(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チェックバルブ(3d)がボール体であって、前記バルブ部材(3)の内部に設けられたバルブ室(3c1)に配置されており、該バルブ室(3c1)は前記第2分室(52)側に開口しかつ該ボール体の弁座となるバルブ孔(3c2)を通して前記第3分室(53)に連通可能であることを特徴とする請求項1に記載の単筒式ショックアブソーバーのダンパー。
前記ボルト部材と前記バルブ部材のうち少なくとも一方が、該ボルト部材と該バルブ部材が完全に螺合した状態において前記第2の油路(3c)と前記第2分室(52)とを連通させる溝(2e,3e)又は貫通孔を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の単筒式ショックアブソーバーのダンパー。
【背景技術】
【0002】
この種のショックアブソーバーは、スプリングとダンパーを組み合わせて構成されている。従来の単筒式ショックアブソーバーのダンパーとしては、例えば特許文献1がある。
図8は、単筒式ショックアブソーバーのダンパー100の基本構成を示す概略断面図である。ダンパーシリンダ40内に油室50とガス室60を区画するフリーピストン30が設けられる。フリーピストン30はダンパーシリンダ40に対して摺動自在である。さらに、ピストン部20は、油室50の一端を貫通するピストンロッド21と、その先端に設けたピストンバルブ22を有し、ピストンバルブ22が油室50を第1分室51と第2分室52に区画する。ピストンバルブ22は、例えば、第1分室51と第2分室52を常時連通させる油路23と、チェックバルブ(一方向バルブ)付きの油路24とを具備する。ピストンロッド21の往復動作に伴いピストンバルブ23の油路23を通して第1分室51と第2分室52の間でオイルが移動する際の抵抗により減衰力が発生する。チェックバルブ付き油路24は、ピストンロッド21の縮み(往動)時には閉鎖され伸び(復動)時にのみ開放されることでオイルの移動流量を変えることにより、ピストンロッドの伸び時の復動を促進するとともに縮み時と伸び時の減衰力を調整する。
【0003】
上記の基本構成では、ダンパー100を正常に機能させて減衰力を発生させるとともに、油室50内におけるエアレーション(気泡)の発生を防止するために、ガス室60に高圧ガスを充填している。従来、1.0MPa以上の圧力が必要とされている。ガス室60が高圧であることによりフリーピストン30が円滑に摺動し正常に作動することができ、エアレーションを発生しない。エアレーションが発生すると、ダンパーの減衰作用が損なわれる。
【0004】
しかしながら、上記の基本構成では、ガス室60の圧力が高い程、ピストンロッド21の復動時の反発力が大きくなりすぎるという弊害を生じる。また、反発力が強い程、ピストンロッド21に対する負荷が大きくなり湾曲するおそれもある。ピストンロッドに対する反発力を低減するためにガス室60の圧力を下げると、ダンパーが正常に機能せず、エアレーションが発生し、ダンパー寿命低下や異音発生の原因にもなる。また、エアレーション防止に必要な圧力とした場合も、ピストンロッド21の復動が速くなるとエアレーションを生じることがある。
【0005】
ガス室の圧力を低減しかつダンパーを正常に機能させるためには、特許文献2、3のようにダンパーシリンダの外部にリザーブタンクを設ける方式がある。リザーブタンク方式では、ガス室を大容量としフリーピストンを大径とすることで圧力を下げることができるが、ダンパーと油路で連結したリザーブタンクが必要であり、設置スペースが大きくなるという問題がある。
【0006】
他の方式として、特許文献4、5のように、ダンパーの減衰力調整機構をピストンバルブとフリーピストンの間に設けた構成も知られている。減衰力調整機構は、第2分室を2つに区画する隔壁として固定設置されるので、油室内にさらに第3分室が形成されることになる。減衰力調整機構は、ピストンロッドの縮み時に閉鎖され伸び時にのみ開放されるチェックバルブ(特許文献4の符号19、特許文献5の符号11b)を具備することにより、ピストンロッドの伸び時の復動を促進するとともに縮み時と伸び時の減衰力を調整する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4、5の減衰力調整機構は、ピストンロッドの縮み時と伸び時における減衰力を異ならせる減衰力の調整を主目的とした構成であり、ガス室を低い圧力としかつ正常なダンパー動作を確保する減圧装置としての構成を意図したものではない。
【0009】
本発明は、単筒式ショックアブソーバーのダンパーにおいて、ピストンバルブとフリーピストンの間に設けた減圧装置により、ガス室を低い圧力としかつ正常なダンパー動作を確保できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するべく、本発明は、以下の構成を提供する。なお、括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0011】
本発明の態様は、ダンパーシリンダ(40)内を油室(50)とガス室(60)に区画しかつシリンダ内を摺動自在であるフリーピストン(30)と、
前記ダンパーシリンダ(40)の一端を貫通し前記油室(50)の第1分室(51)内で往復動作可能なピストンロッド(21)及び該ピストンロッド(21)の先端に位置し該油室(50)の第1分室(51)と第2分室(52)を区画するピストンバルブ(22)と、
前記ピストンバルブ(22)と前記フリーピストン(30)の間に位置し前記油室(50)の第2分室(52)と第3分室(53)を区画する減圧装置(1)と、を備えた単筒式ショックアブソーバーのダンパー(10)であって、
前記減圧装置(1)は、ボルト部材(2)とバルブ部材(3)とから構成され、
前記ボルト部材(2)は、前記ダンパーシリンダ(40)の軸方向に設けられた雄ネジ(2a1)と、前記第2分室(52)と前記第3分室(53)を常時連通させる第1の油路(2c)と、を具備し、
前記バルブ部材(3)は、前記ダンパーシリンダ(40)に固定され、前記ボルト部材(2)の前記雄ネジ(2a1)と螺合した雌ネジ(3a1)と、前記第2分室(52)と前記第3分室(53)を連通可能とする第2の油路(3c)と、該第2の油路(3c)上に位置し前記ピストンロッド(21)の縮み時に閉止されかつ伸び時に開放されるチェックバルブ(3d)と、を具備
し、
前記ボルト部材(2)と前記バルブ部材(3)の螺合の度合いによって該ボルト部材(2)と該バルブ部材(3)の間の間隙の大きさが変わることにより前記第2の油路(3c)の流量を調節可能であることを特徴とする。
【0013】
上記態様において、前記チェックバルブ(3d)がボール体であって、前記バルブ部材(3)の内部に設けられたバルブ室(3c1)に配置されており、該バルブ室(3c)は前記第2分室(52)側に開口しかつ該ボール体の弁座となるバルブ孔(3c2)を通して前記第3分室(53)に連通可能であることが、好適である。
【0015】
上記態様において、前記ボルト部材と前記バルブ部材のうち少なくとも一方が、該ボルト部材と該バルブ部材が完全に螺合した状態において前記第2の油路(3c)と前記第2分室(52)とを連通させる溝(2e,3e)又は貫通孔を具備することが、好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、単筒式ショックアブソーバーのダンパーにおいて、ピストンバルブとフリーピストンの間にチェックバルブ付きの減圧装置を設けたことから、ダンパー機能を正常に維持しかつエアレーションの発生を防止しつつ、減圧装置の無い場合に比べてガス室の圧力を低くできる。さらに、減圧装置は、雄ネジを具備するボルト部材と雌ネジを具備するバルブ部材とを有し、それらの螺合の度合いによりそのチェックバルブの流量を調節可能である。その調節により、ガス室の圧力を最適な値に設定することができ、減衰力も調節できる。
【0017】
本発明により、単筒式ショックアブソーバーのダンパーの正常な機能を確保しながら、ガス室を従来より低圧力とすることができ、ピストンロッドの伸び時の負荷を軽減し、ダンパーの寿命を延ばすことができる。また、ユーザに対し適切なメンテナンス時期を認識させることができ、過使用を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明による単筒式ショックアブソーバーのダンパーについて詳細に説明する。なお、各図面において共通又は類似する構成要素については同じ符号を付している。
【0020】
図1は、本発明による単筒式ショックアブソーバーのダンパーの概略断面図であり、(a)はピストンロッドの縮み時、(b)は伸び時を示している。便宜上、
図1における上下方向を、本発明のダンパーの上下方向として説明するが、実際に車両等に搭載される場合は、逆方向、水平方向、斜め方向となる場合もある。
【0021】
図1(a)を参照する。ダンパー10は、ダンパーシリンダ40内に油室50とガス室60を区画するフリーピストン30が設けられている。フリーピストン30は、ダンパーシリンダ40の内面に対して摺動自在である。油室50にはオイルが充填され、ガス室60には所定の圧力の空気が充填される。ピストン部20は、油室50の一端を貫通するピストンロッド21と、ピストンロッド21の先端に設けたピストンバルブ22とを具備する。図示の例ではピストンロッド21とピストンバルブ22はナットで固定されている。ピストンロッド21は、ショックアブソーバーのスプリング(図示せず)の一端側に連結され、ダンパーシリンダ40はスプリングの他端側に連結される。
【0022】
ピストンバルブ22は、油室50における第1分室51と第2分室52を区画する。ピストンバルブ22は、一例として
図8に示したダンパー100と同様に、第1分室51と第2分室52を常時連通させる油路23と、チェックバルブ付きの油路24とを具備する。ピストンロッド21の往復動作に伴いピストンバルブ23の油路23を通して第1分室51と第2分室52の間でオイルが移動する際の抵抗により減衰力が発生する。チェックバルブ付き油路24は、ピストンロッド21の縮み(往動)時には閉鎖され、伸び(復動)時にのみ開放されオイルの移動流量を増すことにより速やかにピストンロッド21が復動する。なお、ピストンバルブ22の構成は、これに限られず、常時連通する油路23のみで構成される場合、チェックバルブ付き油路24のみで構成される場合もある。また、チェックバルブの構成も多様である。
【0023】
本発明における減圧装置1は、ピストンバルブ22とフリーピストン30の間に位置し、油室50の第2分室52と第3分室53を区画する。減圧装置1は、ダンパーシリンダ40に固定されている。減圧装置1の詳細な構造は後述するが、第2分室52と第3分室53を連通させる複数の油路を具備する。
【0024】
図1(a)の縮み時すなわちピストンロッド21の往動時には、第2分室52がピストンバルブ22に押され高圧となり、第2分室52と連通する第3分室53の圧力も高くなることから、フリーピストン30はガス室60を圧縮するように移動する。フリーピストン30の移動量は、ピストンロッド21の進入した体積分に相当する。このとき、オイルは、第2分室52から第1分室51へと移動するとともに、第2分室52から第3分室53へ移動することによって、その抵抗により減衰力を発生する。
図1(b)の伸び時すなわちピストンロッド21の復動時には、ピストンバルブ22に引っ張られ第2分室52が低圧となり、第2分室52と連通する第3分室53の圧力も低くなることから、フリーピストン30はガス室60を膨張させるように移動する。このとき、オイルは、第1分室51から第2分室52へと移動するとともに、第3分室53から第2分室52へ移動することによって、その抵抗により減衰力を発生する。
【0025】
図1(b)を参照して、本発明における減圧装置1の効果の一つを説明する。
ダンパー10の上蓋41にはオイルシール42が内蔵されている。伸び時には、ピストンロッド21に微量のオイルが付着してオイルシール42に対して摺動することで潤滑及び封止の機能を担っている。この伸び時の動作により、ピストンロッド21に付着している微量のオイルが外部に送出されるため油室50のオイル量は少しずつ減っていく。油室50のオイル量が減ると、フリーピストン30の位置が徐々に上昇し、ガス室60の圧力が変化する。ガス室60の圧力が変化する結果、ダンパー性能が低下する。外部に送出されるオイル量は僅かであるのでオイル量の減少は徐々に進行するためユーザが気付き難い。
図8に示した従来ダンパーの場合、メンテナンスすべき時期が来てもユーザが気付かないことから過使用状態となることが多かった。この結果、最終的には、オイル減少により上昇したフリーピストン30がピストンバルブ22と接触し破損することによって、致命的なオイル漏れを発生することがあった。
【0026】
本発明では、減圧装置1が存在することにより、油室50の徐々に減少するオイル量に応じて上昇するフリーピストン30の移動距離が制限される。すなわち、減圧装置1の位置がフリーピストン30の上限位置となるので、フリーピストン30がピストンバルブ22と直接接触することは生じ得ない。これにより、フリーピストン30とピストンバルブ22との接触による損傷を防止することができる。また、オイル減少によりフリーピストン30が上昇して減圧装置1と接触してしまうと、その瞬間にフリーピストン30の加圧機能が急激に零となることから、大きなエアレーションが発生する。このとき、顕著な減衰力低下と異音発生を伴うので、ユーザは直ちに異常を認識することができる。この結果、ピストンロッド21の復動回数が過剰となり過使用となる前にユーザに対してメンテナンスの必要性を認知させることができる。あるいは、自動車検査登録制度による検査時に修理を促すこともできる。これにより、過使用による致命的な破損や損傷による事故を防止し、より安全な使用が可能となる。
【0027】
図2は、
図1に示した本発明における減圧装置の第1の実施形態の構成例を示した図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は底面図である。
図3は、
図1に示した減圧装置の斜視図であり、(a)は上面側から見た斜視図、(b)は底面側から見た斜視図である。
図4は、
図1に示した減圧装置の分解図である。
【0028】
図2〜
図4に示すように、減圧装置1は、ボルト部材2とバルブ部材3の2つの部品から構成される。
【0029】
ボルト部材2は、六角ボルトに類似の外郭形状を有し、周囲に雄ネジ2a1が形成されたネジ部2aとボルトヘッド2bとを具備する。六角形のボルトヘッド2bの上面側には、軽量化のために凹部が形成されている。この凹部は、ピストンバルブ22が減圧装置1に近づいたとき、ピストンバルブ22下面の固定ナットの逃げ代にもなる(
図1参照)。さらに、ボルトヘッド2bの凹部中心からネジ部2aの下端中心まで軸方向に貫通する孔である第1の油路2cが穿設されている。第1の油路2cの径により、第1の油路2cを通過するオイルの流量を調節することができる。
【0030】
バルブ部材3は、略円柱形状のバルブ本体3aと、バルブ本体3aの上面周縁から上方に延びる補強用の筒壁部3bとを具備する。バルブ本体3aの中心貫通孔には、ボルト部材2の雄ネジ2a1と螺合可能な雌ネジ3a1が形成されている。
図2及び
図3は、ボルト部材2とバルブ部材3が最も深く螺合した状態を示している。従って、
図2(b)に示すように、ボルトヘッド2bの底面とバルブ本体3aの上面が当接している。ボルト部材2を緩める向きに回動させると、ボルトヘッド2bの底面と、バルブ本体3aの上面の間に間隙が形成される。この間隙の大きさは、ボルト部材2とバルブ部材3の相対的な回動の程度により(すなわち螺合の度合いにより)変化する。
【0031】
バルブ部材3のバルブ本体3a及び筒体部3bの外面は、例えば圧入等の手段により、ダンパーシリンダ40の内面に密着するように固定される。これにより、ボルト部材2のネジ部2aは、ダンパーシリンダ40の軸方向に沿って配置されることになる。
【0032】
さらにバルブ部材3のバルブ本体3aの内部には、バルブ本体3aの上面から下面まで貫通する4本の第2の油路3cが形成されている。各第2の油路3cは、上面に開口する大径のバルブ室3c1と下面に開口する小径のバルブ孔3c2からなる。バルブ室3c1内には、チェックバルブ3dであるボール体が配置されている。バルブ室3c1とバルブ孔3c2の境界部分がこのボール体の弁座となる。従って、第2の油路3cは、チェックバルブ3dの動作によって閉鎖又は開放される。
【0033】
第2の油路3cとチェックバルブ3dの組は、図示の例では4組が軸周りに等角度間隔で配置されている。なお、第2の油路3cとチェックバルブ3dは4組に限られず、少なくとも1組あればよいが、複数組を軸周りに均等に配置することが好ましい。さらに、バルブ室3c1及びバルブ孔3c2の径及び数も、第2の油路3cの流量を所定の値とするために適宜設計することができる。
【0034】
ボルト部材2を緩めた場合、第2の油路3cは、バルブ室3c1の上面開口からボルトヘッド2bとバルブ本体3aの間の間隙に連通する。この間隙も、第2の油路3cの延長部分とみなす。この間隙は、さらにボルトヘッド2bと筒壁部3bの間の空間へと連通する。ボルト部材2の雄ネジ2a1とバルブ部材3の雌ネジ3a1の螺合の度合いにより、ボルト部材2とバルブ部材3の間の間隙の大きさが変わるので、この螺合の度合いを変える操作によって、第2の油路3cを通過するオイルの流量を調節することができる。また、バルブ室3c1及びバルブ孔3c2の径及び数によっても、第2の油路3cを通過するオイルの流量を調節することができる。
【0035】
図5を参照して
図2〜
図4に示した減圧装置の動作を説明する。
図5(a)は、ピストンロッドの縮み時の減圧装置の近傍を模式的に示した断面図であり、(b)は同じく伸び時のものである。
図5では、ボルト部材2とバルブ部材3の間に所定の間隙tが形成されている。
【0036】
図5(a)の縮み時には、減圧装置1の上面側の第2分室52が相対的に高圧となり、下面側の第3分室53が相対的に低圧となる(これを「正圧」状態と称する)。このとき、常時連通している第1の油路2cには、第2分室52から第3分室53へとオイルが流れる。一方、チェックバルブ3dはバルブ孔3c2の弁座に押し付けられるので第2の油路3cは閉鎖され、オイルは流れない。減圧装置1の細い第1の油路2cを通って第3分室53に移動したオイルは、
図1のフリーピストン30を押して移動させ、ガス室60を圧縮する。
【0037】
図5(b)の伸び時には、第2分室52が相対的に低圧となり、第3分室53が相対的に高圧となる(これを「負圧」状態と称する)。このとき、常時連通している第1の油路2cには、第3分室53から第2分室52へとオイルが流れる。さらに、チェックバルブ3dがバルブ孔3c2の弁座から離れるので第2の油路3cが開放され、第3分室53から第2分室52へと大量のオイルが流れる。第3分室53から減圧装置1の細い油路を通って流出するオイルは、
図1のフリーピストン30を引っ張り移動させ、ガス室60を膨張させる。
【0038】
減圧装置1は、ピストンロッドの縮み時には、第2分室52側から受ける押圧力を第3分室53側で低下させるように作用し、ピストンロッドの伸び時には、第2分室52側から受ける引っ張り力を第3分室53側で増大させるように作用する。従って、本発明では、減圧装置1が、フリーピストン30の動作を補助するように作用するので、従来のようにガス室60の圧力にほぼ依存してフリーピストン30を移動させる場合に比べて、ガス室60の圧力をを小さくすることができる。
【0039】
ガス室60を低圧としてもフリーピストンは正常に移動できるので、ダンパーとして正常に動作するとともに、エアレーションの発生を防止できる。また、ガス室60の圧力を従来よりも低圧とすることができるので、ピストンロッド21に対する負荷を軽減することができる。
【0040】
また、ボルトヘッド2bの凹部は、オイル溜まりとして機能するので、縮み時から伸び時に変わるときの正圧から負圧への切換えが円滑に行われることになる。
【0041】
図6は、本発明における減圧装置の第2の実施形態の構成例を示した図であり、(a)はバルブ部材の上面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)はボルト部材とバルブ部材を螺合した減圧装置の縦断面図である。
【0042】
第2の実施形態は、バルブ部材3Aの形状が第1の実施形態のバルブ部材3とは異なる。
図6(a)(b)に示すように、バルブ部材3Aは、バルブ本体3aの上面に溝3eが穿設されている。バルブ本体3Aの上面は、ボルト部材と螺合した際にボルトヘッドの底面と互いに対向する面であり、完全に螺合したときは互いに当接する面である。図示の例では、1つの溝3eは、1つの第2の油路3cのバルブ室3c1の上端開口からバルブ部材3Aの径方向外側に所定の深さ及び幅で延在している。
【0043】
図6(c)に示す減圧装置1Aは、バルブ部材3Aと、第1の実施形態のボルト部材2とを組合せている。第2の実施形態の減圧装置1Aは、基本的にボルト部材2とバルブ部材3Aとを完全に螺合させて用いる。
図6(c)はチェックバルブ3dが開放された伸び時の状態を示している。このとき、溝3eは、第2の油路3cと第2分室52とを連通させる油路として機能する。すなわち溝3eは第2の油路3cの一部として機能する。溝3eの断面の大きさにより、第2の油路3cを通るオイルの量を調整することができる。なお、溝3eの形状及び数は図示の例に限られず、多様な構成が可能である。
【0044】
図7は、本発明における減圧装置の第3の実施形態の構成例を示した図であり、(a)はボルト部材の底面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)はボルト部材とバルブ部材を螺合した状態の縦断面図である。
【0045】
第3の実施形態は、ボルト部材2Aの形状が第1の実施形態のボルト部材2とは異なる。
図7(a)(b)に示すように、ボルト部材2Aは、ボルトヘッド2bの底面に溝2eが穿設されている。ボルトヘッド2bの底面は、バルブ部材と螺合した際にバルブ本体の上面と互いに対向する面であり、完全に螺合したときは互いに当接する面である。図示の例では、1つの溝2eは、バルブ部材の1つの第2の油路の上端開口に対応する位置からボルト部材2Aの径方向外側に所定の深さ及び幅で延在している。溝2eの外側の端は、ボルトヘッド2bの周縁まで到達している。
【0046】
図7(c)に示す減圧装置1Bは、ボルト部材2Aと、第1の実施形態のバルブ部材3とを組合せている。第3の実施形態の減圧装置1Bは、基本的にボルト部材2Aとバルブ部材3とを完全に螺合させて用いる。
図7(c)はチェックバルブ3dが開放された伸び時の状態を示している。このとき、溝2eは、第2の油路3cと第2分室52とを連通させる油路として機能する。すなわち溝2eは第2の油路3cの一部として機能する。溝2eの断面の大きさにより、第2の油路3cを通るオイルの量を調整することができる。なお、溝2eの形状及び数は図示の例に限られず、多様な構成が可能である。
【0047】
図6及び
図7に示した第2及び第3の実施形態の減圧装置では、ボルト部材とバルブ部材における互いに対向する面のうち少なくとも一方の面に、ボルト部材とバルブ部材が完全に螺合した状態において第2の油路3cと第2分室52とを連通させるための溝を具備する。ボルト部材とバルブ部材を完全に螺合させているので、これらの部材の安定な固定状態を確保できる。
【0048】
さらに別の形態として、第2の実施形態のバルブ部材3Aと、第3の実施形態のボルト部材2Aとを組み合わせた形態も可能である。
【0049】
図示しないが、第2及び第3の実施形態の変形形態として、上記の溝3e、2eに替えて、ボルト部材とバルブ部材の互いに対向する面の少なくとも一方の面の近傍に貫通孔を穿設してもよい。この貫通孔は、ボルト部材とバルブ部材が完全に螺合した状態において第2の油路3cと第2分室52とを連通させる油路として機能する。
【実施例】
【0050】
<試験方法>
減圧装置を取り付けた本発明のダンパーと、減圧装置無しのダンパーの比較実験を行った。減圧装置の有無以外、同じ構成のダンパーを用いた。本発明のダンパーにおける減圧装置は、
図2〜
図4に示した形態を採用した。ピストンロッドの移動速度は0.2m/sとした。これは、比較的速い移動速度である。
【0051】
双方のダンパーにおいて、ガス室の圧力を、3.0MPa、2.5MPa、2.0MPa、1.5MPa、1.0MPa、0.5MPaとしたときの、ピストンロッド移動時のエアレーション発生状況を確認した。
【0052】
<試験結果>
試験結果を表1に示す。減圧装置のない従来のダンパーでは、フリーピストンを正常動作させるために必要なガス圧力は1.0MPa以上とされていた。必要なガス圧力とした場合であっても、ピストンロッドの移動速度が大きいとエアレーションを発生することがあった。比較例の結果はこの従来技術を裏付けている。一方、減圧装置を取り付けたダンパーでは、ガス圧力を0.5MPaまで低下させてもエアレーションを発生しなかった。この結果から、減圧装置が、フリーピストンの正常動作を補助していることが証明された。減圧装置があることにより、ガス室の必要な圧力を2.0MPaから0.5MPaに低減できることになる。すなわちガス圧を75%下げることが可能である。
【0053】
【表1】