特許第6475998号(P6475998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

特許6475998タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器
<>
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000002
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000003
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000004
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000005
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000006
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000007
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000008
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000009
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000010
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000011
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000012
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000013
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000014
  • 特許6475998-タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6475998
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/06 20060101AFI20190218BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20190218BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20190218BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20190218BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20190218BHJP
【FI】
   H01Q7/06
   H01Q1/52
   G06F3/044 128
   G06F3/041 522
   G06F3/0354 453
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-24201(P2015-24201)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-149591(P2016-149591A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】折原 勝久
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−004076(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
G06F 3/00−3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に搭載される静電容量型のタッチパッドに併設され、外部機器と電磁界信号を介して通信するタッチパッド用アンテナ装置であって、
その開口部を介して幅方向に対向する導線が互いに近接するように巻回して設けられ、前記外部機器と誘導結合されるアンテナコイルを備え、
前記アンテナコイルは、その長手方向に前記開口部を縦断する中心線を介して前記導線が一方向に周回する一方側部と前記導線が他方向に周回する他方側部に二分され、前記一方側部が前記外部機器から視認可能に構成され、前記他方側部が前記外部機器から視認不能に構成され、前記他方側部が前記一方側部の前記外部機器との対向面の反対側の面に配置されるように、前記中心線で折り返されて、かつ、前記一方側部が前記タッチパッドを構成するシート状電極部の外縁に沿って配置される構成となっているタッチパッド用アンテナ装置。
【請求項2】
磁性体から形成され、前記アンテナコイルの前記外部機器との対向面と反対側に該アンテナコイルの一部と重畳するように設けられる磁性シートを更に備える請求項1に記載のタッチパッド用アンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナコイル及び前記シート状電極部と重畳する導電性シートが更に設けられる請求項1又は2に記載のタッチパッド用アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載のタッチパッド用アンテナ装置が組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信可能な電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートパソコン等の電子機器に搭載される静電容量型のタッチパッドとRFIDアンテナを一体化させたタッチパッド用アンテナ装置、及びこのタッチパッド用アンテナ装置が組み込まれた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン等の電子機器にRFID(radio frequency identification)等のアンテナ機能を搭載し、スマートフォン等の外部機器との間で通信可能とする技術が開発されている。しかしながら、小型薄型化が進むノートパソコンでは、筐体を金属製とすることが多く、電波を遮蔽してしまうので、アンテナの通信性能を確保することが難しかった。
【0003】
特許文献1乃至3には、ノートパソコンの金属筐体の開口部に配置されるタッチパッドにアンテナを設けることによって、通信可能とするアンテナ一体型タッチパッドモジュールが提案されている。かかるアンテナ一体型タッチパッドモジュールは、タッチパッドが配置される開口部で電波が遮蔽されないので、タッチパッドの外周部を周回するようにアンテナを設けることによって外部と通信可能としている。また、当該アンテナ一体型タッチパッドモジュールは、静電容量型のタッチパッドを形成するX電極層、Y電極層、シールド電極層と共に通信用のアンテナパターンが重畳して積層される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4568436号公報
【特許文献2】特許5118666号公報
【特許文献3】特許5378243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アンテナコイルをタッチパッドの外周部を周回するループ形状とした場合には、タッチパッドの電極部に直接アンテナの磁界がかかることになり、タッチパッドの誤動作や故障につながる虞があった。また、タッチパッドの外周部は、当該タッチパッドが配置される開口部の面積が小さいので、実装できるNFCアンテナは、長手方向に極細長い略短冊形状の構造となってしまう。このため、アンテナコイルに流れる電流は、一方側部と他方側部で互いに逆方向になることによって、これらが近接して配置される略短冊形状のアンテナコイルでは、それぞれの側部で発生する磁界が誘導電流をキャンセルするように作用する。これによって、アンテナコイルで生成される電力が低下して、アンテナ性能が劣ってしまう問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、タッチパッドの操作性能を維持しながら、アンテナの小型化を図った上で通信性能を確保することの可能な、新規かつ改良されたタッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、電子機器に搭載される静電容量型のタッチパッドに併設され、外部機器と電磁界信号を介して通信するタッチパッド用アンテナ装置であって、その開口部を介して幅方向に対向する導線が互いに近接するように巻回して設けられ、前記外部機器と誘導結合されるアンテナコイルを備え、前記アンテナコイルは、その長手方向に前記開口部を縦断する中心線を介して前記導線が一方向に周回する一方側部と前記導線が他方向に周回する他方側部に二分され、前記一方側部が前記外部機器から視認可能に構成され、前記他方側部が前記外部機器から視認不能に構成され、前記他方側部が前記一方側部の前記外部機器との対向面の反対側の面に配置されるように、前記中心線で折り返されて、かつ、前記一方側部が前記タッチパッドを構成するシート状電極部の外縁に沿って配置される構成となっている
【0008】
本発明の一態様によれば、外部機器と通信中のアンテナコイルに発生する磁界がタッチパッドに及ぶのを低減できるので、タッチパッドの操作性能を維持しながら、タッチパッドを構成する電極部の磁気シールド効果を利用して、アンテナコイルの小型化を図った上で、アンテナの通信性能を確保できる。
【0015】
また、本発明の一態様では、磁性体から形成され、前記アンテナコイルの前記外部機器との対向面と反対側に該アンテナコイルの一部と重畳するように設けられる磁性シートを更に備えることとしてもよい。
【0016】
このようにすれば、磁性シートによって、外部機器からの磁束を集めて、アンテナコイルの中心部に誘導するので、タッチパッドを構成する電極部による磁気シールド効果を利用して、アンテナの通信特性を高められる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記アンテナコイル及び前記シート状電極部と重畳する導電性シートが更に設けられることとしてもよい。
【0018】
このようにすれば、タッチパッドを構成する電極部と導電性シートによる磁界のシールド効果を利用して、アンテナの通信特性を高めることができる。
【0019】
また、本発明の他の態様は、前述の何れかに記載のタッチパッド用アンテナ装置が組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信可能な電子機器である。
【0020】
本発明の他の態様によれば、外部機器と通信中のアンテナコイルに発生する磁界がタッチパッドに及ぶリスクを低減することによって、タッチパッドの操作性能を維持しながら、アンテナの通信性能を確保するので、タッチパッドを搭載する電子機器の性能が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、外部機器と通信中のアンテナコイルに発生する磁界がタッチパッドに及ぶのを低減できるので、タッチパッドの操作性能を維持とアンテナの通信性能の確保の両立が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置を搭載したパーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置を搭載したタッチパッドの概略的な分解斜視図である。
図3】(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す側面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の変形例を示す側面図である。
図5】(A)は、本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す側面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の変形例を示す側面図である。
図7】(A)は、本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す側面図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の変形例を示す側面図である。
図9】(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の概略構成示す斜視図であり、(B)は、同実施例におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
図10】(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例に対する比較例1の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、当該比較例1におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
図11】(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例に対する比較例2の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、当該比較例2におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
図12】(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例に対する比較例3の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、当該比較例3におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
図13】(A)は、本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、同実施例におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
図14】(A)は、本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、同実施例におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0024】
まず、本発明の一実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置を適用した電子機器の一例となるパーソナルコンピュータの構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置を搭載したパーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【0025】
本発明の一実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置100(図2参照)は、電子機器として主に静電容量型のタッチパッド10を搭載したラップトップ型のパーソナルコンピュータ1に適用される。パーソナルコンピュータ1は、本体2とディスプレー3を有し、本体2とディスプレー3は、ヒンジ等を介して結合されている。ディスプレー3は、通常平置きされる本体2に重ね合わされた状態(閉状態)から、ヒンジを支点として回転させられることにより可逆的に本体2に対して立った状態(開状態)になる。
【0026】
ディスプレー3は、例えば、樹脂製のディスプレーハウジング4を有する。ディスプレーハウジング4は、扁平な箱形状をなし、例えば、A4用紙と略等しい大きさを有する。ディスプレーハウジング4は、閉状態にあるときに本体2と対向する面(内面)を有し、ディスプレーハウジング4の内面には、略全域に渡る開口が形成されている。ディスプレーハウジング4の開口4aには、例えば、液晶パネル5が表出している。
【0027】
本体2は、扁平な箱形状の樹脂製のメインハウジング6を有する。閉状態のときにディスプレー3と対向するメインハウジング6の上面には、液晶パネル5に向かって見たとき奥側、すなわち、ヒンジ側に開口6aが設けられ、この開口6a内にキーボード7が配置されている。なお、メインハウジング6の上面の大きさは、ディスプレーハウジング4の内面と略同一である。
【0028】
また、メインハウジング6の上面には、キーボード7よりも手前の中央に開口部6bが形成されている。この開口部6bには、アンテナ付き入力装置となるタッチパッド10のフェイスシート12が表出している。さらに、メインハウジング6の上面には、開口部6bよりも手前に開口部6cが形成され、この開口部6cには、2つの操作ボタン14a、14bがメインハウジング6の幅方向に並んで表出している。
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置を搭載したタッチパッドの構成について、図面を使用しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置を搭載したタッチパッドの概略的な分解斜視図である。
【0030】
本実施形態のタッチパッド10は、ユーザの指や操作ペン等の位置検出を静電容量の変化に基づいて行なう静電容量型のアンテナ付き入力装置であり、適当なパターンの配線(図示せず)を有するプリント回路基板28を有する。プリント回路基板28は、メインハウジング6の上面と略平行に配置される。プリント回路基板28の下面には、ICチップ30等の電気素子、及び、コネクタ端子31が実装されている。プリント回路基板28に実装された電気素子は、コネクタ端子31及びコネクタ端子31に接続されるフラットケーブル等を介して、パーソナルコンピュータ1のマザー基板(図示せず)に接続される。
【0031】
開口部6b側に位置するプリント回路基板28の上面には、フェイスシート12を含む積層体32が固定されている。フェイスシート12の上面は、感知面として構成され、ユーザが指先や入力用の物体を感知面に接触又は接近させることによって、アンテナ付き入力装置10を介して、所望の命令をパーソナルコンピュータ1に入力する。また、プリント回路基板28は、積層体32と同等の四角形状を有し、プリント回路基板28の一方の面に積層体32が固定されている。
【0032】
積層体32は、フェイスシート12側から順に、X電極層34、Y電極層36、及びシールド電極層38を有する。これらフェイスシート12、X電極層34、Y電極層36、及びシールド電極層38は、ホットプレス又は接着剤などによって相互に密着している。
【0033】
X電極層34は、フィルム基板(X電極基板)34aとフィルム基板34aに一体に形成された複数のX電極34bを含む。X電極34bは、フィルム基板34aの一方の面の略全域に分布させられている。具体的には、フィルム基板34aは、矩形形状を有し、フィルム基板34aの短辺は、パーソナルコンピュータ1の本体2の奥行き方向に延び、フィルム基板34aの長辺は、パーソナルコンピュータ1の本体2の幅方向に延びている。
【0034】
また、X電極34bは、互いに平行な複数の導電性の帯によって構成され、導電性の帯は、フィルム基板34aの短辺の方向にそれぞれ延び、フィルム基板34aの長辺の方向にて相互に一定間隔にて離間している。
【0035】
一方、Y電極層36は、フィルム基板(Y電極基板)36aとフィルム基板36aに一体に形成された複数のY電極36bを含む。また、Y電極層36は、フィルム基板36aに一体に形成された櫛形状の検出電極36cを含む。Y電極36b及び検出電極36cは、相互に噛み合うように配置されながら、フィルム基板36aの一方の面の略全域に分布させられている。具体的には、フィルム基板36aは、フィルム基板34aと同じ長方形形状を有する。Y電極36bは、互いに平行な複数の導電性の帯によって構成され、導電性の帯は、フィルム基板36aの長辺の方向にそれぞれ延び、フィルム基板36aの短辺の方向にて相互に一定間隔にて離間している。
【0036】
検出電極36cは、互いに平行な複数の導電性の帯と、これらの帯の一端を相互に連結する一つの導電性の帯によって構成されている。検出電極36cの複数の導電性の帯もY電極36bの複数の導電性の帯と同様に、フィルム基板36aの長辺の方向にそれぞれ延び、フィルム基板36aの短辺の方向にて相互に一定間隔にて離間している。そして、検出電極36cの複数の導電性の帯は、Y電極36bの複数の導電性の帯の間に配置されている。
【0037】
このため、Y電極36b及びX電極34bは、積層方向で見たときに、碁盤目状に相互に直交している。そして、検出電極36c、Y電極36b、及びX電極34bは、フェイスシート12の表面に接近若しくは接触する指先等の物体の位置を検出するための測定用電極をそれぞれ構成している。
【0038】
シールド電極層38は、シールド電極基板となるフィルム基板40と、フィルム基板40に一体に形成されたシールド電極42とを含むシート状電極部である。シールド電極42は、導電性の材料からなる層状の本体部44を有し、好ましくは、本体部44には複数の開口部46が形成されている。本体部44は、X電極層34、Y電極層36b、及びシールド電極層38の積層方向にて、X電極34b、Y電極36b、及び検出電極36cが投影される投影位置に位置している。
【0039】
開口部46は、積層方向にて、X電極34b、Y電極36b、及び検出電極36cが投影されない非投影位置に位置している。従って、シールド電極42の本体部44は、X電極34b、Y電極36b、及び検出電極36cを合わせたような碁盤目形状を有する。なお、シールド電極42の形状は、碁盤目形状に限定されることはなく、ベタ形状等であっても良い。
【0040】
また、フィルム基板34a、36a、40及びフェイスシート12は、略同じ形状を有し、四隅を揃えて相互に重ね合わされている。そして、フィルム基板34a、36a、40及びプリント回路基板28は、一体に接合されており、多層構造を有する一つの絶縁基板を構成している。フェイスシート12は、絶縁基板の最も上に位置するフィルム基板34aを保護しており、絶縁基板と一体であっても別体であってもよい。
【0041】
本実施形態では、タッチパッド10には、スマートフォン等の外部機器と電磁界信号を介して通信するタッチパッド用アンテナ装置100が併設されている。タッチパッド用アンテナ装置100は、タッチパッド10とRFIDアンテナを一体化させた構成となっている。また、本実施形態では、タッチパッド用アンテナ装置100は、タッチパッド10を構成するシート状電極部となるシールド電極層38の外縁38aに沿って設けられることを特徴とする。
【0042】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図3(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図であり、図3(B)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す側面図である。
【0043】
タッチパッド用アンテナ装置100は、図3(A)に示すように、その開口部102bを介して幅方向に対向する導線102aが互いに近接するように巻回して設けられ、外部機器50(図3(B)参照)と誘導結合されるアンテナコイル102を備える。アンテナコイル102は、可撓性のあるフレキシブル基板等によって構成されるアンテナ基板101の一面に、可撓性のある導線102aをパターニング処理することによって形成される。
【0044】
本実施形態では、アンテナコイル102は、タッチパッド10(図2参照)を搭載するために、電子機器1のメインハウジング6の上面に設けられる開口部6bの限られた狭いスペースに実装するため、導線102aを長手方向に細長い略短冊形状に巻回して設けられる構成となっている。また、アンテナコイル102は、タッチパッド10上の磁界強度を弱めて、誤動作等の虞を低減するために、タッチパッド10を構成するシート状電極部38の外縁38aに沿って設けられる。すなわち、本実施形態では、電子機器1のメインハウジング6の上面に設けられる開口部6bの限られた狭いスペースに実装しつつ、タッチパッド10の誤動作を防止するために、アンテナコイル102を長手方向に細長い略短冊形状に巻回した構成として、かつ、シート状電極部38の外縁38aに沿って設けるようにしている。
【0045】
アンテナコイル102は、その長手方向に開口部102bを縦断する中心線L1を介して導線102aが一方向に周回する一方側部102a1と導線102aが他方向に周回する他方側部102a2に二分されている。そして、アンテナコイル102は、図3(B)に示すように、一方側部102a1が外部機器50から視認可能に構成され、他方側部102a2が外部機器50から視認不能に構成される。
【0046】
具体的には、アンテナコイル102は、他方側部102a2が一方側部102a1の外部機器50との対向面の反対側の面に配置されるように、中心線L1で折り返して、一方側部102a1の裏側に配置されるように構成されている。そして、一方側部102a1がシート状電極部38の外縁38aに沿って配置される構成となっている。
【0047】
また、本実施形態では、アンテナコイル102の一方側部102a1と他方側部102a2に挟まれるように、磁性体から形成される磁性シート104が設けられている。すなわち、アンテナコイル102の外部機器50との対向面と反対側には、当該アンテナコイル102の少なくとも一部と重畳するように磁性シート104が設けられている。当該磁性シート104を設けることによって、外部機器50からの磁束を集めて、アンテナコイル102の中心側に誘導して、アンテナの通信特性を高めるようにしている。
【0048】
このように本実施形態では、細長く略短冊形状に導線102aを巻回して構成されるアンテナコイル102を長手方向に展開する中心線L1に沿って半分に折り曲げて、当該アンテナコイル102をタッチパッド10のシート状電極部38の外縁38aに沿って設けている。このように、半分に折り曲げたアンテナコイル102をシート状電極部38の外縁38aに沿って設けることによって、外部機器50と通信中のアンテナコイル102に発生する磁界がタッチパッド10に及ぶのを低減して、タッチパッド10上の磁界強度を弱めることができる。
【0049】
このため、アンテナコイル102に発生する磁界がタッチパッド10に及ぶことによって発生するタッチパッド10の誤動作を抑制するので、タッチパッドの操作性能を維持しながら、タッチパッド10のシート状電極部38の磁気シールド効果を利用したNFCアンテナの通信性能を確保できる。すなわち、PC等の携帯機器に内蔵して用いるタッチパッド10の電極パターンが形成されるセンシング用電極となるシート状電極部38の磁気シールド効果を利用することによって、アンテナコイル102を細長い形状としても、通信効率のよいNFCアンテナを実現できる。
【0050】
特に、アンテナコイル102を長手方向に細長い略短冊形状に導線102aを巻回した構成とした場合でも、タッチパッド10のシート状電極部38による磁気シールド効果を利用することによって、アンテナコイル102の一方側部102a1と他方側部102a2の誘起電圧が互いに打ち消し合うことによるアンテナの通信性能の劣化を低減して、良好な通信特性が得られる。すなわち、タッチパッド10の操作性能を維持しながら、アンテナコイル102の小型化を図った上で、アンテナの通信性能を高めることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、図4に示すように、アンテナコイル102とシート状電極部38の双方に重畳するように、銅、アルミ等からなる導電性シート110を更に設けることによって、NFCアンテナの通信特性を高めるようにしてもよい。このように、導電性シート110を設けることによって、タッチパッド10を構成するシート状電極部38と導電性シート110による磁界のシールド効果を利用して、アンテナの通信特性を高めることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図5(A)は、本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図であり、図5(B)は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す側面図である。
【0053】
タッチパッド用アンテナ装置200は、図5(A)に示すように、その開口部202bを介して幅方向に対向する導線202aが互いに近接するように巻回して設けられ、外部機器50(図5(B)参照)と誘導結合されるアンテナコイル202を備える。アンテナコイル202は、可撓性のあるフレキシブル基板等によって構成されるアンテナ基板201の一面に、可撓性のある導線202aをパターニング処理することによって形成される。
【0054】
本実施形態では、アンテナコイル202は、タッチパッド10(図2参照)を搭載するために、電子機器1のメインハウジング6の上面に設けられる開口部6bの限られた狭いスペースに実装するため、導線202aを長手方向に細長い略短冊形状に巻回して設けられる構成となっている。また、アンテナコイル202は、タッチパッド10上の磁界強度を弱め、誤動作等の虞を低減するために、タッチパッド10を構成するシート状電極部38の外縁38aに沿って設けられる。すなわち、本実施形態では、電子機器1のメインハウジング6の上面に設けられる開口部6bの限られた狭いスペースに実装しつつ、タッチパッド10の誤動作を防止するために、アンテナコイル202を長手方向に細長い略短冊形状に巻回した構成として、かつ、シート状電極部38の外縁38aに沿って設けるようにしている。
【0055】
アンテナコイル202は、その長手方向に開口部202bを縦断する中心線L2を介して導線202aが一方向に周回する一方側部202a1と導線202aが他方向に周回する他方側部202a2に二分されている。そして、アンテナコイル202は、図5(B)に示すように、一方側部202a1が外部機器50から視認可能に構成され、他方側部202a2が外部機器50から視認不能に構成される。具体的には、アンテナコイル202は、一方側部202a1がシート状電極部38の外縁38aに沿って配置され、かつ、他方側部202a2がシート状電極部38の裏面側に重畳する構成となっている。
【0056】
また、本実施形態では、一方側部202a1の下側に磁性体から形成される磁性シート204が設けられている。すなわち、アンテナコイル202の外部機器50との対向面と反対側には、当該アンテナコイル202の少なくとも一部と重畳するように磁性シート204が設けられている。当該磁性シート204を設けることによって、外部機器50からの磁束を集めて、アンテナコイル202の中心側に誘導して、通信特性を高めるようにしている。
【0057】
このように本実施形態では、細長く略短冊形状に導線202aを巻回して構成されるアンテナコイル202の他方側部202a2をシート状電極部38の裏面側に重畳させ、かつ、アンテナコイル202の一方側部202a1をタッチパッド10のシート状電極部38の外縁38aに沿って設けている。このように、アンテナコイル202の一方側部202a1をシート状電極部38の外縁38aに沿って設けて、かつ、アンテナコイル202の他方側部202a2をシート状電極部38の裏面側に重畳させるように設けることによって、外部機器50と通信中のアンテナコイル202に発生する磁界がタッチパッド10に及ぶのを低減して、タッチパッド10上の磁界強度を弱めることができる。
【0058】
このため、アンテナコイル202に発生する磁界がタッチパッド10に及ぶことによって発生するタッチパッド10の誤動作を抑制するので、タッチパッドの操作性能を維持しながら、タッチパッド10のシート状電極部38の磁気シールド効果を利用したNFCアンテナの通信性能を確保できる。すなわち、PC等の携帯機器に内蔵して用いるタッチパッド10の電極パターンが形成されるセンシング用電極となるシート状電極部38の磁気シールド効果を利用することによって、アンテナコイル202を細長い形状としても、通信効率のよいNFCアンテナを実現できる。
【0059】
特に、アンテナコイル202を長手方向に細長い略短冊形状に導線202aを巻回した構成とした場合でも、タッチパッド10のシート状電極部38による磁気シールド効果を利用することによって、アンテナコイル202の一方側部202a1と他方側部202a2の誘起電圧が互いに打ち消し合うことによるアンテナの通信性能の劣化を低減して、良好な通信特性が得られる。すなわち、タッチパッド10の操作性能を維持しながら、アンテナコイル202の小型化を図った上で、アンテナの通信性能を高めることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、図6に示すように、アンテナコイル202とシート状電極部38の双方に重畳するように、銅、アルミ等からなる導電性シート210を更に設けることによって、NFCアンテナの通信特性を高めるようにしてもよい。このように、導電性シート210を設けることによって、タッチパッド10を構成するシート状電極部38と導電性シート210による磁界のシールド効果を利用して、アンテナの通信特性を高めることができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。図7(A)は、本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図であり、図7(B)は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す側面図である。
【0062】
タッチパッド用アンテナ装置300は、図7(A)に示すように、その開口部302bを介して幅方向に対向する導線302aが互いに近接するように巻回して設けられ、外部機器50(図7(B)参照)と誘導結合されるアンテナコイル302を備える。アンテナコイル302は、可撓性のあるフレキシブル基板等によって構成されるアンテナ基板301の一面に、可撓性のある導線302aをパターニング処理することによって形成される。
【0063】
本実施形態では、アンテナコイル302は、タッチパッド10(図2参照)を搭載するために、電子機器1のメインハウジング6の上面に設けられる開口部6bの限られた狭いスペースに実装するため、導線302aを長手方向に細長い略短冊形状に巻回して設けられる構成となっている。また、アンテナコイル302は、タッチパッド10上の磁界強度を弱め、誤動作等の虞を低減するために、タッチパッド10を構成するシート状電極部38の外縁38aに沿って設けられる。すなわち、本実施形態では、電子機器1のメインハウジング6の上面に設けられる開口部6bの限られた狭いスペースに実装しつつ、タッチパッド10の誤動作を防止するために、アンテナコイル302を長手方向に細長い略短冊形状に巻回した構成として、かつ、シート状電極部38の外縁38aに沿って設けるようにしている。
【0064】
本実施形態では、アンテナコイル302は、その長手方向に開口部302bを縦断する中心線L3を介して導線302aが一方向に周回する一方側部302a1と導線302aが他方向に周回する他方側部302a2に二分されている。また、本実施形態では、磁性体から形成される磁性シート304がアンテナコイル302の開口部302bを挿通するように設けられている。すなわち、アンテナコイル302の外部機器50との対向面と反対側には、当該アンテナコイル302の少なくとも一部と重畳するように磁性シート304が設けられている。当該磁性シート304を設けることによって、外部機器50からの磁束を集めて、アンテナコイル302の中心側に誘導して、アンテナの通信特性を高めるようにしている。
【0065】
このように本実施形態では、長手方向に細長い略短冊形状のアンテナコイル302をタッチパッド10のシート状電極部38の外縁38aに沿って設けている。略短冊形状のアンテナコイル302をシート状電極部38の外縁38aに沿って設けることによって、外部機器50と通信中のアンテナコイル302に発生する磁界がタッチパッド10に及ぶのを低減して、タッチパッド10上の磁界強度を弱めることができる。
【0066】
このため、アンテナコイル302に発生する磁界がタッチパッド10に及ぶことによって発生するタッチパッド10の誤動作を抑制するので、タッチパッドの操作性能を維持しながら、タッチパッド10のシート状電極部38の磁気シールド効果を利用したNFCアンテナの通信性能を確保できる。すなわち、PC等の携帯機器に内蔵して用いるタッチパッド10の電極パターンが形成されるセンシング用電極となるシート状電極部38の磁気シールド効果を利用することによって、アンテナコイル302を細長い形状としても、通信効率のよいNFCアンテナを実現できる。
【0067】
特に、アンテナコイル302を長手方向に細長く略短冊形状に導線302aを巻回した構成とした場合でも、タッチパッド10のシート状電極部38による磁気シールド効果を利用することによって、アンテナコイル302の一方側部302a1と他方側部302a2の誘起電圧が互いに打ち消し合うことによるアンテナの通信性能の劣化を低減して、良好な通信特性が得られる。すなわち、タッチパッド10の操作性能を維持しながら、アンテナコイル302の小型化を図った上で、アンテナの通信性能を高めることができる。
【0068】
なお、本実施形態では、第1及び第2の実施形態と同様に、図8に示すように、アンテナコイル302とシート状電極部38の双方に重畳するように、銅、アルミ等からなる導電性シート310を更に設けることによって、NFCアンテナの通信特性を高めるようにしてもよい。このように、導電性シート310を設けることによって、タッチパッド10を構成するシート状電極部38と導電性シート310による磁界のシールド効果を利用して、アンテナの通信特性を高めることができる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の各実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の検討評価の実施例について、図面を使用しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0070】
まず、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置のアンテナコイル102の形状の変化に基づく、磁界強度の検証結果を示す実施例について、図面を使用しながら説明する。
【0071】
図9(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の概略構成を示す斜視図であり、図9(B)は、同実施例におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。また、図10(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の比較例1の概略構成を示す斜視図であり、図10(B)は、当該比較例1におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。さらに、図11(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例に対する比較例2の概略構成を示す斜視図であり、図11(B)は、当該比較例2におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。また、図12(A)は、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例に対する比較例3の概略構成を示す斜視図であり、図12(B)は、当該比較例3におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
【0072】
まず、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置100の実施例の磁界強度の分布について検証した。本実施例では、図9(A)に示すように、アンテナコイル102の中央部での断面磁界強度を観察した。なお、本実施例では、80mm×10mmの細長い略短冊形状の4巻コイルを長手方向に展開する中心線で折り返したものを使用し、アンテナコイル下のフェライトシートの厚みを0.2mmとした。また、コイル端子には、1Wの電力を供給して、断面磁界強度の観察領域D1を20mm×20mmとした。
【0073】
図9(B)に示すように、アンテナコイル102の直上及び直下から直近の磁界強度と比べて、アンテナコイル102の周囲の磁界強度が弱まっていることが分かる。特に、アンテナコイル102より内側に有するシート状電極部38にかかる磁界強度が低くなっていることが分かる。このことから、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置100のアンテナコイル102をタッチパッド10のシート状電極部38の外縁38aに設けても、アンテナコイル102で発生した磁界がシート状電極部38にかかっていないことが分かる。
【0074】
次に、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の比較例1の磁界強度の分布について検証した。比較例1では、図10(A)に示すように、アンテナコイル402の中央部での断面磁界強度を観察した。なお、比較例1では、80mm×10mmの細長い略短冊形状の4巻コイルを長手方向に展開するものを使用し、アンテナコイル下のフェライトシートの厚みを0.2mmとした。また、アンテナコイル402の下には、磁性シート404がアンテナコイル402の全領域に亘って重畳するように設けられている。さらに、コイル端子には、1Wの電力を供給して、断面磁界強度の観察領域D1を20mm×20mmとした。
【0075】
図10(B)に示すように、アンテナコイル102の導線周辺の磁界強度が強く、アンテナコイル102からの距離が大きくなるに従って磁界強度が弱まっていることが分かる。特に、比較例1では、磁性シート404をアンテナコイル402の全面に亘って重畳するように設けているので、アンテナコイル402の直上側が全体的に磁界強度が強くなっていることが分かる。
【0076】
次に、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の比較例2の磁界強度の分布について検証した。比較例2では、図11(A)に示すように、アンテナコイル502の中央部での断面磁界強度を観察した。なお、比較例2では、80mm×10mmの細長い略短冊形状の4巻コイルを長手方向に展開するものを使用し、アンテナコイル下のフェライトシートの厚みを0.2mmとした。また、アンテナコイル502の下には、磁性シート504がアンテナコイル502の一方側部のみに重畳するように設けられている。さらに、コイル端子には、1Wの電力を供給して、断面磁界強度の観察領域D1を20mm×20mmとした。
【0077】
図11(B)に示すように、磁性シート504が重畳している一方側部側のアンテナコイル502の磁界強度が強くなり、磁性シート504が重畳していない他方側部側のアンテナコイル502の磁界強度が弱くなっていることが分かる。すなわち、比較例2の検証結果から、磁性シート504をアンテナコイル502の一方側部のみに重畳するように設けることによって、アンテナコイル502で発生する磁界強度を一方側部側のみ強くできることが分かる。
【0078】
次に、本発明の第1の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の実施例の比較例3の磁界強度の分布について検証した。比較例3では、図12(A)に示すように、アンテナコイル602の中央部での断面磁界強度を観察した。なお、比較例3では、80mm×10mmの細長い略短冊形状の4巻コイルを長手方向に展開するものを使用し、アンテナコイル下のフェライトシートの厚みを0.2mmとした。また、アンテナコイル602の下には、磁性シート604がアンテナコイル602の一方側部のみに重畳するように設けられ、当該磁性シート604の下側にアンテナコイル602の他方側部を折り返した構成とした。さらに、コイル端子には、1Wの電力を供給して、断面磁界強度の観察領域D1を20mm×20mmとした。
【0079】
図12(B)に示すように、磁性シート604を挟むように重畳しているアンテナコイル602の一方側部及び他方側部の導線周辺の磁界強度が強くなり、アンテナコイル602を折り返した部位の磁界強度が弱くなっていることが分かる。すなわち、磁性シート604を挟むようにアンテナコイル602の一方側部と他方側部を折り返すことによって、図12(B)に示すアンテナコイル602の折り返し部位より左側の磁界強度が弱くなっていることが分かる。このことから、アンテナコイル602を長手方向に展開する中心線で折り返して、アンテナコイル602の一方側部と他方側部で磁性シート604を挟む構成として、かつ、一方側部と他方側部の導線が並列している部位が当該中心線よりタッチパネルに対して離れた配置となるように、タッチパネルの外縁に沿って設けることによって、アンテナコイル602で発生した磁界がタッチパネルにかからなくなることが分かる。
【0080】
次に、本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置のアンテナコイル202の形状の変化に基づく、磁界強度の検証結果を示す実施例について、図面を使用しながら説明する。図13(A)は、本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成の実施例を示す斜視図であり、図13(B)は、同実施例におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
【0081】
本実施例では、図13(A)に示すように、アンテナコイル102の中央部での断面磁界強度を観察した。なお、本実施例では、80mm×10mmの細長い略短冊形状の4巻コイルを長手方向に展開する中心線で折り返したものを使用し、アンテナコイル下のフェライトシートの厚みを0.2mmとした。また、コイル端子には、1Wの電力を供給して、断面磁界強度の観察領域D2を20mm×20mmとした。
【0082】
図13(B)に示すように、アンテナコイル202の直上及び直下から直近の磁界強度と比べて、アンテナコイル202の周囲の磁界強度が弱まっていることが分かる。特に、アンテナコイル202より内側に有するシート状電極部38にかかる磁界強度が低くなっていることが分かる。このことから、本発明の第2の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置200のアンテナコイル202をタッチパッド10のシート状電極部38の外縁38aに設けても、アンテナコイル202で発生した磁界がシート状電極部38にかからないので、アンテナコイル202で発生した磁界のタッチパッド10への影響を軽減できることが分かる。
【0083】
次に、本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置のアンテナコイル302の形状の変化に基づく、磁界強度の検証結果を示す実施例について、図面を使用しながら説明する。図14(A)は、本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置の概略構成の実施例を示す斜視図であり、図14(B)は、同実施例におけるタッチパッド用アンテナ装置の磁界強度を示す断面図である。
【0084】
本実施例では、図14(A)に示すように、アンテナコイル302の中央部での断面磁界強度を観察した。なお、本実施例では、80mm×10mmの細長い略短冊形状の4巻コイルを長手方向に展開する中心線で折り返したものを使用し、アンテナコイル下のフェライトシートの厚みを0.2mmとした。また、コイル端子には、1Wの電力を供給して、断面磁界強度の観察領域D3を20mm×20mmとした。
【0085】
図14(B)に示すように、アンテナコイル302の直上及び直下から直近の磁界強度と比べて、アンテナコイル302の周囲の磁界強度が弱まっていることが分かる。特に、アンテナコイル302より内側に有するシート状電極部38にかかる磁界強度が低くなっていることが分かる。このことから、本発明の第3の実施形態に係るタッチパッド用アンテナ装置300のアンテナコイル302をタッチパッド10のシート状電極部38の外縁38aに設けても、アンテナコイル302で発生した磁界がシート状電極部38にかからないので、アンテナコイル302で発生した磁界のタッチパッド10への影響を軽減できることが分かる。
【0086】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0087】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、タッチパッド用アンテナ装置、及び電子機器の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 パーソナルコンピュータ(電子機器)、10 タッチパネル、12 フェイスシート、34 X電極層、36 Y電極層、38 シールド電極層(シート状電極部)、38a 外縁、50 外部機器、100、200、300 タッチパッド用アンテナ装置、101、201、301 アンテナ基板、102、202、302 アンテナコイル、102a、202a、302a 導線、102a1、202a1、302a1 一方側部、102a2、202a2、302a2 他方側部、102b、202b、302b 開口部、104、204、304 磁性シート、110、210、310 導電性シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14