(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源電圧の入力端と出力電圧の出力端との間に設けられたPチャネル型またはpnp型の出力トランジスタに接続されて前記出力電圧のオーバーシュートを抑制するための手段として、前記電源電圧の入力端と前記出力トランジスタのゲートまたはベースとの間に設けられて自身のベースまたはゲートが第1抵抗を介して前記電源電圧の入力端に接続されたpnp型またはPチャネル型の第1トランジスタを有することを特徴とするオーバーシュート抑制回路。
前記出力トランジスタを駆動するアンプブロックに含まれている構成要素のうち、前記電源電圧の入力端と能動負荷との間に接続された抵抗素子を前記第1抵抗として流用することを特徴とする請求項1に記載のオーバーシュート抑制回路。
第1端が前記第1トランジスタのコレクタまたはドレインに接続されて第2端が前記出力トランジスタのゲートまたはベースに接続された第2抵抗をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオーバーシュート抑制回路。
前記第2抵抗は、前記電源電圧の入力端と前記出力トランジスタのゲートまたはベースとの間に接続されたプルアップ抵抗よりも低抵抗であることを特徴とする請求項3に記載のオーバーシュート抑制回路。
エミッタまたはソースが前記電源電圧の入力端に接続されてベースまたはゲートが前記第1トランジスタのベースまたはゲートに接続されたpnp型またはPチャネル型の第2トランジスタと、
入力端が前記第2トランジスタのコレクタまたはドレインに接続されて出力端が前記出力トランジスタのゲートまたはベースに接続されたカレントミラーと、
をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のオーバーシュート抑制回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した出力トランジスタ201として、MOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]を用いた場合には、そのゲート・ソース間に寄生キャパシタCgsが付随する。なお、寄生キャパシタCgsの容量値は、出力トランジスタ201の素子サイズに比例する。
【0006】
このように、出力トランジスタ201に寄生キャパシタCgsが付随していると、ゲート信号G2の可変制御に際して、寄生キャパシタCgsの充放電に時間を要してしまう。そのため、例えば、電源電圧VCCの急上昇時にはゲート信号G2を追従させることができず、出力電圧Voutに意図しないオーバーシュート(=出力電圧Voutが所定の目標値よりも上昇してしまった状態)を生じるおそれがある。
【0007】
図8は、出力電圧Voutのオーバーシュートが発生する様子を示した電圧波形図であり、上から順番に、電源電圧VCC、ゲート信号G2、及び、出力電圧Voutが描写されている。
【0008】
今、時刻t11〜t13で示したように、電源電圧VCCが急峻に上昇した状況を考える。このとき、出力トランジスタ201のゲート・ソース間に寄生キャパシタCgsが付随していない理想状態であれば、電源電圧VCCの上昇に伴ってゲート信号G2も遅滞なく上昇するので、出力電圧Voutは所望値に維持される(破線を参照)。
【0009】
一方、出力トランジスタ201のゲート・ソース間に寄生キャパシタCgsが付随している場合には、時刻t11から遅延時間tdだけ遅れた時刻t12において、ゲート信号G2がようやく立ち上がり始める。このように、電源電圧VCCの急上昇に対してゲート信号G2の追従が遅れると、出力トランジスタ201のゲート・ソース間電圧が本来よりも高くなるので、出力トランジスタ201の導通度が不必要に大きくなる。その結果、出力電圧Voutには意図しないオーバーシュートが生じてしまう(実線を参照)。出力電圧Voutのオーバーシュートが大きくなると、電源装置200から出力電圧Voutの供給を受けて動作する負荷(マイコンやセンサなど)を破壊してしまうおそれがある。
【0010】
一般的に、出力電圧Voutのオーバーシュートを防ぐためには、入力キャパシタ204の容量値を大きく設定して電源電圧VCCの変動速度を遅くするか、或いは、出力キャパシタ205の容量値を大きく設定して、出力電圧Voutのオーバーシュート自体を鈍らせる必要があった。しかしながら、このようなオーバーシュート抑制手法は、入力キャパシタ204や出力キャパシタ205の大型化ないしはコストアップを招くので、最善の策とは言えなかった。
【0011】
図9は、オーバーシュート抑制回路の一従来例を示す回路図である。本従来例のオーバーシュート抑制回路300は、出力電圧Voutと閾値電圧Vthとを比較して比較信号Scを生成するコンパレータ301と、比較信号Scに応じて出力トランジスタ201のゲート・ソース間を導通/遮断するスイッチ302と、を含む。
【0012】
本従来例のオーバーシュート抑制回路300であれば、出力電圧Voutが閾値電圧Vthよりも高くなったときにスイッチ302をオンすることにより、抵抗203よりも低インピーダンスのスイッチ302を介して、出力トランジスタ201のゲート信号G2を素早く引き上げることができる。従って、ゲート信号G2の追従遅れを緩和して、出力電圧Voutのオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0013】
しかしながら、本従来例のオーバーシュート抑制回路300は、比較的占有面積の大きいコンパレータ301を必要とするので、回路規模の増大やコストアップを招来するという課題があった。
【0014】
また、本従来例のオーバーシュート抑制回路300は、オーバーシュートの発生を検出してからこれを抑制するという構成上、オーバーシュート対策が後手に回っていた。
【0015】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らによって見出された上記の課題に鑑み、回路規模の小さいオーバーシュート抑制回路、並びに、これを用いた電源装置、電子機器、及び、車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書中に開示されているオーバーシュート抑制回路は、電源電圧の入力端と出力電圧の出力端との間に設けられたPチャネル型またはpnp型の出力トランジスタに接続されて前記出力電圧のオーバーシュートを抑制するための手段として、前記電源電圧の入力端と前記出力トランジスタのゲートまたはベースとの間に設けられて自身のベースまたはゲートが第1抵抗を介して前記電源電圧の入力端に接続されたpnp型またはPチャネル型の第1トランジスタを有する構成(第1の構成)とされている。
【0017】
第1の構成から成るオーバーシュート抑制回路は、前記出力トランジスタを駆動するアンプブロックに含まれている構成要素のうち、前記電源電圧の入力端と能動負荷との間に接続された抵抗素子を前記第1抵抗として流用する構成(第2の構成)にするとよい。
【0018】
第1または第2の構成から成るオーバーシュート抑制回路は、第1端が前記第1トランジスタのコレクタまたはドレインに接続されて第2端が前記出力トランジスタのゲートまたはベースに接続された第2抵抗をさらに有する構成(第3の構成)にするとよい。
【0019】
第3の構成から成るオーバーシュート抑制回路において、前記第2抵抗は、前記電源電圧の入力端と前記出力トランジスタのゲートまたはベースとの間に接続されたプルアップ抵抗よりも低抵抗である構成(第4の構成)にするとよい。
【0020】
第4の構成から成るオーバーシュート抑制回路は、エミッタまたはソースが前記電源電圧の入力端に接続されてベースまたはゲートが前記第1トランジスタのベースまたはゲートに接続されたpnp型またはPチャネル型の第2トランジスタと、入力端が前記第2トランジスタのコレクタまたはドレインに接続されて出力端が前記出力トランジスタのゲートまたはベースに接続されたカレントミラーと、をさらに有する構成(第5の構成)にするとよい。
【0021】
第5の構成から成るオーバーシュート抑制回路において、前記カレントミラーは、前記アンプブロックよりも大きい電流を引き込む構成(第6の構成)にするとよい。
【0022】
また、本明細書中に開示されている電源装置は、電源電圧の入力端と出力電圧の出力端との間に設けられたPチャネル型またはpnp型の出力トランジスタと、前記出力トランジスタを駆動するアンプブロックと、前記電源電圧の入力端と前記出力トランジスタのゲートまたはベースとの間に接続されたプルアップ抵抗と、第1〜第6いずれかの構成から成るオーバーシュート抑制回路と、を有する構成(第7の構成)とされている。
【0023】
第7の構成から成る電源装置において、前記アンプブロックは、前記出力電圧またはこれに応じた帰還電圧と所定の参照電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するエラーアンプと、前記誤差電圧に応じて前記出力トランジスタの駆動信号を生成するドライバと、を含む構成(第8の構成)にするとよい。
【0024】
また、本明細書中に開示されている電子機器は、機器各部への電力供給手段として第7または第8の構成から成る電源装置を有する構成(第9の構成)とされている。
【0025】
また、本明細書中に開示されている車両は、バッテリと、前記バッテリから電源電圧の供給を受けて動作する第9の構成から成る電子機器と、を有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0026】
本明細書中に開示されている発明によれば、回路規模の小さいオーバーシュート抑制回路、並びに、これを用いた電源装置、電子機器、及び、車両を提供するを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<電源装置>
図1は、電源装置の一構成例を示すブロック図である。本構成例の電源装置1は、直流電圧源(バッテリ)E1から供給される電源電圧VCCを降圧して所望の出力電圧Voutを生成する降圧型レギュレータ(本構成例ではLDO[low drop out]レギュレータ)であり、半導体装置100と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(キャパシタC1及びC2、パワーツェナダイオード(またはショットキーダイオード)D1、ダイオードD2、及び、負荷Z1)と、を有する。
【0029】
半導体装置100は、定電圧生成回路110と、参照電圧生成回路120と、エラーアンプ130と、ドライバ140と、出力トランジスタ150と、抵抗160〜180と、オーバーシュート抑制回路190と、を集積化したシリコンモノリシック集積回路(いわゆるLDOレギュレータIC)である。なお、半導体装置100には、上記の構成要素以外にも、各種の保護回路や保護素子(温度保護回路、過電流保護回路、ないし、静電破壊保護素子など)を適宜内蔵してもよい。
【0030】
また、半導体装置100は、外部との電気的な接続を確立するための手段として、8本の外部端子を有する。1ピン(VOUT)は電圧出力端子である。2ピン〜4ピン(N.C.)は未接続端子である。5ピン(EN)はチップイネーブル信号入力端子である。6ピン(GND)はグラウンド端子である。7ピン(N.C.)は未接続端子である。8ピン(VCC)は電源電圧入力端子である。もちろん、ピン数は任意に設計することが可能である。例えば、上記の未接続端子(2ピン〜4ピン、5ピン、及び、7ピン)を排除して4端子ICを構成しても構わない。
【0031】
定電圧生成回路(プリレギュレータ回路)110は、電源電圧VCCから所定の定電圧Vregを生成して半導体装置100の各部(参照電圧生成回路120及びエラーアンプ130など)へ供給する。また、定電圧生成回路110は、チップイネーブル信号ENに応じた遮断信号S1を生成して半導体装置100の各部(参照電圧生成回路120、エラーアンプ130、ドライバ140など)に出力するチップイネーブル機能も備えている。
【0032】
参照電圧生成回路120は、定電圧Vregの供給を受けて所定の参照電圧Vrefを生成する。
【0033】
エラーアンプ130は、電源電圧VCCと定電圧Vregの供給を受けて動作し、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfb(=出力電圧Voutの分圧電圧)と、反転入力端(−)に入力される参照電圧Vrefとの差分に応じた誤差電圧Verrを生成する。誤差電圧Verrは、帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefよりも高いときに上昇し、帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefよりも低いときに低下する。
【0034】
ドライバ140は、電源電圧VCCの供給を受けて動作し、誤差電圧Verrに応じて出力トランジスタ150のゲート信号G1を生成する。ゲート信号G1は、誤差電圧Verrが高いほど高くなり、誤差電圧Verrが低いほど低くなる。
【0035】
出力トランジスタ150は、電源電圧VCCの入力端と出力電圧Voutの出力端との間に接続されたパワートランジスタである。高い電源電圧VCCの入力を受け付ける必要がある場合、出力トランジスタ150としては、高耐圧(例えば60V耐圧)のPDMOSFET[P-channel type Double-diffused MOSFET])を用いることが望ましい。出力トランジスタ150のソースは、電源電圧VCCの入力端に接続されている。出力トランジスタ150のドレインは、出力電圧Voutの出力端に接続されている。出力トランジスタ150のゲートは、ドライバ140の出力端(ゲート信号G1の出力端)に接続されている。出力トランジスタ150の導通度は、ゲート信号G1の電圧値に応じて制御される。具体的に述べると、ゲート信号G1が高いほど出力トランジスタ150の導通度は小さくなり、ゲート信号G1が低いほど出力トランジスタ150の導通度は大きくなる。
【0036】
抵抗160及び170は、出力電圧Voutの印加端と接地端との間に直列接続されており、相互間の接続ノードは帰還電圧Vfbの出力端としてエラーアンプ130の非反転入力端(+)に接続されている。すなわち、抵抗160及び170は、出力電圧Voutを分圧して帰還電圧Vfbを生成する分圧回路として機能する。出力電圧Voutがエラーアンプ130の入力ダイナミックレンジに収まっている場合には、抵抗160及び170を省略して、出力電圧Voutをエラーアンプ130の非反転入力端(+)に直接入力することも可能である。
【0037】
抵抗180は、電源電圧VCCの印加端と出力トランジスタ150のゲートとの間に接続されている。抵抗180は、ドライバ140が非動作状態となったときに、ゲート信号G1をハイレベル(電源電圧VCC)に引き上げて、出力トランジスタ150をオフさせるためのプルアップ抵抗として機能する。なお、抵抗180に代えて能動素子(トランジスタ)を用いてもよい。また、抵抗180はドライバ140に内蔵することもできる。
【0038】
オーバーシュート抑制回路190は、電源電圧VCCの急上昇時に出力トランジスタ150のゲート信号G1を遅滞なく引き上げることにより、出力電圧Voutのオーバーシュートを抑制する。
【0039】
なお、上記したエラーアンプ130、ドライバ140、出力トランジスタ150、及び抵抗160〜180は、帰還電圧Vfb(または出力電圧Vout)と参照電圧Vrefとが一致するように出力トランジスタ150の駆動制御を行うことにより、電源電圧VCCから所望の出力電圧Voutを生成する電源回路に相当する。
【0040】
8ピン(VCC)に50Vを超えるサージが印加される場合には、8ピン(VCC)と接地端との間にパワーツェナダイオードD1の挿入を行うことが望ましい。8ピン(VCC)が接地端よりも低電圧となる可能性がある場合には、パワーツェナダイオードD1に代えてショットキーダイオードの挿入を行うことが望ましい。また、8ピン(VCC)と接地端との間には、入力平滑用のキャパシタC1を挿入することが望ましい。
【0041】
1ピン(VOUT)に大きなインダクタンス成分を含む負荷Z1が接続されて、起動時及び出力オフ時に逆起電力の発生が考えられる場合には、1ピン(VOUT)と接地端との間に保護用のダイオードD2を挿入することが望ましい。また、1ピン(VOUT)と接地端との間には、出力平滑用のキャパシタC2を挿入することが望ましい。
【0042】
なお、上記構成から成る半導体装置100は、バッテリ直結システム(例えば、ボディ系機器、カーステレオ、カーナビゲーションなどに電力の供給を行う車載電源システム)の低消費電流化(低暗電流化)に最適である。
【0043】
<オーバーシュート抑制回路(第1実施形態)>
図2は、オーバーシュート抑制回路190(及びその周辺回路であるエラーアンプ130及びドライバ140)の第1実施形態を示す回路図である。
【0044】
本図に示すように、エラーアンプ130は、pnp型バイポーラトランジスタQ11及びQ12と、電流源CS10と、を含む。また、ドライバ140は、pnp型バイポーラトランジスタQ21及びQ22と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタP21と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN20〜N22と、電流源CS20及びCS21と、抵抗R21及びR22と、を含む。また、オーバーシュート抑制回路190は、pnp型バイポーラトランジスタQ31を含む。
【0045】
上記各素子の接続関係について述べる。電流源CS10の第1端は、電源電圧VCCの入力端に接続されている。電流源CS10の第2端は、トランジスタQ11及びQ12の各エミッタにそれぞれ接続されている。エラーアンプ130の非反転入力端(+)に相当するトランジスタQ11のベースは、帰還電圧Vfbの印加端に接続されている。エラーアンプ130の反転入力端(−)に相当するトランジスタQ12のベースは、参照電圧Vrefの印加端に接続されている。
【0046】
抵抗R21及びR22の各第1端は、いずれも電源電圧VCCの入力端に接続されている。抵抗R21の第2端は、トランジスタQ21のエミッタに接続されている。抵抗R22の第2端は、トランジスタQ22のエミッタに接続されている。トランジスタQ21及びQ22の各ベースは、いずれもトランジスタQ22のコレクタに接続されている。トランジスタQ21のコレクタは、トランジスタQ11のコレクタに接続されている。トランジスタQ22のコレクタは、トランジスタQ12のコレクタに接続されている。
【0047】
電流源CS20の第1端は、定電圧Vregの印加端(若しくは電源電圧VCCの入力端)に接続されている。電流源CS20の第2端は、トランジスタN20のドレインに接続されている。トランジスタN20〜N22の各ソース及び各バックゲートは、いずれも接地端に接続されている。トランジスタN20〜N22の各ゲートは、いずれもトランジスタN20のドレインに接続されている。トランジスタN21のドレインは、トランジスタQ21のコレクタに接続されている。トランジスタN22のドレインは、トランジスタQ22のコレクタに接続されている。
【0048】
トランジスタP21のソース及びバックゲートは、いずれも電源電圧VCCの入力端に接続されている。トランジスタP21のゲートは、トランジスタQ21のコレクタに接続されている。トランジスタP21のドレインと電流源CS21の第1端は、いずれも出力トランジスタ150のゲートに接続されている。電流源CS21の第2端は、接地端に接続されている。
【0049】
トランジスタQ31のエミッタは、電源電圧VCCの入力端に接続されている。トランジスタQ31のコレクタは、出力トランジスタ150のゲートに接続されている。トランジスタQ31のベースは、抵抗R21の第2端に接続されている。
【0050】
なお、エラーアンプ130とドライバ140を一つのアンプブロックAと看做す場合、エラーアンプ130をアンプブロックAの入力段として理解し、ドライバ140をアンプブロックAの出力段として理解することができる。
【0051】
まず、上記構成から成るアンプブロックAの基本動作について説明する。出力電圧Voutの上昇に伴い帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefよりも高くなると、トランジスタQ11のコレクタ電流I11がトランジスタQ12のコレクタ電流I12よりも相対的に小さくなる。従って、トランジスタQ21のコレクタに現れるノード電圧V21がトランジスタQ22のコレクタに現れるノード電圧V22よりも相対的に低くなる。なお、先述の誤差電圧Verrは、ノード電圧V22からノード電圧V21を差し引いた差分値(=V22−V21)として理解すればよい。ノード電圧V21が低下すると、トランジスタP21の導通度が大きくなるので、トランジスタP21に流れる上側電流IHが電流源CS21に流れる下側電流ILよりも相対的に大きくなる。その結果、出力トランジスタ150のゲート信号G1が上昇するので、出力トランジスタ150の導通度が小さくなり、出力電圧Voutを引き下げるように帰還が掛かる。
【0052】
一方、出力電圧Voutの低下に伴い帰還電圧Vfbが参照電圧Vrefよりも低くなると、コレクタ電流I11がコレクタ電流I12よりも相対的に大きくなる。従って、ノード電圧V21がノード電圧V22よりも相対的に高くなる。ノード電圧V21が上昇すると、トランジスタP21の導通度が小さくなるので、上側電流IHが下側電流ILよりも相対的に小さくなる。その結果、出力トランジスタ150のゲート信号G1が低下するので、出力トランジスタ150の導通度が大きくなり、出力電圧Voutを引き上げるように帰還が掛かる。
【0053】
このように、上記構成から成る電源装置1では、出力トランジスタ150の導通度をリニア制御することにより、電源電圧Vccから所望の出力電圧Voutを生成することができる。なお、出力電圧Voutの目標値は、抵抗160及び117の抵抗比(出力電圧Voutから帰還電圧Vfbを生成する際の分圧比)や参照電圧Vrefの電圧値に応じて任意に調整することが可能である。
【0054】
また、上記構成から成る電源装置1であれば、出力電圧Voutの未出力時において、アンプブロックAが十分に動作できない状況であっても、電流源CS21を介してゲート信号G1がローレベルに引き下げられるので、出力トランジスタ150がフルオン状態となる。その結果、出力電圧Voutが上昇するので、電源装置1を正常に起動することが可能となる。
【0055】
また、上記構成から成る電源装置1であれば、出力トランジスタ150のゲートが抵抗180を介して電源電圧VCCの入力端にプルアップされている。従って、ゲート信号G1の論理レベルが不定となり得る状況下では、ゲート信号G1の論理レベルがハイレベルに固定されるので、出力トランジスタ150をオフ状態とすることが可能となる。
【0056】
次に、オーバーシュート抑制回路190の動作について詳述する。電源電圧VCCの急上昇に対して、アンプブロックAの能動負荷を形成するトランジスタペア(Q21及びQ22)の応答が遅れると、抵抗R21及びR22の両端間に過渡的な電位差が生じる。
【0057】
一方、トランジスタQ31のベースは、抵抗R21(抵抗R22でも可)を介して電源電圧VCCの入力端に接続されている。従って、電源電圧VCCの急上昇に伴い、抵抗R21の両端間にトランジスタQ31のオンスレッショルド電圧よりも高い電位差が生じると、トランジスタQ31がオンとなる。
【0058】
その結果、抵抗180よりも低インピーダンスのトランジスタQ31を介して出力トランジスタ150のゲート・ソース間がショートされるので、出力トランジスタ150が遅滞なくフルオフ状態となる。
【0059】
このように、第1実施形態のオーバーシュート抑制回路190であれば、電源電圧VCCの過渡変動時におけるゲート信号G1の追従度を高めることができるので、その追従遅れに起因していた出力電圧Voutのオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0060】
なお、電源電圧VCCの過渡変動が生じない限り、抵抗R21及びR22の両端間電位がトランジスタQ31のオンスレッショルド電圧を上回ることはなく、トランジスタQ31はオフ状態に維持される。このように、本実施形態のオーバーシュート抑制回路190は、電源電圧VCCの過渡変動が生じたときにのみ、出力トランジスタ150のゲート・ソース間におけるインピーダンス成分を一時的に変化させる。従って、オーバーシュート抑制回路190が電源装置1の通常動作に影響を及ぼす懸念はない。
【0061】
また、第1実施形態のオーバーシュート抑制回路190を用いれば、半導体装置100に外付けされる入力平滑用のキャパシタC1や出力平滑用のキャパシタC2を不必要に大容量化せずに済むので、電源装置1の小規模化やコストダウンを図ることが可能となる。
【0062】
また、第1実施形態のオーバーシュート抑制回路190は、従来構成(
図9)と違い、占有面積の大きいコンパレータを必要としないので、回路規模の増大やコストアップを招かずに済む。
【0063】
特に、第1実施形態のオーバーシュート抑制回路190は、アンプブロックAに含まれている構成要素のうち、電源電圧VCCの入力端と能動負荷(Q1及びQ2)との間に接続された抵抗素子(R21及びR22のいずれか一方)を流用して電源電圧VCCの過渡変動を検出し、トランジスタQ31をオン/オフする構成である。このような構成を採用すれば、既存回路に殆ど変更を加えず、僅かに一石のトランジスタQ31を追加するだけで、オーバーシュート抑制機能を実現することが可能となる。
【0064】
図3は、出力電圧Voutのオーバーシュートが抑制される様子を示す電圧波形図であり、上から順番に、電源電圧VCC、ゲート信号G1、及び、出力電圧Voutが描写されている。
【0065】
今、時刻t1〜t3で示したように、電源電圧VCCが急峻に上昇した状況を考える。オーバーシュート抑制回路190が未導入である場合には、時刻t1から遅延時間tdだけ遅れた時刻t2において、ゲート信号G1がようやく立ち上がり始めるので、出力電圧Voutには意図しないオーバーシュートが生じてしまう(破線を参照)。
【0066】
一方、オーバーシュート抑制回路190が導入済みである場合には、遅延時間tdを生じることなく、電源電圧VCCの上昇に伴ってゲート信号G1もほぼ遅滞なく上昇する。従って、出力電圧Voutのオーバーシュートを大幅(シミュレーション結果では、最大50%程度)に抑制することが可能となる(実線を参照)。
【0067】
<オーバーシュート抑制回路(第2実施形態)>
図4は、オーバーシュート抑制回路190の第2実施形態を示す回路図である。本実施形態のオーバーシュート抑制回路190は、先の第1実施形態(
図2)と基本的に同様の構成であるが、トランジスタQ31のコレクタと出力トランジスタ150のゲートとの間に、抵抗R31を挿入した点に特徴を有している。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、
図2と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0068】
先にも述べたように、第1実施形態(
図2)のオーバーシュート抑制回路190であれば、既存回路に殆ど変更を加えず、僅か一石のトランジスタQ31を追加するだけで、出力電圧Voutのオーバーシュート抑制機能を実現することが可能となる。
【0069】
ただし、第1実施形態のオーバーシュート抑制回路190では、電源電圧VCCにパルスノイズが連続的に重畳すると、その度に出力トランジスタ150がフルオフするので、出力電圧Voutが目標値から低下してしまう懸念がある。
【0070】
そこで、第2実施形態のオーバーシュート抑制回路190では、トランジスタQ31のコレクタと出力トランジスタ150のゲートとの間に、抵抗R31が挿入されている。なお、抵抗R31としては、ゲートプルアップ用の抵抗180(例えば450kΩ)よりも低抵抗(例えば10kΩ)を用いればよい。
【0071】
このような構成を採用することにより、電源電圧VCCが急峻に上昇してトランジスタQ31がオンした場合であっても、ゲート信号G1が電源電圧VCCまで上がらなくなるので、出力トランジスタ150はフルオフしなくなる。従って、電源電圧VCCのパルスノイズが連続しても出力電圧Voutの意図しない低下を回避することが可能となる。
【0072】
また、第2実施形態のオーバーシュート抑制回路190であれば、先出の第1実施形態と同じく、既存回路に殆ど変更を加えず、極めて少数の回路素子(トランジスタQ31及び抵抗R31の合計2素子)を追加するだけで、出力電圧Voutのオーバーシュート抑制機能を実現することが可能となる。
【0073】
<オーバーシュート抑制回路(第3実施形態)>
図5は、オーバーシュート抑制回路の第3実施形態を示す回路図である。本実施形態のオーバーシュート抑制回路190は、先の第2実施形態(
図4)と基本的に同様の構成であるが、先出のトランジスタQ31と抵抗R31に加えて、pnp型バイポーラトランジスタQ32とNチャネル型MOS電界効果トランジスタN31及びN32をさらに含む点に特徴を有している。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、
図4と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0074】
まず、上記追加要素の接続関係について述べる。トランジスタQ32のエミッタは、電源電圧VCCの入力端に接続されている。トランジスタQ32のベースは、トランジスタQ31のベースに接続されている。トランジスタQ32のコレクタは、トランジスタN31のドレインに接続されている。トランジスタN31及びN32の各ゲートは、いずれもトランジスタN31のドレインに接続されている。トランジスタN31及びN32の各ソース及び各バックゲートは、いずれも接地端に接続されている。トランジスタN32のドレインは、出力トランジスタ150のゲートに接続されている。
【0075】
このように接続されたトランジスタN31及びN32は、トランジスタN31のドレイン電流I31をミラー倍してトランジスタN32のドレイン電流I32(=α×I31、ただしαはミラー比)を生成するカレントミラーとして機能する。なお、トランジスタN31のドレインがカレントミラーの入力端に相当し、トランジスタN32のドレインがカレントミラーの出力端に相当する。
【0076】
先にも述べたように、第2実施形態(
図4)のオーバーシュート抑制回路190であれば、オーバーシュート抑制時に出力トランジスタ150がフルオフしなくなるので、電源電圧VCCのパルスノイズ連続時にも出力電圧Voutの低下を防止することができる。
【0077】
ただし、その省電力化が求められる電源装置1では、電流源CS21に引き込まれる下側電流ILを非常に小さい電流値(例えば10μA)に設定することが多い。このような電流値設定下では、たとえ抵抗R31に下側電流ILを流したとしても、抵抗R31の両端間電圧(=IL×R31)を十分に稼ぐことができないので、オーバーシュート抑制時における出力トランジスタ150のフルオフ回避に支障を生じ得る。
【0078】
なお、抵抗R31として抵抗180と同程度(数百kΩ)の高抵抗を用いれば、抵抗R31の両端間電圧を高めることができるので、出力トランジスタ150のフルオフを適切に回避することが可能となる。しかし、このような手法では、トランジスタQ31を介する電流経路のインピーダンスが高くなり、ゲート信号G1を素早く引き上げることが難しくなるので、オーバーシュート抑制回路190の導入意義が薄れてしまう。
【0079】
そこで、第3実施形態のオーバーシュート抑制回路190では、電源電圧VCCの過渡変動時にのみ、下側電流ILよりも大きなドレイン電流I32(例えば200μA)を抵抗R31に流すためのカレントミラー(N31及びN32)が設けられている。
【0080】
電源電圧VCCの急上昇に伴い、抵抗R21の両端間にトランジスタQ32のオンスレッショルド電圧よりも高い電位差が生じると、トランジスタQ32がオンとなる。その結果、カレントミラーの入力端にドレイン電流I31が流れ、これをミラー倍したドレイン電流I32が抵抗R31を介する電流経路でカレントミラーの出力端に引き込まれる。このような構成を採用することにより、抵抗R31の両端間電圧(=(IL+I32)×R31)を十分に稼ぐことができるようになるので、オーバーシュート抑制時における出力トランジスタ150のフルオフを適切に回避することが可能となる。
【0081】
なお、カレントミラーのドレイン電流I32は、電源電圧VCCの過渡変動に伴って一時的に流れるだけなので、電源装置1の平均消費電流は殆ど増大しない。
【0082】
また、第3実施形態のオーバーシュート抑制回路190であれば、先出の第1実施形態や第2実施形態と同じく、既存回路に殆ど変更を加えず、少数の回路素子(トランジスタQ31及びQ32、トランジスタN31及びN32、抵抗R31の合計5素子)を追加するだけで、出力電圧Voutのオーバーシュート抑制機能を実現することが可能となる。
【0083】
<車両への適用>
図6は、車両Xの一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、不図示のバッテリと、バッテリから電源電圧VCCの供給を受けて動作する種々の電子機器X11〜X18を搭載している。なお、本図における電子機器X11〜X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0084】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0085】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0086】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0087】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0088】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0089】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0090】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0091】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0092】
なお、先に説明した電源装置1は、機器各部への電力供給手段として、電子機器X11〜X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0093】
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0094】
例えば、バイポーラトランジスタからMOS電界効果トランジスタへの置換は任意である。この場合、トランジスタの出力形態については、pnp型をPチャネル型とし、npn型をNチャネル型とするように、上記の説明を適宜読み替えればよい。また、トランジスタの端子についても、エミッタをソースとし、コレクタをドレインとし、ベースをゲートとするように、上記の説明を適宜読み替えれば足りる。
【0095】
上記と逆に、MOS電界効果トランジスタからバイポーラトランジスタへの置換も任意である。この場合、トランジスタの出力形態については、Pチャネル型をpnp型とし、Nチャネル型をnpn型とするように、上記の説明を適宜読み替えればよい。また、トランジスタの端子についても、ソースをエミッタとし、ドレインをコレクタとし、ゲートをベースとするように、上記の説明を適宜読み替えれば足りる。
【0096】
このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。