技術のように、タンク温度の上昇分だけ走行可能距離が減じられる、という不具合をなくすことができる。
【0063】
次に、
図4は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。第2の実施の形態の特徴(第1の実施の形態との相違点)は、充填中にタンク内ガス温度センサ24及び圧力センサ14により検出される温度・圧力Psからなるガスが、予め定められた基準温度である所定の温度T1(例えば、15℃)となった場合のガスの圧力Ps′を繰り返し演算し、当該圧力Ps′が予め定められた固定値である標準状態での目標圧力Pt(例えば、70MPa)よりも低い場合には燃料タンク23へのガスの充填を行い、当該圧力Ps′が目標圧力Pt以上となった場合に燃料タンク23へのガスの充填を終了させる構成としたことにある。
【0064】
即ち、第2の実施の形態では、被充填タンク(即ち、燃料タンク23)内の現時点でのガスの温度Ttと圧力とがそれぞれ温度T2、圧力Psであった場合に、当該ガスの温度が予め定められた所定(標準状態)の温度T1(例えば、15℃)に低下した際の圧力Ps′を下記の数2式により換算して求め、この圧力Ps′(以下、換算圧力Ps′という)が予め定められた目標圧力Pt(固定値)に達した場合に、燃料タンク23へのガス充填を終了するものである。
【0065】
本実施の形態における換算圧力Ps′の演算式は、下記の数2式に示される通りである。なお、下記の数2式による演算は、理想気体を対象にした式(ボイル・シャルルの法則)に基づくものであるが、圧縮因子を考慮し圧縮係数も利用してより正確な換算圧力Ps′の演算を行なうようにしてもよい。
【0067】
次に、第2の実施の形態による制御回路21を用いた燃料タンク23への燃料(例えば、水素ガス)の充填制御処理について、
図4を参照して説明すると、処理動作がスタートして、ステップ21〜23による処理を前記第1の実施の形態によるステップ1〜3(
図2参照)と同様に行う。
【0068】
しかし、ステップ24による換算圧力Ps′の算出処理では、タンク内ガス温度センサ24により検出された燃料タンク23内の温度T2と圧力センサ14により検出された燃料タンク23内の圧力Psとから、燃料タンク23内のガスの温度が予め定められた基準温度T1となった場合における当該ガスの換算圧力Ps′を上記の数2式により、プログラムサイクル毎に繰り返し演算する。この場合、換算圧力Ps′は、タンク内ガス温度センサ24により検出された燃料タンク23内の温度Tが予め定められた基準温度T1となった場合に想定される燃料タンク23内のガスの圧力である。
【0069】
次のステップ25では、圧力センサ14で検出した燃料タンク23内の圧力Psが、許容最大圧力Pmax以上まで上昇しているか否かを判定し、「NO」と判定する間は、次のステップ26に移って燃料タンク23内の換算圧力Ps′が予め定められた固定値である目標圧力Pt(例えば、70MPa)以上であるか否かを判定する。次に、ステップ27〜31にわたる処理、さらにはステップ32〜38にわたる処理も、前記第1の実施の形態によるステップ7〜18(
図2参照)と同様に行うものである。
【0070】
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、貯蔵タンク100から車両22の燃料タンク23にガスを充填するときに、タンク内ガス温度センサ24および圧力センサ14で検知した燃料タンク23内のガスの圧力および温度に基づき当該ガスの温度が基準温度T1となった場合における燃料タンク23内のガスの換算圧力Ps′を制御回路21によって繰り返し演算する。そして、制御回路21は、当該換算圧力Ps′が予め定められた目標圧力Ptよりも低い場合に、燃料タンク23へのガスの充填を続行し、換算圧力Ps′が目標圧力Pt以上となった場合には遮断弁9と調整弁8を閉弁制御することにより燃料タンク23へのガスの充填を終了させることができ、前記第1の実施の形態と同様な効果を奏する。
【0071】
即ち、燃料タンク23へのガス充填直後においては、タンク内の圧力Psが仮に目標圧力よりも高い場合でも、その後に燃料タンク23内のガス温度が所定の基準温度T1(例えば、15℃)に低下したときには、燃料タンク23内の圧力Psは目標圧力Ptまで下がるようになる。よって、燃料タンク23へのガス充填作業をより目標に近いガス圧力になるまで充填することができ、充填作業の効率化を図ることができる。
【0072】
なお、前記第1の実施の形態では、
図3に示す特性線26のように、目標圧力Ptを直線状の1次関数(前記数1式参照)として求める場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2つの直線を組み合わせるようにした演算式等を用いて、タンクの温度に対する目標圧力を求める構成としてもよい。また、2次関数または3次関数等の演算式を用いてタンク温度に対する目標圧力を求める構成としてもよい。
【0073】
また、前記各実施の形態では、充填される水素ガスを冷却器10によって、規定温度(例えば、−20℃または−40℃)に冷却する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば水素ガスの冷却温度は、適宜設定することができる。
【0074】
さらに、前記実施の形態では、タンク内ガス温度センサ24により検出した燃料タンク23内のガスの温度Ttを、無線通信等の手段で車両22側から充填ステーション1側に送信する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばタンク内ガス温度センサ24の検出信号を有線(例えば、充填ホース4に沿って延ばした信号線)より充填ステーション1側に送信する構成でもよい。また、携帯電話等の持ち運び可能なモバイル機器による通信機能を活用して車両22側から充填ステーション1へと温度検出信号を送信することも可能である。