(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る自動取引装置1(例えば、ATMや両替機等)、自動取引装置1の管理を行うホストコンピュータ30及び自動取引装置1の精査を遠隔地から行う精査端末40について図を参照して説明する。
【0009】
図1は、自動取引装置1、ホストコンピュータ30及び精査端末40の機能、構成を示すブロック図である。
自動取引装置1は、ホストコンピュータ30及び精査端末40とネットワーク50を介して接続される。なお、ホストコンピュータ30及び精査端末40に接続される自動取引装置1の台数は、1台に限られない。
【0010】
自動取引装置1は、表示・操作部2、紙幣処理部3、硬貨処理部4、カード・明細票処理部5、通帳処理部6、通信部21、係員用表示操作部22、扉検知操作部25、主記憶部23及び制御部24から構成される。
表示・操作部2は、自動取引装置1の正面に設けられる。表示・操作部2は、利用者に対する操作案内画面を表示する。また、表示・操作部2は、利用者の暗証番号や取引内容(取引種別、取引金額等)について入力操作を受付ける。なお、表示・操作部2には、利用者の生体情報(指紋、指静脈、掌紋等)を読み取る生体情報読取部等を有していてもよい。
【0011】
紙幣処理部3は、
図2に示すように、自動取引装置1の正面に設けた入出金口201と、内部に収納されている紙幣カセット204A‐204Cとの間に形成した紙幣搬送路Lに沿って紙幣Sを搬送する。
【0012】
紙幣処理部3は、紙幣搬送路Lに沿って搬送する紙幣毎に金種及び真偽を識別する紙幣鑑別部202及び紙幣を一時収納する一時保留部203を有する。紙幣識別部202は、紙幣から読み取った磁気パターンや透過光パターン等に基づいて金種及び真偽を識別する。また、紙幣識別部202は、紙幣の形状や厚み等から紙幣の枚数を判別する。
【0013】
紙幣処理部3は、紙幣カセット204A‐204Cに紙幣を補充する補充用カセット206(補充する紙幣が収納されている補充部206A、補充時に識別できなかった紙幣を収納する補充リジェクト部206B)及び汚損や変形等により金種が不明の貨幣やリサイクルに適さない貨幣を収納するリジェクトカセット205を有する。紙幣処理部3に構成される各カセットには、セキュリティ確保のため鍵(不図示)が構成され、鍵の開閉を検知する検知部(不図示)も構成される。さらに、紙幣処理部3には、各カセットの引き出しを検知する検知部(不図示)が構成され、自動取引装置1の電源がON/OFF時にカセットの引き出しがあったかを検知する。
【0014】
硬貨処理部4は、入出金硬貨を収納し、自動取引装置1の正面に専用のシャッタが設けられ、シャッタの開閉により、硬貨処理部4に対する硬貨の投入や取り出しを制限する。硬貨処理部3は、シャッタと本体内部に収納されている硬貨カセットとの間に形成される硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送する。また、硬貨処理部4は、硬貨搬送路に沿って搬送している硬貨毎に、金種及び真偽を識別する硬貨識別部を有している。また、硬貨処理部4には、紙幣処理部3と同様に、セキュリティ確保のため鍵(不図示)が構成され、鍵の開閉を検知する検知部(不図示)も構成される。また、硬貨処理部4の引き出しがあるかを検知する検知部(不図示)が構成される。
【0015】
カード・明細票処理部5は、自動取引装置1の正面に設けられる挿入口からカードを取り込み、カードに記録されているカード情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)の読み取りや、カード情報の書き換え等を行う。カード・明細票処理部5は、例えば、磁気カード又は/及びICカードを処理する。例えば、ICカードの場合、カードのICチップに記録されているデータの読み取りや書き換えを行う。
【0016】
また、カード・明細票処理部5は、取引内容を明細票に印字する印字部を有し、印字部により印字された明細票を放出する。さらに、カード・明細票処理部5は、本図面に図示していないが、自動取引装置1の動作履歴をジャーナル用ロール紙に印字するジャーナル部、振込取引において振込先情報を記録した振込み券をデータ書込み、印字、発券する振込み券発行部及び繰り出したカードの取り忘れが発生した際に取忘れカードを収納する取忘れ回収カセットを有する。各構成部に対する操作は操作検知機構にて検知される。操作検知機構は、一般的なセンサを各部に備えることにより実現される。また、カード・明細票処理部5は、各構成部に対する操作の有無や、障害の有無等の状態等が記憶される記憶部(不図示)を有する。
【0017】
通帳処理部6は、自動取引装置1の正面に設けられる通帳挿入口に挿入された通帳を取り込み、通帳に対して取引履歴を印字する印字部(不図示)を有している。また、通帳処理部6は、本図面に図示していないが、取り込んだ通帳のページを捲るページ捲り機構や、通帳に印刷されているページ番号を示すバーコードを読み取るバーコードリーダ、通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている通帳情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)を読み取る磁気ヘッド等も有している。
【0018】
また、通帳に印字スペースがなくなった場合に新規通帳を印字、書込み、発行する通帳発行機構を有しており、通帳発行機構へ新通帳を手詰めする装填カセット(不図示)も有している。各構成部に対する操作は操作検知機構にて検知される。また、通帳処理部6は、各構成部に対する操作の有無や、障害の有無等を記憶する記憶部(不図示)を有する。
【0019】
通信部21は、制御部の指示に基づいて、保守運用を行うセンタ側等に設置されているホストコンピュータ30や精査端末40との通信を行う。
【0020】
係員・表示操作部22は、自動取引装置1の後扉又は前扉の内側に設けられ、係員又は保守員に自動取引装置1の状態を表示したり入力操作を受け付けたりする。
【0021】
扉操作検知部25は、自動取引装置1の前扉又は後扉の少なくともいずれか一方に備えられる。扉操作検知部25は、自動取引装置1の電源がON/OFFのどちらの状態であっても、扉の開閉及び扉鍵の施錠・開錠を検知することにより、自動取引装置1への不正アクセスの有無を検知する。また、検知結果を主記憶部23に記憶する。
【0022】
主記憶部23は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。主記憶部23には、現金管理テーブル300及び状態管理テーブル400が格納される。
【0023】
図3は、現金管理テーブル300の一例を示す図である。現金管理テーブル300は、自動取引装置1に収納される貨幣の枚数304及びその額306を金種302毎に管理するテーブルである。また、紙幣カセット308、硬貨カセット310及びリジェクトボックス312に収納される貨幣の枚数とその額を管理し、自動取引装置1に収納される貨幣の総額314を保持する。
【0024】
図4は、状態管理テーブル400の一例を示す図である。状態管理テーブル400は、自動取引装置1の状態を示すテーブルである。発生内容402には、電源ON/OFF時の自動取引装置1への不正アクセスの有無や障害発生等の発生した事象の情報が、カテゴリーIDと対応させて格納される。また、事象が発生した時刻を発生時刻404、発生した場所を発生箇所406として管理する。
【0025】
本実施形態では、精査実施後、状態管理テーブル400の情報が削除されて、その後の情報を新たに記憶していくものとするが、自動取引装置1の稼働中に発生した内容を全て記憶する仕様等にしてもよい。
【0026】
制御部24は、自動取引装置1の本体各部の動作を制御する。例えば、精査端末40の表示・操作部42から精査の指示を受け付けると、現在の自動取引装置1の状態を判断しその状態に応じた精査を実行する。
【0027】
ホストコンピュータ30は、通信部31、主記憶部32及び制御部33から構成される。
通信部31は、制御部33の指示に基づいて、自動取引装置1や精査端末40との通信を行う。
主記憶部32は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。主記憶部32には、在高管理テーブル500が格納される。
図5に示すように、在高管理テーブル500では、自動取引装置毎502の在高情報504を管理する。
【0028】
また、ホストコンピュータ30では、開設されている口座毎に、口座開設者の氏名、住所、連絡先電話番号、取引履歴、暗証番号、口座残高等を含む口座管理情報を登録したデータベースを有する(不図示)。さらに、ホストコンピュータ30は、自動取引装置1から通知された取引内容に基づいて、取引が行われた口座にかかる口座管理情報を更新する処理や、自動取引装置1からの取引可否の認証要求に対して、取引可否を認証し、その認証結果を返信する処理等を行う。
【0029】
精査端末40は、通信部41、表示・操作部42、主記憶部44及び制御部45から構成される。
通信部41は、制御部45の指示に基づいて、自動取引装置1やホストコンピュータ30との通信を行う。
表示・操作部42は、自動取引装置1に精査や在高照会等の実行を指示するボタン表示やボタン押下げするための操作部である。
【0030】
主記憶部44には、自動取引装置1の精査結果情報を格納する。
制御部45は、各部の動作を制御する。また、リモートで遠隔地から複数台の自動取引装置1に対し、精査や在高照会等の機能実行の指示を行う。
【0031】
図6は、自動取引装置1、ホストコンピュータ30及び精査端末40の関係について説明する図である。精査端末40から自動取引装置1へリモートで要求する主な機能として、在高照会と精査がある。在高照会とは、自動取引装置1が記憶する現金管理テーブル300とホストコンピュータ30が記憶する在高管理テーブル500とを参照し、自動取引装置1が有する在高が正しいかを照会する機能である。精査とは、自動取引装置1に収納される貨幣の金種毎の枚数やその合計値を確認する機能である。
【0032】
また、本実施形態では、精査の種類として「計数有り精査」と「計数無し精査」とを有する。計数有り精査とは、自動取引装置1とホストコンピュータ30とが管理する紙幣の金種及び枚数等の情報の突き合わせだけではなく、収納している紙幣を紙幣カセット204A‐204Cから再度装置内に繰り出して計数(数え上げ)する動作を伴う処理をいう。本実施形態では、カセットに収納した貨幣を再度繰り出して計数することを「再計数」という。計数無し精査とは、自動取引装置1とホストコンピュータ30との現金情報の突き合わせのみで、再計数動作を伴わない処理をいう。
【0033】
計数有り精査は、自動取引装置1で保有する貨幣を再計数するため、厳密な精査を実行することができるという効果がある。他方、計数無し精査は、再計数のために必要な時間がかからず、貨幣を繰り出して移動させることにより発生する紙幣ジャム等の機器障害リスク並びに自動取引装置1を構成する機器消耗リスクを低減する効果がある。
【0034】
図6に示すように、精査端末40は、自動取引装置1へ在高照会又は精査の実行指示をする(S601)。実行指示は、精査端末40の操作者が、表示・操作部42に表示される機能実行ボタンを選択することにより出される。指示を受けた自動取引装置1は、ホストコンピュータ30に在高通知の指示を送る(S602)。ホストコンピュータ30は、在高を自動取引装置1へ通知し(S603)、自動取引装置1は、自動取引装置1の現金管理テーブル300で管理する在高とホストコンピュータ30の在高管理テーブル500で管理する在高とを照会した結果又は精査結果を精査端末40へ通知する。
【0035】
なお、上述したように、精査端末40は、複数台の自動取引装置1の制御を行うことができ、精査端末40から出される在高照会や精査の実行指示は、自動又は手動により複数の自動取引装置1に一括して指示することもできる。
【0036】
また、本実施形態では、精査端末40から自動取引装置1に在高照会、スピード精査、自動判別精査及び監査精査の機能の実行を指示する。各機能の詳細な処理については、後述する。なお、精査端末40が自動取引装置1へ実行指示するものは、在高照会や精査以外にも、例えば、自動取引装置1の取扱開始、休止等が含まれる。
【0037】
図6に示す在高照会又は精査では、精査端末40とホストコンピュータ30とが直接情報をやりとりしていない図を例示しているが、これに限られず、精査端末40からホストコンピュータ30へ直接ホスト在高通知の指示をだすようにしてもよい。
【0038】
図7は、スピード精査の機能実行時の処理フローを示すフローチャートである。
まず、S701で、精査端末40が、スピード精査の指示を受付けると、精査端末40の制御部45は、自動取引装置1にホスト在高情報リクエストを送る(S703)。
S705で、自動取引装置1の制御部24は、ホストコンピュータ30にホスト在高情報リクエストを送る。
【0039】
S707で、ホストコンピュータ30の制御部33は、主記憶部32の在高情報管理テーブルからリクエスト送信元の自動取引装置1の在高情報を読み出し、その自動取引装置1にホスト在高情報を通知する。
【0040】
なお、ホストコンピュータ30の在高情報に変更があった場合に、その都度、ホストコンピュータ30から自動取引装置1に在高情報を通知するのでも良い。
【0041】
S709で、自動取引装置1の制御部24は、動作判定処理を行う。動作判定処理では、自動取引装置1内の保有在高の不確定原因となりうる事象の発生有無を判定し、自動取引装置1の状態が、確定状態であるか不確定状態であるかを決定する。
【0042】
本実施形態では、保有在高の不確定原因となりうる事象が発生していないため在高が保証されている状態を確定状態といい、反対に、保有在高の不確定原因となりうる事象が発生している状態を不確定状態という。不確定原因となりうる事象が発生しているかを判断する動作判定処理の具体的な処理内容については、
図8を用いて説明する。
【0043】
711aは、動作判定処理(S709)により確定状態であると判断された自動取引装置1に対する処理を示し、711bは、不確定状態であると判断された自動取引装置1に対する処理を示す。
【0044】
S713で、確定状態の自動取引装置1は、計数無し精査を実行する。計数無し精査は、自動取引装置1の主記憶部23に記憶する現金管理テーブル300の総額314とS707で取得したホスト在高情報504との額の突き合わせを行う。
【0045】
次いで、S715で、自動取引装置1の制御部24は、精査結果を通知する。精査結果には、少なくとも現金管理テーブル300の情報、ホスト在高情報504及び精査が正常/異常に実行されたのを示す情報が含まれる。
【0046】
S717で、不確定状態の自動取引装置1は、在高照会結果を通知する。在高照会結果には、少なくとも現金管理テーブル300の情報、ホスト在高情報504、次回推奨精査の情報を含む。
【0047】
次回推奨精査とは、次回の精査実行時に推奨される精査種別を示すものである。例えば、スピード精査の指示に対し、精査を実施しなかった不確定状態の自動取引装置1には、必然的に計数有り精査行う監査精査の精査種別が表示される。不確定状態であるため次回の精査では、計数を伴う精査が必要なためである。監査精査については、後述する。
【0048】
最後に、S719で、精査端末40は、スピード精査の結果を表示・操作部42に表示する。表示画面の一例を
図11に示す。
【0049】
図8は、自動取引装置1の制御部24が行う動作判定処理の処理フローを示すフローチャートである。
S801で、在高突き合わせを行う。在高突き合わせは、自動取引装置1の主記憶部23に記憶する現金管理テーブル300の総額値314とS707で取得したホスト在高情報504との額の突き合わせを行う。
【0050】
次いで、S803で、セキュリティ判定を行う。セキュリティ判定は、自動取引装置1の電源がON/OFFのどちらの状態も含めた自動取引装置1への不正アクセスの有無を判定する。不正アクセスがある場合、自動取引装置1から貨幣抜き取り等の不正行為の行われている可能性があるためである。不正アクセスは、紙幣処理部3の各カセットや硬貨処理部4の鍵の開閉検知や、引き出し検知によりその有無が判定される。
【0051】
検知された情報は、状態管理テーブル400にその情報が格納される。制御部24は、状態管理テーブル400を読み出し、不正アクセスの有無を判定する。
【0052】
セキュリティ判定で不正アクセスがないと判断される場合(S805:No)、S807に進む。セキュリティ判定で不正アクセスありと判断される場合(S805:Yes)、自動取引装置1の状態を不確定状態に決定し(S819)、処理を終了する。
【0053】
次いで、S807で、金種別枚数判定処理を行う。金種別枚数判定処理では、リジェクトカセット205に収納されている貨幣の金種及び枚数が確定しているかを判定することにより、リジェクトカセット205が確定状態であるか不確定状態であるかを決定する。金種別枚数判定処理については、
図9を用いて説明する。
【0054】
金種別枚数判定処理の結果、リジェクトカセット205が確定状態の場合(S809:Yes)、S811に進む。リジェクトカセット205が不確定状態の場合(S809:No)、自動取引装置1の状態を不確定状態に決定し(S819)、処理を終了する。
【0055】
次いで、S811で、障害判定処理を行う。障害判定処理では、状態管理テーブル400の障害情報に基づいて、自動取引装置1内の貨幣の在高が変わる可能性があるかを判定する。
障害判定処理では、自動取引装置1が在高変更可能性あり又は在高変更可能性なしのいずれかに決定される。障害判定処理については、
図10を用いて詳細に説明する。
【0056】
S811の障害判定処理の結果、在高変更可能性なしと決定される場合(S813:No)、S815に進む。在高変更可能性ありと決定される場合(S813:Yes)、自動取引装置1の状態を不確定状態に決定し(S819)、処理を終了する。
【0057】
最後に、S801で行った在高突き合わせの結果が一致している場合(S815:Yes)、自動取引装置1の状態を確定状態に決定し(S817)、処理を終了する。また、在高突き合わせの結果が一致していない場合(S815:No)、自動取引装置1の状態を不確定状態に決定し(S819)、処理を終了する。
【0058】
なお、セキュリティ判定処理(S803)、金種別枚数判定処理(S807)及び障害判定処理(S811)の処理順序は、上述した順序に限定されない。
【0059】
図9は、自動取引装置1の制御部24が行う金種別枚数判定処理の処理フローを示すフローチャートである。
まず、S901で、自動取引装置1のリジェクトカセット205に貨幣が収納されているか否かを判定する。
リジェクトカセット205に収納する貨幣がある場合(S901:Yes)、S905に進む。収納する貨幣がない場合(S901:No)、S903で、リジェクトカセット205の状態を確定状態に決定し処理を終了する。
【0060】
S905で、収納する貨幣の金種及び枚数が確定しているかを判定する。確定しているか否かは、自動取引装置1の制御部24が、現金管理テーブル300を参照することにより判定される。
【0061】
金種及び枚数が確定している場合(S905:Yes)、リジェクトカセット205で保有している在高が保証されているため、リジェクトカセット205の状態を確定状態に決定する。金種又は枚数のいずれかが確定していない場合(S905:No)、S907で、リジェクトカセット205の状態を不確定状態に決定する。
【0062】
リジェクトカセット205には、一般的な紙幣カセット204A−204Cが有する紙幣の繰り出し機構が構成されておらず、リジェクトカセット205に収納される貨幣の確認には、保守員等の人手による手計数の必要がある。しかし、リジェクトカセット205に収納される貨幣の金種及び枚数が予め確定している場合もあり、そのような場合には手計数をせずに精査を行うことができる。
【0063】
そこで、本実施形態では、動作判定処理の一処理として金種別枚数判定処理を実行し、リジェクトカセット205の状態が確定状態であるか不確定状態であるかを判断し、リモートで精査を実行できるか否かを判断することができる。
【0064】
図10は、自動取引装置1の制御部24が行う障害判定処理の処理フローを示すフローチャートである。
まず、S1001で、前回の精査実行後から今回障害判定処理までに障害が発生しているか否かを判定する。障害発生の有無は、制御部24が、状態管理テーブル400の発生内容のID検索により、障害IDの情報が格納されているかにより行う。
【0065】
障害が発生していると判定される場合(S1001:No)、S1003に進む。障害が発生していないと判定される場合(S1001:Yes)、障害に伴う自動取引装置1の在高の変更の可能性はないため在高変更可能性なしに決定し(S1005)、処理を終了する。
【0066】
S1003で、障害の詳細情報を取得する。詳細情報とは、状態管理テーブル400において障害IDと対応して管理される発生時刻404、発生箇所406等の情報のことをいう。
S1007で、発生した障害が、保有在高の不確定原因となりうる事象であったかを判断する。保有在高の不確定原因となりうる事象とは、紙幣処理部3で発生したジャム障害等が該当する。また、紙幣処理部3以外の通帳処理部2等で発生した障害や、ホストコンピュータ30との電文送受信における通信エラー等であっても該当する場合がある。
【0067】
発生した障害が、保有在高の不確定原因となりうる事象でない場合(S1007:No)、在高変更可能性なしに決定し(S1005)、処理を終了する。また、不確定原因となりうる事象である場合(S1007:Yes)、在高変更可能性ありに決定し(S1009)、処理を終了する。
【0068】
なお、本実施形態では、動作判定処理をスピード精査の一処理として説明したが、これに限られず、自動取引装置1の起動時、自動取引装置1又は精査端末40の操作者による在高照会や精査の指示時、在高が変動する処理(例えば、紙幣カセットへ紙幣を補充するための補充処理、ユーザによる出金処理、ユーザによる入金処理又は振込み処理等)が実行された後に自動で実行することにより、自動取引装置1の状態を都度管理するようにしても良い。また、予め決められた時間に定期的に実施するようにしても良い。
【0069】
図11は、スピード精査実施の際に表示・操作部42に表示する表示画面の一例を示す。
表示画面1100には、実行する機能を選択する表示領域が設けられる(1102)。また、表示画面1100には、精査端末40が複数の自動取引装置1を管理している場合、そのいずれに対して機能実行を指示するかを選択できる表示領域が設けられる(1104)。
図11では、1号機及び2号機の自動取引装置1にスピード精査の実行指示がだされていることを示す。
【0070】
また、表示画面1100には、1106のように、精査結果を示す領域が設けられる。1106は、現金管理テーブル300に記憶される自動取引装置1の保有在高を示す情報であり、貨幣の金種毎に在高が表示される。
【0071】
1108は、ホストコンピュータ30から取得したホスト在高情報が示される。
1110は、スピード精査の結果を示す表示領域である。例えば、判定1112には、動作判定処理(
図8)における自動取引装置1の現金管理テーブル300の総額値314とホストコンピュータ30のホスト在高情報504との突き合わせ結果が表示される。状態1114には、動作判定処理の結果、決定した自動取引装置1の状態が表示される。
【0072】
処理1116には、動作判定処理の後、実行する処理が表示される。
図12に例示する自動取引装置1の1号機は、状態1114が確定状態であるため、計数無し精査の処理を実行したことが表示される(
図7のS711a)。また、その精査結果が、1118に表示される。
【0073】
また、自動取引装置1の2号機は、状態1114が不確定状態であるため、精査は実施されない(
図7のS711b)。そのため、処理1116には、精査不実施が表示され、次回推奨精査1120には計数を必ず伴う監査精査が表示される。
【0074】
なお、表示画面1100には、例えば、他店舗等で管理する自動取引装置1の状態を参照するための遷移ボタンを設けることもできる。
また、表示画面1100に表示する情報については、ジャーナルや明細票に印字することも可能である。
【0075】
以上のように、本実施形態のスピード精査機能は、動作判定処理を実行することにより自動取引装置1の状態を判断し、確定状態の自動取引装置1に対しては計数無し精査を実施し、不確定状態の自動取引装置1に対しては計数無し精査及び計数有り精査のいずれも実施しない。即ち、精査端末40で管理する自動取引装置1の状態に応じて精査の実施/不実施を決定することができる。
【0076】
スピード精査の機能を有することにより、確定状態である自動取引装置1については即時に精査を実行することができる。また、不確定状態である自動取引装置1についてはむやみに装置を停止させて計数する精査を実行することなく稼働を継続させることができる。そのため、スピード精査は、特に自動取引装置1の稼働するサービス提供時間内に精査を行う際に有効な精査といえる。
【0077】
また、操作者の精査指示に応じて、最適な内容の精査を迅速に実行することができる。さらに、複数の自動取引装置1に対して精査を実行する場合であっても、操作者が自動取引装置1毎に精査内容の指示の出しわけを行う必要がなく、効率的な精査の運用を実現できる。
【0078】
また、不確定状態の自動取引装置1に対しては、次回精査の際に推奨される精査を示すことにより、操作者は、次回行うべき精査を的確に把握することができる。
【0079】
図12は、在高照会の機能実行時の処理フローを示すフローチャートである。
精査端末40は、在高照会指示を受付けると(S1201)、スピード精査実行時と同様の処理S703〜S709(
図7)の処理を行う。各処理の内容は、同様であるため説明を省略する。
【0080】
次いで、S1203で、自動取引装置1は、在高照会結果を通知する。在高照会結果には、少なくとも現金管理情報テーブル300、ホスト在高情報504及び自動取引装置1の確定/不確定状態の情報が含まれる。
【0081】
1205aは、動作判定処理(S709)により確定状態であると判断された自動取引装置1に対する処理を示し、1205bは、不確定状態であると判断された自動取引装置1に対する処理を示す。
【0082】
S1215で、精査端末40は、在高照会結果及び次回の推奨精査種別を表示・操作部42に表示する。確定状態であると判断された自動取引装置1は、保有在高の一致がとれているため、次回の精査では、計数有りの精査を実施しなくともよい可能性が高い。そのため、次回推奨精査として、スピード精査が選択される。
【0083】
他方、不確定状態であると判断された自動取引装置1についても在高照会結果・次回推奨精査を表示・操作部42に表示する(S1217)。不確定状態であると判断された自動取引装置1は、次回の精査の際、計数をして在高を確認する必要があるため、次回推奨精査には監査精査が選択される。監査精査については後述する。
【0084】
図13は、在高照会処理の際に表示・操作部42に表示する表示画面1300の一例を示す。
表示画面1300に表示される項目のうち、スピード精査の際に表示する
図11の表示画面1100と同様の項目については、説明を省略する。
【0085】
1302は、在高照会の結果及び次回の推奨精査を示す表示領域である。例えば、1号機の自動取引装置1は、自動取引装置1の現金管理情報テーブル300の総額値314とホストコンピュータ30のホスト在高情報504とが一致しているため、判定1310には在高一致、状態1312には確定、次回推奨精査1320にはスピード精査が表示される。
【0086】
以上のように、本実施形態では、在高照会処理を行うと、自動取引装置1とホストコンピュータ30の保有する在高情報を照会し一致/不一致を確認することができる。また、在高照会の結果に基づき、次回の精査実行時に推奨される精査を表示する。これにより、操作者は、推奨される精査を最適なタイミングで実行することができる。
【0087】
例えば、監査精査を実行すると計数による自動取引装置1の停止が必要になるため、監査精査の必要な自動取引装置1については、サービス提供時間外や利用者の混雑時間帯を回避して精査を実行する等の対処を行うことができる。
【0088】
図14は、自動判別精査の機能実行時の処理フローを示すフローチャートである。
精査端末40は、自動判別精査指示を受付けると(S1401)と、スピード精査実行時と同様の処理S703〜S709(
図7)の処理を行う。各処理の内容は、同様であるため説明を省略する。
【0089】
1403aは、動作判定処理(S709)により確定状態であると判断された自動取引装置1に対する処理を示し、1403bは、不確定状態であると判断された自動取引装置1に対する処理を示す。
【0090】
S1405で、確定状態の自動取引装置1は、計数無し精査を実行する。計数無し精査は、自動取引装置1の現金管理テーブル300の総額とS707で取得したホスト在高情報との額の突き合わせを行うことで実行する。
他方、不確定状態の自動取引装置1は、計数有り精査を実行する(S1407)。
最後に、S1409で、自動取引装置1の制御部24は、精査端末40に精査結果を通知する。精査結果には、少なくとも現金管理テーブル300の情報、ホスト在高情報504及び精査が正常/異常に実行されたのを示す情報が含まれる。
【0091】
監査精査は、確定/不確定状態のいずれの自動取引装置1にも関わらず、計数有り精査を実行する機能である。
精査端末40は監査精査の指示を受付けると、自動取引装置1に計数有り精査の実行を指示する。そして、自動取引装置1は、計数有り精査を実行し、その精査結果を精査端末40に通知する。
【0092】
監査精査は、不確定状態の自動取引装置1の次回の推奨精査に用いられる他、監査目的で利用することもでき、犯罪抑止効果やセキュリティを高める効果がある。
【0093】
本実施形態では、以上のように、精査端末40から自動取引装置1へ複数種別の精査指示の基づき、自動取引装置1の状態に合った精査を実行することができる。そのため、自動取引装置1の効率的な現金管理業務を実行することができる。
【0094】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、在高照会後、連続して実行可能な精査の機能である。
図15は、精査端末40の制御部45が行う在高照会後の連続精査の処理フローを示すフローチャートである。なお、
図15は、在高照会(
図12)を実施した後の処理を示すものであり、在高照会の処理については同様であるため説明を省略する。
【0095】
在高照会を完了すると、まず、S1501で確定状態の自動取引装置1があるかを判断する。確定状態の自動取引装置1がある場合(S1501:Yes)、S1503に進む。確定状態の自動取引装置1がない場合(S1501:No)、処理を終了する。
【0096】
S1503で、表示・操作部42に連続精査実施画面を表示する。連続精査実施画面の一例を
図16に示す。
次いで、S1505で、表示・操作部42において自動取引装置1の精査の実行指示を受付けると(S1505:Yes)、S1507に進む。他方、精査の実行指示を受付けない場合(S1505:No)、処理を終了する。
【0097】
次いで、S1507で、在高照会の終了から精査の実行指示を受付けるまでに、自動取引装置1の状態変化が有ったかを確認する。状態変化が有ったかは、精査端末40から自動取引装置1へ動作判定処理(
図8)を再度指示して確認する。
【0098】
自動取引装置1の状態に変化が無い場合(S1507:No)、S1509で、自動取引装置1に計数無し精査の実行を指示する。反対に、自動取引装置1の状態に変化が有る場合(S1507:Yes)、S1511で、表示・操作部42に連続精査不可画面を表示し処理を終了する。連続精査不可画面の一例を
図17に示す。
【0099】
以上のように、在高照会後の連続精査を可能とすることにより、操作者は、自動取引装置1の状態に変化が無い場合、在高照会の結果を利用して迅速な精査を完了することができる。
【0100】
なお、以上の実施形態で、精査端末40の表示・操作部42で行うものとして説明した種々の表示及び操作は、自動取引装置1の係員・表示操作部22で実行することも可能である。
【0101】
また、以上の実施形態では、精査端末40の操作者が、精査や在高照会の指示を選択することにより機能が実行されるものとして記載したが、精査端末40あるいは自動取引装置1が、予め日時や曜日を指定するスケジュールに沿って自動で実行されるものとしてもよい。
【0102】
また、精査端末40は、次回推奨精査として表示した精査の実行を操作者に促すため、次回推奨精査のみを選択可能とすることや、次回推奨精査を強調表示する等の仕様とすることもできる。
【0103】
以上、本発明を実施するための形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の構成や動作を適用可能である。