特許第6475672号(P6475672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6475672緊結部材、連結部材、緊結構造および構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475672
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】緊結部材、連結部材、緊結構造および構造体
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   E02D17/04 A
   E02D17/04 B
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-166536(P2016-166536)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-35503(P2018-35503A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年6月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−116436(JP,U)
【文献】 特開平10−072828(JP,A)
【文献】 実開平06−063637(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続され、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの前記第一側面とは反対側の第二側面に当接し、前記押圧部材側当接部と共に前記腹起しを挟持する緊結部材側当接部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、前記腹起しの下面を支持する支持部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側連結部と前記連結部材によって連結可能な緊結部材側連結部と、
を備えることを特徴とする緊結部材。
【請求項2】
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの前記第一側面とは反対側の第二側面に当接し、前記押圧部材側当接部と共に前記腹起しを挟持する緊結部材側当接部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、前記腹起しの下面を支持する支持部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側開口部と共に前記連結部材が挿入される緊結部材側開口部を有する緊結部材側連結部と、
を備えることを特徴とする緊結部材。
【請求項3】
前記緊結部材側開口部の縁部は、前記押圧部材側開口部の縁部と共に前記連結部材を押圧して、前記連結部材を少なくとも前記腹起しの軸方向と略直交する方向に弾性変形させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の緊結部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載の緊結部材と共に使用される連結部材であって、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入されたときに、少なくとも前記腹起しの軸方向と略直交する方向に縮小するよう弾性変形する、
ことを特徴とする連結部材。
【請求項5】
前記腹起しの軸方向に延びる長尺な板状部材から成ると共に、前記腹起しの軸方向に延びる開口部を有する、
請求項4に記載の連結部材。
【請求項6】
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項1に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側連結部と前記緊結部材側連結部とを連結する連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造。
【請求項7】
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項2または3に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入される連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造。
【請求項8】
請求項4または5に記載の連結部材が使用される、
請求項7に記載の緊結構造。
【請求項9】
腹起しと切梁とを請求項6から8のいずれか1項に記載の緊結構造により緊結した構造体。
【請求項10】
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続され、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側連結部と前記連結部材によって連結可能な緊結部材側連結部と、
前記腹起しの下面に配置され、前記緊結部材側連結部と共に前記腹起しを上下方向から挟持する支持部と、
前記腹起しの前記第一側面側または前記第一側面とは反対側の第二側面側に配置され、前記緊結部材側連結部と前記支持部とを接続する接続部と、
を備えることを特徴とする緊結部材。
【請求項11】
前記支持部には、前記腹起しの突起部に係合する、上方へ屈曲または湾曲した係合部が設けられている、
請求項10に記載の緊結部材。
【請求項12】
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側開口部と共に前記連結部材が挿入される緊結部材側開口部を有する緊結部材側連結部と、
前記腹起しの下面に配置され、前記緊結部材側連結部と共に前記腹起しを上下方向から挟持する支持部と、
前記腹起しの前記第一側面側または前記第一側面とは反対側の第二側面側に配置され、前記緊結部材側連結部と前記支持部とを接続する接続部と、
を備えることを特徴とする緊結部材。
【請求項13】
前記緊結部材側開口部の縁部は、前記押圧部材側開口部の縁部と共に前記連結部材を押圧して、前記連結部材を少なくとも上下方向に弾性変形させる、
ことを特徴とする請求項12に記載の緊結部材。
【請求項14】
前記支持部には、前記腹起しの突起部に係合する、上方へ屈曲または湾曲した係合部が設けられている、
請求項12または13に記載の緊結部材。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の緊結部材と共に使用される連結部材であって、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入されたときに、少なくとも上下方向に縮小するよう弾性変形する、
ことを特徴とする連結部材。
【請求項16】
前記腹起しの軸方向に延びる長尺な板状部材から成ると共に、前記腹起しの軸方向に延びる開口部を有する、
請求項15に記載の連結部材。
【請求項17】
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項10または11に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側連結部と前記緊結部材側連結部とを連結する連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造。
【請求項18】
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項12から14のいずれか1項に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入される連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造。
【請求項19】
請求項15または16に記載の連結部材が使用される、
請求項17に記載の緊結構造。
【請求項20】
腹起しと切梁とを請求項17から19のいずれか1項に記載の緊結構造により緊結した構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材に関する。押圧部材と緊結部材とを連結するための連結部材にも関する。押圧部材と緊結部材とを連結部材によって連結した緊結構造にも関する。腹起しと切梁とを当該緊結構造によって緊結した構造体にも関する。
【背景技術】
【0002】
掘削工事を行う際には、掘削空間の側壁に矢板を設置し、この矢板を押さえるため腹起しを架設すると共に、腹起しを切梁によって支持する。腹起しと切梁とは、例えば特許文献1に示すように締結部材によって緊結される。
【0003】
特許文献1の切梁材の取付方法では、ブラケット5の水平桿5B上に仮置支持された切梁材3の一端31を、その端板31aに開設されたボルト孔及び切梁材取付予定位置3’における腹起し材フランジ21のボルト孔21aに挿通される結合手段としてのボルト7及びナット7aにより腹起し材2に緊結している(特許文献1の段落0015および図4など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−259096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような方法によって腹起しと切梁とを緊結する場合、腹起しにボルト孔を開けるなどの加工を施す必要があり、手間が掛かるという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて成された発明であり、腹起しに切梁を緊結するための加工を施すことなく、腹起しと切梁とを緊結可能な緊結部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続され、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの前記第一側面とは反対側の第二側面に当接し、前記押圧部材側当接部と共に前記腹起しを挟持する緊結部材側当接部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、前記腹起しの下面を支持する支持部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側連結部と前記連結部材によって連結可能な緊結部材側連結部と、
を備えることを特徴とする緊結部材である。
【0008】
請求項2の発明は、
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの前記第一側面とは反対側の第二側面に当接し、前記押圧部材側当接部と共に前記腹起しを挟持する緊結部材側当接部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、前記腹起しの下面を支持する支持部と、
前記緊結部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側開口部と共に前記連結部材が挿入される緊結部材側開口部を有する緊結部材側連結部と、
を備えることを特徴とする緊結部材である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の緊結部材において、
前記緊結部材側開口部の縁部は、前記押圧部材側開口部の縁部と共に前記連結部材を押圧して、前記連結部材を少なくとも前記腹起しの軸方向と略直交する方向に弾性変形させる、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の緊結部材と共に使用される連結部材であって、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入されたときに、少なくとも前記腹起しの軸方向と略直交する方向に縮小するよう弾性変形する、
ことを特徴とする連結部材である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の連結部材において、
前記腹起しの軸方向に延びる長尺な板状部材から成ると共に、前記腹起しの軸方向に延びる開口部を有する、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項1に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側連結部と前記緊結部材側連結部とを連結する連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造である。
【0013】
請求項7の発明は、
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項2または3に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入される連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の緊結構造において、
請求項4または5に記載の連結部材が使用される、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、
腹起しと切梁とを請求項6から8のいずれか1項に記載の緊結構造により緊結した構造体である。
【0016】
請求項10の発明は、
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続され、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側連結部と前記連結部材によって連結可能な緊結部材側連結部と、
前記腹起しの下面に配置され、前記緊結部材側連結部と共に前記腹起しを上下方向から挟持する支持部と、
前記腹起しの前記第一側面側または前記第一側面とは反対側の第二側面側に配置され、前記緊結部材側連結部と前記支持部とを接続する接続部と、
を備えることを特徴とする緊結部材である。
【0017】
請求項11の発明は、請求項10に記載の緊結部材において、
前記支持部には、前記腹起しの突起部に係合する、上方へ屈曲または湾曲した係合部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明は、
軸方向端部に押圧部材を備える切梁と腹起しとを緊結するための緊結部材であって、前記押圧部材、前記腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部と、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部とを備えており、連結部材によって前記押圧部材と連結可能な緊結部材において、
前記腹起しの上面に配置される緊結部材側連結部であって、前記押圧部材側開口部と共に前記連結部材が挿入される緊結部材側開口部を有する緊結部材側連結部と、
前記腹起しの下面に配置され、前記緊結部材側連結部と共に前記腹起しを上下方向から挟持する支持部と、
前記腹起しの前記第一側面側または前記第一側面とは反対側の第二側面側に配置され、前記緊結部材側連結部と前記支持部とを接続する接続部と、
を備えることを特徴とする緊結部材である。
【0019】
請求項13の発明は、請求項12に記載の緊結部材において、
前記緊結部材側開口部の縁部は、前記押圧部材側開口部の縁部と共に前記連結部材を押圧して、前記連結部材を少なくとも上下方向に弾性変形させる、
ことを特徴とする。
【0020】
請求項14の発明は、請求項12または13に記載の緊結部材において、
前記支持部には、前記腹起しの突起部に係合する、上方へ屈曲または湾曲した係合部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項15の発明は、請求項12から14のいずれか1項に記載の緊結部材と共に使用される連結部材であって、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入されたときに、少なくとも上下方向に縮小するよう弾性変形する、
ことを特徴とする連結部材である。
【0022】
請求項16の発明は、請求項15に記載の連結部材において、
前記腹起しの軸方向に延びる長尺な板状部材から成ると共に、前記腹起しの軸方向に延びる開口部を有する、
ことを特徴とする。
【0023】
請求項17の発明は、
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続され、かつ、前記腹起しの上面に配置される押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項10または11に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側連結部と前記緊結部材側連結部とを連結する連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造である。
【0024】
請求項18の発明は、
切梁の軸方向端部に設けられた押圧部材であって、腹起しの第一側面に当接する押圧部材側当接部、および、前記押圧部材側当接部に接続されると共に前記腹起しの上面に配置され、かつ、押圧部材側開口部を有する押圧部材側連結部を備える押圧部材と、
請求項12から14のいずれか1項に記載の緊結部材と、
前記押圧部材側開口部および前記緊結部材側開口部に挿入される連結部材と、
を備えることを特徴とする緊結構造である。
【0025】
請求項19の発明は、請求項17に記載の緊結構造において、
請求項15または16に記載の連結部材が使用されることを特徴とする。
【0026】
請求項20の発明は、
腹起しと切梁とを請求項17から19のいずれか1項に記載の緊結構造により緊結した構造体である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の緊結部材を用いれば、切梁を緊結するための加工を腹起しに施すことなく、腹起しと切梁とを緊結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第一実施形態の緊結部材の斜視図である。
図2】(a)は緊結部材と押圧部材とを連結部材によって連結する前の状態を表す斜視図であり、(b)は緊結部材と押圧部材とを連結部材によって連結すると共に、腹起しと切梁とを緊結した状態を表す斜視図である。
図3】緊結部材の支持部に係合部を設けた状態を表す図である。
図4】(a)および(b)は緊結部材の第二実施形態を表す図であり、(a)は緊結部材と押圧部材とを連結部材によって連結する前の状態を表す斜視図であり、(b)は緊結部材と押圧部材とを連結部材によって連結すると共に、腹起しと切梁とを緊結した状態を表す斜視図である。
図5】(a)は第二実施形態の緊結部材の変形例を表す斜視図であり、(b)は(a)に示す緊結部材と押圧部材とを連結部材によって連結すると共に、腹起しと切梁とを緊結した状態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明について図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。本発明は、以下の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
<第一実施形態>
図1は緊結部材1の斜視図である。図2(a)および(b)は緊結部材1の使用状態を表す斜視図である。図2(a)および(b)に示すように、切梁2と腹起し3とは略直交するよう配置されている。以下では、説明の便宜上、図1の上、下、右上、左下、左上、右下を、それぞれ緊結部材1の上、下、右、左、前、後と表記し、特に断らない限り他の図面でも同様の表記を使用する。図1の前後方向および左右方向はそれぞれ図2に示す切梁2の軸方向および腹起し3の軸方向と略平行であるため、前後方向および左右方向をそれぞれ切梁2の軸方向および腹起し3の軸方向と表記することもある。また、図2(a)および(b)では、切梁2の軸方向一端部側のみ示されており他端部側は省略されているが、他端部側でも図2(a)および(b)に示された構成と同様の構成を採用することができる。
【0031】
本発明の緊結部材1を説明する前に、図2(a)および(b)を参照して切梁2の軸方向端部に設けられた押圧部材4について説明する。押圧部材4は、ピン若しくはボルト等の接続部材により着脱可能に、または、溶接等により着脱不能に、切梁2の軸方向端部に接続されている。押圧部材4は、腹起し3の側面31に当接する当接部41と、腹起し3の上面32に配置される連結部42とを備えている。連結部42は、当接部41に一体的に接続される基部421と、基部421上にボルト等によって着脱可能に取り付けられた取付部材422とから構成されている。取付部材422は、水平に延び、基部421と接続される第一部分423と、第一部分423の左右方向両端部に一体的に接続されると共に上方へ延びる二つの第二部分424(424a、424b)とを有している。取付部材422は、一枚の金属製の板材を折り曲げることにより作製されている。二つの第二部分424a、424bにはそれぞれ、前後方向に延び、後述する連結部材5を挿入するための開口部425(425a、425b)が形成されている。開口部425の前後方向長さは、連結部材5の幅(短手方向長さ)よりも大きく設定されている。なお、取付部材422は、基部421と一体的に形成されていてもよい。
【0032】
図1図2(a)および図2(b)を参照して、緊結部材1の構成を説明する。緊結部材1は、切梁2と腹起し3とを緊結するための部材である。緊結部材1は、当接部11と、当接部11に一体的に接続された支持部12と、当接部11に一体的に接続された連結部13とを備えている。緊結部材1は、一枚の金属製の板材を折り曲げることにより作製されている。
【0033】
当接部11は、上下方向に延びており、腹起し3の側面31とは反対側の側面33(矢板側の側面)に当接する。そして、押圧部材4の当接部41と共に、腹起し3をその両側面31、33から挟持する。
【0034】
支持部12は、当接部11と略直角に接続されており、腹起し3の下面34に当接し腹起し3をその下面34から支持する。
【0035】
連結部13は、腹起し3の上面32に配置される。連結部13は、当接部11と略直角に接続された第一部分131と、第一部分131の左右方向両端部に一体的に接続されると共に上方へ延びる二つの第二部分132(132a、132b)とを有している。第一部分131の中央部には、押圧部材4の第一部分423を収容するための開口部133が形成されている。二つの第二部分132a、132bにはそれぞれ、前後方向に延び、後述する連結部材5を挿入するための開口部134(134a、134b)が形成されている。開口部134の前後方向長さは連結部材5の幅よりも大きく設定されている。
【0036】
図2(a)および図2(b)を参照して、連結部材5について説明する。連結部材5は、長尺な板状の連結部材本体51と、連結部材本体51の短手方向(幅方向)略中央に形成された長手方向に延びる開口部(長孔)52とを有している。連結部材5は金属材料(例えば、鋼)など、弾性変形可能な材料により構成されている。連結部材5には開口部52が形成されているため、短手方向から押圧されたとき、短手方向内側に弾性変形する。
【0037】
図2(a)および(b)を参照して、緊結部材1の使用方法を説明する。緊結部材1は、腹起し3を挟んで押圧部材4とは反対側で、かつ、波形(凹凸状)矢板6の凹部位置に配置される。緊結部材1および押圧部材4を腹起し3に取り付けた状態において、緊結部材1の二つの第二部分132a、132bは、押圧部材4の二つの第二部分424a、424bの外側にそれぞれ位置している。緊結部材1の開口部134と押圧部材4の開口部425との上下方向における位置は略一致している。また、緊結部材1の開口部134と押圧部材4の開口部425とは、前後方向において部分的に重なっている。すなわち、開口部134aの前方側の縁部134aは、開口部425aの前方側の縁部425aよりも前方に配置され、開口部134aの後方側の縁部134aは、開口部425の後方側の縁部425aよりも前方に配置される。開口部134bと開口部425bとの位置関係は、開口部134aと開口部425aとの位置関係と同様である。開口部134と開口部425との重なる部分の長さ(すなわち、開口部134aの後方側縁部134aと開口部425aの前方側縁部425aとの間の間隔、および、開口部134bの後方側縁部134bと開口部425bの前方側縁部425bとの間の間隔)は、連結部材5の幅以下に設定されている。
【0038】
連結部材5は、その厚み方向が上下方向と略一致し、かつ、その長手方向が腹起し3の軸方向と略一致するよう、緊結部材1の開口部134および押圧部材4の開口部425に挿入される。
【0039】
切梁2としては公知の切梁を使用することができ、例えば、水圧式やネジ式の切梁などを使用することができる。また、腹起し3としては公知の腹起しを使用することができ、例えば、アルミ製の角パイプなどを使用することができる。
【0040】
前記の通り、緊結部材1の開口部134と押圧部材4の開口部425との重なる部分の長さは、連結部材5の幅以下であるため、連結部材5をそれらの開口部134、425に挿入したとき、連結部材5の短手方向端部は、開口部134の後方側縁部134a、134bおよび開口部425の前方側縁部425a、425bに当接する。連結部材5によって緊結部材1と押圧部材4とが連結され、腹起し3は緊結部材1の当接部11と押圧部材4の当接部41とによって挟持される。こうして、緊結部材1によって切梁2と腹起し3とが緊結された構造体が完成する。
【0041】
緊結部材1の連結部13および押圧部材4の連結部42は腹起し3の上面32に配置されるため、連結部材5によって連結する際に他の部材との干渉が少なく、連結作業が行い易くなっている。また、連結部材5の短手方向端部は、開口部134の後方側縁部134a、134bおよび開口部425の前方側縁部425a、425bに当接するため、摩擦力などにより連結部材5が簡単には外れないようになっている。
【0042】
緊結部材1の開口部134と押圧部材4の開口部425との重なる部分の長さが、連結部材5の幅よりも小さくなっている場合には、連結部材5は開口部134の後方側縁部134a、134bおよび開口部425の前方側縁部425a、425bから押圧されるため、連結部材5は短手方向(前後方向)内側に圧縮され弾性変形する。弾性変形した連結部材5は元に戻ろうとして、緊結部材1および押圧部材4に対して力を及ぼす。このように、弾性変形した連結部材5は、緊結部材1および押圧部材4と相互に力を及ぼし合っているため緊結部材1と押圧部材4とをより強固に連結することができ、振動などが発生しても簡単に外れてしまうことがない。
【0043】
<第一実施形態の変形例>
図3に示すように、腹起し3の下面34に、下方に突出すると共に軸方向に延びる突起部35が形成されている場合、緊結部材1の支持部12に、突起部35に係合する係合部14を設けてもよい。係合部14は、例えば、支持部12の先端を上方へ折り曲げることにより形成された、屈曲部または湾曲部とすることができる。腹起し3の突起部35に係合する係合部14を設けることにより、支持部12を腹起し3の下面34から外れ難くすることができる。
【0044】
緊結部材1の開口部134の前後方向長さおよび押圧部材4の開口部425の前後方向長さを連結部材5の幅以下に設定すると共に、開口部134と開口部425とが前後方向において略整合(略完全に重なる)するようにしてもよい。
【0045】
連結部材5は、平面視において三角形状または台形状など、その幅が長手方向に沿って拡大するような形状であってもよい。連結部材5のこのような形状により、楔効果によって緊結部材1と押圧部材4とをより強固に連結することができる。連結部材5を第二部分132a側から挿入することを想定すると、連結部材5のうち、開口部134aおよび開口部425aに挿入される部分の幅は、開口部134bおよび開口部425bに挿入される部分の幅よりも大きい。そのため、開口部134aと開口部425aとが重なる部分の長さを、開口部134bと開口部425bとが重なる部分の長さよりも大きくすることが好ましい。
【0046】
押圧部材4の当接部41の下部に、腹起し3の下面34に当接する支持部を設けてもよい。
【0047】
<第二実施形態>
図4(a)および(b)を参照して、緊結部材の第二実施形態について説明する。第一実施形態と同一の部材については同一の符号を付しその説明を省略する。以下では、第一実施形態と相違する点を主に説明する。
【0048】
第一実施形態の緊結部材1では、当接部11と押圧部材4の当接部41とによって腹起し3をその両側面31、33から挟持したが、第二実施形態の緊結部材10では、支持部12および連結部13によって腹起し3を上下方向(上面32および下面34)から挟持する。
【0049】
押圧部材4の連結部42の開口部425は、上下方向に延びており、その長さは連結部材5の幅よりも大きく設定されている。
【0050】
緊結部材10は、当接部11の代わりに、上下方向に延びる弾性を有する接続部15を備えている。接続部15の下部には支持部12が一体的に接続されており、接続部15の上部には連結部13が一体的に接続されている。なお、接続部15は腹起し3の側面33に当接してもよく、あるいは、当接しなくてもよい。第二実施形態の緊結部材10も、一枚の金属製の板材を折り曲げ形成することにより作製される。連結部13の開口部134は上下方向に延びており、その長さは連結部材5の幅よりも大きく設定されている。
【0051】
緊結部材10および押圧部材4を腹起し3に取り付けた状態において、緊結部材10の開口部134と押圧部材4の開口部425とは前後方向において略一致している。また、緊結部材10の開口部134と押圧部材4の開口部425とは、上下方向において部分的に重なっている。すなわち、開口部134aの下方側の縁部134aは、開口部425aの下方側の縁部425aよりも上方に配置され、開口部134aの上方側の縁部134aは、開口部425の上方側の縁部425aよりも上方に配置される。開口部134bと開口部425bとの位置関係は、開口部134aと開口部425aとの位置関係と同様である。開口部134と開口部425との重なる部分の長さ(すなわち、開口部134aの下方側縁部134aと開口部425aの上方側縁部425aとの間の間隔、および、開口部134bの下方側縁部134bと開口部425bの上方側縁部425bとの間の間隔)は、連結部材5の幅以下に設定されている。
【0052】
連結部材5は、その厚み方向が切梁2の軸方向と略一致し、かつ、その長手方向が腹起し3の軸方向と略一致するよう、緊結部材10の開口部134および押圧部材4の開口部425に挿入される。
【0053】
前記の通り、緊結部材10の開口部134と押圧部材4の開口部425との重なる部分の長さは、連結部材5の幅以下であるため、連結部材5をそれらの開口部134、425に挿入したとき、連結部材5の短手方向端部は、開口部134の下方側縁部134a、134bおよび開口部425の上方側縁部425a、425bに当接する。連結部材5によって緊結部材10と押圧部材4とが連結され、腹起し3は緊結部材10の第一部分131と支持部12とによって挟持される。こうして、緊結部材10によって切梁2と腹起し3とが緊結された構造体が完成する。
【0054】
第一実施形態と同様、緊結部材10の連結部13および押圧部材4の連結部42は腹起し3の上面32に配置されるため、連結部材5によって連結する際に他の部材との干渉が少なく、連結作業が行い易くなっている。また、連結部材5の短手方向端部は、開口部134の下方側縁部134a、134bおよび開口部425の上方側縁部425a、425bに当接するため、摩擦力などにより連結部材5が簡単には外れないようになっている。
【0055】
緊結部材10の開口部134と押圧部材4の開口部425との重なる部分の長さが、連結部材5の幅よりも小さくなっている場合には、連結部材5は開口部134の下方側縁部134a、134bおよび開口部425の上方側縁部425a、425bから押圧されるため、短手方向(上下方向)内側に圧縮され弾性変形する。弾性変形した連結部材5は元に戻ろうとして、緊結部材10および押圧部材4に対して力を及ぼす。これにより、緊結部材10の第一部分131が下方に押圧され、第一部分131と支持部12とにより腹起し3をより強固に挟持することができる。また、弾性変形する連結部材5は、緊結部材1および押圧部材4と相互に力を及ぼし合っているため緊結部材1と押圧部材4とをより強固に連結することができ、振動などが発生しても簡単に外れてしまうことがない。
【0056】
なお、緊結部材10では、第一部分131と支持部12とにより腹起し3を上下方向から挟持するため、支持部12を腹起し3の下面34から外れ難くするために、支持部12に係合部14を設けることがより好ましい。
【0057】
<第二実施形態の変形例>
図5に示すように、緊結部材10の接続部15は腹起し3の側面31側(押圧部材4の当接部41と同じ側)に位置するよう構成されていてもよい。例えば、緊結部材10は、左右方向に所定間隔あけて配置された二つの接続部15を備え、二つの接続部15の下部に支持部12がそれぞれ形成されている構造であってもよい。二つの接続部15間には、押圧部材4の当接部41が配置される。このような構成により接続部15が腹起し3の側面31側に配置されるため、接続部15が矢板6と干渉することがなくなり、緊結部材10の取り付けが容易となる。
【0058】
緊結部材1の開口部134の上下方向長さおよび押圧部材4の開口部425の上下方向長さを連結部材5の幅以下に設定すると共に、開口部134と開口部425とが上下方向において略整合(略完全に重なる)するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、10 緊結部材
11 当接部
12 支持部
13 連結部
134 開口部
134a、134b 前方側の縁部
134a、134b 後方側の縁部
134a、134b 下方側の縁部
134a、134b 上方側の縁部
14 係合部
15 接続部
2 切梁
3 腹起し
31 側面
32 上面
33 側面
34 下面
35 突起部
4 押圧部材
41 当接部
42 連結部
425 開口部
425a、425b 前方側の縁部
425a、425b 後方側の縁部
425a、425b 下方側の縁部
425a、425b 上方側の縁部
5 連結部材
51 連結部本体
52 開口部
6 矢板
図1
図2
図3
図4
図5