(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、取付金具を表紙に設けられた穴及び紙綴器の台に設けられた穴に貫入し、更に、取付金具のU字型の通路に勾配栓を押し込む必要がある。一方、特許文献2に記載の技術では、勾配栓を取付金具のU字型の通路に押し込む特許文献1に記載の技術と異なり、第1の固定具(フック部材43)と第2の固定具(回転部材44)とを連結した状態に組み立て、利用者が第2の固定具を回転させて水平状態にすることで、背表紙と綴じ具を挟み込んで固定する必要がある(例えば、特許文献2の段落0024)。上記のように、特許文献2に記載の技術は、綴じ具を背表紙に取り付けて固定するためには、例えば、第1の固定具と第2の固定具とを組み立てる必要もあり、綴じ具を背表紙に取り付ける作業が煩雑であった。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、従来よりも容易に綴じ具の取り付け、取り外しを行える技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。具体的には、本発明は、綴じ部材を備えた綴じ具の基板の固定面を表紙の被固定面に対向させて固定具により両
者を固定する固定構造であって、前記基板は基板穴を有し、前記表紙は表紙穴を有し、前記固定具は、前記基板穴と前記表紙穴とを貫通する鉛直部と、当該鉛直部に連設されて、当該貫通した状態で表紙の被固定面の反対面に添接される添接部と、を有する第一固定具と、当該第一固定具に着脱自在であり、前記基板上の第一位置と第二位置との間を摺動可能に接合された第二固定具と、を含み、前記第二固定具は、前記基板上に立設された摺動案内壁によって前記基板上の第一位置と第二位置との間を摺動可能に規制され、前記第一位置にあるとき、前記基板穴と前記表紙穴とを貫通した前記鉛直部に係合して前記基板及び前記表紙を挟持し、前記第二位置にあるとき、前記第二固定具の前記基板に接する面に設けられた係合突部と、前記基板における所定の位置に設けられた係合穴と、が係合して第二固定具と基板とが固定される。
【0008】
本発明によれば、鉛直部が基板穴と表紙穴とを貫通した状態で、第二固定具を基板上で摺動させて、第一固定具に対して第二固定具を相対変位することで、各固定具が相互に係合して基板及び表紙を挟持する。つまり、第二固定具を基板上で摺動させるといった単純な動作により、綴じ具を表紙に取り付けたり、綴じ具を表紙から取り外したりすることができる。また、綴じ具は、表紙から取り外すことができるため、表紙を重ねて収容できる。その結果、綴じ具が固定された表紙を収容する場合と比較して、表紙を収容する段ボール箱のサイズを小さくすることができる。そのため、運搬コストや保管コストを低減できる。
【0009】
また、第二固定具が基板に対して摺動可能に規制されて接合されているので、換言すると、摺動範囲が第一位置と第二位置との間で規制されており第二固定具が基板から脱落することがないので、第二固定具を紛失することがない。また、第二固定具を第一位置と第二位置との間で摺動させるだけで、綴じ具を表紙に取り付けたり、綴じ具を表紙から取り外したりすることができる。
【0010】
第一位置は、綴じ具を表紙に固定する位置として機能することができる。第一位置では、第二固定具は、基板穴と表紙穴とを貫通する鉛直部と係合するため、綴じ具を表紙に強固に固定することができる。また、第二位置は、綴じ具を表紙から取り外す位置として機能することができる。第二位置では、第二固定具と基板とが固定され、綴じ具を表紙から取り外す状態が維持される。そのため、綴じ具を表紙から容易に取り外すことができる。
【0011】
前記係合穴は、前記係合突部が挿入されるように形成されるとともに、当該係合突部において前記第一位置に近い位置にある側面と当接するための係合端部を有するようにしてもよい。
【0012】
係合突部は、綴じ具の基板の固定面を表紙の被固定面に対向させるように綴じ具を表紙に添接させたときに第二位置にある第一固定具の位置決め突部が後述する第一表紙位置決め突部に確実に当接する程度の深さで係合穴に挿入されていればよい。換言すると、第一固定具を表紙に添接させたら第一表紙位置決め突部が第一位置決め穴を通って表紙を貫通するのであれば、係合突部は必ずしも係合穴を貫通していなくてもよい。
【0013】
前記係合突部は、前記第二固定具に連設されて延出する可撓性を有する可撓板片の先端側に突設されていてもよい。係合突部が可撓板片に突設されることで、係合突部は可撓板片の撓みが許容される範囲内で移動することが可能となり、さらに、可撓板片の基端側よりも先端側の方が係合突部の移動範囲を多くすることができる。その結果、係合突部と係合穴との係合状態において係合突部が係合穴に入り込み、この状態で第二固定具に力を加えると可撓板片が撓むことにより、係合突部が係合穴から離脱する。つまり、容易に係合を解除することができる。
【0014】
前記第二固定具は、前記基板上で前記第二位置から前記第一位置へ向かう方向の付勢力を受けているようにしてもよい。これにより、第二固定具は、第一位置の状態で維持される。第一位置は、綴じ具を表紙に固定する位置として機能することができるため、綴じ具を表紙に強固に固定することができる。また、付勢力に抗して第二固定具を第二位置に移動させるだけで、綴じ具を表紙から容易に取り外すことができる。
【0015】
前記第一固定具は、前記表紙に設けられた第一表紙位置決め穴に挿入して当該表紙との位置決めをするための第一位置決め突部が前記添接部に立設され、当該第一位置決め突部は、前記鉛直部が前記基板穴と前記表紙穴とを貫通したときに前記第一表紙位置決め穴を貫いて前記被固定面から突出するように形成され、前記鉛直部が前記基板穴と前記表紙穴とを貫通するとともに前記第二固定具が前記第二位置にあるとき、前記固定面を前記被固定面に対向させると前記係合突部および前記係合穴と仮想同一軸上に並ぶように位置するようにしてもよい。
【0016】
第一位置決め突部が添接部に立設されることで、第一固定具と表紙との位置決めを容易に行うことができる。また、第一位置決め突部は、第二固定具が第二位置にあるとき、係合突部および係合穴と仮想同一軸上に並ぶように位置する。換言すると、第一位置決め突部は、係合突部や係合穴の位置に移動させることができる。
【0017】
そこで、前記第一位置決め突部は、前記第二固定具が前記第二位置にあるとき、前記係合穴を貫通するようにしてもよい。これにより、第二固定具が第二位置にあるとき、第一位置決め突部が、係合穴と係合している係合突部(係合穴に入り込んでいる係合突部)を押し込むことができる。その結果、係合突部と係合穴との係合を解除することができる。また、第二固定具が、基板上で第二位置から第一位置へ向かう方向の付勢力を受けている場合には、係合突部と係合穴との係合を解除することによって、付勢力により第二固定具を第一位置へ移動させることができる。つまり、第二固定具が第二位置にある状態の綴じ具を表紙の固定位置に添接させた状態で綴じ具を表紙側に押すだけで、綴じ具を表紙部に固定することができる。
【0018】
また、前記基板は、位置決め突片を更に有し、前記表紙は、前記位置決め突片が挿入される位置決め穴を更に有し、前記位置決め突片は、これを前記位置決め穴に挿入すると前記基板穴と前記表紙穴とが略同一軸上に並ぶように誘導する位置であって、かつ前記基板における前記基板穴の位置よりも中央よりの位置に設けられようにしてもよい。
【0019】
位置決め突片が、基板に設けられているため、第一固定具によらずに、表紙と綴じ具の位置決めを行うことができる。また、位置決め突片は、基板穴とは別の位置に設けられているため、表紙穴を鉛直部の外形に合わせて設計することができる。換言すると、表紙穴を必要以上に大きくする必要がない。そのため、鉛直部を表紙穴にフィットさせることができ、より安定的に綴じ具を表紙に固定することができる。また、鉛直部の外形に対して、表紙穴が大きい場合、鉛直部の周面と表紙穴の内面との間に隙間が生じ、綴じ具ががたつくことが懸念される。また、綴じ具ががたつくと、その衝撃により、表紙穴が広がってしまうこともある。位置決め突片を基板に設け、表紙穴を鉛直部の外形に合わせて設計することで、このような問題の発生を抑制できる。
【0020】
また、前記基板穴の面積および前記表紙穴の面積は、ともに前記鉛直部最大断面積と略同じとしてもよい。これにより、所謂綴じ具のがたつきを抑えることができる。
【0021】
上述した位置決め突片に代えて、以下の構成を採用してもよい。すなわち、前記基板は基板穴と基板位置決め穴とを有し、前記表紙は表紙穴と第二表紙位置決め穴とを有し、第一固定具は、前記基板位置決め穴と前記第二表紙位置決め穴とを貫通する第二位置決め突
部を有し、前記第二位置決め突部は、前記基板位置決め穴と前記第二表紙位置決め穴とを貫通すると前記基板穴と前記表紙穴とが略同一軸上に並ぶように誘導する位置であって、かつ前記基板において前記第二固定具が前記第一位置にあっても前記第二位置にあっても前記基板と前記第二固定具とが重合されない位置に設けられていてもよい。例えば、綴じ具の面積が小さく、位置決め突片を基板に設ける場所を確保することが困難な場合、上記構成を採用することが好適である。
【0022】
このような第一固定具は、表紙の被固定面の反対面に添接されるにあたり、前述した第一位置決め突部が第一表紙位置決め穴に挿入されるとともに第二位置決め突部が第二表紙位置決め穴に挿入されるため、より確実に第一固定具と表紙との相対的位置関係を決定することができる。その結果、綴じ具ががたつくことにより鉛直部が表紙穴を広げてしまう虞を排除することができる。
【0023】
これに加えて、第二位置決め突部が基板位置決め穴と第二表紙位置決め穴とに挿入されることで、第一固定具と表紙と基板との相対的な位置関係が決められることになるため、上述した位置決め突片を基板に設けることを省略することができる。
【0024】
また、第二固定具は、前記第一位置としての固定位置側先端に、利用者が当該第二固定具を第一位置から第二位置に向けて押し込むための押圧スライド操作部を有するものでもよい。第二固定具が固定位置側先端に押圧スライド操作部を有することで、第二固定具を容易に摺動させることができる。その結果、更に容易に、綴じ具の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。
【0025】
前記押圧スライド操作部は、前記第二固定具と前記基板とが接する面に対して、その接する面から解除位置に向けて傾斜して立設されていてもよい。傾斜することで、利用者の手指等を斜めにあてることができ、平面や垂直面の場合と比較して、操作性が向上する。
【0026】
また、前記第二固定具は、前記鉛直部と係合するためのクサビ部を有し、前記押圧スライド操作部は、摺動方向に直交する方向における中央に位置し、その方向の両側に押圧スライド操作部を囲むようにクサビ部が配設されていてもよい。第二固定具は、クサビ部に沿って摺動することができる。そして、押圧スライド操作部を幅方向の両側を囲むようにクサビ部が設けられているため、利用者が押圧スライド操作部を押し込む際に、摺動する方向(軌道)が安定する。その結果、更に容易に、綴じ具の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。
【0027】
前記押圧スライド操作部は、利用者の手指等との間の摩擦力を高めるための押圧補助面を有するようにしてもよい。これにより、滑り難くなり、操作性が向上する。また、綴じ具を表紙から取り外す際は、綴じ具に接続された第二固定具の押圧スライド操作部を押し込んで第二固定具を第二位置に移動させ、そのまま第二固定具の押圧スライド操作部を把持して持ち上げた方が効率がよい。押圧補助面により滑りにくくなるため、第二固定具に接続された綴じ具を持ち上げやすくなる。
【0028】
ここで、本発明は、綴じ具と表紙との固定構造を含む、ファイルとして特定してもよい。具体的には、本発明は、綴じ部材を備えた綴じ具と、前記綴じ具の基板が固定される表紙と、前記綴じ具の基板の固定面を前記表紙の被固定面に対向させて両者を固定する固定具と、を備えるファイルであって、前記基板は基板穴を有し、前記表紙は表紙穴を有し、前記固定具は、前記基板穴と前記表紙穴とを貫通する鉛直部と、当該鉛直部に連設されて、当該貫通した状態で表紙の被固定面の反対面に添接される添接部と、を有する第一固定具と、当該第一固定具に着脱自在であり、前記基板上の第一位置と第二位置との間を摺動可能に接合された第二固定具と、を含み、前記第二固定具は、前記基板上に立設された摺
動案内壁によって前記基板上の第一位置と第二位置との間を摺動可能に規制され、前記第一位置にあるとき、前記基板穴と前記表紙穴とを貫通した前記鉛直部に係合して前記基板及び前記表紙を挟持し、前記第二位置にあるとき、前記第二固定具の前記基板に接する面に設けられた係合突部と、前記基板における所定の位置に設けられた係合穴と、が係合して第二固定具と基板とが固定される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来よりも容易に綴じ具の取り付け、取り外しを行える技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明に係る綴じ具と表紙との固定構造(以下、単に固定構造ともいう。)の実施形態について、図面に基づいて説明する。実施形態に係る固定構造は、書類等を綴じるための綴じ具を備えるファイルに適用されるものであり、本発明が有する技術的思想が同一の範囲である限り、特定の綴じ具や特定のファイルに限定適用されるものではない。なお、以下の説明では、ファイルを開いた状態で机上等に載置した場合において、利用者側に面する側を内側、その反対を裏側とし、利用者側から遠い側を上側、利用者側を下側とする。
【0032】
<第1実施形態>
図1から
図3に示すように、第1実施形態に係るファイル10は、書類等を綴じ込むもので、ファイル本体1、綴じ具2、固定具5(第一固定具6、第二固定具7)を備える。
【0033】
<<ファイル本体>>
図1から
図3に加えて、
図4も参照しながら説明すると、ファイル本体1は、本発明の表紙に相当し、背表紙11、表表紙12、裏表紙13を備える。背表紙11は、上下方向に細長い長方形であり、内側に綴じ具2が固定される。表表紙12及び裏表紙13は、綴じ込まれる書類よりも一回り大きい面積を有する長方形であり、背表紙11の左右方向の両端部に開閉自在に夫々連なっている。
【0034】
ここで、背表紙11には、表紙穴14、第一位置決め穴15、第二位置決め穴16が形成されている。表紙穴14には、後述する第一固定具6の鉛直部61が貫通する。第1実施形態に係る表紙穴14は、鉛直部61の外形に合わせて四角形に形成されており、鉛直部61の位置に合わせて4つ形成されている。第一位置決め穴15、及び第二位置決め穴16は、綴じ具2を位置決めする。第一位置決め穴15は、後述する第一固定具6の係合突起部63が貫通する。第一位置決め穴15は、係合突起部63の外形に合わせて円形に形成されており、係合突起部63の位置に合わせて2つ形成されている。第二位置決め穴16は、後述する綴じ具2の位置決め突片331を収容する。第二位置決め穴16は、位置決め突片331を収容できるよう左右方向に長い長方形に形成されており、位置決め突片331の位置に合わせて2つ形成されている。
【0035】
<<綴じ具>>
次に、
図1から
図3に加えて、
図5から
図8も参照しながら、綴じ具2について説明する。綴じ具2は、背表紙11に固定されるベース部材3、ベース部材の側壁部31,31に対して着脱自在な綴じ部材4(第一綴じ部材41、第二綴じ部材42)を備える。第一綴じ部材41と第二綴じ部材42が組み合わされた状態でベース部材3に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われる。なお、綴じ具2の書類等を綴じる機能は、従来の綴じ具と本質的に同質である。そこで、書類等を綴じる機能に関する説明は簡単にし、固定する機能に関する構成の説明を詳しく行うものとする。
【0036】
ベース部材3は、背表紙11に固定される基板33、基板33の左右方向の両縁に回動自在に連なるベース部材の側壁部31,31、ベース部材の側壁部31,31のそれぞれに設けられた綴込爪部32を備える。また、第一綴じ部材41は、第一綴じ部材の側壁部411、第一綴じ部材の側壁部411の中央部分に設けられた第一綴じ部材の窪み部412、第一綴じ部材の側壁部411から延出する2本のパイプ管413を有する。第二綴じ部材42は、第二綴じ部材の側壁部421、第二綴じ部材の側壁部421の中央部分に設けられた第二綴じ部材の窪み部422と、第二綴じ部材の側壁部421から延出する足管423を有する。足管423がパイプ管413に挿入されることで、第一綴じ部材41と第二綴じ部材42が組み合わされ、そしてその組み合わされた状態で、ベース部材3のそれぞれのベース部材の側壁部31,31に第一綴じ部材の側壁部411と第二綴じ部材の側壁部421が接続される。具体的には、ベース部材の側壁部31,31のそれぞれに設けられた綴込爪部32,32が、第一綴じ部材の窪み部412と第二綴じ部材の窪み部422に引っ掛かり、書類等を綴じ込む状態となる(
図1参照)。なお、上記綴じ具2の構成は、一例であり、綴じ具2に代えて、他の様々な綴じ具を採用することができる。
【0037】
ここで、ベース部材3の基板33には、複数種類の穴等が形成されている。中央部分には、ファイル本体1の背表紙11に形成された第二位置決め穴16に収容される位置決め突片331が形成されている。位置決め突片331は、左右方向(背表紙の短手方向)に延びる片であって、裏側に突出している。位置決め突片331は、上下方向に間隔をあけて2カ所形成されている。各箇所には、一つの第二位置決め穴16に収容される位置決め突片331であって、対向する一対の位置決め突片331が形成されている。位置決め突片331が第二位置決め穴16に収容されると、背表紙11の内側面上における、ベース部材3の移動が規制される。
【0038】
2カ所に形成された位置決め突片331の内側には、付勢部材8を固定する、付勢部材の第一固定片332、付勢部材の第二固定片333が形成されている。ここで、例えば
図2に示すように、第一実施形態に係る付勢部材8は、ねじりばねとも言われるもので、コイル部81と、コイル部81から延びる2本の脚(第一脚部82、第二脚部83)からなる。付勢部材の第一固定片332は、付勢部材8の第一脚部82を固定する。付勢部材の第一固定片332は、左右方向に延びており、基板33から内側に立ち上げられ、先端が折り曲げられている。下側の付勢部材の第一固定片332は、先端が下側に向けて折り曲げられ、上側の付勢部材の第一固定片332は、先端が上側に向けて折り曲げられている。2つの付勢部材の第一固定片332は、斜向かいに配置されている。
【0039】
付勢部材の第二固定片333は、付勢部材8のコイル部81が挿入され、コイル部81を固定する。付勢部材の第二固定片333は、上下方向に延びており、基板33から内側に立ち上げられ、先端が折り曲げられている。付勢部材の第二固定片333は、付勢部材の第一固定片332と位置決め突片331との間、かつ、ベース部材の側壁部31近傍に形成されている。下側の付勢部材の第二固定片333は、右側のベース部材の側壁部31の近傍に形成されている。上側の付勢部材の第二固定片333は、左側のベース部材の側壁部31の近傍に形成されている。
【0040】
2カ所に形成された位置決め突片331の左右方向の両側には、摺動案内壁334が対向して形成されている。摺動案内壁334は、上下方向に延びており、基板33から内側に立ち上げられ、先端が折り曲げられている。摺動案内壁334は、第二固定具7の左右方向の両側縁を支持して、第二固定具7を第一位置と第二位置との間で摺動させる。第一位置は、綴じ具2を背表紙11に固定する位置であり、第二位置は、綴じ具2を背表紙11から取り外す位置である。
【0041】
また、2カ所に形成された位置決め突片331の近傍には、綴じ具2を背表紙11から取り外す第二位位置において、後述する第二固定具7の係合突部73と係合する円形の係合穴335が形成されている。係合穴335は、基板33の上下方向(長手方向)に延び左右方向の中心を通る仮想軸(
図5において点線で示す)上に形成されている。下側の係合穴335は、下側の位置決め突片331の下側近傍に形成され、上側の係合穴335は、上側の位置決め突片331の上側近傍に形成されている。
【0042】
また、係合穴335の近傍であって、上記仮想軸と同一軸上には、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置及び第一位置と第二位置の移動の際に、第二固定具7の係合突部73が収容される、上下方向に延びる細長の収容穴336が形成されている。下側の収容穴336は、下側の係合穴335の下側近傍に形成され、上側の収容穴336は、上側の係合穴335の上側近傍に形成されている。
【0043】
また、基板33の上下方向の両側縁の近傍には、両側縁に沿って、内側に膨らむ直線状の規制部337が形成されている。規制部337は、第二固定具7の移動を規制する。より詳細には、規制部337は、第二固定具7が、第一位置よりも更に基板33の上下方向の両側縁側に移動しないよう第二固定具7の移動を規制する。加えて、規制部337を基板33に対して隆起させることにより、複数種類の穴等が形成されることで低下した基板33の曲げ強度を向上させる。
【0044】
また、2カ所に形成された収容穴336の左右方向の両側には、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置において、後述する第一固定具6の鉛直部61が貫通する四角形の基板穴338が形成されている。下側の基板穴338は、下側の収容穴336の両側、かつ、下側の摺動案内壁334の下側に形成されている。上側の基板穴338は、上側の収容
穴336の両側、かつ、上側の摺動案内壁334の上側に形成されている。
【0045】
<<第一固定具>>
次に、
図1から
図3に加えて、
図9、
図10も参照しながら、第一固定具6について説明する。第一固定具6は、後述する第二固定具7と係合して、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定する。第一固定具6は、添接部62、鉛直部61、係合突起部63を備える。添接部62は、平面視において左右方向に長い長方形のプレートからなり、ファイル本体1の背表紙11の裏側に添接される。添接部62は、一部が突出しており、この突出した部分に係合突起部63が形成されている。鉛直部61は、長手方向に2つ形成され、添接部62から立設しており、背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338を貫通する。鉛直部61は、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置において、第二固定具7と係合する。係合突起部63は、円柱状であり、添接部62の突出した部分から立設しており、背表紙11に形成された第一位置決め穴15を貫通する。また、係合突起部63は、第二固定具7が第二位置にあるとき、綴じ具2の基板33に形成された係合穴335を貫通する。第二固定具7が第二位置にあるとき、係合突起部63が、係合穴335と係合している、後述する第二固定具7の係合突部73(係合穴335に入り込んでいる係合突部73)を押し込むことができる。その結果、係合突起部63は、係合突部73と係合穴335との係合を解除する。
【0046】
ここで、鉛直部61について、更に詳しく説明する。鉛直部61は、軸部611と、軸部611の頂部に添接部62と略平行に連なる係止板612と、この係止板612の左右方向の両端部に設けられ、添接部62側へ突出したガイド部613と、軸部611の左右方向の両側に添接部62から立設する起立片614,614と、を備える。係止板612は、第一位置において、第二固定具7の内側方向への動きを規制するとともに、第二固定具7の上下方向への動きを規制する。ガイド部613は、第一固定位置において、第二固定具7のガイド溝722に収容される。軸部611は、添接部62と係止板612とを接続する。起立片614,614は、軸部611を保護する。例えば、起立片614,614設けない場合、軸部611の側面が背表紙11に形成された表紙穴14の左右方向の縁と直接接触する。この場合、軸部611に過度の負荷がかかる虞がある。第一実施形態に係る第一固定具6は、起立片614,614を備えることで、軸部611への負荷を抑制することができる。
【0047】
<<第二固定具>>
次に、
図1から
図3に加えて、
図11から
図16も参照しながら、第二固定具7について説明する。第二固定具7は、第一固定具6と係合して、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定する。第二固定具7は、摺動案内壁との接触部71、クサビ部72、係合突部73、付勢部材の受部74、カバー部75、押圧スライド操作部76、を備える。
【0048】
摺動案内壁との接触部71は、第二固定具7の左右方向の直線状の両端部であり、摺動案内壁334内に収容される。摺動案内壁との接触部71の左右方向内側には、第一位置において、鉛直部61と係合するクサビ部72が形成されている。換言すると、クサビ部72は、左右方向の中央に形成された押圧スライド操作部76を囲むように、押圧スライド操作部76の左右方向の両側に形成されている。クサビ部72は、鉛直部61の軸部611が貫通する、上下方向に延びる直線状の開口部721と、開口部721の左右方向の両側に形成され、鉛直部61のガイド部613を収容する、直線状のガイド溝722を含む。ガイド溝722は、ガイド部613の断面形状に対応して設計されている。第一位置では、ガイド溝722へガイド部613が収容され、第一固定具6の鉛直部61を構成する係止板612がガイド溝722を覆う。そのため、第二固定具7の内側方向への移動が第一固定具6によって規制されることになる。
【0049】
押圧スライド操作部76は、利用者が、第二固定具7を第一位置から第二位置に向けて押し込むためのもので、左右方向の中央、かつ、上下方向の一方の端部に形成されている。第1実施形態では、押圧スライド操作部76は、手指等で押し込む際に、手指等が第一綴じ部材の側壁部411から延出する2本のパイプ管413と接触し難いように、第二固定具7の端部よりも更に突出している。より詳細には、第二位置においても、平面視において押圧スライド操作部76がパイプ管413よりも上下方向の端部側に位置するように、押圧スライド操作部76が第二固定具7の端部よりも更に突出している。
【0050】
また、押圧スライド操作部76は、傾斜面によって構成されている。傾斜面は、上下方向において端部側から中央に向けて徐々に高くなるように、換言すると第一位置から第二位置に向けて第二位置側が高くなるように傾斜している。更に、傾斜面には、利用者の手指等との間で摩擦力を高めるための押圧補助面761が形成されている。第1実施形態の押圧補助面761は、左右方向に延びる複数の凹凸によって構成されている。押圧補助面761は、ドット状の凹凸でもよい。
【0051】
押圧スライド操作部76の基端側、換言すると、クサビ部72の間の領域には、切り欠き77が形成されている。この切り欠き77には、可撓性を有する可撓板片78が形成されている。可撓板片78は、基端が切り欠き77の縁のうち、押圧スライド操作部76の先端とは反対側に位置する縁に連なっている。先端は、自由端となっている。そして、自由端である先端側には、裏側に向けて突出する係合突部73が形成されている。係合突部73は、第一位置及び第一位置と第二位置の移動の際においては、ベース部材3の基板33に形成された収容穴336に収容される。また、係合突部73は、第二位置では、ベース部材3の基板33に形成された係合穴335に係合される。なお、係合突起73の先端は、係合孔335と係合し易いように傾斜面が形成されている。
【0052】
付勢部材の受部74は、付勢部材8の第二脚部83と接して、付勢力を第二固定具7に伝達する。付勢部材の受部74は、カバー部75の裏側から立設した、左右方向に延びる壁によって構成されている(例えば、
図12参照)。また、付勢部材の受部74は、左右方向の両端部が摺動案内壁との接触部71と連なっている。
【0053】
カバー部75は、全体として四角形の板状であり、付勢部材8を覆う。付勢部材の受部74は、カバー部75の裏側に立設されている。カバー部75は、第一カバー部751と、第二カバー部752とを含む。第一カバー部751は、第二位置において、第二カバー部752の裏側に収まるよう、第二カバー部752よりも低い位置に形成されている。一方、第二カバー部752は、第二位置において、第一カバー部751を覆うように、第一カバー部751よりも高く、かつ、第二カバー部752よりも広い面積を有している。カバー部75を上記のような入れ子構造とすることで、少ないスペースで、第一位置と第二位置との移動距離が確保されている。また、第二カバー部752の表面には、操作方向を表す矢印が刻まれている。
【0054】
<<綴じ具の脱着方法>>
次に、綴じ具の取り外し、及び固定方法について、第一固定具6や第二固定具7の動作も交えて説明する。
図17、
図19、
図21、
図22に示すように、第一位置では、第一固定具6と第二固定具7が係合し、綴じ具2がファイル本体1の背表紙11に固定されている。第一位置では、付勢部材8によって第二固定具7が付勢されており、2つの第二固定具7は離れた状態にある。下側の第二固定具7と上側の第二固定具7は、動作の向きが逆向きである以外は、基本的には同様の動作をする。そこで、以下の説明では、下側の第二固定具7を例に説明する。
【0055】
下側の第二固定具7は、付勢部材の受部74が付勢部材8の第二脚部83と接して下側
に向けて付勢されている。そのため、下側の第二固定具7は、付勢部材8により、上側への移動が規制されている。また、第二固定具7における、摺動案内壁との接触部71は、摺動案内壁334に収容される。そのため、下側の第二固定具7は、摺動案内壁334により、左右方向への移動が規制されている。また、第二固定具7のクサビ部72は、第一固定具6の鉛直部61と係合している。より詳細には、第一固定具6は、鉛直部61が背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338を貫通している。また、鉛直部61を構成するガイド部613は、第二固定具7のガイド溝722に収容されている。また、係止板612は、第一位置において、裏側がガイド溝722の縁と接し、上下方向の中央よりの端部がカバー部75の端部と接している。そのため、係止板612は、第一位置において、第二固定具7の内側方向への動きを規制するとともに、第二固定具7の上下方向への動きを規制している。その結果、下側の第二固定具7は、第一固定具6と係合することで、左右方向、内側、下側への移動が規制される。換言すると、第一位置では、下側の第一固定具6は、付勢力に抗う上側への移動のみが許容されている。なお、係合突部73は、第一位置では、ベース部材3の基板33に形成された収容穴336に収容されている。
【0056】
第二固定具7を第一位置から第二位置へ移動する場合、手指等で押圧スライド操作部76を押し込む。下側の第二固定具7については、押圧スライド操作部76の傾斜面に手指等を当て、上側に押し込む。例えば、下側の第二固定具7の押圧スライド操作部76に親指を当て、上側の第二固定具7の押圧スライド操作部76に人差し指を当て、親指と人差し指と引き合わせるように夫々の第二固定具7を押し込むとよい。
【0057】
押圧スライド操作部76を押し込むと、第二固定具7は、第一位置から第二位置へ向けて移動を開始する。第一位置から第二位置へ移動する際も、下側の第二固定具7は、左右方向、内側、下側への移動が規制されている。第二位置へ近づくと、ベース部材3の基板33に形成された収容穴336に収容され、収容穴336内を移動していた、可撓板片78に形成された係合突部73が、収容穴336の上側縁に接する。更に、押圧スライド操作部76を押し込むと、可撓板片78が内側に撓み、これにともない可撓板片78に形成された係合突部73も内側に移動する。そして、係合突部73は、収容穴336の上側の縁を乗り越える。更に、押圧スライド操作部76を押し込むと、可撓板片78に形成された係合突部73は、収容穴336と同一軸線上にある係合穴335と係合する。係合突部73が係合穴335と係合する位置が、第二位置である。
【0058】
第二位置では、第二固定具7のクサビ部72と第一固定具6の鉛直部61との係合が解除される。また、係合突部73が係合穴335と係合しているため、第二固定具7には付勢部材8による付勢力が作用しているものの、第二位置が維持される。ガイド部613は、ガイド溝722から脱し、係止板612も裏側がガイド溝722の縁と離れ、係止板612の上側の端部もカバー部75の端部と離れる。特に、係止板612は、第一位置において、第二固定具7の内側方向への動きを規制していたが、この規制が解除される。その結果、第二固定具7が接続されている綴じ具2を内側に移動させることが可能となる。つまり、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11から取り外すことが可能となる。
【0059】
綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に取り付ける場合には、基本的には上記と逆の動作になる。まず、第一固定具6の鉛直部61が、背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338とに貫通される。次に、第二固定具が第二位置にある状態の綴じ具を表紙の固定位置に添接させた状態でその綴じ具を表紙側に押し込むことに伴って第二固定具7が裏側へ向けて押し込まれる。第二固定具7が裏側へ向けて押し込まれると、係合突起部63は、綴じ具2の基板33に形成された係合穴335に入り込む。係合穴335には係合突部73が収容されているが、係合突起部63が係合穴335に入り込むと、係合突起部63が、第二固定具7の係合突部73(係合穴33
5に入り込んでいる係合突部73)を押し込む。押し込まれた係合突部73は、係合穴335から脱する。下側の第二固定具7には、下側への付勢力が作用しているため、下側の第二固定具7は、下側に移動し、第一位置へ至る。その結果、綴じ具2がファイル本体1の背表紙11に固定される。
【0060】
<<効果>>
第1実施形態に係るファイル10によれば、第一固定具6の鉛直部61が基板穴338と表紙穴14とを貫通した状態で、第二固定具7を基板33上で摺動させ、第一固定具6に対して第二固定具7を相対変位することで、第一固定具6及び第二固定具7が相互に係合して綴じ具2の基板33及びファイル本体1の背表紙11を挟持する。つまり、第二固定具7を基板33上で摺動させるといった単純な動作により、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に取り付けることができる。また、第二固定具7が裏側へ向けて押し込まれると、係合突起部63が、綴じ具2の基板33に形成された係合穴335に入り込む。係合突起部63が係合穴335に入り込むと、係合突起部63が、係合穴335に入り込んでいる係合突部73を押し込むため、押し込まれた係合突部73が、係合穴335から脱する。下側の第二固定具7には、下側への付勢力が作用しているため、下側の第二固定具7は、下側に移動し、第一位置へ至る。つまり、つまり、第二固定具7を裏側に押し込むといった単純な動作により、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定することができる。
【0061】
また、綴じ具2は、ファイル本体1から取り外すことができるため、ファイル本体1を重ねて収容できる。その結果、綴じ具2が固定されたファイル本体1を収容する場合と比較して、ファイル本体1を収容する段ボール箱のサイズを小さくすることができる。そのため、運搬コストや保管コストを低減できる。
【0062】
また、第二固定具7が綴じ具2の基板33に接続されているため、第二固定具7を紛失することがない。また、第二固定具7は、綴じ具2の基板33上で第二位置から第一位置へ向かう方向の付勢力を受けている。そのため、第二固定具7は、第一位置の状態で維持されるため、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に強固に固定することができる。
【0063】
また、位置決め突片331が、基板33に設けられているため、第一固定具6によらずに、表紙本体1の背表紙11と綴じ具2の位置決めを行うことができる。また、位置決め突片331は、基板穴338とは別の位置に設けられているため、表紙穴14を鉛直部61の外形に合わせて設計することができる。換言すると、表紙穴14を必要以上に大きくする必要がない。そのため、鉛直部61を表紙穴14にフィットさせることができ、より安定的に綴じ具2を背表紙11に固定することができる。また、鉛直部61の外形に対して、表紙穴14が大きい場合、鉛直部61の周面と表紙穴14の内面との間に隙間が生じ、綴じ具2ががたつくことが懸念される。また、綴じ具2ががたつくと、その衝撃により、表紙穴14が広がってしまうこともある。位置決め突片331を基板33に設け、表紙穴14を鉛直部61の外形に合わせて設計することで、このような問題の発生を抑制できる。
【0064】
また、第二固定具7が固定位置側先端に押圧スライド操作部76を有することで、第二固定具7を容易に摺動させることができる。その結果、更に容易に、綴じ具2の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。また、押圧スライド操作部76は、傾斜していることから、利用者の手指等を斜めにあてることができ、平面や垂直面の場合と比較して、操作性が向上する。
【0065】
また、第二固定具7は、クサビ部72に沿って摺動することができる。そして、押圧スライド操作部76を幅方向の両側を囲むようにクサビ部72が設けられているため、利用
者が押圧スライド操作部76を押し込む際に、摺動する方向(軌道)が安定する。その結果、更に容易に、綴じ具2の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。
【0066】
また、押圧スライド操作部76は、利用者の手指等との間の摩擦力を高めるための押圧補助面761を有している。そのため、滑り難くなり、操作性が向上する。また、綴じ具2を背表紙11から取り外す際は、綴じ具2に接続された第二固定具7の押圧スライド操作部76を押し込んで第二固定具7を第二位置に移動させ、そのまま第二固定具7の押圧スライド操作部76を把持して持ち上げた方が効率がよい。押圧補助面761により滑りにくくなるため、第二固定具7に接続された綴じ具2を持ち上げやすくなる。
【0067】
なお、第一実施形態に係るファイル10は、例えば、付勢部材8、及び付勢部材の第一固定片332、付勢部材の第二固定片333を省略し、より簡易な構成としてもよい。また、第一固定具6は、2つの鉛直部61と、係合突起部63を備えるが、夫々個別の添接部62とし、別パーツとしてもよい。また、例えば、係合突起部63は、背表紙11の内側面に設けてもよい。
【0068】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るファイル10は、第1実施形態と同じく書類等を綴じ込むものであるが、ファイル本体1の背幅が第1実施形態よりも狭いものである。これに伴い、綴じ具2の基板33、第一固定具6、第二固定具7が第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成(同等の機能を有するものを含む)については、同一符号を付し、説明を割愛する。
【0069】
<<ファイル本体>>
図24、
図25に示すように、ファイル本体1は、背表紙11、表表紙12、裏表紙13を備える。背表紙11は、第1実施形態に係る背表紙11よりも左右方向の長さが狭く、内側に綴じ具2が固定されている。なお、
図24、
図25では、上側の第二固定具7は、第一位置にあり、下側の第二固定具7は、第二位置にある。
【0070】
図24、
図25に加えて、
図26を参照すると、背表紙11には、表紙穴14、第一位置決め穴15、第二位置決め穴16が形成されている。表紙穴14は、第二固定具の鉛直部61が貫通する。第2実施形態に係る表紙穴14は、鉛直部61の外形に合わせて四角形に形成されており、鉛直部61の位置に合わせて2つ形成されている。第一位置決め穴15、及び第二位置決め穴16は、綴じ具2を位置決めする。第一位置決め穴15は、第一固定具6の係合突起部63が貫通する。第一位置決め穴15は、係合突起部63の外形に合わせて円形に形成されており、係合突起部63の位置に合わせて2つ形成されている。第二位置決め穴16は、本発明の第二表紙位置決め穴に相当し、後述する第一固定具6の位置決め突起68が貫通する。第二位置決め穴16は、位置決め突起68の外形に合わせて円形であり、位置決め突起68の位置に合わせて2つ形成されている。
【0071】
<<綴じ具>>
次に、
図24、
図25に加えて、
図27も参照しながら、綴じ具2について説明する。第二実施形態に係る綴じ具2は、第1実施形態と比較して背幅が狭く、また、基板33に形成される穴等の位置や形状が異なっている。そこで、以下、基板33を中心に説明する。
【0072】
ベース部材3の基板33の中央部分には、付勢部材8を固定する、付勢部材の第一固定片332、付勢部材の第二固定片333が形成されている。第2実施形態に係る付勢部材8は、第1実施形態と基本的には同じであり、ねじりばねとも言われるもので、コイル部81と、コイル部81から延びる2本の脚(第一脚部82、第二脚部83)からなる(図
24において点線で示す)。付勢部材の第一固定片332は、付勢部材8の第一脚部82を固定する。付勢部材の第一固定片332は、左右方向に延びており、基板33から内側に立ち上げられ、先端が折り曲げられている。下側の付勢部材の第一固定片332は、先端が下側に向けて折り曲げられ、上側の付勢部材の第一固定片332は、先端が上側に向けて折り曲げられている。2つの付勢部材の第一固定片332は、斜向かいに配置されている。
【0073】
付勢部材の第二固定片333は、付勢部材8のコイル部81が挿入され、コイル部81を固定する。付勢部材の第二固定片333は、上下方向に延びており、基板33から内側に立ち上げられ、先端が折り曲げられている。付勢部材の第二固定片333は、付勢部材の第一固定片332と位置決め突片331との間、かつ、ベース部材の側壁部31の近傍に形成されている。下側の付勢部材の第二固定片333は、左側のベース部材の側壁部31の近傍に形成されている。上側の付勢部材の第二固定片333は、右側のベース部材の側壁部31の近傍に形成されている。
【0074】
基板33の上側と下側とで、基本的な構成は同じであるため、以下、基板33の下側を例に説明する。下側の付勢部材の第一固定片332及び付勢部材の第二固定片333の更に下側には、摺動案内壁334が左右に対向して形成されている。これらの摺動案内壁334はともに上下方向に延びており、左側の摺動案内壁334は、基板33に略「コ」の字状の切欠線が設けられ、その切欠線に囲まれた部分が折り曲げられて内側に立ち上げられ、当該立ち上げられた部分の先端がさらに中央に向けて折り曲げられて形成されている。右側の摺動案内壁334は、左側の摺動案内壁334を形成する略「コ」の字状の切欠線に対向する位置に略「逆コ」の字状の切欠線が設けられ、その切欠線に囲まれた部分が左側の摺動案内壁334と同様に折り曲げられて形成されている。摺動案内壁334は、第二固定具7の左右方向の両側縁を支持して、第二固定具7を第一位置と第二位置との間で摺動させる。
【0075】
下側の摺動案内壁334が形成されることにより生じた略四角形の切り欠き穴は、綴じ具2を背表紙11から取り外す第二位置において、第二固定具7の係合突部73と係合する略四角形の係合穴335として形成されている。係合穴335は、係合穴335の端辺のうち、更に下側に位置する収容穴336に最も近い端辺から係合穴335の中央に向けて延出する係合舌片3351が形成されている。さらに、係合舌片3351の先端には、第二固定具7が第二位置にあるときに第一位置へ向かう方向の付勢力を受けることにより係合突部73に当接してこれと係合するための湾曲した係合端部3352が形成されている。また、係合孔335のうち、係合端部3352の対向する位置には、付勢部材の第一固定片332及び付勢部材の第二固定片333側に膨らむように湾曲した第二係合端部3353が形成されている。第二係合端部3353は、第二固定具7を第一位置から第二位置にむけて摺動した際に、係合突部73に当接する。
【0076】
下側の摺動案内壁334の更に下側には、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置において、第一固定具6の係合突起部63が収容される、円形の収容穴336が形成されている。収容穴336と係合孔335は、基板33の上下方向(長手方向)に延び左右方向の中心を通る仮想軸(
図27において点線で示す)と同一軸上にある。
【0077】
また、下側の係合穴335の下側には、第一固定具6の鉛直部61を貫通させる四角形の基板穴338が形成されている。また、下側の基板穴338の下側には、左右方向に延び、内側に膨らむ直線状の規制部337が形成されている。
【0078】
また、直線状の規制部337の更に下側には、第一固定具6の位置決め突起68が貫通する、基板に形成された位置決め突起穴339(本発明の基板位置決め穴に相当する。)
が形成されている。つまり、位置決め突起68は、本発明の第二位置決め突部に相当し、第二位置決め穴16と位置決め突起穴339とを共に貫通するため、これにより背表紙11と基板33との相対的位置関係を決定する。このような形態は、第二実施形態のファイル1のように背表紙11の幅が小さい場合に、これに用いる綴じ具2の基板33の面積が第一実施形態に用いられるそれに比べて小さいことにより、位置決め突片331を設ける場所を確保することが困難な場合に用いられるとよい。
【0079】
<<第一固定具>>
次に、
図24、
図25に加えて、
図28、
図29も参照しながら、第2実施形態に係る第一固定具6について説明する。第2実施形態に係る第一固定具6は、第二固定具7と係合して、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定する。第一固定具6は、添接部62、鉛直部61、係合突起部63、位置決め突起68を備える。添接部62は、平面視において上下方向に長いひし形のプレートからなり、ファイル本体1の背表紙11の裏側に添接される。鉛直部61は、添接部62の中央部に形成され、添接部62から立設しており、背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338を貫通する。鉛直部61は、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置において、第二固定具7と係合する。係合突起部63は、円柱状であり、長手方向の一方の角部近傍から立設しており、背表紙11に形成された第一位置決め穴15を貫通する。また、係合突起部63は、第二固定具7が第二位置にあるとき、綴じ具2の基板33に形成された係合穴335を貫通する。係合突起部63の頂部は、係合穴335と係合し易いよう、鉛直部61側が低くなるように僅かに傾斜している。第二固定具7が第二位置にあるとき、係合突起部63は、係合穴335と係合している第二固定具7の係合突部73を押し込むことができる。その結果、係合突起部63は、係合突部73と係合穴335との係合を解除する。また、位置決め突起68は、背表紙11に形成された第二位置決め穴16、基板33に形成された位置決め突起穴339を貫通する。位置決め突起68は、円柱状であり、長手方向の他方の角部近傍から立設している。
【0080】
鉛直部61は、断面形状が第1実施形態と基本的には同じであり、軸部611と、軸部611の頂部に添接部62と略平行に連なる係止板612と、この係止板612の左右方向の両端部に設けられ、添接部62側へ突出したガイド部613と、軸部611の左右方向の両側に添接部62から立設する起立片614,614と、を備える(
図10参照)。
【0081】
<<第二固定具>>
次に、
図24、
図25に加えて、
図30から
図32も参照しながら、第二実施形態に係る第二固定具7について説明する。第2実施形態に係る第二固定具7は、第一固定具6と係合して、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定する。第二固定具7は、摺動案内壁との接触部71、クサビ部72、係合突部73、付勢部材の受部74、カバー部75、押圧スライド操作部76、を備える。
【0082】
以下、
図24の下側の第二固定具7の向きを基準に説明する。摺動案内壁との接触部71は、第二固定具7の左右方向の両端部の直線部分であり、摺動案内壁334内に収容される。摺動案内壁との接触部71の左右方向内側には、第一位置において、鉛直部61と係合するクサビ部72が形成されている。クサビ部72は、鉛直部61の軸部611が貫通する、上下方向に延びる直線状の開口部721と、開口部721の左右方向の両側に形成され、鉛直部61のガイド部613を収容する、上下方向に延びる直線状のガイド溝722を含む。ガイド溝722は、ガイド部613の断面形状に対応して設計されている。第一位置では、ガイド溝722へガイド部613が収容され、第一固定具6の鉛直部61を構成する係止板612がガイド溝722を覆う。そのため、第二固定具7の内側方向への移動が第一固定具6によって規制されることになる。
【0083】
押圧スライド操作部76は、利用者が、第二固定具7を第一位置から第二位置に向けて押し込むためのもので、中央部に形成されている。押圧スライド操作部76は、傾斜面によって構成されている。下側の第二固定具7についてみると、傾斜面は、下側から上側へ向けて徐々に高くなるように、換言すると第一位置から第二位置に向けて第二位置側が高くなるように傾斜している。更に、傾斜面には、利用者の手指等との間で摩擦力を高めるための押圧補助面761が形成されている。第1実施形態の押圧補助面761は、左右方向に延びる複数の凹凸によって構成されている。
【0084】
押圧スライド操作部76よりも下側(押圧スライド操作部76とクサビ部72との間)には、切り欠き77が形成され、切り欠き77には、可撓性を有する可撓板片78が形成されている。可撓板片78は、基端が切り欠き77の縁のうち、押圧スライド操作部76側の縁から下側に向けて延びている。先端は、自由端となっており、先端側には、裏側に向けて突出する係合突部73が形成されている。係合突部73は、第一位置において収容穴336内に収容され、第二位置においてベース部材3の基板33に形成された係合穴335の係合端部3352に係合される。
【0085】
付勢部材の受部74は、付勢部材8の第二脚部83と接して、付勢力を第二固定具7に伝達する。付勢部材の受部74は、カバー部75の基端の裏側から立設した、左右方向に延びる壁によって構成されている(
図31参照)。
【0086】
カバー部75は、全体として四角形の板状であり、押圧スライド操作部76からクサビ部72の反対側(下側の第二固定具7では上側)に向けて延びている。カバー部75は、付勢部材8を覆うとともに、表面には操作方向を表す矢印が刻まれている。
【0087】
<<綴じ具の脱着方法>>
次に、綴じ具2の取り外し、及び固定方法について、第一固定具6や第二固定具7の動作も交えて説明する。
図24、
図25に示すように、上側の第二固定具7のように、第一位置では、第一固定具6と第二固定具7が係合しており、綴じ具2がファイル本体1の背表紙11に固定されている。上側の第二固定具7は、付勢部材の受部74が付勢部材8の第二脚部と接して上側に付勢されるため、付勢部材8により、下側への移動が規制されている。また、第二固定具7における、摺動案内壁との接触部71は、摺動案内壁334に収容される。そのため、上側の第二固定具7は、摺動案内壁334により、左右方向への移動が規制されている。また、上側の第二固定具7のクサビ部72は、第一固定具6の鉛直部61と係合している。そのため、鉛直部61は、第一位置において、第二固定具7の内側方向への動きを規制するとともに、第二固定具7の上側への動きを規制している。その結果、上側の第二固定具7は、第一固定具6と係合することで、左右方向、内側、上側への移動が規制される。換言すると、第一位置では、上側の第一固定具6は、付勢力に抗う下側への移動のみが許容されている。なお、係合突部73は、第一位置では、ベース部材3の基板33に形成された収容穴336に収容されている。
【0088】
第二固定具7を第一位置から第二位置へ移動する場合、手指等で押圧スライド操作部76を押し込む。下側の第二固定具7については、押圧スライド操作部76の傾斜面に手指等を当て、下側に押し込む。例えば、上側の第二固定具7の押圧スライド操作部76に人差し指を当て、下側の第二固定具7の押圧スライド操作部76に親指を当て、親指と人差し指と引き合わせるように夫々の第二固定具7を押し込むとよい。
【0089】
押圧スライド操作部76を押し込むと、第二固定具7は、第一位置から第二位置へ向けて移動を開始する。第一位置から第二位置へ移動する際も、上側の第二固定具7は、左右方向、内側、上側への移動が規制されている。第二位置への移動が開始されると、収容穴336内に収容されていた、可撓板片78に形成された係合突部73が、収容穴336の
下側縁に接する。更に、押圧スライド操作部76を押し込むと、可撓板片78が内側に撓み、これにともない可撓板片78に形成された係合突部73も内側に移動する。そして、係合突部73は、収容穴336の下側の縁を乗り越える。更に、押圧スライド操作部76を押し込むと、可撓板片78に形成された係合突部73は、収容穴336と同一軸線上にある係合穴335と係合する。係合突部73が係合穴335と係合する位置が、第二位置である。
【0090】
図24、
図25の下側の第二固定具7のように、第二位置では、第二固定具7のクサビ部72と第一固定具6の鉛直部61との係合が解除される。また、係合突部73が係合穴335と係合しているため、第二固定具7には付勢部材8による付勢力が作用しているものの、第二位置が維持される。その結果、第二固定具7が接続されている綴じ具2を内側に移動させることが可能となる。つまり、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11から取り外すことが可能となる。
【0091】
綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に取り付ける場合には、基本的には上記と逆の動作になる。まず、第一固定具6の鉛直部61が、背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338とに貫通される。次に、第二固定具7が裏側へ向けて押し込まれる。第二固定具7が裏側へ向けて押し込まれると、係合突起部63は、綴じ具2の基板33に形成された係合穴335に入り込む。係合穴335には係合突部73が収容されているが、係合突起部63が係合穴335に入り込むと、係合突起部63が、第二固定具7の係合突部73(係合穴335に入り込んでいる係合突部73)を押し込む。押し込まれた係合突部73は、係合端部3352との係合が解除されるとともに係合穴335から脱する。下側の第二固定具7には、下側への付勢力が作用しているため、下側の第二固定具7は、下側に移動し、第一位置へ至る。その結果、綴じ具2がファイル本体1の背表紙11に固定される。
【0092】
第2実施形態に係るファイル10によれば、第一固定具6の鉛直部61が基板穴338と表紙穴14とを貫通した状態で、第二固定具7を基板33上で摺動させ、第一固定具6に対して第二固定具7を相対変位することで、第一固定具6及び第二固定具7が相互に係合して綴じ具2の基板33及びファイル本体1の背表紙11を挟持する。つまり、第二固定具7を基板33上で摺動させるといった単純な動作により、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に取り付けることができる。また、第二固定具7を裏側へ向けて押し込むと、係合突起部63が、綴じ具2の基板33に形成された係合穴335に入り込む。係合突起部63が係合穴335に入り込むと、係合突起部63が、係合穴335に入り込んでいる係合突部73を押し込むため、押し込まれた係合突部73が、係合穴335から脱する。例えば、下側の第二固定具7には、下側への付勢力が作用しているため、下側の第二固定具7は、下側に移動し、第一位置へ至る。つまり、つまり、第二固定具7を裏側に押し込むといった単純な動作により、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定することができる。
【0093】
また、綴じ具2は、ファイル本体1から取り外すことができるため、ファイル本体1を重ねて収容できる。その結果、綴じ具2が固定されたファイル本体1を収容する場合と比較して、ファイル本体1を収容する段ボール箱のサイズを小さくすることができる。そのため、運搬コストや保管コストを低減できる。
【0094】
また、第二固定具7が綴じ具2の基板33に接続されているため、第二固定具7を紛失することがない。また、第二固定具7は、綴じ具2の基板33上で第二位置から第一位置へ向かう方向の付勢力を受けている。そのため、第二固定具7は、第一位置の状態で維持されるため、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に強固に固定することができる。
【0095】
また、位置決め突起68が第一固定具6に設けられているため、第一固定具6が背表紙11に添接されるにあたり、係合突起部63が第一位置決め穴15に挿入されるとともに位置決め突起68が第二位置決め穴16に挿入される。そのため、より確実に第一固定具6と背表紙11との相対的位置関係を決定することができる。更に、位置決め突起68は第二位置決め穴16を貫通してさらに背表紙11に添接された基板33の位置決め突起穴339にも挿入されるため、基板33に位置決め突片331を設けることなく、表紙本体1の背表紙11と綴じ具2の位置決めを行うことができる。このように、位置決め突起68が基板穴338とは別の位置に設けられていることにより、鉛直部61が第一固定具6と背表紙11と基板33との相対的位置関係を決定することに関与しないため、表紙穴14を鉛直部61の外形に合わせて設計することができる。換言すると、表紙穴14を必要以上に大きくする必要がない。そのため、鉛直部61を表紙穴14にフィットさせることができ、より安定的に綴じ具2を背表紙11に固定することができる。また、鉛直部61の外形に対して、表紙穴14が大きい場合、鉛直部61の周面と表紙穴14の内面との間に隙間が生じ、綴じ具2ががたつくことが懸念される。また、綴じ具2ががたつくと、その衝撃により、表紙穴14が広がってしまうこともある。位置決め突起68を第一固定具6に設け、表紙穴14を鉛直部61の外形に合わせて設計することで、このような問題の発生を抑制できる。
【0096】
また、第二固定具7が固定位置側先端に押圧スライド操作部76を有することで、第二固定具7を容易に摺動させることができる。その結果、更に容易に、綴じ具2の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。また、押圧スライド操作部76は、傾斜していることから、利用者の手指等を斜めにあてることができ、平面や垂直面の場合と比較して、操作性が向上する。
【0097】
また、第二固定具7は、クサビ部72に沿って摺動することができる。そして、押圧スライド操作部76を幅方向の両側を囲むようにクサビ部72のガイド溝722が設けられているため、利用者が押圧スライド操作部76を押し込む際に、摺動する方向(軌道)が安定する。その結果、更に容易に、綴じ具2の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。
【0098】
また、押圧スライド操作部76は、利用者の手指等との間の摩擦力を高めるための押圧補助面761を有している。そのため、滑り難くなり、操作性が向上する。また、綴じ具2を背表紙11から取り外す際は、綴じ具2に接続された第二固定具7の押圧スライド操作部76を押し込んで第二固定具7を第二位置に移動させ、そのまま第二固定具7の押圧スライド操作部76を把持して持ち上げた方が効率がよい。押圧補助面761により滑りにくくなるため、第二固定具7に接続された綴じ具2を持ち上げやすくなる。
【0099】
なお、第一実施形態に係るファイル10は、例えば、付勢部材8、及び付勢部材の第一固定片332、付勢部材の第二固定片333を省略し、より簡易な構成としてもよい。また、例えば、係合突起部63は、背表紙11の内側面に設けてもよい。
【0100】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るファイル10は、第1実施形態と同じく書類等を綴じ込むものであるが、付勢部材等を有さないため、第1実施形態に係るファイル10よりも簡易な構成となっている。
【0101】
<<ファイル本体>>
図33から
図35に示すように、ファイル本体1は、背表紙11、表表紙12、裏表紙13を備える。背表紙11は、上下方向に細長い長方形であり、内側に綴じ具2が固定される。表表紙12及び裏表紙13は、綴じ込まれる書類よりも一回り大きい面積を有する
長方形であり、背表紙11の左右方向の両端部に開閉自在に夫々連なっている。背表紙11には、後述する第二固定具の鉛直部61が貫通する表紙穴14が形成されている。表紙穴14は、鉛直部61の外形に合わせて四角形に形成されており、鉛直部61の位置に合わせて4つ形成されている。
【0102】
<<綴じ具>>
図33から
図35に加えて、
図36も参照しながら、綴じ具2について説明する。綴じ具2は、背表紙11に固定されるベース部材3、ベース部材の側壁部31,31に対して着脱自在な第一綴じ部材41、第二綴じ部材42を備える。第一綴じ部材41と第二綴じ部材42が組み合わされた状態でベース部材3に取り付けられることで、書類等の綴じ込みが行われる。なお、綴じ具2の書類等を綴じる機能は、従来の綴じ具と本質的に同質である。そこで、書類等を綴じる機能に関する説明は簡単にし、固定する機能に関する構成の説明を詳しく行うものとする。
【0103】
ベース部材3は、背表紙11に固定される基板33、基板33の左右方向の両縁に回動自在に連なるベース部材の側壁部31,31、ベース部材の側壁部31,31のそれぞれに設けられた綴込爪部32を備える。また、第一綴じ部材41は、第一綴じ部材の側壁部411、第一綴じ部材の側壁部411の中央部分に設けられた第一綴じ部材の窪み部412、第一綴じ部材の側壁部411から延出する2本のパイプ管413を有する。第二綴じ部材42は、第二綴じ部材の側壁部421、第二綴じ部材の側壁部421の中央部分に設けられた第二綴じ部材の窪み部422と、第二綴じ部材の側壁部421から延出する足管423を有する。足管423がパイプ管413に挿入されることで、第一綴じ部材41と第二綴じ部材42が組み合わされ、そしてその組み合わされた状態で、ベース部材3のそれぞれのベース部材の側壁部31,31に第一綴じ部材の側壁部411と第二綴じ部材の側壁部421が接続される。具体的には、ベース部材の側壁部31,31のそれぞれに設けられた綴込爪部32,32が、第一綴じ部材の窪み部412と第二綴じ部材の窪み部422に引っ掛かり、書類等を綴じ込む状態となる(
図35参照)。なお、上記綴じ具2の構成は、一例であり、綴じ具2に代えて、他の様々な綴じ具を採用することができる。
【0104】
ベース部材3の基板33には、複数種類の穴等が形成されている。左右方向の両側には、摺動案内壁334が対向して形成されている。摺動案内壁334は、上下方向に延びており、基板33から内側に立ち上げられ、先端が折り曲げられている。摺動案内壁334は、第二固定具7の左右方向の両側縁を支持して、第二固定具7を第一位置と第二位置との間で摺動させる。第一位置は、綴じ具2を背表紙11に固定する位置であり、第二位置は、綴じ具2を背表紙11から取り外す位置である。
【0105】
また、摺動案内壁334の上側と下側には、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置において、第一固定具6の鉛直部61が貫通する四角形の基板穴338が合計4つ形成されている。
【0106】
また、基板33の上下方向の両側縁の近傍には、両側縁に沿って、内側に膨らむ直線状の規制部337が形成されている。規制部337は、第二固定具7の移動を規制する。より詳細には、規制部337は、第二固定具7が、第一位置よりも更に基板33の上下方向の両側縁側に移動しないよう第二固定具7の移動を規制する。
【0107】
また、摺動案内壁334の間には、綴じ具2を背表紙11から取り外す第二位位置において、後述する第二固定具7の係合突部73と係合する円形の係合穴335が形成されている。係合穴335は、基板33の上下方向(長手方向)に延び、左右方向の中心を通る仮想軸(
図36において点線で示す)に形成されている。
【0108】
また、基板穴338の間に、かつ、上記仮想軸と同一軸状には、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置において、第一固定具6の係合突部73が収容される円形の収容穴336が形成されている。
【0109】
<<第一固定具>>
次に
図33から
図35に加えて、
図37も参照しながら、第一固定具6について説明する。第一固定具6は、後述する第二固定具7と係合して、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定する。第一固定具6は、添接部62、鉛直部61を備える。添接部62は、平面視において左右方向に長い長方形のプレートからなり、ファイル本体1の背表紙11の裏側に添接される。鉛直部61は、長手方向に2つ形成され、添接部62から立設しており、背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338を貫通する。鉛直部61は、綴じ具2を背表紙11に固定する第一位置において、第二固定具7と係合する。
【0110】
鉛直部61は、軸部611と、軸部611の頂部に添接部62と略平行に連なる係止板612と、この係止板612の左右方向の両端部に設けられ、添接部62側へ突出したガイド部613と、軸部611の左右方向の両側に添接部62から立設する起立片614,614と、を備える。係止板612は、第一位置において、第二固定具7の内側方向への動きを規制するとともに、第二固定具7の上下方向への動きを規制する。ガイド部613は、第一固定位置において、第二固定具7のガイド溝722に収容される。軸部611は、添接部62と係止板612とを接続する。起立片614,614は、軸部611を保護する。例えば、起立片614,614設けない場合、軸部611の側面が背表紙11に形成された表紙穴14の左右方向の縁と直接接触する。この場合、軸部611に過度の負荷がかかる虞がある。第一実施形態に係る第一固定具6は、起立片614,614を備えることで、軸部611への負荷を抑制することができる。
【0111】
<<第二固定具>>
次に、
図33から
図35に加えて、
図38、
図39も参照しながら、第二固定具7について説明する。第二固定具7は、第一固定具6と係合して、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に固定する。第二固定具7は、摺動案内壁との接触部71、クサビ部72、係合突部73、押圧スライド操作部76、を備える。
【0112】
第二固定具7は、全体として四角形のプレート状であり、第二固定具7の左右方向の直線状の両端部が、摺動案内壁との接触部71として機能する。摺動案内壁との接触部71は、摺動案内壁334内に収容される。摺動案内壁との接触部71の左右方向内側には、第一位置において、鉛直部61と係合するクサビ部72が形成されている。換言すると、クサビ部72は、左右方向の中央に形成された押圧スライド操作部76を囲むように、押圧スライド操作部76の左右方向の両側に形成されている。クサビ部72は、鉛直部61の軸部611が貫通する、上下方向に延びる直線状の開口部721と、開口部721の左右方向の両側に形成され、鉛直部61のガイド部613を収容する、上下方向に延びる直線状のガイド溝722を含む。ガイド溝722は、ガイド部613の断面形状に対応して設計されている。第一位置では、ガイド溝722へガイド部613が収容され、第一固定具6の鉛直部61を構成する係止板612がガイド溝722を覆う。そのため、第二固定具7の内側方向への移動が第一固定具6によって規制されることになる。
【0113】
押圧スライド操作部76は、利用者が、第二固定具7を第一位置から第二位置に向けて押し込むためのもので、左右方向の中央、かつ、上下方向の端部に形成されている。第3実施形態では、押圧スライド操作部76は、手指等で押し込む際に、手指等が第一綴じ部材の側壁部411から延出する2本のパイプ管413と接触し難いように、第二固定具7の端部よりも更に突出している。より詳細には、第二位置においても、平面視において押
圧スライド操作部76がパイプ管413よりも上下方向の端部側に位置するように、押圧スライド操作部76が第二固定具7の端部よりも更に突出している。
【0114】
また、押圧スライド操作部76は、傾斜面によって構成されている。傾斜面は、上下方向において端部側から中央に向けて徐々に高くなるように、換言すると第一位置から第二位置に向けて第二位置側が高くなるように傾斜している。更に、傾斜面には、利用者の手指等との間で摩擦力を高めるための押圧補助面761が形成されている。第1実施形態の押圧補助面761は、左右方向に延びる複数の凹凸によって構成されている。
【0115】
押圧スライド操作部76の基端側、換言すると、クサビ部72の間の領域には、切り欠き77が形成されている。この切り欠き77には、可撓性を有する可撓板片78が形成されている。可撓板片78は、基端が切り欠き77の縁のうち、押圧スライド操作部76の先端とは反対側に位置する縁に連なっている。先端は、自由端となっている。そして、自由端である先端側には、裏側に向けて突出する係合突部73が形成されている。係合突部73は、第一位置では、ベース部材3の基板33に形成された収容穴336に収容される。また、係合突部73は、第二位置では、ベース部材3の基板33に形成された係合穴335に係合される。
【0116】
<<綴じ具の脱着方法>>
次に、綴じ具の取り外し、及び固定方法について、第一固定具6や第二固定具7の動作も交えて説明する。
図33、
図34、
図40、
図41に示すように、第一位置では、第一固定具6と第二固定具7が係合し、綴じ具2がファイル本体1の背表紙11に固定されている。なお、下側の第二固定具7と上側の第二固定具7は、動作の向きが逆向きである以外は、基本的には同様の動作をする。そこで、以下の説明では、下側の第二固定具7を例に説明する。
【0117】
下側の第二固定具7は、摺動案内壁との接触部71が、摺動案内壁334に収容される。そのため、下側の第二固定具7は、摺動案内壁334により、左右方向への移動が規制されている。また、第二固定具7のクサビ部72は、第一固定具6の鉛直部61と係合している。より詳細には、第一固定具6は、鉛直部61が背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338を貫通している。また、鉛直部61を構成するガイド部613は、第二固定具7のガイド溝722に収容されている。また、係止板612は、第一位置において、裏側がガイド溝722の縁と接し、上下方向の中央よりの端部がカバー部75の端部と接している。そのため、係止板612は、第一位置において、第二固定具7の内側方向への動きを規制するとともに、第二固定具7の上下方向への動きを規制している。その結果、下側の第二固定具7は、第一固定具6と係合することで、左右方向、内側、下側への移動が規制される。換言すると、第一位置では、下側の第一固定具6は、上側への移動のみが許容されている。なお、係合突部73は、第一位置では、ベース部材3の基板33に形成された収容穴336に収容されている。
【0118】
第二固定具7を第一位置から第二位置へ移動する場合、手指等で押圧スライド操作部76を押し込む。下側の第二固定具7については、押圧スライド操作部76の傾斜面に手指等を当て、上側に押し込む。例えば、下側の第二固定具7の押圧スライド操作部76に親指を当て、上側の第二固定具7の押圧スライド操作部76に人差し指を当て、親指と人差し指と引き合わせるように夫々の第二固定具7を押し込むとよい。
【0119】
押圧スライド操作部76を押し込むと、第二固定具7は、第一位置から第二位置へ向けて移動を開始する。第一位置から第二位置へ移動する際も、下側の第二固定具7は、左右方向、内側、下側への移動が規制されている。第二位置への移動が開始されると、収容穴336に収容された、可撓板片78に形成された係合突部73が、収容穴336の上側縁
に接する。更に、押圧スライド操作部76を押し込むと、可撓板片78が内側に撓み、これにともない可撓板片78に形成された係合突部73も内側に移動する。そして、係合突部73は、収容穴336の上側の縁を乗り越える。更に、押圧スライド操作部76を押し込むと、可撓板片78に形成された係合突部73は、収容穴336と同一軸線上にある係合穴335と係合する。係合突部73が係合穴335と係合する位置が、第二位置である。
【0120】
第二位置では、第二固定具7のクサビ部72と第一固定具6の鉛直部61との係合が解除される。また、係合突部73が係合穴335と係合しているため、第二位置が維持される。ガイド部613は、ガイド溝722から脱し、係止板612も裏側がガイド溝722の縁と離れ、係止板612の上側の端部もカバー部75の端部と離れる。特に、係止板612は、第一位置において、第二固定具7の内側方向への動きを規制していたが、この規制が解除される。その結果、第二固定具7が接続されている綴じ具2を内側に移動させることが可能となる。つまり、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11から取り外すことが可能となる。
【0121】
綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に取り付ける場合には、基本的には上記と逆の動作になる。まず、第一固定具6の鉛直部61が、背表紙11に形成された表紙穴14とベース部材3の基板33に形成された基板穴338とに貫通される。次に、第二固定具7同士が離れるように力が加えられる。その結果、係合突部73が、係合穴335の縁を乗り越え、係合穴335から脱する。そして、下側の第二固定具7は、下側に移動し、第一位置へ至る。すなわち、係合突部73は、収容穴336に収容される。その結果、綴じ具2がファイル本体1の背表紙11に固定される。なお、第二固定具7を第二位置から第一位置へ移動させやすくするため、押圧スライド操作部76を第二固定具7の反対側の端部にも設けるようにしてもよい。
【0122】
<<効果>>
第3実施形態に係るファイル10によれば、第一固定具6の鉛直部61が基板穴338と表紙穴14とを貫通した状態で、第二固定具7を基板33上で摺動させ、第一固定具6に対して第二固定具7を相対変位することで、第一固定具6及び第二固定具7が相互に係合して綴じ具2の基板33及びファイル本体1の背表紙11を挟持する。つまり、第二固定具7を基板33上で摺動させるといった単純な動作により、綴じ具2をファイル本体1の背表紙11に取り付け、又は取り外すことができる。
【0123】
また、綴じ具2は、ファイル本体1から取り外すことができるため、ファイル本体1を重ねて収容できる。その結果、綴じ具2が固定されたファイル本体1を収容する場合と比較して、ファイル本体1を収容する段ボール箱のサイズを小さくすることができる。そのため、運搬コストや保管コストを低減できる。また、第二固定具7が綴じ具2の基板33に接続されているため、第二固定具7を紛失することがない。
【0124】
また、第二固定具7が固定位置側先端に押圧スライド操作部76を有することで、第二固定具7を容易に摺動させることができる。その結果、容易に綴じ具2の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。また、押圧スライド操作部76は、傾斜していることから、利用者の手指等を斜めにあてることができ、平面や垂直面の場合と比較して、操作性が向上する。
【0125】
また、第二固定具7は、クサビ部72に沿って摺動することができる。そして、押圧スライド操作部76を幅方向の両側を囲むようにクサビ部72が設けられているため、利用者が押圧スライド操作部76を押し込む際に、摺動する方向(軌道)が安定する。その結果、更に容易に、綴じ具2の取り付けや取り外しを行うことが可能となる。
【0126】
また、押圧スライド操作部76は、利用者の手指等との間の摩擦力を高めるための押圧補助面761を有している。そのため、滑り難くなり、操作性が向上する。また、綴じ具2を背表紙11から取り外す際は、綴じ具2に接続された第二固定具7の押圧スライド操作部76を押し込んで第二固定具7を第二位置に移動させ、そのまま第二固定具7の押圧スライド操作部76を把持して持ち上げた方が効率がよい。押圧補助面761により滑りにくくなるため、第二固定具7に接続された綴じ具2を持ち上げやすくなる。
【0127】
なお、第一固定具6は、2つの鉛直部61とを備えるが、夫々個別の添接部62とし、別パーツとしてもよい。
【0128】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る綴じ具と表紙との固定構造、及びファイルは、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者にとって自明である。