(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状の主弁ハウジング、該主弁ハウジングの上面側又は下面側に設けられた弁シート面、該弁シート面に開口する4個以上のポート、及び前記主弁ハウジング内に回動可能に配在されてその上面又は下面が前記弁シート面に対面せしめられる回転弁体を有し、該回転弁体内に、前記ポート間を選択的に連通すべく、低圧流体が流通する低圧側Uターン連通路が設けられるとともに、高圧流体が流通する高圧側Uターン連通路が設けられた高圧通路形成部材が上下方向に摺動自在に収容保持されていることを特徴とする流路切換弁。
前記回転弁体を前記弁シート面に押し付ける方向に付勢する第1付勢部材、及び、前記高圧通路形成部材を前記弁シート面とは反対側に付勢する第2付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
前記高圧通路形成部材の前記弁シート面に対面せしめられる面とは反対側の面に、回転時の摩擦抵抗を小さくするための突部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記低圧側Uターン連通路は、前記回転弁体内に形成された弁体内通路部と、該弁体内通路部における前記弁シート面側に設けられた低圧通路画成部材とで分割構成され、前記弁体内通路部は、前記弁シート面側が開口した側面視概略円弧状ないしかまぼこ状を呈し、かつ、外周側が概ね半円形ないしそれに近い半楕円形の断面形状を持つようにされ、前記低圧通路画成部材は、前記弁シート面に対接するシール面を持ち、前記弁体内通路部と協同して、前記低圧側Uターン連通路の断面形状を円形ないしそれに近い楕円形とするとともに、一端から他端まで全長にわたって等しい断面積とするように形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記低圧通路画成部材には、前記低圧側Uターン連通路の一端及び他端を構成する開口が設けられるとともに、その中央部から両端の開口にかけて山状突部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の流路切換弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した如くの従来の流路切換弁においては、次のような解決すべき課題がある。
【0007】
一般に、Uターン連通路を流通する流体の圧力損失を小さくするには、連通路の側面視をU字状、円弧状、かまぼこ状等にするとともに、断面形状を円形となし、かつ、連通路の一端から他端まで全長にわたって通路断面積が変わらないようにすればよいとされ、これが理想の通路形状とされている。より具体的には、理想の通路形状は、断面円形のチューブを断面形状(円形)を変えずにU字状、円弧状、かまぼこ状等に湾曲させた形状とされる。
【0008】
一方、ヒートポンプ式冷暖房システム等においては、圧縮機として斜板式のものが使用されることが多いが、この斜板式圧縮機から吐出されてくる高圧冷媒は脈動を伴う。そのため、高圧側Uターン連通路を高圧冷媒が流通すると、前記脈動によって回転弁体全体が振動し、この振動によって、同じ回転弁体に設けられている低圧側Uターン連通路のシール性が損なわれるおそれがある。より具体的には、回転弁体が振動することによって低圧側Uターン連通路のシール面と弁シート面との間に隙間が形成され、この隙間から弁室内の高圧冷媒が圧縮機吸入側に抜ける弁洩れが生じやすくなるという問題がある。
【0009】
特に、高圧側Uターン連通路を上記理想の通路形状に近づけた場合は、圧力損失は小さくなるものの、前記回転弁体の振動が大きくなって弁洩れしやすくなるのに対し、前記特許文献1に見られるように、高圧側Uターン連通路を理想通路形状ではない飯ごう形状(断面形状が矩形)とすると、圧力損失は大きくなるが、前記回転弁体の振動が小さくなる傾向がある。
【0010】
上記のような回転弁体の振動を抑えるための一つの方策として、ばね力(セット荷重)がより大きなばね部材で回転弁体を弁シート面に押し付ける方向に付勢することが考えられる。しかし、この方策では、回転弁体と弁シート面との間の摩擦力が大きくなるため、回転弁体を回転させるのに大きな駆動力が必要となり、コスト等の面で問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、圧力損失の低減等を図りながら、高圧冷媒に伴われる脈動に起因する回転弁体の振動を効果的に抑えることができ、もって、低圧側Uターン連通路のシール性を向上し得て弁洩れし難くできる流路切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る流路切換弁は、基本的には、筒状の主弁ハウジング、該主弁ハウジングの上面側又は下面側に設けられた弁シート面、該弁シート面に開口する4個以上のポート、及び前記主弁ハウジング内に回動可能に配在されてその上面又は下面が前記弁シート面に対面せしめられる回転弁体を有し、該回転弁体内に、前記ポート間を選択的に連通すべく、低圧流体が流通する低圧側Uターン連通路が設けられるとともに、高圧流体が流通する高圧側Uターン連通路が設けられた高圧通路形成部材が上下方向に摺動自在に収容保持されていることを特徴としている。
【0013】
好ましい態様では、前記回転弁体を前記弁シート面に押し付ける方向に付勢する第1付勢部材、及び、前記高圧通路形成部材を前記弁シート面とは反対側に付勢する第2付勢部材を備える。
【0014】
更に好ましい態様では、前記第2付勢部材は、前記高圧通路形成部材の周方向で両端部分に設けられる。
【0015】
別の好ましい態様では、前記高圧通路形成部材の前記弁シート面に対面せしめられる面とは反対側の面に、回転時の摩擦抵抗を小さくするための突部が設けられる。
【0016】
他の具体的な好ましい態様では、前記弁シート面に第1、第2、第3及び第4ポートが開口し、前記回転弁体が第1の回転位置をとるとき、前記高圧側Uターン連通路により第1ポートと第2ポートとが連通するとともに、前記低圧側Uターン連通路により第3ポートと第4ポートとが連通し、前記回転弁体が第2の回転位置をとるとき、前記高圧側Uターン連通路により第1ポートと第3ポートとが連通するとともに、前記低圧側Uターン連通路により第2ポートと第4ポートとが連通するようにされる。
【0017】
別の好ましい態様では、前記低圧側Uターン連通路は、前記回転弁体内に形成された弁体内通路部と、該弁体内通路部における前記弁シート面側に設けられた低圧通路画成部材とで分割構成され、前記弁体内通路部は、前記弁シート面側が開口した側面視概略円弧状ないしかまぼこ状を呈し、かつ、外周側が概ね半円形ないしそれに近い半楕円形の断面形状を持つようにされ、前記低圧通路画成部材は、前記弁シート面に対接するシール面を持ち、前記弁体内通路部と協同して、前記低圧側Uターン連通路の断面形状を円形ないしそれに近い楕円形とするとともに、一端から他端まで全長にわたって等しい断面積とするように形成される。
【0018】
更に好ましい態様では、前記低圧通路画成部材には、前記低圧側Uターン連通路の一端及び他端を構成する開口が設けられるとともに、その中央部から両端の開口にかけて山状突部が設けられる。
【0019】
更に好ましい態様では、前記山状突部は、断面形状が半円状ないしそれに近い半楕円状の表面を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る流路切換弁では、回転弁体内に、高圧流体が流通する高圧側Uターン連通路が設けられた高圧通路形成部材が、上下方向に摺動自在の別体として収容されており、また、高圧通路形成部材は、主弁ハウジングに押圧された状態で回転弁体内に保持されているので、高圧冷媒に伴われる脈動による衝撃は、十分な強度を持った主弁ハウジングが受け止めるため、回転弁体には伝わらない。そのため、高圧冷媒に伴われる脈動に起因する回転弁体の振動を効果的に抑えることができ、その結果、圧力損失の低減等を図りながら、低圧側Uターン連通路のシール性を向上し得て弁洩れを生じ難くできる。
【0021】
上記した以外の、課題、構成、及び作用効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1、
図2は、それぞれ本発明に係る流路切換弁の一実施形態の第1の連通状態、第2の連通状態を示す縦断面図である。
【0025】
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際にヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0026】
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
【0027】
図示実施形態の流路切換弁は、四方切換弁1であり、ヒートポンプ式冷暖房システムにおいて流路切換用として使用されるもので、ロータリー式の主弁5と、流体圧式のアクチュエータ7と、四方パイロット弁8を備える。
【0028】
以下においては、まず、主として主弁5について説明し、その後にアクチュエータ7、四方パイロット弁8について説明する。
【0029】
<主弁5の構成及び動作>
主弁5は、
図1、
図2に加えて、
図6、
図7を参照すればよくわかるように、主弁ハウジング10と、この主弁ハウジング10内に回動可能かつ上下動可能に配在された回転弁体20と、回転弁体20を回動させるための回転軸部材30を備える。
【0030】
主弁ハウジング10は、アルミあるいはステンレス等の金属製とされ、円筒状の胴部10Cと、この胴部10Cの上面開口を気密的に封止するように圧入、ろう付け、溶接等により固定された厚肉円板状の蓋板部材10Aと、胴部10Cの下面開口を気密的に封止するように前記蓋部材10Aと同様に前記胴部10Cに固定された厚肉円板状の底板部材10Bとを有する。底板部材10Bは、弁シート部材を兼ねており、その上面(内面)は平坦で滑らかな弁シート面12となっている。底板部材10Bには、
図3に示される如くに、回転弁体20の回転軸線Oを中心とした同一円周上に90°間隔で、円形開口と管継手からなる第1ポートpD、第2ポートpC、第3ポートpE、及び第4ポートpSが垂設されている。
【0031】
本実施形態の四方切換弁1では、ヒートポンプ式冷暖房システムに組み込まれた場合において、例えば、第1ポートpDは圧縮機吐出側に接続され、第2ポートpCは室外熱交換器に接続され、第3ポートpEは室内熱交換器に接続され、第4ポートpSは圧縮機吸入側に接続される。
【0032】
前記回転軸部材30は、
図5、6を参照すればよくわかるように、上から順に、小径凸部31、上部大径部32、中間軸部33、角形係合部34、下端小径部36を有する。前記主弁ハウジング10における蓋板部材10Aの中央には、前記回転軸部材30が挿通せしめられる嵌挿穴13が形成され、底板部材10Bの上面側中央には、回転軸部材30の下端小径部36を回転自在に支持する凹部14が設けられている。
【0033】
回転軸部材30において、その小径凸部31を含む上端部には、後述するアクチュエータ7の回転駆動体65の下端部が溶接等により一体に結合されている。中間軸部33の上部には、ばね受けを兼ねるC字状の止め具38が嵌着される環状溝33a(
図5)が形成されるとともに、この止め具38により樹脂製のスラスト軸受37が回転軸部材30に対して回動自在に外嵌保持されている。
【0034】
回転軸部材30の角形係合部34には、回転弁体20の下部中央に設けられた角形溝29に嵌め込まれた角形棒35が外挿されて嵌合せしめられており、これにより、回転弁体20は回転軸部材30と一体に回動せしめられる。なお、角形溝29に予めインサート成形された金属製の角形棒35に回転軸部材30の角形係合部34を嵌入してもよい。
【0035】
回転軸部材30の上部大径部32と蓋板部材10Aの嵌挿穴13との間にはシール部材としてのOリング49が介装されている。
【0036】
回転弁体20は、主弁ハウジング10内(弁室11)に回動可能に配在されてその下面が前記弁シート面12に対面せしめられる短円柱状の基体部21を有し、該基体部21には、
図1、
図2に加えて
図6〜
図9を参照すればよくわかるように、中央部に回転軸部材30を通す段付き貫通穴22が設けられ、この段付き貫通穴22の上部段差部と前記回転軸部材30に嵌着された止め具38との間に、回転弁体20(基体部21)を弁シート面12に押し付ける方向に付勢する圧縮コイルばね(第1付勢部材)39が縮装されている。
【0037】
また、回転弁体20の(回転軸線Oに対して)一端側には、その下部に高圧冷媒が流通する高圧側Uターン連通路41が設けられた飯ごう形状の高圧通路形成部材40が上下方向に摺動自在に嵌挿保持される収容部23が設けられ、他端側には、低圧冷媒が流通する低圧側Uターン連通路42が設けられている。
【0038】
より詳細には、高圧通路形成部材40は、収容部23の下端の平面視飯ごう状外形を有する環状の内方突出端縁部23a上に配在されている。また、高圧通路形成部材40に形成された高圧側Uターン連通路41は、下面側が開口した側面視概略円弧(弓形)状ないしかまぼこ状とされており、内方突出端縁部23aの下面が高圧側Uターン連通路41の(弁シート面12に対する)当接面16(
図8(B)、
図9参照)となっている。高圧側Uターン連通路41の下面(開口)及び内方突出端縁部23aの下面は、前記第1ポートpDを含む隣り合うポート間(pD−pC、pD−pE)を選択的に連通させ得る大きさとされている。なお、高圧側Uターン連通路41に導入された高圧冷媒の一部は、高圧通路形成部材40と収容部23との隙間を介して弁室11内に導入されるため、前記当接面16はシール性を備える必要はない。
【0039】
また、高圧通路形成部材40における上面側の(周方向で)両端近くには、舌状把手部43が横方向に突設されている。一方、基体部21の上面側の対応する部位には収容部23に連なって舌状把手部43、43が上下動自在に嵌挿される凹部26、26が設けられ、さらにこの凹部26の下側に、高圧通路形成部材40を弁シート面12とは反対側(蓋板部材10A側)に付勢するための圧縮コイルばね(第2付勢部材)25が装填される収納穴27が形成されている。
【0040】
また、高圧通路形成部材40の上面には、該高圧通路形成部材40と蓋板部材10Aの下面との接触面積を減らして回転時の摩擦抵抗を小さくすべく、上に凸の球冠状の突部44が複数(図示例では、中央付近と両端付近の3箇所)設けられている。
【0041】
一方、回転弁体20に設けられた低圧側Uターン連通路42は、基体部21内に形成された弁体内通路部46と、該弁体内通路部46における下面側に設けられた低圧通路画成部材47とで構成される。
【0042】
弁体内通路部46は、下面側(弁シート面12側)が開口した側面視概略円弧(弓形)状ないしかまぼこ形状を呈し、かつ、上部(外周側)が概ね半円形状ないしそれに近い半楕円形状を持つものとなっている。
【0043】
それに対し、低圧通路画成部材47は、両端に円形開口49を有する円環状部45を持つ平面視メガネ状とされ、該低圧通路画成部材47の上側に基体部21が被さるようにして、そのメガネ状の外枠部分の上面が基体部21の弁体内通路部46の下端周縁部に超音波溶着あるいはレーザ溶着等により合体接合されている。
【0044】
低圧通路画成部材47は、
図8を参照すればよくわかるように、下面両端(円形開口49の下面外周)に弁シート面12に対接する円環状シール面17、17を有する。また、前記低圧側Uターン連通路42の断面形状を、弁体内通路部46と協同(合体)して、円形ないしそれに近い楕円形とするとともに、一端から他端まで全長にわたって略等しい断面積とすべく、その中央部から両端の円形開口49にかけて山状突部48が設けられている。山状突部48は、
図9に示される如くに、断面形状が半円状ないしそれに近い半楕円状の表面(すなわち、円弧の部分)を有している。
【0045】
つまり、前記低圧側Uターン連通路42は、その下側ないし内周側部分が低圧通路画成部材47で画成され、その上側ないし外周側部分が基体部21(の弁体内通路部46)で画成された、断面形状が円形ないしそれに近い楕円形かつ側面視概略逆U字状ないし円弧状を呈している。
【0046】
本例では、低圧側Uターン連通路42の通路径と第2〜第4ポートpC、pE、pSの口径とは略同径とされており、低圧側Uターン連通路42の一端及び他端(低圧通路画成部材47の両端の円形開口49、49)が第2〜第4ポートpC、pE、pSの3つのポートの真上に選択的に位置せしめられ(つまり、低圧通路画成部材47の両端の円形開口49、49は、回転弁体20の回転軸線Oを中心とした同一円周上に90°離れて形成されている)、これにより、前記第4ポートpSを含む隣り合うポート間(pS−pE、pS−pC)を選択的に連通するようになっている。
【0047】
上記に加え、本実施形態では、回転弁体20の回転時において、回転弁体20側の当接面16及びシール面17を底板部材10Bの弁シート面12から離れさせるボール式シール面離隔機構が設けられている。
【0048】
ボール式シール面離隔機構は、
図6、
図9に示される如くに、ボール56、ケース57、及び蓋部材58で構成されるボール保持体55を複数(図示例では3個)備える。ボール保持体55は、ボール56を、その一部を下方に突出させた状態で、回転自在にかつ移動は実質的に阻止した状態で保持するもので、このボール保持体55は、回転弁体20の下部外周に3箇所、120°間隔で設けられた装着穴59に、前記ボール56の一部を下方に突出させた状態で装着されている。また、底板部材10Bには、回転弁体20の回転開始前及び回転終了時において、回転弁体20側の当接面16及びシール面17が底板部材10Bの弁シート面12から離れないように、前記ボール56の一部が嵌め込まれ、回転弁体20の回転時(流路切換中)においては、ボール56が回転弁体20を押し上げながら転がり出るような寸法形状とされた略円錐状の凹穴18が120°間隔で3個ずつ2組設けられている。本実施形態では、流路切換のための回転角度は90°とされているので、凹穴18の組同士の角度間隔は30°となっている。
【0049】
かかるシール面離隔機構では、回転弁体20の回転開始前及び回転終了時においては、
図9に示される如くに、底板部材10Bの凹穴18内にボール56の一部が嵌り込んでいる。この状態から回転弁体20を90°回転させ始めると、ボール保持体55が周方向に移動(回転)し、これに伴ってボール56は、回転弁体20を、圧縮コイルばね39の付勢力に抗して押し上げながら凹穴18から転がり出る。これによって、回転弁体20の当接面16及びシール面17が底板部材10Bの弁シート面12から離れる。なお、回転弁体20が90°回転すると、ボール56が次の凹穴18に嵌り込むので、回転弁体20は圧縮コイルばね39の付勢力によって押し下げられ、回転弁体20の当接面16及びシール面17が弁シート面12に押し付けられる。
【0050】
<アクチュエータ7の構成及び動作>
次に、回転弁体20を回動させるための流体圧式のアクチュエータ7について説明する。
【0051】
本実施形態のアクチュエータ7は、前記主弁5内を流通する高圧冷媒と低圧冷媒との差圧を利用した流体圧式のもので、
図1、
図2に加えて、
図4を参照すればよくわかるように、前記主弁ハウジング10における蓋板部材10A上にその下端が溶接等により固定された上蓋62付き円筒部61と、該円筒部61内に摺動自在に嵌挿された天井部付き厚肉円筒状の受圧移動体60と、この受圧移動体60内に内挿された円柱状の回転駆動体65と、を備える。
【0052】
受圧移動体60は、蓋板部材10Aの上面に嵌合固定されて受圧移動体60と円筒部61との間に嵌め込まれた弓形状断面の左右一対の回動阻止兼上下動案内部材63、63により、直線的に上下動するがその回転は阻止されるようになっている。
【0053】
受圧移動体60と回転駆動体65には、受圧移動体60の上下動を回転駆動体65の回転運動に変換するための運動変換機構として、送り用雌ねじ66と送り用雄ねじ67がそれぞれ設けられている(
図4では図示省略)。回転駆動体65は、受圧移動体60に螺合しているので、受圧移動体60の上下方向の移動に伴って相対的に該受圧移動体60内で回動するようになっており、回転駆動体65が回転すると、該回転駆動体65に連結された回転軸部材30及び回転弁体20も一体に回転する。ここでは、受圧移動体60が上動すると、回転駆動体65、回転軸部材30、及び回転弁体20が(下から視て)反時計回りに回転し、受圧移動体60が下動すると、回転駆動体65、回転軸部材30、及び回転弁体20が(下から視て)時計回りに回転する。
【0054】
前記受圧移動体60の外周上部には、円筒部61の内周面との間を気密的に封止して円筒部61内を容積可変の上室51と下室52とに仕切るシール部材(ここでは、Oリング71、例えばテフロン(登録商標)製の滑りリング72からなるシール部材)及び該シール部材を係止する例えば金属製のリング部材73がかしめ等により装着されている。
【0055】
図1には、受圧移動体60が最下降位置にあり、回転弁体20が第1の回転位置をとっている状態が示され、
図2には、受圧移動体60が最上昇位置にあり、回転弁体20が第2の回転位置をとっている状態が示されている。本例では、第1の回転位置と第2の回転位置との角度差、つまり、流路切換に要する回転角度は90°となっている。
【0056】
また、円筒部61の下部には、下室52に高圧流体を導入・排出するための下部ポート54が設けられるとともに、その上蓋62には、上室51に高圧流体を導入・排出するための上部ポート53が設けられている。
【0057】
なお、受圧移動体60の上下動を回転駆動体65の回転運動に変換するための運動変換機構としては、上記のような送りねじを用いたものに限定されず、例えば、特開2016−89901号公報に開示されているような、ボール、このボールの収容部、及び螺旋溝で構成されているもの等を採用することができる。
【0058】
<四方パイロット弁8の構成及び動作>
次に、四方パイロット弁8について説明する。
【0059】
本実施形態では、流路切換を、高圧部分である第1ポートpD、上部ポート53、下部ポート54、及び、低圧部分である第4ポートpSに細管#1〜#4で接続された電磁式の四方パイロット弁8により行うようにされている。
【0060】
四方パイロット弁8は、その構造自体はよく知られているものであるので、その構造説明は省略する。必要なら、例えば特開2016−114133号公報等を参照されたい。
【0061】
この四方パイロット弁8においては、上部ポート53に細管#2を介して接続されるポートa、第4ポートpSに細管#4を介して接続される低圧ポートb、下部ポート54に細管#3を介して接続されるポートc、第1ポートpDに細管#1を介して接続される低圧ポートdが設けられている。
【0062】
本例では、通電ON時には、高圧ポートdとポートcが連通するとともに、ポートaと低圧ポートbが連通するので、ポートpD(吐出側高圧ポート)に流入する高圧流体が下部ポート54を介して下室52に導入されるとともに、上室51の高圧流体が上部ポート53から第4ポートpS(吸入側低圧ポート)へ排出される。
【0063】
それに対し、通電をOFFにすると、高圧ポートdとポートaが連通するとともに、ポートcと低圧ポートbが連通するので、ポートpD(吐出側高圧ポート)に流入する高圧流体が上部ポート53を介して上室51に導入されるとともに、下室52の高圧流体が下部ポート54から第4ポートpS(吸入側低圧ポート)へ排出される。
【0064】
したがって、四方パイロット弁8への通電をONにすると、受圧移動体60が上動し、これによって、回転駆動体65、回転軸部材30、及び回転弁体20が(下から視て)反時計回りに90°(第1の回転位置から第2の回転位置へと)回転し、
図2、
図3(B)に示される如くに、高圧側Uターン連通路41により第1ポートpDと第3ポートpEとが連通するとともに、低圧側Uターン連通路42により第2ポートpCと第4ポートpSとが連通する(回転弁体20が第2の回転位置にある第2の連通状態)。
【0065】
一方、四方パイロット弁8への通電をOFFにすると、受圧移動体60が下動し、回転駆動体65、回転軸部材30、及び回転弁体20が(下から視て)時計回りに90°(第2の回転位置から第1の回転位置へと)回転し、
図1、
図3(A)に示される如くに、高圧側Uターン連通路41により第1ポートpDと第2ポートpCとが連通するとともに、低圧側Uターン連通路42により第3ポートpEと第4ポートpSとが連通する(回転弁体20が第1の回転位置にある第1の連通状態)。
【0066】
<四方切換弁(流路切換弁)1の作用効果>
上記のような構成とされた本実施形態の四方切換弁1では、回転弁体20の一端側に収容部23が設けられ、この収容部23に、高圧冷媒が流通する高圧側Uターン連通路41が設けられた高圧通路形成部材40が上下方向に摺動自在に嵌挿保持され、かつ、高圧通路形成部材40は圧縮コイルばね25により蓋板部材10Aに押し付ける方向(反弁シート面12側)に付勢されているので、当該高圧側Uターン連通路41を流れる高圧冷媒に伴われる脈動は、低圧側Uターン連通路42が設けられた回転弁体20の基体部21に対して高圧通路形成部材40が主弁ハウジング10の蓋板部材10Aに抑え込まれて吸収減衰される。
【0067】
そのため、高圧冷媒に伴われる脈動に起因する回転弁体20の振動を効果的に抑えることができ、そのため、高圧冷媒が脈動を伴っていても、低圧側Uターン連通路42のシール面17と弁シート面12との間に隙間が形成され難くなり、その結果、主弁ハウジング10内(弁室11)の高圧冷媒が圧縮機吸入側に抜ける弁洩れの発生を効果的に抑えることができる。
【0068】
また、高圧通路形成部材40に設けられた高圧側Uターン連通路41は、下面側が開口した側面視概略円弧(弓形)状ないしかまぼこ状とされ、かつ、その断面は、
図9を参照すればよくわかるように、上部(外周側)が半円形状とされているので、前述した特許文献1に見られるような飯ごう形状(断面形状が矩形)のものに比して、圧力損失を低減できる。
【0069】
したがって、本実施形態の四方切換弁1では、圧力損失の低減等を図りながら、低圧側Uターン連通路42のシール性を向上し得て弁洩れを生じ難くできる。
【0070】
上記に加え、本実施形態の四方切換弁1では、回転弁体20に設けられた低圧側Uターン連通路42は、基体部21内に形成された弁体内通路部46と、該弁体内通路部46における下面側に溶着固定された低圧通路画成部材47とで分割構成され、低圧側Uターン連通路42は、側面視が円弧(弓形)状ないしかまぼこ状とされるとともに、断面形状が円形ないしそれに近い楕円形状とされ、かつ、一端から他端まで全長にわたって通路断面積が変わらないようされる。
【0071】
つまり、低圧側Uターン連通路42は、断面円形のチューブを断面形状(円形)を変えずに円弧状ないしかまぼこ状に湾曲させた理想の通路形状とされ、角部、段差、引っ掛かり等が全くないものとされるので、圧力損失を増大させる原因となる渦流を発生し難くできる。
【0072】
また、耐圧強度が増大するので、断面形状がかまぼこ形状、角丸矩形、あるいは比較的扁平な楕円状で断面積が一様ではない従来の弁体に比して、内外の高低圧力差が大きくなっても、変形し難くなり、そのため、コストアップ、大型化等を招くことなく、低圧側Uターン連通路42のシール性を向上し得て弁洩れを生じ難くできる。
【0073】
さらに、低圧通路画成部材47は、回転弁体20の補強部材の役割も果たすので、高低圧力差が大きい場合でも、回転弁体20を変形し難くできる。
【0074】
また、低圧側Uターン連通路42の通路径と第2〜第4ポートpC、pE、pSの口径とが略同径とされるので、低圧側Uターン連通路42内での流体の膨張や収縮が発生せず、それによっても、圧力損失を効果的に低減できる。
【0075】
なお、上記実施形態では、本発明を四方切換弁に適用した場合の例を説明したが、本発明は六方切換弁等にも同様に適用できることは言うまでも無い。
【0076】
また、上述した本発明に係る流路切換弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。