特許第6475600号(P6475600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475600
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20190218BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20190218BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   B66B3/00 P
   B66B13/14 N
   B66B1/14 M
   B66B3/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-205437(P2015-205437)
(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-77929(P2017-77929A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕智
(72)【発明者】
【氏名】酒出 昌之
(72)【発明者】
【氏名】村岡 恵介
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−240818(JP,A)
【文献】 特開2005−025709(JP,A)
【文献】 特開2005−173989(JP,A)
【文献】 特開2015−101434(JP,A)
【文献】 特開2003−095562(JP,A)
【文献】 特開2002−348054(JP,A)
【文献】 特開2005−309831(JP,A)
【文献】 特開2013−124189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 1/00 − 1/52
B66B 13/00 − 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路に配置され、利用者を搬送する乗りかごと、前記乗りかごにロープを介して連結され、前記乗りかごを昇降させる巻上機と、前記巻上機の作動を制御する制御装置と、を備えたエレベータシステムにおいて、
前記乗りかごの乗り場または前記乗りかごの内部に、前記乗りかごに乗り込む利用者の携帯物情報を検出する検出装置と、前記利用者に携帯物の失念を報知する報知装置と、を備え、
前記制御装置は、前記利用者の携帯物情報を予め記憶しておく記憶機能部と、前記検出装置によって検出された前記利用者の携帯物情報と前記記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報とを比較する判定機能部と、を備え、
前記判定機能部において前記記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報のうち前記検出装置によって検出された前記利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に前記報知装置によって前記利用者に前記携帯物の失念を報知し、
前記制御装置は、前記判定機能部において前記記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報のうち前記検出装置によって検出された前記利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に前記乗りかごの開閉扉を所定時間開く扉開閉機能部を備えていることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
昇降路に配置され、利用者を搬送する乗りかごと、前記乗りかごにロープを介して連結され、前記乗りかごを昇降させる巻上機と、前記巻上機の作動を制御する制御装置と、を備えたエレベータシステムにおいて、
前記乗りかごの乗り場または前記乗りかごの内部に、前記乗りかごに乗り込む利用者の携帯物情報を検出する検出装置と、前記利用者に携帯物の失念を報知する報知装置と、を備え、
前記制御装置は、前記利用者の携帯物情報を予め記憶しておく記憶機能部と、前記検出装置によって検出された前記利用者の携帯物情報と前記記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報とを比較する判定機能部と、を備え、
前記判定機能部において前記記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報のうち前記検出装置によって検出された前記利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に前記報知装置によって前記利用者に前記携帯物の失念を報知し、
前記制御装置は、前記判定機能部において前記記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報のうち前記検出装置によって検出された前記利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に乗り場呼びを解除する乗り場呼び制御機能部を備えていることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータシステムにおいて、前記判定機能部は、前記記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報に外部情報を付加して前記検出装置によって検出された前記利用者の携帯物情報と比較することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータシステムにおいて、前記報知装置が、前記報知を音声で案内する放送装置または前記報知を表示する表示装置であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項記載のエレベータシステムにおいて、前記外部情報が天気、気温、日付または曜日であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータシステムにおいて、前記検出装置が、前記利用者が携帯する無線タグおよび前記利用者の携帯物に取り付けられた無線タグを用いて前記利用者の携帯物情報を検出することを特徴とするエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータシステムに係り、特に利用者の携帯物をチェックし、不足の物がある場合に報知することが可能なエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術やコンピュータ技術の発達により、近年のエレベータ装置では利用者に対して種々のサービスが行われている。特に、最近では利用者の個人情報を用いて乗りかごの開閉扉やスピーカ等の報知装置の制御が行われている。このような利用者へのサービスを備えるエレベータ装置の一例として以下の特許文献1(特開2006‐273520号公報)のようなものが提案されている。特許文献1においては、ICタグを携帯するエレベータ利用者が目的階以外の階でエレベータの乗りかごから降車しようとしたときに、その階は目的階でないことをエレベータ利用者に報知し、エレベータ利用者が目的階以外の階で乗りかごから降車することを防止できるようにしたエレベータ装置が提案されている。
【0003】
このように、ICタグを利用すると利用者を特定することができるので、エレベータ装置に利用者毎のデータベースを構築し、このデータベースから利用者に様々な情報を提供することができる。また、利用者に対して乗りかごの移動先の決定や開閉扉の開閉等のエレベータの制御に関するサービス性も向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐273520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マンション等の建築物に入居している利用者は入居している階からエレベータ装置を利用して、例えば会社に行く場合は、必要な鞄、車のキー、携帯電話等、さらに、雨が降っているときは傘等(以下では、利用者の種々の携帯物を総称して「携帯物」と表記する。)を携帯して屋外に出ることになる。ここで、携帯物は上記した物品に限らず、種々の物品があることは言うまでもない。そして、屋外に出た後、利用者が持参していた携帯物に不足(忘れ物)がある場合に引き返すことはよく経験するところである。利用者が居室階よりエレベータ装置の乗りかご(以下、単に「乗りかご」と称する。)に乗って目的階に降りてから携帯物を失念したことに気付いた場合、再び乗りかごに乗って居室まで引き返して携帯物を取りに行くという行動をとることになる。このような事態が発生すると、利用者の時間的な損失が大きくなるので、これを改善するサービスを行う必要がある。
【0006】
本発明の目的は、利用者が居室階より乗りかごに乗り込む際に、携帯物を失念している場合にその旨を報知することが可能なエレベータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータシステムは、昇降路に配置され、利用者を搬送する乗りかごと、乗りかごにロープを介して連結され、乗りかごを昇降させる巻上機と、巻上機の作動を制御する制御装置と、を備えたエレベータシステムにおいて、乗りかごの乗り場または乗りかごの内部に、乗りかごに乗り込む利用者の携帯物情報を検出する検出装置と、利用者に携帯物の失念を報知する報知装置と、を備え、制御装置は、利用者の携帯物情報を予め記憶しておく記憶機能部と、検出装置によって検出された利用者の携帯物情報と記憶機能部に予め記憶されている利用者の携帯物情報とを比較する判定機能部と、を備え、判定機能部において記憶機能部に予め記憶されている前記利用者の携帯物情報のうち検出装置によって検出された利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に報知装置によって利用者に携帯物の失念を報知することを特徴とする。制御装置は、判定機能部において記憶機能部に予め記憶されている利用者の携帯物情報のうち検出装置によって検出された利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に、乗りかごの開閉扉を所定時間開く扉開閉機能部か、または、乗り場呼びを解除する乗り場呼び制御機能部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利用者が居室階より乗りかごに乗り込む際に、携帯物を失念している場合にその旨を利用者に報知することが可能となり、これによって利用者は乗りかごに乗り込む前に引き返すことができるため、目的階に着いてから引き返す場合と比較して利用者の時間的な損失を大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るエレベータシステムの概略構成図である。
図2図1のかご側制御装置、制御装置、乗り場側制御装置および利用者データベースの機能を説明するブロック図である。
図3】本発明に係る実施例1の処理の一例を示すフロー図である。
図4】本発明に係る実施例1の処理の他の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
まず始めに、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本発明に係るエレベータシステムの概略構成図である。図1に示すように、本発明に係るエレベータシステム100は、昇降路10に配置され、昇降路10を昇降して利用者(PS)を搬送する乗りかご11と、乗りかご11にロープ12を介して連結され、ロープ12を駆動して乗りかご11を昇降路10に沿って昇降させる巻上機13と、巻上機13の作動を制御する制御装置(主制御装置、制御盤)17を備えている。
【0012】
かご側制御装置15は、テールコード16によって制御装置17と接続されており、かご側制御装置15と制御装置17との間では、テールコード16を介して電力の供給や制御信号の通信等が行なわれている。
【0013】
乗り場30には、乗り場呼びボタン31が備えられており、この乗り場呼びボタン31の操作によって乗りかご11を乗り場階へ呼び寄せる乗り場呼びを実行することができる。
【0014】
乗りかご11の乗り場30または乗りかご11の内部には、乗りかごに乗り込む利用者の利用者情報および携帯物情報を読み取る読み取り装置20a,20bと、利用者に携帯物の失念を知らせる報知装置23a,23bが備えられている。乗り場30に設けられた読み取り装置23aによって読み取られた利用者情報および携帯物情報は、乗り場側制御装置(図示せず)から塔内配線(図示せず)を介して制御装置17に転送される構成となっている。また、乗りかご11内に設けられた読み取り装置23bによって読み取られた利用者情報および携帯物情報も、かご側制御装置15およびテールコード16を介して制御装置17に転送される構成となっている。
【0015】
制御装置17は、図示しないマイクロコンピュータよりなる本体制御装置を搭載しており、各機器に送る制御信号の演算処理機能、制御信号の入出力処理機能および通信処理機能が付与されている。これによって、かご側制御装置15や図示しない乗り場側制御装置等の周辺機器を制御する。
【0016】
乗りかご11の外側の天井には、乗りかご11の開閉扉を制御する扉開閉電動機14と、報知装置20b、読み取り装置23bおよび扉開閉電動機14等を制御するかご側制御装置15が設けられている。
【0017】
制御装置17は、利用者データベース18と接続されており、この利用者データベース18には、利用者を特定可能な利用者毎の利用者情報(利用者認証情報)が記憶されている。利用者情報には、少なくとも利用者の個別認証用の認証コードが含まれている。この他に、利用者の所属会社、氏名、年齢、性別、利用許可階、体重(kg)およびエレベータ装置の使用ログ記録等が必要に応じて記憶されている。もちろん、これ以外の情報を記憶するようにしても良いことは言うまでもない。
【0018】
本実施形態では、利用者情報および携帯物情報を検出する方法として、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いた認証方法を用いる。RFIDは、電波を利用した非接触型の認識方法である。タグやラベル等の形に加工されたアンテナ付IC(Integrated Circuit)チップ(ICタグとも称される。)であり、携帯物に取り付けられて使用される。このICチップの情報を検出する(読み取る)受信装置を検出装置23a,23b(RFID情報リード装置)を乗りかご11または乗り場30に設置して利用者の利用者情報および携帯物情報を読み取る。
【0019】
本実施形態では、利用者が装着する利用者用RFIDタグ21から検出された利用者情報および利用者の携帯物に取り付けられた携帯物用RFIDタグ22から検出された利用者情報および携帯物情報を利用して利用者の携帯物情報を得ている。利用者用RFIDタグ21は、例えば、ネームプレートや社員証等のカードに貼り付けられて利用者の首に紐によって吊り下げられる等して利用者が外出時に装着するものに取り付けられている状態であることが好ましい。
【0020】
利用者用RFIDタグ21には、少なくとも携帯物の所有者である利用者の利用者情報(利用者認証情報、認証コード)が記憶されており、その他、氏名、年齢、性別、利用許可階、体重(kg)、エレベータ装置の使用ログ記録および扉開閉制御情報等のエレベータ装置の制御情報が記憶されていてもよい。
【0021】
携帯物用RFIDタグ22は、利用者の携帯物に貼り付け等の方法によって取り付けられるものであり、少なくとも利用者の所有物であることを示す利用者認証情報である利用者認証コードと携帯物であることを示す携帯物情報が記憶されている。これによって、利用者の携帯物であることが認証できるものである。更には携帯物の種類、例えば傘、ノート、コンピュータ等の種類を表す情報が記憶されていてもよい。
【0022】
図1では、2つのケースを想定している。すなわち、利用者が携帯物を失念していることに気が付かないまま居室から乗り場30に到着した状態(ケースI)と、利用者が携帯物を失念していることに気が付かないまま乗りかご11に乗り込んだ状態(ケースII)である。
【0023】
ケースIの場合、利用者の携帯物情報を予め利用者データベース18に記憶しておき、利用者が乗り場30に到着した際に検出装置23aによって検出された携帯物情報と比較し、予め記憶されている利用者の携帯物情報のうち、検出装置23aによって検出された利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に、報知装置20aによってその旨を報知するものである。さらに、この際、すでに実行された乗り場呼びをキャンセルすることで、乗りかご11の無駄な停止を回避することが可能となる。
【0024】
また、ケースIIの場合、利用者の携帯物情報を予め利用者データベース18に記憶しておき、利用者が乗りかご11に乗り込んだ際に検出装置23bによって検出された携帯物情報と比較し、予め記憶されている利用者の携帯物情報のうち、検出装置23bによって検出された利用者の携帯物情報に含まれていない携帯物があると判断された場合に、報知装置20bによってその旨を報知するものである。さらに、この際、乗りかごの開閉扉を所定時間開くことで、利用者が携帯物を取りに行くために乗りかご11を降車する時間を確保することが可能となる。
【0025】
以下、上記処理を実行するための具体的な構成について説明する。図2図1に示すかご側制御装置、制御装置、乗り場側制御装置およびデータベースの機能を説明するブロック図である。制御装置17は、マイクロコンピュータ(図示せず)で実行される制御機能部が構築されている。マイクロコンピュータは、制御プログラムに基づいて各種の制御演算を実行する演算部と、制御プログラムおよび制御定数等を記憶しているROM領域と制御演算のワーキングエリアとしてのRAM領域等から成る記憶部と、かご側制御装置15から転送されてくるボタン信号およびセンサ信号の入力とかご側制御装置15への出力を行う入出力回路部とを備えている。また、乗り場側制御装置19からも同様に転送されてくるボタン信号およびセンサ信号の入力と、乗り場制御装置19への出力を行う入出力回路とを備えている。マイクロコンピュータの構成は良く知られているものであるので、これ以上の説明は省略する。
【0026】
そして、制御装置17にはエレベータ装置を運転制御するためのエレベータ運転制御機能部17cが備えられ、このエレベータ運転制御機能部17cは巻上機13および扉開閉電動機14等を制御し、乗り場呼びボタン19および乗りかご11内に設けられた乗りかごボタン(図示せず)の登録状態に応じて、乗りかご11を昇降させ、開閉扉を開閉する機能を備えている。
【0027】
また、制御装置17には、検出装置23a,23bによって検出された利用者と携帯物の情報を利用者データベース18へ格納する制御を実行するRFIDタグ情報記憶制御機能部(記憶機能部)17aが備えられている。このRFIDタグ情報記憶制御機能部17aは、かご側制御装置15および乗り場側制御装置19から転送されてきたRFIDタグ情報を一時的に記憶する機能の他に、利用者データベース18の対応する利用者の記憶領域にRFIDタグ情報を転送する機能を有している。
【0028】
さらに、検出装置23a,23bによって検出した利用者の携帯物情報を利用者データベース18から読み出し、検出装置23a,23bによって検出されたRFIDタグ情報と比較し、データベース18に予め記憶されている携帯物情報のうち、検出装置23a,23bによって検出された携帯物情報にない携帯物がある場合に、携帯物を失念しているとして判定するRFID情報判定機能部(判定機能部)17bが備えられている。このRFIDタグ情報判定機能部17bの判定情報は、エレベータ運転制御機能部17cへ転送され、エレベータ運転制御機能部17cは、かご側制御装置15及び乗り場側制御装置19に判定情報信号を出力する。
【0029】
かご側制御装置15もマイクロコンピュータで実行される制御機能部が構築されている。このマイクロコンピュータも制御プログラムに基づいて各種の制御演算を実行する演算部と、制御プログラムおよび制御定数等を記憶しているROM領域と制御演算のワーキングエリアとしてのRAM領域等からなる記憶部と、制御装置17からの制御信号の入力と制御装置17へのRFIDタグ情報や各電動機および放送機器等への出力を行う入出力回路部とを備えている。
【0030】
そして、かご側制御装置15には、エレベータ運転制御機能部17cの扉開閉指令に応じて扉開閉電動機14を駆動して開閉扉の開閉を行なう開閉扉制御機能部(扉開閉機能部)15aと、エレベータ運転制御機能部17cからの指令によって巻上機用13を駆動して乗りかご11を昇降させ、更に照明、信号灯および報知を含む放送等の出力を行なう乗りかご制御機能部15bが備えられている。また、乗りかご11に設置した検出装置20bからの信号を受け、利用者の認証情報や携帯物の利用者認証情報および携帯物情報を検出して制御装置17に転送するRFIDタグ情報読み込み機能部15cが備えられている。
【0031】
一方、乗り場側制御装置19には、エレベータ運転制御機能部17cとの間で、乗り場呼びボタン31に入力及びランプ応答等を行う乗り場呼び制御機能部19aが備えられている。さらに、乗り場30に設置した検出装置20aからの信号を受け、利用者の認証情報や携帯物の利用者認証情報および携帯物情報を検出して制御装置17に転送するRFIDタグ情報読み込み機能部19bが備えられている。
【0032】
次に、上述した構成を有するエレベータシステムにおけるに具体的な処理フローについて説明する。なお、本実施例では利用者RFIDタグ21を有していない利用者による乗りかご11の利用は対象外として説明を省略する。例えば、最初の処理ステップで利用者RFIDタグ21のRFIDタグ情報を検出しなかった場合は、そのままエンドに抜けて制御フローを実行しないという制御ステップを付加すれば良い。したがって、以下では利用者RFIDタグ21を有した利用者の場合の処理フローについて説明する。
【0033】
図3は本発明の実施例1の処理の一例を示すフロー図である。図3は上述したケースIにおける処理フローを示している。まず始めに、ステップS11において、利用者が乗り場30付近に来ると、乗り場に設置した検出装置20aによって、利用者用RFIDタグ21から利用者情報と、携帯物用RFIDタグ22から利用者情報と携帯物であることを示す携帯物情報の検出を実行する。
【0034】
ステップS11で利用者用RFIDタグ21と携帯物用RFIDタグ22の検出が終了すると、ステップS12に進み、ステップS11で検出されたRFIDタグ情報がRFIDタグ情報記憶機能部17aの記憶部に一時的に記憶される。これは、通常RAM領域が使用される。また、ステップS12では、利用者データベース18に記憶された利用者用RFIDタグ21のRFIDタグ情報と携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報とが読み出され、RFIDタグ情報記憶機能部17aの記憶部に一時的に記憶される。
【0035】
次に、ステップS13では、予め記憶された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報と、検出装置20aによって検出された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報の一致比較を行う。この比較によって、予め記憶された携帯物のRFIDタグ情報と検出装置20aによって検出された携帯物のRFIDタグ情報が一致すると、携帯物の失念が無いものとしてエンドに抜ける。なお、このステップS13では、利用者用RFIDタグ21の認証コードの一致比較が行われていることは言うまでもない。
【0036】
一方、記憶された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報のうち、検出装置20aによって検出された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報が一致しない場合、すなわち記憶された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報のうち、検出装置20aによって検出された携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報にない携帯物があった場合、携帯物の持ち込みの失念があったとしてステップS14に進むことになる。ここで、携帯物用RFIDタグ22のRFIDタグ情報と、新しく検出された携帯物RFIDタグ22のRFIDタグ情報の比較は、単なる一致比較の他に、携帯物の種類の情報が読みとられる構成にしていると種類毎の比較が可能となり、携帯を失念した携帯物の種類を特定することができ、より好ましい。
【0037】
ステップS14では、乗り場30の報知装置23aを利用して携帯物の失念があることを利用者に報知し、利用者が携帯物を取りに戻ることができるようにしている。ここで、携帯物の種類の情報が読み取られる構成にしていると種類毎の比較が可能となり、持ち込みを失念した携帯物の種類を特定して報知することができる。
【0038】
報知装置としては、特に限定は無いが、例えば携帯物を失念していることを音声で案内する放送装置や、携帯物を失念していることを表示する表示装置を用いることが好ましい。報知装置では、例えば、「○○様、車のキーを忘れています。」、「○○様、傘を忘れています。」といった報知が可能となる。これによれば、利用者はすぐに失念した携帯物を思い出して居室へ引き返すことができ、エレベータシステムのサービス性を大きく向上することができる。さらに、この時、不要となった当該階の乗り場呼びをキャンセルする事で、かごの無駄な停止を回避するようにできる。また、点灯した乗り場呼びボタン31を消灯することで、利用者に携帯物の失念を報知するようにしてもよい。
【0039】
図4は本発明の実施例1の処理の他の一例を示すフロー図である。図4は上述したケースIIにおける処理フローを示している。図4のステップS21〜23は、図3のステップS11〜S13と同じであるため、説明を省略する。図4におけるステップS24では、乗りかご11の報知装置23bを利用して携帯物の失念があることを利用者に報知し、利用者が携帯物を取りに戻ることができるようにしている。また、かご内ランプ点灯することで、利用者に携帯物の失念を報知するようにしてもよい。さらに、この時、乗りかごの開閉扉を所定時間(利用者が報知装置によって携帯物の失念を認識し、降車するまでの十分な時間)開くことで、利用者が携帯物を取りに行くために乗りかごを降車する時間を確保することが可能となる。報知装置の構成は、図3で説明したとおりである。
【0040】
上述したとおり、乗り場および乗りかごのうち、少なくとも一方に検出装置および報知装置を備えていれば本発明の効果を得ることができる。乗り場に設ける場合、各階に検出装置および報知装置を設ける必要があるが、乗りかごに設ける場合はそれぞれ1台で済むため、コストの面でより好ましい。もちろん、乗り場および乗りかごの両方に検出装置および報知装置が設けられていてもよい。
【実施例2】
【0041】
本発明の第2の実施形態について説明する。実施例1では、予め利用者データベース18に記憶された携帯物情報と、検出装置20a,20bによって検出された携帯物情報とを比較する構成としたが、予め利用者データベース18に記憶された携帯物情報に外部情報(例えば、天気、気温、日付または曜日)を付加し、この情報と検出装置20a,20bによって検出した携帯物情報とを比較する構成としてもよい。例えば、予め利用者データベース18に記憶された携帯物情報に傘が入力されていなくても、制御装置17が外部情報として雨を認識した場合に、利用者の携帯物情報に携帯物として傘を加え、検出装置20a,20bによって傘が検出されなかった場合に利用者に傘の携行を失念していることを報知するようにしていてもよい。本発明によれば、建物の外部に出る前に携帯物の失念を報知することができるため、特に天気や気温など、建物の外部に出るまで気が付かないような情報に基づいて利用者に携帯物の失念を報知することが可能となり、エレベータシステムの高いサービス性を実現することができる。
【0042】
外部情報として、天気や気温以外にも日付または曜日を携帯物情報に付加してもよい。外部情報として日付や曜日を用いれば、特定の行事(例えば出張など)に必要な携帯物の失念を防止することができる。
【0043】
利用者データベース18への利用者情報および携帯物情報の入力(登録)方法としては、特に限定は無いが、外部のPC(Personal Computer)(例えば、利用者の会社や自宅に設置されているPC)からインターネットを介して制御装置17に入力可能な構成とすることが挙げられる。また、利用者情報および携帯物情報が登録されたRFIDカードを乗り場の検出装置20aまたは乗りかご11の検出装置20bにかざし、利用者データベース18に登録する構成としてもよい。
【0044】
利用者情報および携帯物情報の検出に、上記した実施例ではRFIDタグを使用しているが、他の無線タグを利用することもできる。例えば、バーコード等を印刷した貼着紙(所謂、バーコードシール等)を携帯物に貼り付けることでも同じ効果を得ることが可能である。この場合は検出装置20a,20bとしてバーコード等を読み取る光学式読み取り装置が設置されることになる。
【0045】
以上、説明したように、本発明によれば利用者が居室階より乗りかごに乗り込む際に、携帯物を失念している場合にその旨を利用者に報知することが可能なエレベータシステムを提供することができることが示された。
【0046】
なお、上記した実施例は、本発明の理解を助けるために具体的に説明したものであり、本発明は、説明した全ての構成を備えることに限定されるものではない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…昇降路、11…乗りかご、12…ロープ、13…巻上機、14…扉開閉電動機、15…かご側制御装置、16…テールコード、17…制御装置、18…利用者データベース、19…乗り場側制御装置、20a,20b…検出装置(RFID情報リード装置)、21…利用者用無線タグ(RFIDタグ)、22…携帯物用無線タグ(RFIDタグ)、23a,23b…報知装置。
図1
図2
図3
図4