(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の晶析装置において、前記ノズルは、細長い断面を有する開孔であって、前記断面の長軸が引出し方向に直交する横方向に沿って延在する、前記開孔を有する、晶析装置。
請求項1記載の晶析装置において、前記ガス噴射は、ガス渦を前記プロセスゾーン内に生ずるように構成し、前記ガス渦が少なくとも一部の熱を前記露出面から冷却ブロックに至る対流によって除去する、晶析装置。
請求項1記載の晶析装置において、前記ノズルは、横方向に沿う幅によって画定した細長い断面を持つ開孔であって、前記ガス噴射の流速が前記横方向に沿う前記開孔の幅1センチメートルあたり毎分少なくとも1リットルとなる、前記開孔を有する、晶析装置。
前記ノズルは、開孔に沿って配置した複数のガス供給口を装備した前記開孔であって、前記複数のガス供給口は、それぞれ作動状態にあるとき個別にガスを前記開孔に送給するように構成して前記ガス噴射を形成する、前記開孔を有するものとし、また、前記少なくとも1つの内部排出チャネルは、複数の排出口であって、それぞれ作動状態にあるとき個別にガスを排出するように構成した、前記複数の排出口を有するものとした、請求項13記載の方法において、
前記方法はさらに、
前記作動状態にあるガス供給口の数を調整して、前記プロセスゾーンの幅を目標幅まで調整するステップと、
前記少なくとも1つの内部排出チャネルにおける前記作動状態の排出口の数を調整して、前記目標幅に合致する排出幅を得るステップと、
を有する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、シリコンのような半導体材料から成る連続的な結晶シートを融液から水平成長を使用して成長させるシステム及び装置を提供する。特に、本明細書で開示するシステムは、連続的な結晶シート又はシリコンリボンの成長を融液表面上で開始し、また持続させるように構成し、形成したシートは、単一結晶(単結晶)で、幅広く、均一な厚さで、融液から速い速度、例えば1秒あたり1ミリメートルより速い速度で引き出す。様々な実施形態において、流体冷却晶析装置は、強除熱の狭い帯域又はゾーンを形成するプロセスゾーンを生成する制御した、また、均一な様態で融液表面を冷却するように構成する。様々な実施形態において、シリコン融液からの除熱のピーク速度は、100W/cm
2を超え、場合によっては、500W/cm
2より速い。以下で説明するように、この高除熱速度は、高品質の単結晶シリコンリボンを成長させるのに特に有利であり、それは、融液表面におけるシリコンの結晶成長の性質によるからである。
【0010】
図1Aは、本発明の実施形態に基づく、融液からの結晶シートの水平成長に関するシステム100の側面図を示す。システム100は、晶析装置102及びるつぼ126を備えるが、るつぼの下側部分のみを簡単に示している。さらに、この図面及びそれに続く他の図面において、様々なコンポーネントは、互いに又は異なる方向に縮尺通りに描いていない。るつぼ126は、シリコン融液のような融液112を容れることができる。晶析装置102若しくはるつぼ126、又はその双方が、図示したデカルト座標系のY軸に平行な方向に沿って移動可能とし、晶析装置102を融液112の上面から所望距離離れた位置に位置決めできるようにし、融液112の上面は露出面114として表す。露出面114は、システム100における大気に隣接する表面を示し、るつぼ126の中実表面に隣接する融液112の表面とは反対側である。このシステム100は、さらに、ヒーター122のような1つ又は複数のヒーターを有し、これらヒーターは、るつぼ126、またひいては融液112に熱を供給することができる。これらヒーター122には、個別に電力を供給し、同量の熱又は異なる量の熱をX-Z平面に沿う異なるポイントに供給することができる。熱は、融液112を経て、
図1AにおけるY軸に沿う熱流の少なくとも上向きの成分を有して流れることができる。
【0011】
以下で詳述するように、ヒーター122から生じた熱流、及び露出面114からの熱流速度(本明細書では「除熱速度」と称する)は、露出面で融解表面を維持するように設定することができ、ただし結晶化が起こる特定領域は除外する。特に、以下で詳述するように、結晶化は、晶析装置102に隣接した領域又はプロセスゾーン(
図1Aにおいては図示せず)において起こる。本発明の実施形態において、晶析装置102は、プロセスゾーンにおいて除熱速度を生じ、この除熱速度は、十分急速で露出面近傍領域又は露出面で結晶材料を形成する。以下で詳述するように、除熱は、露出面114の一部上でのみ制御された様態で局所的に起こり、その結果、所望厚さ及び低レベルの欠陥を有する単結晶シリコンを形成する。「除熱」は、露出面114から放出される熱流を促進する処理を意味する。晶析装置102のような「除熱」を促進するコンポーネントがなくても、熱は露出面114から上方に流れ出ることができる。しかし、晶析装置102は、露出面114の一部で除熱を行うことができ、この部分における除熱は露出面114の他の部分における熱流よりもずっと多く、これにより、結晶化は晶析装置102に隣接して局在する。
【0012】
このシステム100は、さらに、結晶引出し機(図示せず)を備え、この結晶引出し機は、シード116をZ軸に平行な引出し方向120に沿って引き出し、結晶シリコンの連続シートを図示の右方に引っ張るように構成することができる。晶析装置102に隣接する除熱速度、ヒーター122によって生じた熱、及び引出し方向120に沿う引出し速度を制御することによって、所望厚さ及び品質の結晶シートを得ることができる。特に、結晶化を制御するために、晶析装置102に冷却ブロック106を設け、この冷却ブロック106は、冷却ブロック温度を冷却ブロック表面で生ずるように構成し、この冷却ブロック温度は、冷却ブロック表面に面する露出面114の部分における融液の融解温度よりも低いものにする。詳述するように、晶析装置102は、さらに、冷却ブロック106内に配置し、ガス噴射を露出面114に送給するように構成したノズル104を有する。ガス噴射及び冷却ブロックは、相互動作して、露出面114から第1除熱速度で熱を除去するプロセスゾーンであって、第1除熱速度が、プロセスゾーンの外側の領域における露出面からの第2除熱速度より速い速度となる、該プロセスゾーンを生ずる。ノズル及び冷却ブロックの適切な配置並びに操作によって、よく画定した均一なプロセスゾーンは、極めて狭い領域上で生じ、欠陥の少ない単結晶シートの良好な成長を促進する。
【0013】
図1Aの実施形態において、晶析装置102は、露出面114にガス噴射を供給するように構成したノズル114を備え、「ガス噴射」は、以下に詳述するように、急速な速度で狭い開口を通るガス流れを意味する。ガス噴射は、ガス制御システム150によって供給でき、このガス制御システム150は、ガスをノズル104内に所定速度で指向させる。様々な実施形態において、ノズル104は、高温環境、特に、融解シリコンを含む環境における劣化に抵抗する材料から成る。ノズルは、石英ガラス(溶融水晶)から構成することができ、この石英ガラスは、例えば、シリコンによる浸食に対する化学的抵抗性を有し、また、シリコンの融点(〜1685K)で熱的に安定である。露出面114に供給したガスは、晶析装置102に近接するプロセス領域において露出面114からの除熱速度を速くするのに使用できる。幾つかの実施形態において、ノズル104を経て供給したガスは、ヘリウム若しくは不活性ガスとする、又は水素とすることができる。実施形態は、この文脈内容に限定されない。
【0014】
図1Aにおいて示すように、ノズル104は、冷却ブロック106内に配置して、水又はエチレングリコールのような流体によって冷却することができ、この流体は、冷却ブロッック106におけるキャビティ(図示せず)内に流入するよう指向させる。従って、冷却ブロック106は、融液112よりも相当低い温度に維持することができる。例えば、融液112が純粋なシリコンである場合、露出面114の温度は1685Kの前後数度内に維持して、露出面114を融解状態に維持できるようにする。同時に、冷却水を冷却ブロック106に供給するとき、冷却ブロック
106は、300K〜400Kの範囲内の温度で維持できる。一実施形態において、冷却ブロック106は、ニッケルから作製することができ、このニッケルは、高熱伝導性及び高融点を有し、冷却ブロックとして高温融液と密に近接して動作するのに適している。説明したように、ノズル104及び冷却ブロックは、相互動作して、狭いプロセスゾー
ンを生じ、このプロセスゾーンでは、除熱速度が、露出面114で又は露出面114近傍で所望結晶化を生ずるのに十分な高速であるとともに、プロセスゾーンの外側領域は融解状態のままとなる。さらに
図1Aに示すように、晶析装置102はエンクロージャ108を備え、このエンクロージャ108は、冷却ブロック106の温度よりも高いエンクロージャ温度に維持できる。エンクロージャ108は、断熱体及びヒーターを含む複数のコンポーネントを有し、それらはエンクロージャ108を高温に維持するのに使用する。例えば、エンクロージャ108は、露出面114の温度前後50K以内の温度に維持することができる。エンクロージャ108は開口を画定し、この開口において、冷却ブロック106の冷却ブロック表面を露出面114に対向させて配置する。言い換えれば、エンクロージャによって画定した開口内で、冷却ブロック106の冷却ブロック表面は、融液112の露出面114に対面する。この開口エリアは、
図1Bにつき後述するように、冷却ブロック10
6の底面を含む。従って、エンクロージャ108に近接する露出面114の領域に対する除熱速度は、冷却ブロック106に近接するプロセスゾーンの除熱速度よりも遅くすることができる。この図面及び以下の他の図面において、晶析装置102の頂部部分は簡単のため図示しないことを付記する。
【0015】
様々な実施形態において、ノズル104及び冷却ブロック106は、X-Z平面において細長い断面を有することができる。
図1Bは、様々な実施形態による晶析装置102の底面図を示し、ノズル104及び冷却ブロック106は、X軸に平行な方向に細長い。この方向は、後述するように、結晶シートを引っ張る引出し方向に交差することを示す横方向と称することができる。また、
図1Bに示すように、開孔110は、ノズル104に設け、また、横方向に沿って延在する長軸を有するX-Z平面において細長い断面を有する。開孔110は、単一の狭い開口であり、この狭い開口を経てガス噴射を露出面114に供給することができる。
図1Aに示すように、開孔110は、ノズル104の全高にわたり貫通し、ガスをノズル104頂部から露出面114の直ぐ上方の領域まで導く。後述するいくつかの実施形態において、複数の小さいガス供給口を開孔110の頂部においてX軸に平行に直線状に配列し、ガス噴射を露出面114に供給できるようにする。後述するように、X軸に沿うノズル104、開孔110、及び冷却ブロック106の寸法、並びに使用するガス供給口の数によって、
図1Aに示す引出し方向120に沿って引っ張る結晶シートの幅を画定することができる。
【0016】
図1C及び
図1Dは、晶析装置102の一部分の、それぞれ側面図及び上面図を示す。特に、
図1C及び
図1Dは、冷却ブロック106及びノズル104の、融液112の露出面114に最も近い部分を示す。簡明にするため、エンクロージャ108は図示しない。
【0017】
様々な実施形態において、冷却ブロック、ノズル及び融液露出面の幾何学的構成配置関係は、表面から急速に除熱する狭いプロセスゾーン生成を促進するように配置する。特定の実施形態において、ノズルは露出面上方に第1距離離して配置し、また冷却ブロック表面は露出面上方に第1距離よりも長い第2距離離して配置する。言い換えれば、ノズルは、隣接する冷却ブロックの下方に突出し、またそれによって、融液の表面により接近して位置決めされる。
【0018】
図1Cの実施例において、冷却ブロック106及びノズル104は、露出面114から所望高さに位置決めし、所望の結晶化処理を行うことができるようにする。この高さは、露出面114に直交する方向に沿う距離を示す第1高さh
1によって画定でき、この第1高さh
1は、露出面114を冷却ブロック106の底面132から隔てる。底面132は、融液112の露出面114に面する冷却ブロック表面であり、露出面114から流れ出す熱用のシンクとして機能する。説明するように、冷却ブロック106の他の表面は、
図1Cには示さないエンクロージャ108によって包囲される。この高さはまた、第2高さh
2によって画定でき、この第2高さh
2は、露出面114をノズル104の底部から隔てる距離を示す。
図1Cに示すように、この実施形態及び他の実施形態において、ノズルは底面132の下方に、h
2<h
1となるように突出することができる。様々な実施形態において、h
1は0.25mm〜5mmとし、また距離h
2は0.1mm〜3mmとすることができるが、この実施形態はこの文脈内容に限定されない。値h
2又はh
1の調整は、
図1Aに示す一実施形態にける晶析装置102に連結したアクチュエータ118を使用して実施することができる。
【0019】
幾つかの実施形態において、Z軸に沿う開孔110の開孔長さd
2は0.05mm〜0.5mmとすることができる。ノズル104を石英ガラスから形成した実施形態において、ノズル104は、2個のパーツ、すなわちノズル部分104a及びノズル部分104bから構成することができる。幾つかの実施形態において、これら2個のパーツは、接合部分(インターフェース)134を画定するよう組み立て、この接合部分134は、ノズル104を組み立ててシステム100内に配置するときに、露出面114に直交する方向に延びる。代案として、これら2個のパーツを接合部分134が画定されるように組み立てて、この接合部分134は、ノズル104を組み立ててシステム100内に配置するとき、露出面114に直交する方向に対してゼロではない角度をなして延びるようにする。接合部分134は、開孔110を画定することができ、その開孔長さd
2は、ノズル部分104a及びノズル部分104bのそれぞれに凹部を形成し、またそれらノズル部分を凹部が互いに対向するように配置することによって作成することができる。この結果、システム100において動作するとき公差範囲を上回って変動しない、正確にサイズ決めした寸法を有する開孔110となる。石英ガラスは、この目的のために特に有用であり、それはすなわち、正確に機械加工することができ、また低熱膨張係数を有するからであり、従って、開孔110の寸法を、温度が大きな範囲にわたり変動する環境下であっても維持することを確実にする。加えて、石英ガラス(溶融水晶)は、融液シリコンで湿潤せず、これにより、ノズル104が融液112に不慮に接触した状況下においてシリコンが開孔110内に沁み上がらないことを確実にする。
【0020】
さらに
図1C及び
図1Dに示すように、底面132は、X-Z平面に平行であり、また露出面114に平行に位置することができる。様々な実施形態において、底面132は、X軸に平行な横方向に沿って細長い。底面132のX軸に沿う幅w
1は、横方向に直交する方向に引っ張る結晶シートの最終的な幅を画定することができる。この後者の方向は、本明細書では「引出し方向(pull direction)」と称し、それは、結晶シートを引っ張る方向と一致するからである。詳述するように、底面132及びノズル104は、それぞれ、露出面114の上方に第1距離及び第2距離離れて配置するとき、底面132は、さらに、第2方向に沿って露出面114に平行なノズル104から第1距離よりも長い第3距離にわたり延在することができる。言い換えれば、
図1Dに示すように、底面132は、Z軸に平行な方向、すなわち引出し方向に沿って、ノズル104から距離d
1にわたり外方に延在することができるとともに、晶析装置102は、d
1>h
1となるように露出面114の上方に位置決めする。幾つかの実施形態において、d
1は3mmとし、h
1は3mm未満とする。この特定ジオメトリ(構成配置)は、以下に詳述するようにより一層急速な除熱を促進する。
【0021】
図1Dの特定の図面において、上面図は、平面Pから透視して示すものであり、冷却ブロック106の底面132と一致して位置決めされる。従って、冷却ブロック106のエリアは、底面132のエリアを示し、露出面114の上方に数ミリメートル又はそれ未満の距離離れて位置決めすることができる。冷却ブロック106を水のような冷却流体によって冷却するとき、冷却ブロック106は、485K未満の冷却ブロック温度、すなわち、露出面114の融点(シリコン融液を処理するいくつかの例において1685Kである)より1200K又はそれ以上低い冷却ブロック温度を有することができる。冷却ブロック106がノズル104によって供給されるガス噴射とともに存在するため、露出面114から流れ出る熱の除熱は、狭い帯域に集中させることができ、強除熱去を引き起こす。この強熱除去は、幾つかの例において、100W/cm
2以上の除熱速度によって特徴付けることができ、また特定の実施形態においては、1000W/cm
2又はそれ以上である。さらに、この除熱速度は、露出面114で外方に流れ出る熱流(幾つかの実施例において、5〜50W/cm
2のような10W/cm
2のオーダーとすることができる)を大幅に超えることができる。
【0022】
強熱除去の領域は、
図1Dにおけるプロセスゾーン130として示す。プロセスゾーン130において、露出面114からの除熱速度は、露出面114の外側領域131、すなわちプロセスゾーン130の外側に位置する領域における露出面114からの除熱速度を超えることができる。様々な実施形態によれば、ガスは開孔110を経るよう十分な流量速度で指向させることができ、除熱速度は開孔の下でピークとなる。さらに、以下で詳述するように、除熱速度は、引出し方向120に沿う狭いピークによって特徴付けることができ、これにより半値全幅(FWHM)は、2ミリメーターの範囲又はそれ以下であり、また、幾つかの実施例においては0.5mm未満である。この結果、1000W/cm
2又はそれ以上の除熱速度にも達する最大除熱速度値となる。このように高速の除熱速度がこのように狭いプロセスゾーンに送給されるとき、シートの結晶化は、引出し方向120に沿う高速引出し速度でさえも改善したシートの結晶品質を生ずるように制御することができる。
【0023】
図2Aは、結晶シート206を形成するシステム100の使用の一例を示す。この実施例において、ヒーター122は、融液112を経て、露出面114で融液112の外方へ流れ出す熱124を供給する。熱124は、融液112を融解状態に維持することができ、ただし、結晶シート206を結晶引出し機(図示せず)によって引き出される部分を除く。プロセスゾーン130の外側の融液表面からの熱流速度は、幾つかの例において5〜50W/cm
2の範囲内であり得る。しかし、この実施形態はこの文脈内容に限定されない。
図2Aに示すように、ガス噴射202は、開孔110を経て供給し、ガス制御システム150(
図1Aに示す)によって制御することができる。ガス噴射202は、Y軸に平行な方向に沿って、又はY軸に対してゼロではない角度をなす方向に沿って、指向させることができ、また露出面114に衝突させ、排ガス204として流出させることができる。様々な実施形態において、ガス流速は、X軸に沿う開孔幅のセンチメートル当たりの流速によって特徴付けることができる。特定の実施形態において、ガス流速は、開孔110の毎分センチメートル幅当たり1L/分〜10L/分(L/(m-cm)の間とすることができる。詳述するように、露出面114からの晶析装置102の離間、並びにガス噴射202におけるガス流を制御することによって、多量の熱を露出面114からプロセスゾーン130における対流除熱を介して除去することができる。このことは、上述したように、極めて高速の除熱速度を生ずる能力を増進する。
【0024】
次に
図2Bにつき説明すると、
図2Aに示した動作中におけるシステム100の一部分の拡大図である。
図2Bに示すように、ガス噴射202は、露出面114に向けて指向され、露出面114及び冷却ブロック106及びノズル104の間に位置するガス渦210を生成する。ガス渦210は、以下に詳述するように、露出面114から熱を急速に除去する媒体を提供する。特に、ガス渦210は、露出面
114から冷却ブロック
106へ、少なくとも一部は対流によって熱を除去することができる。ガス渦210によって得られる除熱は、幾つかの例において、最大1000W/cm
2又はそれ以上にもなる数100W/cm
2のピーク除熱速度を生ずるのに十分である。これは、シリコンのシートを欠陥の少ない単結晶シートとして結晶化するのに特に有用であり得る。本発明は、X-Y平面に平行な(100)結晶面を有して成長したシリコンの単結晶シートにおいて、前縁は(111)結晶ファセット(小平面)によって特徴付けられ、この結晶ファセットは、Z軸又は引出し方向120に対して54度の角度をなす。このファセットを有する前縁を適切に成長させるため、極めて高速の除熱速度が、前縁における極めて狭い領域内で必要となる。幾つかの推定において、(111)ファセットを有する前縁を適切に成長させるピーク除熱速度は、100W/cm
2よりずっと速く、この値は、シリコンの結晶シートを形成するのに使用する従来装置によって達成する除熱速度より相当速い速度である。
【0025】
さらに、結晶シート206の厚さが厚さの所望上限を超えないように制御するためには、このような高除熱速度を結晶シート206の前縁における狭い領域に集中させるのが望ましいものであり得る。幾つかの実施形態において、システム100は、3mm未満の幅である、強除熱を狭い領域又は帯域に送給することができ、除熱のピーク速度は、閾値、例えば、100W/cm
2を超えるものとする。これに関して、引出し方向120に沿うプロセスゾーン130のサイズは、便利なメトリック(計量体系)に従って、除熱速度が、閾値、又は以下に詳述するように除熱速度におけるピークのFWHMを超える領域の幅のようなものとして規定することができることに留意されたい。プロセスゾーン130の範囲を特徴付けるのに使用する正確なメトリックに無関係に、様々な実施形態において、除熱速度は、開孔110の直下のポイントAで、100W/cm
2〜1500W/cm
2の範囲にわたるものとすることができるとともに、引出し方向120に沿ってポイントAから3mm以上離れた距離における除熱速度は20W/cm
2未満とすることができる。
【0026】
上述したように、様々な実施形態において、ガス噴射202はヘリウム(He)から構成することができ、このヘリウムは、高熱伝導性を備えるとともに、不活性であり、またシステム100の他のコンポーネントに対して無反応性を示す。しかし、水素のような他のガスも可能である。幾つかの実施例において、ガス噴射202のガスを再循環させるのが有用であり、例えば、Heをガス噴射202において使用するときのような場合に有用である。このことによれば、全体的な消耗物出費を減らすことができる。さらに
図2Bに示すように、ガス噴射202は、少なくとも一部を排ガス208として冷却ブロック106に隣接して設けた排出チャネル(図示せず)を経て排出することができる。以下に詳述するように、冷却ガスを保存することの他に、このことには、ガス噴射の均一性が、ガスを単にエンクロージャ108の下側に向かう排ガス204として排出する装置と比較して、改善されるという利点をもたらす。
【0027】
次に
図3Aにつき説明すると、本発明の他の実施形態によるシステム300の一部の側面図を示す。システム300は、ノズル104、冷却ブロック106を備え、また、その動作については上述した結晶引出し機(図示せず)を備えることができる。加えて、システム300は、ガス制御システム、及びその動作については上述したが簡単のため省略するヒーターを備える。さらに、システム300は、以下に詳述するように複数のコンポーネントを有するエンクロージャ350を備える。エンクロージャ350は、冷却ブロック106に隣接し、またグラファイト又は炭化ケイ素でコーティングしたグラファイトから形成したライナー306を有することができる。
図3Aの実施形態において、冷却ブロック106とライナー306との間に配置した少なくとも1つの内部排出チャネル304を設ける。一実施形態において、内部排出チャネルは入口を有し、この入口はZ軸方向に平行な長さが1mmである。
【0028】
断熱材料308をライナー306の周りに設け、補償ヒーター310を図示のように断熱材料308に隣接して設ける。補償ヒーター310は、エンクロージャ350の温度を調整するのに使用し、これにより、エンクロージャ350は、露出面114の温度前後10〜50K内の温度に維持することができる。最終的に、他のコンポーネントを囲むシェル312を設ける。
【0029】
次に
図3Bにつき説明すると、システム300の動作の一段階を示す。この実施例において、ガス噴射320は、開孔110を経るようガス制御システムによって供給する。熱流328は、融液112を経るようヒーター(図示せず)によって供給する。ガス噴射320は、ガス渦326を冷却ブロック106と融液112の露出面114との間に発生する。ガス渦326は、露出面114から放出される熱を急速に除去するのに使用することができ、これにより、ピークの除熱速度は100W/cm
2を超える。加えて、ガス噴射320は、X-Z軸平面に平行な方向に沿って進行する側方排ガス324、並びに内部排出チャネル304を経て進行する内部排ガス322として排出することができる、内部排出チャネル304は、図示のように1対のチャネルとすることができる。以下の図面につき説明するように、様々な実施形態において、融液112の露出面114のような表面上におけるガス流の流体動力学は、ガス流速度、融液表面からの晶析装置の離間距離、並びに表面に衝突した後のガス排出、他のパラメータを制御することによって制御することができる。次に、このガス流制御を利用して、プロセスゾーンの幅を調整することができ、このプロセスゾーンでは、熱が急速に除去され、また、ピーク除熱速度並びに除熱の均一性を調整することができる。さらに
図3Bに示すように、シード116をZ軸に平行な引出し方向に沿って引きずるとき、結晶シート330を引き出し、結晶シート330の前縁は、静止状態で、またガス渦326に近接して位置する。
【0030】
図4Aは、システム300の一部の2次元複合側面図であり、例示的な温度の2次元的にシミュレートした、晶析装置302内で生じ得る温度マップ及びHeガス流パターンを示す。図示の結果は、コンピュータによる流体力学(CFD)モデリングに基づく。このシミュレーションにおいて、エンクロージャ350のコンポーネントは熱く、露出面114とシェル312との間の温度は1600Kより高い。しかし、冷却ブロック106及びノズル104は、400K未満の温度に維持される。ガス噴射は、ノズル104を経るように速度100m/sで指向させ、ノズル104は、融液の露出面114(図示せず)上に1mmに等しい距離h
2離れて位置決めする。加えて、引出し方向120に沿うノズルの開孔長さd
2は、0.1mmとする。図示のように、強いガス渦であるガス渦402を、一方での露出面114と、他方での冷却ブロック106及びノズル104との間に形成する。このことは、露出面114と晶析装置302との間における対流熱伝導速度が速いことを示す。加えて、ガス排出404は内部排出チャネル304に指向する。この状況下で、除熱速度も引出し方向120(
図3参照)に沿う位置(パラメータdとして示す)の関数としてシミュレートする。このシミュレーションの結果を
図4Bにプロットし、除熱速度(q″)を4つの異なる値h
2の関数として示し、この場合、h
2=1mmである
図4Aの実施例を含む。
図4Bの実施例において、ガス流速度は、
図1Dに示すように、X軸に平行な方向に沿う開孔110の幅(w
1)センチメートルにつき毎分6リットルである。従って、4cm幅開孔につきガス流は毎分24リットル(L/m)である。
【0031】
図4Bの結果に示すように、除熱速度は、ノズル104の開孔直下の位置であるd=0mmで最大値を有する。2mm又はそれより長い距離で、除熱速度は20W/cm
2の範囲の背景レベルに近似し、この背景レベルは、プロセスゾーンの外側の露出面114からの除熱速度に対応する。従って、
図3Aに示すように、ノズル104及び冷却ブロック106の対称形態において、除熱速度は、ゼロに対してdの負の距離と同様に減少する。
図4Bに示すように、ピークでの除熱速度の値は、h
2が減少すると強大に増加する。例えば、h
2=2mmでは、曲線410に示すように、ピーク値は540W/cm
2であるとともに、h
2=0.25mmでは、曲線416に示すように、ピーク値は1480W/cm
2である。h
2=1.0mmでの曲線412は、840W/cm
2のピーク値を示すとともに、h
2=0.5mmでの曲線414は、1200W/cm
2のピーク値を示す。加えて、曲線410、曲線412、曲線414及び曲線416の各曲線が対称的ピークの半分を表すと仮定すると、FWHMはh
2=2mmでの1.2mm(2×0.6mm)からh
2=0.25mmでの0.3mm(2×0.15mm)まで減少する。他の興味を引くメトリックとしては、除熱速度が所定値又は閾値を超える除熱のプロセスゾーンのサイズdzがある。例えば、プロセスゾーンは、除熱速度が100W/cm
2を超えるゾーンとして定義するのが都合がよい。先に述べたように、適正な(111)ファセットを有する高品質シリコンシートを形成するためには、シートの成長界面における高速の除熱が必要である。100W/cm
2より速い(>100W/cm
2)除熱速度のこのメトリックを使用すると、dz値はh
2=2mmでの3mm(2×1.5mm)からh
2=0.25mmでの1.2mm(2×0.6mm)まで減少する。
図4Aに示すようにh
2=1mmで、dz値は2.5mm(2×1.25mm)である。従って、融液表面上のノズル高さを調整することは、表面からの除熱速度、並びに表面からの除熱が閾値を超える領域を表すプロセスゾーンのサイズ(引出し方向又は引出し方向120に沿う)に大きく影響を与える。
【0032】
ガス噴射を融液表面自体内に供給すると、表面からの大幅な除熱を生ずることができる。しかし、本発明の実施形態は、ガス噴射を供給するノズルに隣接して冷却ブロックを設けることによって、ガス噴射単独で得られるよりも、除熱速度を速くする。冷却ブロックは、熱に対する効果的なヒートシンクとして機能し、熱は融液表面から対流によって除去する。
図5Aは、2次元複合側面図であり、例示的な2次元シミュレートした、冷却ブロックを融液表面504上から3mm離れる距離h
1に維持するときに生ずる、温度マップ及びHeガス流量パターンを示す。このシミュレーションにおいて、冷却ブロック502は300Kの範囲における温度に維持するとともに、表面504の温度は1680Kの範囲内に維持する。30m/sの流速を有する室温のHeガス噴射は、開孔長さd
2=0.2mmを有する開孔からd=0mmの位置に供給する。図示のように、強烈な渦506を生じ、この強烈渦506は、d<0.2mmにおける急激な温度低下によって示されるように、表面504から熱を除去するのに効果的である。
【0033】
図5Bは、2次元複合側面図であり、冷却ブロック502を1600Kの範囲内の温度に維持することを除いて、
図5Aと同一条件下で生じ得る、例示的な2次元シミュレートした温度マップ及びガス流量パターンを示す。言い換えれば、
図5Bのシミュレーションは、ノズルに隣接した冷却ブロックがなく、冷却はノズルからの冷却ガス流によって行う条件を表す。図示のように、強烈な渦508が生ずるが、渦の温度は
図5Aの場合よりも相当高い、例えば1000K〜1400Kにおける温度を維持し、表面504からの除熱は相当少ない。
【0034】
図5A及び
図5Bに示した2つの条件下で、除熱速度は、やはり引出し方向120(
図3A参照)に沿う位置(パラメータdとして示す)の関数として計算した。このシミュレーションの結果を
図5Cにプロットし、この
図5Cは、冷却ブロック502を300K(曲線510)及び1600K(曲線512)に維持するときのdの関数として対流除熱速度を示す。
図5Cに示すように、冷却ブロック502を300Kに維持する
図5Aのシナリオに対して、対流除熱におけるピークは165W/cm
2であるとともに、冷却ブロック502を1600Kに維持する
図5Bのシナリオに対して、対流除熱におけるピークは86W/cm
2である。上述の実施例に従って、除熱速度は100W/cm
2を超えるのが望ましい場合、冷却ブロック502を1600Kに維持するときにはこの除熱速度を満足させないことがわかる。しかし、冷却ブロック502を300Kに設定するとき、d=1.8mm(2×0.9mm)のプロセスゾーンを生ずる。
【0035】
さらなるシミュレーションを実施して、Heガスを冷却ブロックに局所的に、例えば
図3に示した内部排出チャネル304等で排出するか否かによっては、除熱量が大きく影響されないことを決定した。加えて、上述した実施形態は、ガス噴射を融液表面に対して直交するように指向させる対称的な晶析装置を適用できるものであるが、他の実施形態において、ガス噴射は、融液表面に直交する方向に対してゼロではない角度をなして供給することができる。この場合において。ノズル位置に対する除熱の分布が非対称となり得る。さらに、幾つかの実施形態において、各内部排出チャネル304は独立して機能することができ、除熱の非対称分布を生じ、一方の排出チャネル304において他方の排出チャネル304と対比して、より多くの量のガスを排出することができる。
【0036】
先に述べたように、様々な実施形態は、冷却ブロックに隣接した内部排出チャネルを有する晶析装置を提供する。この特徴は、結晶化シートフロントからの、引出し方向に直交する方向に沿うより均一な除熱を生ずる上で有利であり得る。
図6Aは、融液600の表面、及びHeガスが融液に向かって(図の紙面内方に)ノズルの開孔110を経て(特に図示せず)指向するときのガス流パターンの上面図を示す。図示のように、開孔110は、細長いスリットのX-Z平面における断面形状を有する。開孔110の例示的な寸法は、Z軸に沿って0.1〜0.3mm、及びX軸に沿って20mm〜200mmである。加熱したエンクロージャを融液600の上方に設け、このエンクロージャは、開孔110の周りに長方形の冷却領域を画定する開口を有する。
図6Aの実施例において、内部排出チャネルは、ヘリウムガスを局所的に排出する開孔110の近傍に設けない。
【0037】
開孔110の中間領域において、ガス流跡輪郭602は、X軸、即ち開孔の長手方向に対してほぼ直交することが分かる。しかし、開孔110の両端に向かって外方に進むにつれて、ガス流跡輪郭602の形状は湾曲し、領域608のような開孔110に直ぐ隣接する領域であっても開孔110の長手方向に対して直交しなくなる。さらに、ガス流跡輪郭602による集合体のパターンは、開孔110に隣接した除熱の均一性を定性的に表すことができる。したがって、ガス流跡輪郭602がX軸に直交する中間領域Mにおける除熱は、ガス流跡輪郭602が「U」型を有する領域608における除熱と異なる。このガス流パターンは、加熱したエンクロージャによって生じた熱流パターンの結果であり、開孔110に沿う位置に基づく3次元効果に起因して変化する。したがって、両側の端部Eの近傍領域では、He流は外方に向うにつれて中間領域Mよりもインピーダンスが少ない。したがって、
図6Aの構成は、X軸に平行に進むとき、開孔110に隣接して可変の除熱速度を生ずる。形成しているシートの結晶化フロントがX軸に平行であるため、結晶化は前縁に沿って不均一に生起することが予想され、その結果、所望均一性よりも低い均一性のシートとなり得る。
【0038】
図6Bも、ヘリウムガスをノズルの開孔110経由で融液に指向させるときの、融液600の表面及びガス流パターンの上面図を示す。しかし、
図6Bの実施例においては、2つの内部排出チャネル612を、開孔110に平行に延在するように設ける。一実施例において、内部排出チャネル612は、Z軸に沿って開孔110から3mmの距離を空けることができる。
図6Bの実施例において、開孔110を経て供給するガスの90%が内部排出チャネル612を経て排出されるとともに、例えば、
図2Bに示すように、10%が融液600の表面に沿って排出されると推定できる。内部排出チャネル612の存在は、ガス流跡輪郭602と比較すると、ガス流跡輪郭614のパターンを変える。ガス流跡輪郭614は、端部E寄りの領域におけるように幾分の曲率を示すことがあり得るが、内部排出チャネル612によって区切られる領域内では、開孔110の全幅w
aに沿って、各ガス流跡輪郭614は、開孔110の長手方向、即ちX軸に対して直交する。したがって、内部排出チャネル612相互間の領域において、除熱速度は、開孔に隣接して両側の端部E相互間における開孔110に沿う任意なポイントでも均一になり得る。とりわけ、両側の端部E相互間及び内部排出チャネル612相互間の領域616は、冷却ブロックが融液600の表面の近傍に延在する領域を表し、この領域において、最速の除熱速度が生起する。したがって、除熱速度が相当速いプロセスゾーンは領域616に位置し得る。この領域616の外側は、ガス流跡輪郭614が湾曲し、除熱速度は十分に緩慢で、X軸に沿ういかなる変動も、前縁の結晶化に知覚できるほどには寄与しないであろう。従って、
図6Bのシナリオの下で形成したシートの結晶化は全幅w
aに沿って均一になり得る。
【0039】
図7は、内部排出チャネル経由で排出するガス量の変化が除熱のプロファイルに与える効果をdの関数として示す。0%のガスが内部排出チャネル経由で排出(再利用)されるとき
の曲線702から、90%のガスが内部排出チャネル経由で排出されるとき
の曲線706への変化で分かるように、ピークの除熱速度は単に2〜3%しか減少しない。
曲線704は、50%のガスが内部排出チャネル経由で排出されるときを示す。さらに有利なことに、FHHMは、90%排出で減少して、除熱はdが低い値になるにつれてより集中し、それによってプロセスゾーンの幅を減少させる。しかし、ガス噴射から送給されるガスの一部分、例えば10%を融液表面に沿う方向に排出し、このシステムから出るSiOまたはArのような何らかの汚染物質を排除することが望ましい点に留意されたい。特にSiO汚染物質の排除は、融液内におけるSiO粒子形成を回避することができ、このSiO粒子は、融液から成長する結晶シートの品質を低下させる。従って、様々な実施形態において、内部排出チャネルは、ガス噴射で供給されるガスの75%〜95%の間のガスを排出するように構成することができる。内部排出チャネル経由で排出するガスの少なくとも一部は幾つかの実施形態において再利用することができる。幾つかの実施形態において、内部排出チャネルは
、ガス噴射で供給されるガスの70%〜90%を再利用するように構成することができる。このことは、ガス噴射がヘリウムからなるときのような材料コストを削減するのに役立てることができる。
【0040】
様々な更なる実施形態において、強除熱用のプロセスゾーンの幅は、シート引出し中に変化させることができる。シリコンの幅広単結晶シートを産出するためには、狭い単一の結晶シードを使用して結晶化を開始し、したがって、単結晶シートの幅は、初期的には所望幅よりも狭くなる。例えば、150mmの幅を有するシリコンリボンを生じて、同様の幅を有するサブストレート(substrate)を生ずるようにするのが望ましい。しかし、シート引出しの初期段階においては、シートの初期幅は相当狭い幅、例えば20mm程度であり、その幅は、その後引出し後段階中に増大し得る。このことによって、初期的に生じた転位が成長するリボンを修復させることができ、それはすなわち、転位が狭いシート端縁に達するまで移動する距離が比較的小さいからである。結晶引出し中にシートを幅広にするため、プロセス領域の幅を徐々に増大することができる。本発明の実施形態において、このことは、ガス噴射をサブストレートに供給する領域の幅を増大することによって達成できる。
【0041】
ノズル内のガス噴射の有効幅は、様々な方法で増大することができる。本発明の更なる実施形態に基づくノズル800の、
図8Aは透視図、
図8Bは上面図をそれぞれ示す。ノズル800は、上述のように晶析装置に展開することができるが、図面を分かり易くするため冷却ブロックのような他のコンポーネントは図示しない。しかし、冷却ブロックは、例えば
図1A及び
図1Bに示すようにノズル800を包囲するものと理解されたい。ノズル800は、X軸に平行な横方向に沿って細長く、また開孔804を有し、この開孔804は、ノズル800に貫通し、融液の表面810にガス噴射を供給する。
図8A及び
図8Bに示すように、ノズル800は複数のガス供給口802を有することができ、これらガス供給口802は、個別のガス噴射を開孔804の頂部に指向させるように配列する。複数のガス供給口802は、ガスを開孔に送給して、作動(アクティブ)状態にあるときガス噴射を形成するように個別に構成することができる。例えば、様々な実施形態において、ガス制御システム150(
図1A参照)のようなコントローラは、開孔に沿って設けたガス供給口の任意な組み合わせに指向させるべきガスを個別に制御することができる。例えば、作動状態において、ガス供給口はガスを開孔804に送給するように構成するとともに、不作動(非アクティブ)状態において、ガス供給口は開孔804にガスを送給しないものとすることができる。例えば、ガス制御システム150におけるコントローラ830は、ガスを送給する作動状態にあるガス供給口の数を変化させて、長軸に沿うプロセスゾーンの幅を変化させるように構成でき、これによりプロセスゾーンの幅は、結晶シートを引き出す所定段階中に目標幅を獲得できるようになる。
【0042】
更なる実施形態において、内部排出チャネル経由でガスを排出する排出ゾーンの幅は調整することができる。例えば、複数の排出口を内部排出チャネルに沿って設け、排出口が作動状態にあるときガスを排出する。幾つかの実施形態において、排出チャネルの排出ゾーンの幅はコントローラによってプロセスゾーン幅の調整と協調させて調整でき、プロセスゾーン幅の調整は、作動状態にあるガス供給口の数を個別に調整することによって達成する。特に、コントローラ830は、ガスを受け入れるように作動状態にするガス供給口の数を個別に調整するように設けることができ、これにより、横方向に沿うプロセスゾーンの幅を調整してプロセスゾーンの目標幅を獲得する。これと同時に、コントローラ830は、少なくとも1つの排出チャネルにおいて作動状態にある排出口の数を協調して調整し、目標幅に合致させることができる。例えば、一実施において、w
2が3.5mmと等しいものとし、ガス供給口802の数は図示のように7に等しいものとすることができる。結晶引出しの初期段階では、互いに5mm離れる2つのガス供給口802を作動状態にするとともに、他のガス供給口802は不作動状態にし、ノズル開孔の一部における横方向に沿う1センチメートルのプロセスゾーンを生ずるようにする。これと同時に、互いに5mm離れる内部排出チャネル(図示せず)内における2つの対応する排出口を使用して、1センチメートルの排出幅を有する排出ゾーンを生ずることができる。後段階で、作動状態にするガス供給口の数は7にまで増やすことができるとともに、作動状態にする排出口の数も7にまで増やし、それによってプロセスゾーンの幅を30mmまで広げ、排出ゾーンを広げてプロセスゾーンの幅に合致させることができる。
【0043】
次に
図9につき説明すると、これは、開孔に沿って設けるガス噴射の数が変化するときの位置(w)の関数として、融液表面からの除熱速度のシミュレーション結果を示す。
図9のシミュレーションにおいて、少なくとも6個のガス供給口が、図面のX軸に平行な方向に対応する幅wに沿って等間隔に離れていることと仮定する。曲線902は、ガスを表面に供給するのに使用するw=0の位置に配置した単一の第1供給口にガス噴射を指向させるときの除熱を示す。実験的なシミュレートしたガス噴射流条件に対して、除熱速度の最速値はほぼ120W/cm
2であり、またw=0mmで起こり、w=6mmで除熱速度は100W/cm
2未満に低下する。曲線904は、第1ガス供給口に加えて、ガス噴射を第1ガス供給口に隣接して配置した第2ガス供給口に指向させるときの、除熱を示す。この場合において、除熱の最速値は135W/cm
2でありまたw=0mmで起こるが、w=13mmで除熱速度は100W/cm
2未満に低下する。曲線906は、第1ガス供給口及び第2ガス供給口に加えて、ガス噴射を第2ガス供給口に隣接して設置した第3ガス供給口に指向させるときの、除熱を示す。この場合において、除熱の最速値は140W/cm
2であり、またw=0mmで起こるが、w=20mmまでは除熱速度が100W/cm
2未満に低下しない。曲線908は、第1ガス供給口から第3ガス供給口までのガス供給口に加えて、ガス噴射を第3ガス供給口に隣接して配置した第4ガス供給口に指向させるときの、除熱を示す。この場合において、除熱の最速値は依然として約140W/cm
2であり、またw=0mmで起こるが、w=27mmまででは除熱速度が100W/cm
2未満に低下しない。曲線910は、第1ガス供給口から第4ガス供給口までのガス供給口に加えて、ガス噴射を第4ガス供給口に隣接して配置した第5ガス供給口に指向させるときの、除熱を示す。この場合において、除熱の最速値は依然として約140W/cm
2であり、またw=0mmで起こるが、w=33mmまででは除熱速度は100W/cm
2未満に低下しない。曲線912は、第1ガス供給口から第5ガス供給口までのガス供給口に加えて、ガス噴射を第5ガス供給口に隣接して配置した第6ガス供給口に指向させるときの、除熱を示す。この場合において、除熱の最速値は依然として約140W/cm
2であり、またw=0mmで起こるが、w=42mmまででは除熱速度は100W/cm
2未満に低下しない。加えて、除熱速度はw=33mmまで変化しない。従って、除熱速度が所定の閾値を超える領域の幅は、開孔に沿って配置するガス供給口の数を増やしてガス噴射を指向させることにより都合よく増大することができる。加えて、除熱が均一である領域の幅は増大するが、それは、より多くのガス供給口を使用してガスを融液表面に指向させるからである。
【0044】
図9において示した結果を用いて、
図8C及び
図8Dは、幅広の結晶シートを形成するようにノズル800を動作させる1つのシナリオにおける2つの異なる段階を示す。
図8Cはシート成長の早期段階を示し、この段階において、ガス噴射814はガス供給口802のような単一のガス供給口に指向させたガスから成り、この単一ガス供給口は開孔804に沿う任意の位置にあるものとすることができる。ガス噴射814は、開孔804を通過するときにノズル800の高さに基づいて拡散することができる。しかし、ガス噴射814が融液表面810に到達するとき、
図8Bに示した開孔804の幅w
2の一部においても依然として高除熱速度を生ずることができる。この結果、
図8Bにおいて示すように、幅w
3がw
2よりも大幅に狭いプロセスゾーン(図示せず)を形成することになる。次に、結晶シード816を方向820に沿って引っ張るとき、その結果できたシートである結晶シート818の幅もw
3に近いものになり得る。結晶シート818の幅を増大するため、プロセスゾーンの幅を増大させるが、この増大は、より多くの数のガス供給口802を作動状態にし、このより多い数の供給口802経由でガスを開孔804内に指向させることによって行う。このことは、一実施例において単調に行うことができ、すなわち、ガスをノズル800に送給するのに使用するガス供給口の数を時間とともに単調に増加させて行うことができる。
図8Dに示すその後の段階で、ガスが各ガス供給口802を経て送給するように各ガス供給口802を作動状態にし、幅広のガス噴射である、ガス噴射815を形成し、その結果、結晶シート818よりも幅の広い部分822を生ずるより幅広プロセスゾーンとなり、この部分822は、やはり
図8Bに示す幅w
4を有する。すべてのガス供給口802が作動状態にあるとき、連続的に引っ張る結果、w
4のような所望幅を有する均一に幅広い結晶となる。
【0045】
要約すると、本発明の実施形態は、融液から結晶シートを成長させる従来装置よりも多くの利点を提供する。ガス噴射を供給して融液表面と冷却ブロックとの間に対流領域を生ずる晶析装置の使用は、100W/cm
2〜1500W/cm
2のような極めて高速な除熱を促進する。従来認識されていなかったが、これら高除熱速度は、単結晶シリコンシートの適切な成長のための条件を生じ、この条件において、(111)ファセットを成長するシート前縁で形成する。内部排出チャネルを冷却ブロックに隣接して設けることにより、融液表面上のガス流パターンがより均一になり、成長シートの幅にわたり成長条件のより高い均一性をもたらすことになる。加えて、個別に制御可能な複数のガス供給口及び排出口を使用して融液表面にガス噴射を指向させることは、高品質の結晶シートの成長を促進し、この促進は、結晶牽引は結晶シートの幅を制御した状態で増大させる結晶引出し中にプロセスゾーンの幅を均一に拡大可能にすることによって得られる。
【0046】
本発明は、上述した特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本発明の他の様々な実施形態及び変更は、上述の実施形態に加えて、先に述べた説明及び添付図面から当業者には明らかであろう。従って、他の実施形態及び変更は本発明の範囲内にあることを意図する。さらに、本発明は、特定の実施の背景において特定の環境において特定の目的のためにここで説明しているが、当業者は、その有効性がそれらに限定されず、本発明が多数の環境において多数の目的のために有益に実施できることを認識するであろう。従って、特許請求の範囲の請求項は、上述するように本発明の全幅範囲及び精神の観点から解釈すべきである。