特許第6475720号(P6475720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475720
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】接合構造を有するゼオライト粒状材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/46 20060101AFI20190218BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20190218BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20190218BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20190218BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190218BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20190218BHJP
   C07C 7/12 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C01B39/46
   B01J20/18 B
   B01J20/30
   B01D15/00 101A
   B01D15/00 K
   B01J20/28 Z
   C07C15/08
   C07C7/12
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-532523(P2016-532523)
(86)(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公表番号】特表2016-540719(P2016-540719A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2014075191
(87)【国際公開番号】WO2015075140
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】1361380
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】500069954
【氏名又は名称】イ・エフ・ペ・エネルジ・ヌベル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ,カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブービエ,リュディビーヌ
(72)【発明者】
【氏名】レフレーブ,フィリベール
(72)【発明者】
【氏名】リュッツ,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ガイ,アン−ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】モロー,フロラン
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−176952(JP,A)
【文献】 特表2011−509903(JP,A)
【文献】 特表2010−529939(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/125660(WO,A1)
【文献】 特開2012−067091(JP,A)
【文献】 特開2012−045463(JP,A)
【文献】 特表2012−533427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
B01D 15/00ー15/42
B01J 20/00−20/34
C07B 31/00−61/00
C07B 63/00−63/04
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1mm以上、1mm以下のサイズであって、三次元的に接合されたゼオライト構造から構成されるゼオライト粒状材料であって、1.0MPa以上である機械的バルク破砕強度を有し
その細孔分布が、以下の不等式1)、2)および3)を満たす
【数1】

[式中、「Vma」はマクロ孔体積を表し、「Vme」はメソ細孔体積を表し、「Vmi」は微小孔体積を表し、「Vg」は粒状材料の全体積を表す。]、
オライト粒状材料。
【請求項2】
FAU構造のゼオライトおよびEMT、LTAまたはMFI構造のゼオライトから選択される少なくとも1つのゼオライトを含む請求項1に記載のゼオライト粒状材料。
【請求項3】
ゼオライトLSX、MSXおよびXから選択される少なくとも1つのゼオライトを含む請求項1または2に記載のゼオライト粒状材料。
【請求項4】
ゼオライト粒状材料の全重量に対して、94重量%を超えるゼオライトを含む請求項1から3のいずれか一項に記載のゼオライト粒状材料。
【請求項5】
少なくとも以下の工程:
a) 少なくとも1つのゼオライトの結晶を、少なくとも80重量%のゼオライト化可能な粘土を含む粘土バインダーを混合する工程、
b) アルカリ塩基性溶液と接触させる工程、
c) 閉じられた密封容器内で、自生圧力に少なくとも等しい圧力で、懸濁液を80℃から600℃の間の温度にする工程、
e) このように得られたゼオライト粒状材料を洗浄し、乾燥させる工程、および
f) 100℃から400℃の間の温度まで加熱することによって工程e)で得られたゼオライト粒状材料を活性化する工程
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のゼオライト粒状材料を製造する方法。
【請求項6】
工程c)および工程e)の間に、d)バリウムイオン、またはバリウムイオンおよびカリウムイオンの溶液と接触させることにより、工程c)の反応媒体中に含まれるカチオンをカチオン交換する工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)で使用される粘土バインダーは、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトおよび/またはメタカオリンからの粘土または粘土の混合物を少なくとも80重量%含有し、他の無機バインダーを含有していてもよい請求項またはに記載の方法。
【請求項8】
並流または向流液相分離方法における吸着材料としての、請求項1からのいずれか一項に記載の少なくとも1つのゼオライト粒状材料の使用。
【請求項9】
8個の炭素原子を含む異性体混合物を含有する芳香族画分を分離する方法であって、請求項1からのいずれか一項に記載の少なくとも1つのゼオライト粒状材料が使用される当該方法。
【請求項10】
擬似移動床でキシレンを分離する液相法である請求項に記載の方法。
【請求項11】
8個の炭素原子を含む芳香族異性体画分から高純度のパラ−キシレンを回収する方法である請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト構造を有する吸着剤の分野、より詳細には凝集体の形のゼオライト構造を有する吸着剤の分野に関する。本発明はまた、ゼオライト構造を有する前記凝集体の合成、および気体または液体混合物の分離のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトの合成は、通常、粉末形態である結晶をもたらし、その工業規模での使用は特に困難である。具体的には、現在、数ナノメートルから数マイクロメートル(これらのサイズはゼオライトに最適な吸着能力を与えるために必要とされる)の範囲のサイズを有するゼオライト結晶を合成する方法が知られている。しかし、これらの小さな結晶に関連する多くの欠点があり、その中では粉状の粉末の取り扱いが困難であること、および使用中のかなりの圧力損失を挙げることができる。
【0003】
これらの欠点を克服するために、これらの結晶の凝集形態、例えば、粒子、糸、ビーズ、または他の凝集形態を使用することが提案された。粉末形態のゼオライト結晶からのそのような凝集体の製造は今日よく知られており、科学文献および特許文献が、特に押出成形、ペレット化および当業者に知られた他の凝集技術により、ゼオライト凝集体を製造する多数の例を提供する。
【0004】
これらの凝集体は、通常、数十マイクロメートル、または数百マイクロメートルですらある、または数ミリメートルですらあるオーダーのサイズであり、前に定義されたゼオライト結晶のような粉末状の物質に固有の欠点を有さない。
【0005】
これらの凝集体は、プレートレット、ビーズ、押出物または他の形態であろうと、一般に(吸着に関して)活性な要素を構成するゼオライト結晶および凝集バインダーから構成されている。
【0006】
この凝集バインダーは、凝集構造において相互に結晶の凝集性を確保することを意図しているが、凝集体が振動、圧力および動き等の大きなおよび/または頻繁な変動のような多数のストレスを受けるそれらの工業的使用中に発生する可能性がある破砕、クラックまたは破壊のリスクを回避または少なくとも最小にするために前記凝集体に十分な機械的強度も提供しなければならない。従って、これらの様々なストレスを受けたゼオライト凝集体が凝集性のままであり、前述の欠点につながる微粉末粒子を生成しないことは非常に重要である。
【0007】
また、吸着による分離方法の性能に影響を与える重要な要因としては、特に、吸着の選択性、吸着容量、および様々な化合物の吸着および脱離速度を定義する物質移動速度論が挙げられる。RuthvenがPrinciples of Adsorption and Adsorption Processes、John Wiley & Sons、(1984)、326および407頁というタイトルの文献に示しているように、吸着剤は、混合物中の化学種の効率的な分離を達成するために十分な数の理論段を確保するよう良好な物質移動特性を有する必要がある。
【0008】
凝集形態のゼオライト吸着剤の場合には、全体の物質移動は結晶内拡散抵抗および結晶間の拡散抵抗の加算に依存する(Ruthven、同書243頁を参照されたい)。結晶内拡散抵抗は結晶の半径の二乗に比例し、吸着によって分離されるべき分子の結晶内拡散率に反比例する。(また、マクロ多孔性抵抗とも呼ばれる)結晶間の拡散抵抗は、それ自身、凝集体の半径の二乗に比例し、マクロ多孔性中の分離されるべき分子の拡散率に反比例する。
【0009】
従って、物質移動を改善するために、ゼオライト結晶の直径を最小化し、および/または凝集体の直径を最小化することが求められる。しかし、場合により小サイズ化結晶を含むそのような小サイズ化した凝集体はより脆弱であり、凝集体における相互の結晶の凝集性を強化するために凝集バインダーの含有率を増加させることが必要になる。しかし、吸着に関し不活性である凝集バインダーの含有率を増加させると、非凝集粉末の形態である単独で使用されるゼオライト結晶と比較して凝集体の吸着容量を比例的に低下させる。
【0010】
従って、同時にそれらの使用のために必要な吸着特性を維持しつつ、良好な物質移動特性、典型的には0.1mmから1mmの間の工業規模での使用に適合するサイズ、および非常に大きい機械的強度を組み合わせる凝集体の形態のゼオライト吸着剤を作成する必要性が現れた。
【0011】
従来技術はいくつかの可能性を提供し、その中で第一の可能性は工業的な分離方法において直接取り扱うことができるよう十分に大きいゼオライト単結晶を調製することにある。大きいサイズのゼオライト単結晶の製造は、文献において議論されてきた。特に、Qiuら(Micropor. Mesopor. Mater.、21(4−6)、(1998)、245−251)は150μmまでの範囲のサイズを有するフォージャサイト構造のゼオライト単結晶が、核形成阻害剤の存在下で高純度の試薬を使用することにより得ることができることを示す。このタイプの合成の工業化について予見できる難点の他に、主な実施上の難点なしに、特に液相で、工業的方法に使用するのに要求される典型的なサイズであろう0.1mmから1mmの間のサイズを有するゼオライト結晶を合成することは不可能と思われる。また、これらの材料のマクロ多孔性およびメソ多孔性は実質的にゼロであるので、凝集体、または結晶モノリスの形態のゼオライト吸着剤のサイズに対応する特性距離にわたり、ゼオライト相に吸着/分離されるべき化合物の非常に悪い輸送を観察する可能性が高いと思われる。
【0012】
特許出願US2012/0093715号およびUS2013/0052126号は、モノリシックゼオライト構造が階層的な多孔性構造によって形成することができることを教示する。提案された方法は、加水分解により、ゼオライト前駆体のゲルを形成することにある。このゲルは、ゲルを結晶化し、モノリシックゼオライト構造に凝集させるのに十分に高い温度および長い時間加熱される。反応媒体へのポリマーの添加により、階層的な多孔性を有する構造を有するモノリシックゼオライト構造体の製造がもたらされる。
【0013】
それにもかかわらず、これらの特許出願に記載されたモノリシックゼオライト構造は、水銀圧入により測定されたマクロ多孔性およびメソ多孔性を有するが、これらは有機構造化剤を使用しない場合には低い。従って、単結晶の場合のように、構造内の物質移動が比較的乏しいことが懸念され得る。高分子有機剤を使用する場合には、および有機剤を収縮させる工程が必要であるという事実の他に、この固体は、対照的に非常に高い多孔性を有する。
【0014】
このため、材料の機械的強度が比較的乏しく、吸着剤の単位床体積当たりの吸着容量も低いということが懸念される。
【0015】
特許出願WO2000/000287号も、その多孔性が方法の終了時に除去されなければならない有機樹脂を使用することによって作成され、制御される無機マクロ構造の製造を記載する。
【0016】
上記の全ての特許出願は、詳述された方法が製造工程中に追加のコストおよび追加の除去工程を含む有機剤の使用を必要としているため、不経済なようである。
【0017】
階層的多孔性を有する13Xゼオライトモノリスの製造もAkhtarおよびBergstroem、(J. Am. Chem. Soc, 94(1),(2001),92−98)に記載されている。著者らは、濃縮され、ポリエチレングリコールを添加することによって安定化された13Xゼオライト粉末のコロイド懸濁液の成形によって、素地として知られる材料を得ることが可能になり、この材料は、800℃での「フラッシュ」熱処理後に、階層的多孔性を有するモノリスをもたらし、前記モノリスは強く、かつ対応する粉末(ゼオライト結晶)のCO吸着容量に近いCO吸着容量を有する。
【0018】
記載された方法(成形)を介して得られたこれらの比較的大きい材料(特徴的なサイズが10mmより大きいものとして示される)は、実際、気相処理に適するようであり、物質移動抵抗の本質は微小孔にある。しかし、このような材料が液相用途に非常に効率的であることは疑わしいおそれがあり、またはマクロ−メソ多孔性における物質移動も最適化されなければならない。
【0019】
従って、機械的強度が高く、気相および/または液相、好ましくは液相における吸着容量が大幅に改善されている非粉末状ゼオライト吸着剤材料に対する必要性が未だ存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0093715号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0052126号明細書
【特許文献3】国際公開第2000/000287号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Ruthven、Principles of Adsorption and Adsorption Processes、John Wiley & Sons、(1984)、326および407頁
【非特許文献2】Qiuら、Micropor. Mesopor. Mater.、21(4−6)、(1998)、245−251
【非特許文献3】AkhtarおよびBergstroem、J. Am. Chem. Soc, 94(1),(2001),92−98
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、本発明の第1の目的は、高い機械的強度、マクロ孔およびメソ孔で最適化された物質移動を有し、低い製造コストで容易に工業化が可能な材料の全体積にわたって浸透するゼオライト構造から構成されたゼオライト粒状材料を提供することである。他の目的は以下の本発明の説明から現れてくるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、種々の上記目的を満足し、従来技術で知られている吸着剤の欠点および短所の全てまたは少なくとも一部を克服することを可能にするそのようなゼオライト粒状材料を製造することに成功した。
【0024】
従って、第1の態様によれば、本発明の主題は、高い機械的強度を有し、浸透するゼオライト構造を有し、即ち、前記材料の全体積にわたって接合集合体を形成するゼオライト粒状材料である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】例1に対応する非接合ゼオライト粒状材料を示す、倍率5000の画像である。
図1b】例1に対応する非接合ゼオライト粒状材料を示す、倍率10000の画像である。
図2a】実施例2に対応する接合ゼオライト粒状材料を示す、倍率5000の画像である。
図2b】実施例2に対応する接合ゼオライト粒状材料を示す、倍率10000の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
より詳細には、本発明は、典型的には0.1mmから1mmの間(限界値含む)の、浸透構造の小サイズゼオライト粒状材料であって、そのため材料のマクロ孔およびメソ細孔内ならびにゼオライト相中で、液相または気相、好ましくは液相で、吸着による分離が望まれる分子の最適な輸送を確実にし、非常に高い機械的強度を提供する特定の構造を有するゼオライト粒状材料に関する。
【0027】
明細書で後述するように、本発明に係るゼオライト粒状材料は、1.6mm未満の凝集体に適応したシェル法シリーズSMS1471−74により測定される、高い機械的バルク破砕強度(BCS)を有する。本発明のゼオライト粒状材料のBCSは一般的に1.0MPa以上であり、より一般的には1.5MPa以上であり、好ましくは2.0MPa以上であり、典型的には2.1MPa以上である。
【0028】
用語「前記材料の体積全体にわたって接合された集合体」は好ましくは円弧によって三次元的に接合された、三次元的に接合された構造、即ち、ゼオライト構造の点の任意の対が経路で接合続されていることを意味し、用語「経路」は、トポロジーで使用されたその数学的な定義において理解され、このため全体としての機械的応力を支持する「力のチェーン」のネットワーク密度を増加させる。
【0029】
本発明の目的に対し、いくつかの研磨断面を準備し、走査型電子顕微鏡(SEM)で調べる。5000から10000の間の倍率で、様々な研磨断面上で10個の画像を撮影し、接合集合体を形成する表面を10個の画像のそれぞれについての画像解析または任意の他の適切な手段で評価する。接合表面の比率(10個の画像の平均)が各画像上において材料で占められる表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%である場合には、本発明の粒状ゼオライト材料は、「前記材料の全体積にわたって接合された集合体」であると考えられる。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、ゼオライト粒状材料は、開放されたマクロ多孔性を有する。用語「開放されたマクロ多孔性」は粒状材料の外表面からアクセス可能な多孔性を意味し、そのような多孔性は、当業者に周知のポロシメトリー手法である、「水銀圧入」法を介して特徴付けることができる。
【0031】
本発明の説明において、用語「サイズ」は対象物の数平均直径、またはそれが球状でない場合には数平均最大寸法を意味する。本発明のゼオライト粒状材料は、典型的には0.1mmから1mmの間、好ましくは0.2mmから1mmの間、特には0.3mmから0.8mmの間、より一般的には0.4mmから0.6mmの間(限界値含む)のサイズを有する。
【0032】
本発明のゼオライト粒状材料は、マクロ孔、メソ細孔および微小孔を含む。用語「マクロ孔」は、その開口が50nmを超える、好ましくは50nmから400nmの間、より好ましくは50nmから300nmの間である細孔を意味する。用語「メソ細孔」は、その開口が2nmから50nmの間(限界値含まない)の細孔を意味する。用語「微小孔」は、その開口が2nm未満、典型的には厳密に0より大きく、2nm以下である細孔を意味する。
【0033】
本発明に係る粒状材料はゼオライト材料であり、それがFAU構造のゼオライトから選択される、特にゼオライトLSX、MSX、X、Y、および構造EMT、LTAまたはMFIのゼオライトから選択される少なくとも1つのゼオライトを含むことを示す。これらのゼオライトの中でも、好ましいものは、ゼオライトLSX、MSXおよびX、より好ましくはゼオライトXから選ばれ、ここでゼオライトXと1つ以上の上で挙げた他のゼオライトとの混合物は除外されない。
【0034】
原則として、本発明のゼオライト粒状材料は、ゼオライト粒状材料の全重量に対して、94重量%を超えるゼオライト、好ましくは96重量%から98重量%の間(限界値含む)のゼオライトを含む。
【0035】
好ましい実施形態によれば、ゼオライトは、一般には10nmから1500nmの間、好ましくは100nmから1200nmの間、より好ましくは200nmから1100nmの間、最も特に好ましくは400nmから1000nmの間(限界値含む)のサイズを有する結晶の形態である。
【0036】
本発明のゼオライト粒状材料は特定の細孔分布によっても特徴付けられ、そこでマクロ孔体積およびメソ細孔体積は水銀圧入によって測定され、微小孔体積は窒素吸着によって測定される。用語「細孔分布」は、細孔直径の関数としての細孔体積の分布を意味する。また、本発明の説明では、用語「Vma」はマクロ孔体積を表し、用語「Vme」はメソ細孔体積を表し、用語「Vmi」は微小孔体積を表す。「Vg」は粒状材料の全体積を表す。
【0037】
本発明の特に最も好ましい実施形態によれば、ゼオライト粒状材料の細孔分布は、以下の不等式1)、2)および3)を満たす:
【0038】
【数1】
【0039】
本発明のゼオライト粒状材料の特定の細孔分布は、同時に最適な吸着容量を維持しながら、吸着によって分離されるべき化合物の、粒状材料外部からゼオライト構造への効率的な輸送を可能にするように、上記で定義された比率に応じて、微小孔体積、メソ細孔体積およびマクロ孔体積が調整される材料を記載する。
【0040】
この特定の細孔分布とゼオライト構造の接合特性との組み合わせにより、一方で非常に良好な液体または気体分離特性、他方で結晶間のブリッジ(またはアーチ)の存在のおかげで非常に良好な機械的強度を前記材料に付与することが可能になる。
【0041】
具体的には、圧縮によってまたは剪断力を及ぼすことによって結晶の集合体が要求される場合には、この集合体内でそこから生じる力の分布は非常に不均一であることが知られている。具体的には、いくつかの結晶はほとんど応力を受けず、一方全ての応力が他にかかる。
【0042】
結晶の凝集によって調製された材料を使用して、同じ性質のアーチまたはブリッジを介して接合されたゼオライト結晶の統一集合体の作成によって、全ての応力を支持する「力のチェーン」のネットワーク密度が増加し、これにより前記ゼオライト材料の機械的な強度を大幅に補強し、ゼオライト材料に非多孔性材料と同様の剛性を付与する。
【0043】
従って、本発明のゼオライト粒状材料は、液相または気相が粒子外部からミクロ多孔性へ、およびその逆へ、吸着によって分離されるべき化合物を輸送するために循環するマクロ多孔性およびメソ多孔性を含む。
【0044】
このマクロ多孔性は、より小さいサイズの細孔を通って循環することなく、外部から微細孔の表面へ、およびその逆へ効率的な輸送を可能にし、即ち、マクロ孔は微小孔へのおよび微小孔からの化合物の輸送のための主要な細孔である。
【0045】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも以下の工程を含む、ちょうど定義されたようなゼオライト粒状材料を製造する方法に関する。
a) 少なくとも1つのゼオライトの結晶を、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%のゼオライト化可能な粘土を含む粘土バインダーおよび場合によりシリカ源と混合する工程、
b) アルカリ塩基性溶液、典型的には水酸化ナトリウム溶液または水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの混合物と接触させる工程、
c) 閉じられた密封容器内で、自生圧力に少なくとも等しい、典型的には自生圧力から20バールの間の圧力で、懸濁液を典型的には80℃から600℃の間、好ましくは80℃から150℃の間の温度にする工程、
d) バリウムイオン、またはバリウムイオンおよびカリウムイオンの溶液と接触させることにより、工程c)の反応媒体中に含まれるカチオンを場合によりカチオン交換する工程、
e) このように得られたゼオライト粒状材料を洗浄し、乾燥させ、場合により所望のサイズまで形成する少なくとも1つの工程、および
f) 一般には100℃から400℃の間、好ましくは200℃から300℃の間の温度まで加熱することによって工程e)で得られたゼオライト粒状材料を活性化する工程。
【0046】
工程a)のゼオライト結晶および粒状材料中のゼオライト結晶のサイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により、少なくとも5000の倍率で一連の画像を撮影することによって測定される。次いで少なくとも200個の結晶の直径が専用の画像解析ソフトウェアを用いて測定される。精度は3%のオーダーである。
【0047】
本発明の文脈において使用される結晶は、好ましくは1.5μm以下、好ましくは1.2μより厳密に小さい、より良好には1.1μm以下の数平均直径を有する。
【0048】
上記に示したように、1.00から1.50の間、好ましくは1.05から1.50の間、さらにより好ましくは1.10から1.50の間(限界値含む)の、X線蛍光化学分析により測定されたSi/Al原子比を有するフォージャサイト構造のゼオライト結晶を使用することが好ましい。
【0049】
工程a)の間、ゼオライト結晶および粘土に加えて、特に使用されるゼオライトがゼオライトXである場合には、例えば、シリカのような1つ以上の添加剤を添加してもよい。シリカの任意な供給源は、ゼオライト合成の専門家である当業者に知られている任意の種類のものとすることができ、例えば、コロイド状シリカ、珪藻土、パーライト、焼成灰(「フライアッシュ」)、砂、または固体シリカの他の形が挙げられる。
【0050】
従って、工程a)で使用されたゼオライト結晶は、例えば、NaXゼオライト(または13X)の場合のように、主としてあるいはもっぱらナトリウムカチオンを含むゼオライトX結晶の合成から有利に導くことができるが、NaX形態における合成および工程a)でのその使用の間に1つ以上のカチオン交換を受けた結晶を使用することは本発明の文脈からの逸脱を構成しない。この場合には、カチオン交換の工程d)は結果的に不要となる。
【0051】
工程a)で使用される粘土バインダーは、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトおよび/またはメタカオリンからの粘土または粘土の混合物を少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、より具体的には少なくとも96重量%含有し、ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライトのような他の無機バインダーを含有していてもよい。
【0052】
使用される粘土およびゼオライトの割合は、典型的には、従来技術のものであり、即ち、95重量部から80重量部のゼオライト当たり5重量部から20重量部の粘土である。
【0053】
いずれの場合でも、粘土はその粗製状態で使用することができ、または予め、例えば、焼成、酸処理、化学修飾等から選択される1つ以上の処理を施すことができる。
【0054】
一実施形態によれば、使用される粘土がカオリンである場合、有利には工程b)の前に、カオリンをメタカオリンに変換するために、一般に500℃から600℃の間の温度で工程a)で得られた混合物の焼成が行われる。この原理は、D.W. Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」、John Wiley and Sons、ニューヨーク、(1973)、314−315頁に概説されている。
【0055】
アルカリ塩基性溶液と接触させる工程b)は、典型的には、アルカリ塩基性溶液中に工程a)で得られた混合物を浸漬することにより行う工程であり、アルカリ塩基性溶液は、一般に水溶液、例えば、水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液である。一般に、工程b)のアルカリ溶液の濃度は0.5Mから5Mの間である。
【0056】
この工程b)は、室温より高い温度、典型的には室温(即ち、約20℃)からアルカリ溶液の沸点の間の温度で、冷たい状態でまたは熱い状態で、好ましくは熱い状態で行われる。
【0057】
本発明の方法の1つの特徴によれば、この浸漬は、加圧下で,典型的には自生圧力下で工程c)を行うために、閉じられた密閉容器内で行われる。1つの変形例として、外部加圧手段を想起することができ、この場合、圧力は少なくとも自生圧力から20バールの間である。
【0058】
乾燥後の活性化は、当業者に公知の方法に従って、例えば、一般には100℃から400℃の間、好ましくは200℃から300℃の間の温度で、従来の方法で行われる。この活性化工程f)の目的は、粒状材料の含水量および強熱減量を想起された使用のための最適なレベルに設定することである。これは一般に、所望の含水量および強熱減量の関数として決定された時間、典型的には1から6時間の間、200℃から300℃の間で優先的に実行される熱活性化によって行われる。
【0059】
本発明の方法は、工程e)の間に、場合によりゼオライト粒状材料を所望のサイズに形成する少なくとも1つの工程を含み、この工程は当業者に公知の任意の手法に従って、例えば、造粒プレート、ミル粉砕、破砕等、好ましくは破砕に従って実行することができる。
【0060】
本発明の方法はまた、当業者に知られている任意の手法に従って、例えば、押出、圧縮、凝集等に従って行うことができる1つ以上の任意の形成工程を含むことができる。これらの形成工程は、工程a)、b)、c)、d)、e)またはf)のどれかまたはいくつかの後に行うことができる。工程a)、b)、c)、d)、e)またはf)の後、好ましくは工程a)、b)またはc)の後にただ一度形成工程を行うことが好ましい。
【0061】
形成工程は場合により凝集バインダーを利用することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、前記バインダーは、場合によりゼオライト化可能な粘土または粘土の混合物を少なくとも80%を含み、最大5%までの添加剤、および凝集材料の成形のための量の水を含む。上記のように、ゼオライト粒状材料はこのように0.1mmから1mmの間のサイズを有するビーズ、押出物等に形成することができる。
【0062】
本発明に係るゼオライト粒状材料は、液相中での化合物の分離方法、特に、前記材料が高い機械的応力にさらされる方法、例えば、並流もしくは向流液相分離方法、より具体的に擬似移動床液相分離方法に特に適している。本発明によるゼオライト粒状材料は、液相中でキシレンを分離する方法に特に最も適している。
【0063】
従って、さらに別の態様によれば、本発明は、並流または向流液相分離方法、より具体的には擬似移動床液相分離方法、典型的には8個の炭素原子を含む芳香族異性体の混合物を含む芳香族画分を分離する方法、より具体的には擬似移動床においてキシレンを分離する液相方法、最も具体的には8個の炭素原子を含む芳香族異性体画分から高純度のパラ−キシレンを回収する方法における吸着材料としての、ちょうど定義された少なくとも1つのゼオライト粒状材料の使用に関する。
【0064】
最後に、本発明はまた、8個の炭素原子を含む異性体混合物を含有する芳香族画分を分離する方法、より具体的には、擬似移動床でキシレンを分離する液相法、最も具体的には特許出願WO2009/081024号に記載されているように8個の炭素原子を含む芳香族異性体画分から高純度のパラ−キシレンを回収する方法であって、そこでは上述した通りである少なくとも1つのゼオライト粒状材料が使用される方法にも関する。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は本発明の主題を説明することを可能にし、純粋に手引きとして与えられるが、本発明の様々な実施形態を限定することを決して意図するものではない。
【0066】
ゼオライト粒状材料中のゼオライト画分の量は、略語XRDによって当業者に知られているX線回折による分析によって測定される。この分析は、Bruekerブランドの機器上で実行され、その後Brueker社のTOPASソフトウェアを用いてゼオライト画分の量を評価する。
【0067】
ゼオライト粒状材料は、ゼオライト粒状材料の元素化学分析により、より正確には波長分散型分光器(WDXRF)、例えば、Brueker社のTiger S8上で、規格NF EN ISO 12677:2011に記載されているようにX線蛍光化学分析により、Si/A原子l比およびカチオン交換率について評価した。X線蛍光スペクトルは、定量的および定性的の両方の正確な決定を与える元素の化学的組み合わせにほとんど頼らないという利点を有する。各酸化物SiOおよびAlならびにナトリウム、カリウム、バリウム酸化物の較正後、0.4重量%未満の測定の不確実性が慣習的に得られる。Si/Al原子比の測定の不確実性は±5%である。
【0068】
試料にカメラの対物レンズの前を通過させるベルトコンベアを使用して、規格ISO 13322−2:2006に従った画像解析による凝集サンプルの粒度分布の分析により、粒状材料のサイズを決定する。次いで、対象物のサイズ(数平均直径)を、規格ISO 9276−2:2001を適用することにより、粒度分布から計算する。精度は、本発明のゼオライト粒状材料のサイズ範囲に対して0.01mmのオーダーである。
【0069】
マクロ孔体積およびメソ細孔体積を水銀圧入ポロシメトリーにより測定する。マイクロメリティクス社からのオートポア(R) 9500水銀ポロシメーターをマクロ孔およびメソ細孔に含まれる細孔容積の分布を分析するために使用する。
【0070】
ASTM D4284−83を参照する機械の操作マニュアルに記載された実験方法は、予め秤量した吸着剤(測定すべきゼオライト粒状材料)(既知の強熱減量)の試料をポロシメーターセル内に配置し、その後予め脱気(30μmHgの真空圧力で少なくとも10分間)した後、所定の圧力(0.0036MPa)で水銀でセルを充填し、その後400MPaまで段階的に圧力を増加させ、試料の細孔ネットワーク内に水銀を徐々に浸透させることにある。
【0071】
適用された圧力と見掛けの細孔直径との関係は、円筒状の細孔、140°という水銀と孔の壁との接触角度および485ダイン/cmの水銀表面張力を仮定して確立される。適用される圧力の関数として導入される水銀の累積量を記録する。その値以上で水銀が全ての粒子内空隙を満たす値を0.2MPaに設定し、この値の上では水銀が粒状材料の細孔内に浸透すると考える。ポロシメーターのセルの体積からこの圧力(0.2MPa)での水銀の累積体積を引き、この差を無水の等価の粒状材料の質量、即ち強熱減量について補正された前記材料の質量で割ることによって、粒子体積(Vg)を計算する。
【0072】
粒状材料のマクロ孔体積を、50nmを超える見掛けの直径を有する細孔に含まれる体積に対応する、0.2MPaから30MPaの間の圧力で導入された水銀の累積体積として定義する。粒状材料のメソ細孔体積を、30MPaから400MPaの間の圧力で導入された水銀の累積体積として定義する。
【0073】
本明細書では、cm.g−1で表されるゼオライト吸着剤のマクロ孔体積およびメソ細孔体積はこのように水銀圧入により測定され、試料の無水の等価の重量、即ち、強熱減量について補正された前記材料の質量に関連する。
【0074】
微小孔体積は、当業者に公知の任意の方法に従って、例えば、窒素、アルゴン、酸素等の気体の液化温度での吸着等温線の測定から決定される。この吸着測定の前に、本発明のゼオライト粒状材料を真空下(P<6.7×10−4Pa)で9時間から16時間の間300℃から450℃の間で脱気する。その後、例えば、FAU構造のゼオライトに対し、77Kでの窒素吸着等温線の測定は、マイクロメリティクス社からのASAP 2010 M装置上で、0.002から1の間の比P/Pの相対圧力で少なくとも35の測定点を取って行われる。微小孔体積は、規格ISO 15901−3:2007を適用することにより得られた等温線からDubinin−Raduskevitch等式に従って決定される。このように評価された微小孔体積は、吸着剤1グラム当たりの液体吸着質のcmで表される。測定の不確実性は±0.003g/cmである。
【0075】
測定された機械的強度は、Vinch Technologies社により販売されているBCSテスター機器に関連する、シェル法シリーズSMS1471−74(Determination of Bulk Crushing Strength of Catalysts. Compression−Sieve Method」)に従って特徴付けられたバルク破砕強度(BCS)である。
【0076】
当初は3mmから6mmの触媒の特徴付けのために意図された、BCSを測定するためのこの方法は、特に破砕時に生成される微粉を分離することを可能にする425μmのふるいの使用に基づく。425μmのふるいの使用は、1.6mmより大きい直径を有する粒子には適したままであるが、特徴付けが所望される材料の粒子サイズに従って適合させなければならない。本発明のゼオライト粒状材料については、シェル法規格SMS1471−74に記載された425μmのふるいの代わりに、200μmのふるいが使用される。
【0077】
測定プロトコルは以下の通りである。適切なふるい(200μm)で予めふるいわけされ、(シェル法規格SMS1471−74に記載された300℃の代わりに)250℃で少なくとも2時間オーブン中で予め乾燥された、分析されるべき材料20cmの試料を、既知の内部断面の金属シリンダー内に配置する。材料にピストンが加える力をより良好に分配するために5cmの鋼ボール(1.6mmより厳密に小さい直径を有する球形の粒子に対しては直径2mmのボールを使用)のベッドを通して、ピストンによりこの試料に加える力を段階的に増加する。様々な圧力段階で得られた微粉を篩分け(200μmの適切なふるい)によって分離し、秤量する。
【0078】
BCSは、ふるいを通過する微粉の累積量が試料の0.5重量%である、メガパスカル(MPa)で表される圧力によって決定される。この値は、ゼオライト材料床に加えられる力の関数として得られた微粉の質量をグラフ上にプロットし、累積微粉の0.5質量%に補間することによって得られる。機械的バルク破砕強度は、典型的には、数百kPaから数十MPaの間にあり、一般には0.3MPaから3.2MPaの間にある。精度は、通常、0.1MPa未満である。
【0079】
添付の図面は、種々のゼオライト粒状材料の研磨断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察中に得られた画像である。材料の研磨された表面をイオン研磨(アルゴンイオン)によって調製した。調製のために使用された装置はGatan社によって市販されているllion+(商標)機であり、以下のパラメータ、即ち、5kVの加速電圧、4時間の研磨時間、0°の傾斜角、周囲温度、断面モードを用いる。
【0080】
添付の図面を以下に説明する。
図1a:例1に対応する非接合ゼオライト粒状材料、倍率5000;
図1b:例1に対応する非接合ゼオライト粒状材料、倍率10000;
図2a:実施例2に対応する接合ゼオライト粒状材料、倍率5000;
図2b:実施例に対応する接合ゼオライト粒状材料、倍率10000。
【0081】
試料の観察について、電界放出銃走査型電子顕微鏡(FEG SEM)を以下の条件、即ち、2kVの加速電圧、Everhart− Thornley横方向二次電子検出器を用いる画像解析、基準倍率ポラロイド(登録商標)545で使用する。
【0082】
以下の実施例は本発明の主題を説明する。それらは純粋に手引きとして与えられ、本発明の様々な実施形態を限定することを決して意図するものではない。
【0083】
[例1(比較例)]
NaXに基づく非接合材料の調製
【0084】
結晶サイズが1μmで、原子比Si/Alが1.25のゼオライトNaX粉末100g(焼成等価物として表される)をカオリン15g(焼成等価物として表される)および商品名Klebosol(R) 30(30重量%のSiOおよび0.5%のNaOを含有)の下で販売されたコロイダルシリカ7.5gと押出作業に適した量の水と共に均質に混合し、凝集することにより得られた、原子比Si/Alが1.25で結晶サイズが1μmのゼオライトX粉末に基づき、ゼオライト吸着剤を調製する。
【0085】
吸着剤を乾燥させ、数平均等価直径が0.5mmに等しい粒子を回収するために破砕し、次いで2時間窒素気流下に550℃で焼成する。
【0086】
この工程で、本発明による材料の研磨断面の観察をSEMにより実施する。即ち、10000倍の倍率を有する10個の画像上で、ゼオライト結晶の凝集体を観察し、結晶は前記材料の全体積にわたって接合した集合体を形成せず、接合表面は画像中に材料が占める表面の約5%を表す(図1a)。
【0087】
上記のように測定されたこれらの凝集体の機械的バルク強度BCSは0.8MPaである。マクロ孔およびメソ細孔の全体積に対するメソ細孔の体積の比率は
【0088】
【数2】
であり、マクロ孔体積、メソ細孔体積および微小孔体積の合計に対する微小孔体積の比率は
【0089】
【数3】
であり、粒状材料の全体積に対するメソ細孔体積およびマクロ孔体積の比率は
【0090】
【数4】
である。
【0091】
[実施例2(本発明)]
NaXに基づく接合ゼオライト材料の合成
【0092】
例1で調製したゼオライト吸着剤を用いる。
【0093】
これらの乾燥し、焼成した押出物を、穏やかに撹拌しながら、水酸化ナトリウム(水中において50重量%でのNaOH)200gを水300gと混合することにより調製した塩基性溶液と接触させる。次いで、この混合物をプラスチックチューブに移し、その後にチューブを封止する。この系を自生圧力下で2時間、120℃に調整した温度に維持する。
【0094】
吸着剤を回収し、次いでそのpHが10に近づくまで水で洗浄する。押出物を乾燥させ、0.5mmに等しい数平均等価直径を有する粒子を回収するために破砕し、次いで2時間窒素気流下に550℃で焼成する。
【0095】
この工程の吸着剤を、イオン研磨により調製した研磨断面上でSEMにより観察する。10000倍の倍率を有する、異なる研磨断面上に撮影した10個の画像の観察により、均質な多孔性および均質な材料が示される。SEM画像の解析により、10個の画像の平均で、接合表面は各画像上において材料が占める表面の約78%を表し、これは本発明の意味の範囲内の接合材料に相当する。
【0096】
また、機械的強度の強化が、硬質材料に特徴的なカーテン効果(図2aまたは図2bで観察された溝)を介して、記載の条件下で研磨間に観察される。この効果は、図1aまたは図1bに表された材料(結晶が接合集合体を形成しないようなゼオライト結晶の凝集体である)の研磨の間は存在しない。
【0097】
上記のように測定されたこれらの凝集体の機械的バルク強度BCSは2.5MPaである。全マクロ孔およびメソ細孔の体積に対するメソ細孔の体積の比率は
【0098】
【数5】
であり、マクロ孔体積、メソ細孔体積および微小孔体積の合計に対する微小孔体積の比率は
【0099】
【数6】
であり、粒状材料の全体積に対するメソ細孔体積およびマクロ孔体積の比率は
【0100】
【数7】
である。
【0101】
[実施例3(本発明)]
BaXに基づく接合ゼオライト材料の合成
【0102】
水中で50重量%での水酸化ナトリウム50g、結晶サイズが0.8μmで、Si/Al原子比が1.20のゼオライトNaX粉末20g(無水等価物として表される)、550℃で2時間予め焼成されたカオリン(焼成等価物として表す)1g、および商品名Klebosol(R) 30(30重量%のSiOおよび0.5%のNaOを含有)で販売されているコロイダルシリカ0.5gを、容器内で25gの水と混合する。
【0103】
このようにして得られた混合物をプラスチックチューブに移してから、封止する。この系を自生圧力下で2時間、120℃に調整した温度に維持する。
【0104】
吸着剤を回収し、次いでそのpHが10に近づくまで水で洗浄する。押出物を乾燥させ、0.5mmに等しい数平均等価直径を有する粒子を回収するために破砕し、次いで2時間窒素気流下に550℃で焼成する。
【0105】
これらの吸着剤を、4つの工程において95℃で0.5M塩化バリウムの水溶液の作用を介して、カチオン交換に供する。各工程において、固体の質量に対する溶液の体積比は20mL/gであり、交換は各時間について4時間継続する。各交換の間、過剰な塩を取り除くために、固体を数回洗浄する。次いで、凝集体を80℃で2時間乾燥させ、最終的に窒素気流下で250℃で2時間活性化させる。
【0106】
上記のように測定されたこれらの凝集体の機械的バルク強度BCSは2MPaである。全マクロ孔およびメソ細孔の体積に対するメソ細孔の体積の比率は
【0107】
【数8】
であり、マクロ孔体積、メソ細孔体積および微小孔体積の合計に対する微小孔体積の比率は
【0108】
【数9】
であり、粒状材料の全体積に対するメソ細孔体積およびマクロ孔体積の比率は
【0109】
【数10】
である。
図1a
図1b
図2a
図2b