(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475661
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】板状逆Fアンテナ及びこれを具えた無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
H01Q13/08
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-92679(P2016-92679)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-201744(P2017-201744A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591218857
【氏名又は名称】ミヨシ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 博之
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】河上 秀爾
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0194734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/04
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の放射体と、前記放射体の縁部に給電部及び短絡部を具える板状逆Fアンテナであって、
前記放射体は、板状であって平面内で屈曲した屈曲部を有する略コ字状形状であり、略平行に延びる平行辺は、幅が異なる、
板状逆Fアンテナ。
【請求項2】
端縁に前記給電部を具え、前記端縁から延びる側縁に前記短絡部を具える、
請求項1に記載の板状逆Fアンテナ。
【請求項3】
板状の放射体と、前記放射体に給電部及び短絡部を具える板状逆Fアンテナであって、
前記放射体は、板状であって平面内で屈曲した少なくとも1の屈曲部を有し、
端縁に前記給電部を具え、前記端縁から延びる側縁に前記短絡部を具える、
板状逆Fアンテナ。
【請求項4】
前記放射体は、2の屈曲部を有する、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の板状逆Fアンテナ。
【請求項5】
前記放射体は、略コ字状形状である、
請求項4に記載の板状逆Fアンテナ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の板状逆Fアンテナを具える無線通信装置であって、
通信用の回路基板の給電端子に前記板状逆Fアンテナの前記給電部、前記回路基板のグランド端子に前記板状逆Fアンテナの前記短絡部を接続してなる、
無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状逆Fアンテナ及びこれを具えた無線通信装置に関するものであり、より具体的には、小型化及びアンテナ指向性の向上を図ることのできる板状逆Fアンテナ及びこれを具えた無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンや携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯型電子機器には無線通信装置が内蔵されている。また、エアコン、ファンヒーター、コンロなどの電気製品にも無線通信装置を内蔵したものが提案されている。
【0003】
この種の無線通信装置に用いられるアンテナとして、板状逆Fアンテナ(PIFA:Planar Inverted F Antenna)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。板状逆Fアンテナは、長辺Lと短辺Wとを有する矩形の平面形状を有する放射体と、放射体の短辺に給電部、長辺側に短絡部を有する。矩形の板状逆Fアンテナの電流経路長Cは、放射体の長辺Lと短辺Wの和、すなわち、C=L+Wで表わされ、この電流経路長Cが共振周波数λ/4となるよう設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−77072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信装置を搭載する機器の小型化に伴い、無線通信装置にも同様の小型化が求められている。しかしながら、板状逆Fアンテナは、放射体が矩形であるため、その設置面積が大きくなり小型化が困難であった。
【0006】
本発明の目的は、小型化及びアンテナ指向性の向上を図ることのできる板状逆Fアンテナ及びこれを具えた無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の板状逆Fアンテナは、
板状の放射体と、前記放射体の側縁に給電部及び短絡部を具える板状逆Fアンテナであって、
前記放射体は、板状であって平面内で屈曲した少なくとも1の屈曲部を有する。
【0008】
前記放射体は、2の屈曲部を有することが望ましい。
【0009】
前記放射体は、略コ字状形状であり、略平行に延びる平行辺の一方の先端に前記給電部、前記給電部の形成された前記平行辺の側縁に前記短絡部を具えることが望ましい。
【0010】
また、本発明の無線通信装置は、
上記記載の板状逆Fアンテナを具える無線通信装置であって、
通信用の回路基板の給電端子に前記板状逆Fアンテナの前記給電部、前記回路基板のグランド端子に前記板状逆Fアンテナの前記短絡部を接続してなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る板状逆Fアンテナは、放射体に平面内で屈曲する屈曲部を形成したことで、一方の端部から他方の端部に至る電流経路長Cを長く採ることができる。この電流経路長の4倍の波長(λ)が共振周波数となるから、放射体が矩形形状(W+L)の場合に比べて放射体を小さくすることができ、板状逆Fアンテナの小型化を図ることができる。
【0012】
本発明に係る板状逆Fアンテナを具えた無線通信装置は、板状逆Fアンテナの小型化を達成できるから、スマートフォンや携帯電話機、PDAなどの携帯型電子機器には無線通信装置、エアコン、ファンヒーター、コンロなどの電気製品の小型化にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る板状逆Fアンテナの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の板状逆Fアンテナのアンテナ特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の板状逆Fアンテナの放射指向性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る板状逆Fアンテナ10について、図面を参照しながら説明を行なう。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る板状逆Fアンテナ10の斜視図、
図2は平面図である。図に示すように、板状逆Fアンテナ10は、放射体20、給電部30及び短絡部40を具える。放射体20は、導電性の薄金属板、たとえば、銅板やアルミニウム板などから構成することができる。また、回路基板にプリントしても構わない。図示の実施形態では、板状逆Fアンテナ10は、1枚の薄金属板から放射体20、給電部30及び短絡部40を打ち抜き、給電部30と短絡部40を放射体20に対して同方向に略垂直に屈曲して作成している。
【0016】
放射体20は、その平面内で屈曲した少なくとも1の屈曲部21を有する。
図1及び
図2では、屈曲部21,21は2つであり、放射体20は平面視略コ字状である。放射体20は、薄金属板にスリット25を形成し、スリット25を挟んで略平行に延びる平行辺22,23とスリット25の端部に位置し、平行辺22,23どうしを結ぶ繋ぎ辺24を具える。
【0017】
放射体20に屈曲部21を形成することで、後述するとおり、放射体20を流れる電流を放射体20に沿って蛇行させることができるため、電流経路長Cを長く採ることができる。従って、放射体が矩形の場合に比べて、同じ電流経路長C(共振周波数λ/4)を小面積で実現することができ、板状逆Fアンテナ10の小型化を達成できる。
【0018】
給電部30は、一方の平行辺22の先端に設けることができる。図示の実施形態では、給電部30は、平行辺22の先端のスリット25側に設けている。給電部30を放射体20の内側に近い位置に設けることで、無線通信装置に実装される他の回路とのショートを防ぐことができ、回路設計上の自由度を高めることができる。
【0019】
短絡部40は、給電部30の形成された平行辺22の側縁に設けることができる。図示では、短絡部40は、スリット25とは逆側の外側側縁に設けている。
【0020】
一実施形態として、板状逆Fアンテナ10は、
図2に示すように、平行辺22の長さは25.5mm(L
1)、幅は7mm(W
1)、平行辺23の長さは25.5mm(L
2)、幅は15mm(W
2)、繋ぎ辺24の長さは35mm(L
3)、幅は7mm(W
3)である。また、放射体20の厚さは0.3mmである。なお、寸法はこれに限定されるものではなく、たとえば、平行辺22,23は同一寸法ではなく、長さや幅を互いに異なるものにしても構わない。
【0021】
放射体20の電流経路長Cは、
図2に示すように、放射体20の平行辺22,23、繋ぎ辺24の幅方向略中央をとおる経路となるから、
C=(L
1+W
3/2)+(L
2+W
3/2)+(L
3−(W
1+W
2)/2)
=L
1+L
2+L
3−(W
1+W
2)/2+W
3
で表わされる。この電流経路長Cを矩形の放射体で実現するには、外形寸法が約1.5倍大きい放射体を必要とする。すなわち、同じ電流経路長Cを達成するために、本発明の板状逆Fアンテナ10は、放射体20の外形を約33%小型化できる。なお、上記式より、平行辺22,23の幅W
1,W
2を狭くすることで、より長い電流経路長Cを確保できることがわかる。
【0022】
より詳細には、L
1及びL
2:18mm〜33mm、L
3:30mm〜40mm、W
1及びW
2:5mm〜15mm、W
3:5mm〜10mmとすることが望ましい。もちろん、これら寸法は、希望する周波数帯域に応じた電流経路長Cによって決定することができる。
【0023】
給電部30と短絡部40との距離L
4は、周波数帯域に応じて調整することができる。L
4が長くなるほど低周波数帯域に対応し、L
4が短いほど高周波数帯域に対応できる。
【0024】
本発明の板状逆Fアンテナ10は、無線通信装置の回路基板に接続される。具体的には、給電部30が信号を供給する給電端子に接続され、短絡部40はグランド端子に接続される。本発明の板状逆Fアンテナ10は小型化を達成できるから、無線通信装置の小型化も達成することができる。
【0025】
上記した板状逆Fアンテナ10のアンテナ特性と放射指向性について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0026】
図3は、本発明の板状逆Fアンテナ10のVSWR(Voltage-Standing Wave Ratio:電圧定在波比)特性を示している。
図3中、横軸は周波数、縦軸はVSWRである。
図3を参照すると、本発明の板状逆Fアンテナ10は、周波数が924MHzの点で最も効率がよく、VSWRが2以下となる周波数帯域は920から928MHzとなっている。
【0027】
また、
図4は、周波数924.4MHzにおけるH−Y平面、Y−Z平面、Z−X平面の指向性を示している。図を参照すると、本発明の板状逆Fアンテナ10は、水平偏波と垂直偏波共に利得が取れている。
【0028】
すなわち、本発明の板状逆Fアンテナ10は、広い周波数帯域特性を有し、全方位の直線偏波に対応でき、矩形放射体に比して小型化されたアンテナであることがわかる。
【0029】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0030】
図5は、本発明の板状逆Fアンテナ10の放射体20の形状の異なる実施形態である。(a)は屈曲部21が1つの平面視略L字状の放射体20、(b)は屈曲部21が3つの平面視略ロ字状の放射体20である。何れの場合も、放射体20に屈曲部21を設けたことにより、矩形の放射体に比べて放射体20の面積を小さくしつつ、長い電流経路長Cを確保できる。
【0031】
また、
図5(a)に示した略L字状の板状逆Fアンテナ10の放射指向性も、垂直偏波と水平偏波が混在し、
図4と同等の指向性が見込まれる。なお、略L字状の板状逆Fアンテナ10は、屈曲部21が1つであるから、略コ字状の板状逆Fアンテナと同じ電流経路長Cを確保するには、略コ字状の板状逆Fアンテナに比べて大型化してしまうことがある。
【0032】
同様に、
図5(b)に示した略ロ字状の板状逆Fアンテナ10の放射指向性も、垂直偏波と水平偏波が混在し、
図4と同等の指向性が見込まれる。略ロ字状の板状逆Fアンテナ10は、屈曲部21が3つあり、屈曲部が2つの略コ字状の板状逆Fアンテナに比べて同じ電流経路長Cを、さらに小型の形態で確保できる。
【符号の説明】
【0033】
10 板状逆Fアンテナ
20 放射体
21 屈曲部
22 平行辺
23 平行辺
24 繋ぎ辺
30 給電部
40 短絡部
C 電流経路長