特許第6475598号(P6475598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475598
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】液体加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   F24H1/10 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-198798(P2015-198798)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-72293(P2017-72293A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山谷 栄次
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏起
(72)【発明者】
【氏名】大塚 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大樹
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−156507(JP,A)
【文献】 特開昭61−036690(JP,A)
【文献】 特開2002−257611(JP,A)
【文献】 特開2013−180690(JP,A)
【文献】 実開昭49−066058(JP,U)
【文献】 国際公開第2006/068131(WO,A1)
【文献】 特開2012−124222(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/030753(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
B60H 1/22
H05B 3/50
F24C 7/00
F24C 7/06− 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部に給排される液体がヒータによって加熱される車両用の液体加熱装置であって、
前記ケースは、
前記ヒータを挟んで互いに対向する第1壁面及び第2壁面と、
前記第1壁面に開口し、液体を供給する供給口と、
前記第1壁面に開口し、液体を排出し、前記供給口よりも上方に配置される排出口と、を有し、
前記供給口と前記排出口との少なくとも一方は、両者が配列される方向の開口長さが配列方向と直交する方向の開口長さと比較して小さい扁平な断面形状を有し、
前記ケースの内部には、前記ヒータによって加熱される筒状の加熱部が収容され、
前記加熱部は、前記供給口から供給される流体が流通する内周流路を形成する貫通孔を有し、
前記供給口は、前記内周流路と対向する位置に配置されることを特徴とする液体加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体加熱装置であって、
前記供給口と前記排出口とは、上下方向に近接して配列することを特徴とする液体加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体加熱装置であって、
前記排出口は、前記扁平な断面形状を有することを特徴とする液体加熱装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一つに記載の液体加熱装置であって、
前記供給口に接続され、前記ケースの外部から内部に供給される流体を導く供給パイプと、
前記排出口に接続され、前記ケースの内部から外部に排出される流体を導く排出パイプと、を備え、
前記排出パイプは、前記排出口の軸方向から曲折して前記ケースの外部に延びることを特徴とする液体加熱装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一つに記載の液体加熱装置であって、
前記ケースは、前記第1壁面と前記第2壁面との間にわたって延びるガイド壁面を有し、
前記第2壁面は、前記供給口から前記ケースの内部に流入した流体を前記ガイド壁面に導くように前記供給口の中心線に対して傾斜し、
前記排出口は、前記供給口と比較して前記ガイド壁面に近い位置に配置されることを特徴とする液体加熱装置。
【請求項6】
請求項に記載の液体加熱装置であって、
前記供給口は、その中心線が前記ケースの中心と比較して前記ガイド壁面から離れた位置に配置されることを特徴とする液体加熱装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一つに記載の液体加熱装置であって、
記貫通孔から前記排出口へと向かう流体が流通する外周流路を形成する外壁部と、を有することを特徴とする液体加熱装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一つに記載の液体加熱装置であって、
前記供給口は、前記ケースの外部から内部に流体が供給され、
前記排出口は、前記ケースの内部から外部に流体を排出することを特徴とする液体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を加熱する流体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体が流通するタンク内に螺旋状の電熱式ヒータが収容される流体加熱装置が開示されている。
【0003】
上記タンクの両端部には、供給通路と排出通路が互いに対向するように開口している。供給通路から供給される流体は、タンク内において一方向に流れてヒータの熱を吸収し、排出通路から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−053288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の流体加熱装置において、タンク内に流体が給排される流路断面積を十分に確保しようとすると、装置の高さ方向において大型化を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ケース内に給排される流体がヒータによって加熱される流体加熱装置の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、ケースの内部に給排される液体がヒータによって加熱される車両用の液体加熱装置であって、前記ケースは、前記ヒータを挟んで互いに対向する第1壁面及び第2壁面と、前記第1壁面に開口し、液体を供給する供給口と、前記第1壁面に開口し、液体を排出し、前記供給口よりも上方に配置される排出口と、を有し、前記供給口と前記排出口との少なくとも一方は、両者が配列される方向の開口長さが配列方向と直交する方向の開口長さと比較して小さい扁平な断面形状を有し、前記ケースの内部には、前記ヒータによって加熱される筒状の加熱部が収容され、前記加熱部は、前記供給口から供給される流体が流通する内周流路を形成する貫通孔を有し、前記供給口は、前記内周流路と対向する位置に配置されることを特徴とする液体加熱装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、供給口と排出口との少なくとも一方が配列方向に扁平な断面形状を有するために、配列方向についてケースの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る流体加熱装置の斜視図である。
図2図2は、流体加熱装置の分解斜視図である。
図3図3は、流体加熱装置の側面図であり、タンクを断面で示した図である。
図4図4は、流体加熱装置の正面図であり、タンクを断面で示した図である。
図5図5は、流体加熱装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体加熱装置100について説明する。
【0011】
流体加熱装置100は、EV(Electric Vehicle:電動車両)やHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド車両)などの車両に搭載される車両用空調装置(図示省略)に適用される。流体加熱装置100は、車両用空調装置が暖房運転を実行するために、流体としての温水(熱媒体)を加熱するものである。
【0012】
まず、図1から図4を参照して、流体加熱装置100の全体構成について説明する。
【0013】
図1図2に示すように、流体加熱装置100は、水が流通する加熱流路8を形成するタンク10と、タンク10内に収容されるヒータユニット20と、各種電装部品を接続するためのバスバーモジュール30と、ヒータユニット20の動作を制御するための制御部としての制御基板40と、バスバーモジュール30及び制御基板40を覆うカバー50と、を備える。
【0014】
タンク10は、ボート形状に形成される。タンク10は、底面13と、底面13から湾曲して立設される4つの壁面14a、14b、14c、14d(図3図4参照)と、壁面14a、14b、14c、14dの端部に底面13と対向するように開口する開口部15と、を有する。壁面14a、14b、14c、14dは、それぞれ上方に向くように鉛直線(基準線)に対して傾斜して形成される。
【0015】
タンク10の第1壁面14aには、外部から加熱流路8に温水を供給する供給口11と、加熱流路8から外部に温水を排出する排出口12と、が上下に並んで開口する。供給口11の中心線Oと排出口12の中心線Qとは、互いに平行に延びる。流体加熱装置100は、排出口12が供給口11と比較して上方に位置するように車両に搭載される。なお、これに限らず、流体加熱装置100は、排出口12と供給口11とが水平方向に並ぶように車両に搭載される構成としてもよい。
【0016】
タンク10の第2壁面14bは、第1壁面14aに対向し、かつ供給口11の中心線Oに対して角度θをもって傾斜するように形成される(図3参照)。第2壁面14bが鉛直線(基準線)に対して傾斜する角度は、他の壁面14a、14c、14dと比較して大きく形成される。
【0017】
供給口11には、供給パイプ57の基端部57aが挿入される。タンク10から突出する供給パイプ57には、供給される温水を導く配管(図示省略)が接続される。
【0018】
排出口12には、排出パイプ58の基端部58aが挿入される。タンク10から突出する排出パイプ58には、排出される温水を導く配管(図示省略)が接続される。
【0019】
図3及び図4に示すように、ヒータユニット20は、発熱する電熱式ヒータ21と、ヒータ21の周りを覆うように形成される加熱部22と、タンク10の開口部15を閉塞するリッド23と、加熱部22とリッド23とを連結する連結部24と、を有する。ヒータユニット20では、加熱部22、連結部24、及びリッド23が一体に成形される。
【0020】
ヒータ21は、加熱部22に鋳込まれる螺旋状の発熱部21cと、リッド23から上方に突出する一対の端子21a,21bと、を有する。なお、発熱部21cは、螺旋状ではなく、例えば、加熱部22内を往復するように形成されるものであってもよい。
【0021】
ヒータ21の端子21a,21bには、車両に搭載される電源装置(図示省略)からバスバーモジュール30を介して電力が供給される。ヒータ21は、制御基板40からの指令を受けて通電し、タンク10内を流通する温水を加熱する。
【0022】
加熱部22は、螺旋状に巻かれる発熱部21cの外側を覆うように形成される。加熱部22が設けられるので、ヒータ21と温水とを直接接触させる場合と比較して、加熱部22が温水と熱交換を行う伝熱面積が十分に確保される。これにより、ヒータ21の出力を大きくした場合にも温水を効率よく加熱することができる。そして、ヒータ21と温水とが直接接触することはないために、温水が局所的に加熱されることが抑制され、温水が沸騰することが防止される。
【0023】
加熱部22は、発熱部21cの内周と比較して小径に形成され発熱部21cの中心に沿って貫通する貫通孔25と、発熱部21cの外周と比較して大径に形成されタンク10の底面13から第3壁面14c及び第4壁面14dにかけて対峙する外壁部26と、第1壁面14aに対峙する第1端壁部27と、第2壁面14bに対峙する第2端壁部28と、を有する。
【0024】
貫通孔25は、螺旋状に巻かれる発熱部21cの内側に形成される。タンク10の供給口11は、貫通孔25の中心線O上に開口する。貫通孔25は、供給口11から供給される温水が流通する内周流路52(図4参照)を形成する。
【0025】
外壁部26は、タンク10の底面13、第3壁面14c、第4壁面14d、及びリッド23のガイド壁面16との間に外周流路54を形成する。外周流路54は、内周流路52と連通して内周流路52から流れてきた温水を排出口12に導く。外壁部26は、貫通孔25と比較して伝熱面積が大きい。また、外周流路54は、内周流路52と比較して流路面積が大きい。
【0026】
加熱部22の第1端壁部27は、第1壁面14aに間隔をもって対峙し、第1壁面14aとの間に第1端流路51を形成する。第1端流路51は、供給口11、排出口12、内周流路52、及び外周流路54に連続して温水を流通させる。
【0027】
第1端壁部27には、貫通孔25が開口する環状のインレット部45が形成される。供給パイプ57の基端部57aは、第1壁面14aからタンク10内に突出し、貫通孔25のインレット部45(第1端壁部27)に対する開口部に間隔をもって配置される。供給パイプ57から供給される温水は、第1端流路51を通じて内周流路52に導かれる。
【0028】
上述した構成に限らず、供給パイプ57の基端部57aがインレット部45に挿入され、供給パイプ57が貫通孔25に接続される構成としてもよい。この場合には、供給パイプ57から供給される温水の全量が内周流路52に導かれる。
【0029】
加熱部22の第2端壁部28は、第2壁面14bに間隔をもって対峙し、第2壁面14bとの間に第2端流路53を形成する。第2端流路53は、内周流路52及び外周流路54に連続して温水を流通させる。
【0030】
タンク10の内部に形成される加熱流路8は、第1端流路51、内周流路52、外周流路54、及び第2端流路53によって構成される。図3において、Hは、加熱流路8の中心線であり、ケース9の中心を通る直線である。供給口11は、その中心線Oが加熱流路8の中心線Hより下方に配置される。
【0031】
ヒータユニット20は、加熱部22がタンク10内に配置されてリッド23が開口部15に嵌合された状態で、開口部15の外周縁と溶接される。
【0032】
リッド23は、外周流路54に面するガイド壁面16(天面)を有する。ガイド壁面16は、中心線Oと略平行に延びる。ガイド壁面16は、加熱部22の外壁部26に間隔をもって対峙し、外壁部26との間に外周流路54の一部を形成する。ガイド壁面16は、第1端流路51、外周流路54、及び第2端流路53に面して形成される。
【0033】
なお、タンク10及びリッド23は、ケース9を構成する。ケース9は、加熱部22(ヒータ21)を収容し、加熱部22との間に温水が流通する加熱流路8を形成する。
【0034】
図2図4に示すように、リッド23の上部には、上方に開口した箱形状のハウジング29が形成される。
【0035】
ハウジング29の両側部には、一対の取付座67,68が形成される。流体加熱装置100は、取付座67,68にそれぞれ締結されるブラケット(図示省略)を介して車両に取り付けられる。
【0036】
ハウジング29は、ガイド壁面16の裏側に位置する底壁面17(底面)と、底壁面17から立設される側壁面18と、側壁面18の端部に開口する開口部19と、を有する。
【0037】
ハウジング29の開口部19は、カバー50によって閉塞される。ハウジング29とカバー50との間には、制御室60が形成される。ハウジング29の両側部には、複数のボス部65が形成される。カバー50は、ボス部65に螺合するボルト(図示省略)によってハウジング29に締結される。
【0038】
制御室60には、バスバーモジュール30及び制御基板40などが収容される。ハウジング29の両端には、取付座61,62がそれぞれ形成される。取付座61には、電気信号を導く信号線(図示省略)を接続するコネクタ63が取り付けられる。取付座62には、電力を供給する電力供給線(図示省略)を接続するコネクタ64が取り付けられる。
【0039】
バスバーモジュール30は、底壁面17の上部に積層される。バスバーモジュール30は、電力や電気信号を送給可能な金属板(導電材)によって形成される複数のバスバー(図示省略)を有する。
【0040】
底壁面17は、スイッチング素子としての一対のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)34,35を当接させる接触部17a,17bを有する。バスバーモジュール30には、IGBT34,35を収容する収容孔36,37が形成される。IGBT34,35は、底壁面17に当接し、プレート38を介してハウジング29に取り付けられる。プレート38は、その中央部がボルト39を介してリッド23に締結され、その両端部によってIGBT34,35を底壁面17に押し付ける。ボルト39は、バスバーモジュール30の孔49を貫通し、リッド23のネジ孔(図示省略)に螺合する。
【0041】
制御基板40は、バスバーモジュール30の上部に積層される。制御基板40は、バスバーモジュール30及びIGBT34,35と電気的に接続される。制御基板40は、車両に搭載される上位のコントローラ(図示省略)の指令に基づいてIGBT34,35を制御する。
【0042】
図2に示すように、リッド23は、温度スイッチとしてのバイメタルスイッチ31を取り付けるための凹部23aと、ヒータ温度センサ32を取り付けるための凹部(図示省略)と、水温センサ33を取り付けるための凹部(図示省略)と、が形成される。
【0043】
バイメタルスイッチ31は、ヒータユニット20の温度を検知し、検知した温度に応じて切り換わる。具体的には、バイメタルスイッチ31は、ヒータユニット20の温度が第1の設定温度よりも上昇した場合にヒータユニット20への電力の供給を遮断する。ヒータユニット20の温度が第1の設定温度と比較して低い第2の設定温度よりも下降した場合に、バイメタルスイッチ31が再び切り換わってヒータユニット20への電力の供給を再開するようにしてもよい。
【0044】
ヒータ温度センサ32は、ヒータユニット20におけるヒータ21の温度を検知する。ヒータ温度センサ32は、検知したヒータ21の温度に応じた電気信号を制御基板40に送る。制御基板40は、ヒータ温度センサ32が検知したヒータ21の温度が設定温度よりも高い場合に、ヒータ21への電力の供給を停止させる。
【0045】
水温センサ33は、排出口12近傍における温水の温度を検知する。即ち、水温センサ33は、ケース9から排出される加熱後の温水の温度を検知する。水温センサ33は、リッド23から加熱流路8に突出する突出部23g(図3及び図4参照)の内部に設けられる。水温センサ33は、検知した温水の温度に応じた電気信号を制御基板40に送る。制御基板40は、水温センサ33が検知した温水の温度が所望の温度になるように、IGBT34,35を介してヒータ21への電力の供給を制御する。
【0046】
IGBT34,35は、バスバーモジュール30を介して車両の電源装置に接続される。IGBT34,35は、制御基板40に接続され、制御基板40からの指令信号に応じてスイッチング動作する。IGBT34,35は、スイッチング動作によってヒータユニット20への電力の供給を制御する。これにより、ヒータユニット20は所望の温度に調整され、排出口12から排出される温水は所望の温度に調整される。
【0047】
IGBT34,35は、スイッチング動作を繰り返すことによって発熱する。IGBT34,35が動作可能な温度の最大値は、加熱流路8を流れる温水の温度と比較して高い。よって、IGBT34,35は、リッド23を介して加熱流路8を流れる温水に放熱して冷却される。
【0048】
リッド23には、IGBT34が当接する箇所の裏側に位置するガイド壁面(放熱壁面)16から加熱流路8に向けて突出する放熱フィン23fが形成される。
【0049】
放熱フィン23fは、外周流路54における温水の流れ方向に対向して複数形成される。放熱フィン23fは、第2端流路53及び外周流路54に面して形成される。
【0050】
各放熱フィン23fは、中心線Oと略直交する方向に延設され、中心線O方向に一定の間隔をもって並ぶように形成される。各放熱フィン23fは、ガイド壁面16から一定の突出量(高さ)をもって形成される。
【0051】
ガイド壁面16と第2壁面14bとは、互いに傾斜し、両者の間にテーパ状の加熱流路8(第2端流路53)の先端部8aを形成する。
【0052】
次に、流体加熱装置100の作用について説明する。
【0053】
図3に矢印Aで示すように供給パイプ57を通じて供給される温水は、加熱流路8の第1端流路51を通じて内周流路52に導かれ、矢印Bで示すように内周流路52を通過する。内周流路52では、内周フィン25aが形成される貫通孔25の内周との熱交換によって温水が加熱される。この温水の流れは、内周フィン25aによって整流される。
【0054】
内周流路52を通過した温水は、矢印Cで示すように第2端流路53に流出し、第2壁面14b沿って方向転換し、加熱部22のまわりの外周流路54に導かれる。第2壁面14bがガイド壁面16に対向するように傾斜しているため、第2端流路53で折り返す温水の流れは矢印Dで示すようにガイド壁面16に向かう勢力が大きくなる。これにより、外周流路54において矢印Fで示すようにガイド壁面16に沿って流れる温水の流速が、矢印Eで示すように外周フィン26aに沿って流れる温水の流速と比較して高くなる。
【0055】
第2端流路53及び外周流路54においてガイド壁面16に沿って流れる温水は、ガイド壁面16及び各放熱フィン23fとの熱交換によって加熱される。
【0056】
外周流路54において矢印Eで示すように加熱部22のまわりを流れる温水は、外壁部26及び外周フィン26aとの熱交換によって加熱される。この温水の流れは、外周フィン26aによって整流される。
【0057】
外周流路54を流通した温水は、第1端流路51を通じて排出口12の排出パイプ58から矢印Gで示すように排出される。
【0058】
空調装置では、ポンプ(図示省略)によって送られる温水が配管(図示省略)及び供給パイプ57を介して供給口11から加熱流路8に供給される。加熱流路8で加熱される温水が排出口12から排出パイプ58及び配管(図示省略)を介してヒータコア(図示省略)に送られる。空調装置は、温水がヒータコアを介して空調用空気に放熱して空調用空気を暖めるようになっている。
【0059】
図5は、流体加熱装置100の正面図である。図5に示すように、タンク10の供給口11は、中心線Oを中心とする円形の断面形状を有する。
【0060】
図2に示すように、供給パイプ57は、供給口11に嵌合する基端部57aと、供給口11の開口縁部に当接する環状凸部57bと、タンク10から突出する先端部57cと、を有する。先端部57cには、空調装置の配管が嵌合される。
【0061】
供給パイプ57の基端部57aは、供給口11に隙間なく嵌合する。供給パイプ57は、環状凸部57bがタンク10の供給口11の開口縁部に当接することにより軸方向の位置決めが行われる。これにより、供給パイプ57の基端部57aが第1壁面14aからケース9の内部に突出する軸方向の突出量が決まる。
【0062】
供給パイプ57の先端部57c及び基端部57aは、中心線Oを中心とする円筒状に形成される。これにより、供給パイプ57を通じて内周流路52に流入する温水の流れが貫通孔25の中心線Oに沿って直線状に導かれる。
【0063】
図5に示すように、排出口12は、供給口11と並ぶ配列方向(以下、「縦方向」と称する。)に扁平な断面形状を有する。排出口12は配列方向の開口長さが配列方向に直交する方向(以下、「横方向」と称する。)の開口長さより短い長円形の流路断面形状を有する。なお、これに限らず、排出口12は、楕円形の断面形状を有する構成としてもよい。
【0064】
なお、「縦方向」は、図5の正面図において、供給口11の中心線O及び排出口12の中心線Qと直交する基準線Tが延びる方向であり、鉛直方向に限らない。「横方向」は、基準線Tに略直交する方向であり、水平方向に限らない。
【0065】
排出口12の縦方向の開口長さは、供給口11の縦方向の開口長さより小さく形成される。排出口12の横方向の開口長さは、供給口11の横方向の開口長さより大きく形成される。
【0066】
排出パイプ58は、排出口12に嵌合する基端部58aと、排出口12の開口縁部に当接する環状凸部58bと、タンク10から突出する先端部58cと、を有する。先端部87cには、空調装置の配管が嵌合される。
【0067】
排出パイプ58の基端部58aは、長円形の断面形状を有し、排出口12に隙間なく嵌合する。
【0068】
排出パイプ58は、環状凸部58bがタンク10の排出口12の開口縁部に当接することにより軸方向及び回転方向の位置決めが行われる。これにより、排出パイプ58の基端部58aが第1壁面14aからケース9の内部に突出する軸方向の突出量が決まる。そして、排出パイプ58の先端部58cがケース9の外部に突出する方向が決まる。
【0069】
排出パイプ58は、その断面形状が基端部58aから先端部58cにかけて長円形から円形に変化する断面変化部58dと、断面変化部58dから先端部58cにかけて曲折する曲折部58eと、を有する。排出パイプ58は、曲折部58eによって横方向(水平方向)に曲折される。なお、これに限らず、排出パイプ58は、上方向に曲折される構成としてもよい。
【0070】
排出パイプ58の先端部58cは、円筒状に形成される。先端部58cは、その中心線Pが基端部58aの中心線Qに対して横方向に傾斜する。
【0071】
こうして排出パイプ58がタンク10から横方向に曲折して延びることにより、タンク10から外部に突出する供給パイプ57の先端部57cと、排出パイプ58の先端部58cとが互いに離れる。これにより、供給パイプ57の先端部57cに接続される配管と、排出パイプ58の先端部58cに接続される配管とが干渉することが回避される。
【0072】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0073】
流体加熱装置100のケース9は、供給口11と排出口12とが縦方向に近接して開口する第1壁面14aと、第1壁面14aにヒータ21を挟んで対向する第2壁面14bと、を有し、排出口12は、縦方向の開口長さが横方向の開口長さと比較して小さい扁平な断面形状を有する構成とした。
【0074】
上記構成に基づき、供給口11と排出口12とは近接して開口するが、排出口12が供給口11との配列方向に扁平な断面形状を有するために、供給口11と排出口12とが近接される配列方向についてケース9の小型化を図ることができる。
【0075】
供給口11と排出口12とは、上下方向に近接する構成とした。
【0076】
上記構成に基づき、供給口11と排出口12とが近接する上下方向(高さ方向)についてケース9の小型化を図ることができる。
【0077】
また、流体加熱装置100は、供給口11に接続される供給パイプ57と、排出口12に接続される排出パイプ58と、を備える。排出パイプ58は、排出口12の中心線Q(軸方向)から曲折してケース9の外部に延びる構成とした。
【0078】
上記構成に基づき、排出口12が扁平な断面形状を有するため、排出口12に排出パイプ58を接続する作業時に、排出口12と同じ扁平な断面形状を有する排出パイプ58を排出口12に挿入することにより、排出パイプ58を誤って供給口11に接続することが防止されるとともに、排出パイプ58の組み付け方向を誤ることが防止される。
【0079】
また、ケース9は、第1壁面14aと第2壁面14bとの間に延びるガイド壁面16を有し、第2壁面14bが供給口11から加熱流路8に供給された温水をガイド壁面16に導くように供給口11の中心線Oに対して傾斜し、排出口12が供給口11と比較してガイド壁面16に近い位置に配置される構成とした。
【0080】
また、排出口12は、ガイド壁面16に沿って延びる扁平な断面形状を有する構成とした。
【0081】
上記構成に基づき、ガイド壁面16に沿って流れた温水は、ガイド壁面16に沿って延びる扁平な排出口12から円滑に排出される。これにより、ケース9内から排出される温水の流路抵抗が小さく抑えられ、ケース9内に給排される温水の流量を増やすことができる。
【0082】
また、供給口11は、その中心線Oがケース9の中心(中心線H)と比較してガイド壁面16から離れた位置に配置される構成とした。
【0083】
上記構成に基づき、加熱流路8において、供給口11から流入する温水の流速がガイド壁面16から離れる下方領域で高められることにより、排出口12に向かう温水の流速がガイド壁面16に沿う上方領域で高められる。よって、ケース9内から排出される温水の流路抵抗が小さく抑えられ、ケース9内に給排される温水の流量を増やすことができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0085】
上記実施形態では、供給口11が円形の断面形状を有する。これに限らず、供給口11が排出口12との配列方向に扁平な断面形状を有する構成してもよい。
【0086】
上記実施形態では、供給口11から供給された温水が内周流路52を流れた後に、外周流路54を流れて排出口12から排出される。これに限らず、供給口11から供給された温水が外周流路54を流れた後に、内周流路52を流れて排出口12から排出されるようにしてもよい。
【0087】
上記実施形態では、ヒータ21は、筒状の加熱部22の内部に設けられる。これに限らず、加熱部22を廃止して、ヒータ21が温水を直接加熱するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
9 ケース
11 供給口
12 排出口
14a 第1壁面
14b 第2壁面
16 ガイド壁面
21 ヒータ
22 加熱部
25 貫通孔
26 外壁部
52 内周流路
54 外周流路
57 供給パイプ
58 排出パイプ
100 流体加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5