(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
カーボンブロックは、民生用および工業用の水フィルターの製造を含め、各種の商業的用途を有する可能性がある、濾過基材である。いくつかのカーボンブロック製品は、活性炭、少なくとも1種のバインダー、および場合によってはその他の添加剤を含み、それらを圧縮成形し、融着させて一般的には凝集性の多孔質構造とした複合材料である。
【0003】
いくつかの場合においては、カーボンブロックフィルター製品は、その中を貫通する中空の内腔(それらも円形であってよい)を有する直円柱(すなわち管状物が形成される)として成形してもよい。いくつかの用途においては、水またはその他の流体の流れが、この管状物の壁面を通過するように、一般的には半径方向(外向きまたは内向きのいずれであってもよい)に向くようにしてもよい。多孔質である、このカーボンブロックフィルター製品の中を、流体を通過させることによって、その流体の中の粒状物および化学的汚染物の1種または複数を減少させることができる。
【0004】
カーボンブロックは、活性炭の粉末と粉末のポリエチレンプラスチックバインダーとの混合物を、圧縮トランスファー成形、押出成形、またはいくつかのその他の成形プロセスによって、固体で多孔質の一体構造に転換させることによって、成形することができる。そのような場合においては、活性炭と粉末のポリエチレンプラスチックバインダーとの混合物を、圧縮成形し、加熱し、次いで冷却することにより、ポリエチレン粒子をその混合物に融着させて、不飽和なカーボンモノリス構造への変化を起こさせる。そのような不飽和構造においては、バインダーが、カーボンブロックの細孔を完全に充填すなわち飽和させることはなく、そのためオープンな細孔が残っている。
【0005】
カーボンブロックにそれらオープンな細孔があるために、流体がそのカーボンブロックを通過して流れるのが容易となる。このようにして、カーボンブロックが、その流体の中の粒状汚染物を遮断することによって、その中を通過する流体の流れを濾過することが可能となる。このことは、カーボンブロックによって粒状汚染物を直接遮断するか、またはカーボンブロックの表面上に粒状汚染物を吸着させることにより起こさせることができる。
【0006】
カーボンブロックはさらに、たとえば、カーボンブロックの活性炭の表面の上での化学反応に関わるか、または吸着作用によるか、または活性炭の荷電もしくは極性部位とのイオン交換相互作用を支配することにより、化学的汚染物を遮断してもよい。
【0007】
カーボンブロック構造物は、従来から、たとえばポリエチレンなどのポリオレフィン系ポリマーバインダーを使用して製造されていた。たとえば、いくつかのカーボンブロック構造物は、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)バインダー、または低密度ポリエチレン(「LDPE」)バインダーを使用して製造されてきた。他のカーボンブロック構造物は、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(「(p(EVA))」)バインダーを使用して、製造されてきた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明を実施するための手段]
本明細書における実施形態の一つまたは複数は、そのカーボンブロック構造物に対して、改良された物理的性質および改良された化学的性質の一つまたは複数を付与するように選択された、ポリマーバインダーを含むカーボンブロックを目的とすることができる。そのような実施形態は、溶媒、高温、および高圧に直面する可能性がある工業的用途において、それらのカーボンブロックを使用することを可能とする。
【0012】
いくつかの実施形態においては、ポリマー性粉末として直接合成されて、物理的な粉砕(grinding)および摩砕(attrition)を必要としないポリマーを含んでいてもよい(それらの操作は、極めて高コストとなる可能性がある)。そのようなポリマー性粉末は、通常の粉砕(さらには、極低温粉砕)によって典型的に可能となるものよりも、はるかに細かくなる可能性がある。
【0013】
いくつかの実施形態においては、そのポリマー性粉末が、少なくとも中程度のメルトフローインデックスと、20マイクロメートル未満、15マイクロメートル未満、12マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、さらには約5マイクロメートル(以下)の平均粒径とを有する熱可塑性プラスチックである。平均粒径は、ポリマーの懸濁液について、Mastersizer(登録商標)3000(Malvern製)レーザー粒径分析計を使用して測定する。好ましい熱可塑性ポリマーとしては、そのような小さな粒径を有する、ポリ(ビニリデンジフルオリド)バインダー、ナイロン−11、およびナイロン−12またはその他の奇数ナンバーのポリアミドが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0014】
いくつかの実施形態においては、カーボンブロックに、活性炭粒子のネットワークを支持する、たとえばKynar(登録商標)フルオロポリマー樹脂などのポリ(ビニリデンジフルオリド)(「PVDF」)バインダーが含まれていてもよい。本明細書で使用するとき、「ポリ(ビニリデンジフルオリド)バインダー」および「PVDFバインダー」という用語は、ポリ(ビニリデンジフルオリド)、ポリ(ビニリデンジフルオリド)に関連するポリマー、および少なくとも70重量パーセントのビニリデンジフルオリド単位を含むコポリマーの、1種または複数を含むバインダーを意味していると理解されたい。
【0015】
ポリエチレンベースのバインダーとは異なって、PVDFバインダーは、一般的には、広範囲の溶媒に抵抗性を有しており、120℃を超える温度でも安全に使用することができる。さらに、PVDFバインダーは、20マイクロメートル未満の粒径も含めて、極めて小さな平均粒径で得ることが可能である。いくつかの場合においては、PVDFバインダーが、10マイクロメートル未満、またいくつかの場合においてはさらに約5マイクロメートル(以下)のサイズで入手可能である。
【0016】
(たとえば、高圧濾過のような)いくつかの用途においては、カーボンブロックは、濾過の際に発生する応力に耐えるための高い圧縮強度を有していなければならない。
【0017】
この要件を満たすために、従来からのカーボンブロック製品には通常、かなり高濃度のポリマー性バインダーが含まれている。たとえば、LDPEバインダーを使用して製造されたカーボンブロックには、典型的には、(重量で)16%を超えるバインダーが含まれ、それに対して、UHMWPEバインダーを使用して製造されたカーボンブロックには、典型的には、(重量で)25%を超えるバインダーが含まれている。
【0018】
それとは対照的に、本発明者は、予想もしないことであったが、ある種のPVDFバインダーを使用して製造されたカーボンブロックが、(重量で)わずか3〜14%、好ましくは12%以下、好ましくは10%以下、さらには好ましくは5〜8%のバインダーが含まれるだけで、高い圧縮強度を有することが可能となるということを発見した。
【0019】
したがって、従来技術に比較して、(重量で)顕著に少ない量のPVDFバインダー(いくつかの場合においては1/2〜1/5のバインダー)の使用量でよい。このようにバインダーを減量することで、(たとえばポリエチレンバインダーのコストと比較した場合に)PVDFバインダーに通常伴う、より高いコストの少なくとも幾分かは相殺することが可能である。
【0020】
さらには、高い圧縮強度のカーボンブロックを製造するために必要とされるPVDFバインダーの体積量を(ポリエチレンバインダーの所要量と比較して)、さらに少なくすることもでき、その理由は、PVDFの絶対密度(約1.78グラム/立方センチメートル)が、LDPEの絶対密度(約0.91〜0.94グラム/立方センチメートル)およびUWMWPEの絶対密度(0.93〜0.97グラム/立方センチメートル)のほぼ2倍もあるからである。したがって、高い圧縮強度のカーボンブロックにするのに、ポリエチレンバインダーの場合に比較して、(体積で)1/4〜1/10のPVDFバインダーしか必要としない。
【0021】
カーボンブロックの中におけるバインダーの相対的な体積が、多孔度、透過性、カーボン表面の汚れ、およびカーボンブロック内部の活性炭の品質も含めて、いくつかの性能特性に寄与する。それらの特性のそれぞれが、一般的には、バインダーの相対体積の減少と共に改良される。したがって、必要とされる体積が小さいPVDFバインダーを使用して製造されたカーボンブロックは、以下の性質の少なくとも一つを示すことができる:
(i)実質的にオープンでバインダーを含まない細孔によって、優れた多孔度および透過性が得られる;
(ii)加工の際の、溶融ポリマーによるカーボンの表面の汚れが減少する;
(iii)バインダーによる活性炭の置き換えが減少することによって、カーボンブロック内部の活性炭の品質が向上する。
【0022】
それによって、PVDFバインダーを使用して製造されたカーボンブロックは、従来からの(たとえば、ポリエチレン)バインダーを使用して製造されたカーボンブロックよりも、すぐれた濾過性能を有することができる。多孔度および透過性が改良されると、そのカーボンブロックを通過する液体のための通路がより多く得られる。通路が多くなると、カーボンの表面の汚れが減少し、活性炭の品質が向上することとあいまって、そのカーボンブロックを通過する流体の中の汚染物の、遮断、吸着、および化学反応のためのサイトが多くなる。
【0023】
PVDFバインダーを使用して製造されたカーボンブロックの性能によってさらに、従来からのバインダーを使用して製造された、より大きい従来からのカーボンブロックに比較して、より小さい(たとえば、より薄い)カーボンブロックが、同等の性能を発揮できるようになる。そのようにカーボンブロックがより小さいということによって、製造するための活性炭の量を減らせるために、さらなるコスト低減が可能となる。カーボンブロックがより小さくてよいということはさらに、重量が少なくなり、組み込んだときに占める空間が少なくなるため、より望ましいこととなりうる。
【0024】
いくつかの実施形態においては、適切なグレードのPVDFバインダーを使用することで、高速押出成形機を使用したり、圧縮成形技術を使用したりして、カーボンブロック製品を製造することが可能となる。カーボンブロックの製造には、一般的には、(粉末の形状の)バインダーを活性炭の粉末と混合することが含まれる。それら二つの粉末は、通常、完全に混合されて、実質的に均質な混合物が得られる。次いで、その混合された粉末を、たとえば圧縮トランスファー成形または押出成形を使用して、互いに融着させる。
【0025】
一般的には、より小さな平均粒径を有する粉末の混合物の方が、より大きな平均粒径を有する混合物の場合に比較して、より均質な混合物を与える。たとえば、大きな粒子を完全に混合した混合物は、通常、微細な粉末を同様に混合した混合物よりも不均質になるであろう。すなわち、大きな粒子の混合物の中の小さなサイズのサンプルは、その混合物全体としての組成とは顕著に異なった組成を有している可能性が高い。
【0026】
さらには、完全に混合された混合物の中の一つの粉末の相対的な体積が小さくなるため、その一つの粉末の平均粒径を小さくしない限り、その混合物の均質性もまた低下する可能性がある。この点を説明するために、A、B、Cと名付けた三つの例示混合物の均質性について検討する。
【0028】
混合物A、B、およびCのそれぞれにおいて、粉末2の粒子の体積、平均粒径、および量は一定である。混合物Aに比較して、混合物Bは、粉末1の粒子を体積で1/500しか含んでいない(1000個の粒子に対して、2個の粒子しか含んでいないため)。したがって、完全に混合された混合物Bの均質性は、完全に混合された混合物Aのそれより低くなるであろう。すなわち、混合物Aの場合に比較して、混合物Bの小さなサイズのサンプルは、その混合物全体としての組成とは顕著に異なった組成を有している可能性がはるかに高い。
【0029】
それとは対照的に、混合物Cは、粉末1を、混合物Bの場合と同じ体積で含んでいるが、それらの粒子のサイズが1/1000であり、従って数で言えば、1000倍含んでいる。したがって、完全に混合された混合物Cの均質性は、完全に混合された混合物Bの場合よりも、はるかに高くなるであろう。すなわち、混合物Cの場合に比較して、混合物Bの小さなサイズのサンプルは、その混合物全体としての組成とは顕著に異なった組成を有している可能性がはるかに高い。
【0030】
この例から、混合物中における粉末の平均体積を小さくすることから生じる均質性の低下は、その粉末の平均粒径を小さくすることによって補償することが可能であるということが分かる。
【0031】
先に述べたように、PVDFバインダーを含むカーボンブロックは、従来からのバインダー(たとえば、UHMWPEまたはLDPEバインダー)に比較して、体積で1/4〜1/10のバインダーを含んでいればよい。したがって、混合物の均質性を向上させるためには、粉末のPVDFバインダーが、従来からのバインダーの粒径に比較して、より小さな平均粒径(すなわち、1/4〜1/10のサイズ)を備えていればよい。
【0032】
従来からのバインダー(たとえば、UHMWPEまたはLDPEバインダー)は多くの場合、粉砕または摩砕を用いて粉末にされているため、その結果比較的に粗い粉末となっている。それとは対照的に、粉末のPVDFバインダーの平均粒子直径は、20マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、さらには約5マイクロメートル(以下)とすることができる。
【0033】
そのような小さな粒径は、従来からの技術、たとえば粉砕または摩砕、さらには極低温粉砕でも、容易には達成することはできない。したがって、いくつかの場合においては、粉末のPVDFバインダーは、直接合成されて、物理的な粉砕および摩砕を必要としない。
【0034】
直接的な合成をすることによって、粉末のPVDFバインダーは、微細および超微細な粉末において日常的に入手することが可能である。直接的に合成された粉末のPVDFバインダーは、超高純度の粉末として入手することが可能であり、通常、有害で抽出可能な汚染物を実質的に含んでいない。
【0035】
直接合成法は費用がかかる可能性があり、小さなサイズの粉末のPVDFバインダーのコストを押し上げる可能性がある。幸いなことには、本明細書の教示に従えば、極めて少量のPVDFバインダーを用いてカーボンブロックを製造することができるため、そのような高コストも、あまり問題にはならないであろう。
【0036】
ここで、
図1を参照すると、そこに図示されているのは、一つの実施形態に従ったカーボンブロックフィルター10の概略図である。この実施形態においては、カーボンブロックフィルター10は、中空の内腔14を一般的には貫通させた、直円柱12として成形されている。この実施形態においては、その中空の内腔14は、円形であるため、その結果その円柱は管状物を形成している。いくつかの実施形態においては、そのカーボンブロックフィルター12が他の適切な形状を有していてもよいということは理解されるであろう。
【0037】
いくつかの用途(たとえば濾過用途)においては、水またはその他の流体を、一般的には、円柱12の壁面16を通過させて、半径方向(外向きまたは内向きのいずれであってもよい)に向かわせることができる。たとえば、いくつかの実施形態においては、液体を、内腔14から壁面16を通過させて、外側へ向かわせることができる。カーボンブロックフィルター10の壁面16を通して流体を通過させることによって、その流体の中の粒状物および/または化学的汚染物の1種または複数を減少させる結果が得られることになるであろう。
【0038】
次に
図2を参照すると、そこに図示されているのは、一つの実施形態に従ってカーボンブロックを成形するための方法100のフローチャートである。
【0039】
工程102で、ポリ(ビニリデンジフルオリド)バインダー粉末を活性炭の粉末と混合する。いくつかの場合においては、そのポリ(ビニリデンジフルオリド)バインダー粉末は、20マイクロメートル未満、12マイクロメートル未満、さらには約5マイクロメートルの平均粒径を有しているのがよい。
【0040】
工程104では、バインダーと活性炭の粉末との混合物を加熱する。たとえば、その混合物を、オーブン中で425゜Fまたはその近辺の温度に加熱するのがよい。
【0041】
次いで工程106では、バインダーと活性炭の粉末との混合物を圧縮成形する。いくつかの実施形態においては、その圧縮成形は、混合物を少なくとも部分的に、あるいは全面的に加熱した後に実施すればよい。いくつかの実施形態においては、その圧縮成形を、少なくとも部分的に加熱すると同時に実施してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態においては、その圧縮成形を、その混合物を圧縮トランスファー成形することによって実施してもよい。いくつかの実施形態においては、その混合物の圧縮成形を、その混合物を押出成形することによって実施してもよい。
【実施例】
【0043】
以下の実施例によって、PVDFバインダーを使用したカーボンブロックを製造するための方法を示す。それらの実施例ではさらに、(重量で)極めて少量のPVDFバインダーを含むカーボンブロックが、高圧濾過用途のための圧縮強度の要件を満たすことができるということも示す。その他の態様および利点も示されるであろう。
【0044】
実施例1
PVDFバインダーを用いたトランスファー圧縮成形の実験
PVDFバインダー(Arkema Incorporated,King of Prussia,Pennsylvania、グレード741PVDF)と活性炭(80×325メッシュ、ヤシ殻ベースの活性炭、BET表面積約1200平方メートル/グラム)との一連の混合物を、その2種の粉末を強力に混合することにより製造した。それらの混合物には、それぞれ、8重量%、10重量%、12重量%、および14重量%のPVDFバインダーが含まれていた。それぞれの混合物を、内径2.54”の適切な銅製の型に充填し、425゜Fの予熱オーブンの中に入れた。30分後に、それらの型をオーブンから取り出し、直ちに(まだ熱いうちに)、100ポンド/平方インチよりも高い圧力で圧縮成形にかけてから、放冷した。冷却後に、型からサンプルを抜き出した。
【0045】
それぞれのサンプルから製造されたカーボンブロックは、高圧濾過用途で必要とされるよりも高い圧縮強度を示した。このことは、8重量%という少ないPVDFバインダーを使用しても、高い圧縮強度のカーボンブロックが製造されるということを示している。
【0046】
この実験の際に、予想もしないことであったが、PVDFバインダーを使用したカーボンブロックが、成形ダイの壁面に対して、接着や摩擦を実質的にまったく、またはほとんど有していないということも発見された。押出ダイの表面に対して粉末が移動することによって発生する背圧がほとんどなかったが、このことは、バインダーと活性炭とのこの混合物が、特に高速での、押出成形用途に適しているであろうということを示唆している。
【0047】
それに比較して、この実施例におけるのと同じ手順を使用して製造したポリエチレンベースのカーボンブロック(16重量%のLDPE、MI=6、Equistar Microtheneのグレード51000)は、型の壁面に対して強力な接着性を示し、そのため、カーボンブロックの抜き出しが極めて困難となった。
【0048】
実施例2
極めて低いPVDFバインダー含量を用いた、トランスファー圧縮成形の実験
PVDFバインダー(Arkema Incorporated,King of Prussia,Pennsylvania、PVDFグレード741)と活性炭(80×325メッシュ、ヤシ殻ベースの活性炭、BET表面積約1200平方メートル/グラム)との一連の混合物を、その2種の粉末を強力に混合することにより製造した。それらの混合物には、それぞれ、8重量%、7重量%、6重量%、および5重量%のPVDFバインダーが含まれていた。それぞれの混合物を、内径2.54”の適切な銅製の型に充填し、425゜Fの予熱オーブンの中に入れた。30分後に、それらの型をオーブンから取り出し、直ちに(まだ熱いうちに)、100ポンド/平方インチよりも高い圧力で圧縮成形にかけてから、放冷した。冷却後に、型からサンプルを抜き出した。すべてのサンプルが、5%のPVDFバインダーしか含んでいないサンプルであってさえも、良好な構造的一体性を有していた。しかしながら、さらに少ないバインダーしか含んでいないサンプルでは、擦ると粒子が剥がれてくる表面を有しており、商品としての品質が低いと考えられた。
【0049】
実施例3
押出成形したLDPEカーボンブロックと比較した、押出成形したPVDFカーボンブロックの性能
KYNAR(登録商標)樹脂(PVDFバインダー)を使用して一連のカーボンブロックを製造し、LDPEを使用して製造した、標準的な市販のカーボンブロックと比較した。(重量で)6%、8%、および10%のKYNARを含むカーボンブロックを製造して、(重量で)16%のLDPEを含むカーボンブロックと比較した。カーボンブロックの押出成形は、目標とする3〜4マイクロメートルの平均流量細孔径(MFP)を有する凝集性カーボンブロックを得るのに十分な圧力をかけて実施した。3〜4マイクロメートルの細孔径は、1〜2マイクロメートルの公称ミクロン等級を有する一般グレードのカーボンブロック製品では、典型的なものである。LDPEに比較してPVDFが、押出機の表面に付着しにくいために、PVDFベースの混合物は、カーボンブロックの最終的な形状寸法が同じであれば、LDPEベースの混合物の最大4倍の速度で押出成形することができる。このことによって、製造時の生産性を大幅に向上させることが可能となる。
【0050】
(重量で)8%のKYNAR、10%のKYNAR、および16%のLDPEを含むカーボンブロックの多重(multi−point)窒素吸着等温線の測定を実施して、カーボンのマクロポアとミクロポアの表面上へのバインダーの影響を観察した。サンプルを中程度の温度で高真空にかけてから、表面積測定をした。次の表2に、窒素吸着等温線データの結果をまとめた。
【0051】
【表2】
【0052】
これらの結果から、16%LDPEカーボンブロックに比較して、8%KYNARカーボンブロックでは、1グラムあたりで、47%高いマクロポア表面積と46%高いミクロポア表面積、合わせて全BET表面積で46.7%の改良があったことが分かる。さらに、8%KYNARカーボンブロックでは、16%LDPEカーボンブロックに比較して、1グラムあたりで36%高い細孔体積を有しており、このことは、表面積の結果と符合している。10%KYNARカーボンブロックの結果は、8%KYNARカーボンブロックの結果と16%LDPEカーボンブロックの結果との間に入っていた。
【0053】
表面積は、吸着速度と吸着容量に正の相関があるため、それらの結果は、8%KYNARカーボンブロックが、試験したサンプルの中では最高の性能特性を示したということを表している。
【0054】
(重量で)6%のKYNAR、8%のKYNAR、10%のKYNAR、および16%のLDPEを含むカーボンブロックのサンプルについて、流動多孔度(flow porometry)試験を実施して、平均流量細孔径(MFP)、最大細孔径(泡立ち点)、および総合透過性を評定した。一般的には、透過性では、流体に所定の圧力をかけたときに、その流体がカーボンブロックを通過する流速を測定する。透過性が高いほど、カーボンブロックを通過する流体の流速を高くすることが可能となり、それと共に圧力損失も低下する。カーボンブロックについて測定した最大細孔径(泡立ち点)が、そのカーボンブロックの均一性の目安である。最大細孔径が大きいということは、そのカーボンブロックの中に少なくとも一つの大きなボイドが存在していて、そのために、望ましくない粒状汚染物がその構造を通り抜ける可能性があるということを示している。多孔度試験の結果を、次の表3にまとめた。
【0055】
【表3】
【0056】
それらの結果から、試験したサンプルの中では、8%KYNARカーボンブロックが最大の透過性で、16%LDPEの場合よりも30%高い透過性を有しているということが分かる。さらに、8%KYNARカーボンブロックは、試験したサンプルの中では、最も低い泡立ち点を有していて、このことは、構造的な均質性が良好であることを示している。これらの結果は、試験したサンプルの中では、8%KYNARカーボンブロックが、最良の性能特性を有していることを示している。
【0057】
多重等温線および流動多孔度試験の結果から、8%KYNARカーボンブロックが、16%LDPEカーボンブロックも含めて、試験した他のカーボンブロックのサンプルよりも優れた性能特性を示すことが分かる。いくつかの場合においては、8%KYNARカーボンブロック製品は、16%LDPEカーボンブロック製品に比較して、サイズを35〜40%低減させて、なおかつ同等の性能特性を示すことが可能である。さらに、KYNARとLDPEとでは密度に差があるということは、8%KYNARカーボンブロックには、16%LDPEカーボンブロックよりも72%少ない体積のバインダーが含まれているということを意味している。したがって、カーボンブロック製品において8%KYNARを使用すると、より少ないバインダーで、より小型の製品とすることが可能となり、潜在的にはより安価で、少なくとも同等の性能が得られる。
【0058】
その他の好適なバインダー
いくつかの実施形態においては、多くの他のバインダーの一つが、一般的には凝集性の多孔質構造の中でそのバインダーで支持されている活性粒子(たとえば、活性炭粒子またはその他の粒子)と併用して、ブロック製品(たとえば、カーボンブロック)を成形するのに適している可能性もある。いくつかのそのような好適なバインダーとしては、20マイクロメートル未満の平均粒径、より好ましくは約12マイクロメートル〜1マイクロメートルの間の平均粒径を有する、熱可塑性プラスチックの粉末が挙げられる。好適な熱可塑性ポリマーの粉末はさらに、その粉末が溶融して、粒子を接着して多孔質構造が確実に形成されるように、十分に高いメルトフローインデックスを有しているのがよい。
【0059】
いくつかの場合においては、好適なバインダーとしては、約12マイクロメートル未満の平均粒径を有する、小さなポリアミド粒子(たとえば、ナイロン−11またはナイロン−12の粒子)が挙げられる。PVDFおよびナイロン−11のバインダーは、いずれのポリマーも、強誘電性であり、強分極性であるために、バインダーとして使用するのに特に適しているであろうということに注目されたい。その他の奇数ナンバーのポリアミドたとえばナイロン−7も、同様の性質を有している。そのようなポリマーは、極めて極性が強いため、それらは、カーボンの表面を濡らして吸着材の表面の汚染を招くような傾向が小さいという可能性もある。
【0060】
いくつかの場合においては、その他の適切な熱可塑性ポリマーの粉末を使用して、カーボンブロックまたはその他のブロック製品を成形することもできる。