特許第6475991号(P6475991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475991
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】壁高欄の補強構造及び補強工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20190218BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20190218BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   E01D19/10
   E01D22/00 B
   E04G23/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-12151(P2015-12151)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-138364(P2016-138364A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510144591
【氏名又は名称】BASFジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100178283
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 孝太
(72)【発明者】
【氏名】奈良岡 茂
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅史
(72)【発明者】
【氏名】竹村 学
(72)【発明者】
【氏名】山本 正人
(72)【発明者】
【氏名】松田 修二
(72)【発明者】
【氏名】上野 晋
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】入江 剛
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 真起夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊康
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−355209(JP,A)
【文献】 特開2002−138419(JP,A)
【文献】 特開2013−238024(JP,A)
【文献】 実開昭49−060526(JP,U)
【文献】 特開2010−121360(JP,A)
【文献】 特開2002−121659(JP,A)
【文献】 特開2002−256708(JP,A)
【文献】 特開2006−028534(JP,A)
【文献】 米国特許第05145278(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さで立設された壁高欄の補強構造であって、
壁高欄の正面側及び背面側で壁高欄の壁面に沿って設けられる波形鋼板と、前記波形鋼板を壁高欄の壁面に固定する連結部材とを備え、
前記波形鋼板は、面外方向で壁高欄の壁面に近接させて形成される複数の凹部と、面外方向で壁高欄の壁面から離間させて形成される複数の凸部とを有して、前記凹部と前記凸部とが、面内方向で交互に連続するように配置され
前記壁高欄と前記波形鋼板との間の空間には、硬化時間を必要としない既に成形されて形状の定まった中詰材が介装され、モルタルや樹脂等の経時硬化材料が設けられていないこと
を特徴とする壁高欄の補強構造。
【請求項2】
前記波形鋼板は、前記凹部及び前記凸部の各々が面内方向の縦方向に延びて形成されるものであり、前記凹部と前記凸部とが、面内方向の横方向で交互に連続するように配置されること
を特徴とする請求項1記載の壁高欄の補強構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記波形鋼板の前記凹部及び壁高欄を面外方向に連続して貫通するボルトに、ナットを締結させることで設けられること
を特徴とする請求項1又は2記載の壁高欄の補強構造。
【請求項4】
所定の高さで立設された壁高欄の補強工法であって、
面外方向で壁高欄の壁面に近接させて形成される凹部と、面外方向で壁高欄の壁面から離間させて形成される凸部とが、面内方向で交互に連続するように配置された波形鋼板を、壁高欄の正面側及び背面側で壁高欄の壁面に沿って設けて、前記凹部及び前記凸部と壁高欄の壁面との間に、モルタルや樹脂等の経時硬化材料を設けず、硬化時間を必要としない既に成形されて形状の定まった中詰材を設ける設置工程と、
前記波形鋼板の前記凹部及び壁高欄を面外方向に連続して貫通するボルトに、ナットを締結させることで連結部材が設けられて、前記連結部材で前記波形鋼板を壁高欄の壁面に固定する固定工程とを備えること
を特徴とする壁高欄の補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の高さで立設された壁高欄の補強構造及びその補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高欄等の既設壁体を解体撤去することなく利用して、合理的に耐力の向上を図ることを目的として、特許文献1に開示される既存壁体の改修補強構造が提案されている。また、作業性に優れて、かつ、強固で安価に壁体の改修補強を可能とすることを目的として、特許文献2に開示される壁体の改修補強構造が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示される既存壁体の改修補強構造は、床版に一体的に立設された既存壁体を挟んで両面に貼着されて一体化された補強板と、既存壁体を貫通して両面の補強板同士を連結する連結部材と、両面の補強板の上端同士を相互に一体的に繋いで設けられて既存壁体の上部を覆う笠板と、両面の補強板の下端を床版に固定するアンカーとを備える。
【0004】
特許文献2に開示される壁体の改修補強構造は、高欄の両側に配置された補強板と、高欄と補強板との間にそれぞれ設置されたスペーサーと、高欄と補強板との間にそれぞれ充填されたモルタル部と、モルタル部に充填されるモルタルの流出を防止するための第一の流出防止材と、補強板を高欄に固定するための第一の固定部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−154600号公報
【特許文献2】特開2010−121360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された既存壁体の改修補強構造は、既存壁体を挟んで両面に貼着された補強板に、略平板状に形成されたステンレス鋼板等が用いられるものであり、補強板が略平板状に形成されるため剛性が低いものとなることから、支柱等で補強板を別途に補強することが必要となって、改修補強コストが増大するという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2に開示された壁体の改修補強構造は、高欄と補強板との間のモルタル部にモルタルが充填されて、第一の流出防止材でモルタル部からのモルタルの流出を防止した状態でモルタルの硬化を待つことが必要となることから、改修補強のための施工期間が長期化するという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、鉄道高架橋等における壁高欄を簡易、迅速に補強して、壁高欄のコンクリートの経年劣化による部分的な剥離、剥落を防止することのできる壁高欄の補強構造及びその補強工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る壁高欄の補強構造は、所定の高さで立設された壁高欄の補強構造であって、壁高欄の正面側及び背面側で壁高欄の壁面に沿って設けられる波形鋼板と、前記波形鋼板を壁高欄の壁面に固定する連結部材とを備え、前記波形鋼板は、面外方向で壁高欄の壁面に近接させて形成される複数の凹部と、面外方向で壁高欄の壁面から離間させて形成される複数の凸部とを有して、前記凹部と前記凸部とが、面内方向で交互に連続するように配置され、前記壁高欄と前記波形鋼板との間の空間には、硬化時間を必要としない既に成形されて形状の定まった中詰材が介装され、モルタルや樹脂等の経時硬化材料が設けられていないことを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る壁高欄の補強構造は、第1発明において、前記波形鋼板は、前記凹部及び前記凸部の各々が面内方向の縦方向に延びて形成されるものであり、前記凹部と前記凸部とが、面内方向の横方向で交互に連続するように配置されることを特徴とする。
【0014】
発明に係る壁高欄の補強構造は、第1発明又は第2発明において、前記連結部材は、前記波形鋼板の前記凹部及び壁高欄を面外方向に連続して貫通するボルトに、ナットを締結させることで設けられることを特徴とする。
【0015】
発明に係る壁高欄の補強工法は、所定の高さで立設された壁高欄の補強工法であって、面外方向で壁高欄の壁面に近接させて形成される凹部と、面外方向で壁高欄の壁面から離間させて形成される凸部とが、面内方向で交互に連続するように配置された波形鋼板を、壁高欄の正面側及び背面側で壁高欄の壁面に沿って設けて、前記凹部及び前記凸部と壁高欄の壁面との間に、モルタルや樹脂等の経時硬化材料を設けず、硬化時間を必要としない既に成形されて形状の定まった中詰材を設ける設置工程と、前記波形鋼板の前記凹部及び壁高欄を面外方向に連続して貫通するボルトに、ナットを締結させることで連結部材が設けられて、前記連結部材で前記波形鋼板を壁高欄の壁面に固定する固定工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明〜第4発明によれば、略波状に屈曲して凹部と凸部とが面内方向で交互に連続するように配置された波形鋼板が、壁高欄の壁面に沿って設けられるため、略波状の波形鋼板の曲げ剛性が高く、波形鋼板のほかに支柱等による別途の補強を必要としないものとなって、既設の鉄道高架橋等の壁高欄を補強するための材料コスト、施工コストを低減させることが可能となる。
また、第1発明〜第4発明によれば、凹部及び凸部と壁高欄の壁面との間の段差空間に、発泡ポリスチレンフォーム等のあらかじめ形状の定まった中詰材が設けられるため、あらかじめ形状の定まっていない液体のモルタルや樹脂等の経時硬化性材料を段差空間に設ける場合のような、経時硬化性材料の硬化のための硬化時間を必要としないものとなって、壁高欄を補強するための施工期間を短期化させることが可能となる。
さらに、第1発明〜第4発明によれば、発泡ポリスチレンフォーム等の中詰材が段差空間に設けられるため、段差空間にモルタルや樹脂等の経時硬化性材料が設けられる場合と比較して、壁高欄の面外方向への変位を発泡ポリスチレンフォーム等の塑性変形で吸収し易いものとして、地震等による壁高欄の倒壊を確実に防止することが可能となる。
【0021】
第1発明〜第発明によれば、壁高欄の壁面が正面側及び背面側から中詰材及び一対の波形鋼板で挟み込まれることで、材料コスト、施工コストを低減させるとともに施工期間を短期化させながら、既設の鉄道高架橋等の壁高欄に用いられたコンクリートの経年劣化及び車両通行時の振動や地震時の揺れ等による壁高欄のコンクリートの剥離、剥落を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した壁高欄の補強構造を示す斜視図である。
図2】本発明を適用した壁高欄の補強構造が導入される壁高欄を示す側面図である。
図3】本発明を適用した壁高欄の補強構造が導入される壁高欄を示す正面図である。
図4】本発明を適用した壁高欄の補強構造を示す側面図である。
図5】本発明を適用した壁高欄の補強構造を正面側から示す正面図である。
図6】本発明を適用した壁高欄の補強構造を背面側から示す背面図である。
図7】本発明を適用した壁高欄の補強構造を示す平面図である。
図8】本発明を適用した壁高欄の補強構造の連結部材を示す拡大平面図である。
図9】本発明を適用した壁高欄の補強構造の耐熱材及び高強度反発材を示す拡大平面図である。
図10】本発明を適用した壁高欄の補強構造が導入される壁高欄の変位を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した壁高欄の補強構造1を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、図1に示すように、主に、既設の鉄道高架橋8や道路橋等の壁高欄80を補強するために用いられるものであり、鉄道高架橋8等の床版81の側端部等で、床版81から上方に向けて所定の高さで立設された壁高欄80に導入される。
【0025】
床版81は、鉄道高架橋8等の橋軸方向に所定の延長を有するとともに、鉄道高架橋8等の橋軸直交方向に所定の奥行寸法を有する。床版81は、例えば、図2に示すように、鉄道高架橋8等の橋軸直交方向の側端部で、床版81から上方に向けて連続させて、床版81と一体的に形成されたコンクリート製等の地覆部82を有する。
【0026】
壁高欄80は、例えば、床版81と一体的に形成された地覆部82を基礎として立設されるものであり、壁高欄80の下端部が地覆部82に接続されるとともに、壁高欄80の上端部に嵩上部83が設けられる。壁高欄80は、鉄道高架橋8等の内側の車両等が通行する正面側A、及び、鉄道高架橋8等の外側の背面側Bの各々に、略平坦状等の壁面80aが形成される。
【0027】
壁高欄80は、正面側Aの壁面80aから背面側Bの壁面80aまで、所定の厚さ寸法t1を有するコンクリートブロック等が用いられて構築される。壁高欄80は、図3に示すように、鉄道高架橋8等の橋軸方向に複数のコンクリートブロック等が並べられて、鉄道高架橋8等の橋軸方向に所定の延長を有するものとなる。
【0028】
嵩上部83は、図2に示すように、壁高欄80の厚さ寸法t1よりも大きい所定の厚さ寸法t2を有するコンクリートブロック等が用いられるものであり、正面側A及び背面側Bの各々で、壁高欄80の壁面80aよりも突出させて設けられる。嵩上部83は、壁高欄80の壁面80aよりも突出させて設けられることで、壁高欄80の上端部に段差84が形成される。
【0029】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、図4図7に示すように、壁高欄80の正面側A及び背面側Bで壁高欄80の壁面80aに沿って設けられる一対の波形鋼板2と、一対の波形鋼板2を壁高欄80の壁面80aに固定する連結部材5とを備える。
【0030】
一対の波形鋼板2は、壁高欄80の正面側A及び背面側Bの各々で、図5図6に示すように、橋軸方向となる横方向Xに所定の幅寸法を有するとともに、嵩上部83よりも上方に突出させたものとならないように、縦方向Yに所定の高さ寸法を有するものとして設けられる。
【0031】
一対の波形鋼板2は、図4に示すように、壁高欄80の正面側Aの波形鋼板2よりも壁高欄80の背面側Bの波形鋼板2の方が、縦方向Yの高さ寸法を大きいものとして、壁高欄80の背面側Bの波形鋼板2が、地覆部82の背面側Bまで延びるように設けられるものとなる。
【0032】
各々の波形鋼板2は、壁高欄80の正面側A及び背面側Bの何れか一方又は両方で、例えば、正面側A及び背面側Bに露出する表面を低光沢仕様とした高耐食溶融めっき鋼板等の低反射鋼板が用いられる。
【0033】
各々の波形鋼板2は、特定の種類に限定されるものでなく、例えば、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板又は銅板等の金属板や、そのプレス加工、あるいは、アルミダイカスト、亜鉛ダイカスト等の鋳造、鍛造物、切削加工、粉末冶金等により成形された各種金属部材等が用いられる。
【0034】
各々の波形鋼板2は、所定の板厚寸法を有する鋼板に屈曲加工等を実施することで、図7に示すように、複数の凹部3、及び、複数の凸部4が形成される。各々の波形鋼板2は、凹部3と凸部4とが面内方向で交互に連続するように配置されて、橋軸直交方向となる面外方向Zで鋼板を略波状に屈曲させたものとなる。
【0035】
各々の波形鋼板2は、壁高欄80の壁面80aに沿って設けられることで、複数の凹部3の各々が、面外方向Zで壁高欄80の壁面80aに小さい離間距離により近接させて形成されるとともに、複数の凸部4の各々が、面外方向Zで壁高欄80の壁面80aから大きい離間距離により離間させて形成されるものとなる。
【0036】
各々の波形鋼板2は、壁高欄80の正面側A及び背面側Bの各々で、図5図6に示すように、凹部3及び凸部4の各々が、面内方向の縦方向Yに延びて形成されるものであり、凹部3と凸部4とが面内方向の横方向Xで交互に連続するように配置される。
【0037】
各々の波形鋼板2は、図4図7に示すように、壁高欄80の正面側A及び背面側Bの各々で、壁高欄80の壁面80aから凹部3及び凸部4の各々を離間させることで、壁高欄80の上端部の段差84の下方で、壁高欄80の壁面80aとの間に段差空間Sが形成される。
【0038】
各々の波形鋼板2は、図4に示すように、壁高欄80の上端部の段差84の下方で、凹部3及び凸部4と壁高欄80の壁面80aとの間の段差空間Sに、発泡ポリスチレンフォーム等のあらかじめ形状の定まった略板状等の中詰材6が設けられる。
【0039】
各々の波形鋼板2は、段差空間Sに設けられる中詰材6として、あらかじめ形状の定まった固体の発泡ポリスチレンフォーム等が用いられるものであり、あらかじめ形状の定まっていない液体を所定の時間の経過により硬化させるモルタルや樹脂等の経時硬化性材料は、主として、段差空間Sに設けられないものとなる。
【0040】
各々の波形鋼板2は、あらかじめ形状の定まった中詰材6が段差空間Sに設けられた状態で、壁高欄80の壁面80aに連結部材5で固定されるとともに、壁高欄80の背面側Bの波形鋼板2の下端部が、地覆部82の背面側Bにアンカーボルト等の固定部材7で固定される。
【0041】
各々の波形鋼板2は、壁高欄80を正面側A及び背面側Bから一対の波形鋼板2で挟み込むように設けられて、正面側A及び背面側Bの波形鋼板2の上端部と、嵩上部83の上端面とを一体的に覆うようにして、嵩上部83の上方から笠木85が取り付けられる。
【0042】
連結部材5は、図8に示すように、鋼製等のボルト51とナット52とが用いられるものであり、正面側A及び背面側Bに設けられた波形鋼板2の各々の凹部3で、所定の箇所にボルト51及びナット52が設けられるものとなる。
【0043】
連結部材5は、正面側A及び背面側Bの波形鋼板2の凹部3と、中詰材6と、壁高欄80とを面外方向Zに連続して貫通するボルト51に、ナット52を締結させることで設けられて、一対の波形鋼板2が壁高欄80の壁面80aに中詰材6とともに固定される。
【0044】
固定部材7は、図4に示すように、背面側Bに設けられた波形鋼板2の下端部で、凹部3を面外方向Zに貫通するアンカーボルト等が、地覆部82の内部まで埋め込んで設けられることで、壁高欄80の背面側Bの波形鋼板2が、地覆部82の背面側Bに固定されるものとなる。
【0045】
本発明を適用した壁高欄の補強工法は、壁高欄80の壁面80aに沿って一対の波形鋼板2を設けて、あらかじめ形状の定まった中詰材6を設ける設置工程と、連結部材5で一対の波形鋼板2を壁高欄80の壁面80aに固定する固定工程とを備える。
【0046】
設置工程では、壁高欄80の正面側A及び背面側Bで壁高欄80の壁面80aに沿って一対の波形鋼板2を設けて、波形鋼板2の凹部3及び凸部4と壁高欄80の壁面80aとの間に、あらかじめ形状の定まった発泡ポリスチレンフォーム等の中詰材6を設けるものとなる。
【0047】
固定工程では、壁高欄80を面外方向Zに削孔等することにより、正面側A及び背面側Bの波形鋼板2の凹部3と、中詰材6と、壁高欄80とを面外方向Zに連続して貫通させてボルト51を設けて、ボルト51にナット52を締結させた連結部材5で一対の波形鋼板2を壁高欄80の壁面80aに固定するものとなる。
【0048】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、図4図7に示すように、略波状に屈曲して凹部3と凸部4とが面内方向で交互に連続するように配置された波形鋼板2が、壁高欄80の壁面80aに沿って設けられるため、略波状の波形鋼板2の曲げ剛性が高く、波形鋼板2のほかに支柱等による別途の補強を必要としないものとなって、既設の鉄道高架橋8等の壁高欄80を補強するための材料コスト、施工コストを低減させることが可能となる。
【0049】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、特に、壁高欄80の正面側Aで表面を低光沢仕様とした低反射鋼板が波形鋼板2に用いられることで、鉄道高架橋8等を通過する車両の運転手に対する太陽光等の反射を低減させて、車両運行の安全性を向上させることが可能となる。
【0050】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、凹部3及び凸部4と壁高欄80の壁面80aとの間の段差空間Sに、発泡ポリスチレンフォーム等のあらかじめ形状の定まった中詰材6が設けられるため、あらかじめ形状の定まっていない液体のモルタルや樹脂等の経時硬化性材料を段差空間Sに設ける場合のような、経時硬化性材料の硬化のための硬化時間を必要としないものとなって、壁高欄80を補強するための施工期間を短期化させることが可能となる。
【0051】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、既設の鉄道高架橋8等の壁高欄80に用いられたコンクリートが経年劣化して、車両通行時の振動や地震時の揺れ等により部分的に剥離、剥落するおそれがある場合において、壁高欄80の壁面80aが正面側A及び背面側Bから一対の波形鋼板2及び中詰材6で挟み込まれることで、材料コスト、施工コストを低減させるとともに施工期間を短期化させながら、壁高欄80のコンクリートの経年劣化による部分的な剥離、剥落を防止することが可能となる。
【0052】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、図9に示すように、特に、段差空間Sにおいて、中詰材6が波形鋼板2と近接する部位S1にメラミン樹脂発泡体等の耐熱材6aが用いられるとともに、連結部材5が設けられる部位S2でボルト51の挿通箇所の周囲に特殊発泡熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の高強度反発材6bが用いられる。
【0053】
このとき、本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、メラミン樹脂発泡体等の耐熱材6aが中詰材6として部位S1に用いられることで、日射により波形鋼板2が発泡ポリスチレンフォーム等の耐熱温度を超える場合であっても、耐熱材6aが断熱の役割を果たすため、耐熱性に優れた中詰材6を提供することが可能となる。
【0054】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、特殊発泡熱可塑性ポリウレタンエラストマー等の高強度反発材6bが中詰材6として部位S2に用いられることで、連結部材5のボルト51の挿通箇所の周囲が高強度反発材6bに取り囲まれて、ボルト51の挿通箇所の周囲で中詰材6の強度及び反発力を向上させたものとなり、ボルト51の締め付けによる中詰材6の損傷等を防止して、ボルト51が反発力を受けて確実に締め付けられるものとすることが可能となる。
【0055】
本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、図10に示すように、特に、発泡ポリスチレンフォーム等の中詰材6が段差空間Sに設けられるため、モルタルや樹脂等の経時硬化性材料が段差空間Sに設けられる場合と異なって、地震等による壁高欄80の面外方向Zへの変位を、発泡ポリスチレンフォーム等の塑性変形により吸収することができるものとなる。これにより、本発明を適用した壁高欄の補強構造1は、段差空間Sにモルタルや樹脂等の経時硬化性材料が設けられる場合と比較して、壁高欄80の面外方向Zへの変位を吸収し易いものとすることで、地震等による壁高欄80の倒壊を確実に防止することが可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0057】
例えば、各々の波形鋼板2は、壁高欄80の正面側A及び背面側Bの何れか一方又は両方で、凹部3及び凸部4の各々が、面内方向の横方向Xに延びて形成されて、凹部3と凸部4とが面内方向の縦方向Yで交互に連続するように配置されるものとなってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :壁高欄の補強構造
2 :波形鋼板
3 :凹部
4 :凸部
5 :連結部材
51 :ボルト
52 :ナット
6 :中詰材
6a :耐熱材
6b :高強度反発材
7 :固定部材
8 :鉄道高架橋
80 :壁高欄
80a :壁面
81 :床版
82 :地覆部
83 :嵩上部
84 :段差
85 :笠木
A :正面側
B :背面側
S :段差空間
X :横方向
Y :縦方向
Z :面外方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10