(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体の生体組織に対する超音波のプッシュパルスの送信と、該プッシュパルスによって前記生体組織に生じたせん断弾性波を検出するための検出用超音波パルスの送信とを制御する送信制御部と、
前記検出用超音波パルスによるエコー信号に基づいて、前記生体組織の弾性に関する計測値を算出する計測値算出部と、
前記被検体の同一部分における複数の前記計測値の一覧を表示部に表示させる表示制御部であって、前記検出用超音波パルスによるエコー信号が取得されて前記計測値算出部によって新たに前記計測値が算出される度に、前記一覧を更新する表示制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
前記送信制御部は、所定数の前記計測値が表示されると、前記プッシュパルスの送信と前記検出用超音波パルスの送信とを停止することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
前記表示制御部は、前記生体組織の弾性を正確に反映している度合が高い順序になるように、前記一覧において前記計測値を表示させるものであって、新たに得られた前記計測値について算出された前記評価値を、前記一覧において表示されている前記計測値について算出された前記評価値と比較して、新たに得られた前記計測値を前記一覧に追加して表示させることを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
前記送信制御部は、前記評価値が所定の基準を満たす所定数の前記計測値が表示されると、前記プッシュパルスの送信と前記検出用超音波パルスの送信とを停止することを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置。
前記表示制御部は、前記生体組織の弾性を正確に反映している度合が高い順序になるように、前記一覧において前記評価値が所定の基準を満たす前記計測値を表示させるものであって、新たに得られた前記計測値について算出された前記評価値を、前記一覧において表示されている前記計測値について算出された前記評価値と比較して、新たに得られた前記計測値を前記一覧に追加して表示させることを特徴とする請求項8又は9に記載の超音波診断装置。
前記表示制御部は、前記一覧における計測値として、前記計測値算出部によって前記被検体における同一の部分において得られた複数の前記計測値のうち、前記生体組織の弾性を正確に反映している度合が高い方から数えて所定数の計測値を表示させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
前記表示制御部は、前記生体組織の弾性を正確に反映している度合が高い順序になるように、前記一覧において前記計測値を表示させるものであって、新たに得られた前記計測値について算出された前記評価値を、前記一覧において表示されている前記計測値について算出された前記評価値と比較して、新たに得られた前記計測値を前記一覧に追加して表示させる
ことを特徴とする請求項12に記載の超音波診断装置。
前記表示制御部は、前記計測値が前記生体組織の弾性を正確に反映している度合を示す評価値を前記一覧に表示させることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
前記評価値は、前記生体組織における前記せん断弾性波による前記生体組織の変位の時間変化の波形に基づいて算出されることを特徴とする請求項15又は16に記載の超音波診断装置。
前記計測値は、前記せん断弾性波の伝搬速度又は該伝搬速度に基づいて算出される弾性値であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
被検体の生体組織に対する超音波のプッシュパルスの送信と、該プッシュパルスによって前記生体組織に生じたせん断弾性波を検出するための検出用超音波パルスの送信とを制御する送信制御機能と、
前記検出用超音波パルスによるエコー信号に基づいて、前記生体組織の弾性に関する計測値を算出する計測値算出機能と、
前記被検体の同一部分における複数の前記計測値の一覧を表示部に表示させる表示制御機能であって、前記検出用超音波パルスによるエコー信号が取得されて前記計測値算出機能によって新たに前記計測値が算出される度に、前記一覧を更新する表示制御機能と、
をプログラムによって実行するプロセッサーを備えることを特徴とする超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示処理部5、表示部6、操作部7、制御部8、記憶部9を備える。
【0010】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。この超音波プローブ2により、生体組織にせん断弾性波を生じさせるための超音波パルス(プッシュパルス)が送信される。また、前記超音波プローブ2により、せん断弾性波を検出するための検出用超音波パルスが送信され、そのエコー信号が受信される。
【0011】
また、前記超音波プローブ2により、Bモード画像を作成するための画像用超音波パルスが送信され、そのエコー信号が受信される。
【0012】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記制御部8からの制御信号に基づいて、前記超音波プローブ2を駆動させて所定の送信パラメータ(parameter)を有する前記各種の超音波パルスを送信させる(送信制御機能)。また、送受信ビームフォーマ3は、超音波のエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信ビームフォーマ3及び前記制御部8は、本発明における送信制御部の実施の形態の一例である。また、前記送信制御機能は、本発明における送信制御機能の実施の形態の一例である。
【0013】
前記エコーデータ処理部4は、
図2に示すように、Bモード処理部41、計測値算出部42、評価値算出部43及び統計値算出部44を有する。前記Bモード処理部41は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。
【0014】
前記計測値算出部42は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに基づいて、前記プッシュパルスが送信された前記生体組織の弾性に関する計測値を算出する。具体的には、前記計測値算出部42は、前記計測値として、前記せん断弾性波の伝搬速度を算出する。より詳細には、前記計測値算出部42は、前記検出用超音波パルスによるエコー信号において検出される前記せん断弾性波の伝搬速度を算出する。
【0015】
また、前記計測値算出部42は、前記計測値として、前記生体組織の弾性値(ヤング率(Pa:パスカル))を、前記伝搬速度に基づいて算出してもよい。
【0016】
前記計測値算出部42は、本発明における計測値算出部の実施の形態の一例である。また、前記計測値算出機能による計測値の算出機能は、本発明における計測値算出機能の実施の形態の一例である。
【0017】
ちなみに、前記伝搬速度のみが算出され、前記弾性値は必ずしも算出されなくてもよい。前記伝搬速度のデータ又は前記弾性値のデータを、弾性データと云うものとする。
【0018】
前記評価値算出部43は、前記伝搬速度及び前記弾性値の少なくとも一方が、前記生体組織の弾性を正確に反映している度合を示す評価値を算出する。詳細は後述する。前記評価値算出部43は、本発明における評価値算出部の実施の形態の一例である。
【0019】
前記統計値算出部44は、前記伝搬速度及び前記弾性値の少なくとも一方の統計値を算出する。統計値には、平均値、中央値、散布度などが含まれる。散布度は、標準偏差、分散又は変動係数である。
【0020】
前記表示処理部5は、
図3に示すように、画像表示制御部51、領域設定部52を有する。前記画像表示制御部51は、前記Bモードデータをスキャンコンバータ(scan converter)によって走査変換してBモード画像データを作成し、このBモード画像データに基づくBモード画像を前記表示部6に表示させる。また、前記画像表示制御部51は、前記弾性データをスキャンコンバータによって走査変換して弾性画像データを作成し、この弾性画像データに基づく弾性画像を前記表示部6に表示させる。
【0021】
本例では、
図4に示すように、前記弾性画像EIは、前記Bモード画像BIに設定された関心領域R内に表示される二次元の画像である。前記弾性画像EIは、前記伝搬速度又は前記弾性値に応じた色を有するカラー(color)画像である。前記画像表示制御部51は、前記Bモード画像データ及び前記弾性画像データを合成して合成画像データを作成し、この合成画像データに基づく合成画像CIを前記表示部6に表示させる。この合成画像CIは、Bモード画像BIに設定された関心領域R内に弾性画像EIが表示された画像である。前記弾性画像EIは、背景のBモード画像BIが透過する半透明の画像である。
【0022】
前記画像表示制御部51は、前記合成画像CIとともに、一覧表Tを前記表示部に表示させる。本例では、この一覧表Tは、前記伝搬速度及びこの伝搬速度の評価値を含む。詳細は後述する。前記一覧表Tは、本発明における一覧の実施の形態の一例である。また、前記画像表示制御部51は、本発明における表示制御部の実施の形態の一例である。また、前記画像表示制御部51の機能は、本発明における表示制御機能の実施の形態の一例である。
【0023】
前記関心領域Rは、前記領域設定部52によって設定される。より詳細には、前記領域設定部52は、装置の使用者による前記操作部7における入力に基づいて、前記関心領域Rを設定する。前記関心領域Rは、せん断弾性波が検出される領域であり、この領域において前記検出用超音波パルスの送受信が行われる。
【0024】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。前記表示部6は、本発明における表示部の実施の形態の一例である。
【0025】
前記操作部7は、特に図示しないが、装置の使用者が指示や情報を入力するためのキーボード(keyboard)や、トラックボール(trackball)等のポインティングデバイス(pointing device)などを含んで構成されている。
【0026】
前記制御部8は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーである。この制御部8は、前記記憶部9に記憶されたプログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部を制御する。例えば、前記制御部8は、前記記憶部9に記憶されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムにより、前記送受信ビームフォーマ3、前記エコーデータ処理部4及び前記表示処理部5の機能を実行させる。
【0027】
前記制御部8は、前記送受信ビームフォーマ3の機能のうちの全て、前記エコーデータ処理部4の機能のうちの全て及び前記表示処理部5の機能のうちの全ての機能をプログラムによって実行してもよいし、一部の機能のみをプログラムによって実行してもよい。前記制御部8が一部の機能のみを実行する場合、残りの機能は回路等のハードウェアによって実行されてもよい。
【0028】
なお、前記送受信ビームフォーマ3、前記エコーデータ処理部4及び前記表示処理部5の機能は、回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0029】
前記記憶部9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)などである。
【0030】
前記超音波診断装置1は、前記記憶部9として、前記HDD、前記RAM及び前記ROMの全てを有していてもよい。また、前記記憶部9は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体であってもよい。
【0031】
前記制御部8によって実行されるプログラムは、HDDやROMなどの非一過性の記憶媒体に記憶されている。また、前記プログラムは、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性を有し非一過性の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0032】
次に、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。本例では、N(N:2以上の自然数)回の伝搬速度の計測が行われ、その計測値が表示されるとともに、表示されている計測値の統計値が表示される。ちなみに、一フレームにつき、一回の伝搬速度の計測が行われる。具体的に、
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
先ず、ステップS1において、装置の使用者は被検体の生体組織に対して前記超音波プローブ2による超音波の送受信を行ない、エコー信号に基づくBモード画像BIを表示させる。そして、装置の使用者は、前記操作部7において、
図6に示すように、前記Bモード画像BIに関心領域Rを設定する入力を行なう。これにより、前記Bモード画像BIに関心領域Rが設定される。この関心領域Rは、弾性画像を表示させたい領域に設定される。
【0034】
次に、ステップS2では、前記超音波プローブ2からプッシュパルスが送信される。このプッシュパルスは、例えば、装置の使用者が前記操作部7において弾性画像を表示させる入力を行なうと送信される。前記プッシュパルスは、例えば前記関心領域Rの外側であって、ラテラル(lateral)方向における前記関心領域Rの一端部の近傍に送信される。
【0035】
前記プッシュパルスにより、前記生体組織にせん断弾性波が発生する。前記せん断弾性波は、前記プッシュパルスから遠ざかる方向へ伝播する。
【0036】
次に、ステップS3では、少なくとも前記関心領域Rの中及び前記関心領域Rの輪郭線上において、前記せん断弾性波を検出するための検出用超音波パルスが送信され、そのエコー信号が受信される。前記検出用超音波パルスの送受信は、複数音線について行われる。
【0037】
次に、ステップS4では、前記計測値算出部42は、前記検出用超音波パルスによるエコー信号に基づいて、弾性データを作成する。ここでは、この弾性データは、前記せん断弾性波の伝搬速度のデータである。一フレームにつき、一つの伝搬速度のデータが得られる。
【0038】
前記弾性データは、前記関心領域R内において、前記検出用超音波パルスが送受信される複数の音線の各々において、複数の計測点について作成される。これら計測点は、例えば画素に対応する部分である。
【0039】
前記計測値算出部42は、前記関心領域R内における前記複数の計測点について伝搬速度を算出すると、その平均値、すなわち前記関心領域R内における伝搬速度の平均値を算出する。前記関心領域R内における伝搬速度の平均値を、前記関心領域R内の伝搬速度Vsと云うものとする。
【0040】
ちなみに、関心領域R内における複数の計測点についての伝搬速度が算出され二次元の弾性画像が表示される場合、一フレーム分のプッシュパルスの送信と検出用超音波パルスの送信によって前記伝搬速度を算出することを、一回の弾性計測と云うものとする。
【0041】
また、このステップS4では、前記評価値算出部43は、評価値Qを算出する。具体的に説明する。前記計測値算出部42により、前記計測点の各々において前記せん断弾性波による生体組織の変位の時間変化が得られる。この変位の時間変化は、前記検出用超音波パルスによるエコー信号に基づいて得られる。前記評価値算出部43は、せん断弾性波の伝播方向における二つの計測点における前記変位の時間変化の波形を比較することにより、前記評価値Qを算出する。
【0042】
より詳細に説明する。せん断弾性波は、生体組織内における反射や回折などによってノイズが重畳する場合がある。また、生体組織自体が動く場合もある。このような場合、前記プッシュパルスによって発生したせん断弾性波が、その発生時の波形を維持したまま伝搬しない場合がある。このようなせん断弾性波が前記検出用超音波パルスによって検出されて前記伝搬速度が算出されると、生体組織の弾性を正確に反映した伝搬速度にならない。そこで、前記評価値算出部43は、生体組織を伝播する前記せん断弾性波の発生時の波形が維持されている程度に基づいて、前記評価値Qを算出する。
【0043】
ここで、前記プッシュパルスによって発生したせん断弾性波が、その発生時の波形を維持したまま伝搬しない場合、前記せん断弾性波による生体組織の変位の時間変化の波形を、二つの計測点において比較すると、一致度が低下する。そこで、上述のように、前記評価値算出部43は、せん断弾性波の伝播方向における二つの計測点における前記変位の時間変化の波形を比較することにより、前記評価値Qを算出する。
【0044】
具体的に説明する。
図7には、被検体における二つの計測点A,Bが示されている。前記計測点Aは、前記関心領域Rの輪郭線上に位置し、前記計測点Bは、前記関心領域R内に位置する。前記計測点A,Bは、プッシュパルスPPによって生じたせん断弾性波SWの伝播方向d(矢印の方向)に位置する。また、前記計測点A,Bは、前記検出用超音波パルスが送受信される音線上に位置する。
【0045】
例えば、
図7に示す計測点Aにおける前記せん断弾性波による生体組織の変位の時間変化をプロットすることにより、
図8に示すように、変位の時間変化の波形Waが得られたとする。また、前記
図7に示す計測点Bにおける前記せん断弾性波による生体組織の変位の時間変化をプロットすることにより、
図9に示すように、変位の時間変化の波形Wbが得られたとする。
【0046】
前記評価値算出部43は、前記波形Wa及び前記波形Wbに対して相互相関演算を行ない、波形の一致度を算出する。前記評価値算出部43は、一致度が最も高い部分の相関係数に応じた評価値Qを算出する。得られた評価値Qは、前記計測点Bにおいて得られた伝搬速度の評価値とされる。
【0047】
前記評価値Qは、例えば0〜100の範囲の数値である。前記評価値Qは、数値が大きいほど、生体組織の弾性を正確に反映している度合が高い。相関係数が大きいほど、前記評価値Qは大きくなる。一方、相関係数が小さいほど、前記評価値Qは小さくなる。例えば、前記波形Wbが、
図10に示すようにばらついていると、前記波形Wa及び前記波形Wbに対する相互相関演算の相関係数は小さくなり、前記評価値Qは小さくなる。
【0048】
前記評価値算出部43は、このように異なる二つの計測点において、前記せん断弾性波による生体組織の変位の時間変化の波形に対する相互相関演算を行ない、一方の計測点について、相関係数に応じた評価値Qを算出する。そして、前記評価値算出部43は、前記関心領域R内の全ての計測点について、前記評価値Qを算出する。前記二つの計測点のうち、少なくともいずれか一方は、前記関心領域R内にあるものとする。
【0049】
さらに、このステップS4では、前記統計値算出部44が、前記関心領域R内の伝搬速度Vsの統計値と前記評価値Qsの統計値を算出する。ここで、
図5のフローチャートにおいて、ステップS1〜S6のループ(loop)は、N回繰り返される。前記統計値算出部44は、このループにおけるM(M≦N)ループ目までに前記ステップS4で得られた前記関心領域R内の伝搬速度Vsの統計値及び前記評価値Qの統計値を算出する。統計値は、本例では平均値及び標準偏差である。前記関心領域R内の伝搬速度Vsの平均値を平均値Vs
AVとし、前記評価値Qの平均値を平均値Q
AVとする。また、前記関心領域R内の伝搬速度Vsの標準偏差を標準偏差Vs
SDとし、前記評価値Qの標準偏差を標準偏差Q
SDとする。
【0050】
次に、ステップS5では、前記画像表示制御部51は、
図11に示すように、前記関心領域Rに弾性画像EIが表示された合成画像CIを前記表示部6に表示させる。また、前記画像表示制御部51は、前記合成画像CIとともに、前記表示部6に表示された一覧表Tに、前記ステップS4で得られた前記関心領域R内の伝搬速度Vs、前記評価値Q、前記平均値Vs
AV,Q
AV、前記標準偏差Vs
SD,Q
SDを表示させる。この一覧表Tの最も左の欄には、フレーム番号Fも表示される。
【0051】
次に、ステップS6では、前記制御部8は、前記一覧表TにN個(Nフレーム分)の前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが表示されたか否かを判定する。前記一覧表TにN個の前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが表示されていないと判定された場合(ステップS6において「NO」)、前記ステップS1の処理へ戻り、再度このステップS1からの処理が行われる。この場合、再度前記ステップS4において前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが得られると、ステップS5において、前記画像表示制御部51は、
図12に示すように、新たに得られた前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qを前記一覧表Tに追加して表示させ、この一覧表Tを更新する。また、前記画像表示制御部51は、前記一覧表Tにおける前記平均値Vs
AV,Q
AV、前記標準偏差Vs
SD,Q
SDの表示を更新する。
【0052】
一方、ステップS6において、
図13に示すように、前記一覧表TにN個の前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが表示されたと判定された場合(ステップS6において「NO」)、処理を終了する。ここでは、N=5である。従って、前記一覧表Tにおいて、前記被検体の生体組織の同一の部分における5個の伝搬速度が表示される。また、前記一覧表TにN個の前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが表示されたと判定されると、前記プッシュパルスの送信と前記検出用超音波パルスの送信とが停止される。
【0053】
以上説明した本例によれば、前記一覧表Tにおいて前記伝搬速度Vsが算出される度に、その伝搬速度Vsが前記一覧表Tに追加されることによってこの一覧表Tの表示が更新されるので、装置の使用者は現時点で、生体組織の同一部分における伝搬速度Vsがいくつ得られたかを知ることができるとともに、数値のばらつき度合いを知ることができる。また、数値のばらつき度合いは、前記標準偏差Vs
SDによっても知ることができる。さらに、複数の前記伝搬速度Vsの平均値Vs
AVが表示されるので、より正確な生体組織の弾性を知ることができる。
【0054】
また、前記評価値Qが表示されるので、表示されている伝搬速度Vsが、生体組織の弾性をどれだけ正確に反映したものであるかを知ることができる。また、前記平均値Q
AVが表示されるので、複数の前記伝搬速度Vsの全体の正確性を知ることができる。さらに、前記標準偏差Q
SDが表示されることにより、前記評価値Qのばらつき度合いを知ることができる。
【0055】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。前記画像表示制御部51は、前記評価値Qが閾値Qth以上であるか否かによって、
図14に示すように、前記一覧表Tにおいて、異なる表示形態で前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fを表示させる。これにより、装置の使用者は、生体組織の弾性を正確に反映していないおそれがある伝搬速度Vsを容易に把握することができる。
【0056】
ここでは、前記閾値Qthが70未満であるものとする。伝搬速度Vs=1.8であるフレーム番号F=3においては、前記評価値Q=40であるため、前記一覧表Tにおいて、これらの数値が表示された行には、ドットが表示されている。ただし、このような表示形態に限られるものではなく、例えば前記フレーム番号F=3、前記伝搬速度Vs=1.8、前記評価値Q=40の数値の各々が、前記一覧表Tにおける他の数値とは異なる色で表示されてもよい。
【0057】
次に、第二変形例について説明する。前記画像表示制御部51は、
図15に示すように、前記一覧表Tにおいて、前記評価値Qが高い順に、前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fを並べて表示させる。ここでは、前記一覧表Tにおいて、上から前記評価値Qが高い順序で、前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fが表示されている。前記画像表示制御部51は、新たに得られた前記伝搬速度Vsの前記評価値Qを、すでに前記一覧表Tに表示されている前記伝搬速度Vsの前記評価値Qと比較して、新たに得られた前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが表示される位置を決定し、これらを追加して表示させて前記一覧表Tを更新する。
【0058】
第二変形例によれば、評価値Qの大きさの順序で前記一覧表Tが表示されるので、装置の使用者は、前記一覧表Tを見ることにより、どれくらいの数の前記伝搬速度Vsが、どの程度の正確性で取得できているかを容易に把握することができる。
【0059】
第一実施形態において、前記一覧表TにN個の前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが表示されても、処理が終了とならなくてもよい。例えば、第二変形例のような表示形態で前記一覧表Tが表示される場合、装置の使用者が、所要の評価値Q以上の前記伝搬速度Vsが、所要の数だけ得られたと判断した場合に、装置の使用者が前記操作部7において処理を終了する入力を行なってもよい。
【0060】
次に、第三変形例について説明する。
図16に示すように、前記一覧表Tにおいて、前記閾値Qth未満の伝搬速度Vsが表示された行を、前記表示部6に表示されたカーソルCによって、装置の使用者が前記操作部7を用いて指示する入力を行なってもよい。この入力があると、前記画像表示制御部51は、前記一覧表Tにおいて、前記カーソルCによって指示された行における前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fの表示を、
図17に示すように削除する。また、前記画像表示制御部51は、削除された行よりも下の行を順次繰り上げて表示する。
【0061】
前記画像表示制御部51は、前記カーソルCによって指示する入力が行われると、前記一覧表Tにおいて、前記カーソルCによって指示された行における前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fを、他の行における前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fとは異なる色で表示するなど、異なる表示形態で表示させてもよい。
【0062】
また、前記画像表示制御部51は、前記カーソルCによって指示する入力が行われると、前記一覧表Tにおいて前記カーソルCによって指示された行に表示された前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fを、予め定められた異なる位置の行に表示させてもよい。例えば、前記画像表示制御部51は、前記カーソルによって指示された行に表示された前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fを、前記一覧表Tに表示された前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fの中で最も下の行に表示させてもよい。
【0063】
また、前記統計値算出部44は、表示が削除された前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qを除いて、新たな平均値Vs
AV,Q
AV及び標準偏差Vs
SD,Q
SDを算出する。そして、前記画像表示制御部51は、これら新たな平均値Vs
AV,Q
AV及び標準偏差Vs
SD,Q
SDを表示する。
【0064】
第三変形例によれば、装置の使用者によって、前記一覧表Tに表示された伝搬速度Vsを削除することができるので、前記一覧表Tにおいて、生体組織の弾性を正確に反映した伝搬速度Vsのみを表示させることができる。また、前記一覧表Tにおいて、削除された伝搬速度Vsを除いた平均値Vs
AVが新たに表示されるので、装置の使用者は、より正確な数値を知ることができる。
【0065】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。以下、前記第一実施形態と異なる点について説明する。
【0066】
本例では、前記画像表示制御部51は、前記評価値Qが前記閾値Qth以上である伝搬速度Vsを前記一覧表Tに表示させる。そして、前記一覧表Tに、N個の伝搬速度Vsが表示されるまで、前記プッシュパルスと前記検出用超音波パルスが送信され、前記伝搬速度Vsが算出される。
【0067】
図18のフローチャートに基づいて、第二実施形態の超音波診断装置1の作用について具体的に説明する。ステップS11〜S14については、前記第一実施形態における前記ステップS1〜S4と同一の処理である。次に、ステップS15では、前記画像表示制御部51は、前記ステップS14で得られた前記評価値Qが前記閾値Qth以上であるか否かを判定する。前記評価値Qが前記閾値Qth未満である場合(前記ステップS15において「NO」)、前記ステップS11の処理へ戻る。一方、前記評価値Qが前記閾値Qth以上である場合(前記ステップS15において「YES」)、ステップS16の処理へ移行する。
【0068】
ステップS16では、前記第一実施形態における前記ステップS5と同様に、前記画像表示制御部51が、前記合成画像CIを前記表示部6に表示させ、前記一覧表Tに、前記ステップS14で得られた前記伝搬速度Vs、前記評価値Q、前記平均値Vs
AV,Q
AV、前記標準偏差Vs
SD,Q
SD、フレーム番号Fを表示させる。
【0069】
次に、ステップS17では、前記第一実施形態における前記ステップS6と同様に、前記制御部8は、前記一覧表TにN個(Nフレーム)の前記伝搬速度Vs及び前記評価値Qが表示されたか否かを判定する。これにより、
図19に示すように、前記評価値Qが前記閾値Qth以上であるN個(ここでは、N=5)の前記伝搬速度Vsが表示されると、前記プッシュパルスの送信と前記検出用超音波パルスの送信とが停止され、処理が終了する。
【0070】
本例によれば、前記評価値Qが前記閾値Qth以上であるN個の前記伝搬速度Vsが表示されるまで、前記一覧表Tの表示が更新されるので、装置の使用者が煩雑な操作をすることなく、生体組織の弾性をできるだけ正確に反映したN個の前記伝搬速度Vsを表示させることができる。これにより、装置の使用者は、より正確な弾性を容易に知ることができる。
【0071】
本例においても、前記画像表示制御部51は、前記第一実施形態の第二変形例と同様に、前記一覧表Tにおいて、前記評価値Qが高い順に、前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fを並べて表示させてもよい。
【0072】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。以下、前記第一、第二実施形態と異なる点について説明する。
【0073】
本例では、前記画像表示制御部51は、前記計測値算出部42によって得られた前記関心領域R内の前記伝搬速度Vsのうち、前記評価値Qが高い方から数えてN個の前記伝搬速度Vsを表示させる。
【0074】
図20のフローチャートに基づいて、第三実施形態の超音波診断装置1の作用について具体的に説明する。ステップS21〜S24については、前記ステップS1〜S4及び前記ステップS11〜S14と同一の処理である。次に、ステップS25では、前記画像表示制御部51は、前記一覧表Tに、N個の前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fが表示されているか否かを判定する。「N」は、前記一覧表Tに表示される前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fの各々の最大の数である。例えば、上記各実施形態と同様に、N=5である。
【0075】
N個の前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fが表示されていないと判定された場合(ステップS25において「NO」)、ステップS27の処理へ移行する。このステップS27では、前記ステップS5,S16と同様に、前記合成画像CI及び前記ステップS24で得られた前記伝搬速度Vs、前記評価値Q、前記平均値Vs
AV,Q
AV、前記標準偏差Vs
SD,Q
SD、フレーム番号Fが表示される。
【0076】
一方、前記ステップS25において、N個の前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fが表示されていると判定された場合(ステップS25において「YES」)、ステップS26の処理へ移行する。ステップS26では、前記画像表示制御部51は、前記ステップS24で得られた前記評価値Qと、前記一覧表Tに表示された最小の評価値Qminとを比較し、Q>Qminであるか否かを判定する。
【0077】
ここで、前記ステップS24で得られた前記評価値Qは、本発明における第一の計測値の評価値の実施の形態の一例である。また、前記最小の評価値Qminは、本発明における第二の計測値の評価値の実施の形態の一例である。
【0078】
前記ステップS26において、Q>Qminであると判定された場合(ステップS26において「YES」)、前記ステップS27の処理へ移行する。前記ステップS26から前記ステップS27へ移行した場合、前記画像表示制御部51は、前記一覧表Tに表示されている最小の評価値Qmin及びこれに対応する伝搬速度Vs及びフレーム番号Fに代えて、前記ステップS24で得られた前記評価値Q及びこれに対応する伝搬速度Vs及びフレーム番号Fを前記一覧表Tに表示させることにより、この一覧表Tを更新する。これにより、前記評価値Qが高い方から数えてN個(本例では5個)の前記伝搬速度Vsが表示された状態となる。また、前記画像表示制御部51は、前記一覧表Tにおける前記平均値Vs
AV,Q
AV及び前記標準偏差Vs
SD,Q
SDの表示を更新する。
【0079】
一方、前記ステップS26において、Q>Qminではないと判定された場合(ステップS26において「NO」)、ステップS28の処理へ移行する。また、前記ステップS27において、前記伝搬速度Vs、前記評価値Q、前記平均値Vs
AV,Q
AV、前記標準偏差Vs
SD,Q
SD、フレーム番号Fが表示されると、前記ステップS28の処理へ移行する。
【0080】
前記ステップS28では、処理を終了するか否かが判定される。例えば、前記制御部8は、前記操作部7において処理を終了する入力があった場合、処理を終了すると判定する(ステップS28において「YES」)。一方、前記制御部8は、前記操作部7において処理を終了する入力がない場合、処理を終了しないと判定する(ステップS28において「NO」)。この場合、前記ステップS21の処理へ戻る。
【0081】
本例によれば、前記評価値Qが高い方から数えてN番目までの伝搬速度Vsを前記一覧表Tに表示させることができるので、装置の使用者は、より正確な生体組織の弾性を知ることができる。
【0082】
本例においても、前記画像表示制御部51は、前記第一実施形態の第二変形例と同様に、前記一覧表Tにおいて、前記評価値Qが高い順に、前記伝搬速度Vs、前記評価値Q及び前記フレーム番号Fを並べて表示させてもよい。
【0083】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記ステップS4,S14,S24において、前記計測値算出部42は、前記弾性値を算出してもよい。この場合、前記画像表示制御部51は、前記伝搬速度に代えて又は前記伝搬速度とともに、前記弾性値を前記一覧表Tに表示させてもよい。
【0084】
また、
図21に示すように、前記関心領域R内における一部の領域rp内の計測点についての伝搬速度が算出され、その平均値を前記伝搬速度Vsとしてもよい。例えば、装置の使用者が、前記操作部7によって前記領域rpを設定する入力を行なうことにより、前記領域設定部52が前記領域rpを設定してもよい。
【0085】
さらに、二次元の弾性画像EIが表示されずに、
図22に示すように、関心部分Pについての弾性に関する計測値(伝搬速度、弾性値)が算出され、前記一覧表Tに表示されてもよい。
【0086】
また、上述した前記評価値Qの算出手法は一例である。前記評価値算出部43は、生体組織を伝播する前記せん断弾性波の発生時の波形が維持されている程度を、他の手法によって算出し、前記評価値Qを算出してもよい。例えば、前記評価値算出部43は、前記計測点における前記せん断弾性波による生体組織の変位の時間変化の波形のS/Nに基づいて、その計測点における前記評価値Qを算出してもよい。この場合、例えば、S/Nが悪いほど、前記評価値Qが低くなる。
【0087】
また、前記計測点における変位の時間変化の波形におけるピーク(peak)の数に基づいて前記評価値Qを算出してもよい。この場合、前記
図10に示すように前記計測点における変位の時間変化の波形におけるピークの数が多くなるほど、前記評価値Qが低くなる。