特許第6475783号(P6475783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6475783-エーテルダイマー組成物および重合体 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475783
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】エーテルダイマー組成物および重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/28 20060101AFI20190218BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190218BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20190218BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20190218BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C08F20/28
   C08F2/44 B
   C08F2/48
   G02B5/20 101
   G03F7/033
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-122166(P2017-122166)
(22)【出願日】2017年6月22日
(62)【分割の表示】特願2013-18232(P2013-18232)の分割
【原出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-186570(P2017-186570A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 知正
(72)【発明者】
【氏名】西井 聖悦
(72)【発明者】
【氏名】松田 安弘
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−300204(JP,A)
【文献】 特開2008−094783(JP,A)
【文献】 特開2000−103763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F36/00−36/22
C08F20/00−22/40
C08F 2/00− 2/60
G02B 5/20− 5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1):
【化1】
(式(1)中、R及びRは、メチル基を表す。)で表されるエーテルダイマー、(B)水、(C)安定剤、及び(D)非水系溶媒を含有し、
(A)エーテルダイマーの含有量が10〜70質量%であり、(B)水の含有量が0.3〜10質量%であり、(C)安定剤の含有量が0.001〜1質量%であり、(D)非水系溶媒の含有量が20〜90質量%であり、
さらに、式(4)または(5):
【化2】
で表される架橋性化合物の合計含有量が0.001質量%以下であり(但し、該(A)、(B)、(C)及び(D)と式(4)または(5)で表される架橋性化合物との合計量を100質量%とする。)、
該(C)安定剤は、フェノール系化合物、フェノチアジン類、ホスファイト類、チオエーテル類、ヒンダードアミン系化合物、アスコルビン酸類、チオ尿素誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、及びN−オキシル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
該(D)非水系溶媒は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、及びスルホキシド系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とするエーテルダイマー組成物。
【請求項2】
前記(C)安定剤は、フェノール系化合物及びN−オキシル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項に記載のエーテルダイマー組成物。
【請求項3】
前記(C)安定剤は、フェノール系化合物とN−オキシル化合物とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエーテルダイマー組成物。
【請求項4】
前記フェノール系化合物とN−オキシル化合物との質量割合(フェノール系化合物/N−オキシル化合物)は、15/1〜5/1であることを特徴とする請求項に記載のエーテルダイマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のエーテルダイマー組成物、および不飽和単量体を含有することを特徴とする単量体組成物。
【請求項6】
前記不飽和単量体が、酸基を有する不飽和単量体を含むことを特徴とする請求項に記載の単量体組成物。
【請求項7】
請求項またはに記載の単量体組成物を重合してなるテトラヒドロピラン環含有共重合体。
【請求項8】
請求項に記載のテトラヒドロピラン環含有共重合体と光重合開始剤とを含んでなる感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
基板上に請求項に記載の硬化物が形成されてなるカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテルダイマー組成物及び重合体に関する。より詳しくは、フラットパネルディスプレイ用部材として重要なカラーフィルターを作製するためのレジスト材やコーティング材を始め、各種の電子情報材料の原料として好適に使用されるエーテルダイマー組成物、およびエーテルダイマー組成物を重合してなる重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
α−ヒドロキシメチルアクリル酸あるいはそのエステルがエーテル2量化した構造を有する化合物(以下、エーテルダイマーとも称する)は、ラジカル重合により環化重合して主鎖にテトラヒドロピラン環を含有する重合体(以下、THP環重合体とも称する)を形成することが知られている。(例えば、非特許文献1)
THP環重合体は、透明性、耐熱性、化学的安定性、硬度、密着性、色材分散性等に優れていることから、光ピックアップレンズ等の光学用途向け熱可塑性樹脂、化学増幅型ポジレジスト用樹脂、あるいはカラーフィルターレジスト用アルカリ可溶性樹脂など、各種の電子情報材料向けの樹脂として注目されている。
【0003】
例えば、エーテルダイマーをメタクリル酸メチルと共重合することにより、熱可塑性のTHP環重合体となる。このようなTHP環重合体は、透明性、耐熱性、低吸水性、機械的強度に優れ、低複屈折であることから、光ピックアップレンズ等のレンズ、ディスク、光伝送体等の各種光学用途、アクリル看板等のディスプレイ材料に適用可能である。(例えば、特許文献1)。
【0004】
また例えば、エーテルダイマーを脂環式骨格を有する単量体およびラクトン骨格を有する単量体と共重合することにより、酸によりアルカリ水溶液に可溶となるTHP環重合体となる。このようなTHP環重合体は高いドライエッチング耐性を有することから、DUVエキシマレーザーリソグラフィーあるいは電子線リソグラフィー用の化学増幅型ポジレジストに好適である。(例えば、特許文献2)
また例えば、エーテルダイマーをカルボキシル基を有する単量体と共重合することにより、アルカリ可溶性の、および/またはエポキシ樹脂と硬化可能なTHP環重合体となる。このようなTHP環重合体は、透明性、耐熱性、顔料分散性に優れることから、カラーフィルター用着色レジスト、カラーフィルター用透明保護膜レジスト、カラーフィルター用柱状スペーサーレジストなどのアルカリ現像型ネガレジスト、カラーフィルターや有機EL用の熱硬化型透明保護コーティング材等に好適に用いることができる。(例えば、特許文献3)
エーテルダイマーは、α−ヒドロキシメチルアクリル酸あるいはそのエステルがエーテル2量化した構造を有する化合物であって、エーテル性酸素を介して対称形になっているものと非対称形になっているものとに分類できる。対称形になっているものの方が結晶性が高く、透明性、耐熱性など、重合体の性能面でより優れる傾向にある。また、エーテルダイマーはラジカル重合性が高く、多種のラジカル重合性単量体と共重合させることができるため、多種多様なTHP環重合体を調製することが可能であることから、上記電子情報材料分野のみならず、幅広い技術分野に応用することができる単量体である。
【0005】
しかし、エーテルダイマーはラジカル重合性が高い半面、貯蔵安定性が低く、室温付近での保存の場合は2〜3か月、冷凍保存しても数カ月で不溶不融の固形物を生じたりする場合があり、特に、性能的に優れる対称形のエーテルダイマーにこの傾向が強かった。従って、エーテルダイマーを実験室や工場で製造する場合は、できるだけ速やかに重合してTHP環重合体に変換するのが実情である。そのため、一度に多量のエーテルダイマーを製造できないことになるため生産効率が悪く、貯蔵安定性に優れるエーテルダイマー、特に貯蔵安定性に優れる対称形のエーテルダイマーの開発が課題であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Takashi Tsuda、Lon J. Mathias、POLYMER、1994年、第35巻、p.3317−3328
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−302335号公報
【特許文献2】特開2001−81139号公報
【特許文献3】特開2004−300204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性に優れるエーテルダイマー組成物、およびそのエーテルダイマー組成物を原料として製造される重合体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、意外にも水に難溶性の化合物であるエーテルダイマーを、水および安定剤を共存させた均一な液状組成物とすることにより貯蔵安定性が飛躍的に向上することを見出した。すなわち、(A)下記一般式(1):
【0010】
【化1】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)で表されるエーテルダイマー、(B)水、(C)安定剤、(D)非水系溶媒を含有し、(B)水の含有量が0.3〜10質量%であることを特徴とするエーテルダイマー組成物。
特に、
(A)下記一般式(1):
【0011】
【化2】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)で表されるエーテルダイマー10〜70質量%、(B)水0.3〜10質量%、(C)安定剤0.001〜1質量%、(D)非水系溶媒20〜90質量%を含有するエーテルダイマー組成物とすることにより、高温でも低温でも長期に渡って安定貯蔵可能になることを見出し、本発明に到達したものである。
【0012】
なお、上記(A)は対称形のエーテルダイマーであることが好ましく、上記式(1)中、RとRは同一の原子または炭化水素基であることが好ましい。
【0013】
また、上記(C)はフェノール系化合物、有機酸銅塩、フェノチアジン類、ホスファイト類、チオエーテル類、ヒンダードアミン系化合物、アスコルビン酸類、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体、N−オキシル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、上記(D)は、上記(A)、(B)、(C)を均一溶解できる有機溶媒であって、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒 、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒からなる群より選ばれる溶媒であることが好ましく、モノアルコール類、環状エーテル類、グリコールモノエーテル類、グリコールエーテル類、グリコールモノエーテルのエステル類、アルキルエステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、アミド類からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0015】
本発明は、上記エーテルダイマー組成物および(A)エーテルダイマーと共重合可能な不飽和単量体を含んでなる単量体組成物、該単量体組成物を重合してなるテトラヒドロピラン環含有共重合体でもある。該テトラヒドロピラン環含有共重合体は酸基を有することが好ましく、したがって(A)エーテルダイマーと共重合可能な不飽和単量体は酸基を有する単量体を含むことが好ましい。上記酸基を有するテトラヒドロピラン環含有共重合体には、エポキシ基、オキサゾリン基、および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種と重合性不飽和二重結合を含む化合物を、さらに付加させてなるテトラヒドロピラン環含有共重合体とすることがより好ましい。
【0016】
本発明は、上記酸基を有するテトラヒドロピラン環含有共重合体と光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物でもあり、カラーフィルター用レジストであることが好ましい。また、本発明は該感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、基板上に該硬化物が形成されてなるカラーフィルターでもある。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエーテルダイマー組成物は、貯蔵安定性が高いことから、長期に渡って保存することができ、取扱いが容易である。例えば、工場においてエーテルダイマーを一度に大量生産して保存しておくことができることから生産効率が格段に向上する。また、貯蔵安定性が高いので共重合体を合成した場合に品質が安定する。特に不純物量の低減が求められる感光性樹脂組成物の原料として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】エーテルダイマーの合成反応時の不純物(触媒や副反応生成物)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳述する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0020】
<エーテルダイマー組成物>
本発明のエーテルダイマー組成物は、
(A)下記一般式(1):
【0021】
【化3】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)で表されるエーテルダイマー、(B)水、(C)安定剤、(D)非水系溶媒を含有し、(B)水の含有量が0.3〜10質量%であることを特徴とする。
特に、下記一般式(1)
【0022】
【化4】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)
で表される(A)エーテルダイマーを含有する組成物であって、(A)エーテルダイマー10〜70質量%、(B)水0.3〜10質量%、(C)安定剤0.001〜1質量%、(D)非水系溶媒20〜90質量%を含有する組成物が好ましい。また、更に液状組成物であることが好ましい。
【0023】
ラジカル重合性単量体の貯蔵安定性を向上する方法として安定剤を含有させることは一般的であり、非水溶性のラジカル重合性単量体、特に常温で固体のラジカル重合性単量体を安定剤とともに非水系の有機溶媒に溶解し均一な溶液の形態として、取扱い性を向上することも一般的である。本発明のエーテルダイマー組成物の貯蔵安定性を向上するにおいては、エーテルダイマー、安定剤、非水系溶媒の3成分系では不十分であり、さらに適量の水を共存させることが肝要である。理由は不明であるが、適量の水を共存させることにより、少ない安定剤量でも十分な貯蔵安定性を得ることができる。
【0024】
特に、各成分の割合を上記範囲とすることにより、貯蔵安定性が高く、取扱い性のよい均一な液状組成物とすることができる。上記(A)〜(D)成分の含有割合は、上記割合の範囲内で適宜組み合わせることができるが、より好ましい含有割合は(A)エーテルダイマー15〜40質量%、(B)水0.5〜7質量%、(C)安定剤0.002〜0.1質量%、(D)非水系溶媒50〜85質量%であり、特に好ましい含有割合は(A)エーテルダイマー20〜35質量%、(B)水1〜5質量%、(C)安定剤0.003〜0.05質量%、(D)非水系溶媒55〜75質量%を含有するものである。上記範囲に調整することにより、エーテルダイマー組成物の貯蔵安定性がより高いものとなる。
以下に、上記(A)〜(D)成分について詳述する。なお、各成分を含む組成物の調整については、従来公知の混合方法や精製方法を採用できるが、本発明では上記(A)成分の合成反応後、精製し、組成物を調整することが好ましい。
【0025】
(A)エーテルダイマー
本発明におけるエーテルダイマーとは、下記一般式(1)
【0026】
【化5】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)で表される化合物であり、
下記一般式(2)
【0027】
【化6】
(式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)で表される化合物である、α−ヒドロキシメチルアクリル酸あるいはそのエステルがエーテル2量化した構造を有する化合物であって、分子中に少なくとも1つのエーテル結合を有するものを意味する。
【0028】
エーテルダイマーは環化しながら重合して、下記一般式(3)
【0029】
【化7】
(式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)
で表されるエーテルダイマー由来のテトラヒドロピラン環構造を構成単位として有する重合体を生じることができる。
【0030】
上記エーテルダイマーを示す上記一般式(1)中、RおよびRで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が、得られる重合体の耐熱性がより向上する点で好ましく、最も好ましくはメチルである。
【0031】
およびRは、同一の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。重合体の透明性、耐熱性をより向上できる点でRおよびRは同一の置換基であること、すなわち対称形のエーテルダイマーであることが好ましいが、エーテルダイマーの貯蔵安定性の観点からは異なる置換基であること、すなわち非対称形のエーテルダイマーであることが好ましい。対称形のエーテルダイマーが貯蔵安定性に劣る理由は明確ではないが、対称形だと結晶性が高くなるため、その分、より重合し易くなるためではないかと推測される。本発明においては、貯蔵安定性に劣る対称形のエーテルダイマーであっても、貯蔵安定性の高いエーテルダイマー組成物とすることができるので、エーテルダイマーとしては、対称形のエーテルダイマー、すなわち2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸またはジアルキル2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエートであることがより好ましい。
【0032】
上記対称形のエーテルダイマーの具体例としては、例えば、2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましく、最も好ましくはジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートである。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0033】
本発明のエーテルダイマー組成物におけるエーテルダイマーの含有量は10〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜40質量%、さらに好ましくは20〜35質量%である。エーテルダイマーの含有量が高いほど貯蔵安定性が低下する傾向にあり、70質量%より高いと著しく低下する。エーテルダイマーの含有量が低いと貯蔵安定性は向上するが、重合体中のテトラヒドロピラン環含有量が減少し、十分な耐熱性、透明性を有する重合体が得られなくなる。
【0034】
(B)水
水は、本発明のエーテルダイマー組成物の必須成分であり適量の範囲が存在し、その含有量としては、0.3〜10質量%が必要であり、より好ましくは0.5〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。理由は分からないが、水の含有量が少なすぎると、夏場の保管を想定したような高温での貯蔵安定性が低下する傾向にある。また、水の含有量が多すぎると、冬場の保管を想定したような低温での貯蔵安定性が低下する傾向にある。
水は、純水が好適である。コスト面から考慮して、一般的に使用されているイオン交換樹脂を通したイオン交換水が更に好適である。
(C)安定剤
本発明における安定剤は、ラジカル重合や酸化劣化を防止する機能をもつ化合物であり、通常用いられる重合禁止剤、酸化防止剤を1種または2種以上使用でき、特に限定されるものではない。このような化合物としては、例えば、フェノール系化合物、有機酸銅塩、フェノチアジン類、ホスファイト類、チオエーテル類、ヒンダードアミン系化合物、アスコルビン酸類、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体、N−オキシル化合物などを挙げることができる。これらの中では、着色や相溶性などの点で、環構造を有するヒドロキシ基含有化合物、特にフェノール系化合物が好ましく、具体的には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。また、N−オキシル化合物も好ましく、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの誘導体、中でも4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどが挙げられる。
【0035】
上記安定剤は、1種だけを使用してもよく、2種以上を併用しても良い。本発明のエーテルダイマー組成物の貯蔵安定性を最も向上できることから、上記フェノール系化合物とN−オキシル化合物を併用することが特に好ましい。フェノール系化合物/N−オキシル化合物の質量割合としては、15/1〜5/1であることが好ましく、10/1〜7/1であることがさらに好ましく、8/1の割合であることが最も好ましい。
【0036】
本発明のエーテルダイマー組成物における、上記安定剤の含有量は0.001〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.002〜0.1質量%、さらに好ましくは0.003〜0.05質量%である。含有量が少なすぎると貯蔵安定性が低下する傾向にあり、多すぎると貯蔵中に著しく着色したり、重合性が低下し重合体を得る工程で問題が起きたりする傾向にある。
【0037】
(D)非水系溶媒
本発明における非水系溶媒は、エーテルダイマー、水、安定剤を均一溶解できる有機溶媒であり、そのような有機溶媒であれば特に限定されない。
上記非水系溶媒としてはアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒からなる群より選ばれる溶媒であることが好ましく、1種又は2種以上を用いてもよい。具体的には以下の溶媒が挙げられる。
(アルコール系溶媒)
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン等の多価アルコール類;
(エーテル系溶媒)
テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類
(エステル系溶媒)
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類
(ケトン系溶媒)
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類
(芳香族系溶媒)
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類
(アミド系溶媒)
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類
(ニトリル系溶媒)
アセトニトリル、プロビオニトリル、ベンゾニトリル等
(スルホキシド系溶媒)
ジメチルスルホキシド
上記非水系溶媒の種類と量は、目的や用途、エーテルダイマー組成物の製造条件、THP環共重合体の製造条件等に応じて適宜選択すればよい。例えば、THP環共重合体をレジスト用樹脂として使用する場合、上記非水系溶媒として、レジストを構成する溶媒と同一のものを使用すれば、レジストを調製する際に上記非水系溶媒を除去しなくても使用できるので工程を簡略化でき好ましく、このような溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどのエステル系溶媒、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンなどの除去の容易な低沸点の溶媒も好ましい。また例えば、酸基を有するTHP環共重合体を得る場合、重合中の溶液粘度を下げて分子量制御などを容易にする観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒が好ましく、THP環共重合体をレジスト用樹脂として使用する場合は、除去の容易なメタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低沸点のアルコール系溶媒がより好ましい。したがって、特に、THP環共重合体をカラーフィルター用レジストのようなアルカリ現像型ネガレジスト用樹脂として使用する場合、非水系溶媒としては、上記レジスト用溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどのエステル系溶媒、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒など)とアルコール系溶媒との混合溶媒とすることが好ましい。
本発明のエーテルダイマー組成物における、上記(D)非水系溶媒の含有量は20〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜85質量%、さらに好ましくは55〜75質量%である。含有量が少なすぎるとエーテルダイマーおよび水を十分に均一溶解することができず、多すぎると重合体中のテトラヒドロピラン環含有量が減少し、十分な耐熱性、透明性を有する重合体が得られなくなる。
<エーテルダイマー組成物の製造方法>
本発明のエーテルダイマー組成物に含まれるエーテルダイマーの製造方法は特に限定されないが、対称形のエーテルダイマーを高収率、高純度で得る観点からは、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステルを3級アミン触媒で脱水2量化した後、不純物(図1に示される触媒や副反応生成物など)を除去する方法が好ましい。
【0038】
特に、エーテルダイマー組成物の安定性向上、および後の重合時のゲル化防止の観点から、重合性不飽和二重結合を含む副反応生成物(架橋性化合物:エステルダイマー、3量体)を、0.001質量%以下、好ましくは検出限界以下に除去することが好ましい。また、着色防止の観点から、3級アミン触媒を0.01質量%以下、好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0.0005質量%以下に除去するこが好ましい。
【0039】
これら不純物を除去する方法としては、抽出、晶折、蒸留など、公知の精製方法を適宜選択できるが、高純度のエーテルダイマーを高収率で得られることから、晶折が好ましい。なお晶析とは、液相等から結晶を析出させることを意味するものである。
【0040】
本発明のエーテルダイマー組成物を製造する方法としては、(A)エーテルダイマー、(B)水、(C)安定剤、(D)非水系溶媒、を所定の割合になるよう均一に混合、液状化すればよい。
【0041】
<エーテルダイマー組成物を含む単量体組成物>
本発明は、エーテルダイマー組成物および不飽和単量体を含有する単量体組成物でもある。不飽和単量体としては、エーテルダイマーと共重合可能なラジカル重合性不飽和結合(以下、単に共重合性基ともいう)を有する単量体であれば、単量体組成物を重合することにより得られる重合体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。不飽和単量体は同一分子内に共重合性基を1つだけ有する化合物(以下、単官能性単量体ともいう)でもよく、2個以上有する化合物(以下、多官能性単量体ともいう)が、可溶性の重合体を得る観点からは、単官能性単量体が好ましい。
【0042】
共重合性基としては、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合が好ましく、より好ましくは炭素−炭素二重結合であり、さらに好ましくは隣接する官能基により活性化された炭素−炭素二重結合である。
【0043】
隣接する官能基により活性化された炭素−炭素二重結合としては、例えば、隣接共役する炭素−炭素二重結合により活性化された炭素−炭素二重結合(1,3−共役ジエン構造)、隣接共役するカルボニル基により活性化された炭素−炭素二重結合、隣接共役するシアノ基により活性化された炭素−炭素二重結合、隣接共役する芳香環により活性化された炭素−炭素二重結合、隣接するエステル基により活性化された炭素−炭素二重結合、隣接するハロゲン原子により活性化された炭素−炭素二重結合、隣接するエーテル基により活性化された炭素−炭素二重結合などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0044】
以下に、単官能性単量体について具体的に説明するが、本発明は多官能性単量体の使用を排除するものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。
上記の単官能性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、不飽和モノカルボン酸、不飽和多価カルボン酸、不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸、不飽和酸無水物、芳香族ビニル、N置換マレイミド、α−オレフィン、ハロゲン化ビニル、共役ジエン、ビニルエステル、ビニルエーテル、N−ビニル化合物、不飽和イソシアネート、アセチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単官能性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸sec−アミル、(メタ)アクリル酸tert−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
α−アリルオキシメチルアクリル酸エステルとしては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸sec−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸クロチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸1,1−ジメチル−2−プロペニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−メチルブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−2−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−3−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−メチル−3−ブテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸オレイル、α−アリルオキシメチルアクリル酸リノール、α−アリルオキシメチルアクリル酸リノレン、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−メチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリメチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸4−tert−ブチルフェニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリフェニルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シンナミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アントラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトシキエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メトキシブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸グリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸β−メチルグリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸β−エチルグリシジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−メチル−3−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸3−エチル−3−オキセタンメチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロピラニル、ジオキサゾラニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジオキサニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのα−アリルオキシメチルアクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリルアミドは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
不飽和モノカルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和モノカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
不飽和多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和多価カルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
不飽和酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和酸無水物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族ビニルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
N置換マレイミドとしては、例えば、メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN置換マレイミドは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
ハロゲン化ビニルとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのハロゲン化ビニルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ネオプレン、シクロペンタジエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの共役ジエンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのN−ビニル化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
不飽和イソシアネートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和イソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の単量体組成物におけるエーテルダイマー組成物の含有量は、用途に応じて適宜選択すればよいが、耐熱性、透明性など、得られる重合体にテトラヒドロピラン環由来の特性を十分に付与し、かつ重合時のゲル化を抑制する観点から、5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%である。また、カラーフィルター用途の重合体を得る場合、エーテルダイマー自体の含有量は全単量体成分中2〜60質量%、好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%となるように本発明のエーテルダイマー組成物と他の単量体とを混合することが好ましい。
【0062】
本発明の単量体組成物を重合して得られる重合体の好適な使用様態として、酸基を有する重合体とし(単量体組成物中の不飽和単量体の少なくとも一部に酸基を有する不飽和単量体を使用することにより得られる)、アルカリ現像型ネガレジストのバインダー樹脂や、熱硬化性エポキシ樹脂組成物における架橋剤として使用する使用様態が挙げられる。前記アルカリ現像型ネガレジストは、一般に、少なくとも、アルカリ可溶性樹脂、光硬化性化合物、光開始剤を含む組成物であり、基板に塗布、製膜した後、フォトマスクを介して露光した後、アルカリ現像液で未露光部を洗い流し微細パターンを得るためのものである。また、前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、一般的に、少なくとも、エポキシ樹脂、酸基含有重合体を含み、好ましくは硬化触媒をさらに含み、加熱により硬化させるものである。
【0063】
前記アルカリ現像型ネガレジスト、熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、様々な用途に活用されているが、本発明におけるテトラヒドロピラン環含有重合体の特性を活かせる点で、カラーフィルター用途が好ましく挙げられる。以下、カラーフィルター用途に好適な重合体を得るための単量体組成物を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
本発明の単量体組成物は、上記エーテルダイマー組成物および酸基を有する不飽和単量体を含むものであることが好ましい。酸基を有する不飽和単量体としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基など、アルカリと中和しアルカリ塩を形成できる官能基を有する単量体であれば特に限定されないが、カルボキシル基、カルボン酸無水物基を有する単量体が好ましく、カルボキシル基を有する単量体がより好ましい。カルボキシル基、カルボン酸無水物基を有する単量体としては、前記した不飽和モノカルボン酸、不飽和多価カルボン酸、不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸、不飽和酸無水物などが挙げられる。
【0065】
本発明の単量体組成物中における酸基を有する単量体の含有量は、カラーフィルター用途で好適に使用する観点からは、単量体組成物中、3〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは7〜50質量%である。
本発明の単量体組成物は、エーテルダイマー、酸基を有する不飽和単量体の他に必要に応じて、他の共重合可能な単量体を含んでいてもよい。他の共重合可能な単量体としては、上述した単量体が挙げられる。他の共重合可能な単量体の中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、ビニルトルエン、N−ベンジルマレイミドが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましく、カラーフィルター用途で好適に使用する観点からは、単量体組成物中、3〜80質量%が好ましく、より好ましくは5〜75質量%、さらに好ましくは7〜70質量%である。
【0066】
<テトラヒドロピラン環含有共重合体>
本発明は、上記エーテルダイマー組成物および不飽和単量体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体、すなわちテトラヒドロピラン環含有共重合体(THP環共重合体)でもある。
【0067】
本発明のTHP環共重合体は、上記本発明の単量体組成物をラジカル重合することにより得られる。ラジカル重合以外の重合機構も採用できるが、工業的生産に有利であり、またエーテルダイマーの環化重合率を向上する点でラジカル重合機構が好ましい。重合方法としては、塊状重合法、沈澱重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、公知の重合方法を用いることができ、目的、用途に応じて適宜選択すればよいが、反応制御および環化重合率向上の観点から、溶液重合法が好ましい。
【0068】
溶液重合法を適用して本発明のTHP環共重合体を得る場合、重合用の溶媒を新たに準備して使用してもよいし、本発明の単量体組成物はエーテルダイマー組成物に由来する非水系溶媒を含むことから、新たに重合用の溶媒を準備しなくともよい。すなわち、重合溶媒として別途溶媒を準備してもよいし、単量体組成物中に含まれる非水系溶媒を重合溶媒としてもよい。重合溶媒としては、用途や重合条件に合わせて適宜選択すればよいが、エーテルダイマー組成物用の非水系溶媒として前記したものを挙げることができる。
【0069】
前記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、通常用いられる重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;が挙げられる。これら重合開始剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。なお、開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得ることができる点で、全単量体成分に対して0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%とするのがよい。
【0070】
前記単量体成分を重合する際には、分子量調整のために、必要に応じて、通常用いられる連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられるが、好ましくは、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸がよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得ることができる点で、全単量体成分に対して0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%とするのが好ましい。
【0071】
本発明においては、上記単量体成分を溶液重合することによりTHP環共重合体を得る。なお、重合温度、重合時間は、使用する単量体成分の種類、比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度0〜150℃、重合時間0.5〜20時間、より好ましくは、重合温度80〜150℃、重合時間1〜15時間、さらに好ましくは、重合温度80〜140℃、重合時間1〜10時間であるのがよい。
【0072】
前記重合反応時の単量体成分の投入方法は、特に制限されず、全量一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、全量を滴下しても良いが、発熱量の制御の点で、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、あるいは全量を滴下するのが好ましい。
【0073】
前記THP環共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、カラーフィルター用途に好適に使用できる観点からは、2000〜200000、より好ましくは5000〜100000、さらに好ましくは5000〜50000であるのがよい。重量平均分子量が200000を超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなり、一方、2000未満であるとアルカリ可溶性が強すぎるため、感光性樹脂組成物としたときの現像性が低下したり、十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
【0074】
前記THP環共重合体の酸価は、特に制限されないが、カラーフィルター用途に好適に使用できる観点からは、好ましくは3〜350mgKOH/g、より好ましくは5〜350mgKOH/gであるのがよい。更に好ましくは40〜300mgKOH/gである。重合体の酸価が3mgKOH/g未満の場合、アルカリ物質による可溶性が必要な場合に可溶性が充分でなくなる恐れがある。350mgKOH/gを超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる傾向がある。
また、本発明の上記重合体は、更に側鎖に重合性二重結合を含んでもよい。側鎖に重合性二重結合を持たせることにより、熱や光で硬化させることができる。その為、光硬化性樹脂組成物(感光性樹脂組成物)としたときの光に対する感度が向上し、より少ない光量で硬化し、かつ硬化後の機械強度も高くなる。側鎖に重合性二重結合を導入する方法としては、エポキシ基、オキサゾリン基、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種と重合性不飽和二重結合を含む化合物を付加させる方法が挙げられる。重合性不飽和二重結合としては、得られる重合体の反応性の点から(メタ)アクリロイル基の有する二重結合が好ましく挙げられる。
エポキシ基、オキサゾリン基、および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種と重合性不飽和二重結合を含む化合物としては、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコールなどの水酸基と二重結合を有する化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基と二重結合を有する化合物;ビニルオキサゾリン、イソプロペニルオキサゾリンなどのオキサゾリン基と二重結合を有する化合物;等が挙げられるが、これらの中でも、反応性が高く、反応のコントロールがしやすく、入手が容易で、しかもラジカル重合性二重結合だけでなく同時に水酸基も導入できる点から、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸3,4―エポキシシクロヘキシルメチルが好ましい。
エポキシ基、オキサゾリン基、および水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種と重合性不飽和二重結合を含む化合物の付加量は、重合体100質量部に対して、好ましくは5〜120質量部、より好ましくは10〜80質量部とするのがよい。少なすぎると、硬化性樹脂組成物との硬化性が不足して硬化後の強度が不足したり、一方、多すぎると、側鎖に重合性二重結合を有する重合物の保存安定性が低下する場合がある。
エポキシ基、オキサゾリン基、および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種と重合性不飽和二重結合を含む化合物を付加させる際の反応条件としては、温度は50℃〜150℃が好ましく、80℃〜140℃がさらに好ましく、90℃〜120℃が最も好ましい。温度が上記範囲より低いと、付加反応が充分進行しない恐れがあり、一方、上記範囲より高いと、付加反応時にゲル化が起こりやすい。また、反応時間は0.5〜24時間が好ましく、1〜15時間がさらに好ましい。前記付加反応時には、必要に応じて、公知の触媒を使用することができる。触媒としては、例えば、付加させる化合物がエポキシ基を有する場合には、トリエチルアミン等の3級アミンが好ましい。触媒の使用量は、重合体に対して、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜5質量%がさらに好ましく、0.1〜2質量%が最も好ましい。触媒の使用量が上記範囲を下回ると、付加反応が充分進行しない恐れがあり、一方、上記範囲を超えて使用すると、得られる重合体が着色したり、触媒分が溶解せず沈殿したりする恐れがある。
さらに、前記付加反応時には、禁止効果のあるガスを反応系中に導入したり、禁止剤を添
加したりしてもよい。禁止効果のあるガスを反応系中に導入したり、禁止剤を添加したりすることにより、付加反応時のゲル化を防ぐことができる。
【0075】
本発明の上記重合体は、更にエポキシ基を含んでもよい。これにより熱や光で硬化させることができる。重合体にエポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有する単量体を単量体成分として重合すればよい。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルが挙げられる。これらエポキシ基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
<感光性樹脂組成物>
本発明は、本発明のテトラヒドロピラン環含有共重合体を含む、感光性樹脂組成物でもある。
特にカラーフィルター用感光性樹脂組成物に好適に用いることができる。通常、カラーフィルター用感光性樹脂組成物は本発明の上記共重合体以外に光重合開始剤や着色剤を含有する。
光重合開始剤としては公知のものが使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリニル−1−プロパン(「イルガキュア907」;チバ・ジャパン社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類、
その他、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−エチルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォルニル)フェニル]−1−ブタノン等のα−アミノケトン系化合物類;
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルブタン−1−オン、1−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−オクチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メチルチオフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブロモフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−カルボエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン系化合物類などが挙げられる。
これらの光重合開始剤は1種または2種以上の混合物として使用され、本発明のエーテルダイマー組成物を必須成分として重合してなる重合体と、必要により使用されるラジカル重合性化合物(後述する)の合計100質量部に対し、0.5〜30質量部含まれていることが好ましい。光重合開始剤の量が0.5質量部よりも少ない場合には、光照射時間を増やさなければならなかったり、光照射を行っても重合が起こりにくかったりするため、適切な表面硬度が得られなくなる。なお、光重合開始剤を30質量部を超えて配合しても、多量に使用するメリットはない。
【0076】
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、着色剤として染顔料を用いる。耐熱性、耐光性の観点から、有機または無機の顔料が好ましく、具体的には、カラーインデックスCI(The Society of Dyers and Colourists 出版)でピグメント(pigment)に分類されている有機化合物等の有機顔料;金属酸化物または複合酸化物等の無機顔料;等が挙げられる。
【0077】
また、着色剤として染料を用いる場合は、感光性樹脂組成物中に均一に溶解してカラーフィルター用感光性樹脂組成物を得ることができる。使用できる染料としては、特に制限はなく、従来カラーフィルター用として公知の染料が使用できる。
【0078】
これらの着色剤は、1種または2種以上混合して使用され、本発明のエーテルダイマー組成物を必須成分として重合してなる重合体と、必要により使用されるラジカル重合性化合物(後述する)の合計100質量部に対し、10〜150質量部使用することが好ましい。より好ましくは20〜100質量部である。
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物には、上記エーテルダイマー組成物を必須成分として重合してなる重合体以外のラジカル重合性化合物を配合してもよい。ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性モノマーが挙げられる。例えば、ラジカル重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が使用できる。
ラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)−メチル(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレート等が使用可能である。これらは、要求特性に応じて適宜選択され、1種または2種以上を用いることができる。
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物において、本発明のエーテルダイマー組成物を必須成分として重合してなる重合体と上記ラジカル重合性化合物を併用する場合は、両者の合計を100質量部としたときに、上記エーテルダイマー組成物を必須成分として重合してなる重合体を15質量部以上、より好ましくは30質量部以上使用することが好ましい。少ないと、ラジカル重合性共重合体(A)に基づく種々の効果が充分に発現しないおそれがある。
【0079】
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物を基材(好ましくは基板)に塗布する際の作業性等の観点から、組成物中に溶媒を配合してもよい。溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いることができ、塗布作業時に組成物が最適粘度となるよう適当量使用するとよい。また、溶液重合で得られた共重合体溶液をそのまま、あるいは希釈して、あるいは濃縮して、組成物に利用することもできる。
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、分散剤、増感剤、重合禁止剤、密着性向上剤、充填剤、可塑剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
<感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、およびカラーフィルター>
本発明は、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、および基板上に該硬化物が形成されてなるカラーフィルターでもある。
本発明の上記感光性樹脂組成物は、通常、基材(好ましくは基板)に公知の方法で塗布した後、プリベークを行って溶媒を蒸発させ、塗膜(硬化物)を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光した後、未露光部分をアルカリ水溶液に溶解させてアルカリ現像を行う。次いで、必要に応じて洗浄した後、ポストベークを行う。このようにして、所定の硬化物が形成される。
基板上に上記硬化物が形成されてなるカラーフィルターは、具体的には上記感光性樹脂組成物を硬化して形成されたセグメントを有するカラーフィルターである。カラーフィルターのセグメント(ブラックマトリクス、赤色,緑色,青色の各画素、フォトスペーサー、保護層、配向制御用リブ等)を形成する方法としてはフォトリソ法、印刷法、電着法、インクジェット法等が挙げられ、フォトリソ法としては、主流であるネガ型のアクリル系感光性樹脂組成物を用いる方法(感光アクリル法)と、非感光性のポリイミド系樹脂組成物とポジ型レジストを用いる方法(非感光ポリイミド法)とがある。感光アクリル法は、具体的には、ネガ型の感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥した後、形成された塗膜の上にフォトマスクを重ね、このフォトマスクを介して露光、露光部分を光硬化させ、未露光部分を現像、必要に応じて洗浄、さらに熱硬化または光硬化処理を行って各カラーフィルターのセグメントを形成する方法である。このネガ型感光性樹脂組成物として本発明の感光性樹脂組成物を用いると、高品質のカラーフィルターのセグメントを歩留まりよく形成することができる。
カラーフィルターの形態としては、液晶表示装置用の場合は透明基板上に、撮像管素子用の場合は光電変換素子基板上に画素が形成されていることが必要要件であり、必要に応じて、各画素を隔離するブラックマトリクスを形成したり、画素上に保護膜を形成したり、ブラックマトリクス領域上にフォトスペーサーを形成したり、画素あるいは保護膜上にITO等の透明電極を形成したり、配向膜および配向制御用の構造体を形成したりする場合がある。また、TFT(薄膜トランジスタ)を形成した透明基板上にブラックマトリクスおよび画素、必要に応じて保護膜、フォトスペーサー等を形成する場合もある。
本発明のカラーフィルターは、上記本発明の感光性樹脂組成物を使用して形成されたセグメントを少なくとも一つ具備するものであればよいが、好ましくは画素全ての色が、より好ましくはブラックマトリクス及び画素が、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されて成るものである。本発明の感光性樹脂組成物は、着色が必要な画素およびブラックマトリクス用として特に好適であるが、フォトスペーサー、保護層など、着色を必要としないセグメント形成用としても好適である。
透明基板としては、ガラスの他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの開環重合体やその水素添加物等の熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性プラスチックシートが挙げられ、耐熱性の点から、ガラス板および耐熱性プラスチックシートが好ましい。また、透明基板には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤等による薬品処理などを行ってもよい。
ブラックマトリクスは、金属薄膜またはブラックマトリクス用感光性着色樹脂組成物を用いて透明基板上に形成される。金属薄膜を利用したブラックマトリクスは、例えば、クロム単層またはクロムと酸化クロムの2層により形成される。この場合、まず、蒸着、スパッタリング法などにより、透明基板上に上記の金属または金属・金属酸化物の薄膜を形成する。ついで、その上にポジ型の感光性皮膜を形成した後、当該フォトマスクを使用し、感光性皮膜を露光・現像し、ブラックマトリクス画像を形成する。その後、当該薄膜をエッチング処理しブラックマトリクスを形成する。ブラックマトリクス用感光性着色樹脂組成物を利用する場合は、上記の感光アクリル法によるセグメント形成にしたがってブラックマトリクスを形成する。
画素は、通常、赤、緑、青の3色であり、例えば、まず、緑色の感光性着色組成物を用い上記の感光アクリル法によるセグメント形成にしたがって緑色の画素を形成する。この操作を残りの2色についても行い、3色の画素を形成する。各色の画素の形成順序は、特に限定されるものではない。
保護膜は、必要に応じて、画素を形成した後に、保護膜用の透明感光性樹脂組成物を用い上記の感光アクリル法によるセグメント形成にしたがって画素上に形成される。コスト低減、工程簡略化のために、保護膜を形成しない場合もある。
画素あるいは保護膜上に透明電極を形成する場合、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等や、これらの合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等により薄膜を形成し、必要に応じて、ポジ型レジストを用いたエッチング、または治具の使用により所定のパターンとすることができる。平面配向型駆動方式(IPSモード)等、一部の液晶駆動方式においては、透明電極を形成しない場合もある。感光性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、スピン塗布、スリット塗布、ロール塗布、流延塗布等が挙げられるが、特に本発明の感光性樹脂組成物を用いる場合、スリット塗布による方法が好ましい。スリット塗布における塗布条件は、スリット・アンド・スピン方式とスピンレス方式、透明基板の大きさ、目標膜厚等によって異なり、適宜ノズルからの吐出量とスリットヘッドの移動速度を選択する。また、ノズル先端のリップ幅は通常30〜500μm、ノズル先端と基板との間隔は通常30〜300μmとされる。なお、本発明の感光性樹脂組成物は、スピン塗布、ロール塗布、流延塗布による方法にも好ましく適用できる。塗布膜の膜厚は、ブラックマトリクス、画素および保護膜の場合、通常、0.3〜3.5μm、フォトスペーサーの場合、通常1〜10μmである。
基板に塗布した後の塗膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等を用いて行う。乾燥条件は、含まれる溶媒成分の沸点、硬化成分の種類、膜厚、乾燥機の性能等に応じて適宜選択されるが、通常、50〜160℃の温度で、10秒から300秒間行う。
露光は、所定のマスクパターンを介して塗膜に活性光線を照射する工程である。活性光線の光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が使用される。露光機の方式としては、プロキシミティー方式、ミラープロジェクション方式、ステッパー方式が挙げられるが、プロキシミティー方式が好ましく用いられる。
露光を行った後、現像液により現像処理し、未露光部分を除去しパターンを形成する。現像液としては、本発明の感光性樹脂組成物を溶解するものであればいかなるものも用いることができるが、通常、有機溶媒やアルカリ性の水溶液が用いられる。現像液としてアルカリ性の水溶液を用いる場合には、現像後、さらに水で洗浄することが好ましい。アルカリ性の水溶液には、アルカリ剤の他、必要に応じ界面活性剤、有機溶媒、緩衝剤、染料、顔料等を含有させることができる。アルカリ剤としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機のアルカリ剤;トリメチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン類が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタン酸アルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。有機溶媒としては、例えば、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール等のアルコール類が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせてもよい。現像処理は、通常10〜50℃の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法で行われる。
現像後、通常、150〜250℃の温度で5〜60分間、ホットプレート、コンベクションオーブン、高周波加熱機等の加熱機器を用いて加熱し、熱硬化処理を施す。
上記カラーフィルターを具備する液晶表示パネルは、例えば、上記カラーフィルターの内面側に配向膜を形成し、対向基板と張り合わせて間隙部に液晶化合物を封入することにより製造することができる。
配向膜としては、ポリイミド等の樹脂膜が好適であり、通常、塗布・熱焼成後、紫外線処理やラビング処理により表面処理される。液晶化合物としては、特に限定されず、従来公知のものが使用できる。対向基板は、TFT基板が好適であり、通常の方法で製造されたものを用いることができる。カラーフィルターと対向基板の張り合わせギャップは通常2〜8μmの範囲である。対向基板を張り合わせた後、シール材で封止して液晶表示パネルが完成する。
【実施例】
【0080】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
〔エーテルダイマー組成物の調製〕
[実施例1]
1.反応
攪拌装置、温度センサー、冷却管を付した反応器に、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル(RHMA−M)を450.0部、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)を13.5部、p−メトキシフェノール(MEHQ)を0.9部仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温した。内温が85℃に到達してから、反応器内が常圧の状態で、90±5℃を維持しながら9時間反応させた。
2.メタノール希釈
反応液温が40℃以下になったのを確認した後にメタノール(MeOH)355.0部を加えて希釈した(条件:常圧、35±5℃)。
【0081】
3.晶析
上記MeOH希釈液を、水が1485.0部入っている異なる反応器に滴下しRHMAエーテルダイマーを結晶化させた(条件:常圧、30℃以下)。
4.ろ過
上記RHMAエーテルダイマーを含むスラリーを加圧ろ過器を用いてろ過した(条件:常圧〜0.1MPa、15℃以下)。
5.ケーキ洗浄
RHMAエーテルダイマーのろ過ケーキを水で洗浄した(条件:常圧〜0.1MPa、常温)。洗浄では1回につき380.0部の水を用いて3回洗浄を繰り返した。
6.ケーキ溶解
RHMAエーテルダイマーのケーキに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)184.0部添加し溶解させた(条件:常圧、60℃)。
7.油水分離
RHMAエーテルダイマーを含む油層と水層に分液し、水層を除去した(条件:常圧、60℃)。油層は412.5部、除去した水層は141.9部であった。
8.溶液調製(濃度調製)
油層(RHMAエーテルダイマーとPGMEAを含有する溶液)に、PGMEA(180.0部)、イソプロパノール(IPA)340.0部、MEHQ0.049部、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4H−TEMPO)0.006部を添加して組成物932.5部を得た。なお、副反応生成物の架橋性化合物(エステルダイマー、3量体)は検出限界以下の量であった。
各組成について表1に示す。
9.組成分析
各組成を、ガスクロマトグラフィー、カールフィッシャー水分計、分光光度計により分析した。分析結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1で得たエーテルダイマー組成物100部に水1.9部を添加した後、カールフィッシャー水分計で水分量を測定した。水以外の成分量は、水の添加量から計算した。結果を表1に示す。
[実施例3]
添加する水の量を4.1部としたこと以外は、実施例2と同様にしてエーテルダイマー組成物を調製、分析した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で得たエーテルダイマー組成物100部を、常圧下で乾燥空気を吹き込みながらIPAを留去し、IPAによる共沸脱水を行った。なお、共沸脱水中は、留去したIPAと等量の乾燥IPA(水分量100ppm以下)を供給した。
2時間脱水を行なった後、乾燥空気を流しながら冷却し、脱水したエーテルダイマー組成物を得た。水分量はカールフィッシャー水分計により測定し、水以外の成分量は、留去したIPA量と添加したIPA量から計算した。結果を表1に示す。
[比較例2]
添加する水の量を15部としたこと以外は、実施例2と同様にしてエーテルダイマー組成物を調製、分析した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1と同様にして、工程5.ケーキ洗浄まで行った。ケーキ20部をバットに広げ、真空乾燥機により、室温下、24時間乾燥し、白色粉末を得た。分析結果を表1に示す。
【0082】
〔エーテルダイマー組成物の高温貯蔵安定性試験〕
[実施例4]
実施例1で得たエーテルダイマー組成物25部を50mlガラス製スクリュー管瓶に入れて密閉し、50℃の乾燥機の中に保管した。1ヶ月おきに取り出し、以下に示す要領で重合物が生じているかどうかを判定した。
・目視による観察で、固化、あるいは白色粉末が生じている場合は重合物が生じていると判定した。
・目視による観察で問題がなかった場合、エーテルダイマー組成物をn−ヘキサンに滴下し、白色沈澱が生じた場合は、重合物が生じていると判定した。
6ヶ月まで50℃保存を続行し、何か月目で重合物が生じたかを表1に示す。なお、6ヶ月目でも重合物が生じていない場合は、十二分に高温安定性があるとして、○とした。
[実施例5]
実施例2で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例4と同様にして高温貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例3で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例4と同様にして高温貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例4]
比較例1で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例4と同様にして高温貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例5]
比較例2で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例4と同様にして高温貯蔵安定性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例6]
比較例3で得た白色粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様にして高温貯蔵を行った。なお、判定は、白色粉末0.1部と10部のテトラヒドロフランを攪拌混合し、不溶物が残存するかどうかで判定した。結果を表1に示す。
【0083】
〔エーテルダイマー組成物の低温貯蔵安定性試験〕
[実施例7]
実施例1で得たエーテルダイマー組成物25部を50mlガラス製スクリュー管瓶に入れて密閉し、5℃に調整した冷蔵庫の中に18ヶ月保管した。18ヶ月後に取り出し、30℃の浴槽につけて結晶物を溶かして均一にした後に、n−ヘキサンに滴下したが、白色沈澱は生じなかったため、低温貯蔵安定性を○と判定した。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例2で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例7と同様にして低温貯蔵安定性を評価したところ、○であった。結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例3で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例7と同様にして低温貯蔵安定性を評価したところ、○であった。結果を表1に示す。
[比較例7]
比較例1で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例7と同様にして低温貯蔵安定性を評価したところ、○であった。結果を表1に示す。
[比較例8]
比較例2で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例7と同様にして低温貯蔵安定性を評価したところ、30℃の浴槽につけて結晶を溶解させると、溶解しない固体が残ったため、低温貯蔵安定性を×と判定した。結果を表1に示す。
[比較例9]
比較例3で得たエーテルダイマー組成物を用いたこと以外は、実施例7と同様にして低温貯蔵安定性を評価したところ、30℃の浴槽につけて結晶を溶解させると、溶解しない固体が残ったため、低温貯蔵安定性を×と判定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
表1に示す結果から、本発明の構成とすることによる効果が優れたものであることが確認された。例えば、実施例1〜3のエーテルダイマー組成物については、高温貯蔵安定性および低温貯蔵安定性の何れも高いことが確認された。水の含有量が本発明の範囲より少ない比較例1のエーテルダイマー組成物については高温貯蔵安定性が低く、水の含有量が多い比較例2のエーテルダイマー組成物については低温貯蔵安定性が低いものであった。水の含有量が本発明の範囲内であっても、非水系溶媒や安定剤を含まない比較例3のエーテルダイマー組成物については高温貯蔵安定性および低温貯蔵安定性の何れも低いものであった。
これらの結果から、本発明の構成とすることによって初めて、優れた貯蔵安定性(高温貯蔵安定性と低温貯蔵安定性の両立)を発現できることが確認されたといえる。
【0085】
〔テトラヒドロピラン環含有共重合体の調製〕
〈分子量の測定〉
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、いずれも、テトラヒドロフラン(THF)を移動相とし、東ソー社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置 HLC−8220GPCにより求め、ポリスチレン換算で測定した。
〈重合体溶液中の重合体濃度〉
重合体溶液1gにアセトン4gを加えて溶解させた溶液を、常温で自然乾燥させ、さらに5時間減圧乾燥(160℃/5mmHg)した後、デシケータ内で放冷し、重量を測定した。そして、重量減少量から、重合体溶液の不揮発分を算出し、これを重合体濃度とした。
〈酸価〉
重合体溶液0.5〜1gに、アセトン80mlおよび水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM−555」平沼産業製)を用いて滴定し、溶液の酸価を測定した。そして、溶液の酸価と重合体濃度から、重合体の酸価を算出した。
〔バインダー樹脂の合成〕
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽に実施例1で得られたエーテルダイマー組成物80質量部、メタクリル酸34質量部、メタクリル酸シクロヘキシル146質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂製「パーブチルO」)5.2質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール14質量部、PGMEA30質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA428質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。反応槽の温度が90℃に安定してから、モノマー滴下槽および連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90℃に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間110℃を維持した。次に、110℃、減圧下にてIPAを除去した後、室温まで冷却し、PGMEAを加えて濃度調整を行うことで、テトラヒドロピラン環を含有する共重合体の重量平均分子量は8000、重合体濃度33.3質量%、酸価は71mgKOH/g、の重合体溶液を得た。
【0086】
〔感光性樹脂組成物の調製、およびカラーフィルター適性評価〕
〔顔料分散液の調製〕
緑色顔料として臭素化亜鉛フタロシアニンを7.24部及びC.I.ピグメントイエロー150を2.54部、PGMEA60.00部、分散剤(ビックケミ−社製「DISPERBYK−2000」)を固形分換算で2部、およびバインダー樹脂を固形分換算で3.3部、ジルコニアビーズ225部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて緑色顔料分散液を調製した。
〔感光性樹脂組成物の調整〕
緑色含量分散液57.78部、PGMEA23.40部、3−エトキシプロピオン酸エチル8部、バインダー樹脂5.47部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3.63部、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール0.38部、4,4’−ビス−ジエチルアミノベンゾフェノン0.19部、2−メルカプトベンゾチアゾール0.38部、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン0.76部をよく混合してテトラヒドロピラン環含有共重合体と光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物を調整した。
〔カラーフィルターの作製〕
50mm角、厚さ0.7mmのガラス基板上に、上記感光性樹脂組成物をスピンコーターで塗布した後、80℃で3分間乾燥した。次いで、2kW高圧水銀灯により、300mJ/cm2の露光量で全面露光処理を行い、ガラス基板上に感光性樹脂組成物が形成されてなる着色塗布基板を作成した。その後、温度230℃で、30分間の熱硬化処理を行った。得られた塗布基板について、日立製作所社製分光光度計(日立製作所社製「U−3310」)により、分光透過率を測定し、XYZ表光系における色度(C光源)を算出した。結果はx0.280、y0.600、Y57.4であった。
以上より、貯蔵安定性の高い本発明のエーテルダイマー組成物を原料として、バインダー樹脂の合成、感光性樹脂組成物の調製をし、良好なカラーフィルターの作製を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、エーテルダイマー組成物及び重合体に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイの生産に必要なカラーフィルター用感光性樹脂組成物や他の硬化材料の原料として幅広い分野で使用されるエーテルダイマー組成物及びそのエーテルダイマー組成物を原料に用いた重合体に関する。
図1