(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475448
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】バタフライ弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/34 20060101AFI20190218BHJP
F16K 1/22 20060101ALI20190218BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
F16K1/34 A
F16K1/22 D
F16K1/32 C
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-188838(P2014-188838)
(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-59662(P2015-59662A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】13184759.2
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】アントナン オプシチ
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/097539(WO,A1)
【文献】
実開昭62−119572(JP,U)
【文献】
特開昭60−237274(JP,A)
【文献】
特開昭59−226770(JP,A)
【文献】
米国特許第04739794(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00− 1/54
F16K 5/00− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通する流路(12)を備えたケーシング(10)と、
前記流路(12)内に配置された弁プレート(20)と、
前記弁プレート(20)に接続されたシャフト(22)と
を備え、
前記弁プレート(20)は、前記シャフト(22)により回転されるように構成されかつ配置されており、これにより前記流路(12)を通る流体の流れを選択的に許容しかつ遮断するようになっている、バタフライ弁であって、
前記ケーシング(10)内に設けられた通路(14)であって、遠位の両端部をもって、前記弁プレート(20)の一方の側から前記弁プレート(20)の他方の側へ前記流路(12)から延びており、これにより前記弁プレート(20)を迂回する択一的な流路を提供する通路(14)と、
該通路(14)の遠位の両端部の間に設けられたキャビティ(16)と、
該キャビティ(16)内に設けられた弁ヘッド(30)であって、前記キャビティ(16)内で閉位置と開位置との間で可動であるように構成されかつ配置されていて、前記閉位置では、前記通路(14)の前記遠位の両端部が、前記通路(14)を通じて流体遮断されており、前記開位置では、前記通路(14)の前記遠位の両端部が、前記通路(14)を通じて流体接続されている、弁ヘッド(30)と、
前記キャビティ(16)内に配置された、前記シャフト(22)の部分に設けられた横方向部材(24)と、
前記弁ヘッド(30)に設けられた、前記シャフト(22)の回転軸線(26)に対して傾斜した角度で延びている溝(32)と
を備え、
前記横方向部材(24)は、前記溝(32)内に可動に嵌合するような大きさで成形されており、前記溝(32)の傾斜した角度は、前記シャフト(22)の回転が、前記通路(14)の開放位置および前記通路(14)の閉鎖位置の間での、前記シャフト(22)の前記回転軸線(26)に沿った前記弁ヘッド(30)の運動を生ぜしめるようになっており、
前記溝(32)は、前記弁プレートの閉鎖位置において、前記シャフト(22)の方向から最も大きな角度を有していることを特徴とする、バタフライ弁。
【請求項2】
前記弁ヘッド(30)による前記通路(14)の開閉が前記シャフト(22)の回転によって生じるように、前記シャフト(22)および前記弁ヘッド(30)が構成されかつ配置されている、請求項1記載のバタフライ弁。
【請求項3】
前記シャフト(22)が少なくとも部分的に前記キャビティ(16)を通じて延びてお
り、前記弁ヘッド(30)は、前記シャフト(22)の回転軸線(26)の方向に限定された運動のために構成されている、請求項1または2記載のバタフライ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してバタフライ弁構造に関し、特にバタフライ弁の高い開放トルクおよび閉鎖トルクの問題を解決するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2012/166413号で説明されているように、バタフライ弁は通常、入口と、出口と、貫通して延びる流路とを備えたケーシングを有している。流路内に配置された弁プレートは通常、流路を通る流体の流れを選択的に許容しかつ遮断するために構成されている。このことは、弁プレートに接続された回転可能な軸部材により達成され、これにより流路の延在方向に対して垂直方向の弁プレートの回転を可能にすることができる
【0003】
このようなバタフライ弁は、低コスト、単純な設計、高い安定性および高効率という利点を有しているので、広く利用されている。しかし、バタフライ弁が直面する1つの問題は、バタフライ弁が、バルブにわたる圧力降下が高い場合に、高い開閉トルクを要求することである。このことは通常、バタフライ弁の使用を30barの範囲の最大差圧を有する用途に制限する。
【0004】
この問題を解決するために、弁に、駆動されて開放するプレートを設けることを含む種々の解決手段が開発された。一例はカナダ国特許第2058427号明細書に記載されており、該特許明細書では弁プレートと協働する、駆動された旋回プレート状の弁プレートが議論されている。国際公開第2012/166413号は別のこのような弁プレートの解決手段を提供している。
【0005】
これらの各解決手段は、弁に著しい複雑性、ひいてはコストをもたらし、したがってバタフライ弁の潜在的ないくつかの利点を減じる恐れがある。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0256112号に記載されている別の解決手段は、Z形のディスク鉛直プロファイルを有する傾斜されたディスクを備えた弁を設けることを含む。開位置では、このような弁は、流れに対して増大された抵抗を与える増大されたプロファイルを有している。
【0007】
これらの解決手段のいずれも、完全な解決手段を提供しておらず、したがって、バタフライ弁の高い開閉トルクの問題を克服するための択一的な形態を見つける継続的な必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/166413号
【特許文献2】カナダ国特許第2058427号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0256112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高い開閉トルクの問題に対する少なくとも部分的な解決手段を提供するバタフライ弁を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決した本発明による構成では、貫通する流路を備えたケーシングと、流路内に配置された弁プレートと、弁プレートに接続されたシャフトとを備え、弁プレートは、シャフトにより回転されるように構成されかつ配置されており、これにより流路を通る流体の流れを選択的に許容しかつ遮断するようになっている、バタフライ弁において、
ケーシング内に設けられた通路であって、遠位の両端部をもって、弁プレートの両側で流路から延びており、これにより弁プレートを迂回する択一的な流路を提供する通路と、通路の遠位の両端部の間に設けられたキャビティと、キャビティ内に設けられた弁ヘッドであって、キャビティ内で閉位置と開位置との間で可動であるように構成されかつ配置されていて、閉位置では、通路の遠位の両端部が、通路を通じて流体遮断されており、開位置では、通路の遠位の両端部が、通路を通じて流体接続されている、弁ヘッドとを備えている。
【発明の効果】
【0011】
上記課題は、独立請求項に記載の特徴により解決される。有利な実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本開示は、弁ヘッドを含む弁を通る二次的な流れ通路を提供するという概念に基づいている。弁の中に流れ通路を完全に含むことによって、コンパクトなユニットが形成される一方で、弁ヘッドが、バイパス流に対する可制御性をもたらす。これによって、弁プレートにわたる圧力は減じられ、したがって弁の開閉トルクを減じることができる。
【0013】
バタフライ弁の一態様は、貫通する流路を有するケーシングと、流路内に配置された弁プレートと、弁プレートに接続されたシャフトとを有している。シャフトは、回転するように構成されかつ配置されており、これにより、流路を通る流体の流れを選択的に許容しかつ遮断するようになっている。ケーシング内に配置された通路は、弁プレートの両側で流路から流路へと延びており、これにより弁プレートをバイパスする択一的な流路を提供するようになっている。通路を完全にケーシング内に配置することは、装置の大きさが最小限にされていることを保障する。さらに、通路内には、該通路の遠位の両端部の間にキャビティが配置されている。このキャビティ内に配置されている弁ヘッドは、キャビティ内で閉鎖位置と開放位置との間で可動であるように構成されかつ配置されている。閉鎖位置では、通路において、該通路の遠位の両端部が流体遮断されており、開放位置では、通路において、通路の両端部が流体接続されている。
【0014】
別の態様では、シャフトおよび弁ヘッドは、弁ヘッドによる通路の開閉がシャフトの回転によって実現されているように、構成されかつ配置されている。このことは、弁ヘッドの付加的な駆動の必要性をなくし、装置を大幅に簡略化する。
【0015】
別の態様では、シャフトが少なくとも部分的にキャビティを通って延びており、弁ヘッドは、シャフトに沿った運動である、シャフトの回転軸線の方向に限定された運動のために構成されている。
【0016】
別の態様では、バタフライ弁がさらに、キャビティ内に配置されたシャフト部分に設けられた横方向部材と、延長された溝とを有している。延長された溝は、弁ヘッドに配置されており、シャフトの回転軸線に対して傾斜した角度で延びている。横方向部材は、溝内に可動に嵌合する大きさで成形されているのに対して、溝の傾斜した角度は、シャフトの部分の回転が、通路の開放位置と閉鎖位置との間での、シャフトの回転軸線に沿った弁ヘッドの運動を生ぜしめるようにされている。これによって、弁ヘッドは、付加的または別個の作動手段を必要とすることなしに、シャフトの回転によって運転され得る。
【0017】
別の態様では、溝が弁プレートの閉鎖位置において、シャフトの方向から最も大きな角度を有している。
【0018】
本発明の別の目的は、先行技術の欠点および弱点を克服するか、または少なくとも改良し、または有益な代替手段を提供することである。
【0019】
本開示の別の態様および利点は、本発明の例示的な実施の形態を例示的に示す添付の図面に関連する以下の説明から明らかになるだろう。
【0020】
例として、本開示の実施の形態を以下に添付の図面を参照しながらより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の好適な態様に係るバイパス通路を有するバタフライ弁の断面図である。
【
図2】弁ヘッド溝およびシャフト横方向部材を示す、好適な実施の形態のバタフライ弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の例示的な実施の形態を図面を参照しながら説明する。同一の参照符号は、本明細書にわたって同一の構成部材に言及するために使用される。説明を目的とする以下の記載では、本開示を完全な理解を提供するために、数々の特定の詳細が明らかにされる。しかし、本開示は、これらの特定の特徴なしに実施することもでき、本明細書に開示されている例示的な実施の形態に制限されるものではない。
【0023】
図1に示したバタフライ弁の例示的な実施の形態では、弁が、貫通する流路12を備えたケーシング10を有している。流路12内に配置された弁プレート20は、さらにシャフト22に接続されている。典型的には流路の軸線に対して垂直方向に延びる軸線におけるシャフト22の回転により、流路を通る流体の流れを許容するか、または遮断する弁が生じる。シャフト22自体は、1つより多い部分を有しており、たとえば、継ぎ手を介して手動または自動化されたアクチュエータに接続されているアクチュエータ部分を有していてよい。シャフト22は、弁プレート20の一部を形成するか、または弁プレート20に接続された下側部分をさらに有していてよい。
【0024】
弁はさらに、ケーシング10を通る通路14を有している。通路14は、弁プレート20の両側で流路12から延びている。これにより、通路14は弁プレート20を迂回するバイパスを提供するので、弁プレート20を迂回する択一的な流路を提供することができる。通路14の、2つの遠位の両端部の間の区分は、キャビティ16を有している。キャビティ16内には、弁ヘッド30が配置されていて、該弁ヘッド30は、キャビティ16内で閉位置と開位置との間で可動である。閉位置では、通路14内において通路14の遠位の両端部が流体遮断され、開位置では、通路内14において通路14の遠位の両端部が流体接続されている。開放構造および閉鎖構造を達成するための弁ヘッド30の位置移動は、回転運動およびシャフト延在方向の方向への移動を含む公知の弁構造を含んでいる。
【0025】
図2は、弁ヘッド30がシャフト22の回転によって、シャフト22の回転軸線26に沿って移動するように構成されかつ配置されている実施の形態を示している。このことは、カム装置により達成されている。カム装置では、シャフト22が横方向部材24を有しており、該横方向部材24は、弁ヘッド30に設けられた溝32内に嵌合する。溝32は、シャフトの回転軸線26の方向に対して傾斜した角度で延びている。傾斜した角度は、溝32に沿ったあらゆる点における、溝中心線34に対する接線との間の角度により規定される。なぜならば、接線はシャフト22の回転軸線26に交差するからである。したがって、シャフト22が回転させられると、弁ヘッド30はキャビティ16内で昇降させられる。これによって、通路14は、それぞれ開閉される。傾斜した角度は、有利には、溝長さにわたって一定ではなく、その代わりに通路14の開閉トルクを最適化するために変化する。溝32の好適な形状は、弁開放の力関数ができるだけ線形であるような形状である。このことは、溝角度を設定することにより達成することができ、これによりシャフト部材は、弁ヘッド30の閉鎖位置において、弁ヘッド30に最大のトルクを作用させる。
【0026】
最も実用的な例示的な実施の形態であると考えられるように本開示が図示されかつ説明されたが、本開示が別の特定の形態でも実施され得ることは明らかである。したがって、本明細書に開示された実施の形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲により示され、むしろ上記明細書およびその意図および範囲内において生じるあらゆる変更および等価物は、本開示に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0027】
10 ケーシング
12 流路
14 通路
16 キャビティ
20 弁プレート
22 シャフト
24 横方向部材
26 回転軸線
30 弁ヘッド
32 溝
34 中心線