(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475771
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】感圧接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20190218BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20190218BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20190218BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20190218BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20190218BHJP
C08F 220/02 20060101ALI20190218BHJP
C08J 9/32 20060101ALI20190218BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J11/08
C09J11/06
C09J7/38
C09J7/26
C08F220/02
C08J9/32CEY
B32B27/00 M
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-75875(P2017-75875)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2017-222838(P2017-222838A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】10 2016 205 822.3
(32)【優先日】2016年4月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・ルンディング
(72)【発明者】
【氏名】ユリア・ベーフス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・プレンツェル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シューベルト
【審査官】
佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−503451(JP,A)
【文献】
特開2015−218306(JP,A)
【文献】
独国実用新案第202010001353(DE,U1)
【文献】
特開平10−204401(JP,A)
【文献】
特表平11−501956(JP,A)
【文献】
特開2014−005465(JP,A)
【文献】
米国特許第05109083(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00
C08F220/02
C08J 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合の少なくとも一種のポリマーAであって、モノマーベースが、以下のモノマーを含むポリマーA:
a1)ホモポリマーのガラス転移温度が最大−60℃であり、アルコール成分が、1のイソインデックスを有する分岐状の第一級アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル;
a2)アルコール成分が線状C1〜C18アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル;
a3)アクリル酸;
b)感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも5重量%の割合の少なくとも一種の合成ゴム;及び
c)感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも10重量%の割合の少なくとも一種の接着力増強樹脂、
を含む感圧接着剤であって、
上記感圧接着剤が、少なくとも一種のポリ(メタ)アクリレート相及び少なくとも一種の合成ゴム相を含み、
上記合成ゴム相がポリ(メタ)アクリレート相中に分散された状態で存在し、そして
上記の少なくとも一種の接着力増強樹脂が、感圧接着剤のポリ(メタ)アクリレート相と非相溶性である、上記感圧接着剤。
【請求項2】
前記感圧接着剤が、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体によって熱的に架橋されることを特徴とする、請求項1に記載の感圧接着剤。
【請求項3】
前記の少なくとも一種の接着力増強樹脂が炭化水素樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の感圧接着剤。
【請求項4】
発泡したキャリア、及び請求項1〜3のいずれか一つに記載の感圧接着剤を含む、接着テープ。
【請求項5】
前記発泡したキャリアがシンタクチックポリマーフォームを含むことを特徴とする、請求項4に記載の接着テープ。
【請求項6】
前記シンタクチックポリマーフォームが、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で一種以上のポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする、請求項5に記載の接着テープ。
【請求項7】
前記感圧接着剤が、前記発泡したキャリアの少なくとも一つの面に積層されている、請求項4〜6のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項8】
前記発泡したキャリアが、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で少なくとも一種のポリ(メタ)アクリレートBを含み、このポリ(メタ)アクリレートBが、以下のモノマー組成物に由来し得ることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一つに記載の接着テープ:
b1)65〜97重量%のエチルヘキシルアクリレート及び/またはブチルアクリレート、
b2)0〜30重量%のメチルアクリレート、
b3)3〜15重量%のアクリル酸。
【請求項9】
前記発泡したキャリアが熱的に架橋されていることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項10】
前記発泡したキャリアの両面上に、請求項1〜3のいずれか一つに記載の感圧接着剤が配置されていることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一つに記載の接着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面及び両面接着性接着テープに使用されるような感圧接着剤の技術分野に関する。より具体的には、本発明は、特定のモノマー組成物に基づく少なくとも一種のポリ(メタ)アクリレートと少なくとも一種の合成ゴムとの組み合わせをベースとする感圧接着剤に関する。
【0002】
本発明は、中でも、接着技術上重要なパラメータである「湿潤」を目的とする。これは、以下では、感圧接着剤と、被着基材との間の境界面の形成のことと解される。それ故、「湿潤」という用語は、凹凸を均し及び感圧接着剤と基材との間の空気を排除する感圧接着剤の能力を表すものである。湿潤が強いほど、感圧接着剤と基材との間の相互作用がより良好に生じかつ粘着及び接着がより強力になる。特に、粗い表面上で、または製造に起因して凹凸や湾曲を有するかまたは波打った表面上で、機械的負荷によって、一度達成された湿潤が再び弱まる、すなわち脱湿潤が起こることがしばしば観察される。
【0003】
湿潤は、経時的な接着力の発達とは区別されるべきである。良好な初期湿潤の時も、接着力は時間と共になおも上昇する。なぜならば、表面と相互作用できる、接着物質中に含まれるより多くの官能基が、表面の方向に配向するようになるからである。
【背景技術】
【0004】
例えば建築分野もしくは工業製品の工業的製造におけるまたは組み立て目的のための様々な使用分野のためには、益々厚いが、強接着性の接着テープ(いわゆる「構造用接着テープ(Montageklebebaender)」が必要である。接着はしばしば屋外で行われるかまたは接着された製品は屋外の気候の影響に曝されるため、このような接着テープの特性についての期待は多くの場合に高い。それ故、接着は強力で、持続性でかつ耐候性であるべきであり;高い耐湿性、耐熱性及び耐温湿性が多くの場合に必要とされる。更に、接着テープは即座に湿潤するべきであり、そしてこの際、接着の継ぎ目中のまたは被着下地上の凹凸を均しそして最初から高い接着力(所期接着力)を示すべきである。発泡していない接着テープの使用の場合は、良好な湿潤によって、(例えばガラスや透明なプラスチックなどの透明材料の接着において)厚手の接着テープにもますます望まれるようになっている、光学的な欠陥の無い透明な材料の接着が可能になるという利点を追加的に生じる。
【0005】
このような目的に使用される接着テープには、通常は接着剤が付与され、この場合、接着技術的な特性は非常に良好に互いに適合されている必要がある。それ故、凝集力、付着性(「タック」とも称される)、流動性及び他の特性を非常に正確に調整する必要がある。これらの特性に影響を及ぼす感圧接着剤の技術的形態は、個々の特性に対して反対の作用をしばしば有するために、一般的に適合は困難であり、または成果について妥協を甘受しなければならない。
【0006】
加えて、特に非常に厚手の接着テープについては、非常に均質な接着テープを実現することがしばしば困難であり;加工に起因して、非常に厚手の接着テープは層が均質ではないことが多い。これは大概望ましくない。なぜならば、それらの層厚及び製造法に依存しないで明確に定義された特性を示す接着テープがしばしば必要であるからである。
【0007】
感圧接着用途に適した粘弾性の特性を持つ物質は、これらが、機械的変形下に粘性流動するだけでなく、弾性回復力を発達させるという点を特色とする。両方のプロセスは、それぞれの割合に関して、検討される物質の正確な組成、構造、及び架橋度にも、変形の速度及び時間にも、並びに温度にも応じて、互いに特定の比率にある。
【0008】
割合に応じた粘性流動は、接着の達成のために必要である。比較的大きな可動性を持つ高分子によって引き起こされる粘性部分だけが、被着基材上での良好な湿潤及び良好な流動を可能にする。粘性流動の高い割合は、強い自着性(感圧接着性またはタックとも称される)をもたらし、それ故、多くの場合に高い接着力も与える。強く架橋した系、結晶性またはガラス様に硬化したポリマーは、流動可能な成分が欠けているので、一般的に自着性ではない。
【0009】
割合に応じた弾性復元力は、凝集性を達成するために必要である。この復元力は、例えば非常に長鎖で強く絡んだ高分子及び物理的または化学的に架橋された高分子によってもたらされ、そして接着結合に作用する力の伝達を可能にする。復元力により、接着結合が、例えば持続的なせん断負荷の形で接着結合に作用する持続的負荷に対して十分に、比較的長時間にわたって持ちこたえ得るようになる。
【0010】
発泡した多層接着テープでは、持続的な負荷下では、均質ではない応力分布が生じ得、これは、その力が表面に対する感圧接着層の付着力よりも大きい場合には、感圧接着層の部分的な剥離となって現れる。それ故、湿潤した面の割合は比較的小さくなる。
【0011】
基材からの感圧接着剤の流出(ランニング・ダウン)を防ぎ、及び接着複合体における接着剤の十分な安定性を保証するためには、すなわち感圧接着剤の十分な凝集が必要である。しかし、他方では、良好な接着特性のためには、感圧接着剤は、基材上を流動し、境界層において表面と十分な相互作用を形成し、かつ基材表面の良好で持続的な湿潤を保証できる必要がある。(感圧接着層内部の)の接合継ぎ目内部での破壊を防ぐためには、加えて、感圧接着剤の一定の弾性が必要である。
【0012】
感圧接着剤の十分な凝集を達成するためには、これらは一般的に架橋される、すなわち個々の分子を、ブリッジの形成によって互いに結合する。この架橋は様々な方法で行うことができ、例えば物理的及び化学的(熱的)架橋法がある。
【0013】
均質な接着テープの製造のためには、ポリマーを熱的に架橋することが有利である。厚手の層に均一に熱エネルギーを供することも難なく可能である。これに対し、化学線(例えば紫外線、電子ビーム)によって架橋された材料層は、架橋された層中に架橋プロフィルを示す。この架橋プロフィルは、放射線が層中に限られた侵入深さしか持たず、この際、放射線の強度は、加えて、吸収プロセスの故に侵入深さと共に減少するということから生じる。それ故、放射線化学的に架橋された材料層の外側領域は、それより内側にある領域よりも強く架橋され、この際、架橋強度は全体として内側にいくにつれ弱まる。特に厚手の層では、この効果は非常に重大である。
【0014】
例えばEP2305389A2(特許文献1)及びEP2617789A1(特許文献2)は、良好な接着及び凝集特性を持った、熱架橋された発泡されたもしくは発泡されていな構造用接着テープを開示している。しかし、この接着テープは、比較的弱い湿潤挙動を示し、加えて、非極性の下地、特に自動車塗料に対する接着に関しても弱さも示す。
【0015】
WO2014/081623A2(特許文献3)は、自動車塗料上で非常に良好な接着強度を示すUV架橋された多層型構造用接着テープを開示している。これは、外側感圧接着剤層中にコモノマーとして2−プロピルヘプチルアクリレート(PHA)を使用することによって達成され、この際、好ましいコモノマー組成物として、PHAと、エチレン性不飽和基を持つ更に別のコモノマーとの混合物が記載されている。後者は、特に、分岐状、環状もしくは芳香族アルコール成分との(メタ)アクリレート、例えばイソボルニルアクリレート(IBOA)、すなわちホモポリマーが高いガラス転移温度を示しかつ二環式残基を持つアクリル酸エステルである。
【0016】
US2011/0244230A1(特許文献4)は、特に柔軟でありかつ平らでない基材上に接着するのに良好に適したアクリレートベースの発泡接着テープを記載している。しかし、上記の接着テープはUV放射線を用いて架橋されるため、生じる架橋勾配は、劣った湿潤挙動をまねく。
【0017】
EP2690147A2(特許文献5)は、熱架橋されたシンタクチックポリアクリレートフォームとの組み合わせで特に非極性基材上に対する接着に関連して優れた特性を示す、スチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤を記載している。記載の感圧接着剤は高い弾性を示す。それ故、これらは、製造に起因した凹凸を有するか、波形であるかまたは湾曲している表面上への接着にはあまり適していない。この接着剤では、湿潤が、時間の経過と共に機械的負荷によって減少すること、すなわち脱湿潤が起こることが予期される。
【0018】
EP2474587A1(特許文献6)は、発泡したポリアクリレートキャリア、並びにスチレンブロックコポリマーとポリアクリレートとのブレンドである外側感圧接着層を含む感圧接着テープを記載している。特にスチレンブロックコポリマードメイン中に可溶性の添加された接着樹脂が記載されている。実施例によると、UV重合によって製造されそして特にアクリル酸、ブチル−、エチル−、イソオクチル−及び2−エチルヘキシルアクリレートからなるポリアクリレートが有利である。これらのブレンド調合物は、感圧接着剤層の剛性の故に、即座の湿潤はあまり顕著でないことが予期し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】EP2305389A2
【特許文献2】EP2617789A1
【特許文献3】WO2014/081623A2
【特許文献4】US2011/0244230A1
【特許文献5】EP2690147A2
【特許文献6】EP2474587A1
【特許文献7】WO2013/048945A1
【特許文献8】WO2006027389A1
【特許文献9】EP2414143A1
【特許文献10】DE102009015233A1
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】C.Donker,PSTC Annual Technical Seminar,Proceedings,S.149−164,Mai 2001
【非特許文献2】F.R.Schwarzl,Polymermechanik:Struktur und mechanisches Verhalten von Polymeren,Springer Verlag,Berlin,1990,89頁以降
【非特許文献3】Polymer 8/1967、381頁以降
【発明の概要】
【0021】
本発明の課題は、特に強接着性の両面感圧接着テープのための、高性能感圧接着剤を提供することである。該感圧接着剤は、様々な表面エネルギーを持つ表面、例えば金属、プラスチック表面、例えばPP、PE、ポリカーボネート、並びに自動車塗料を素早く湿潤するべきであり、この際、強い接着を構成するべきである。更に、該感圧接着剤またはそれを用いて形成された接着は、高められた温度下でも良好なせん断強度を有し、高い耐温湿性、並びに動的負荷下で高い接着強度、特に低温下において高い接着強度を有するべきである。最後に、該接着の持続的な機械的負荷は、表面からの接着テープの脱湿潤をまねくべきではない。
【0022】
上記課題の解決策は、感圧接着剤の主成分として、単分岐状もしくは非分岐状アルコール成分を有するモノマーの混合物を本質的にベースとするポリ(メタ)アクリレートを使用し、及びこのポリマーを合成ゴムと組み合わせるという思想に基づく。
【0023】
本発明の第一の一般的な対象は、感圧接着剤であって、
a)前記感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で少なくとも一種のポリマーAであって、モノマーベースが以下のモノマーを含むポリマーA:
a1)ホモポリマーのガラス転移温度が最大−60℃であり、アルコール成分が、1のイソインデックスを有する分岐状の第一級アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル;
a2)アルコール成分が線状C
1〜C
18アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル;
a3)アクリル酸;
b)前記感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも5重量%の割合の少なくとも一種の合成ゴム;及び
c)前記感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも10重量%の割合の少なくとも一種の接着力増強樹脂、
を含む感圧接着剤である。
【0024】
本発明による感圧接着剤は、特に、低エネルギー表面の迅速な湿潤、及び接着に持続的な機械的負荷がかけられている場合でも高い脱湿潤抵抗、並びにその他の良好な接着技術的特性を特徴とする。
【0025】
本発明では、感圧接着剤とは、一般の用法の通り、(特に室温で)持続的にタック性並びに接着性である物質のことである。圧力によって基材上に施すことができ、そしてそこに付着し続けることが感圧接着物質の特徴であり、この際、適用される圧力及びこの圧力の作用時間は詳しくは定義されない。幾つか場合において、感圧接着物質の正確な種類、温度及び空気湿度並びに基材に依存して、一瞬の軽い接触を超えない短時間の最小の圧力の作用が付着効果を達成するのに十分であり、他の場合には、高い圧力の比較的長期の作用時間が必要なこともある。
【0026】
感圧接着物質は、特に、持続的なタック及び接着性をもたらす格別に特徴的な粘弾性特性を有する。感圧接着物質に特徴的なのは、機械的に変形されると、粘性流動プロセスも、弾性復元力の発生も起こることである。両方のプロセスは、それぞれの割合に関して、感圧接着物質の正確な組成、構造、及び架橋度にも、変形の速度及び時間にも、並びに温度にも応じて、互いに特定の比率にある。
【0027】
割合に応じた粘性流動は、接着の達成のために必要である。比較的大きな可動性を持つ高分子によって引き起こされる粘性部分のみが、接着すべき基材上での良好な湿潤及び良好な流動を可能にする。粘性流動の高い割合は、強い感圧接着性(タックまたは表面接着性とも称される)をもたらし、それ故、多くの場合に高い接着力も与える。強く架橋した系、結晶性またはガラス様に硬化したポリマーは、流動可能な成分が欠けているので、一般的に感圧接着性ではないか、または少なくとも僅かにしか感圧接着性でない。
【0028】
割合に応じた弾性復元力は、凝集性を達成するために必要である。この復元力は、例えば非常に長鎖で強く絡んだ高分子及び物理的または化学的に架橋された高分子によってもたらされ、そして接着結合に作用する力の伝達を可能にする。復元力により、接着結合が、例えば持続的なせん断負荷の形で接着結合に作用する持続的負荷に対して十分に、比較的長時間にわたって持ちこたえ得るようになる。
【0029】
弾性部分及び粘性部分の尺度並びにこれらの部分の互いの比率をより正確に表現しかつ定量化するためには、動的機械分析(DMA)によって確定可能な値である貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を引用することができる。G’は、物質の弾性部分のための尺度であり、G”は物質の粘性部分のための尺度である。両方の値は変形周波数及び温度に左右される。
【0030】
これらの値は、レオメータによって確定することができる。その際、調べるべき材料は、例えばプレート・プレート構成において、正弦波状に振動するせん断負荷に曝される。ずり応力制御された機器の場合、時間の関数としての変形及びずり応力の導入に対するこの変形の時間的ずれが測定される。この時間的ずれは位相角δと呼ばれる。
【0031】
貯蔵弾性率G’は次のように定義されている。すなわちG’=(τ/γ)・cos(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトルとの間の位相ずれ)。損失弾性率G’’は次のように定義される:G’’=(τ/γ)・sin(δ)(τ=ずり応力、γ=変形、δ=位相角=ずり応力ベクトルと変形ベクトルとの間の位相ずれ)。
【0032】
材料が一般的に感圧接着性とみなされ、また本明細書の意味において感圧接着性と定義されるのは、室温において、ここでは定義に基づき23℃で、変形周波数が10
0〜10
1rad/secの範囲の際に、G’が少なくとも部分的に10
3〜10
7Paの範囲内にある場合で、かつG”も同様に少なくとも部分的にこの範囲内にある場合である。「部分的」とは、10
0rad/sec以上10
1rad/sec以下の変形周波数範囲(横座標)並びに10
3Pa以上10
7Pa以下のG’値の範囲(縦座標)に広がるウィンドウ内に、G’曲線の少なくとも一区間があることである。G”についても同様である。
【0033】
「(メタ)アクリル酸エステル」という用語は、一般的な解釈に一致して、アクリル酸エステルだけでなく、メタアクリル酸エステルも包含するものと解される。「(メタ)アクリレート」という用語についても同様である。
【0034】
イソインデックスは、(メタ)アクリレートコモノマーのアルコール残基の分岐度の目安またはアイソマー混合物の場合には平均値であり、そして第一級アルコールのメチル基(−CH
3)から1を引いた数と定義される(WO2013/048945A1(特許文献7))。イソインデックスの確定のためには、(メタ)アクリル酸エステルの遊離のアルコールをトリクロロアセチルイソシアナートと反応させてカルバメートとし、そして以下の等式1に従って計算を行う。
【0036】
分岐度は、アルコールまたはアルコール混合物の
1H−NMR分光分析によって求めることができる。等式1中のI(CH
3)は、積分によって決定したメチルプロトンの絶対ピーク面積(0.70ppmと0.95ppmの間の範囲のδ)を意味し、そしてI(CH
2−OR)は、誘導体化したアルコールのカルバメートに対してα位置におけるメチレンプロトンの絶対ピーク面積(3.9ppmと4.5ppmとの間のδ)を意味する。1のイソインデックスは、アルコール残基が正確に一つの分岐点を有することを意味する。
【0037】
ホモポリマーのガラス転移温度が最大−60℃であり、アルコール成分が、イソインデックスが1の分岐状第一級アルコールをベースとする好ましい(メタ)アクリル酸エステルは、例えば2−プロピルヘプチルアクリレート(PHA)及びイソデシルアクリレートである。
【0038】
好ましくは、本発明による感圧接着剤は、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体の使用下に、プロトンアクセプター、電子対ドナー及び電子対アクセプターの不在下に熱的に架橋される。熱架橋は、材料層全体を通して有利に均質な架橋を引き起こし、他方で、例えば、放射線架橋された材料では、材料の内部に向かって減少する架橋密度を持つ架橋プロフィルが観察される。均質な架橋された感圧接着剤層は、接着が負荷にさらされた時に起こり得るような、応力の均一な分布を可能にする。接着性及び凝集性の特性は、層全体について非常に正確に均衡されるために、正確に予測可能な特性プロフィルを持つ負荷可能な接着を得ることができる。特に好ましくは、本発明による感圧接着剤は、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体の使用下に、架橋促進剤の不在下に熱的に架橋される。
【0039】
好ましくは、ポリマーAは、少なくとも500,000g/モル、特に好ましくは少なくとも700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。同様に好ましくは、ポリマーAは、最大1,700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。重量平均分子量M
wと数平均分子量M
nとの商として求められる多分散度PD、すなわちモル質量分布の幅は、ポリマーAの場合は、好ましくは10≦PD≦100、特に好ましくは20≦PD≦80である。
【0040】
本発明による感圧接着剤は、更に少なくとも一種の合成ゴムを含む。本発明によれば、一種以上の合成ゴムは、感圧接着剤中に、該感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも5重量%、より好ましくは5〜30重量%の割合で含まれる。特に好ましくは、該感圧接着剤は、それぞれ感圧接着剤の総重量を基準にして7.5〜25重量%、特に10〜22.5重量%の割合で少なくとも一種の合成ゴムを含む。複数種の合成ゴムが本発明による感圧接着剤中に含まれる場合には、上記の重量割合は、この合成ゴムの総量に関する。
【0041】
本発明による感圧接着剤中でのポリアクリレートAと合成ゴムとの重量比は、好ましくは2:1〜15:1、より好ましくは2.2:1〜9.5:1、特に2.5:1〜7:1である。
【0042】
好ましくは、本発明による感圧接着剤の少なくとも一種の合成ゴムは、A−B、A−B−A、(A−B)
n、(A−B)
nXまたは(A−B−A)
nXの構造を有するブロックコポリマーである。
【0043】
前記式中、
−ブロックAは、互いに独立して、少なくとも一種のビニル芳香族類の重合によって形成されるポリマーを表し;
−ブロックBは、互いに独立して、C原子数4〜18の共役ジエン及び/またはイソブチレンの重合によって形成されたポリマー、あるいはこのようなポリマーの部分または完全水素化誘導体を表し;
−Xは、カップリング試薬または開始剤の残基を表し、そして
−nは、≧2の整数を表す。
【0044】
特に、本発明による感圧接着剤の全ての合成ゴムが上述のような構造を持つブロックコポリマーである。それ故、本発明による感圧接着剤は、上述のような構造を持つ異なるブロックコポリマーの混合物を含むこともできる。
【0045】
すなわち、好ましいブロックコポリマー(ビニル芳香族ブロックコポリマー)は、一種以上のゴム様ブロックB(軟質ブロック)及び一種以上のガラス様ブロックA(硬質ブロック)を含む。特に好ましくは、本発明による感圧接着剤の少なくとも一種の合成ゴムは、A−B、A−B−A、(A−B)
3Xまたは(A−B)
4Xの構造を持つブロックコポリマーであり、ここでA、B及びXには上述の意味が適用される。非常に特に好ましくは、本発明による感圧接着剤の全ての合成ゴムが、A−B、A−B−A、(A−B)
3Xまたは(A−B)
4Xの構造を持つブロックコポリマーであり、ここでA、B及びXには上記の意味が適用される。特に、本発明による感圧接着剤の合成ゴムは、好ましくは少なくともジブロックコポリマーA−B及び/またはトリブロックコポリマーA−B−Aを含む、A−B、A−B−A、(A−B)
3Xまたは(A−B)
4Xの構造を持つブロックコポリマーの混合物である。
【0046】
ブロックBは、一般的に、室温を超える好ましいガラス転移温度(Tg)を持つガラス様ブロックである。特に好ましくは、ガラス様ブロックのTgは、少なくとも40℃、特に少なくとも60℃、非常に特に好ましくは少なくとも80℃、極めて好ましくは少なくとも100℃である。全ブロックコポリマー中のビニル芳香族ブロックAの割合は、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜33重量%である。ブロックAの構成のためのビニル芳香族類は、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン及び/または他のスチレン誘導体を含む。それ故、ブロックAは、ホモポリマーまたはコポリマーとして存在し得る。特に好ましくはブロックAはポリスチレンである。
【0047】
更に、ビニル芳香族ブロックコポリマーは、一般的に、室温よりも低い好ましいTgを有するゴム様ブロックBまたは軟質ブロックを有する。軟質ブロックのTgは、特に好ましくは0℃未満、特に−10℃未満、例えば−40℃未満、非常に特に好ましくは−60℃未満である。
【0048】
軟質ブロックBのためのモノマーとしての好ましい共役ジエンは、特に、ブタジエン、イソプレン、エチルブタジエン、フェニルブタジエン、ピペリレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、エチルヘキサジエン、ジメチルブタジエン及びファルネセン異性体、並びに上記のモノマーの任意の混合物からなる群から選択される。ブロックBもホモポリマーとしてまたはコポリマーとして存在し得る。
【0049】
特に好ましくは、軟質ブロックBのためのモノマーとしての共役ジエンは、ブタジエン及びイソプレンから選択される。例えば、軟質ブロックBは、ポリイソプレン、ポリブタジエン、またはこれら両者のポリマーの部分的にもしくは完全に水素化された誘導体、例えば特にポリブチレンブタジエン;またはブタジエン及びイソプレンからなる混合物でできたポリマーである。非常に特に好ましくは、ブロックBはポリブタジエンである。
【0050】
本発明による感圧接着剤は、更に少なくとも一種の接着力増強樹脂を含む。
【0051】
接着力増強樹脂は、好ましくは、一種以上の合成ゴムと相溶性の炭化水素樹脂である。「相溶性」とは、樹脂が、分子レベルで各々のポリマー中に溶解しそしてドメインが形成せず、そうしてポリマーのガラス転移温度及び樹脂のガラス転移温度から一つだけの混合ガラス転移温度が生じることと解される。一種以上の合成ゴムと相溶性の炭化水素樹脂は、好ましくは、ジシクロペンタジエンの水素化重合体;C5−、C5/C9−またはC9−モノマーをベースとする水素化されていないかまたは部分的に、選択的にもしくは完全に水素化された炭化水素樹脂;及びα−ピネン及びもしくはβ−ピネン及び/もしくはδ−リモネンをベースとするポリテルペン樹脂、並びに上記の炭化水素樹脂の混合物からなる群から選択される。一種以上の合成ゴムと相溶性の炭化水素樹脂は、好ましくは、本発明による感圧接着剤のポリアクリレートとは相溶性ではない。それ故、その芳香族の割合は、あまり高くあるべきではない。それ故、本発明による感圧接着剤の一種以上のポリ(メタ)アクリレート相は好ましくは接着力増強樹脂を含まない。
【0052】
本発明による感圧接着剤の、合成ゴムと相容性のこの炭化水素樹脂は、好ましくは少なくとも0℃、非常に好ましくは少なくとも20℃のDACP値、及び/または好ましくは少なくとも40℃、非常に好ましくは少なくとも60℃のMMAP値を有する。MMAP及びDACP値の決定のためには、C.Donker,PSTC Annual Technical Seminar,Proceedings,S.149−164,Mai 2001(非特許文献1)を参照されたい。
【0053】
合成ゴムと相溶性の複数種の炭化水素樹脂が本発明による感圧接着剤に含まれる場合には、上記の記載は、好ましくは、本発明による感圧接着剤に含まれる、合成ゴムと相溶性の炭化水素樹脂の全てに当てはまる。
【0054】
一種以上の合成ゴムと相溶性の炭化水素樹脂は、本発明による感圧接着剤中に、感圧接着剤の総重量を基準にして好ましくは合計して10〜30重量%、特に好ましくは合計して15〜25重量%の割合で含まれる。
【0055】
本発明の更に別の対象は、発泡したキャリアと、本発明による感圧接着剤とを含む接着テープである。好ましくは、発泡したキャリアは、シンタクチックポリマーフォームを含む。「シンタクチックフォーム」という用語は、独立気泡型フォームの特殊な形態を表すものであり、それの空隙が、ガラス中空球体、セラミック中空球体及び/またはポリマー中空球体によって形成されているものである。
【0056】
シンタクチックポリマーフォーム層の裏側には、安定化またはカバーのために、例えばライナーまたは慣用のフィルム材料を備えることができ、そうして本発明による少なくとも二層の接着テープを含む少なくとも一つの三層の系が存在するようにできる。
【0057】
十分に厚いポリマーフォーム層の場合には、該感圧接着剤層とは反対側の、該ポリマーフォーム層の二層系における自由な面は、これを、短い侵入深さの架橋プロセスによって強く架橋して、フォームキャリア層の一部だけが強く架橋されるようにし、他方、感圧接着剤層側の他方のキャリア面上では元々存在する粘弾性の特性が保持されるようにして安定化することもできる。
【0058】
特に好ましくは、発泡したキャリアの両面上に感圧接着剤が配置され、この際、これらの感圧接着剤の一方は、本発明による感圧接着剤である。特に、発泡したキャリアの両面に、本発明による感圧接着剤が配置される。この場合、接着テープの両面が、本発明による感圧接着剤の有利な接着技術上の特性を持つことになるため有利である。
【0059】
特殊な実施形態の一つでは、発泡したキャリアの両面に感圧接着剤が配置され、そしてこれらの両側の感圧接着剤は、同じ濃度で同一の添加剤、特に機能性添加剤及び/または充填材を含む。同様に、両感圧接着剤は、機能性添加剤及び/または充填材を含まないこともできる。特定の実施形態の一つでは、発泡したキャリアの両面上に、感圧接着剤、特に本発明による感圧接着剤が配置され、そしてこれらの感圧接着剤は、化学的に、物理的に及び/またはそれらのサイズが同一である。特に、両感圧接着剤は完全に同一であり、この際、常在濃度範囲での不純物、生産起因の不精確さ、及び類似の他の原因から生じ得るような、本質的ではない不一致は考慮されない。
【0060】
発泡したキャリアは、好ましくは、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で、ゴム、特に天然ゴム、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート及びスチレンブロックコポリマー並びに上記のポリマーのブレンドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマーを含む。特に好ましくは、発泡したキャリアは、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で一種以上のポリ(メタ)アクリレートを含む。
【0061】
特に、発泡したキャリアは、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で、以下のモノマー組成物に由来し得る少なくとも一種のポリ(メタ)アクリレートBを含む:
b1)65〜97重量%のエチルヘキシルアクリレート及び/またはブチルアクリレート、
b2)0〜30重量%のメチルアクリレート、
b3)3〜15重量%のアクリル酸。
【0062】
好ましくは、発泡したキャリア中に含まれる一種以上のポリマー、特に好ましくはポリマーBは、少なくとも500,000g/モル、特に好ましくは少なくとも700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。同様に好ましくは、発泡したキャリア中に含まれるポリマーは、最大で1,700,000g/モルの重量平均分子量M
wを有する。重量平均分子量M
wと数平均分子量M
nとの商として求められる多分散度PD、すなわちモル質量分布の幅は、発泡したキャリア中に含まれるポリマーでは、好ましくは10≦PD≦100、特に好ましくは20≦PD≦80である。
【0063】
本明細書の枠内において、上面及び下面という概念が使用される場合には、これらは、発泡したキャリアの両面の場所の区別のみに役立ち、そして方向に関する他の情報は含むべきではない。すなわち、「上面」の上にとは、特に、対応する層の面の一方の上のことを意味し、下面の上にとは、この対応する層の他面の上のことを意味する。
【0064】
本発明による感圧接着テープの構成中に使用されるポリマーは、従来技術に従い、好ましくは溶液状態で、フリーラジカル重合によって優れて製造できる。場合により後続する溶融物からの加工の場合には、溶剤を重合の後に除去する。
【0065】
発泡したキャリアは、好ましくは溶融物から層を形成する。本発明による感圧接着剤も好ましくは溶融物から形成される;感圧接着剤層は通常はわずか100μmまでの層厚で生成されるために、本発明による感圧接着剤は溶液からもコーティング及びその後に乾燥できる。特に好ましくは、本発明による接着テープの構成中に使用される全てのポリ(メタ)アクリレート材料はホットメルトプロセスで製造、加工及びコーティングされる。
【0066】
非晶質ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリレートの溶融物の定義のためには、本発明では、F.R.Schwarzl,Polymermechanik:Struktur und mechanisches Verhalten von Polymeren,Springer Verlag,Berlin,1990,89頁以降(非特許文献2)で使用されている基準(すなわち、約η≒10
4Pa・sのオーダーの粘度を有し及び内部減衰が≧1のtanδに達する)が用いられる。
【0067】
本発明による接着テープの特定の層が溶融物からのコーティングによって製造されるが、後続の熱架橋の開始のために熱架橋剤の均一な分布のためにこれらの架橋剤をコーティングの前に添加する必要がある場合には、熱架橋剤がポリマー溶融物の生成のために高温に曝され、それ故コーティングの前に既に不制御のポリマー架橋(いわゆるゲル化)を引き起こすという問題が発生する。このゲル化を大幅に抑制するために、ホットメルト法では通常の非常に反応不活発な架橋剤を、くわしくはコーティングの少し前になって始めて使用する。しかし、コーティングの後にも満足できる架橋の成果を達成するためには、いわゆる「促進剤」が混合される。
【0068】
溶液からコーティングされた熱架橋するべきポリマー系のためにも、促進剤の使用は有意義であり得、そして多くの場合に実行される。熱的に開始される架橋過程は、通常は、塗布された層からの溶剤の熱による除去(すなわち、材料層の乾燥)と組み合わされる。この際、溶剤のあまりに急速な除去は、粗悪に形成されたムラのある層を招く、というのも、これは例えば気泡の形成を招くからである。この理由から、乾燥は好ましくは温和な温度で行われる。これらの温度でも、十分に速く進行する良好な架橋を保証するために、溶剤系に促進剤を加えることもできる。
【0069】
この時、生じる層の厚さがあまり厚くなく、そのため施与されるポリマー溶液の高められた粘度が(ほぼ溶剤を含まない溶融物と比べて)大きな問題を伴わない場合には、溶液からのコーティングが多くの場合に好ましい。
【0070】
促進剤または促進作用する物質としては、特に、プロトンアクセプター、電子対ドナー(ルイス塩基)及び/または電子対アクセプター(ルイス酸)が使用される。促進剤とは、十分な反応速度を保証するという点で架橋反応を援助する化合物または化学品である。これは、特に、触媒作用により(架橋反応の活性化により)及び/または架橋剤物質もしくは架橋すべき高分子の官能基を、高分子の互いの結合反応(ブリッジ形成、ネットワーク形成)の意味で反応し得るかまたは更なる官能基と反応し得る官能基に転換することによって行われる。
【0071】
促進剤自体は、このような結合反応には関与しないが(すなわちそれ自体は架橋しない)、最終的には反応生成物またはフラグメントの形でネットワークに組み入れられ得るかまたはこれらに結合し得る。すなわち、促進剤は、架橋反応の速度の本質的な改善を保証する。
【0072】
これに対して架橋剤は、それら自体の官能基によって、ブリッジ形成を介してネットワークをもたらす反応、特に付加反応もしくは置換反応に関与することができる物質である。更に、(例えば上記の促進または他のプロセスによって)架橋反応の枠内で、引き続いて架橋すべきポリマーの高分子間のブリッジ形成をもたらす官能基に変換される官能基も含まれ得る。
【0073】
促進剤の不在下での架橋反応は、選択された反応パラメータ(この場合特に、ポリアクリレートの加工温度未満の温度)では、進行しないかまたは不十分な速度でしか進行しないであろう。架橋剤として使用される多くのエポキシドは、むしろ反応不活発な性質を有し、そのため、これらは、促進剤が無い場合には、満足な架橋の成果をもたらさない。
【0074】
プロトンドナー、特にカルボン酸またはカルボン酸基またはそれの脱プロトン化誘導体は、本発明の意味においては促進剤には数えられない。
【0075】
しかし、本発明による感圧接着剤及び/または発泡したキャリア中の促進剤の存在は不利ともなり得る。例えば、特に窒素含有促進剤、例えばアミンは、時間と共に酸化プロセスによって黄変する傾向があり、そのため、このような促進剤系は、特に透明なまたは白色に着色された感圧接着剤または多層型感圧接着テープでは、適性が低いかまたは不適である。
【0076】
塩様のまたは塩を形成する促進剤(特に塩基性促進剤)、例えば上記のアミンまたは塩化亜鉛は、製品の高められた水分容量をもたらし得る、というのも、塩は一般的に吸湿特性を持つからである。特に、意図された使用分野の故に非常に高い耐温湿性を有するべき感圧接着剤の場合には、このような促進剤はあまり適していない。
【0077】
それ故、本発明によれば、空気と接触する特に本発明による一種以上の感圧接着剤の熱架橋を、促進剤を混合せずに、エポキシシクロヘキシル誘導体を用いて達成することが目的とされる。この際、不在とは、特に、外部添加された(すなわち重合導入されていないまたはポリマー骨格に組み込まれていない)促進剤に関することであり;しかし、特に好ましくは、外部添加された促進剤も重合導入された促進剤も存在しない、すなわち促進剤が全く存在しない。
【0078】
ポリマーをベースとする層の性質、及びそれらの物理的特性(例えば粘弾性、凝集、弾性成分)は、それらの架橋のタイプ及び程度によって影響され得る。
【0079】
好ましくは、本発明による感圧接着剤は、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体によって熱架橋される。特に好ましくは、本発明による感圧接着剤は、一種以上のエポキシシクロヘキシルカルボキシレート、特に(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(CAS2386−87−0)によって熱架橋される。
【0080】
一種以上のエポキシシクロヘキシル誘導体系架橋剤は、本発明による感圧接着剤の製造のための組成物中に、それぞれ架橋すべきポリマー100重量部に対して(感圧接着剤に他の添加剤が添加されない場合には、応じて架橋すべき感圧接着剤100重量部に対して)好ましくは0.4重量部までの総量で、より好ましくは0.3重量部までの総量で含まれる。ポリマー100重量部に対し0.4重量部を超える架橋剤量では、接着力の損失が益々見込まれるようになり、そして湿潤が劇的に悪化する。非常に特に好ましい架橋剤の割合は、例えば、(ポリマー100重量部に対して)0.12〜0.30重量部の範囲、特に0.15〜0.25重量部の範囲である。
【0081】
本発明による感圧接着剤が一種以上の促進剤を含む場合には、これは、架橋すべきポリマー100重量部に対して好ましくは0.1〜1.5重量部、好ましくは0.15〜1.2重量部の割合で含まれる。
【0082】
発泡されたキャリアも好ましくは熱架橋され、これは、粘弾性層の非常に均質な形成をもたらす。特に好ましくは、発泡されたキャリアは、一種以上のグリシジルエーテル、特に一種以上のポリグリシジルエーテル、非常に好ましくはペンタエリトリトールテトラグリシドエーテル(CAS3126−63−4)によって熱的に架橋される。この架橋は、特に、促進剤としてのアミンと組み合わせて、特に好ましくはイソホロンジアミン(CAS2855−13−2)と組み合わせて行われる。一種以上の架橋剤は、発泡したキャリアの製造のための組成物中に、架橋すべきポリマー100重量部を基準にして、好ましくは1.0重量部まで、より好ましくは0.8重量部までの量で含まれる。非常に特に好ましい架橋剤の割合は、例えば、架橋すべきポリマー100重量部に対して0.05〜0.6重量部の範囲、特に0.10〜0.5重量部の範囲である。
【0083】
一種以上の促進剤は、発泡したキャリアの製造のための組成物中において、架橋すべきポリマー100重量部を基準にして、好ましくは0.1〜1.5重量部、より好ましくは0.15〜1.2重量部の割合で含まれる。
【0084】
発泡したキャリア中のアミン系促進剤の存在は、特に、三層または多層構成では重要ではない、というのも、これらの場合ではキャリア層は、外側の感圧接着剤層によって、空気酸素などの酸化性物質の影響から大幅に遮られるからである。
【0085】
発泡したキャリア層及び一つ以上の本発明による感圧接着層の熱架橋は、
例えば感圧接着剤層がまだ架橋されていないキャリア上にコーティングされるかまたはこれらの層が共通のプロセスにおいて一緒に形成される時に、同時に実施できる。
【0086】
しかし、個々の層は、例えば感圧接着剤層を既に熱架橋した発泡キャリア層にコーティングし、次いで熱架橋する場合にまたは感圧接着剤層を他の箇所で形成及び熱架橋し(例えばリリース材料などの一次的なキャリア上で行う場合)、次いで既に架橋した発泡キャリア上に積層する場合には、別々のプロセスでも熱架橋することもできる。後者のためには特に、発泡したキャリア層及び/または一つ以上の感圧接着剤層を、例えばコロナ処理及び/もしくはプラズマ処理及び/または反応性コロナ処理及び/もしくは反応性プラズマ処理(例えば窒素、酸素、フッ素及び/または他のガスなどのガスを使用して)及び/または火炎処理(Flame Treatment)によって、化学的に及び/または物理的に前処理することが有利であり得る。
【0087】
本発明による特に三層の両面接着テープの製造は、WO2006027389A1(特許文献8)における三層または多層系についての製法に応じて行うこともできる。そこに記載の製造及びコーティング方法は、本明細書の接着テープのためにも類似して使用でき;それ故、WO2006027389A1(特許文献8)の開示内容は、本明細書に明示的に掲載されたものとし、またWO2006027389A1(特許文献8)に記載の製品構成の製造についても同様である。
【0088】
発泡されたキャリア層の製造のためのマイクロバルーンを用いた発泡は、好ましくは、EP2414143A1(特許文献9)及びDE102009015233A1(特許文献10)に記載の方法に従い行われる。
【0089】
発泡されたキャリアは、好ましくは、圧力負荷下に流動挙動(「クリープ」とも称される)を示す非常に高粘性の液体と見なされる。この意味での粘弾性材料は、好ましくは既に重力によって、すなわちそれ自体の重量による負荷下で、程度の差はあれゆっくりと流動しそして特に下地上を流れるかまたは下地を湿潤する能力を有する。しかし、少なくとも、この効果は外部圧力作用下に起こる。例えば接着テープを下地上に押圧することによる圧力の上昇は、この挙動を明らかに促進できる。
【0090】
更に、ここに記載の好ましい発泡キャリアの意味での粘弾性材料は、ゆっくりとした力の作用下に、それに作用する力を緩和する能力を有する。すなわち、これらは、力を振動及び/または変形(これは(少なくとも部分的に)可逆的であることもできる)に分散することができ、それ故、作用する力を「緩衝」でき、そして作用する力による機械的な破壊を好ましく防ぐか、しかし少なくとも低減でき、または破壊が始まる時点を遅らせることができる。非常に迅速に作用する力の場合には、粘弾性材料は通常な粘弾性の挙動、すなわち完全に可逆性の変形の挙動を示し、この際、材料の弾性力を超えている力は破断を招く恐れがある。
【0091】
これと反対のものが、ゆっくりとした力の作用下でも上記の弾性挙動を示す弾性材料である。弾性挙動は、基本的に湿潤に対して不利に作用する。それ故、本発明による感圧接着剤も、急速な力の負荷下での際だった弾性挙動にもかかわらず、全体としてはむしろ粘弾性挙動を示し、特に長期の時間スケールでむしろ液体のように粘性挙動し、それ故、最適でかつ特に迅速な湿潤を引き起こすことが有利である。
【0092】
本発明による接着テープの一つ以上の層、特に発泡したキャリア層のための適当な添加物は、ポリマー中空球、ポリマー中実球、ガラス中空球、ガラス中実球、セラミック中空球、セラミック中実球及び炭素中実球(「カーボンマイクロバルーン」)である。
【0093】
特に発泡したキャリア中の、しかし同様に本発明による感圧接着剤中における特に好ましい添加剤は発泡剤である。好ましい発泡剤は、場合によっては完全に膨張した状態でも使用できる膨張性ポリマーマイクロ中空体である。特に好ましいものは、熱及び/または他のエネルギー供給下に膨張できるマイクロ中空体、特にガス−及び/または液体充填ポリマー球であり、それの外皮は、例えば熱可塑性材料、例えばポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、PVDCまたはポリスチレンからなる。
【0094】
対応するポリマーベースの層、特に発泡したキャリア層の熱せん断強度を高めるためには、シリカ、有利にはジメチルジクロロシランで表面変性された沈降シリカの添加を利用できる。このようなシリカは、透明な製品にも優れて使用できる。特に透明な接着テープの場合には、シリカが、ポリマー100重量部に対して15重量部までの割合で添加されると有利である。
【0095】
任意選択的に、本発明による接着テープの全ての層、特に本発明による感圧接着層中には、可塑剤が含まれ得る。好ましい可塑剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー、フタレート、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(例えばHexamoll(登録商標)DINCH、BASF社、CAS166412−78−8)、水溶性可塑剤、軟質樹脂、ホスフェート(例えばLevagard(登録商標)DMPP、Lanxess社、CAS18755−43−6)及びポリホスフェートである。
【0096】
本発明による接着テープは、特にそれの好ましい実施形態では、従来技術の接着テープに対して大きな相違点を持つ:
熱架橋によって、該感圧接着テープは、その層中に架橋プロフィルを持たない。化学線(紫外線、電子線)によって架橋された粘弾性層並びに感圧接着剤層は、各々の架橋された層を通して架橋プロフィルを示す。熱架橋された材料層はこの挙動を示さない。なぜならば、熱が均一に層中に侵入できるからである。
【0097】
促進剤物質の不在は分析により証明できる。促進剤の存在下に架橋された系は、この促進剤の残渣、例えば促進剤としてのアミンの場合は窒素化合物、塩化亜鉛または類似物を含む。
【0098】
加えて、エポキシシクロヘキシル誘導体を用いて熱架橋された本発明によるポリアクリレート系感圧接着剤は、他の架橋剤を用いて架橋された系と比べて高い接着力を有することが実証できた。この特性は、恐らくは特殊な架橋構造を原因とし得るものである。この相違は、本発明による接着テープにも影響を及ぼす。粘弾性ポリ(メタ)アクリレートフォーム層を使用し、そしてこれの少なくとも一方の面に、本発明に従う熱的に、特にエポキシシクロヘキシル誘導体を用いて架橋されたブレンド感圧接着剤を備えると、接着力ばかりでなく、この接着テープ面上の湿潤挙動も、
−対応する感圧接着剤を、弾性ポリマーキャリア(例えばPEなどの慣用のフォームキャリア)上に有する系よりも、または
−同一の粘弾性のキャリアを有するが、他の感圧接着剤(たとえそれ自体は接着性が明らかにより高い場合も)を有する系よりも
再び高いまたは良好である。
【0099】
すなわち、接着テープの接着力のためには、外側の感圧接着剤だけでなく、発泡したキャリアも同様に役割を果たすために、優れた接着性のためには、系全体が重要である。すなわち、本発明による接着テープの好ましい一形態は、粘弾性ポリアクリレートフォーム層とそれ自体では(すなわち、例えばキャリアとして粘弾性フィルム下地を用いた)感圧接着性が強くない感圧接着剤層との組み合わせも含み、この際、これらの両層の協力によって基材に対する接着挙動が最適化される。それ故、それ自体良好に感圧接着性の感圧接着剤、特に慣用の弾性キャリア上に存在する感圧接着剤の場合よりもしばしばかなり良好な接着力及び湿潤挙動が達成される。
【0100】
本発明による接着テープには、その片面または両面にもリリース材料を施与することができる。リリース材料は、例えばシリコーン、フィルム、シリコーン処理されたフィルムまたは紙、表面処理されたフィルムまたは紙、または類似物であることができ、本質的にはすなわち所謂(リリース)ライナーであることができる。
【0101】
本発明による接着テープは、更に別の層を含むこともでき、すなわち3超の層数を有することができる。この際、本質的な接着技術的特性の既に述べた改良を生じさせるために、少なくとも間接的に、より好ましくは直接、本発明による感圧接着層を発泡されたキャリア層に備えることが好ましい。
【0102】
本発明による接着テープは、追加的に非常に高い接着力を有する非常に厚手の製品として提供できることを特徴とする。このような製品は、例えば建築部門、自動車工業、または凹凸もしくは空洞を均す必要のある接着の場合に使用される。本発明による接着テープは、数マイクロメータから数百マイクロメータの通常の厚さで、しかし有利には300μm超、例えば500μm以上、1000μm以上、1500μm以上、2000μm以上、または更には3000μm以上の厚さで製造することができる。更に厚手の製品も実現可能である。
【0103】
発泡したキャリア層の良好な緩和挙動に基づいて、本発明による接着テープは、機械的な負荷、衝突及び類似の力などの力の作用を捕らえそしてそのエネルギーを拡散するのに適している。それ故、本発明による接着テープは、例えば壊れやすい物体の接着のために、エレクトロニクス分野において及び類似の分野において、衝撃及び/または振動減衰作用が望ましい時にはどのような場合でも非常に好適である。異なる熱膨張係数を持つ材料を互いに接着すべき場合に、本発明による接着テープを格別有利に使用できる。というのも、本発明による接着テープは、互いに接着された物体または表面の異なる膨張挙動によって熱間で生じる応力をその緩和特性によって拡散できるからである。この際、慣用の接着テープは、多くの場合破壊を招く傾向がある、すなわち接着部分の弱化またはそれどころか破断を招く。
【0104】
一方では、関連する接着テープ面上に施与された感圧接着層の厚さが、他方では、その下にある発泡したキャリア層の厚さも、本発明による接着テープの各々の面の接着強度に対し、程度の差はあれ大きくなり得る影響を及ぼすことが認められた。
【0105】
好ましくは、本発明による感圧接着剤は、100μmまで、より好ましくは75μmまで、特に好ましくは50μmまでの層厚で存在する。それ故、発泡したキャリア層は、組み合わせた場合に、好ましくは少なくとも400μm、より好ましくは少なくとも900μm、非常に特に好ましくは少なくとも1400μm、特に少なくとも1900μm、非常に特に好ましくは少なくとも2400μmの厚さを有する。
【0106】
本発明による接着テープは、良好な耐湿性及び耐温湿性も有する。これらは、非常に高い接着力を有し;すなわち、明らかに、良好な接着剤に必要な特性である流動挙動と凝集力を二つの異なる層で「配分」すること、それ故これらの特性のより良好な調節を実現できるようにすることが成功した。粘弾性キャリア層の良好な流動性は、特にこれらがポリ(メタ)アクリレートをベースとする場合に、基材上の製品全体の良好な流動性をもたらす。それ故、一つ以上の感圧接着剤層に比較的高い凝集力を供することができ、この際、接着テープの接着力は全体的に不利に影響を受けない。
【0107】
本発明による接着テープは、非極性自動車塗料上に飾り縁、エンブレム及びバンパーを接着及び固定するのにも格別良好に適している。必要な場合には、接着強度を更に高めるために、接着の前にこれらを更にプライマーで処理することができる。
【0108】
本発明の接着テープが卓越して適している更に別の使用分野は、例えば、建物の建設、建物の解体、建物の装備及び一般的に建築分野(各々内装及び/または外装);DIY分野、模型製作、家具製造、船舶及び航空機の建造、電子及び電気工業(例えば、家庭用エレクトロニクス、白物、褐色物、良好な耐熱性に基づいて赤物も);並びに交通安全(例えば道路標識など)である。
【実施例】
【0109】
測定方法:
固形物含有率(測定法A1):
固形物含有率は、ポリマー溶液中の気化できない構成分の割合の目安である。これは、2時間120℃で乾燥庫中で、気化可能な成分を蒸発させ、そして残留物を再び計量することによって重量分析により決定される。
【0110】
K値(フィケンチャー法に基づく)(測定法A2):
K値は、高重合体物質の平均分子サイズに関する尺度である。測定のため、トルエンに溶かした1パーセント(1g/100ml)のポリマー溶液を調製し、VOGEL−OSSAG粘度計によりこの溶液の動粘性を決定する。トルエンの粘度に基づく規格化により相対的な粘度が得られ、この粘度からフィケンチャー法に基づいてK値を算定することができる(Polymer 8/1967、381頁以降(非特許文献3))。
【0111】
ゲル浸透クロマトグラフィGPC(測定法A3):
本明細書における重量平均分子量M
w及び多分散度PDのデータは、ゲル浸透クロマトグラフィによる決定に関する。この決定は、清澄ろ過した試料100μl(試料濃度4g/l)に対して行われる。溶離液としては、トリフルオロ酢酸を0.1体積%含むテトラヒドロフランを用いる。測定は25℃で行う。プレカラムとして、タイプPSS−SDV、5μm、10
3Å、ID8.0mm×50mmのカラムを使用する。分離には、PSS−SDVタイプ、5μm、10
3Å並びに10
5Å及び10
6Å、それぞれID8.0mm×300mmのカラムを用いる(Polymer Standards Service社のカラム;示差屈折計Shodex RI71によって検出)。貫流量は1分当たり1.0mlである。キャリブレーションは、PMMA標準に対して行う(ポリメチルメタクリレートキャリブレーション)。
【0112】
塗布量及び層厚を介した密度の決定(測定法A4)
コーティングされた自着剤の空間重量または密度ρは、各々の層厚に対する坪量の比率を介して決定する。
【0113】
【数2】
【0114】
この方法では、嵩密度が得られる。
【0115】
この密度決定は、完成した製品(三層の製品でも可)の全層厚の決定に特に適している。
【0116】
180°接着力試験(測定法H1):
ポリエステル上に層として付与したアクリレート系感圧接着剤の20mm幅のストリップを、予めアセトンで二度、イソプロパノールで一度洗浄した鋼鉄製プレート上に施与した。感圧接着ストリップは、2kgの重さに相当する押し圧力で二回基材上に押しつけた。次いで直ぐに、この接着テープを300mm/分の速度及び180°の角度で基材から引き剥がした。全ての測定は室温で行った。
【0117】
測定結果はN/cmで表示し、そして三回の測定から平均する。
【0118】
せん断耐久時間(Scherstandzeit)(測定法H2):
接着テープの13mm幅で20mmより長い(例えば30mm)ストリップを、平滑な鋼鉄表面上に施与した。この鋼鉄表面は、アセトンで三回、イソプロパノールで一回清浄したものであった。接着面は20mm×13mm(長さ×幅)であった。この際、接着テープは試験プレートの縁からはみ出ている(例えば、上記指定の30mmの長さでは約10mm)。次いで、接着テープを、2kgの重さに相当する押し圧力で鋼鉄製キャリア上に四回押しつけた。この試料を垂直に吊して、接着テープのはみ出た端が下を向くようにした。
【0119】
室温において、例えば1kgの重り(10N)を、接着テープのはみ出た端に固定した;各々の荷重を例に再び記載する。測定は、標準状態(23℃、55%空気湿度)及び70℃で加熱庫中で行った。
【0120】
測定されたせん断耐久時間(接着テープが下地から完全に剥がれるまでの時間;10,000分経過時に測定を中止)は分の単位で表示し、三回の測定からの平均値に相当する。
【0121】
マイクロせん断試験(測定法H3)
この試験は、温度負荷下での接着テープのせん断強度の短時間試験に役立つ。
【0122】
マイクロせん断試験のための測定試料調製:
各々の試料サンプルから切り出した接着テープ(長さ 約50mm、幅 10mm)を、アセトンで清浄した鋼鉄製試験プレート上に貼り付けて、この鋼鉄性プレートが、接着テープの左右からはみ出しかつ接着テープが試験プレートの上方の縁から2mmはみ出すようにする。試料の接着面は高さ×幅=13mm×10mmである。次いで、接着箇所を、2kgの鋼鉄製ロールを用いて及び10m/分の速度で6回ロール掛けする。この接着テープを、距離測定センサのための支持部として役立つ安定な接着ストリップで面一に補強する。試料を、試験プレートによって垂直につり下げる。
【0123】
マイクロせん断試験:
測定すべき試料サンプルの下端に1000gの重りを負荷する。試験温度は40℃であり、試験期間は30分間(15分間の負荷及び15分間の脱負荷)である。一定の温度下での所定の試験期間後のせん断距離をμmの単位で結果として表示し、詳しくは最大値として[“最大”:15分間の負荷による最大せん断距離];最小値として[“最小”:脱負荷15分間後のせん断距離(“残留たわみ);脱負荷時に緩和によって後退運動が起きる]表示する。また同様に、弾性成分も百分率で表示する[“elast”;弾性成分=(最大−最小)×100/最大]。
【0124】
90°接着力 鋼鉄−開放及び被覆側(測定法M1):
鋼鉄への接着力の決定は、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度の試験雰囲気で行った。サンプルを、20mmの幅に切断し、そして鋼鉄製プレート上に貼付した。この鋼鉄製プレートは、測定前に清浄しそして状態調節した。このためには、先ずプレートをアセトンで拭き取り、その後、溶剤が蒸発し得るように5分間空気中に曝した。
【0125】
三層複合体:
三層複合体の、試験下地とは反対側を次いで50μmのアルミニウムホイルで覆い、それによってサンプルが測定時に伸張することを防いだ。その後、試験サンプルを鋼鉄製下地上にロールで押圧した。このためには、テープを2kgのロールで、10m/分のロール掛け速度で往復5回ロール掛けした。上記のロール掛けの直後に、鋼鉄製プレートを、サンプルを90°の角度で垂直に上方に剥ぎ取ることを可能にする特殊な保持具中に差し込んだ。接着力の測定は、Zwick社の引張試験機を用いて行った。鋼鉄製プレート上に被覆された面を施用する時は、三層複合体の開放面を先ず50μmのアルミニウムホイルに対して積層し、リリース材料を除去し、そして鋼鉄製プレート上に貼り付け、同様にロール掛け及び測定した。
【0126】
開放面及び被覆面の両面の測定結果はN/cmで表示し、そして三回の測定から平均する。
【0127】
23μmPETフィルム上のサンプル:
片面試験サンプルを、鋼鉄製下地上に施与し、次いで2kgのロールを用いて、10m/分のロール掛け速度で5回押圧した。上記のロール掛けの直後に、鋼鉄製プレートを、サンプルを90°の角度で垂直に上方に剥ぎ取ることを可能にする特殊な保持具中に差し込んだ。接着力の測定は、Zwick社の引張試験機を用いて行った。測定結果はN/cmで表示し、そして三回の測定から平均する。
【0128】
せん断耐久時間−開放及び被覆面(測定法M2):
サンプル調製は、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度の試験雰囲気で行った。試験サンプルを、13mmに切断し、そして鋼鉄製プレート上に貼付した。接着面は20mm×13mm(長さ×幅)であった。測定の前に、鋼鉄製プレートを清浄及び状態調節した。このためには、先ずプレートをアセトンで拭き取り、その後、溶剤が蒸発し得るように5分間空気中に曝した。接着後、開放面を50μmのアルミニウムホイルで強化し、そして2kgのロールを用いて往復で二回ロール掛けした。次いで、ベルトループを、三層複合体のはみ出た端に取り付けた。次いで、全体を適当な装置に掛けて懸垂させ、そして例えば1kgの重り(10N)を負荷した;荷重はそれぞれ例に記載する。懸垂装置は、試料が179°+/−1°の角度で荷重されるような状態とした。それによって、三層複合体がプレートの下縁から剥がれ得ないことを確実にした。サンプルを懸垂してからそれが落下するまでの時間である測定されたせん断耐久時間は分の単位で表示し、そしてこれは三回の測定からの平均値に相当する。被覆された面の測定のためには、先ず開放面を50μmのアルミニウムホイルで強化し、リリース材料を除去し、そして上記に類似して試験プレート上に貼り付けた。測定は標準状態(23℃、55%空気湿度)で行った。
【0129】
曲げに強い基材を用いたステップ湿潤試験/リジッド・リジッド(Rigid Rigid)ウェットアウト試験(測定法M3、
図1、2a(上面図)及び2b(下面図)):
サンプル調製は、23℃±1℃の温度及び50%±5%の相対空気湿度の試験雰囲気で行った。測定の前に、ポリカーボネートプレート(1,
図1)を清浄しそして状態調節した。このためには、先ずプレートをイソプロパノールで拭き取り、その後、溶剤が蒸発し得るように5分間空気中に曝した。試験サンプル(2、
図1及び2a)を、20mmの幅に切断し、ポリカーボネートプレートの中央に貼り付け、そしてロールを用いて往復で5回ロール掛けした。ロールの重さは、試験サンプルが2kg/cmで押圧されるように試験サンプルの幅に合わせて適合させた;すなわち、20mmの幅の場合には、4kgのロールを使用した。その際、試験サンプルがプレートを良好に湿潤するように注意した。次いで、接着したサンプルを、更に加工する前に接着テープの緩和を保証するために、23℃+/−1℃の温度及び50%+/−5%相対空気湿度の試験雰囲気下に24時間貯蔵した。
【0130】
追加的なポリカーボネート(3、
図1及び2a)に、20mmの規定の間隔(5、
図2a)で規定の高さを有するステップ(4、
図1)を接着し、次いで上述の方法に従い清浄及び状態調節した。20μm及び100μmの高さのステップを使用し、ステップを備えていないサンプルを対照として測定した。ステップを貼り付けたこれらの基材(3、下層)を、ステップが上方を向くようにして固形の下地上に置き、そして試験サンプルを備えた基材(1)をゆっくりとかつ一定に、できるだけ圧力をかけることなく上記のステップ上に置いて(リジッド−リジッド適用)、接着テープが、ステップ間の空所(6、
図1及び2b)に対しては作用が生じないように押圧した。次いで、組み合わせたプレートを、規定の重さのロールを用いて一度均一にロール掛けした。ロールの押圧速度は、約2.4m/分で一定とした。
【0131】
初期湿潤を求めるためには、ステップは使用せず(ステップ高さ0cm)、1kgのロールを使用した。ステップ試験のためには、100μmのステップ高さ及び4kgのロールを使用した。両方の場合において、それぞれ三回の決定を行った。異なる接着テープを比較する時は、これらが同じ厚さを有する点を注意した。
【0132】
両方の試験のために、それぞれの場合において、ロール掛けの後に、ステップ(4)間の全ての平面の写真を、高解像度及び規定の照明でフォトボックス中で撮影して、次いで画像加工ソフトウェアを用いてグレースケール分析により湿潤面積を定量化した。これは、画像分析、より詳しくはOtsu分析を利用する自動閾値法により行った。湿潤した面積の割合を、時間の関数として[%]として表示する。差異から、脱湿潤も同様に[%]で計算する。
【0133】
【表1】
【0134】
I.感圧接着剤PA1〜PA7の調製
以下に、出発ポリマーの調製を記載する。試験したポリマーは、慣用の方法に従い溶液状態でフリーラジカル重合により製造した。
【0135】
ポリアクリレート感圧接着剤1(PA1):
ラジカル重合のために慣用の300L反応器に、アクリル酸11.0kg、ブチルアクリレート(BA)27.0kg、2−プロピルヘプチルアクリレート(PHA)62.0kg、並びにアセトン/イソプロパノール(94:6)72.4kgを充填した。攪拌しながら窒素ガスを45分間導通した後、反応器を58℃に加熱し、そして50gのVazo(登録商標)67を加えた。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間の反応時間後、再び50gのVazo(登録商標)67を加えた。3時間後、20kgのアセトン/イソプロパノール(94:6)で、6時間後に10.0kgのアセトン/イソプロパノール(94:6)で希釈した。残留開始剤を少なくするため、5.5時間後及び7時間後にそれぞれ0.15kgのPerkadox(登録商標)16を加えた。反応を24時間の反応時間の後に停止し、そして室温に冷却した。次いで、ポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500と混合し、アセトンで30%の固形物含有率に希釈した。GPCを用いたモル質量(測定法A3):M
n=25,000g/モル;M
w=1,010,000g/モル。K値:50.3。
【0136】
ポリアクリレート感圧接着剤2(PA2):
ラジカル重合のために慣用の300L反応器に、アクリル酸11.0kg、BA27.0kg、イソデシルアクリレート(IDA)62.0kg、並びにアセトン/イソプロパノール(94:6)72.4kgを充填した。攪拌しながら窒素ガスを45分間導通した後、反応器を58℃に加熱し、そして50gのVazo(登録商標)67を加えた。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間の反応時間後、再び50gのVazo(登録商標)67を加えた。3時間後、20kgのアセトン/イソプロパノール(94:6)で、6時間後に10.0kgのアセトン/イソプロパノール(94:6)で希釈した。残留開始剤を少なくするため、5.5時間後及び7時間後にそれぞれ0.15kgのPerkadox(登録商標)16を加えた。反応を24時間の反応時間の後に停止し、そして室温に冷却した。次いで、ポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500と混合し、アセトンで30%の固形物含有率に希釈した。GPCを用いたモル質量(測定法A3):M
n=31,400g/モル; M
w=961,000g/モル。K値:49.4。
【0137】
ポリアクリレート感圧接着剤3(PA3):
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、アクリル酸4.0kg、BA12.0kg、PHA24.0kg、及びアセトン/ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間の反応時間の後、30gのトルエンを再び加えた。4時間後及び8時間後に、それぞれアセトン/ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするため、8時間後及び10時間後にそれぞれ90gのPerkadox(登録商標)16を加えた。反応を24時間の反応時間の後に停止し、そして室温に冷却した。次いで、ポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500と混合し、アセトンで30%の固形物含有率に希釈した。GPCを用いたモル質量(測定法A3):M
n=24,500g/モル;M
w=871,000g/モル。K値:48.2。
【0138】
ポリアクリレート感圧接着剤4(PA4):
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、アクリル酸3.2kg、BA8.0kg、IDA28.8kg、及びアセトン/イソプロパノール(94:6)26.7kgを充填した。攪拌しながら窒素ガスを45分間導通した後、反応器を58℃に加熱し、そして30gのVazo(登録商標)67を加えた。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間の反応時間後、再び30gのVazo(登録商標)67を加えた。4時間後及び8時間後に、それぞれアセトン/イソプロパノール(94:6)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするため、8時間後及び10時間後にそれぞれ90gのPerkadox(登録商標)16を加えた。反応を24時間の反応時間の後に停止し、そして室温に冷却した。次いで、ポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500と混合し、アセトンで30%の固形物含有率に希釈した。GPCを用いたモル質量(測定法A3):M
n=35,000g/モル;M
w=1,020,000g/モル。K値:52.9。
【0139】
比較例 ポリアクリレート感圧接着剤5(PA5、イソインデックス1及びTg>−60℃のモノマーEHA):
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、アクリル酸4.0kg、BA12.0kg、EHA24.0kg、及びアセトン/ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間の反応時間の後、30gのAIBNを再び加えた。4時間後及び8時間後に、それぞれアセトン/ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするため、8時間後及び10時間後にそれぞれ90gのPerkadox(登録商標)16を加えた。反応を24時間の反応時間の後に停止し、そして室温に冷却した。次いで、ポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500と混合し、アセトンで30%の固形物含有率に希釈した。GPCを用いたモル質量(測定法A3):M
n=26,800g/モル;M
w=809,000g/モル。K値:46.3。
【0140】
比較例 ポリアクリレート感圧接着剤6(PA6、モノマーPHA及びIBOA(環状モノマー)):
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、アクリル酸2.4kg、イソボルニルアクリレート(IBOA)12.0kg、PHA25.6kg、及びアセトン/ベンジン60/95(1:1)26.7kgを充填した。撹拌しながら窒素ガスを45分間導通させた後に、反応器を58℃に加熱し、AIBN30gを添加した。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間の反応時間の後、30gのAIBNを再び加えた。4時間後及び8時間後に、それぞれアセトン/ベンジン60/95(1:1)混合物10.0kgで希釈した。残留開始剤を少なくするため、8時間後及び10時間後にそれぞれビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート90gを加えた。反応を24時間の反応時間の後に停止し、そして室温に冷却した。次いで、ポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500と混合し、アセトンで30%の固形物含有率に希釈した。GPCを用いたモル質量(測定法A3):M
n=24,800g/モル;M
w=980,000g/モル。K値:50.1。
【0141】
比較例 ポリアクリレート感圧接着剤7(PA7、イソインデックス3.1及びTg<−60℃のモノマーiC17A):
ラジカル重合のために慣用の100Lガラス反応器に、アクリル酸11.0kg、BA27.0kg、ヘプタデカニルアクリレート(iC17A)62.0kg、並びにアセトン/イソプロパノール(94:6)72.4kgを充填した。攪拌しながら窒素ガスを45分間導通した後、反応器を58℃に加熱し、そして50gのVazo(登録商標)67を加えた。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間の反応時間後、再び50gのVazo(登録商標)67を加えた。3時間後、20kgのアセトン/イソプロパノール(94:6)で、6時間後に10.0kgのアセトン/イソプロパノール(94:6)で希釈した。残留開始剤を少なくするため、5.5時間後及び7時間後にそれぞれ0.15kgのPerkadox(登録商標)16を加えた。反応を24時間の反応時間の後に停止し、そして室温に冷却した。次いで、ポリアクリレートを架橋剤Uvacure(登録商標)1500と混合し、アセトンで30%の固形物含有率に希釈した。GPCを用いたモル質量(測定法A3):M
n=27,000g/モル;M
w=990,000g/モル。K値:50.1。
【0142】
感圧接着剤PA1〜PA7を、表1に従い、なおも溶液の状態でスチレンブロックコポリマー及び炭化水素樹脂と混合し、次いでシリコーン処理されたリリースフィルム(50μmポリエステル)上にまたは23μm厚のエッチングしたPETフィルム上にコーティング及び乾燥した。接着剤塗布量は50g/m
2であった(コーティング速度2.5m/分、乾燥路15m、温度ゾーン1:40℃、ゾーン2:70℃、ゾーン3:95℃、ゾーン4:105℃)。
【0143】
本発明によるブレンド感圧接着剤例B1〜B8並びに比較例VB9〜VB14の接着技術的特性の測定のために、先ずポリアクリレートフォームキャリアは無しに測定を行った。表1の結果に基づいて、例B1〜B8は、本発明によるものではないブレンド感圧接着剤調合物と比べて、PEなどの非極性下地上に対しより良好な接着力及びより高い熱せん断強度を示し;ただし他の点では同等の特性を示すことが分かる。純粋なアクリレート例VB14は、PEに対する接着力に明らかな損失を有した。
【0144】
II ポリアクリレートフォームVT用の出発ポリマーの製造並びに感圧接着テープ例MT1〜MT15
ベースポリマーP
ラジカル重合のために慣用の反応器に、EHA30kg、BA67kg、アクリル酸3kg、及びアセトン/イソプロパノール(96:4)66kgを充填した。攪拌しながら窒素ガスを45分間導通した後、反応器を58℃に加熱し、そして50gのVazo(登録商標)67を加えた。次いで、外部の加熱浴を75℃に加温し、そして反応をこの外部温度で一定に行った。1時間後に新たに50gのVazo(登録商標)67を加え、そして4時間後に20kgのアセトン/イソプロパノール混合物(96:4)で希釈した。5時間後及び7時間後にそれぞれ、150gのPerkadox(登録商標)16を用いて後開始し、そして23kgのアセトン/イソプロパノール混合物(96:4)で希釈した。22時間の反応時間の後に、重合を中断し、室温まで冷却した。ポリアクリレートは75.1のK値を有し、50.2%の固形物含有率、並びにM
n=91,900g/モル及びM
w=1,480,000g/モルの平均分子量を有していた。
【0145】
【表2】
【0146】
方法1:溶融感圧接着剤の濃縮/製造:
ベースポリマーPから、一軸スクリュー押出機(濃縮押出機、Berstorff GmbH、ドイツ)を用いて溶剤を大幅に除去する(残留溶剤含有率≦0.3重量%)。ベースポリマーの濃縮パラメータは次の通りであった。
【0147】
スクリュー回転数は150回転/分、モーター電流は15Aであり、及び58.0kg/h液体の処理量を実現した。濃縮ためには、三つの異なるドームに真空をひいた。負圧はそれぞれ20mbarと300mbarの間であった。濃縮されたホットメルトPの流出温度は約115℃であった。固形物含有率は濃縮ステップ後に99.8%であった。
【0148】
方法2:本発明による接着テープの製造、熱架橋のための架橋剤−促進剤系との混合、及びコーティング
図3の図解に相当する試験装置中で発泡を行った。
【0149】
ベースポリマーPを方法1に従いフィード押出機1中で溶融し、そしてポリマー溶融物として、加熱可能なホース11を介して、ENTEX社(Bochum)の遊星ローラ押出機2(PWE)中に搬送した。互いに独立して加熱可能な四つのモジュールT1、T2、T3、T4を備えたPWEを使用した。計量添加口22を介して、追加的な添加物または充填材、例えばカラーペーストを供給することができた。箇所23で、架橋剤を添加した。全ての成分が均質なポリマー溶融物へと混合された。
【0150】
メルトポンプ24a及び加熱可能なホース24bを用いて、ポリマー溶融物を二軸スクリュー押出機3(BERSTORFF社)内に移送した(投与位置33)。箇所34で、促進剤成分を添加した。続いてこの混合物全体から、圧力175mbarの真空ドームV内で、全てのガス含有物を除去した(ガス不含の基準については上記参照)。真空ゾーンの後は、後続のセグメントS中での圧力の上昇を可能にするブリスターBがスクリュー上に存在した。押出機回転数及びメルトポンプ37aの適切な制御によって、ブリスターBとメルトポンプ37aとの間のセグメントSにおいて、8bar超の圧力を発生させ、計量添加箇所35においてマイクロバルーン混合物(試験列における記載に従い分散助剤中に埋蔵されたマイクロバルーン)を加え、そして混合要素を用いて予混合物中に均一に配合した。生じた溶融物混合物をノズル5に移送した。
【0151】
ノズル5を出た後、つまり圧力が低下した後、配合されたマイクロバルーンが膨張し、この際、前記の圧力低下によって、ポリマー接着剤がせん断なく冷却された。発泡したキャリア材料が生じた。次いでこれの両面に、以下に記載の感圧接着剤をコーティングし、これをそれぞれ、除去後に再使用できるリリース材料(プロセスライナー)上に供した。こうして得られた三層複合体をロールカレンダー4を用いてウェブへと成形した。
【0152】
成形されたポリアクリレートフォームVTに対する例B1〜B8並びにVB9〜VB14からの感圧接着剤の固定を向上するために、感圧接着剤ばかりでなく、フォームもコロナで前処理した(デンマーク在のVITAPHONE社のコロナ装置、70W分/m
2)。このコロナ処理は、三層複合体MT1〜MT14の製造の後に、ポリアクリレートフォームキャリア層への向上した化学的結合をもたらした。
【0153】
コーティング装置中を通過する時のウェブ速度は30m/分であった。
ロール間隙を出た後、リリース材料を剥がし、そして他方のリリース材料が残っている完成した三層製品を巻き取った。
【0154】
【表3】
【0155】
以下では、本発明によるブレンド感圧接着剤例B1〜B8を50g/m
2の両面の接着剤塗布量で施与したポリアクリレートフォームキャリアVTを含む本発明による接着テープ、並びに本発明によらない感圧接着剤例VB9〜VB14を同様に50g/m
2の両面の接着剤塗布量で施与したポリアクリレートフォームキャリアVTを含む比較例の結果を記載する。
【0156】
【表4】
【0157】
表3中の比較例MT9〜MT13は、本発明によるブレンド感圧接着剤調合物MT1〜MT8を用いた例と比べて、PEに対してより低い接着力、並びに鋼鉄に対して同等の直後の接着力においてよりゆっくりとした付着挙動を示す。外側層としての純粋なアクリレート系感圧接着剤の使用(MT14)は、明らかにより低い直後の接着値という結果になるが、付着挙動はブレンドと同等である。
【0158】
表4中には、せん断耐久時間と、リジッドウェットアウト試験で達成された負荷下での湿潤もしくは脱湿潤結果を示す。比較例MT13に至るまで、全ての場合において凝集力が同等であることが示される。例MT13では、多分岐状アクリレートコモノマーiC17を用いたポリアクリレートPA7を使用したが、これは、一般的に、せん断強度に関し劣った結果を与える。更に、本発明による例MT1〜MT8は、最小の脱湿潤を示す場合を除いて、三日後に全て更に向上した湿潤を示す。これに対して、本発明によるものではないポリアクリレートPA5〜PA7が使用されたブレンド感圧接着剤調合物は全て、明らかな脱湿潤を示す。これは、純粋なアクリレートが使用された例MT14においても現れる。
【0159】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【0160】
【
図3】三層複合体の製造装置
更に、本発明は次の実施の態様も包含する:(1)a)感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合の少なくとも一種のポリマーAであって、モノマーベースが、以下のモノマーを含むポリマーA:a1)ホモポリマーのガラス転移温度が最大−60℃であり、アルコール成分が、1のイソインデックスを有する分岐状の第一級アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル;a2)アルコール成分が線状C1〜C18アルコールをベースとする、少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステル;a3)アクリル酸;b)感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも5重量%の割合の少なくとも一種の合成ゴム;及びc)感圧接着剤の総重量を基準にして少なくとも10重量%の割合の少なくとも一種の接着力増強樹脂、を含む、上記感圧接着剤。(2)前記感圧接着剤が、少なくとも一種のエポキシシクロヘキシル誘導体によって熱的に架橋されることを特徴とする、前記(1)に記載の感圧接着剤。(3)前記感圧接着剤が、少なくとも一種のポリ(メタ)アクリレート相及び少なくとも一種の合成ゴム相を含むことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の感圧接着剤。(4)合成ゴム相がポリ(メタ)アクリレート相中に分散された状態で存在することを特徴とする、前記(3)に記載の感圧接着剤。(5)前記の少なくとも一種の接着力増強樹脂が炭化水素樹脂であることを特徴とする、前記(1)〜(4)の何れか一つに記載の感圧接着剤。(6)前記の少なくとも一種の接着力増強樹脂が、感圧接着剤のポリ(メタ)アクリレート相と非相溶性であることを特徴とする、前記(1)〜(5)の何れか一つに記載の感圧接着剤。(7)発泡したキャリア、及び前記(1)〜(6)の何れか一つに記載の感圧接着剤を含む、接着テープ。(8)前記発泡したキャリアがシンタクチックポリマーフォームを含むことを特徴とする、前記(7)に記載の接着テープ。(9)前記シンタクチックポリマーフォームが、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で一種以上のポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする、前記(8)に記載の接着テープ。(10)前記感圧接着剤が、発泡したキャリアの少なくとも一つの面に積層されている、前記(7)〜(9)の何れか一つに記載の接着テープ。(11)前記発泡したキャリアが、フォームの総重量を基準にして少なくとも50重量%の割合で少なくとも一種のポリ(メタ)アクリレートBを含み、このポリ(メタ)アクリレートBが、以下のモノマー組成物に由来し得ることを特徴とする、前記(7)〜(10)の何れか一つに記載の接着テープ:b1)65〜97重量%のエチルヘキシルアクリレート及び/またはブチルアクリレート、b2)0〜30重量%のメチルアクリレート、b3)3〜15重量%のアクリル酸。(12)発泡したキャリアが熱的に架橋されていることを特徴とする、前記(7)〜(11)の何れか一つに記載の接着テープ。(13)前記発泡したキャリアの両面上に、前記(1)〜(6)の何れか一つに記載の感圧接着剤が配置されていることを特徴とする、前記(7)〜(12)の何れか一つに記載の接着テープ。