特許第6475449号(P6475449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475449
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】脊椎手術用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20190218BHJP
   A61B 17/90 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   A61B17/70
   A61B17/90
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-189994(P2014-189994)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-59597(P2016-59597A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】508203264
【氏名又は名称】石井 賢
(73)【特許権者】
【識別番号】514068864
【氏名又は名称】松本 守雄
(73)【特許権者】
【識別番号】514069207
【氏名又は名称】戸山 芳昭
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石井 賢
(72)【発明者】
【氏名】松本 守雄
(72)【発明者】
【氏名】戸山 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】新 真樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 順二
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0103094(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0216281(US,A1)
【文献】 米国特許第08137356(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/88−17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脊椎を互いに固定するための固定ロッドが挿入されるスリットを形成する一対の対向部が取り付けられた脊椎用インプラント、が前記脊椎に固定された状態における前記一対の対向部に係合する係合部と、
前記係合部と一体に設けられ又は該係合部に取り付けられた一対の案内部と、
前記係合部及び前記一対の案内部が形成されているとともに上下方向に延びるように形成された本体部と、
を備え、
前記係合部は、前記本体部の上側の部分に設けられて前記一対の対向部の上側の部分に係合する第1係合部と、前記本体部の下側の部分に設けられて前記一対の対向部の下側の部分に係合する第2係合部と、を有し、
前記一対の案内部は、前記係合部が前記一対の対向部に係合し、且つ該一対の案内部の間に形成される案内通路と前記スリットとが連通した状態において、前記本体部から前記固定ロッドの挿入元の側へ向かって互いに離反しながら突出して延びるように形成され、
前記第2係合部は、前記本体部の上下方向において、前記一対の案内部に対応する位置に設けられていることを特徴とする、脊椎手術用器具。
【請求項2】
請求項1に記載の脊椎手術用器具において、
前記係合部は、前記一対の対向部における外側の部分と係合することを特徴とする、脊椎手術用器具。
【請求項3】
請求項1に記載の脊椎手術用器具において、
前記係合部は、前記一対の対向部における内側の部分と係合することを特徴とする、脊椎手術用器具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具において、
前記係合部が前記一対の対向部と係合した状態において、前記脊椎に固定された状態の前記脊椎用インプラントと反対側の部分が開口する開口部、が形成されていることを特徴とする、脊椎手術用器具。
【請求項5】
請求項4に記載の脊椎手術用器具において、
前記開口部が開口する方向に対して斜め方向に延びる把持部を更に備えていることを特徴とする、脊椎手術用器具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具において、
前記一対の案内部は、それぞれ、前記係合部が前記一対の対向部に係合した状態において、前記脊椎用インプラント側へ向かって徐々に細くなるように形成されていることを特徴とする、脊椎手術用器具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具において、
前記一対の対向部が互いに近接又は離反するのを規制するように、前記一対の対向部における前記脊椎用インプラントと反対側の端部を外側から覆うキャップ部を更に備えていることを特徴とする、脊椎手術用器具。
【請求項8】
請求項7に記載の脊椎手術用器具において、
前記キャップ部は、前記第1係合部として設けられていることを特徴とする、脊椎手術用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎の手術において用いられる脊椎手術用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の脊椎を互いに固定するための固定ロッドを保持する脊椎用インプラントと、該脊椎用インプラントに取り付けられて切開創を広げるためのレトラクターとして用いられるエクステンダーと、を備えた脊椎固定用装置が知られている。この脊椎固定用装置では、各脊椎用インプラントが各脊椎に埋入された後、固定ロッドが当該複数のインプラントに跨るように各インプラントのスリットに挿入される。その後、固定ロッドがセットスクリューによって脊椎用インプラントに固定されることにより、複数の脊椎を互いに固定できる。脊椎の手術では、上述のようにして互いに固定された複数の脊椎のうち手術対象となる脊椎に対して、所定の処理が施される。
【0003】
そして、固定ロッドを各インプラントのスリットに正確に挿入するための器具として、例えば特許文献1に開示される器具が知られている。この器具では、アンカー伸長部(エクステンダー)の基端側に揺動自在に取り付けられた枢動アームによって、固定ロッドが、複数のアンカー(脊椎用インプラント)のそれぞれに形成されたスリットに跨るように挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4574931号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示される器具は、比較的機構が複雑であり、当該器具を組み立てるために比較的時間を要する。更に、この器具の場合、枢動アームが所定の面に沿って揺動するため固定ロッドの可動範囲が限定され、固定ロッドを各脊椎用インプラントのスリット内にスムーズに挿入できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、固定ロッドを脊椎用インプラントのスリットに挿入しやすく、且つ構成が簡素化された脊椎手術用器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための本発明のある局面に係る脊椎手術用器具は、複数の脊椎を互いに固定するための固定ロッドが挿入されるスリットを形成する一対の対向部が取り付けられた脊椎用インプラント、が前記脊椎に固定された状態における前記一対の対向部に係合する係合部と、前記係合部と一体に設けられ又は該係合部に取り付けられた一対の案内部と、前記係合部及び前記一対の案内部が形成されているとともに上下方向に延びるように形成された本体部と、を備え、前記係合部は、前記本体部の上側の部分に設けられて前記一対の対向部の上側の部分に係合する第1係合部と、前記本体部の下側の部分に設けられて前記一対の対向部の下側の部分に係合する第2係合部と、を有し、前記一対の案内部は、前記係合部が前記一対の対向部に係合し、且つ該一対の案内部の間に形成される案内通路と前記スリットとが連通した状態において、前記本体部から前記固定ロッドの挿入元の側へ向かって互いに離反しながら突出して延びるように形成され、前記第2係合部は、前記本体部の上下方向において、前記一対の案内部に対応する位置に設けられている。
【0008】
この構成では、係合部が一対の対向部に係合すると、一対の案内部の間に形成される案内通路と前記スリットとが連通した状態となる。この状態において、一対の案内部は、固定ロッドが挿入される側へ向かって互いに離反して延びるように形成されている。すなわち、この構成において係合部が一対の対向部に係合すると、一対の案内部が、固定ロッドが挿入される側へ向かって広がるように配置される。そうすると、術者が固定ロッドの先端部をスリットへ向かって挿入する際、当該固定ロッドの先端部が多少、スリットに対してずれて挿入された場合であっても、固定ロッドの先端部が一対の案内部によってスリット側へ案内される。
【0009】
しかも、この構成によれば、固定ロッドを脊椎用インプラントのスリットへ挿入するための器具の構成を、比較的シンプルな形状である係合部及び一対の案内部を有する構成とすることができる。
【0010】
従って、この構成によると、固定ロッドを脊椎用インプラントのスリットに挿入しやすく、且つ構成が簡素化された脊椎手術用器具を提供できる。
【0011】
(2)好ましくは、前記係合部は、前記一対の対向部における外側の部分と係合する。
【0012】
この構成では、係合部が一対の対向部における内側の部分と係合するように該係合部を形成する必要がなくなる。そうすると、固定ロッドが挿入される通路の幅を確保することができるため、固定ロッドをスリットにスムーズに挿入することができる。
【0013】
(3)好ましくは、前記係合部は、前記一対の対向部における内側の部分と係合する。
【0014】
この構成では、係合部が一対の対向部における外側の部分と係合するように該係合部を形成する必要がなくなる。これにより、脊椎手術用器具における係合部付近の部分の外形を小さくすることができるため、低侵襲手術に適した脊椎手術用器具を提供することができる。
【0015】
(4)好ましくは、前記脊椎手術用器具には、前記係合部が前記一対の対向部と係合した状態において、前記脊椎に固定された状態の前記脊椎用インプラントと反対側の部分が開口する開口部、が形成されている。
【0016】
この構成では、脊椎用インプラントに螺合されるセットスクリューを、前記開口部を介して脊椎用インプラント側へ挿入することができるため、使い勝手のよい脊椎手術用器具を提供することができる。
【0017】
(5)更に好ましくは、前記脊椎手術用器具は、前記開口部が開口する方向に対して斜め方向に延びる把持部を更に備えている。
【0018】
この構成では、脊椎手術用器具の使用時において、術者によって把持される部分である把持部と、上述したセットスクリューを脊椎用インプラントに螺合するための器具(ドライバー等)との干渉を回避できる。これにより、更に使い勝手のよい脊椎手術用器具を提供することができる。
【0019】
(6)好ましくは、前記一対の案内部は、それぞれ、前記係合部が前記一対の対向部に係合した状態において、前記脊椎用インプラント側へ向かって徐々に細くなるように形成されている。
【0020】
この構成によれば、一対の案内部における先端側の細くなっている部分が、患者の開創部内へ挿入されるため、低侵襲手術に適した脊椎手術用器具を提供することができる。
【0021】
(7)好ましくは、前記脊椎手術用器具は、前記一対の対向部が互いに近接又は離反するのを規制するように、前記一対の対向部における前記脊椎用インプラントと反対側の端部を外側から覆うキャップ部を更に備えている。
【0022】
この構成では、キャップ部によって、一対の対向部の互いに対する近接又は離反が規制されるため、当該一対の対向部が近接又は離反することに起因して当該一対の対向部が破損してしまうリスクを低減することができる。
【0023】
(8)更に好ましくは、前記キャップ部は、前記第1係合部として設けられている。
【0024】
この構成では、上述したキャップ部が係合部としての機能を果たすため、脊椎手術用器具における他の部位に係合部を形成することを省略することができる。その結果、脊椎手術用器具を小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、固定ロッドを脊椎用インプラントのスリットに挿入しやすく、且つ構成が簡素化された脊椎手術用器具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】脊椎固定用装置のリダクションスクリューの形状を説明するための図であって、(A)は正面図、(B)は側面図、である。
図2】標準スクリューの形状を説明するための図であって、(A)は正面図、(B)は側面図、である。
図3】リダクションスクリューに係合した状態のエクステンダーを示す図であって、(A)は正面図、(B)は側面図、である。
図4】本実施形態に係るロッドキャッチャーの斜視図である。
図5図4に示すロッドキャッチャーの図であって、(A)は側方から視た図、(B)は手前側から視た図、(C)(B)のVC-VC線における断面図である。
図6】リダクションスクリュー及びエクステンダーに対して係合した状態のロッドキャッチャーを示す斜視図である。
図7】(A)は、図6に示す状態のロッドキャッチャーを手前側から視た図、(B)は、(A)のVIIB-VIIB線における断面図である。
図8図1に示すリダクションスクリューでリダクションを行う際の動作を説明するための模式図であり、(A)はリダクション前の図、(B)はリダクション後の図、(C)はリダクション後にリダクションスクリューのタブ部を分離した状態を示す図、である。
図9】ロッドキャッチャー及びロッドインサータを用いて固定ロッドをリダクションスクリューのスリットへ挿入している状態を示す斜視図である。
図10】変形例に係るロッドキャッチャーが、リダクションスクリュー及びエクステンダーに対して係合した状態を示す横断面図であって、図7(B)に対応させて示す図である。
図11】変形例に係るロッドキャッチャーの斜視図である。
図12】変形例に係るロッドキャッチャーの図であって、リダクションスクリュー及びエクステンダーと係合している状態を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は手前側から視た図である。
図13図4に示すロッドキャッチャーが標準スクリューに係合している状態を示す図であって、(A)は側方から視た図、(B)は手前側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、まず、本発明の実施形態に係るロッドキャッチャー1(脊椎手術用器具)が用いられる脊椎固定用装置50の一例の構成について説明し、次に、本実施形態に係るロッドキャッチャー1の構成について説明する。
【0028】
[脊椎固定用装置の構成]
脊椎固定用装置50は、リダクション、という処置を行うために用いられる。リダクションとは、脊椎すべり症の患者に対して施され、他の脊椎と比べて人体の前側にずれた脊椎を元の位置(背中側)に戻すための処理である。
【0029】
脊椎固定用装置50は、例えば一例として、リダクションスクリュー60、標準スクリュー70、及びエクステンダー80等を備えている。リダクションスクリュー60及び標準スクリュー70は、隣接する脊椎を互いに固定するための固定ロッド51を脊椎に対して固定するための脊椎用インプラントとして用いられる。エクステンダー80は、固定ロッド51をリダクションスクリュー60に固定する際に用いられるセットスクリュー52が挿入される切開創を広げるためのレトラクターとして機能する。
【0030】
[リダクションスクリュー及び標準スクリューの構成]
図1に、リダクションスクリュー60の正面図及び側面図を示し、図2に、標準スクリュー70の正面図及び側面図を示す。図1及び図2に示すように、各スクリュー60,70は、ネジ部61及びヘッド部62,72を備えている。なお、各図において、説明の便宜上、上と記載された矢印が指示する方向を上側又は上方と称し、下と記載された矢印が指示する方向を下側又は下方と称し、右と記載された矢印が指示する方向を右側と称し、左と記載された矢印が指示する方向を左側と称し、手前と記載された矢印が指示する方向を手前側と称し、奥と記載された矢印が指示する方向を奥側と称する。
【0031】
各スクリュー60,70のネジ部61は、同じ構成である。ネジ部61は、ネジ本体部61aとネジ頭部61bとを有し、これらが一体に形成されている。ネジ部61は、上下方向に延びる略棒状の部材であって、ネジ本体部61aの外周面にネジ山が形成されている。
【0032】
ヘッド部62,72は、2つのスリット63,73が形成された略筒状の部材であって、ネジ部61の上側の部分から上方へ延びるように形成されている。ヘッド部62,72の内周には、セットスクリュー52が螺合する雌ネジが形成されている。ヘッド部62,72の下端部には、貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0033】
スクリュー60,70では、ネジ部61のネジ頭部61bがヘッド部62,72内に収容された状態で、ネジ本体部61aが上記貫通孔を通じて下方へ延びている。ネジ頭部61bにおける下側(ネジ本体部61a側)の部分は、上記貫通孔の周縁部に対して回転自在に保持されている。これにより、ヘッド部62,72及びネジ部61は、互いに対して回転自在となっている。
【0034】
リダクションスクリュー60及び標準スクリュー70は、以下の点において構成が異なっている。具体的には、リダクションスクリュー60のヘッド部62は、筒軸方向の長さが、標準スクリュー70よりも長くなるように形成されている。また、リダクションスクリュー60のスリット63は、筒軸方向の長さが、標準スクリュー70のスリット73よりも長くなるように形成されている。
【0035】
リダクションスクリュー60のヘッド部62は、基部64及び一対のタブ部65を有し、これらが一体に形成されている。基部64は、ヘッド部62におけるネジ部61側の部分である。一対のタブ部65は、基部64から上方へ延びる片状に形成され、その間にスリット63が形成されている。一対のタブ部65は、それぞれ、詳しくは後述するエクステンダー80の各ブレード81における下端部分と係合可能に構成されている。
【0036】
一方、標準スクリュー70のヘッド部72における上側の部分には、該ヘッド部72における下側の部分から上方へ延びて互いに対向する一対の対向部74が形成されている。
【0037】
[エクステンダーの構成]
エクステンダー80は、上述のように、固定ロッド51をリダクションスクリュー60に固定する際に用いられるセットスクリュー52が挿入される切開創を広げるためのレトラクターとして用いられるものである。また、当該エクステンダー80によって、切開創によって切り開かれた部分の視認性を確保することもできる。
【0038】
図3は、リダクションスクリュー60に係合した状態のエクステンダー80を示す図であって、(A)は正面図、(B)は側面図、である。エクステンダー80は、2つのブレード81によって構成されている。各ブレード81は、横断面が略円弧状に形成された長尺状の部材である。各ブレード81の下端部分は、リダクションスクリュー60の各タブ部65と係合可能に構成されている。一対のブレード81の間の部分によって、スリット82が形成される。
【0039】
[ロッドキャッチャーの構成]
次に、本実施形態に係るロッドキャッチャー1の構成について説明する。図4は、ロッドキャッチャー1の斜視図である。また、図5は、図4に示すロッドキャッチャー1の図であって、(A)は側方から視た図、(B)は手前側から視た図、(C)は(B)のVC-VC線における断面図である。
【0040】
ロッドキャッチャー1は、脊椎に固定されたリダクションスクリュー60のスリット63に、固定ロッド51を挿入するために用いられる器具である。低侵襲の手術では、人体に対する切開範囲が狭くなるように患部が切開されるため、固定ロッドが挿入される開創部(切開創)についても、広範囲に亘って切開されることがない。そうすると、術者が、固定ロッドが挿入される部分を十分に目視で確認することができなくなるため、固定ロッド51をスリット63に挿入することが困難になる。これに対して、本実施形態に係るロッドキャッチャー1を用いれば、詳しくは後述するが、スリット63に対する固定ロッドの挿入を容易に行うことができる。
【0041】
ロッドキャッチャー1は、本体部10と、把持部2と、連結部3とを有している。
【0042】
本体部10は、上下方向に延びるように形成された金属部材によって形成されている。本体部10は、該本体部10における上側の部分(把持部2側の部分)である基端側部分11と、該本体部10における下側の部分(把持部2と反対側の部分)である先端側部分20と、が一体に形成されている。
【0043】
基端側部分11は、前面部12、右側面部13、及び左側面部14を有し、これらが一体に形成されている。各面部12,13,14は、上下方向に細長い板状の部分として設けられている。右側面部13は、前面部12における右側の縁部から奥側へ突出するように設けられる。一方、左側面部14は、前面部12における左側の縁部から奥側へ突出するように設けられている。
【0044】
そして、上述した基端側部分11のうちの奥側の部分は、図3のようにリダクションスクリュー60に係合した一対の対向部としてのエクステンダー80を、外側から挟むように該エクステンダー80に係合する第1係合部15として設けられている。当該第1係合部15は、エクステンダー80における上側の部分と係合する。これにより、ロッドキャッチャー1を、エクステンダー80に対して係合することができる。また、上述した基端側部分11のうち上側の部分は、上方へ向かって開口する開口部16として設けられている。
【0045】
先端側部分20は、右側延出部21、左側延出部22、右側案内部23、左側案内部24を有している。
【0046】
右側延出部21は、右側面部13の下側における手前側の部分から下方へ延びるように形成されている。同じように、左側延出部22は、左側面部14の下側における手前側の部分から下方へ延びるように形成されている。これにより、右側延出部21と左側延出部22との間には、下方が開口するスリット状に形成されたスリット部25が形成される。
【0047】
右側延出部21における右側の縁部には、当該部分から奥側へ向かって突出する右側壁部26が形成されている。右側壁部26は、右側延出部21における上側の部分から下側の部分まで延びるように形成されている。同じように、左側延出部22における左側の縁部には、当該部分から奥側へ向かって突出する左側壁部27が形成されている。左側壁部27は、左側延出部22における上側の部分から下側の部分まで延びるように形成されている。
【0048】
そして、上述した先端側部分20のうちの奥側の部分は、図3のようにリダクションスクリュー60に係合した一対の対向部としてのエクステンダー80を、外側から挟むように該エクステンダー80に係合する第2係合部28として設けられている。当該第2係合部28は、エクステンダー80における下側の部分と係合する。これにより、ロッドキャッチャー1を、エクステンダー80に対して係合することができる。
【0049】
右側案内部23及び左側案内部24は、一対の案内部23,24として設けられている。右側案内部23及び左側案内部24は、それぞれ、右側延出部21及び左側延出部22のそれぞれと一体に形成されている。各案内部23,24は、各延出部21,22における手前側の部分において、該各延出部21,22の上端部から下端部に亘って形成されている。
【0050】
そして、一対の案内部23,24は、奥側から手前側に向かって、互いに対して徐々に離反するように形成されている。すなわち、一対の案内部23,24の間の隙間は、奥側から手前側に向かって、徐々に広くなっている。このように形成された一対の案内部23,24の間の隙間は、詳しくは後述するが、固定ロッド51をリダクションスクリュー60のスリット63へ案内するための案内通路29として機能する。
【0051】
把持部2は、術者が術中に把持する部分として設けられている。把持部2は、詳しくは後述する連結部3によって本体部10と連結されている。把持部2は、本体部10よりも上方であって且つ該本体部10よりもやや手前側の部分から、該本体部10が延びる方向(上下方向)に対して斜め上方に延びるように設けられている。言い換えれば、把持部2は、本体部10に形成された開口部16が開口する方向(上下方向に沿う方向)に対して斜め上方に延びている。これにより、開口部16の上方は、把持部2によって覆われていない状態となっている。
【0052】
連結部3は、その一部に屈曲部4を有する棒状の部分であって、その一端部が本体部10の前面部12における上端部分に接続される一方、その他端部が把持部2に接続されている。これにより、連結部3は、本体部10と把持部2とを連結している。
【0053】
[リダクションスクリュー及びエクステンダーに対するロッドキャッチャーの係合]
図6は、リダクションスクリュー60及びエクステンダー80に対して係合した状態のロッドキャッチャー1を示す斜視図である。また、図7(A)は、図6に示す状態のロッドキャッチャー1を手前側から視た図、図7(B)は、図7(A)のVIIB-VIIB線における断面図である。なお、ロッドキャッチャー1が係合される前のエクステンダー80には、該エクステンダー80における一対のブレード81の近接又は離反を規制するように、略円筒状に形成されたキャップ53が取り付けられている。
【0054】
図6及び図7に示すように、ロッドキャッチャー1は、リダクションスクリュー60に係合した状態のエクステンダー80に対して係合する。ロッドキャッチャー1では、第1係合部15がエクステンダー80における上側の部分と係合し、第2係合部28がエクステンダー80における下側の部分と係合する。具体的には、第1係合部15では、一対の面部13,14(右側面部13及び左側面部14)によってエクステンダー80が外側から挟まれることにより、第1係合部15とエクステンダー80とが係合する。また、第2係合部28では、一対の壁部26,27(右側壁部26及び左側壁部27)によってエクステンダー80の下側の部分が外側から挟まれることにより、第2係合部28とエクステンダー80とが係合する。これにより、ロッドキャッチャー1を、エクステンダー80に対して左右方向に位置決めすることができる。
【0055】
そして、上述のように、ロッドキャッチャー1がエクステンダー80に位置決めされた状態では、ロッドキャッチャー1における一対の案内部23,24の間の隙間(すなわち案内通路29)と、一対のタブ部65の間に形成されたスリット63とが、手前側から奥側へ向かって連通した状態となる。
【0056】
[リダクションの手順]
図8は、本実施形態に係るリダクションスクリュー60でリダクションを行う際の動作を説明するための模式図であり、(A)はリダクションを行う前の状態の図、(B)はリダクションを行った後の状態を示す図である。リダクションを行う際の手順について、図8を用いて説明する。図8で図示される3つの脊椎は、脊椎すべり症の患者の患部であり、人体の前方にずれた脊椎100と、該脊椎100の両隣の脊椎101,101とで構成されている。脊椎100が、リダクションの対象となる脊椎である。
【0057】
まず、術者は、患者の背中等を切開した後、脊椎100,101に、リダクションスクリュー60及び標準スクリュー70をねじ込んで埋入する。具体的には、術者は、脊椎101に対しては標準スクリュー70を埋入する一方、脊椎100に対してはリダクションスクリュー60を埋入する。なお、脊椎100に埋入されるリダクションスクリュー60については、エクステンダー80が係合した状態となっているが、図8においては、エクステンダー80の図示を省略している。
【0058】
次に、術者は、各スクリュー60,70に形成されたスリット63,73に固定ロッド51を挿通する。その際、術者は、本実施形態に係るロッドキャッチャー1を用いることにより、固定ロッド51を容易にスリット63内に挿入することができる。具体的なロッドキャッチャー1の使用方法については、後述する。
【0059】
次に、術者は、標準スクリュー70のヘッド部72にセットスクリュー52を螺合する。これにより、ヘッド部72とセットスクリュー52との間で固定ロッド51が挟んで保持されるため、固定ロッド51が、2つの脊椎101,101の間で固定される(図8(A)参照)。なお、この時点では、図8(A)に示すように、固定ロッド51は、リダクションスクリュー60のスリット63における先端側の部分(スリット63におけるネジ部61と反対側の部分)に位置した状態となっている。
【0060】
上述のような状態において、リダクションが行われる。具体的には、術者は、リダクションスクリュー60のヘッド部62の先端部(ヘッド部62におけるネジ部61と反対側の部分)にセットスクリュー52をセットして締め込んでいく。こうすると、リダクションスクリュー60とともに、脊椎100が固定ロッド51側へ引っ張られる(図8(B)参照)。これにより、脊椎100を背中側へ引っ張って所望の位置まで移動させることができる。
【0061】
なお、本実施形態に係るリダクションスクリュー60は、上述のようにリダクションが行われた後、術者によってエクステンダー80の各ブレード81に外力が加えられることにより、タブ部65が折り切られて除去される(図8(C)参照)。これにより、リダクションスクリュー60のヘッド部62における、標準スクリュー70よりも上方へ出っ張った部分がなくなるため、人体内に残存する部位を少なくできる。
【0062】
[ロッドキャッチャーの使用方法]
術者は、本実施形態に係るロッドキャッチャー1を用いて、以下のように固定ロッド51をリダクションスクリュー60のスリット63に挿入する。
【0063】
図4から図7等を参照して説明すると、まず、術者は、ロッドキャッチャー1の本体部10を、先端側から患者の開創部内へ挿入する。このとき、例えば術者は、エクステンダー80における上側の部分にロッドキャッチャー1の第1係合部15を係合させた状態で、該ロッドキャッチャー1を開創部内へ挿入し、第2係合部28とエクステンダー80の下側の部分とが係合するまで該本体部10を人体側へ挿入する。これにより、ロッドキャッチャー1とエクステンダー80とを容易に係合することができる。
【0064】
次に、術者は、図9に示すロッドインサータ54を用いて、固定ロッド51をリダクションスクリュー60のスリット63に挿入する。具体的には、術者は、ロッドインサータ54に固定された状態の固定ロッド51の先端部51aを、患者の開創部を介して、ロッドキャッチャー1の手前側から、一対の案内部23,24へ向かって挿入する(図9参照)。
【0065】
一般的に、低侵襲の手術の場合、人体に対する切開範囲が狭くなるように患部が切開されるため、固定ロッド51が挿入される開創部についても、広範囲に亘って切開されることがない。そうすると、術者が、固定ロッド51が挿入される部分を十分に目視で確認することができなくなるため、固定ロッド51をスリット63に挿入することが困難になる。
【0066】
これに対して、本実施形態に係るロッドキャッチャー1によれば、該ロッドキャッチャー1において固定ロッド51が挿入される側に形成される一対の案内部23,24が、固定ロッド51が挿入される側(手前側)に向かって徐々に離反するように形成されている。すなわち、一対の案内部23,24は、固定ロッド51をスリット63へ案内するように形成されている。これにより、術者が、固定ロッド51の先端部51aを一対の案内部23,24へ向けて挿入したときに該先端部51aが左右方向にずれた場合であっても、該先端部51aが一対の案内部23,24のいずれかにおける内側の壁部に当たり、当該壁部に沿ってスリット63内に導かれる。これにより、術者は、固定ロッド51をスムーズにスリット63へ挿入することができる。そして、術者は、固定ロッド51の挿入対象となる他のリダクションスクリュー60又は標準スクリュー70について同様の作業を繰り返すことにより、全てのスクリュー60,70に対してスムーズに固定ロッド51を挿入することができる。
【0067】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るロッドキャッチャー1は、第1係合部15及び第2係合部28がエクステンダー80に係合すると、案内通路29とスリット63とが連通した状態となる。この状態において、一対の案内部23,24は、固定ロッド51が挿入される側(手前側)へ向かって互いに離反して延びるように形成されている。すなわち、ロッドキャッチャー1において各係合部15,28がエクステンダー80に係合すると、一対の案内部23,24が、固定ロッド51が挿入される側へ向かって広がるように配置される。そうすると、術者が固定ロッド51の先端部51aをスリット63へ向かって挿入する際、当該固定ロッド51の先端部51aが多少、スリット63に対して左右方向にずれて挿入された場合であっても、固定ロッド51の先端部51aが一対の案内部23,24によってスリット63側へ案内される。
【0068】
しかも、ロッドキャッチャー1によれば、固定ロッド51をリダクションスクリュー60のスリット63へ挿入するための器具の構成を、比較的シンプルな形状である係合部15,28及び一対の案内部23,24等を有する構成とすることができる。
【0069】
従って、ロッドキャッチャー1では、固定ロッド51をリダクションスクリュー60のスリット63に挿入しやすく、且つ構成が簡素化された脊椎手術用器具を提供できる。
【0070】
また、ロッドキャッチャー1では、第1係合部15及び第2係合部28が、エクステンダー80における外側の部分と係合している。こうすると、係合部がエクステンダー80における内側の部分と係合するように該係合部を形成する必要がなくなる。そうすると、固定ロッド51が挿入される通路の幅を確保することができるため、固定ロッド51をスリット63にスムーズに挿入することができる。
【0071】
また、ロッドキャッチャー1では、リダクションスクリュー60に螺合されるセットスクリュー52を、該ロッドキャッチャー1に形成された開口部16を介してリダクションスクリュー60側へ挿入することができるため、使い勝手のよい脊椎手術用器具を提供することができる。
【0072】
また、ロッドキャッチャー1では、把持部2が、開口部16が開口する方向に対して斜め方向に延びている。こうすると、該ロッドキャッチャー1の使用時において、術者によって把持される部分である把持部2と、セットスクリュー52をリダクションスクリュー60に螺合するためのドライバー等の器具との干渉を回避できる。これにより、更に使い勝手のよい脊椎手術用器具を提供することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0074】
[変形例]
(1)図10は、変形例に係るロッドキャッチャーが、リダクションスクリュー60及びエクステンダー80に対して係合した状態を示す横断面図であって、図7(B)に対応させて示す図である。上述した実施形態では、図7(B)に示すように、エクステンダー80の下側の部分が一対の壁部26,27によって外側から挟まれることにより、ロッドキャッチャー1とエクステンダー80とが係合したが、これに限らない。具体的には、図10に示すように、スリット部25における下側の端部に形成された一対の壁部31,32を、エクステンダー80における一対のブレード81の内側に嵌め込むことにより、ロッドキャッチャーをエクステンダー80に対して係合してもよい。この場合、上述した一対の壁部31,32によって、エクステンダー80に対してロッドキャッチャーを係合するための係合部33が構成される。これにより、ロッドキャッチャーにおける先端側の部分の大きさを、上記実施形態の場合と比べて小さくすることができるため、低侵襲手術に適した脊椎手術用器具を提供できる。
【0075】
(2)図11は、変形例に係るロッドキャッチャー1aの斜視図である。上記実施形態における一対の案内部23,24では、上側から下側に向かってその高さが同じとなるように形成されているが、これに限らない。具体的には、本変形例に係るロッドキャッチャー1aでは、各案内部23a,24aが、上側から下側に向かってその高さが徐々に低くなるように形成されている。言い換えれば、各案内部23a,24aは、下側へ向かって徐々に細くなるように形成されている。これにより、当該一対の案内部23a,24aを、開創部内へスムーズに挿入することができるため、低侵襲手術に適した脊椎手術用器具を提供できる。
【0076】
(3)図12は、変形例に係るロッドキャッチャー1bの斜視図であって、リダクションスクリュー60及びエクステンダー80と係合している状態を示す図である。本変形例に係るロッドキャッチャー1bは、上記実施形態に係るロッドキャッチャー1と比べて、把持部2及び連結部3が省略された構成となっている。更に、本変形例に係るロッドキャッチャー1bでは、上記実施形態の場合とやや構成が異なる本体部10bに対して、キャップ部35が一体化して設けられた構成となっている。
【0077】
本変形例に係るロッドキャッチャー1bは、上述したように、本体部10b及びキャップ部35を有し、これらが一体に形成されている。
【0078】
本体部10bは、前面部12と、右側延出部21と、左側延出部22と、右側案内部23と、左側案内部24とを有し、これらが一体に形成されている。これらの各部12,21,22,23,24は、上述した実施形態に係るロッドキャッチャー1の本体部10において対応する各部12,21,22,23,24と概ね同様の形状を有している。
【0079】
具体的には、前面部12は、本体部10bにおける手前側において上下方向に延びる細長い板状の部分として設けられている。右側延出部21は、前面部12の下端部における右側の部分から下方へ延びるように形成され、左側延出部22は、前面部12の下端部における左側の部分から下方へ延びるように形成されている。右側案内部23及び左側案内部24は、それぞれ、右側延出部21及び左側延出部22のそれぞれから手前側へ向かって、互いに離反するように延びている。なお、本変形例に係るロッドキャッチャー1bでは、上述した実施形態に係るロッドキャッチャー1において形成された第1係合部15及び第2係合部28に対応する形状の係合部は、形成されていない。
【0080】
図12に示すように、キャップ部35は、本体部11bの上端部から上方へ延びるように設けられた略円筒状の部分である。キャップ部35には、該キャップ部35の内側を上下方向に延びる溝状に形成された一対の切欠き溝36が形成され、それぞれに、エクステンダー80の各ブレード81が係合する。これにより、一対のブレード81の互いに対する近接又は離反が規制される。
【0081】
また、キャップ部35には、エクステンダー80に対するロッドキャッチャー1bの上下方向の位置決めを行うための位置決め部37が形成されている。位置決め部37は、上下方向に細長い片状に形成された片部38を有していて、図12に示すように、キャップ部35を厚み方向に貫通するように設けられている。片部38は、該片部38における上下方向の中央部分に設けられた支点軸39と支点として揺動可能である。
【0082】
片部38の先端部38aにおける内側の部分には、キャップ部35の内側へ突出する突出部(図示省略)が形成されていて、ブレード81に形成された穴部(凹部であってもよい)に嵌合して係合する。これにより、ロッドキャッチャー1bの上下方向の位置決めを行うことができる。なお、上述した突出部とブレード81の穴部との係合を解除するためには、片部38の先端部38aをキャップ部35の内側へ付勢するトーションバネ(図示省略)の付勢力に抗して、片部38の基端部38bを押圧すればよい。これにより、片部38の先端部38aに形成された突出部がブレード81の穴部から離間するため、エクステンダー80に対するロッドキャッチャー1bの上下方向の位置決めが解除される。
【0083】
また、上述のようにキャップ部35がエクステンダー80に対して取り付けられることにより、ロッドキャッチャー1bがエクステンダー80に対して係合する。すなわち、本実施形態のキャップ部35は、一対の対向部としての一対のブレード81にロッドキャッチャー1bを係合するための係合部として設けられている。
【0084】
以上のように、本変形例に係るロッドキャッチャー1bでは、キャップ部35によって一対のブレード81の互いに対する近接又は離反が規制されるため、当該一対のブレード81が近接又は離反することに起因して当該一対のブレード81が破損してしまうリスクを低減することができる。
【0085】
また、ロッドキャッチャー1bでは、キャップ部35が、ロッドキャッチャー1bをエクステンダー80に係合するための係合部としての機能を果たすため、当該ロッドキャッチャー1bにおける他の部位に係合部を形成することを省略することができる。その結果、ロッドキャッチャー1bを小型化することができる。
【0086】
(4)図13は、上記実施形態に係るロッドキャッチャー1が、標準スクリュー70に係合している状態を示す図であって、(A)は側方から視た図、(B)は手前側から視た図である。上述した例では、ロッドキャッチャー1が、リダクションスクリュー60及び該リダクションスクリュー60に取り付けられたエクステンダー80に対して適用される例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、ロッドキャッチャー1は、図13に示すように、標準スクリュー70に適用することもできる。
【0087】
図13に示すように、ロッドキャッチャー1を標準スクリュー70に適用する場合には、標準スクリュー70における一対の対向部74を、ロッドキャッチャー1の本体部10に形成された一対の壁部26,27(右側壁部26及び左側壁部27)によって外側から挟むように、ロッドキャッチャー1を標準スクリュー70に対してセットすればよい。このように、上述した構成のロッドキャッチャー1は、リダクションスクリュー60だけでなく、標準スクリュー70に対しても適用することができる。
【0088】
(5)上記実施形態及び変形例では、ロッドキャッチャー1を、リダクションスクリュー60及び標準スクリュー70に適用する例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、ロッドキャッチャー1は、他の形状の脊椎用インプラントであって、固定ロッドが挿入されるスリットを形成する一対の対向部が形成された脊椎用インプラントであれば、どのような脊椎用インプラントに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、固定ロッドを脊椎用インプラントのスリットに挿入するための脊椎手術用器具として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1,1a,1b ロッドキャッチャー(脊椎手術用器具)
15 第1係合部(係合部)
23,23a,24,24a 案内部
28 第2係合部(係合部)
29 案内通路
51 固定ロッド
60 リダクションスクリュー(脊椎用インプラント)
63,73,82 スリット
70 標準スクリュー(脊椎用インプラント)
74 対向部
80 エクステンダー(一対の対向部)
100,101 脊椎
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13