【実施例1】
【0017】
本発明に係る杭頭処理工法は、
図1乃至
図2に示すように、現場造成杭1の余盛コンクリート部分2を、コンクリート中に埋設させた膨張性破砕材3でひび割れを発生させて、そのひび割れ部分を境に撤去する杭頭処理する工法において、前記膨張性破砕材3は、水を封入し凍結手段を内包した凍結破砕管4である。
【0018】
前記水は、例えば、真水(まみず、淡水)、水道水(軟水、硬水)、ミネラルウォーター、天然水、などである。その水の凍結時(−20℃)の体積膨張は、約9%、膨張圧が約200MPaである。前記凍結破砕管4は、例えば、鋼管等の金属製管であり、
図2(C)に示すように、扁平形状の鋼管である。
【0019】
前記凍結破砕管4は、少なくとも、管の胴体部において、管の長手方向に直交する短手方向の横断面形状が、ひび割れの方向と変位量とを制御するため、
図2(C)に示すように、楕円のような扁平形状に形成されている。その扁平率fは、f=(a−b)/aであり、この実施例では、a=50mm、b=40mmであり、これは一例にすぎず、任意に設定する設計事項である。
【0020】
図2に示すように、凍結破砕管4である鋼管の大きさは、一例として、長さが300mm〜500mm、円径部の直径が約100mmである。前記凍結破砕管4の内部には、凍結手段となる冷却管4aがU字状に配管され、その端部に冷凍機などの冷却装置の接続管、若しくは、LN
2(液体窒素)ボンベの接続管が接続される。
【0021】
前記凍結破砕管4の注水口4cからこの管内部空間に、水4bが充填され、蓋(図示せず)で前記注水口4cが閉蓋され封入される。この水4bを充填し封入した凍結破砕管4には、その接続部側に円筒形のボイド4dが
図2(A)で示すように嵌装され、そのボイド4dの一端側開口部にキャップ4eが閉蓋される。打設されるコンクリートが、前記冷却管4a、注水口4cの接続部に付着しないようにするためである。
【0022】
前記ボイド4dやキャップ4eは、この実施例に限らず、コンクリート中に埋設させるものとして、その内部にコンクリートが侵入せず、その形を維持して、更に、撤去しやすいものであればよい。こうして、凍結破砕管4を膨張性破砕材3として杭頭処理工法に使用できるようになる。
【0023】
本発明に係る杭頭処理工法の手順を図面を参照して説明する。最初に、
図2に示す凍結破砕管4である冷凍管を、管内に水4bを封入し、ボイド4dおよびキャップ4eを接続部側に付けて、予め形成しておく。
【0024】
そして、
図1、
図4の工程aに示すように、鉄筋籠9の上部に、主筋5に対して縁切材(図示せず、合成樹脂製の養生材である)を被せて取付ける。その取付け位置は、
図1(B)に示すように、縁切材の下端位置6から上の位置に被せるものである。打設されるコンクリートと主筋5との付着を防止して、余盛りコンクリート部分2を撤去しやすくするものである。
【0025】
更に、前記主筋5に対して、補強支持鉄筋3a,3bを番線で図示のように取付け、固定する。膨張性破砕材3をしっかりと位置固定して、コンクリートでずれたり、浮き上がったりしないようにするためである。
【0026】
図4の工程bにおいて、前記膨張性破砕材3である凍結破砕管4を、
図1(A)に示すよう状態になるように、ひび割れを発生させようとする計画線の位置で略水平に載置するため、主筋5に周方向で等間隔に6箇所、それぞれ中心に向けて半径方向に沿って、前記補強支持鉄筋3a,3bを介して番線などで固定する。なお、
図1(A)に示すように、中央に確保している空間10は、現場打ちコンクリート用のトレミー管を通すための空間である。
【0027】
次に、
図4の工程cにおいて、前記取付け完了した鉄筋籠9を揚重装置で吊り上げ、現場の杭孔に挿入する。そして、
図4のd工程のおいて、トレミー管を前記空間10から差し込んでコンクリートを下から順に打設する。
【0028】
図4のe工程において、前記打設されたコンクリートが養生され、所要の強度を発現した後に、地盤の根切りを行い、現場打ち杭1の頭部を露出させる。そして、キャップ4eを外して、冷却管4aに冷凍機などの冷却装置、若しくは、LN
2(液体窒素)を接続管を介して接続し、前記冷却管4aを冷却する。
【0029】
前記冷却管4aが冷却されて、封入された水4bが約−20℃で凍結すると、水4bの体積が約9%膨張する。すると、
図3(A),(B)に示すように、凍結膨張圧(約200MPa程度)が放射状に発生する。硬化したコンクリートに圧縮応力が発生して、これと直交する方向に引張力が発生する。その結果、コンクリートの引張強度を超えたときに、ひび割れ7が発生する。周方向に等間隔で配設された凍結破砕管4により互いのひび割れ7が伝達して繋がり、水平方向に大きなひび割れ7が発生するものである。
【0030】
前記凍結破砕管4は、扁平形状の冷凍管であるため、管が円形に戻ろうとする復元力により、ひび割れ7の方向の制御と、変位量を増大させることができる。
図5(A)に示すように、扁平形状の冷凍鋼管であれば、冷却開始後の約30分でひび割れ7が発生し、冷却開始後の約60分でひび割れの拡張が止まった。そのひび割れ7の幅が11mm〜14mm程度である。
【0031】
一方、
図5(B)に示すように、円筒鋼管の場合には、冷却開始後の約120分でひび割れ7が発生し、冷却開始後の約200分でひび割れの拡張が止まった。そのひび割れ7の幅が、0.2mm〜3.5mm程度である。このように、扁平形状の鋼管を使用することで、ひび割れ幅の変位量を大幅に増大させることができたので、扁平率fでひび割れ7の変位量を制御することが可能である。
【0032】
図1(B)、
図4のf工程に示すように、ひび割れ7の境から上の余盛りコンクリート部分2を揚重装置で吊り上げ撤去するものである。なお、凍結破砕管4は、凍結膨張させた後、元の扁平形状に修正して、繰り返し使用される。この場合、完全に元の形状に修正するのでは無く、無理をせず、可能な範囲で扁平率を小さくした扁平形状にして、繰り返し他の杭頭処理工法を適用する現場に使用するものである。これにより、コストの低減を図ることができる。