特許第6475651号(P6475651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475651チョコレート製品及びチョコレート製品用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475651
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】チョコレート製品及びチョコレート製品用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   A23G1/32
【請求項の数】24
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-41389(P2016-41389)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-165278(P2016-165278A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-41666(P2015-41666)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000199441
【氏名又は名称】千葉製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮越 洋
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 一弥
(72)【発明者】
【氏名】外山 干城
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 崇文
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−013123(JP,A)
【文献】 特開2002−272376(JP,A)
【文献】 特開平08−298959(JP,A)
【文献】 特開2006−081405(JP,A)
【文献】 特開2013−202012(JP,A)
【文献】 特開2009−072082(JP,A)
【文献】 特開2014−073111(JP,A)
【文献】 国際公開第00/024273(WO,A1)
【文献】 特開2008−307012(JP,A)
【文献】 J. Sci. Food Agric.,1980年,Vol.31, No.7,p.657-662
【文献】 福島 祐理、水田 美咲、高村 仁知,インドネシア産メリンジョを用いた菓子類の開発,日本調理科学会大会研究発表要旨集,日本,(一社)日本調理科学会,2013年,2P-34,平成25年度(一社)日本調理科学会大会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレート製品であって、該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%のメリンジョ粉末を含み、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有するチョコレート製品。
【請求項2】
前記メリンジョ粉末の平均粒径が30μm以下である、請求項1に記載のチョコレート製品。
【請求項3】
前記チョコレート製品が該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして0〜95質量%のカカオマスを含む、請求項1又は2に記載のチョコレート製品。
【請求項4】
前記チョコレート製品が該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして5〜100質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量を含む、請求項1又は2に記載のチョコレート製品。
【請求項5】
前記チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして5〜99.992質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量並びに残部の甘味料からなる、請求項1又は2に記載のチョコレート製品。
【請求項6】
前記チョコレート製品が、該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして、0〜94.992質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、0〜50質量%のカカオバター、0.008〜55質量%の甘味料、0〜30質量%の乳製品及び0〜0.5質量%の乳化剤を含む、請求項1又は2に記載のチョコレート製品。
【請求項7】
前記チョコレート製品が該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして40〜95質量%のカカオマスを含む、請求項3〜6のいずれかに記載のチョコレート製品。
【請求項8】
前記チョコレート製品が該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして25〜50質量%のカカオマスを含む、請求項3〜6のいずれかに記載のチョコレート製品。
【請求項9】
前記チョコレート製品が該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして25質量%以下のカカオマスを含む、請求項3〜6のいずれかに記載のチョコレート製品。
【請求項10】
前記チョコレート製品がカカオマスを含まない、請求項9に記載のチョコレート製品。
【請求項11】
前記チョコレート製品の総質量中10〜20質量%のメリンジョ粉末含有量を有する、請求項1〜10のいずれかに記載のチョコレート製品。
【請求項12】
メリンジョ粉末を含むチョコレート製品用組成物であって、該組成物の総質量中5〜30質量%のメリンジョ粉末含有量を有し、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有する組成物。
【請求項13】
前記メリンジョ粉末の平均粒径が30μm以下である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が該組成物の総質量を基準にして0〜95質量%のカカオマスを含む、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が該組成物の総質量を基準にして5〜100質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量を含む、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物の総質量を基準にして5〜99.992質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量並びに残部の甘味料からなる、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、該組成物の総質量を基準にして、0〜94.992質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、0〜50質量%のカカオバター、0.008〜55質量%の甘味料、0〜30質量%の乳製品及び0〜0.5質量%の乳化剤を含む、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が該組成物の総質量を基準にして40〜95質量%のカカオマスを含む、請求項14〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が該組成物の総質量を基準にして25〜50質量%のカカオマスを含む、請求項14〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が該組成物の総質量を基準にして25質量%以下のカカオマスを含む、請求項14〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物がカカオマスを含まない、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物の総質量中10〜20質量%のメリンジョ粉末含有量を有する、請求項12〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
メリンジョ粉末の、チョコレート製品の食味を向上させるための使用方法であって、メリンジョ粉末を、該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地に、該チョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%の量で配合することを含み、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有することを特徴とする使用方法。
【請求項24】
前記メリンジョ粉末を、前記チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地に、該チョコレート生地の総質量を基準にして10〜20質量%の量で配合することを含む、請求項23に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メリンジョ粉末を含有するチョコレート製品用組成物及び該組成物から製造されたチョコレート製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国のチョコレートの歴史は18世紀に欧米から伝来したことから始まり、現在では世界第5位の生産量となり、一人あたりの年間消費量も1.6kgと広く一般に浸透している菓子の一つである。
【0003】
チョコレートはココア分を主原料とし、これに砂糖、粉乳などを加えて混合、精錬、調温、成型して作られる。
【0004】
チョコレートの美味しさを決定づける重要な要素はカカオマスの苦味であり、カカオ豆の選択、焙煎条件、配合割合によるチョコレート製品の苦味の質がチョコレートの品質を決定する最も重要な要素である。
【0005】
特開2013−202012号公報には、カカオマスの苦味を代替する方法として、カカオマスの代わりにゴーヤ又はゴーヤの酵素分解物を使用することが提案されている。しかし、ゴーヤ又はゴーヤの酵素分解物はカカオマス自体の苦味を代替するが、その苦味は単調で、しかもゴーヤ特有の尾を引く青臭い苦みであり、カカオマスの苦味に奥深さを与えてチョコレートの風味をより向上させるものではない。また、ゴーヤの酵素分解物は、水分含量の多い青果物であるゴーヤを原料とするため、乾燥工程において多量の水分を蒸散させるための膨大なエネルギーを要し、さらに酵素分解を経ることで生産コストが増大するといった問題がある。
【0006】
特許第4822360号公報には、チョコレートに焙煎小麦を添加して焙煎小麦の苦み及びローストフレーバーを付与することが提案されている。この特許文献には、得られたチョコレートは、焙煎小麦の苦味と香りが非常によく合うことが記載されているが、カカオマスの苦味に奥深さを与えるといった苦味の質に関する言及はない。
【0007】
一方、少子高齢化社会を迎えた我が国では成人を購買層とした菓子開発が行われている。成人をターゲットとした菓子には濃厚、コクといった深い味わいが求められる。
【0008】
チョコレートにおいては、成人向けの製品として、カカオマス比率を高めることで、苦味を強く押し出したチョコレートが提案されている。しかし、カカオマス比率を高めただけのチョコレートは苦味が強くなるものの、風味が単調であり、消費者の嗜好を十分に満足させるものではない。
【0009】
また、カカオマスには、新興国での需要増加や天候リスク、紛争等の社会情勢により、原料価格が高騰するというリスクや、供給面でのリスクがある。
【0010】
ところで、メリンジョ(学名Gnetum gnemon L)は、インドネシア原産のグネツム科の植物である。メリンジョは、スープの具材として使用されている。また、蒸煮、圧ペン、油ちょうした煎餅(ウンピン)は仄かな苦味があり、インドネシアでは広く食されている。
【0011】
また、メリンジョはポリフェノールの一種であるレスベラトロールを多く含んでおり、独特の苦味がある。レスベラトロールは抗酸化作用(フリーラジカル消去能)、美白作用(チロシナーゼ活性阻害)、長寿(サーチュイン遺伝子活性化)、認知症予防(血流改善)があるといわれている。特開2006−81405号公報には、一般食品へのレスベラトロールによる栄養訴求が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4822360号公報
【特許文献2】特開2013−202012号公報
【特許文献3】特開2006−81405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、従来技術では、メリンジョの苦味に着目して、チョコレート製品の品質の重要な要素である苦味の質をより向上させることは検討されていない。
【0014】
そこで、本発明は、チョコレートの食感を損なうことなく、カカオ由来の苦味と同等の苦味を付与し又はカカオ由来の苦味に加えて、長く余韻のあるかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味を加えることによりチョコレートの食味が向上したチョコレート製品及びチョコレート製品用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、所定の粒径及び粒度分布を有するメリンジョ粉末を、チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地に、チョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%配合することにより、チョコレートの食感を損なうことなく、カカオ由来の苦味と同等の苦味を付与し又はカカオ由来の苦味に加えて、長く余韻のあるかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味が加わってチョコレートの食味が向上したチョコレート製品を得ることができることを見出した。
【0016】
この知見に基づき、本発明は、チョコレート製品であって、該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%のメリンジョ粉末を含み、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有するチョコレート製品を提供する。
【0017】
好ましくは、メリンジョ粉末の含有量はチョコレート生地の総質量を基準にして10〜20質量%である。これにより、チョコレート製品の食味と食感とのバランスがさらに優れる。
【0018】
本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして0〜95質量%のカカオマスを含む。これにより、カカオ由来の苦味と同等の苦味を付与し又はカカオマス本来の苦みを生かしつつ、長く余韻のあるかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味を加えたチョコレート製品となる。
【0019】
好ましくは、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして40〜95質量%のカカオマスを含む。これにより、ダークチョコレートの食味をさらに向上させ、より高級感のあるダークカカオチョコレートとなる。
【0020】
また、好ましくは、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして25〜50質量%のカカオマスを含む。
【0021】
また、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして5〜100質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量を含むことが好ましい。
【0022】
また、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして5〜99.992質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量並びに残部の甘味料からなることが好ましい。
【0023】
好ましくは、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして、0〜94.992質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、0〜50質量%のカカオバター、0.008〜55質量%の甘味料、0〜30質量%の乳製品及び0〜0.5質量%の乳化剤を含むことができる。
【0024】
好ましくは、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして、25質量%以下のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、5〜65質量%のカカオバター、0.05〜55質量%の甘味料、0.5〜40質量%の乳製品及び0.1〜0.5質量%の乳化剤を含むことができる。好ましくは、本発明のチョコレート製品はカカオマスを含まない。
【0025】
本発明のチョコレート製品は、好ましくは、ダークチョコレート、中程度の無脂ココア固形分チョコレート、低程度の無脂ココア分チョコレート又はカカオマスを含まないチョコレートである。
【0026】
また、本発明は、メリンジョ粉末を含むチョコレート製品用組成物であって、該組成物の総質量中5〜30質量%のメリンジョ粉末含有量を有し、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下、好ましくは30μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有する組成物も提供する。
【0027】
好ましくは、該組成物中におけるメリンジョ粉末の含有量は10〜20質量%である。これにより、チョコレートの食味と食感とのバランスがさらに優れたチョコレート製品が得られる。
【0028】
本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして0〜95質量%のカカオマスを含む。これにより、カカオ由来の苦味と同等の苦味を付与し又はカカオマス本来の苦みをさらに生かしつつ長く余韻のあるかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味を加えたチョコレート製品を得ることができる。
【0029】
本発明の組成物は、40〜95質量%のカカオマスを含む。これにより、ダークチョコレートの食味をさらに向上させ、より高級感のあるダークチョコレートを得ることができる。
【0030】
また、本発明の組成物は、25〜50質量%のカカオマスを含む。
【0031】
また、本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして5〜100質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量を含むことができる。
【0032】
本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして5〜99.992質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量並びに残部の甘味料からなることができる。
【0033】
好ましくは、本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして、0〜94.992質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、0〜50質量%のカカオバター、0.008〜55質量%の甘味料、0〜30質量%の乳製品及び0〜0.5質量%の乳化剤を含むことができる。この組成物をチョコレートドゥ又はチョコレート生地としてそのまま使用してチョコレート製品を製造することができる。
【0034】
好ましくは、本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして、25質量%以下のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、5〜65質量%のカカオバター、0.05〜55質量%の甘味料、0.5〜40質量%の乳製品及び0.1〜0.5質量%の乳化剤を含むことができる。本発明の組成物は、カカオマスを含まない場合には、5〜30質量%のメリンジョ粉末、5〜65質量%のカカオバター、0.05〜55質量%の甘味料、0.5〜40質量%の乳製品及び0.1〜0.5質量%の乳化剤を含むことが好ましい。
【0035】
また、本発明は、メリンジョ粉末の、チョコレート製品の食味を向上させるための使用方法であって、メリンジョ粉末を、該チョコレート製品を構成するチョコレート生地に、該チョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%の量で配合することを含み、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下、好ましくは30μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有することを特徴とする使用方法に関するものでもある。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、本発明のメリンジョ粉末をカカオマスと併用することで、チョコレートの食感を損なうことなく、カカオ由来の苦味に、かんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味を加えることができる。これらかんきつ類の皮のような苦味及びブドウ皮のような苦味は、カカオ由来の苦味とよく調和する。また、本発明のチョコレートは、苦味の余韻が長く続く。したがって、本発明によれば、このような調和のとれた苦み及び長く続く苦みの余韻によってチョコレートの食味に複雑さ及び深みが付与され、高級感のある大人の嗜好に適したチョコレート製品を得ることができる。このようなチョコレートの苦味の質の変化は、メリンジョ粉末自体が有する苦味からは想定できないものである。
【0037】
また、本発明によれば、本発明のメリンジョ粉末を、カカオマスを含まないチョコレート製品に含めることで、チョコレート製品にカカオマスの苦味と同様の苦味を付与することができると共に、苦味の余韻、ブドウの皮のような苦味、かんきつ類の皮のような苦味も付与することができるという効果を奏する。そのため、本発明のメリンジョ粉末は、カカオマスの代替品としての役割を果たすことができるのみならず、チョコレート製品にとって好ましい食味をさらに付与することができる。
【0038】
また、本発明のメリンジョ粉末を含有するチョコレートは、メリンジョ粉末の成分であるレスベラトロールを含有することになるため、栄養訴求効果も期待できる。
【0039】
以上の効果により、少子高齢化社会を迎えた我が国において、今後、販売のコアターゲットとなる成人を購入層とした製品の品質を高め、消費者の購買意欲を高めることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の一態様は、チョコレート製品であって、該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%のメリンジョ粉末を含み、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有するチョコレート製品である。
【0041】
本発明のチョコレート製品に含まれるメリンジョ粉末は、メリンジョ果実から果肉を除去し乾燥させた種子又はウンピンを粉砕することにより得られる。粉砕方法は限定されないが、気流式、ロール式、衝撃式、ボール式などの方法を使用することができる。例えば、本発明で使用するメリンジョ粉末は、メリンジョ種子乾燥物を気流粉砕機で、羽根付きローターを用いて、1000〜4000rpmのローター回転数及び20〜80m3/minの風量で粉砕することによって製造できる。
【0042】
このような方法で粉砕することによって得られたメリンジョ粉末は、40μm以下の平均粒径を有する。好ましくは、メリンジョ粉末の平均粒径は30μm以下である。メリンジョ粉末の平均粒径の下限値は粉砕条件によって変わるが、一般には約10μmである。したがって、好ましいメリンジョ粉末の平均粒径の範囲は、約10μm〜40μm、好ましくは10μm〜30μmである。メリンジョ粉末の平均粒径が40μmを超えると、得られるチョコレート製品の食感の滑らかさを損なうため好ましくない。また、本発明で使用するメリンジョ粉末の粒度分布は、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上であるというものである。好ましくは、本発明で使用するメリンジョ粉末の粒度分布は、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して55質量%以上、好ましくは55質量%〜100質量%、より好ましくは60質量%〜100質量%であるというものである。35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%未満の場合には、チョコレート製品の食感の滑らかさを損なうため好ましくない。
【0043】
本発明で使用するメリンジョ粉末の粒度分布は、レーザー回折散乱法(JIS規格8825−1)に従って、当該技術分野において標準的に使用されている粒度分布測定装置を使用して決定される。メリンジョ粉末の粒径は、算術平均より算出されるものである。
【0044】
本発明のチョコレート製品中におけるメリンジョ粉末の含有量は、チョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%である。この含有量が5質量%未満であると、上記本願発明の食味の効果が得られない。また、この含有量が30質量%を超えると、チョコレート製品においてカカオマス由来の苦みとは調和し難い渋柿のような苦味が強まると共に、食感の滑らかさを損なうため好ましくない。
【0045】
好ましくは、メリンジョ粉末の含有量は、チョコレート生地の総質量を基準にして10〜20質量%である。これにより、チョコレート製品の食味と食感とのバランスがさらに優れる。
【0046】
本発明のチョコレート製品は、その種類に応じて、様々な量のカカオマスを含むことができる。例えば、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして0〜95質量%、さらに好ましくは25〜65質量%のカカオマスを含むことができる。好ましくは、カカオマスの含有量は、チョコレート生地の総質量を基準にして40〜65質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。或いは、該チョコレート製品中におけるカカオマスの含有量は、チョコレート生地の総質量を基準にして好ましくは25〜50質量%、さらに好ましくは35〜45質量%である。或いは、該チョコレート製品中におけるカカオマス含有量はチョコレート生地の総質量を基準にして25質量%以下、好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは、該チョコレート製品はカカオマスを含まない。
【0047】
本発明のチョコレート製品中におけるメリンジョ粉末及びカカオマスの合計の割合は、一般に、チョコレート生地の総質量を基準にして5〜100質量%、好ましくは30〜95質量%、好ましくは40〜95質量%、さらに好ましくは50〜70質量%、最も好ましくは55又は70質量%である。
【0048】
本発明のチョコレート製品は、その少なくとも一部がチョコレート生地から構成される。また、本発明のチョコレート製品は、その全部がチョコレート生地から構成されていてもよい。この場合、本発明のチョコレート製品は、カカオマス及びメリンジョからなることができる。また、本発明のチョコレート製品は、カカオバター、ココアパウダー、甘味料、粉乳などの乳製品、乳化剤などをさらに含むチョコレート生地から構成できる。カカオバターの含有量は、チョコレート生地の総質量を基準にして5〜65質量%、好ましくは5〜45質量%であり、同様にココアパウダーの含有量は10〜45質量%であり、甘味料の含有量は0〜55質量%、好ましくは0.008〜50質量%、さらに好ましくは5〜45質量%であり、乳製品の含有量は0〜40質量%、好ましくは0.5〜30質量%であり、乳化剤の含有量は0.1〜0.5質量%である。
【0049】
甘味料としては、砂糖、ブドウ糖、果糖などの天然糖類及びスクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ソルビトール、オクチトールなどの合成甘味料、甘草、ソーマチン、ステビアなどの天然甘味料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
乳製品としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリーム粉乳、バターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
乳化剤としては、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
また、本発明のチョコレート製品は、上記本発明の効果を損なわない範囲内で、香料、着色料などの添加物をさらに含むことができる。これらの添加物の含有量は、チョコレート生地の総質量を基準にして0.001〜5質量%とすることができる。
【0053】
また、本発明のチョコレート製品は、上記本発明の効果を損なわない範囲内で、植物油脂をさらに含むことができる。これらの添加剤の含有量は、チョコレート生地の総質量を基準にして5〜40質量%とすることができる。
【0054】
本発明のチョコレート製品に含まれる油脂分(チョコレートに含まれる全油脂の合計)は、作業性や風味の観点からチョコレート生地の総質量を基準にして30〜70質量%、好ましくは35〜55質量%であることができる。
【0055】
本発明のチョコレート製品は、5〜30質量%のメリンジョ粉末及び残部のカカオマスからなることができる。好ましくは、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして、40〜95質量%又は25〜50質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末及び5〜20質量%のカカオバターを含むことができる。さらに好ましくは、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして、40〜95質量%又は25〜50質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、5〜20質量%のカカオバター、0.5〜5質量%の乳製品及び5〜35質量%の甘味料を含むことができる。
【0056】
本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして0〜25質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末及び5〜65質量%のカカオバターを含むことができる。さらに好ましくは、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして、0〜25質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、5〜55質量%のカカオバター、0.5〜40質量%の乳製品及び0.05〜55質量%の甘味料を含むことができる。さらに好ましくは、本発明のチョコレート製品は、0〜25質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、10〜45質量%のカカオバター、10〜30質量%の乳製品、20〜50質量の甘味料及び0.1〜0.5質量%の乳化剤を含むことができる。
【0057】
本発明のチョコレート製品の種類は、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」その他による規格には特に限定されず、様々な配合原料を含むチョコレートとすることができ、例えば、チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート及び準チョコレート菓子を包含する。また、本発明のチョコレート製品は、ダークチョコレート(高カカオチョコレート)又はミルクチョコレートであることができる。ここで、本発明においてダークチョコレート(高カカオチョコレート)とは、カカオマス含有量40〜95質量%のカカオマス成分の多いチョコレートであって、乳製品をほとんど又は全く含まないものをいう。ここで、「乳製品をほとんど含まない」とは、チョコレート製品中における乳製品の含有量が1質量%未満であることをいう。また、一般的に、ミルクチョコレートとは、チョコレート製品中ココア分が21%以上、総脂肪が21%以上、乳脂肪分が3%以上、無脂ココア固形分が3%以上、無脂乳固形分が11%以上、ショ糖分が35〜55%及び水分3%以下のものをいう。ここで、「ココア分」とは、当該技術分野において周知であり、一般に、無脂ココア固形分(ココアパウダー)、カカオバター、カカオマスの総量をいう。また、本発明のチョコレート製品は、ホワイトチョコレートであってもよい。ここで、ホワイトチョコレートとは、一般に、上記ミルクチョコレートのうち、無脂ココア固形分が3%未満で、生地の色相が白色又は白色に近い色を呈するものをいう。
【0058】
本発明のチョコレート製品は、チョコレートの種類に応じて様々なカカオマス含有量を有することができる。例えば、本発明のチョコレート製品がダークチョコレートの場合には、本発明のチョコレート製品のカカオマス含有量は、40〜95質量%、好ましくは40〜65質量%、さらに好ましくは50〜60質量%とすることができる。また、本発明のチョコレート製品が中程度の無脂ココア固形分チョコレートの場合には、本発明のチョコレート製品のカカオマス含有量は、25〜50質量%、好ましくは35〜45質量%とすることができる。
【0059】
本発明のチョコレート製品が低程度の無脂ココア固形分チョコレートの場合には、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地の総質量を基準にして、0〜30質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、21質量%〜50質量%のカカオバター、0.05〜55質量%の甘味料及び10〜30質量%の乳製品を含むことができる。また、本発明の低程度の無脂ココア固形分チョコレートは、適宜、乳化剤、香料などの他の添加物を含むことができる。添加物の含有量は上で定義した添加量のいずれかの範囲とすることができる。
【0060】
本発明のチョコレート製品は、通常のチョコレートの製造方法に従って製造できる。例えば、本発明のチョコレート製品は、ココア分に、適宜粉乳、甘味料及び乳化剤等の必要な成分を加えてチョコレート原料を製造した後、これをローラーにかけて微細化し、ミキサーにより40〜60℃の温度で50〜90分間混練(コンチング処理)した後、チョコレートドゥの温度を25〜30℃まで低下させ、その後再度30〜35℃の温度に加温して(テンパリング)チョコレート生地を得、その後このチョコレート生地を適宜型に注入して冷却して固めることにより製造できる。この場合、上記メリンジョ粉末は、チョコレート原料を製造する際、微細化する際及びテンパリング処理の際の一以上の段階で、カカオマス、チョコレート原料又はチョコレート生地に添加することができる。また、メリンジョ粉末の添加は、メリンジョ粉末を、チョコレート製品におけるメリンジョ粉末含有量が該チョコレート生地の総質量に対して5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%となるように、一度に又は何回かに分けて添加することができる。
【0061】
本発明のチョコレート製品は、様々な形態をとることができる。例えば、本発明のチョコレート製品は、板状、球形、棒状、顆粒状その他の形態をとることができ、また、本発明のチョコレート製品は、液体の状態や、いわゆる生チョコレートと呼ばれる半固体の状態であってもよい。本発明のチョコレート製品は、そのまま食してもよい。また、本発明のチョコレート製品は、チョコレート生地にアーモンドやピーナツなどのナッツ類、キャラメル、ジャム、ゼリーなどを加えたものとすることもできる。また、本発明のチョコレート製品を製菓や製パン製品、例えば、パン、ケーキ、焼き菓子、揚げ菓子などのコーティングやフィリングとして使用することや、生地に練り込んで使用することも可能である。
【0062】
本発明の別の態様は、メリンジョ粉末を含むチョコレート製品用組成物であって、該組成物の総質量中5〜30質量%のメリンジョ粉末含有量を有し、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下、好ましくは30μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有する組成物に関するものである。
【0063】
本発明の組成物に含まれるメリンジョ粉末の製造方法、粒径及び粒度分布は、チョコレート製品に関連して説明したとおりである。
【0064】
本発明の組成物中におけるメリンジョ粉末の含有量は、該組成物の総質量を基準にして5〜30質量%である。この含有量が5質量%未満であると、上記本願発明の食味の効果が得られない。また、この含有量が30質量%を超えると、得られるチョコレート製品においてカカオマス由来の苦みとは調和し難い渋柿のような苦味が強まると共に、食感の滑らかさを損なうため好ましくない。
【0065】
好ましくは、メリンジョ粉末の含有量は、上記組成物の総質量を基準にして10〜20質量%である。これにより、得られるチョコレート製品の食味と食感とのバランスがさらに優れる。
【0066】
本発明の組成物は、チョコレート製品の種類に応じて、様々な量のカカオマスを含むことができる。例えば、本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして0〜95質量%、好ましくは25〜65質量%のカカオマスを含むことができる。好ましくは、この組成物中におけるカカオマスの含有量は、40〜65質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。或いは、該組成物中におけるカカオマスの含有量は、好ましくは25〜50質量%、さらに好ましくは35〜45質量%である。或いは、該組成物中におけるカカオマス含有量は0〜25質量%、好ましくは0〜15質量%であり、さらに好ましくは、該組成物はカカオマスを含まない。
【0067】
本発明の組成物中におけるメリンジョ粉末及びカカオマスの合計の割合は、一般に、該組成物の総質量を基準にして5〜100質量%、好ましくは30〜95質量%、好ましくは40〜95質量%、さらに好ましくは50〜70質量%、最も好ましくは55又は70質量%である。
【0068】
本発明の組成物は、カカオバター、ココアパウダー、甘味料、粉乳、乳化剤などをさらに含むことができる。この組成物中におけるカカオバターの含有量は、該組成物の総質量を基準にして5〜65質量%、好ましくは30〜50質量%であり、同様にココアパウダーの含有量は10〜45質量%であり、甘味料の含有量は0〜55質量%、好ましくは0.008〜50質量%、さらに好ましくは5〜45質量%であり、乳製品の含有量は0〜40質量%、好ましくは0.5〜30質量%、乳化剤の含有量は0.1〜0.5質量%である。
【0069】
甘味料としては、砂糖、ブドウ糖、果糖などの天然甘味料及びスクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ソルビトール、オクチトールなどの合成甘味料、甘草、ソーマチン、ステビアなどの天然甘味料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
乳製品としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリーム粉乳、バターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
乳化剤としては、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
また、本発明の組成物は、上記本発明の効果を損なわない範囲内で、香料、着色料などの添加物をさらに含むことができる。これらの添加物の含有量は、該組成物の総質量を基準にして0.001〜5質量%とすることができる。
【0073】
また、本発明の組成物は、上記本発明の効果を損なわない範囲内で、植物油脂をさらに含むことができる。これらの添加剤の含有量は、該組成物の総質量を基準にして5〜40質量%とすることができる。
【0074】
本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして5〜30質量%のメリンジョ粉末及び残部のカカオマスからなることができる。この場合、メリンジョ粉末及びカカオマスの合計質量は、5〜100質量%である。また、本発明の組成物は、5〜99.992質量%のカカオマス及びメリンジョ粉末の合計質量並びに残部の甘味料からなることができる。好ましくは、本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして、40〜95質量%又は25〜50質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末及び5〜20質量%のカカオバターを含むことができる。さらに好ましくは、本発明の組成物は、該組成物の総質量を基準にして、40〜95質量%又は25〜50質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、5〜20質量%のカカオバター、0.5〜5質量%の乳製品及び5〜35質量%の甘味料を含むことができる。
【0075】
本発明の組成物は、低程度の無脂ココア固形分チョコレート用の組成物であることができる。この組成物は、該組成物の総質量を基準にして、0〜30質量%のカカオマス、5〜30質量%のメリンジョ粉末、21質量%〜50質量%のカカオバター、0.05〜55質量%の甘味料及び10〜30質量%の乳製品を含むことができる。また、本発明の低程度の無脂ココア固形分チョコレート用組成物は、適宜、乳化剤、香料などの他の添加物を含むことができる。添加物の含有量は上で定義した添加量のいずれかの範囲とすることができる。
【0076】
本発明の組成物は、当該技術分野において知られている標準的な方法に従って製造できる。例えば、本発明の組成物は、ココア分と本発明のメリンジョ粉末とを周囲温度で5〜10分間混合し、そして適宜この混合物にカカオバター、粉末状甘味料、粉乳及び乳化剤などを添加して周囲温度でさらに5〜10分間混合させることによって製造できる。このような方法によって得られた本発明の組成物は、カカオマス及びメリンジョ粉末の他にカカオバター、甘味料、粉乳及び乳化剤などのチョコレート製造に必要な成分を含むチョコレートドゥと呼ばれる状態であってもよい。また、本発明の組成物は、さらに微細化された状態、コンチング処理された状態又はテンパリング処理された状態のチョコレート生地であることもできる。
【0077】
上記組成物を用いて、チョコレート製品を製造することができる。例えば、本発明の組成物がメリンジョ粉末及びカカオマスのみからなる場合には、この組成物をチョコレートドゥとして使用して糖類を含まない高カカオチョコレートを製造することができる。また、本発明の組成物がメリンジョ粉末及びカカオマスの他に、適宜カカオバター、粉乳、甘味料及び乳化剤等の成分を含む場合は、この組成物をチョコレートドゥとして使用してダークチョコレート又はミルクチョコレートを製造することができる。このような本発明の組成物をローラーにかけて微細化し、ミキサーにより40〜60℃の温度で50〜90分間混練(コンチング処理)した後、チョコレートドゥの温度を25〜30℃まで低下させ、その後再度30〜35℃の温度に加温して(テンパリング)チョコレート生地を得、その後このチョコレート生地を適宜型に注入して冷却して固めることによりチョコレート製品を製造できる。また、本発明の組成物がテンパリング処理後のチョコレート生地の場合には、適宜加熱工程、注型、冷却工程等を経てチョコレート製品を製造することができる。
【0078】
最後に、さらに別の態様では、本発明は、メリンジョ粉末の、チョコレート製品の食味を向上させるための使用方法であって、メリンジョ粉末を、該チョコレート製品の少なくとも一部を構成するチョコレート生地に、該チョコレート生地の総質量を基準にして5〜30質量%の量で配合することを含み、該メリンジョ粉末は、算術平均により算出される平均粒径が40μm以下、好ましくは30μm以下であり、かつ、35μm以下の粒径を有するメリンジョ粉末の割合が該メリンジョ粉末の総質量に対して60質量%以上の粒度分布を有することを特徴とする使用方法に関するものでもある。
【0079】
ここで、「チョコレート製品の食味を向上させる」とは、チョコレート製品において、カカオ由来の苦味と同様の苦味を付与し又はカカオ由来の苦味に加えて、かんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味が加わると共に、苦味の余韻が長く続くことによりチョコレートの食味に複雑さ及び深みを付与することをいう。
【0080】
メリンジョ粉末及びチョコレート製品に関する上記説明の全てがこの使用方法に当てはまる。
【0081】
以下、本発明を単なる例示としての実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0082】
製造例1:平均粒径30μm以下のメリンジョ粉末の製造
メリンジョ種子乾燥物を気流粉砕機(YTK−5222:株式会社豊製作所)にて粉砕した。粉砕条件は、角型の12本の羽根のついたローターを用いて、ローター回転数が2600rpm、風量が60m3/minであった。得られたメリンジョ粉末100mgを2−プロパノール(特級:和光純薬工業株式会社)10mlに分散させ、そして粒度分布測定装置(LS13 320:BECKMAN COULTER)を用いてメリンジョ粉末の粒度分布を測定した。粒度分布測定には、レーザー回析散乱法(JIS規格8825−1)を用いた。算術平均により算出したメリンジョ粉末の平均粒径は26μmであり、粒径が35μm以下のメリンジョ粉末のメリンジョ粉末総質量に対する割合は75質量%以上であった。
【0083】
製造例2:平均粒径40μm以下のメリンジョ粉末の製造
メリンジョ種子乾燥物を超遠心粉砕機(ZM−200:株式会社レッチェ)にて粉砕した。粉砕条件は、ローター回転数10000rpmとし、スクリーン0.25mmのメッシュを装着した。得られたメリンジョ粉末100mgを2−プロパノール(特級:和光純薬工業株式会社)10mlに分散し、そして粒度分布測定装置(LS13 320:BECKMAN COULTER)を用いて湿式方式で粒度分布を測定した。粒度分布測定には、レーザー回析散乱法(JIS規格8825−1)を用いた。算術平均により算出したメリンジョ粉末の平均粒径は35μmであり、粒径が35μm以下のメリンジョ粉末のメリンジョ粉末総質量に対する割合は67質量%以上であった。
【0084】
製造例3:平均粒径40μm超のメリンジョ粉末の製造
メリンジョ種子乾燥物を超遠心粉砕機(ZM−200:株式会社レッチェ)にて粉砕した。粉砕条件は、ローター回転数16000rpmとし、スクリーン0.5mmのメッシュを装着した。得られたメリンジョ粉末100mgを2−プロパノール(特級:和光純薬工業株式会社)10mlに分散し、そして粒度分布測定装置(LS13 320:BECKMAN COULTER)を用いて湿式方式で粒度分布を測定した。粒度分布測定には、レーザー回析散乱法(JIS規格8825−1)を用いた。算術平均により算出したメリンジョ粉末の平均粒径は52μmであり、粒径が35μm以下のメリンジョ粉末のメリンジョ粉末総質量に対する割合は51質量%以上であった。
【0085】
製造例4(参考):乾燥ゴーヤ粉末の製造
乾燥ゴーヤ粉末を、完熟していない青いゴーヤの種子とワタを除いた後、ミキサー(TM640:株式会社シェコム)で粉砕してから、真空凍結乾燥機(RLE-206:共和真空技術株式会社)で凍結乾燥して作製した。得られた乾燥ゴーヤ粉末100mgを2−プロパノール(特級:和光純薬工業株式会社)10mlに分散し、そして粒度分布測定装置(LS13 320:BECKMAN COULTER)を用いて湿式方式で粒度分布を測定した。粒度分布測定には、レーザー回析散乱法(JIS規格8825−1)を用いた。算術平均により算出した乾燥ゴーヤ粉末の平均粒径は34μmであり、粒径が35μm以下の乾燥ゴーヤ粉末の乾燥ゴーヤ粉末総質量に対する割合は63質量%以上であった。
【0086】
評価方法
以下の実施例、比較例及び参考例においては、製造されたチョコレート製品を訓練されたパネラー10名が試食を行うことにより評価した。具体的には、メリンジョ粉末を配合していない比較例(比較例1及び7)をコントロールとして、以下の評価項目について以下の評価基準に従って採点し、10名の合計点で評価した。
【0087】
評価項目
苦味の余韻:苦味が続く長さ
カカオマスの苦味:チョコレート本来の苦味
ブドウ皮のような苦味:ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味
かんきつ類の皮のような苦味:かんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味
渋柿のような苦味:舌に残り、甘み、酸味を打ち消すような苦味(悪味)
食感:チョコレートの食感の滑らかさ
【0088】
評価基準
食味の評価は以下のスコアで採点した。
2点:各評価項目を強く感じる
1点:各評価項目を感じる
0点:各評価項目を感じない
食感の評価は以下のスコアで採点した。
2点:ざらつきが全くなく、食感が非常になめらかである
1点:ざらつきが僅かに感じられるが、食感の滑らかさを保持している
0点:ざらつきがあり、食感の滑らかさに非常に欠ける
【0089】
実施例1〜13、比較例1〜7並びに参考例1及び2:ダークチョコレートの製造
以下の表1に示す配合量に従ってカカオマス(株式会社富澤商店)とメリンジョ粉末又は乾燥ゴーヤ粉末とをミキサー(KSM5WH:株式会社エフエムアイ)により周囲温度で5分間混合し、この混合物に以下の表1に示す配合量に従ってカカオバター(株式会社富澤商店)、粉糖(共立食品株式会社)、スクラロース(登録商標)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、スキムミルク(株式会社富澤商店)及びレシチン(カーギルジャパン)を添加し、そしてミキサー(KSM5WH:株式会社エフエムアイ)により5分間周囲温度で混合して組成物を得た。その後、各組成物を卓上ミキサー(5DMV:株式会社品川工業所)により品温50℃に加温してから60分間混練してコンチング処理した後、氷水上で品温28℃まで低下させ、そして再び卓上ミキサーにより品温32℃まで加温してテンパリングを行ってチョコレート生地を得た。その後、チョコレート生地を型に流し込み、4℃で1時間冷却して固化させてチョコレート製品を得た。
【0090】
表1:ダークチョコレート製品中の各成分の配合比
【表1-1】
【表1-2】
【0091】
実施例1〜13、比較例1〜7及び参考例1及び2で製造されたチョコレートを、上記評価方法、評価項目及び評価基準により評価した。以下の表2に評価結果をまとめる。
【0092】
ダークチョコレートの評価
【表2】
【0093】
表2から分かるように、製造例1及び製造例2で製造されたメリンジョ粉末を含有する本発明のダークチョコレート(実施例1〜13)は、メリンジョ粉末を含有しない比較例1のダークチョコレートと比較して、カカオマス本来の苦味を損なわず、苦味の余韻が長く続き、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わり、チョコレートの食味が向上した。このような食味の向上により、実施例1〜10のダークチョコレートは、より高級感のある深みのある食味となった。さらに、実施例1〜13のダークチョコレートは、比較例1のダークチョコレートに匹敵する食感を有していた。
これに対し、メリンジョ粉末の含有量が5質量%よりも少ないと、ブドウ皮のような苦味やかんきつ類の皮のような苦味がさほど付与されず、実施例のようにダークチョコレートの食味を顕著に向上させることができない(比較例2参照)。
【0094】
また、表2から、メリンジョ粉末の含有量が増加すると、苦味の余韻、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味が増す傾向にあり、このような好ましい苦味は、10〜20質量%の含有量で最大になることが分かる。しかし、メリンジョ粉末含有量が20質量%を超えて30質量%になると、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味といった好ましい苦味が若干減り、僅かながら渋柿のような苦味を感じるようになる。このような渋柿のような苦味は、メリンジョ粉末の含有量が35質量%になると、かなり強く感じるようになる(比較例3)。また、ダークチョコレートの食感は、メリンジョ粉末含有量が増加すると悪化する傾向があるが、5質量%〜20質量%の含有量のときにメリンジョ粉末を含有しないチョコレートと遜色のない食感が保持されることが分かった。
以上のことから、ダークチョコレートにおいて最適な食味と食感とのバランスを与えるメリンジョ粉末含有量は10〜20質量%であることが分かった。
【0095】
さらに、本発明の組成物によれば、油脂分の少ない高カカオチョコレートにおいても、カオマス本来の苦味を損なわず、苦味の余韻が長く続き、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わった高級感のある深みのある食味をもたらすことができると共に、チョコレート本来の食感を損なわないことが分かった(実施例5参照)。
【0096】
また、表2から、製造例3で製造されたメリンジョ粉末を含有する組成物から得られたダークチョコレートは、ざらつきがあり滑らかさに欠ける食感であることが分かる。
【0097】
ダークチョコレートに苦味を付与するために、メリンジョ粉末の代わりに製造例4の乾燥ゴーヤ粉末(3質量%)を使用した場合には、苦味の余韻、カカオマスの苦味を高める効果があるものの、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わった高級感のある深みのある食味をもたらすことはなかった(参考例1)。また、乾燥ゴーヤ粉末の含有量を増加させても(5質量%;参考例2)、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わることはなかった。その代わりに、ゴーヤそのものの尾を引く青臭い苦味が強く出て薬味のような風味が加わり、カカオマスの苦味との調和に欠けるものとなった。
【0098】
実施例14〜21、比較例8〜14並びに参考例3及び4:中程度の無脂ココア固形分チョコレートの製造
これらの例では、実施例1〜13のダークチョコレートと同等又はそれよも低い無脂ココア固形分を有し、かつ、乳製品含有量の多いチョコレート(以下、中程度の無脂ココア固形分チョコレート)を製造し、その食味を評価する。以下の表3に示す配合量に従ってカカオマス(株式会社富澤商店)とメリンジョ粉末又は乾燥ゴーヤ粉末とをミキサー(KSM5WH:株式会社エフエムアイ)により周囲温度で5分間混合し、この混合物に以下の表3に示す配合量に従ってカカオバター(株式会社富澤商店)、粉糖(共立食品株式会社)、スクラロース(登録商標)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、スキムミルク(株式会社富澤商店)及びレシチン(カーギルジャパン)を添加し、そしてミキサー(KSM5WH:株式会社エフエムアイ)により5分間周囲温度で混合して組成物を得た。その後、各組成物を卓上ミキサー(5DMV:株式会社品川工業所)により品温50℃に加温してから60分間混練してコンチング処理した後、氷水上で品温28℃まで低下させ、そして再び卓上ミキサーにより品温32℃まで加温してテンパリングを行ってチョコレート生地を得た。その後、チョコレート生地を型に流し混み、4℃で1時間冷却して固化させてチョコレート製品を得た。
【0099】
中程度の無脂ココア固形分チョコレート製品中の各成分の配合比
【表3】
【0100】
実施例14〜21、比較例8〜14及び参考例3及び4で製造された中程度の無脂ココア固形分チョコレートを、上記評価方法、評価項目及び評価基準により評価した。以下の表4に評価結果をまとめる。
【0101】
中程度の無脂ココア固形分チョコレートの評価
【表4】
【0102】
表4から分かるように、製造例1及び2で製造されたメリンジョ粉末を含有する本発明の中程度の無脂ココア固形分チョコレート(実施例14〜21)は、メリンジョ粉末を含有しない比較例8のチョコレートと比較して、苦味の余韻が長く続き、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わり、チョコレートの食味が向上した。このような食味の向上により、実施例14〜21のチョコレートは、中程度の無脂ココア固形分チョコレートにもかかわらず食味に深みが出て、より高級感のある成人の嗜好にあった風味となった。さらに、実施例14〜21の中程度の無脂ココア固形分チョコレートは、比較例8の中程度の無脂ココア固形分チョコレートに匹敵する食感を有していた。
これに対し、メリンジョ粉末の含有量が5質量%よりも少ないと、ブドウ皮のような苦味やかんきつ類の皮のような苦味がさほど付与されず、実施例のように中程度の無脂ココア固形分のチョコレートの食味を顕著に向上させることができない(比較例9参照)。
【0103】
また、表4から、ダークチョコレートの場合と同様に、メリンジョ粉末の含有量が増加すると、苦味の余韻、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味が増す傾向にあり、このような好ましい苦味は、10〜20質量%の含有量で最大になることが分かる。しかし、メリンジョ粉末含有量が20質量%を超えて30質量%になると、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味といった好ましい苦味が若干減り、僅かながら渋柿のような苦味を感じるようになる。このような渋柿のような苦味は、メリンジョ粉末の含有量が35質量%になると、かなり強く感じるようになる(比較例10)。また、ダークチョコレートの場合と同様に、中程度の無脂ココア固形分チョコレートの食感もメリンジョ粉末含有量が増加すると悪化する傾向があるが、5質量%〜20質量%の含有量のときにメリンジョ粉末を含有しないチョコレートと遜色のない食感が保持されることが分かった。
以上のことから、中程度の無脂ココア固形分チョコレートにおいても、最適な食味と食感とのバランスを与えるメリンジョ粉末含有量は10〜20質量%であることが分かった。
【0104】
また、中程度の無脂ココア固形分チョコレートの食味について、苦味の余韻、カカオマスの苦味、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味のいずれも、従来のダークチョコレートの食味を超えるものであり、かつ、本発明のメリンジョ粉末を含有するダークチョコレートに匹敵するものであった(表2の比較例1及び実施例1〜13も参照)。したがって、本発明は、中程度の無脂ココア固形分チョコレートの場合であっても、従来のダークチョコレートよりも複雑さ及び深みが付与された高級感のある食味をもたらすという予想外の効果を奏することが分かった。
【0105】
また、表4から、製造例3で製造されたメリンジョ粉末を含有する中程度の無脂ココア固形分チョコレートは、ざらつきがあり滑らかさに欠ける食感であることが分かる。
【0106】
中程度の無脂ココア固形分チョコレートに苦味を付与するために、メリンジョ粉末の代わりに乾燥ゴーヤ粉末(3質量%)を使用した場合には、苦味の余韻、カカオマスの苦味を高める効果があるものの、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わった高級感のある深みのある食味をもたらすことはなかった(参考例3)。また、乾燥ゴーヤ粉末の含有量を増加させても(5質量%;参考例4)、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わることはなかった。その代わりに、ゴーヤそのものの尾を引く青臭い苦味が強く出て薬味のような風味が加わり、カカオマスの苦味との調和に欠けるものとなった。
【0107】
実施例22〜32、比較例15〜22並びに参考例5及び6:カカオマスを含まないチョコレート及び低程度の無脂ココア固形分チョコレートの製造
これらの例では、カカオマスを含まず、かつ、乳製品含有量の多いチョコレート及び実施例14〜21と同等又はそれよりも低い無脂ココア固形分含有量を有し、かつ、乳製品含有量の多いチョコレート(以下、それぞれカカオマスを含まないチョコレート及び低程度の無脂ココア固形分チョコレート)を実施例14〜21、比較例8〜14並びに参考例3及び4と同様の方法で製造したが、ただし、スクラロースを使用せず、また乳脂肪として無塩バター(雪印メグミルク株式会社)を使用した。カカオマスを含まないチョコレート及び低程度の無脂ココア固形分チョコレートに使用した成分は次のとおりである。
【0108】
【表5】
【0109】
実施例22〜32、比較例15〜22並びに参考例5及び6で製造されたカカオマスを含まない又は低程度の無脂ココア固形分チョコレートを、上記評価方法、評価項目及び評価基準により評価した。以下の表6に評価結果をまとめる。
【0110】
カカオマスを含まない又は低程度の無脂ココア固形分チョコレートの評価
【表6】
【0111】
表6から分かるように、製造例1及び2で製造されたメリンジョ粉末を含有する本発明の低程度の無脂ココア固形分チョコレート(実施例22〜24及び実施例26〜28)は、メリンジョ粉末を含有しない比較例15のチョコレートと比較して、苦味の余韻が長く続き、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わり、チョコレートの食味が向上した。このような食味の向上により、実施例22〜24及び実施例26〜28のチョコレートは、低程度の無脂ココア固形分チョコレートにもかかわらず食味に深みが出て、より高級感のある成人の嗜好にあった風味となった。さらに、実施例22〜24及び実施例26〜28の低程度の無脂ココア固形分チョコレートは、比較例15の低程度の無脂ココア固形分チョコレートに匹敵する食感を有していた。
これに対し、メリンジョ粉末の含有量が5質量%よりも少ないと、ブドウ皮のような苦味やかんきつ類の皮のような苦味がさほど付与されず、実施例のように低程度の無脂ココア固形分チョコレートの食味を顕著に向上させることができない(比較例16参照)。
【0112】
また、表6から、メリンジョ粉末の含有量が増加すると、苦味の余韻、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味が増す傾向にあり、このような好ましい苦味は、10〜20質量%の含有量で最大になることが分かる。また、ダークチョコレートの場合と同様に、低程度の無脂ココア固形分チョコレートの食感もメリンジョ粉末含有量が増加すると悪化する傾向があるが、5質量%〜20質量%の含有量のときにメリンジョ粉末を含有しないチョコレートと遜色のない食感が保持されることが分かった。
以上のことから、低程度の無脂ココア固形分チョコレートにおいても、最適な食味と食感とのバランスを与えるメリンジョ粉末含有量は10〜20質量%であることが分かった。
【0113】
また、低程度の無脂ココア固形分チョコレートの食味について、苦味の余韻、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味のいずれも、従来のダークチョコレートの食味を超えるものであった(表2の比較例1)。したがって、本発明は、低程度の無脂ココア固形分チョコレートの場合であっても、従来のダークチョコレートよりも複雑さ及び深みが付与された高級感のある食味をもたらすという予想外の効果を奏することが分かった。
【0114】
また、表6から、製造例3で製造されたメリンジョ粉末を含有する低程度の無脂ココア固形分チョコレートは、ざらつきがあり滑らかさに欠ける食感であることが分かる(比較例19〜22)。
【0115】
低程度の無脂ココア固形分チョコレートに苦味を付与するために、メリンジョ粉末の代わりに乾燥ゴーヤ粉末(3質量%)を使用した場合には、苦味の余韻を高める効果があるものの、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わった高級感のある深みのある食味をもたらすことはなかった(参考例5)。また、乾燥ゴーヤ粉末の含有量を増加させても(5質量%;参考例6)、ブドウ皮のような仄かな収斂を感じる苦味及びかんきつ類の皮のような酸味を伴った苦味が加わることはなかった。その代わりに、ゴーヤそのものの尾を引く青臭い苦味が強く出て薬味のような風味が加わり、カカオマスの苦味との調和に欠けるものとなった。
【0116】
また、表6を参照すると、カカオマスを含まないチョコレートは、苦味の余韻、カカオマスの苦味、ブドウの皮のような苦味、かんきつ類の皮のような苦味といったチョコレートにとって好ましい食味がない(比較例18)。しかしながら、このカカオマスを含まないチョコレートに本発明のメリンジョ粉末を加えると、「カカオマスの苦味」が加わるのみならず、苦味の余韻、ブドウの皮のような苦味、かんきつ類の皮のような苦味が加わったチョコレートとなった(実施例25及び29〜32参照)。また、このメリンジョ粉末を加えたカカオマスを含まないチョコレートの「カカオマスの苦味」は、従来の低程度のカカオ成分チョコレートの「カカオマスの苦味」に匹敵するものであった(実施例25及び29〜32と比較例15との比較)。さらに、メリンジョ粉末を加えたカカオマスを含まないチョコレートの食味は、メリンジョ粉末を含む低程度のカカオ成分チョコレートの食味に匹敵するものであった(実施例25及び29〜32と実施例22〜24参照)。
したがって、本発明のメリンジョ粉末は、カカオマスの代替品としての役割を果たすのみならず、チョコレート製品にとって好ましい食味をさらに付与することができると言える。
【0117】
また、表6を参照すると、本発明のメリンジョ粉末を加えたカカオマスを含まないチョコレートは、メリンジョ粉末を含まない従来の低程度のカカオ成分チョコレートに匹敵する食感を有していた(実施例25及び29〜32と比較例15及び18との比較)。
【0118】
さらに、表6から、カカオマスを含まないチョコレートにおいて、メリンジョ粉末の含有量が増加すると、苦味の余韻、ブドウ皮のような苦味及びかんきつ類の皮のような苦味が増す傾向にあり、このような好ましい苦味は、10〜20質量%の含有量で最大になることが分かる。また、カカオマスを含まないチョコレートの食感はメリンジョ粉末含有量が増加すると悪化する傾向があるが、5質量%〜20質量%の含有量のときにメリンジョ粉末を含有しないチョコレートと遜色のない食感が保持されることが分かった。
以上のことから、カカオマスを含まないチョコレートにおいて、最適な食味と食感とのバランスを与えるメリンジョ粉末含有量は10〜20質量%であることが分かった。