特許第6475501号(P6475501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475501塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体、成形体、塩化ビニル配管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475501
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体、成形体、塩化ビニル配管
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20190218BHJP
   C08L 25/00 20060101ALI20190218BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20190218BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08L25/00
   C08F212/00
   F16L11/04
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-11983(P2015-11983)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-138156(P2016-138156A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年9月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下木場 裕一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 欽也
(72)【発明者】
【氏名】西野 広平
(72)【発明者】
【氏名】進藤 有一
(72)【発明者】
【氏名】野口 哲央
(72)【発明者】
【氏名】松本 真典
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−159517(JP,A)
【文献】 特開昭57−162744(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/065129(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/021264(WO,A1)
【文献】 特開昭57−162745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00− 27/24
C08L 25/00− 25/18
C08F 212/00−212/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル単量体単位45〜85質量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位5〜45質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位10〜30質量%、及び共重合可能なビニル単量体としてのアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミドから選ばれる少なくとも一種の単量体単位(ただし、芳香族ビニル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位及び共重合可能なビニル単量体の合計を100質量%とする)からなり、重量平均分子量(Mw)が10〜20万である塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体5〜50質量%と塩化ビニル樹脂50〜95質量%からなる樹脂組成物。
【請求項2】
220℃、98N荷重で測定したメルトマスフローレート(MFR)が0.5〜20.0g/分である塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体を用いた請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
50N荷重で測定したビカット軟化温度が110〜150℃である塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体を用いた請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項5】
請求項3に記載の樹脂組成物からなる塩化ビニル配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体、塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体と塩化ビニル樹脂からなる樹脂組成物、及びその樹脂組成物からなる成形体、塩化ビニル配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂は、上・下水道管、継手、雨樋、波板、サッシ、床材、壁紙、ビニールレザー、ホース、電線被覆など多岐用途で使用されているが、耐熱温度が低い為、加熱変形の問題や、耐熱性が必要な部材では用途が限定されてしまう。特に、塩化ビニル配管は、耐薬品性、耐久性、難燃性に優れ、軽量でかつ安価であることから、上・下水道管などの建材用途で使用されているが、耐熱温度が低い為、夏場などの高温環境下での熱変形の問題や、温水などの耐熱性が必要な部材では使用方法が限定されてしまう。塩化ビニル樹脂の耐熱性を向上させる為に、塩化ビニル樹脂を更に塩素化させた塩素化塩化ビニル樹脂があるが、成形加工時の熱安定性が悪く、着色やガス焼けによる外観不良が発生してしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−27339号
【特許文献2】特開2008−156391号
【特許文献3】特開2004−99669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、塩化ビニル樹脂の耐熱性を向上させ、且つ熱安定性も良好で外観に優れた成形品が得られることを可能にする塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体を提供することであり、特に、耐熱性と熱安定性に優れ、良外観な塩化ビニル配管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を要旨とするものである。
(1)芳香族ビニル単量体単位45〜85質量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位5〜45質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位10〜30質量%からなり、重量平均分子量(Mw)が10〜20万である塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体。
(2)220℃、98N荷重で測定したメルトマスフローレート(MFR)が0.5〜20.0g/分である(1)に記載の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体。
(3)50N荷重で測定したビカット軟化温度が110〜150℃である(1)又は(2)に記載の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体5〜50質量%と塩化ビニル樹脂50〜95質量%からなる樹脂組成物。
(5)(4)に記載の樹脂組成物からなる成形体。
(6)(4)に記載の樹脂組成物からなる塩化ビニル配管。
【発明の効果】
【0006】
本発明の共重合体は、塩化ビニル樹脂の耐熱性を向上させ、且つ熱安定性も良好で外観に優れた成形品を提供することが出来、また本発明の塩化ビニル配管は、配管部材に好適に利用することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<用語の説明>
本願明細書において、例えば、「A〜B」なる記載は、A以上でありB以下であることを意味する。
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0009】
塩化ビニル樹脂とは、下式(1)に示すように塩化ビニル単量体単位からなる樹脂のことである。なお、nは重合度を示す整数である。
【0010】
【化1】

【0011】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体において、芳香族ビニル単量体単位としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどの各スチレン系単量体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも好ましくはスチレン単位である。これら芳香族ビニル単量体単位は、1種類でもよく、2種類以上の併用であってもよい。
【0012】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなどの各メタクリル酸エステル単量体、およびメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレートなどの各アクリル酸エステル単量体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも好ましくはメチルメタクリレート単位である。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、1種類でもよく、2種類以上の併用であってもよい。
【0013】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体において、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アコニット酸無水物などの各無水物単量体に由来する単位が挙げられる。これらの中でも好ましくはマレイン酸無水物単位である。不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位は、1種でもよく、2種類以上の併用であってもよい。
【0014】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体の構成単位は、芳香族ビニル単量体単位45〜85質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位5〜45質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位10〜30質量%であり、好ましくは芳香族ビニル単量体単位50〜73質量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位8〜38質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位12〜25質量%である。なお、各単量体単位の組成分析は、C−13NMR法にて下記記載の測定条件で測定された値である。
装置名:FT−NMR AVANCE300(BRUKER社製)
溶媒:重水素化クロロホルム
濃度:14質量%
温度:27℃
積算回数:8000回
【0015】
芳香族ビニル単量体単位が85質量%以下であれば、塩化ビニル樹脂との相溶性と耐熱性付与効果が向上する。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が45質量%以下であれば、塩化ビニル樹脂に配合して得られる樹脂組成物を成形加工した際には、熱安定性に優れ、良外観な成形体が得られる。不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位が30質量%以下であれば、塩化ビニル樹脂への耐熱性付与効果を維持したまま、成形加工が可能な樹脂組成物が得られる。一方、芳香族ビニル単量体単位が45質量%以上であれば、塩化ビニル樹脂に配合して得られる樹脂組成物を成形加工した際には、熱安定性に優れ、良外観な成形体が得られる。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が5質量%以上であれば、塩化ビニル樹脂への耐熱性付与効果を維持したまま、塩化ビニル樹脂との相溶性が向上する。不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位が10質量%以上であれば、塩化ビニル樹脂への耐熱性付与効果が向上する。
【0016】
なお本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体は、芳香族ビニル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、および不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位以外の、共重合可能なビニル単量体の単位を共重合体中に発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよく、好ましくは5質量%以下である。共重合可能なビニル単量体の単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体、アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸単量体、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−アルキルマレイミド単量体、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミドなどのN−アリールマレイミド単量体などの各単量体に由来する単位が挙げられる。共重合可能なビニル単量体の単位は、2種類以上の併用であってもよい。
【0017】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体は、重量平均分子量(Mw)が10万〜20万であることが好ましく、より好ましくは重量平均分子量(Mw)が12万〜18万である。重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、成形加工温度の低い塩化ビニル樹脂との相溶性が悪くなり、得られる樹脂組成物の成形加工性や成形品の外観が劣る場合がある。重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、成形加工性や成形品の強度に劣る場合がある。なお、重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、下記記載の測定条件における測定値である。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製した。
【0018】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体は、220℃、98N荷重で測定したメルトマスフローレート(MFR)は、0.5〜20.0g/分であることが好ましく、より好ましくは1.0〜15.0g/分である。メルトマスフローレート(MFR)が低すぎると、成形加工温度の低い塩化ビニル樹脂との相溶性が悪くなり、得られる樹脂組成物の成形加工性や成形品の外観が劣る場合がある。メルトマスフローレート(MFR)が高すぎると、成形加工性や成形品の強度に劣る場合がある。なお、メルトマスフローレート(MFR)とは、JIS K7210:1999に基づき、220℃、98N荷重にて測定した値である。
【0019】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体は、50N荷重で測定したビカット軟化温度が110〜150℃であることが好ましく、120〜145℃であることがより好ましい。ビカット軟化温度が110〜150℃の範囲であれば、塩化ビニル樹脂に所定量配合することで耐熱性に優れる樹脂組成物が得られることから好ましい。ビカット軟化温度は、JIS K7206:1999に基づき、50法(荷重50N、昇温速度50℃/時間)で試験片は10mm×10mm、厚さ4mmのものを用いた測定値である。
【0020】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体の製造方法について説明する。
重合様式においては特に限定はなく、溶液重合、塊状重合等公知の方法で製造できるが、溶液重合がより好ましい。溶液重合で用いる溶剤は、副生成物が出来難く、悪影響が少ないという観点から非重合性であることが好ましい。溶剤の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン等のエーテル類、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素などが挙げられるが、単量体や共重合体の溶解度、溶剤回収のし易さの観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。溶剤の添加量は、得られる共重合体量100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、さらに好ましくは30〜80質量部である。10質量部以上であれば、反応速度および重合液粘度を制御する上で好適であり、100質量部以下であれば、所望の重量平均分子量(Mw)を得る上で好適である。
【0021】
重合プロセスは回分式重合法、半回分式重合法、連続重合法のいずれの方式であっても差し支えないが、所望の重量平均分子量(Mw)を得る上で回分式重合法が好適である。
【0022】
重合方法は特に限定されないが、簡潔プロセスによって生産性良く製造することが可能であるという観点から、好ましくはラジカル重合法である。重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例えばジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の公知の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスメチルプロピオニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル等の公知のアゾ化合物を用いることができる。これらの重合開始剤は2種以上を併用することも出来る。これらの中でも10時間半減期温度が、70〜110℃である有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0023】
重合の際、共重合組成分布が小さくなるように重合することが好ましい。芳香族ビニル単量体と不飽和ジカルボン酸無水物単量体とが強い交互共重合性を有することから、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合速度に対応するように不飽和ジカルボン酸無水物単量体を連続的に分添する方法が好適である。重合速度のコントロールについては、重合温度、重合時間、および重合開始剤添加量とで調整することが出来る。重合開始剤を連続分添すると、より重合速度をコントロールし易くなるので好ましい。共重合体組成分布を小さくすることで、耐熱性と強度のバランスに優れた共重合体を得ることができることから好ましい。共重合体組成分布は、共重合体の透明性によって評価することができる。共重合組成分布の目安として、ASTM D1003に基づき測定した2mm厚みの全光線透過率が88%以上であることが好ましい。
【0024】
さらに、好ましい重量平均分子量(Mw)の範囲である10万〜20万である共重合体を得る方法については、重合温度、重合時間、および重合開始剤添加量の調整に加えて、溶剤添加量および連鎖移動剤添加量を調整することで得ることが出来る。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンや2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。
【0025】
重合終了後、重合液には必要に応じて、ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物などの耐熱安定剤、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等の耐光安定剤、滑剤や可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油等の添加剤を加えても構わない。その添加量は全単量体単位100質量部に対して0.2質量部未満であることが好ましい。これらの添加剤は単独で用いても、2種類以上を併用しても構わない。
【0026】
重合液から本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体を回収する方法については、特に限定はなく、公知の脱揮技術を用いることが出来る。例えば、重合液を二軸脱揮押出機にギヤーポンプを用いて連続的にフィードし、重合溶剤や未反応モノマー等を脱揮処理する方法が挙げられる。なお、重合溶剤や未反応モノマー等を含む脱揮成分は、コンデンサー等を用いて凝縮させて回収し、凝縮液を蒸留塔にて精製することで、重合溶剤は再利用することが可能である。
【0027】
このようにして得られる本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体は、塩化ビニル樹脂の耐熱改質材として用いることができる。本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体と塩化ビニル樹脂とを混練混合して樹脂組成物を得る方法については、特に限定はなく、公知の溶融混練技術を用いることが出来る。好適に使用できる溶融混練装置としては、単軸押出機、噛合形同方向回転または噛合形異方向回転二軸押出機、非または不完全噛合形二軸押出機等のスクリュー押出機、バンバリーミキサー、コニーダー及び混合ロール等がある。
【0028】
塩化ビニル樹脂がパウダー形状である場合は、本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体もパウダー形状に粉砕して使用した方が好ましい。粉砕方法としては、特に限定はなく、公知の粉砕技術を用いることが出来る。好適に使用できる粉砕装置としては、ターボミル式粉砕機、ターボディスクミル式粉砕機、ターボカッター式粉砕機、ジェットミル式粉砕機、衝撃式粉砕機、ハンマー式粉砕機、振動式粉砕機等がある。
【0029】
本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体と塩化ビニル樹脂の配合割合は、塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体5〜50質量%と、塩化ビニル樹脂50〜95質量%であると得られる樹脂組成物の耐熱性、熱安定性、外観に優れる。塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体10〜40質量%と、塩化ビニル樹脂60〜90質量%であると更に好ましく、塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体20〜30質量%と、塩化ビニル樹脂70〜80質量%であるとより更に好ましい。
【0030】
なお本発明の塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体と塩化ビニル樹脂からなる樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で安定剤や可塑剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、相溶化剤、充填剤、加工性改良剤、強化剤、帯電防止剤、難燃剤、初期着色改善剤、導電性付与剤等の添加剤を加えても構わない。これらの添加剤は単独で用いても、2種類以上を併用しても構わない。
【0031】
共重合体と塩化ビニル樹脂からなる樹脂組成物を成形加工して塩化ビニル配管を得る方法については、特に限定はなく、公知の成形加工技術を用いることが出来る。好適に使用できる成形加工技術としては、押出成形法、カレンダー成形法、射出成形法、プレス成形法ディッピング加工法、コーティング加工法等がある。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0033】
<共重合体(A−1)の製造例>
マレイン酸無水物が20質量%濃度となるようにメチルイソブチルケトンに溶解させた20%マレイン酸無水物溶液と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが2質量%となるようにメチルイソブチルケトンに希釈した2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液とを事前に調製し、重合に使用した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液2.8kg、スチレン24kg、メチルメタクレリレート10.4kg、t−ドデシルメルカプタン40gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を2.1kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を375g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを40g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま2.1kg/時の分添速度を維持しながら、8℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で25.2kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(A−1)を得た。得られた共重合体(A−1)をC−13NMR法により組成分析を行った。さらに重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表1に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、91.8%であった。
【0034】
<共重合体(A−2)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液3.8kg、スチレン24kg、メチルメタクレリレート8.4kg、t−ドデシルメルカプタン32gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を2.85kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を300g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを40g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま2.85kg/時の分添速度を維持しながら、8℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で34.2kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(A−2)を得た。得られた共重合体(A−2)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表1に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、90.2%であった。
【0035】
<共重合体(A−3)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液2kg、スチレン24kg、メチルメタクレリレート12kg、t−ドデシルメルカプタン40g、メチルイソブチルケトン5kgを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を1.5kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を375g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを40g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま1.5kg/時の分添速度を維持しながら、8℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で18kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(A−3)を得た。得られた共重合体(A−3)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表1に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、90.8%であった。
【0036】
<共重合体(A−4)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液5kg、スチレン24kg、メチルメタクレリレート6kg、t−ドデシルメルカプタン50gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を3.75kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を300g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを40g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま3.75kg/時の分添速度を維持しながら、8℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で45kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(A−4)を得た。得られた共重合体(A−4)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表1に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、90.0%であった。
【0037】
<共重合体(A−5)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液2.8kg、スチレン13.8kg、メチルメタクレリレート16kg、t−ドデシルメルカプタン48gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を2.8kg/時、スチレン0.5kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を300g/時の分添速度で各々連続的に6時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを20g添加した。20%マレイン酸無水物溶液およびスチレンは、各々そのまま2.8kg/時、0.5kg/時の分添速度を維持しながら、10℃/時の昇温速度で3時間かけて118℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は積算で25.2kgになった時点で、スチレンの分添は積算で4.5kgになった時点で、各々の分添を停止した。昇温後、1時間118℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(A−5)を得た。得られた共重合体(A−5)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表1に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、89.5%であった。
【0038】
<共重合体(A−6)の製造例>
25%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート溶液は(A−1)と同様に調整した。攪拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、25%マレイン酸無水物溶液1.68kg、スチレン14.8kg、メチルメタクリレート1kg、t−ドデシルメルカプタン10gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら40分かけて97℃まで昇温した。昇温後97℃を保持しながら、25%マレイン酸無水溶液と、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液とを各々連続的に分添開始した。25%マレイン酸無水物溶液は、分添開始6時間目までが1.61kg/時、6時間目から9時間目までが0.91kg/時、9時間目から12時間目までが0.66kg/時、12時間目から15時間目までが0.25kg/時の分添速度となるように段階的に分添速度を変え、合計で15.12kg添加した。2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート溶液は、分添開始から9時間目までが0.13kg/時、9時間目から15時間目までが0.3kg/時の分添速度となるように段階的に分添速度を変え、合計で2.97kg添加した。重合温度は、分添開始から9時間目までは97℃を保持し、その後3.5℃/時の昇温速度で6時間かけて118℃まで昇温し、さらに118℃を1時間保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(A−6)を得た。得られた共重合体(A−6)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表1に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、89.5%であった。
【0039】
<共重合体(B−1)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液2.8kg、スチレン24kg、メチルメタクレリレート10.4kgを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を1.68kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を200g/時の分添速度で各々連続的に10時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを20g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま1.68kg/時の分添速度を維持しながら、6.4℃/時の昇温速度で5時間かけて120℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で25.2kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(B−1)を得た。得られた共重合体(B−1)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表2に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、90.3%であった。
【0040】
<共重合体(B−2)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液2.8kg、スチレン24kg、メチルメタクレリレート10.4kg、t−ドデシルメルカプタン300gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を2.1kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を375g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを40g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま2.1kg/時の分添速度を維持しながら、8℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で25.2kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(B−2)を得た。得られた共重合体(B−2)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表2に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、91.5%であった。
【0041】
<共重合体(B−3)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液8kg、スチレン0.8kg、メチルメタクレリレート17.6kg、t−ドデシルメルカプタン30gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて88℃まで昇温した。昇温後88℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を2.5kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を250g/時の分添速度で各々連続的に6時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを10g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま2.5kg/時の分添速度を維持しながら、16℃/時の昇温速度で2時間かけて120℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で20kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(B−3)を得た。得られた共重合体(B−3)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表2に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、88.8%であった。
【0042】
<共重合体(B−4)の製造例>
マレイン酸無水物が10質量%濃度となるようにメチルイソブチルケトンに溶解させた10%マレイン酸無水物溶液と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが2質量%となるようにメチルイソブチルケトンに希釈した2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液とを事前に調製し、重合に使用した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、10%マレイン酸無水物溶液2kg、スチレン24kg、メチルメタクレリレート14kg、t−ドデシルメルカプタン48g、メチルイソブチルケトン2kgを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて90℃まで昇温した。昇温後90℃を保持しながら、10%マレイン酸無水物溶液を1.5kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を300g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを40g添加した。10%マレイン酸無水物溶液はそのまま1.5kg/時の分添速度を維持しながら、7.5℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。10%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で18kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(B−4)を得た。得られた共重合体(B−4)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表2に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、90.1%であった。
【0043】
<共重合体(B−5)の製造例>
25%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、25%マレイン酸無水物溶液4.9kg、スチレン29kg、メチルメタクレリレート4.3kg、t−ドデシルメルカプタン30gを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後92℃を保持しながら、25%マレイン酸無水物溶液を4.5kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を250g/時の分添速度で各々連続的に8時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを40g添加した。25%マレイン酸無水物溶液はそのまま3.75kg/時の分添速度を維持しながら、8℃/時の昇温速度で4時間かけて120℃まで昇温した。25%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で44kgになった時点で停止した。昇温後、1時間120℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(B−5)を得た。得られた共重合体(B−5)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表2に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、88.6%であった。
【0044】
<共重合体(B−6)の製造例>
20%マレイン酸無水物溶液と2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液は、A−1と同様に調製した。撹拌機を備えた120リットルのオートクレーブ中に、20%マレイン酸無水物溶液1.2kg、スチレン35.2kg、t−ドデシルメルカプタン30g、メチルイソブチルケトン2kgを仕込み、気相部を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら40分かけて92℃まで昇温した。昇温後92℃を保持しながら、20%マレイン酸無水物溶液を0.76kg/時、および2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液を250g/時の分添速度で各々連続的に15時間かけて添加し続けた。その後、2%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート溶液の分添を停止し、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを60g添加した。20%マレイン酸無水物溶液はそのまま0.76kg/時の分添速度を維持しながら、4℃/時の昇温速度で9時間かけて128℃まで昇温した。20%マレイン酸無水物溶液の分添は、分添量が積算で18.24kgになった時点で停止した。昇温後、1時間128℃を保持して重合を終了させた。重合液は、ギヤーポンプを用いて二軸脱揮押出機に連続的にフィードし、メチルイソブチルケトンおよび微量の未反応モノマー等を脱揮処理して、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(B−6)を得た。得られた共重合体(B−6)について、A−1と同様に組成分析と重量平均分子量(Mw)、メルトマスフローレイト(MFR)、ビカット軟化温度の測定を行った。組成分析結果及び各種測定結果を表2に示す。また、射出成形機にて2mm厚みの鏡面プレートを成形し、ヘーズメーターにて全光線透過率を測定した結果、88.0%であった。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
<実施例1〜10、比較例1〜7>
塩化ビニル樹脂97質量%、滑剤1質量%、安定剤2質量%を、単軸押出機(東芝機械社製SE−65CA)にて、シリンダー温度190℃で溶融混練して塩化ビニル樹脂(C−1)を作製した。共重合体(A−1)〜(A−6)または共重合体(B−1)〜(B−6)と塩化ビニル樹脂(C−1)を表3〜表4で示した割合(質量%)で混合した後、単軸押出機にて、シリンダー温度190℃で溶融混練して樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物より射出成形にて試験片を調製した他、斜軸異方向二軸押出機(東芝機械社製TEC67)にて、シリンダー温度190℃で溶融混練し、金型温度180℃で押出成形を行い、丸パイプ(外径60mm、肉厚1.2mm)を作製した。この丸パイプをプラスチックパイプカッター(KTS社製EA338BF)を用いて、長さ500mmにカットすることで塩化ビニル配管とした。この樹脂組成物を用いて以下の評価を行い、その評価結果を表3〜表4に示した。なお、塩化ビニル樹脂は、大洋塩ビ社製「TH−1000」、滑剤は日油社製ステアリン酸さくら、安定剤は日東化成社製「TVS#8832」を用いた。
【0048】
<比較例8>
塩素化塩化ビニル樹脂として、カネカ社製「H516A」を使用した。
【0049】
(組成分析)
各単量体単位の組成分析は、C−13NMR法にて下記記載の測定条件で測定した。
装置名:JNM−ECXシリーズFT−NMR(JEOL社製)
溶媒:重水素化クロロホルム
濃度:14質量%
温度:27℃
積算回数:8000回
【0050】
(重量平均分子量)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、下記記載の条件にて測定した。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製した。
【0051】
(メルトマスフローレイト)
メルトマスフローレイト(MFR)は、JIS K7210:1999に基づき、220℃、98N荷重にて測定した。測定機は東洋精機製作所社製メルトインデックサF−F01を使用した。
【0052】
(ビカット軟化点)
ビカット軟化点は、JIS K7206:1999に基づき、50法(荷重50N、昇温速度50℃/時間)で試験片は10mm×10mm、厚さ4mmのものを用いて測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製HDT&VSPT試験装置を使用した。
【0053】
(加熱変形率)
縦30mm、横200mm、厚み2mmの試験片を作製し、温風乾燥機(yamato社製DN−43H)を用いて、温度60℃で60分間加熱した。また、外径60mm、肉厚1.2mm、長さ500mmの塩化ビニル配管をギヤーオーブン(東洋精機社製60UL)内に入れ、温度55℃で3時間加熱した。加熱変形率は、前者の場合は加熱前後の横方向の長さから、後者の場合は加熱前後の長さ(押出方向の長さ)から、以下の式を用いて絶対値として算出した。加熱変形率2.0%以下を合格とした。
加熱変形率(%)= (|加熱後の長さ−加熱前の長さ|)/加熱前の長さ×100%
【0054】
(外観)
縦90mm、横90mm、厚み2mmの試験片50個を目視にて観察し、着色、気泡、焼けコンタミ、ブツなどの外観不良が発生したサンプル数を数えることによって、外観評価を行った。また外径60mm、肉厚1.2mm、長さ500mmの塩化ビニル配管30個について目視にて観察し、同様の外観評価を行った。評価基準は以下の通りで、◎と○を合格とした。
◎:外観不良のサンプル数が0〜1個
○:外観不良のサンプル数が2〜5個
△:外観不良のサンプル数が6〜10個
×:外観不良のサンプル数が11個以上
【0055】
(熱安定性)
外径60mm、肉厚1.2mm、長さ500mmの塩化ビニル配管をギヤーオーブン(東洋精機社製60UL)内に入れ、温度200℃で加熱し塩化ビニル配管が黒色になるまでの時間を測定した。60分以上黒色にならなかったものを合格とした。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
本発明の共重合体(A−1)〜(A−6)を用いた実施例は、いずれも加熱変形率が低く、且つ優れた外観を備えることが出来ていた。一方、本発明の条件に合わない共重合体(B−1)〜(B−6)を用いた比較例や塩素化塩化ビニル樹脂では、加熱変形率が高くなる場合や外観不良が発生するなど、実施例に比べて劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、塩化ビニル樹脂耐熱改質用共重合体を塩化ビニル樹脂に配合することで、耐熱性を付与し、且つ熱安定性も良好で優れた外観の成形品を提供することができ、特に塩化ビニル配管として好適に利用できる。