特許第6475995号(P6475995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475995
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の地中埋設施設
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20190218BHJP
   E02D 29/045 20060101ALI20190218BHJP
   E21D 13/00 20060101ALI20190218BHJP
   C04B 28/06 20060101ALI20190218BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G21F9/36 541M
   E02D29/045 Z
   E21D13/00
   C04B28/06
   C04B18/14 A
   G21F9/36 541D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-21554(P2015-21554)
(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-142728(P2016-142728A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 卓
(72)【発明者】
【氏名】杉橋 直行
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】依田 侑也
(72)【発明者】
【氏名】宇城 将貴
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 実
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆行
(72)【発明者】
【氏名】原 啓史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−191098(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/092866(WO,A1)
【文献】 特表2014−525890(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0245178(US,A1)
【文献】 再公表特許第2008/114877(JP,A1)
【文献】 特開2008−013426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0143036(US,A1)
【文献】 特開昭60−180945(JP,A)
【文献】 特開平01−141844(JP,A)
【文献】 Morihiro MIHARA,DEVELOPMENT OF LOW-ALKALINE CEMENT USING POZZOLANS FOR GEOLOGICAL DISPOSAL OF LONG-LIVED RADIOACTIVE WASTE,Doboku Gakkai Ronbunshuu F,2008年,Vol.64, No. 1,pp. 92-103
【文献】 J. H. Sharp,CEMENTITIOUS SYSTEMS FOR ENCAPSULATION OF INTERMEDIATE LEVEL WASTE,Proceedings of ICEM '03: The 9th International Conference on Radioactive Waste Management and Environmental Remediation, September 21-25, 2003, Examination School, Oxford, England,2003年 9月,pp. 1425-1433
【文献】 J. Majumdar,HYDRATION OF SECAR 71 ALUMINOUS CEMENT IN PRESENCE OF GRANULATED BLAST FURNACE SLAG,CEMENT and CONCRETE RESEARCH,1990年,Vol. 20, No. 1,pp. 7-14
【文献】 Ph. Boch,High-alumina cements for cesium trapping,CEMENT and CONCRETE RESEARCH,1992年,Vol. 22,pp. 369-374
【文献】 杉山友明,高炉スラグを混和したアルミナセメント硬化体の耐硫酸性,セメント・コンクリート論文集,2009年,Vol. 63,pp. 362-369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
C04B 18/14,28/06
E02D 29/045
E21D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水結合材比が30〜70質量%であり、充填モルタル硬化体中にストラトリンガイト(2CaO・Al23・SiO2・8H2O)を15質量%以上含有する低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設。
【請求項2】
充填モルタル硬化体に使用される結合材として、アルミナセメントと高炉スラグ微粉末を用い、アルミナセメントの水和率が60質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設。
【請求項3】
水結合材比が35〜60質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の操業あるいは廃炉に伴って発生する放射性廃棄物は比較的浅い深さの地中埋設施設に格納して埋設処分される。その施設は非特許文献1によれば、図1に示すようなコンクリートピット型の施設である(非特許文献1)。この埋設施設においては、廃棄体を格納後で埋設するまでの間は、埋設設備からの排水・監視を実施できることが必要である。埋設終了後においては、廃棄体から溶出する放射性物質を含む間隙水が埋設施設の外部に漏出することを抑制する目的で、廃棄体の周囲をモルタルで充てんし、図2に示すような多重構造が廃棄体の周囲に構築される。埋設施設の廃棄体格納空間には当該充てんモルタルが存在しているため、廃棄体(ドラム缶)から溶出する放射性物質が埋設施設外に漏出する量を抑制する効果がある。
【0003】
充てんモルタルには2つの機能がある。第1の機能は収着機能である。すなわち、充てんモルタルには放射性物質を収着する特性があり、その特性として分配係数が測定される。分配係数は収着性を有する固体とその間隙中を満たす水の各々に分配されて存在する比率を示す特性値である。固相である充てんモルタルの分配係数値および格納空間における固相と液相の重量比に応じて、放射性物質は固相と液相に分配される。その結果、放射性廃棄物の放射性物質の一部のみが水に溶解した状態で漏出することになり、漏出量を抑制する効果がある。第2の機能は低拡散性の機能である。充てんモルタルは水に溶解している放射性物質の拡散係数が非常に小さく、それ故、水に溶解している放射性物質は容易には埋設施設の外に出て行かない。図2に示す外縁部のモルタルは廃棄体を含まない無垢のモルタル領域であるから、低拡散性を特に期待できる領域である。
【0004】
一方、放射性廃棄物にはさまざまな組成の物質が含まれている。これらの廃棄物の中には硫酸塩を含有する廃棄物も存在する。例えば、放射性物質を取り除くためのイオン交換樹脂関連の廃棄物には硫酸イオンが多量に含まれている。
【0005】
一般的に使用されるセメント系材料は硫酸塩の溶解した水に触れることによって変質劣化することが知られている。例えば、硫酸塩によってエトリンガイトが生成される反応や二水セッコウを生成される反応による結晶成長圧による劣化が紹介されている(非特許文献2)。この対策として、エトリンガイトの生成に寄与するCa3Al26の含有量を低くした耐硫酸塩セメントの適用が試みられている。また、別の劣化現象として、地下水などから炭酸塩が供給された場合、ソーマサイト生成による劣化についても対策が必要となっている。しかるに、放射性廃棄物の埋設処分の安全性については、埋設直後から数百年以上にわたって、埋設施設としての漏出抑制機能が維持されることが求められており、特に高濃度の硫酸塩を多量に含有する廃棄物を埋設処分する際には、より確実に硫酸塩や炭酸塩による影響を受けにくい充てんモルタルが求められている。そのためには、硫酸塩や炭酸塩に接触することによる変質が少ない充てん材料あるいは新たな結晶に変化した場合の結晶成長量が小さいものが望ましい。しかし、このような効果を考慮した充てんモルタルは従来の技術としては存在していなかった。
【0006】
一方、ポルトランドセメントと並んでアルミナセメントが知られている。アルミナセメントはカルシウムアルミネート系化合物を主成分とする水硬性材料である。カルシウムアルミネート系化合物はポルトランドセメントと比較して、初期強度発現性に優れ、塩化物浸透に対する抵抗性や耐酸性にも優れるという特徴がある。しかしながらその一方で、水和物の転化(コンバージョン)によって長期的に強度が著しく低下するという課題を有するものであった。カルシウムアルミネート系化合物のコンバージョンを防止する方法としては、高炉水砕スラグ、及びシリカフュームなどを併用する方法が提案されている(特許文献1および特許文献2)。これは、高炉水砕スラグ、シリカフューム等からシリカ成分が供給され、ストラトリンガイト(2CaO・Al23・SiO2・8H2O)と呼ばれる水和物を生成することで、コンバージョンの抑制に寄与していると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−180945号公報
【特許文献2】特開平01−141844号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本原燃(株)ホームページ「埋設事業,埋設設備の構造」、インターネット、2013年9月26日、http://www.jnfl.co.jp/business-cycle/llw/structure.html
【非特許文献2】吉田夏樹、「コンクリート構造物における硫酸塩劣化の現状」GBRC、2003・10、日本建築総合試験所刊、2003年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、硫酸塩や炭酸塩を含む環境にさらされても、硬化体の変質が少なく、万が一変質しても体積変化の少ない充填セメント組成物を用いた、低レベル放射性廃棄処分用の地中埋設施設の充填材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく種々の努力を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明によれば、
(1)水結合材比が30〜70質量%であり、充填モルタル硬化体中にストラトリンガイト(2CaO・Al23・SiO2・8H2O)を含有する低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設。
(2)ストラトリンガイトを15質量%以上含有することを特徴とする(1)記載の低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設。
(3)充填モルタル硬化体に使用される結合材として、アルミナセメントと高炉スラグ微粉末を用い、アルミナセメントの水和率が60質量%以上であることを特徴とする(1)または(2)記載の低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設。
(4)水結合材比が35〜60質量%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、硫酸塩や炭酸塩を含む環境にさらされても、硬化体の変質が少ない低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コンクリートピット型の施設の例を表す概略図である。
図2】地中埋設施設の例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。本発明に係る地中埋設施設は、低レベル放射性廃棄物を収容する施設であり、例えば、廃棄物(例えば、低レベル放射性廃棄物を収容したドラム缶)の周囲に充填される充填モルタル硬化体に特に好適に利用されるものである。また、本発明に使用するモルタルとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものである。
【0015】
本発明に使用するアルミナセメントとは、アルミナ源として、ボーキサイト、高アルミナ質、及び精製アルミナ等を、また、カルシア源として、石灰石や生石灰などを使用したもので、これらを、電気炉、反射炉、平炉、及びロータリーキルン等で溶融又は焼成して得られるものである。アルミナセメントとしては鉱物組成の異なるものが数種知られ、市販されているが、それらの主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず本発明に使用することができる。
【0016】
アルミナセメントを工業的に得る場合、不純物が含まれることがある。その具体例としては、例えば、SiO2、Fe23、MgO、TiO2、MnO、Na2O、K2O、Li2O、S、P25、及びF等が挙げられる。これらの不純物の存在は本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。具体的には、これらの不純物の合計が10%以下の範囲では特に問題とはならない。
【0017】
本発明に使用するアルミナセメントの粉末度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値で3000〜9000cm2/gの範囲にあり、4000〜8000cm2/g程度のものがより好ましい。3000cm2/g未満では強度発現性が充分でない場合があり、9000cm2/gを超えるようなものは取り扱いが困難な場合がある。
【0018】
高炉水砕スラグ微粉末の粉末度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積が3000〜9000cm2/g程度の範囲である。
【0019】
本発明に使用する結合材とは、セメント、アルミナセメント、高炉スラグ微粉末等、水硬性物質から構成される材料を指す。本発明に使用する結合材とは、例えば、充填モルタル硬化体の骨材を除くセメント組成物をいう。充填モルタル硬化体の骨材を除くセメント組成物の練り混ぜ時の水結合材比は、30〜70%が好ましく、35〜60%がより好ましい。これらの範囲外では、練り混ぜ時の施工性が大きく低下したり、硬化後の強度が低下したり、耐久性が優れなかったりする場合がある。
【0020】
本発明に使用する結合材はアルミナセメントの水和率が高く、未水和の結合材の割合を減らすことができる。また、水和生成物としては、ストラトリンガイトが多く、硫酸イオン、炭酸イオンを含有する水溶液に浸漬しても、エトリンガイトとソーマサイトの生成を抑制できる。これら2つの効能により、セメント硬化体の劣化が低減される。アルミナセメントの水和率は60%以上が望ましく、65%以上がより好ましい。また、充填モルタル硬化体の原料である結合材中の5%以上(結合材に更に骨材を併用する場合には骨材を除く)がストラトリンガイトで構成されることが望ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が最も好ましい。ストラトリンガイトでの含有量は多い程そのセメント硬化体の劣化の低減効果があると考えられ、上限値は特に限定されないが、典型的には50%以下、更に典型的には30%以下である。上記範囲外では、セメント硬化体の劣化が充分に低減されない場合がある。アルミナセメントの水和率やストラトリンガイトの生成量の測定は、粉末X線回折/リートベルト解析によって行うことが可能である。すなわち、水和試料をアセトンにより水和停止後、めのう乳鉢などを用いて75μm以下に微粉砕する。この試料に酸化アルミニウムや酸化マグネシウムなどの内部標準物質を所定量添加し、めのう乳鉢等で充分混合したのち、粉末X線回折測定を実施する。測定結果を定量ソフトで解析することで、アルミナセメントの水和率やストラトリンガイトの生成量を求められる。定量ソフトには、Sietronics社製の「SIROQUANT」などを用いることが可能である。
【0021】
本発明では、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ、又は石灰石微粉等を混合した各種混合セメント、並びに、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメント等を、アルミナセメントの水和やストラトリンガイト生成を阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0022】
本発明では、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰等の混和材料、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、ポリマー、凝結調整剤、ベントナイト等の粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの1種または2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0023】
本発明では骨材を併用できる。細骨材としては、適度な施工性及び強度発現性が得られれば、特に限定されるものではない。これらの中では、珪砂が好ましい。細骨材は、乾燥砂が好ましい。乾燥砂としては、絶乾状態の砂が好ましい。
【0024】
細骨材の使用量は、結合材100部に対して、30〜200部が好ましく、100〜190部がより好ましく、130〜170部が最も好ましい。30部未満では施工性が低下する場合があり、200部を超えると強度が低下する場合がある。
【実施例】
【0025】
以下に実験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実験例に限定されるものではない。
【0026】
表1に示す材料および割合で、結合材ペーストを作製した。結合材ペーストを種々の温度ならびに期間、封緘で養生を行った後、アルミナセメントの水和率、および水和生成物としてストラトリンガイト生成量を調査した。
また、同条件で養生したセメント組成物硬化体を、養生後、硫酸ナトリウム5%、炭酸ナトリウム5%の混合水溶液に浸漬し、浸漬1年後に、外観を評価した。セメント組成物硬化体と硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム混合水溶液の体積比は、1:10とした。なお、浸漬試験は埋設施設の土壌温度に相当する5℃に設定した恒温室内で実施した。
【0027】
<使用材料>
セメント(OPC):市販の普通ポルトランドセメント。ブレーン比表面積3000cm2/g。
アルミナセメント(AC):市販品、電気化学工業社製。CaO/Al23モル比が1。ブレーン比表面積5000cm2/g。
高炉スラグ微粉末(BFS):CaOを40%、Al23を15%、SiO2を35%含有するもの。ブレーン比表面積4000cm2/g。
水 :水道水
硫酸塩 :試薬1級硫酸ナトリウム
炭酸塩 :試薬1級炭酸ナトリウム
【0028】
<測定方法>
セメント組成物硬化体を、所定の期間で、アセトンを用いて水和停止し、20℃で乾燥を行い、アルミナセメントの水和率、ストラトリンガイト生成量を測定した。
水和停止:セメント組成物硬化体を5mm以下の大きさになるように粉砕し、硬化体に対して10倍以上の容積の一級アセトンに浸漬させた。浸漬1時間後に濾過し、硬化体粉砕物を濾別した。
乾燥:水和停止後の硬化体粉砕物をデシケーターに入れ、20℃で24時間減圧乾燥した。
外観:浸漬後の硬化体の外観を、浸漬前に比べ、変化が認められない(◎)、角がわずかに欠ける(○)、微細なひびが入る(△)、大きなひびが入る、または膨張や割裂する(×)の4段階で評価した。
水和生成物の同定:粉末X線回折を測定し、リートベルト解析により、アルミナセメントの水和率とストラトリンガイトの生成量を算出した。標準物質には、試薬1級酸化マグネシウムを選定し、セメント組成物と標準物質が9:1の割合になるように混合して用いた。
【0029】
【表1】
【0030】
表1より、結合材にアルミナセメントと高炉スラグ微粉末を用いた場合に、適切な温度、期間養生すると、ストラトリンガイトを水和生成物とするセメント組成物を調整でき、劣化が小さい低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設を提供できた。さらに、結合材の水結合材比が30〜70%で、適切な温度、期間養生すると、アルミナセメントの水和率が高く、ストラトリンガイトを主体とするセメント組成物を調整でき、かつ劣化の小さい低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設を提供できた。
【0031】
<考察>
アルミナセメントとスラグを適切な割合で配合し、かつ水和率が高い硬化体は、硫酸塩や炭酸塩を含む環境にさらされても、硬化体の変質が少ないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
低レベル放射性廃棄物の地中埋設施設からの放射性物質拡散を防止することに寄与できる。
図1
図2