【実施例1】
【0011】
まず始めに、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は本発明に係るエレベータシステムの概略構成図である。
図1に示すように、本発明に係るエレベータシステム100は、昇降路10に配置され、昇降路10を昇降して利用者(PS)を搬送する乗りかご11と、乗りかご11にロープ12を介して連結され、ロープ12を駆動して乗りかご11を昇降路10に沿って昇降させる巻上機13と、巻上機13の作動を制御する制御装置(主制御装置、制御盤)17を備えている。
【0012】
かご側制御装置15は、テールコード16によって制御装置17と接続されており、かご側制御装置15と制御装置17との間では、テールコード16を介して電力の供給や制御信号の通信等が行なわれている。
【0013】
乗り場30には、乗り場呼びボタン31が備えられており、この乗り場呼びボタン31の操作によって乗りかご11を乗り場階へ呼び寄せる乗り場呼びを実行することができる。
【0014】
乗りかご11の乗り場30または乗りかご11の内部には、乗りかごに乗り込む利用者の利用者情報および携帯物情報を読み取る読み取り装置20a,20bと、利用者に携帯物の失念を知らせる報知装置23a,23bが備えられている。乗り場30に設けられた読み取り装置23aによって読み取られた利用者情報および携帯物情報は、乗り場側制御装置(図示せず)から塔内配線(図示せず)を介して制御装置17に転送される構成となっている。また、乗りかご11内に設けられた読み取り装置23bによって読み取られた利用者情報および携帯物情報も、かご側制御装置15およびテールコード16を介して制御装置17に転送される構成となっている。
【0015】
制御装置17は、図示しないマイクロコンピュータよりなる本体制御装置を搭載しており、各機器に送る制御信号の演算処理機能、制御信号の入出力処理機能および通信処理機能が付与されている。これによって、かご側制御装置15や図示しない乗り場側制御装置等の周辺機器を制御する。
【0016】
乗りかご11の外側の天井には、乗りかご11の開閉扉を制御する扉開閉電動機14と、報知装置20b、読み取り装置23bおよび扉開閉電動機14等を制御するかご側制御装置15が設けられている。
【0017】
制御装置17は、利用者データベース18と接続されており、この利用者データベース18には、利用者を特定可能な利用者毎の利用者情報(利用者認証情報)が記憶されている。利用者情報には、少なくとも利用者の個別認証用の認証コードが含まれている。この他に、利用者の所属会社、氏名、年齢、性別、利用許可階、体重(kg)およびエレベータ装置の使用ログ記録等が必要に応じて記憶されている。もちろん、これ以外の情報を記憶するようにしても良いことは言うまでもない。
【0018】
本実施形態では、利用者情報および携帯物情報を検出する方法として、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いた認証方法を用いる。RFIDは、電波を利用した非接触型の認識方法である。タグやラベル等の形に加工されたアンテナ付IC(Integrated Circuit)チップ(ICタグとも称される。)であり、携帯物に取り付けられて使用される。このICチップの情報を検出する(読み取る)受信装置を検出装置23a,23b(RFID情報リード装置)を乗りかご11または乗り場30に設置して利用者の利用者情報および携帯物情報を読み取る。
【0019】
本実施形態では、利用者が装着する利用者用RFIDタグ21から検出された利用者情報および利用者の携帯物に取り付けられた携帯物用RFIDタグ22から検出された利用者情報および携帯物情報を利用して利用者の携帯物情報を得ている。利用者用RFIDタグ21は、例えば、ネームプレートや社員証等のカードに貼り付けられて利用者の首に紐によって吊り下げられる等して利用者が外出時に装着するものに取り付けられている状態であることが好ましい。
【0020】
利用者用RFIDタグ21には、少なくとも携帯物の所有者である利用者の利用者情報(利用者認証情報、認証コード)が記憶されており、その他、氏名、年齢、性別、利用許可階、体重(kg)、エレベータ装置の使用ログ記録および扉開閉制御情報等のエレベータ装置の制御情報が記憶されていてもよい。
【0021】
携帯物用RFIDタグ22は、利用者の携帯物に貼り付け等の方法によって取り付けられるものであり、少なくとも利用者の所有物であることを示す利用者認証情報である利用者認証コードと携帯物であることを示す携帯物情報が記憶されている。これによって、利用者の携帯物であることが認証できるものである。更には携帯物の種類、例えば傘、ノート、コンピュータ等の種類を表す情報が記憶されていてもよい。
【0022】
図1では、2つのケースを想定している。すなわち、利用者が携帯物を失念していることに気が付かないまま居室から乗り場30に到着した状態(ケースI)と、利用者が携帯物を失念していることに気が付かないまま乗りかご11に乗り込んだ状態(ケースII)である。
【0023】
ケースIの場合、利用者の携帯物情報を予め利用者データベース18に記憶しておき、利用者が乗り場30に到着した際に検出装置23aによって検出された携帯物情報と比較し、予め記憶されている利用者の携帯物情報のうち、検出装置23aによって検出された利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に、報知装置20aによってその旨を報知するものである。さらに、この際、すでに実行された乗り場呼びをキャンセルすることで、乗りかご11の無駄な停止を回避することが可能となる。
【0024】
また、ケースIIの場合、利用者の携帯物情報を予め利用者データベース18に記憶しておき、利用者が乗りかご11に乗り込んだ際に検出装置23bによって検出された携帯物情報と比較し、予め記憶されている利用者の携帯物情報のうち、検出装置23bによって検出された利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に、報知装置20bによってその旨を報知するものである。さらに、この際、乗りかごの開閉扉を所定時間開くことで、利用者が携帯物を取りに行くために乗りかご11を降車する時間を確保することが可能となる。
【0025】
以下、上記処理を実行するための具体的な構成について説明する。
図2は
図1に示すかご側制御装置、制御装置、乗り場側制御装置およびデータベースの機能を説明するブロック図である。制御装置17は、マイクロコンピュータ(図示せず)で実行される制御機能部が構築されている。マイクロコンピュータは、制御プログラムに基づいて各種の制御演算を実行する演算部と、制御プログラムおよび制御定数等を記憶しているROM領域と制御演算のワーキングエリアとしてのRAM領域等から成る記憶部と、かご側制御装置15から転送されてくるボタン信号およびセンサ信号の入力とかご側制御装置15への出力を行う入出力回路部とを備えている。また、乗り場側制御装置19からも同様に転送されてくるボタン信号およびセンサ信号の入力と、乗り場制御装置19への出力を行う入出力回路とを備えている。マイクロコンピュータの構成は良く知られているものであるので、これ以上の説明は省略する。
【0026】
そして、制御装置17にはエレベータ装置を運転制御するためのエレベータ運転制御機能部17cが備えられ、このエレベータ運転制御機能部17cは巻上機13および扉開閉電動機14等を制御し、乗り場呼びボタン19および乗りかご11内に設けられた乗りかごボタン(図示せず)の登録状態に応じて、乗りかご11を昇降させ、開閉扉を開閉する機能を備えている。
【0027】
また、制御装置17には、検出装置23a,23bによって検出された利用者と携帯物の情報を利用者データベース18へ格納する制御を実行するRFIDタグ情報記憶制御機能部(記憶機能部)17aが備えられている。このRFIDタグ情報記憶制御機能部17aは、かご側制御装置15および乗り場側制御装置19から転送されてきたRFIDタグ情報を一時的に記憶する機能の他に、利用者データベース18の対応する利用者の記憶領域にRFIDタグ情報を転送する機能を有している。
【0028】
さらに、検出装置23a,23bによって検出した利用者の携帯物情報を利用者データベース18から読み出し、検出装置23a,23bによって検出されたRFIDタグ情報と比較し、データベース18に予め記憶されている携帯物情報のうち、検出装置23a,23bによって検出された携帯物情報にない携帯物がある場合に、携帯物を失念しているとして判定するRFID情報判定機能部(判定機能部)17bが備えられている。このRFIDタグ情報判定機能部17bの判定情報は、エレベータ運転制御機能部17cへ転送され、エレベータ運転制御機能部17cは、かご側制御装置15及び乗り場側制御装置19に判定情報信号を出力する。
【0029】
かご側制御装置15もマイクロコンピュータで実行される制御機能部が構築されている。このマイクロコンピュータも制御プログラムに基づいて各種の制御演算を実行する演算部と、制御プログラムおよび制御定数等を記憶しているROM領域と制御演算のワーキングエリアとしてのRAM領域等からなる記憶部と、制御装置17からの制御信号の入力と制御装置17へのRFIDタグ情報や各電動機および放送機器等への出力を行う入出力回路部とを備えている。
【0030】
そして、かご側制御装置15には、エレベータ運転制御機能部17cの扉開閉指令に応じて扉開閉電動機14を駆動して開閉扉の開閉を行なう開閉扉制御機能部(扉開閉機能部)15aと、エレベータ運転制御機能部17cからの指令によって巻上機用13を駆動して乗りかご11を昇降させ、更に照明、信号灯および報知を含む放送等の出力を行なう乗りかご制御機能部15bが備えられている。また、乗りかご11に設置した検出装置20bからの信号を受け、利用者の認証情報や携帯物の利用者認証情報および携帯物情報を検出して制御装置17に転送するRFIDタグ情報読み込み機能部15cが備えられている。
【0031】
一方、乗り場側制御装置19には、エレベータ運転制御機能部17cとの間で、乗り場呼びボタン31に入力及びランプ応答等を行う乗り場呼び制御機能部19aが備えられている。さらに、乗り場30に設置した検出装置20aからの信号を受け、利用者の認証情報や携帯物の利用者認証情報および携帯物情報を検出して制御装置17に転送するRFIDタグ情報読み込み機能部19bが備えられている。
【0032】
次に、上述した構成を有するエレベータシステムにおけるに具体的な処理フローについて説明する。なお、本実施例では利用者RFIDタグ21を有していない利用者による乗りかご11の利用は対象外として説明を省略する。例えば、最初の処理ステップで利用者RFIDタグ21のRFIDタグ情報を検出しなかった場合は、そのままエンドに抜けて制御フローを実行しないという制御ステップを付加すれば良い。したがって、以下では利用者RFIDタグ21を有した利用者の場合の処理フローについて説明する。
【0033】
図3は本発明の実施例1の処理の一例を示すフロー図である。
図3は上述したケースIにおける処理フローを示している。まず始めに、ステップS11において、利用者が乗り場30付近に来ると、乗り場に設置した検出装置20aによって、利用者用RFIDタグ21から利用者情報と、携帯物用RFIDタグ22から利用者情報と携帯物であることを示す携帯物情報の検出を実行する。
【0034】
ステップS11で利用者用RFIDタグ21と携帯物用RFIDタグ22の検出が終了すると、ステップS12に進み、ステップS11で検出されたRFIDタグ情報がRFIDタグ情報記憶機能部17aの記憶部に一時的に記憶される。これは、通常RAM領域が使用される。また、ステップS12では、利用者データベース18に記憶された利用者用RFIDタグ21のRFIDタグ情報と携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報とが読み出され、RFIDタグ情報記憶機能部17aの記憶部に一時的に記憶される。
【0035】
次に、ステップS13では、予め記憶された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報と、検出装置20aによって検出された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報の一致比較を行う。この比較によって、予め記憶された携帯物のRFIDタグ情報と検出装置20aによって検出された携帯物のRFIDタグ情報が一致すると、携帯物の失念が無いものとしてエンドに抜ける。なお、このステップS13では、利用者用RFIDタグ21の認証コードの一致比較が行われていることは言うまでもない。
【0036】
一方、記憶された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報のうち、検出装置20aによって検出された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報が一致しない場合、すなわち記憶された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報のうち、検出装置20aによって検出された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報にない携帯物があった場合、携帯物の持ち込みの失念があったとしてステップS14に進むことになる。ここで、携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報と、新しく検出された携帯物RFIDタグ22のRFIDタグ情報の比較は、単なる一致比較の他に、携帯物の種類の情報が読みとられる構成にしていると種類毎の比較が可能となり、携帯を失念した携帯物の種類を特定することができ、より好ましい。
【0037】
ステップS14では、乗り場30の報知装置23aを利用して携帯物の失念があることを利用者に報知し、利用者が携帯物を取りに戻ることができるようにしている。ここで、携帯物の種類の情報が読み取られる構成にしていると種類毎の比較が可能となり、持ち込みを失念した携帯物の種類を特定して報知することができる。
【0038】
報知装置としては、特に限定は無いが、例えば携帯物を失念していることを音声で案内する放送装置や、携帯物を失念していることを表示する表示装置を用いることが好ましい。報知装置では、例えば、「○○様、車のキーを忘れています。」、「○○様、傘を忘れています。」といった報知が可能となる。これによれば、利用者はすぐに失念した携帯物を思い出して居室へ引き返すことができ、エレベータシステムのサービス性を大きく向上することができる。さらに、この時、不要となった当該階の乗り場呼びをキャンセルする事で、かごの無駄な停止を回避するようにできる。また、点灯した乗り場呼びボタン31を消灯することで、利用者に携帯物の失念を報知するようにしてもよい。
【0039】
図4は本発明の実施例1の処理の他の一例を示すフロー図である。
図4は上述したケースIIにおける処理フローを示している。
図4のステップS21〜23は、
図3のステップS11〜S13と同じであるため、説明を省略する。
図4におけるステップS24では、乗りかご11の報知装置23bを利用して携帯物の失念があることを利用者に報知し、利用者が携帯物を取りに戻ることができるようにしている。また、かご内ランプ点灯することで、利用者に携帯物の失念を報知するようにしてもよい。さらに、この時、乗りかごの開閉扉を所定時間(利用者が報知装置によって携帯物の失念を認識し、降車するまでの十分な時間)開くことで、利用者が携帯物を取りに行くために乗りかごを降車する時間を確保することが可能となる。報知装置の構成は、
図3で説明したとおりである。
【0040】
上述したとおり、乗り場および乗りかごのうち、少なくとも一方に検出装置および報知装置を備えていれば本発明の効果を得ることができる。乗り場に設ける場合、各階に検出装置および報知装置を設ける必要があるが、乗りかごに設ける場合はそれぞれ1台で済むため、コストの面でより好ましい。もちろん、乗り場および乗りかごの両方に検出装置および報知装置が設けられていてもよい。