(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475516
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】圧力制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 16/00 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
G05D16/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-36113(P2015-36113)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-157362(P2016-157362A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【審査官】
牧 初
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−528765(JP,A)
【文献】
特許第4298025(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧力制御対象内を設定圧力に保つ圧力制御装置であって、
圧力センサにより検出された被圧力制御対象内の圧力を示す圧力信号を、前記設定圧力を示す設定圧力信号に近づくように補正する補正手段と、
補正された前記圧力信号と、前記設定圧力信号とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づき流量制御バルブの開閉を制御するバルブ駆動手段と、を備え、
前記補正手段は、フィルタ回路であり、その周波数特性は、所定の周波数でピークを有し、前記圧力信号の前記所定の周波数の成分を持ち上げるように、前記圧力信号を補正する、圧力制御装置。
【請求項2】
前記所定の周波数は、前記被圧力制御対象と前記圧力制御装置との間の配管のガスの流量と前記被圧力制御対象の容積との関係、および/または前記配管の長さに基づき決定される、請求項1の圧力制御装置。
【請求項3】
前記圧力信号が、前記設定圧力信号よりも大きな値を示し、かつ減少するように変化しているときは、前記圧力信号は、前記補正手段により、その値が小さくなるように補正される、請求項1または請求項2の圧力制御装置。
【請求項4】
前記圧力信号が、前記設定圧力信号よりも小さな値を示し、かつ増加するように変化しているときは、前記圧力信号は、前記補正手段により、その値が大きくなるように補正される、請求項1または請求項2の圧力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置等に使用される圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、チャンバ内の圧力を一定に保つための圧力制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された圧力制御装置は、圧力センサにより検出し検出したチャンバ内の圧力および設定圧力に基づき、ガスの供給をオン・オフして、チャンバ内の圧力を一定に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−291706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、設備の都合により、ガスの制御流量に対してチャンバの容積が大きくなったり、圧力制御装置とチャンバとの間の配管が長くなったりする場合がある。この場合に、特許文献1に開示された圧力制御を行うと、流量制御バルブを開けてガスを流してからチャンバ内の圧力が上昇するまで、あるいは流量制御バルブを閉じてから圧力が下降するまでに遅延時間が生じる。このため、チャンバ内の圧力が上下動し、チャンバ内の圧力を一定に保つことができない。
【0005】
そこで本発明は、ガスの制御流量に対してチャンバの容積が大きい場合、あるいは流量制御バルブとチャンバとの間の配管が長い場合であっても、チャンバ内の圧力を一定に保つことが可能な圧力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本発明の一態様である圧力制御装置は、被圧力制御対象内を設定圧力に保つ圧力制御装置であって、圧力センサにより検出された前記被圧力制御対象内の圧力を示す圧力信号を、前記設定圧力を示す設定圧力信号に近づくように補正する補正手段と、補正された前記圧力信号と、前記設定圧力信号とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果に基づき流量制御バルブの開閉を制御するバルブ駆動手段と、を備え、 前記補正手段は、フィルタ回路であり、その周波数特性は、所定の周波数でピークを有し、前記圧力信号の前記所定の周波数の成分を持ち上げるように、前記圧力信号を補正する。
【0007】
また、前記所定の周波数は、前記配管のガスの流量と前記チャンバの容積との関係、および/または前記チャンバと前記圧力制御装置との間の配管の長さに基づき決定されても良い。
【0008】
また、前記圧力信号が、前記設定圧力信号よりも大きな値を示し、かつ減少するように変化しているときは、前記圧力信号は、前記補正手段により、その値が小さくなるように補正されても良い。
【0009】
また、前記圧力信号が、前記設定圧力信号よりも小さな値を示し、かつ増加するように変化しているときは、前記圧力信号は、前記補正手段により、その値が大きくなるように補正されても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスの制御流量に対してチャンバの容積が大きい場合、あるいは流量制御バルブとチャンバとの間の配管が長い場合であっても、チャンバ内の圧力を一定に保つことが可能な圧力制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る圧力制御装置を備える圧力制御システムの構成図を示す。
【
図3】流量制御バルブおよび制御回路のブロック図を示す。
【
図4】圧力制御システムの制御開始時の検出圧力信号、補正圧力信号、圧力設定信号、およびバルブ駆動信号の挙動を示す図である。
【
図6】変形例における、圧力制御システムの制御開始時の検出圧力信号、補正圧力信号、圧力設定信号、およびバルブ駆動信号の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る圧力制御装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、圧力制御装置1を備える圧力制御システム10の構成図を示している。
【0014】
圧力制御システム10は、圧力制御装置1と、開閉バルブ2と、被圧力制御対象であるチャンバ3と、圧力センサ4と、可変バルブ5と、ドライポンプ6と、配管7とを備える。
【0015】
圧力制御装置1には、図示せぬガス供給源が配管7を介して接続されている。開閉バルブ2は、圧力制御装置1の上流側に設けられている。
【0016】
チャンバ3には、圧力を検出するための圧力センサ4が設けられ、配管7を介して圧力制御装置1に接続されている。圧力センサ4により検出された圧力は、圧力信号として圧力制御装置1に送られる。チャンバ3とドライポンプ6とは、配管7により接続されており、可変バルブ5は、チャンバ3とドライポンプ6の間に設けられている。
【0017】
次に、圧力制御装置1の構成について
図2を参照して説明する。
【0018】
図2は、圧力制御装置1の構成図を示している。
【0019】
図2に示すように、圧力制御装置1は、バイパス11と、流量センサ12と、制御部13と、電磁弁である流量制御バルブ14とを備える。制御部13は、ブリッジ回路15と、増幅回路16と、制御回路17とを備える。
【0020】
圧力制御装置1に流入したガスは、バイパス11および流量センサ12へ所定の流量比に分流される。流量センサ12の2本のコイルは、ブリッジ回路15の一部を構成する。増幅回路16は、ブリッジ回路15で検出された温度差に関する信号を増幅して流量信号(例えば、0〜5VDC)として外部へ出力する。また、当該流量信号は、制御回路17へも出力される。
【0021】
次に、制御回路17の構成について説明する。
【0022】
図3は、流量制御バルブ14および制御回路17のブロック図を示す。
【0023】
図3に示すように、制御回路17は、2つのレベル変換回路18、19と、周波数特性補正回路20と、比較回路21と、バルブ駆動回路22とを有する。
【0024】
レベル変換回路18、19は、外部から入力されるチャンバ3の設定圧力値を示す圧力設定信号(例えば、0〜10VDC)、および、圧力センサ4により検出された圧力値を示す圧力信号(例えば、0〜10VDC)を、比較回路21で正確に比較するために、 増幅または減衰させるための回路である。
【0025】
周波数特性補正回路20は、オペアンプを使用したフィルタ回路であり、圧力センサ4により検出された圧力信号に対し、
所定の周波数を持ち上げる補正を行う。比較回路21は、周波数補正後の圧力信号と、設定圧力信号とを比較し、その差を示す差信号をバルブ駆動回路22へ出力する。バルブ駆動回路22は、差信号に基づき、チャンバ3内の圧力が一定となるように、流量制御バルブ14の開度を制御する。
【0026】
次に、圧力制御システム10における制御開始時の動作について
図4を参照して説明する。チャンバ3内の圧力を減少させて、圧力を一定に保つ場合(大気圧よりも低圧にする場合)の動作について説明する。
【0027】
図4は、圧力制御システム10の制御開始時の検出圧力信号、補正圧力信号、圧力設定信号、およびバルブ駆動信号の挙動を示している。圧力センサ4により検出された検出圧力信号は実線で、補正後の補正圧力信号は一点鎖線で、圧力設定信号は点線で、バルブ駆動信号は実線で示している。
【0028】
可変バルブ5を所定開度に設定した状態で、ドライポンプ6を駆動して、チャンバ3内のガスを一定の吸引力で吸引する。これにより、
図4に示すように、検出圧力信号が一定の割合で減少する。そして、この検出圧力信号に対し、周波数特性補正回路20で周波数特性補正を行う。当該補正では、例えば、チャンバ3の容積が1m
3、圧力制御装置1とチャンバ3の間の配管7の長さが10m、配管7を流れるガスの流量300sccmである場合に、
図5に示すような周波数特性を有する周波数特性補正回路20により補正が行われる。
図5において、横軸は周波数、縦軸は電圧を示す。
【0029】
図5の周波数特性曲線は、所定の周波数に相当する約10Hzにおいてピークを有し、10Hzまでは電圧が1.0Vから徐々に増加し、10Hzより大きい周波数では、電圧は直線的に減少している。周波数特性曲線のピークの位置(所定の周波数)は、配管7を流れるガスの流量とチャンバ3の容積との関係、および/または圧力制御装置1とチャンバ3の間の配管7の長さに基づき決定される。
【0030】
図4に示すように、補正圧力信号は、検出圧力信号よりも小さい値となる。すなわち、周波数特性補正回路20により、検出圧力信号の所定の周波数の成分を持ち上げるように補正され、その結果、検出圧力信号が、設定圧力信号に近づくように補正される。そして、比較回路21において、補正圧力信号と、圧力設定信号との比較が行われ、バルブ駆動回路22は、補正圧力信号が圧力設定信号よりも小さくなると(
図4中のP1)、バルブ駆動信号をオンにして、流量制御バルブ14が開状態にする。これにより、チャンバ3に対しガスが供給される。
【0031】
チャンバ3に対しガスの供給を開始して所定時間経過後(
図4中のP2)、検出圧力信号は圧力設定信号と等しくなり、その傾きが変化する。この変化により、補正圧力信号は、急激に増加するがすぐに減少し、補正圧力信号は、圧力設定信号とほぼ等しい値となる。
【0032】
このように、周波数特性補正回路20は、所定の周波数でピークを有し、検出圧力信号の所定の周波数の成分を持ち上げるように、検出圧力信号を補正する。これにより、流量制御バルブ14が開状態となる時間を早めることができる。よって、検出圧力と設定圧力がほぼ等しくなった時点で、チャンバ3内にガスを供給することができるので、ガスの制御流量に対してチャンバ3の容積が大きい場合、あるいは圧力制御装置1とチャンバ3との間の配管7が長い場合であっても、チャンバ3内の圧力が上下動することなく、圧力を一定に保つことができる。
【0033】
また、所定の周波数は、配管7を流れるガスの流量とチャンバ3の容積との関係、および/またはチャンバ3と圧力制御装置1との間の配管の長さに基づき決定されるので、検出圧力信号に対し、適切な補正を行うことができる。
【0034】
また、検出圧力信号が、設定圧力信号よりも大きな値を示し、かつ減少するように変化しているときは、検出圧力信号は、周波数特性補正手段20により、その値が小さくなるように補正される。チャンバ3内を圧力を減少させて圧力を一定に保つ際に、このような補正を行うことにより、チャンバ3内の圧力が上下動することなく、圧力を一定に保つことができる。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0036】
上記の実施形態では、圧力制御装置1により、チャンバ3内の圧力を減少させて、圧力を一定に保つ場合について説明したが、圧力制御装置1により、チャンバ3内の圧力を増加させて、圧力を一定に保っても良い。すなわち、
図6に示すように、検出圧力信号が、設定圧力信号よりも小さな値を示し、かつ増加するように変化しているときは、検出圧力信号は、周波数特性補正手段20により、その値を大きくなるように補正する。このような補正を行うことにより、チャンバ3内の圧力が上下動することなく、圧力を一定に保つことができる。
【0037】
また、圧力制御装置1が備える回路は、アナログ回路またはデジタル回路のどちらであっても良い。また、上記の実施形態における被圧力制御対象はチャンバ3であったが、圧力容器等であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1:圧力制御装置、3:チャンバ、4:圧力センサ、7:配管、14:流量制御バルブ、20:周波数特性補正回路、21:比較回路、22:バルブ駆動回路