(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475666
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20190218BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20190218BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20190218BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20190218BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/84 D
G01B11/30 Z
H01M4/139
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-110434(P2016-110434)
(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公開番号】特開2017-215264(P2017-215264A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年7月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599140770
【氏名又は名称】フロンティアシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 俊治
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−053122(JP,A)
【文献】
特開2014−019148(JP,A)
【文献】
特開平06−247618(JP,A)
【文献】
特開2016−061603(JP,A)
【文献】
特開2017−211325(JP,A)
【文献】
特開2002−090307(JP,A)
【文献】
特開2002−228593(JP,A)
【文献】
特開平05−142164(JP,A)
【文献】
米国特許第08836934(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉のシート状部材の表面の欠陥を検査する欠陥検査装置において、
a) 撮影領域と目視検査領域を有し、前記シート状部材を該撮影領域から該目視検査領域に搬送する搬送路と、
b) 前記撮影領域の上方に配置された、該撮影領域に位置するシート状部材を撮影する撮影部と、
c) 前記撮影部によって撮影された画像を解析することにより前記シート状部材の欠陥候補を検出し、該欠陥候補の位置を特定する欠陥候補検出部と、
d) 前記欠陥候補検出部によって検出され、位置が特定された欠陥候補の位置データおよび該欠陥候補を含む画像データを記憶する欠陥データ記憶部と、
e) 前記目視検査領域に位置するシート状部材に対して、前記欠陥データ記憶部に記憶された欠陥候補の位置データに基づき、前記欠陥候補の位置に対応するシート状部材の箇所に欠陥候補の存在を示す欠陥目印画像である前記欠陥候補の拡大画像を投影する投影部と
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記投影部が、前記欠陥候補の位置から所定の距離だけずれた前記シート状部材の箇所に、前記欠陥候補の拡大画像を投影することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記投影部が、前記欠陥候補の上に重なるような前記シート状部材の箇所に、前記欠陥候補の拡大画像を投影することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の正極シートや負極シート等の枚葉のシート状部材の欠陥の有無を自動で検査する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、正極、負極間をリチウムイオンが移動することにより充放電を行う二次電池で、エネルギー密度が高いことから、ノートパソコンや携帯電話等の携帯情報端末用電源として、また、電気自動車やハイブリッドカーのバッテリーとして急速に普及している。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、正極シートと負極シートをセパレーター層を介して交互に積層して成る積層体を電解液とともに外装体に封入した構造を有する。正極シート及び負極シート(以下、電極シートという。)は、いずれも電極箔(アルミニウム箔(正極)及び銅箔(負極))の上に電極活物質の粉末とバインダーを含むペースト状の電極材料を塗工し、乾燥させた後、所定の形状にスリット加工することにより製造される(特許文献1)。
【0004】
電極シートに塗工された電極材料の厚みが不均一であったり、電極材料に気泡やひび等の欠損や異物の混入等があったりすると、所期の性能のリチウムイオン二次電池を得ることができない。そこで、電極シートを積層する前に枚葉の状態で予め電極シートの欠陥の有無を検査することにより、不良な電極シートがリチウムイオン二次電池の材料として用いられることを防止している。
電極シートの欠陥検査は例えば次のような手順で行われる。
【0005】
まず、電極シートの表面に光を照射し、そのときの該表面をCCDカメラで撮影し、モニタ画面に表示するとともに、電極シート表面の各点における反射光の強度を求める。そして、所定の基準値に比べて反射光の強度が大きい箇所、あるいは小さい箇所を欠陥の可能性がある箇所(欠陥候補箇所)として、モニタ画面に表示されたCCDカメラの撮影画像上に印を付ける。ここまでの工程は、照明装置やCCDカメラ、反射光強度検出部、モニタ等を備える欠陥検査装置が行う。その後、検査員は、モニタ画面の撮影画像上の印の位置からその印に該当する電極シート上の箇所を探し出し、その箇所を目視で詳しく検査して真の欠陥であるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-82182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電極シートの欠陥検査装置では、欠陥を見落としてしまうことを避けるために、反射光強度に基づく欠陥候補箇所の判定基準が厳しく設定されている。そのため、正常である箇所が欠陥候補箇所として判定されることが多く、欠陥候補箇所が見つかった電極シートを検査員による目視検査を経ずにそのまま廃棄することは歩留まりの低下につながる。
【0008】
このような事態を避ける意味で検査員による目視検査は重要であるが、欠陥の中には非常に小さいものもあり、モニタ画面に表示された画像と電極シートを見比べながら、該モニタ画面上に表示されている印の位置に対応する電極シート上の欠陥候補箇所を探し出す作業には時間がかかる。特に、車載用リチウムイオン二次電池のような大型のリチウムイオン二次電池に用いられる電極シートの場合、欠陥候補箇所を正確に短時間で探し出すことは難しかった。
【0009】
なお、ここでは電極シートの欠陥検査を例に挙げて説明したが、液晶テレビやプラズマテレビ、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末の表示パネル等に用いられるガラス板やプラスチック板、プラスチックフィルム等の枚葉のシート状部材の欠陥検査を行う場合も同様である。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、枚葉のシート状部材の欠陥候補箇所を正確に且つ短時間で探し出すことができる欠陥検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明は、枚葉のシート状部材の表面の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
a) 撮影領域と目視検査領域を有し、前記シート状部材を該撮影領域から該目視検査領域に搬送する搬送路と、
b) 前記撮影領域の上方に配置された、該撮影領域に位置するシート状部材を撮影する撮影部と、
c) 前記撮影部によって撮影された画像を解析することにより前記シート状部材の欠陥候補を検出し、該欠陥候補の位置を特定する欠陥候補検出部と、
d) 前記欠陥候補検出部によって検出された結果に基づき、欠陥候補の位置データを記憶する欠陥データ記憶部と、
e) 前記目視検査領域に位置するシート状部材に対して、前記欠陥データ記憶部に記憶された欠陥候補の位置データに基づき、前記欠陥候補の位置に対応して欠陥候補の存在を示す欠陥目印画像を投影する投影部と
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記欠陥検査装置では、撮影領域にあるシート状部材に対して撮影部による撮影が行われ、その撮影画像から欠陥候補が検出されると、目視検査領域にあるシート状部材に対して、欠陥候補の位置に対応するシート状部材の箇所に欠陥目印画像を投影する。
【0013】
上記構成においては、前記欠陥データ記憶部が、前記欠陥候補検出部によって検出された欠陥候補を含む画像データを記憶し、前記投影部が、前記欠陥目印画像として前記欠陥候補の拡大画像を投影することが好ましい。この構成では、小さい欠陥でも容易に目視で確認することができる。なお、欠陥候補の拡大画像をシート状部材に投影する場合は、実際の欠陥候補の上に投影しても良いが、欠陥候補の位置から少しずれた位置に投影しても良い。少しずれた位置に投影する構成にすれば、欠陥候補を目視する際に欠陥目印画像が邪魔になることがない。
【0014】
また、前記欠陥データ記憶部が、前記欠陥候補検出部によって検出された欠陥候補を含む画像データを記憶し、
前記投影部が、前記欠陥目印画像として前記欠陥候補を取り囲む形状の図形画像を投影するようにしても良い。この構成では、欠陥候補を容易に見つけることができ、しかも、欠陥目印画像が邪魔になることもない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の欠陥検査装置によれば、欠陥目印画像が枚葉のシート状部材の上に直接投影されるため、欠陥候補を正確に且つ短時間で探し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る欠陥検査装置の全体構成を示す概略図。
【
図3】目視検査領域にある電極シートに対して欠陥目印画像を表示した例を示し、(a)は欠陥候補を取り囲む形状の図形を表示した例、(b)は欠陥候補の拡大画像を表示した例。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る欠陥検査装置の具体的な実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、枚葉のシート状部材として、リチウムイオン二次電池の負極や正極に用いられる電極シートを例に挙げて説明する。
【0018】
図1は欠陥検査装置100の全体構成の概略図を、
図2は欠陥検査装置100の機能ブロック図を示す。
図1及び
図2に示すように、欠陥検査装置100は、撮影領域と目視検査領域を有し、これら撮影領域及び目視検査領域に電極シート1を搬送するための搬送路10と、搬送路10の上方に配置された撮影部20及び投影部30と、撮影部20によって撮影された画像を表示するモニタ40と、前記画像を解析することにより電極シート1の欠陥候補を検出する欠陥候補検出部50と、制御部60を備えている。
【0019】
搬送路10は、2個の搬送ローラ11,12と、これら搬送ローラ11,12の間に掛け渡されたコンベアベルト13と、図示右側の搬送ローラ12を駆動する搬送用モータ14から構成される。搬送用モータ14により搬送ローラ12が矢印Aで示す方向に回転されることにより、搬送ローラ11,12の上側に位置するコンベアベルト13上に載置された電極シート1が矢印B方向に搬送される。
【0020】
搬送路10の上流側には電極シート1の製造装置200が配置されている。電極シート製造装置200は、一定時間毎に1枚の電極シート1をコンベアベルト13上に排出する。搬送用モータ14は制御部60に接続されており、電極シート製造装置200から電極シートが排出されるタイミングに合わせて制御部60は搬送用モータ14を所定時間回転させる。これにより、電極シート製造装置200から排出された電極シート1が撮影領域に、撮影領域にある電極シート1は目視検査領域に移動される。そのため、本実施形態では、電極シート製造装置200から電極シートが排出される位置と撮影領域、撮影領域と目視検査領域の間は同じ長さに設定されている。
【0021】
撮影部20は、搬送路10の撮影領域の上方に配置されたカメラ21と、該カメラ21の撮影領域を照射する照明装置22と、カメラ21及び照明装置22をコンベアベルト13の幅方向に移動させる移動機構23と、から構成されている。カメラ21は、コンベアベルト13の移動方向に一列に並べられた複数の撮像素子(例えばCCDイメージングセンサ素子やCMOSイメージング素子)を備えたラインセンサから成る。カメラ21の撮影画像は制御部60に入力され、移動機構23は、コンベアベルト13の幅方向に延設されたレール231と、該レール231に移動可能に取り付けられた、カメラ21及び照明装置22を保持する保持部232と、該保持部232をレール231に沿って移動させるモータ(カメラ用モータ233)からなる。
【0022】
投影部30は、目視検査領域全体を投影範囲とするプロジェクタ31から構成されている。プロジェクタ31は制御部60に接続されており、制御部60で作成された欠陥目印画像を目視検査領域に配置された電極シート1上に投影するようになっている。
【0023】
欠陥候補検出部50は、撮影部20から制御部60に送られてくる画像データを受け、該画像データに二値化、比較演算等の画像処理を適用することで電極シート1の欠陥候補(異物、塗工ムラ、気泡、汚れ、ピンホール等の欠陥の可能性があるもの)を検出する。
【0024】
制御部60は、カメラ21及び照明装置22を制御する撮影制御部61と、プロジェクタ31を制御する投影制御部62と、カメラ用モータ233を制御する移動制御部63と、搬送用モータ14を制御する搬送制御部64と、欠陥目印画像を作成する画像作成部65と、欠陥候補検出部50において欠陥候補と判定された箇所の座標位置を算出する位置算出部66と、欠陥候補検出部50で検出された欠陥候補の画像データや欠陥候補の座標位置データ、画像作成部65で作成された欠陥目印画像のデータ等を記憶する記憶部67を備えている。
【0025】
欠陥候補の座標位置は、撮影領域に設定されたXY座標系によって表される。例えばコンベアベルト13の幅方向をX座標軸、搬送方向をY座標軸とするXY座標系の場合、カメラ21が備える複数の撮像素子のY座標値は固定値とされ、カメラ21の移動距離によってX座標値が算出される。
【0026】
欠陥候補検出部50と制御部60の実態は汎用コンピュータ(PC)110であり、中央演算装置(CPU)、メモリ、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)等から構成される大容量記憶装置等を含む。この大容量記憶装置には撮影機の撮影範囲である撮影縦幅と撮影横幅が予め保存されている。PC110には、液晶ディスプレイ等から構成され、各種の情報を表示するモニタ40と、マウスやキーボードから構成され、ユーザが各種の命令を入力する入力部41とが接続されている。欠陥候補検出部50と制御部60は、PC110にインストールされたプログラムを実行することによりソフトウエア的に実現される機能手段である。
【0027】
上記欠陥検査装置100においては、電極シート製造装置200から電極シート1が排出されると搬送用モータ14が駆動し、電極シート製造装置200から排出された電極シート1が撮影領域に、撮影領域にある電極シート1が目視検査領域に、それぞれ移動される。撮影領域に電極シート1が移動されると、撮影部20(カメラ21)によって該電極シート1の上面全体が撮影され、その画像が制御部60に送られる。その画像は欠陥候補検出部50によって処理され、欠陥候補が検出されると、その欠陥候補の位置が位置算出部66によって算出されるとともに画像作成部65によって欠陥目印画像が作成され、欠陥目印画像データ及び位置データが記憶部67に記憶される。
【0028】
一方、目視検査領域に電極シート1が移動されると、投影部30は記憶部67に記憶された欠陥目印画像データ及び位置データに基づき、電極シート1上の欠陥候補の位置に対応する位置に欠陥目印画像を投影する。
図3(a)は欠陥目印画像として、欠陥候補を取り囲む形状の図形画像P1を投影した例、(b)は欠陥目印画像として欠陥候補の拡大画像P2を欠陥箇所の近傍に投影した例を示す。
【0029】
このように、本実施形態では、電極シート1の上面に欠陥目印画像を投影したため、検査員は欠陥目印画像を手がかりに欠陥候補の位置を容易に且つ短時間で探し出すことができる。
【0030】
なお、本発明は上記した実施形態に限らず、適宜の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、撮影部20をラインセンサと移動機構から構成し、電極シート1を停止させた状態で撮影したが、電極シート1を移動させながらラインセンサで撮影するようにしても良い。この構成では、ラインセンサの移動機構を省略することができる。
【0031】
また、ラインセンサに代えてシート状部材の上面の全体を一度に撮影可能なエリアセンサから撮影部20を構成しても良い。
【0032】
さらに、欠陥目印画像を欠陥候補を取り囲む形状の図形画像とした場合、欠陥の種類毎に異なる色や異なる形状の図形画像としても良い。この構成によれば、検査員が欠陥の種類を認識した上で欠陥候補を探すことができるため、その欠陥候補が真の欠陥であるか否かを判断し易くなる。
また、欠陥目印画像は、欠陥候補の種類や形状に関係なく共通の印としても良い。この場合は、欠陥目印画像を欠陥候補の画像に応じてその都度作成する必要がないため、欠陥候補の画像データを欠陥データ記憶部に記憶しなくても良い。
【符号の説明】
【0033】
1…電極シート
10…搬送路
20…撮影部
21…カメラ
22…照明装置
23…移動機構
30…投影部
31…プロジェクタ
40…モニタ
50…欠陥候補検出部
60…制御部
61…撮影制御部
62…投影制御部
63…移動制御部
64…搬送制御部
65…画像作成部
66…位置算出部
67…記憶部
100…欠陥検査装置
200…電極シート製造装置
P1、P2…欠陥目印画像