(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整部材は、前記延出部の横幅方向外側に固定されており、前記奥側に向かうほど前記他方向側に位置するように傾斜した手前側傾斜領域を手前側に有し、前記奥側に向かうほど前記一方向側に位置するように傾斜した奥側傾斜領域を奥側に有し、
前記手前側傾斜領域及び前記奥側傾斜領域は、前記第1位置と前記第2位置との前記当接部の移動経路上に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のトレー保持装置。
前記係合部材は、前記本体から前記係合部側に突出して形成されて、前記係合部よりも前記第1位置側にあり、前記被係合部に係止する係止部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトレー保持装置。
前記固定枠に保持された複数の前記トレー中、対象トレーを前記トレー保持装置から取り出すために前記作業者が前記第1駆動機構を操作すると、前記第1駆動機構が、鉛直方向において前記対象トレーの前記被係合部と対応する位置へ前記係合部材を移動させ、
前記係合部材が鉛直方向において前記対象トレーの前記被係合部と対応する位置に至った後に前記作業者が前記第2駆動機構を操作すると、前記第2駆動機構が、前記奥行方向において前記第1位置から前記第2位置に向けて前記可動枠を移動させ、
前記可動枠が前記第1位置から前記第2位置に向けて移動する間に、前記係合部材が、前記対象トレーの前記被係合部と係合し、前記可動枠が前記対象トレーを連れながら前記第2位置に向けて移動し、
前記可動枠が前記第2位置まで移動することで、前記搬送機構が前記対象トレーを前記奥行方向において前記固定枠よりも手前側の位置まで搬送することを特徴とする請求項6に記載のトレー保持装置。
前記作業者が着座姿勢にあるときに、前記第1駆動機構は、前記作業者が着座姿勢のままで行う操作を受け付けて前記係合部材を鉛直方向に移動させ、前記第2駆動機構は、前記作業者が着座姿勢のままで行う操作を受け付けて前記可動枠を前記奥行方向に移動させることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のトレー保持装置。
前記第2調整部材は、該第2調整部材の前記他方向側端部が、前記第2調整部材よりも前記他方向側に配置された他の調整部材の前記一方向側端部と所定の第2間隔を有して配設されるものであり、
前記第2間隔は、前記第1位置と前記第2位置との移動において、前記当接部が前記他の調整部材に当接しながら、前記係合部材が移動することが可能な経路の一部として構成され、
前記第2調整部材の前記他方向側端部は、前記係合部材が、前記第2間隔を含む経路から外れることを禁止することを特徴とする請求項11又は12に記載のトレー保持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された垂直循環式移動棚100では、トレー103が無端状の駆動チェーン101の前方部及び後方部に取り付けられているので、奥行方向に少なくともトレー103二個分のスペースが必要となる。また、駆動チェーン101の上側折り返し位置にトレー103が達したとき、当該トレー103とその下方位置にあるトレー103とが干渉するのを回避すべく、鉛直方向において上記二個のトレー103の間にスペースを確保する必要がある。かかるスペースを確保しようとすると、その分、トレー103の取り付け個数(厳密には、上下に並べるトレー103の個数)を少なくしなければならなくなる。この結果、装置内に保持可能なトレー数が減ってしまい、装置の稼働効率(分かり易くは、単位床面積あたりのトレー数)が低下してしまう。
【0008】
また、
図17に示すように、無端状の駆動チェーン101の下端部が着座姿勢の作業者の脚と干渉するのを回避すべく、当該下端部が床面から幾分上方に離間するように駆動チェーン101を構成する場合がある。かかる場合、トレー103の取り付け個数は、より一層少なくなるので、装置の稼働効率が低下してしまう。
更に、取り出し対象のトレー103が最も手前側の位置に達したとき、着座姿勢の作業者は、当該取り出し対象のトレー103よりも下方に位置するトレー103が自己の脚と干渉するのを回避しないように、取り出し対象のトレー103から幾分後退した位置に居るようになる。この結果、作業者は、取り出し対象のトレー103から後退した分だけ余計に手を伸ばさなければならなくなり、作業者にとっての作業性が低下してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の稼働効率や作業性を考慮しつつ、作業者がトレーの出し入れを容易に行うことが可能なトレー保持装置を提供することである。
本発明の他の目的は、可動に構成された部材の動きを補助する機能や、誤動作を禁止する機能を付与し、より信頼性の高いトレー保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明のトレー保持装置によれば、トレーを鉛直方向に複数並べて保持する固定枠と、該固定枠に対する前記トレーの出し入れ時に前記トレーを搬送する搬送機構と、を備えるトレー保持装置であって、前記搬送機構は、前記トレー保持装置の奥行方向において、前記固定枠と重なる第1位置と、該第1位置よりも手前側に位置する第2位置と、の間を移動する可動枠と、該可動枠に取り付けられ、前記トレーに設けられた被係合部と係合する係合部材と、を備え、該係合部材は、貫通孔を有する収容部を有し、前記被係合部が一方向側に載置される本体と、前記一方向側において前記収容部内に収容可能に形成され、前記本体を貫通して配置された係合部と、前記収容部内に配設されて、前記一方向側に突出する向きに前記係合部を付勢する弾性部材と、前記係合部における前記一方向側の逆側である他方向側に設けられて、前記本体外に配置される当接部と、を備え、前記固定枠には、前記可動枠における前記第1位置と前記第2位置との前記当接部の移動経路上に前記当接部の位置を調整する調整部材が配設されており、該調整部材は、前記当接部に当接することにより、前記当接部を介して前記係合部を前記他方向側に移動させて前記収容部内に収容させる、ことにより解決される。
【0011】
上記のトレー保持装置では、作業者が可動枠を第1位置と第2位置との間で移動させると、可動枠に設けられた係合部材の当接部が固定枠に設けられた調整部材に当接して移動する。そして、当接部と一体的に形成された係合部が、弾性部材の付勢に抗して収容部内に収容されてトレーの被係合部との係合が解除される。このため、作業者が可動枠を第2位置から第1位置に移動させるのみで、固定枠上の所定の位置にトレーを載置することができ、固定枠へのトレーの搬送が容易となる。
更に、上記のトレー保持装置ではトレーを奥行方向に並べる必要がないので、その分、奥行方向において装置の設置スペースを削減することが可能となる。
【0012】
そして、上記のトレー保持装置において、前記固定枠は、前記トレー保持装置の横幅方向における端部に、前記可動枠の前記第1位置と前記第2位置との奥行方向に沿って手前側に延出した延出部を備えており、該延出部の上面には、前記横幅方向における前記トレーの端部にて前記横幅方向に沿って突出して形成された前記被係合部が載置され、前記係合部材は、前記横幅方向における前記可動枠の端部に取り付けられており、前記被係合部のうち、前記横幅方向において前記延出部よりも外側にはみ出た部分と係合すると好ましい。
以上の構成では、係合部材が可動枠の横幅方向端部に取り付けられ、固定枠の横幅方向端部に設けられた延出部にトレーの被係合部が載置され、当該被係合部のうち、延出部よりも外側にはみ出た部分と係合部材が係合する。このような構成により、係合部材が他の部材と干渉することなく適切にトレーの被係合部と係合することが可能となる。
【0013】
また、前記調整部材は、前記延出部の横幅方向外側に固定されており、前記奥側に向かうほど前記他方向側に位置するように傾斜した手前側傾斜領域を手前側に有し、前記奥側に向かうほど前記一方向側に位置するように傾斜した奥側傾斜領域を奥側に有し、前記手前側傾斜領域及び前記奥側傾斜領域は、前記第1位置と前記第2位置との前記当接部の移動経路上に配設されていると好ましい。
上記構成によれば、調整部材が奥側傾斜領域及び手前側傾斜領域を手前側と奥側の両側に有することで、延出部上に被係合部を載置して第1位置から第2位置に向かう側である奥側に可動枠を移動させることのみで、奥側の傾斜面が当接部に当接して、当接部に固定された係合部が他方向側にある収容部内に移動し、延出部上の所定の位置にトレーを載置することができる。また、第1位置から第2位置に向かう側である手前側に可動枠を移動させる際に、手前側の傾斜面が当接部に当接して、上記同様係合部が他方向側にある収容部内に移動し、係合部が被係合部に干渉することを回避することができる。
【0014】
更に、前記係合部材は、前記本体から前記係合部側に突出して形成されて、前記係合部よりも前記第1位置側にあり、前記被係合部に係止する係止部を有すると好ましい。
上記構成によれば、前記第1位置から前記第2位置への前記可動枠の移動の際に、係止部に被係合部が係止するため、その状態で可動枠を移動させることで、固定枠からトレーを取り出すことができる。
【0015】
また、上記のトレー保持装置において、前記延出部上に、前記被係合部に当接するストッパが形成されており、該ストッパは、前記可動枠の前記第1位置と前記第2位置との間の移動の際に、前記係合部が前記収容部内に収容された状態となる位置であって、前記被係合部に当接する位置に形成されていることとしてもよい。
以上のようにストッパが形成されており、ストッパがトレーの被係合部に当接することで、可動枠の第1位置と第2位置との間の移動の際に、トレーを固定枠の延出部上に確実に載置することが可能となる。
【0016】
また、上記のトレー保持装置において、作業者が行う操作を受け付けて前記係合部材を鉛直方向に移動させる第1駆動機構と、前記作業者が行う操作を受け付けて前記可動枠を前記奥行方向に移動させる第2駆動機構と、を有し、前記係合部材は、前記可動枠に対して鉛直方向に移動可能な状態で取り付けられており、前記係合部材が前記被係合部と係合している間に前記可動枠が前記第2駆動機構によって前記係合部材と一体的に移動することで、前記搬送機構が前記奥行方向に沿って前記トレーを搬送し、前記被係合部と係合した状態の前記係合部材が前記第1駆動機構によって移動することで、前記搬送機構が鉛直方向に沿って前記トレーを搬送すると好ましい。
上記構成によれば、作業者が第1駆動機構及び第2駆動機構を操作すると、係合部材が鉛直方向に移動し、可動枠が係合部材と一体的にトレー保持装置の奥行方向に移動する。この結果、係合部材がトレーの被係合部と係合して、トレーを連れながら鉛直方向及び奥行方向に移動するようになる。すなわち、上記のトレー保持装置では、作業者が行う比較的簡易な操作によって、トレーを鉛直方向及び奥行方向に沿って搬送することが可能となる。
また、上記のトレー保持装置では各トレーを個別に搬送するので、特許文献1に記載の垂直循環式移動棚100のように、トレー同士の干渉を避けながら全トレーを一斉に移動させる都合上、トレー数(トレーの保持数)を減らす必要もない。このため、上記のトレー保持装置では、装置の稼働効率、すなわち、単位床面積あたりのトレー数が向上することとなる。
更に、各トレーを個別に搬送することで、搬送対象のトレー以外のトレーが作業者の脚に干渉する事態が回避される。この結果、作業者は、取り出し対象のトレーに対して極力近付いた位置で作業を行うことが可能となるので、余計に手を伸ばす必要がなく作業者にとっての作業性が向上することとなる。
【0017】
そして、上記のトレー保持装置において、前記固定枠に保持された複数の前記トレー中、対象トレーを前記トレー保持装置から取り出すために前記作業者が前記第1駆動機構を操作すると、前記第1駆動機構が、鉛直方向において前記対象トレーの前記被係合部と対応する位置へ前記係合部材を移動させ、前記係合部材が鉛直方向において前記対象トレーの前記被係合部と対応する位置に至った後に前記作業者が前記第2駆動機構を操作すると、前記第2駆動機構が、前記奥行方向において前記第1位置から前記第2位置に向けて前記可動枠を移動させ、前記可動枠が前記第1位置から前記第2位置に向けて移動する間に、前記係合部材が、前記対象トレーの前記被係合部と係合し、前記可動枠が前記対象トレーを連れながら前記第2位置に向けて移動し、前記可動枠が前記第2位置まで移動することで、前記搬送機構が前記対象トレーを前記奥行方向において前記固定枠よりも手前側の位置まで搬送するとよい。
以上の手順にてトレー保持装置の各部が動作することで、作業者にとって、トレー保持装置から一つのトレーを取り出して自分の手前位置まで搬送させることが容易になる。
【0018】
また、上記のトレー保持装置において、前記第2駆動機構は、前記作業者により操作される操作部を有し、該操作部中、前記作業者が操作時に触れる部分の少なくとも一部は、前記作業者が座っている椅子に接している床面から700mmだけ上方に位置していることとしてもよい。
椅子に座っている作業者の手は、一般に、床面から約700mmだけ上方に位置している。上記の構成では、作業者の手が届く範囲に操作部のうち、操作時に作業者が触れる部分が存在するので、作業性が向上することとなる。
【0019】
また、上記のトレー保持装置において、前記作業者が着座姿勢にあるときに、前記第1駆動機構は、前記作業者が着座姿勢のままで行う操作を受け付けて前記係合部材を鉛直方向に移動させ、前記第2駆動機構は、前記作業者が着座姿勢のままで行う操作を受け付けて前記可動枠を前記奥行方向に移動させることとしてもよい。
上記の構成であれば、作業者は、本発明のトレー保持装置を用いることで、着座姿勢のままトレーの出し入れ操作を行うことが可能となる。これにより、立位作業が困難な高齢者や車椅子で生活する障害者にとってトレーの出し入れ操作を組み込んだ作業が容易となり、かかる作業が行われる環境の改善を達成することが可能となる。
【0020】
また、上記のトレー保持装置において、前記固定枠は、育成中の種苗が載せられた前記トレーを、鉛直方向に複数並べて保持しており、前記搬送機構は、前記育成中の種苗が載せられた前記トレーを搬送することとしてもよい。
以上のように種苗が載せられたトレーを多段式で保持する場合は、鉛直方向においてトレー同士の間に間隔を確保する必要があり、また、複数の種苗を載せられるようにトレーの横幅についても十分に長く確保する必要がある。このため、奥行方向において設置スペースを省スペース化することが可能な本発明のトレー保持装置がより有効なものとなる。
【0021】
また、上記のトレー保持装置において、前記調整部材は、調整部材支持板を介して前記可動枠に取付けられており、前記調整部材支持板において、前記調整部材の前記他方向側(下方)には、前記調整部材の前記他方向側端部と所定の第1間隙をもって、第2調整部材が取付けられており、該第2調整部材の前記一方向側端部は、前記他方向側に移動した前記当接部と、直接的若しくは間接的に当接することにより、前記当接部に対して、前記一方向側への力を付与し、前記収容部内から前記係合部が前記一方向側に突出する補助を行うという形態がとられていてもよい。
このように構成されていることにより、当接部に対して、一方向側(通常、上方側となる)への力を付与し、収容部内から係合部が一方向側に突出する補助を行うことができる。
つまり、調整部材の作用により、他方向側(通常、下方向側となる)に引き出された係合部の他方向側端部(下方側端部)を一方向側(上方側)へと押圧し、係合部が一方向側(上方側)へ復帰するための補助力を付与することができ、よって、確実に係合部を復帰させることができる。
【0022】
更に、上記のトレー保持装置において、前記固定枠は、前記トレー保持装置の横幅方向における端部に、前記可動枠の前記第1位置と前記第2位置との奥行方向に沿って手前側に延出した延出部を備えており、前記調整部材は、前記延出部の横幅方向外側に固定されており、前記奥側に向かうほど前記他方向側に位置するように傾斜した手前側傾斜領域を手前側に有し、前記奥側に向かうほど前記一方向側に位置するように傾斜した奥側傾斜領域を奥側に有し、前記手前側傾斜領域及び前記奥側傾斜領域は、前記第1位置と前記第2位置との前記当接部の移動経路上に配設されるものであり、前記第2調整部材の前記一方向側端部には、前記手前側傾斜領域に沿った傾斜面である手前側ガイド斜面が備えられるとともに、前記奥側傾斜領域に沿った傾斜面である奥側ガイド斜面が備えられていると、好適である。
このように構成されていると、当接部が当接しながら移動する調整部材の各斜面に沿うように、第2調整部材の斜面が形成されるため、よりスムーズに、調整部材の作用により、他方向側(通常、下方向側となる)に引き出された係合部の他方向側端部(下方側端部)を一方向側(上方側)へと押圧し、係合部が一方向側(上方側)へ復帰するための補助力を付与することができる。
【0023】
また、更に、上記のトレー保持装置において、前記第2調整部材は、該第2調整部材の前記他方向側端部が、前記第2調整部材よりも前記他方向側に配置された他の調整部材の前記一方向側端部と所定の第2間隔を有して配設されるものであり、前記第2間隔は、前記第1位置と前記第2位置との移動において、前記当接部が前記他の調整部材に当接しながら、前記係合部材が移動することが可能な経路の一部として構成され、前記第2調整部材の前記他方向側端部は、前記係合部材が、前記第2間隔を含む経路から外れることを禁止するよう構成されていると好適である。
このように構成されていると、係合部材が、第2間隔を含む経路から外れた位置から当該経路に進入しようとした場合に、第2調整部材の他方向側端部(下端部)が障害となり、係合部材が当該進路に進入することを防止することができる。
つまり、係合部材が誤った位置にある場合には、可動枠は、第1位置と第2位置との間の移動を禁止される。
換言すれば、第2調整部材の他方向側端部(下端部)は、係合部材が、所定の移動経路(第2間隔を含む経路)から外れた位置を移動すること、つまり当該位置から外れることを禁止し、係合部材が正しい位置にあるときのみ可動枠の移動を許可することとなる。
よって、誤操作を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のトレー保持装置によれば、作業者がトレーの出し入れを容易に行うことが可能となる。また、本発明のトレー保持装置によれば、トレーの出し入れ時に当該トレーを安定して保持することが可能となるので、トレーを脱落させずに適切に搬送することが可能となる。更に、装置の稼働効率や作業性を確保することができる。
更に、トレーを保持する部材の動作を補助する機能や、誤動作防止の機能を備えることにより、より信頼度の高い装置を提供することができる。
以上のように、本発明のトレー保持装置を利用することにより、障害者等を雇用してトレーの出し入れを伴う作業を行ってもらう際に、障害者等に与える身体的な負担が軽減されるように就労環境を整備することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について図面を参照しながら説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。特に、以下に述べる各部材の形状、材質及び配置位置等については、下記の実施形態に限定されるものではなく、適宜なものに変更することが可能である。
【0027】
<<本実施形態に係るトレー保持装置1の基本構成>>
先ず、本実施形態に係るトレー保持装置(以下、本装置1)について、
図1乃至
図4を参照しながら、その基本構成を説明する。
図1は、本装置1の全体像を示す模式図である。
図2は、トレー2の斜視図である。
図3及び
図4は、本装置1からトレー2を取り出す様子を示す図である。なお、
図1、
図3及び
図4では、本装置1を幾分簡略化して図示しており、トレー2上の被載置物や後述する第1駆動機構7及び第2駆動機構8等については図示を省略している。
【0028】
本装置1は、
図1に示すように、多段型の棚であり、棚板であるトレー2を鉛直方向に複数並べた状態で保持するものである。トレー2は、
図2に示すように、上面視で長方形状の板となっており、出し入れ自在な状態で本装置1に保持されている。また、トレー2の上面には作業対象物が載置されており、本実施形態では、育成中の種苗が収容されたポットが載置されている。より具体的に説明すると、本装置1は、植物栽培工場で育成中の種苗を管理するための育苗棚として用いられる。そして、各トレー2上のポット内に収容された種苗は、所定の生育段階(例えば、定植可能な段階)となるまで本装置1内で育てられることになる。すなわち、本装置1は、育成中の種苗が載せられたトレー2を鉛直方向に複数並べて保持している。なお、本実施形態では、種苗が個体毎にポットに入れられた状態でトレー2に載せられていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、トレー2上に発泡スチロールやアクリル材の板体(定植板)を置き、この板体に設けられた複数の穴の各々に種苗を植え込むことによって当該種苗をトレー2上に載せることとしてもよい。
【0029】
また、本装置1内には種苗に対して光を照射する光源(不図示)が設置されており、より具体的には、各トレー2の上方位置に設置されている。これによりトレー2に向けて照射される光の照射量(照射強度)がトレー2の間で略均一となる。同様に、本装置1内には種苗に対して水や養液を散水するために、散水用ノズル(不図示)が各トレー2の上方位置に設置されており、これによりトレー2に対する散水量がトレー2間で略均一となる。
【0030】
また、各トレー2の幅(トレー2の長手方向における長さ)については、作業効率の観点から極力多くのポットが載置されるように幾分長く設計されている。したがって、トレー2を保持する本装置1についても、その横幅方向における長さが幾分長くなるように構成されている。ここで、本装置1の「横幅方向」とは、本装置1の奥行方向及び鉛直方向と交差する方向であり、装置内に保持されたトレー2の長手方向と沿う方向である。
一方、本装置1では、鉛直方向においてトレー2上のポット内に収容された種苗が上方のトレー2と接触するのを回避する目的から、トレー2同士の間に所定高さの隙間を設けている。
【0031】
ところで、所定の生育段階まで成長した種苗が収容されたポットについては、それが載せられたトレー2を本装置1から取り出して次の工程に移行させることとなる。また、新たに播種したポットについては、トレー2に載置した後、当該トレー2とともに本装置1の所定位置に入れ込むこととなる。このようにポット内の種苗に対して所定の作業を行う場合、それに付随してトレー2の出し入れを行う必要がある。
【0032】
そして、本装置1によれば、トレー2の出し入れ作業を行う作業者は、椅子等に着座したままの状態で当該出し入れ作業を行うことが可能となる。つまり、本装置1を採用する植物栽培工場では、例えば長時間の立位作業が困難な高齢者や車椅子で生活する障害者にとって、着座姿勢のままでトレー2の出し入れを容易に行うことが可能となる。
【0033】
本装置1を用いたトレー2の出し入れ作業について
図1、
図3及び
図4を参照しながら説明する。トレー2の出し入れ作業について説明するにあたり、本装置1の構造について概説すると、本装置1は、床に対して固定された固定枠3を備え、固定枠3には複数のトレー2が鉛直方向に並んだ状態で保持されている。また、本装置1は、固定枠3に対するトレー2の出し入れ時にトレー2を搬送する搬送機構4を備えている。この搬送機構4は、ポットが載置された状態のトレー2(すなわち、育成中の種苗が載せられたトレー2)を搬送するものであり、固定枠3に対して相対移動可能な可動枠5と、可動枠5に取り付けられたトレー捕捉機構と、を有する。
【0034】
可動枠5は、固定枠3に対して本装置1の奥行方向(以下、単に奥行方向)にスライド移動することで、固定枠3と重なる通常位置と、通常位置よりも手前側に位置する作業時位置との間を移動する。ここで、「通常位置」とは、本発明の第1位置に相当し、具体的には
図1に示す可動枠5の位置であり、可動枠5の内側に固定枠3を収容する位置である。また、「作業時位置」とは、本発明の第2位置に相当し、具体的には
図3や
図4に示す可動枠5の位置であり、固定枠3の直ぐ手前側に位置して固定枠3と隣り合う位置である。
【0035】
トレー捕捉機構は、トレー2の長手方向両端部(換言すると、本装置1の横幅方向におけるトレー2の両端部)と係合してトレー2を捕捉するものである。トレー捕捉機構により捕捉されたトレー2は、
図3や
図4に示すように、可動枠5の内側に位置するようになる。
また、トレー捕捉機構は、可動枠5に対して鉛直方向に移動可能に構成されており、トレー捕捉機構の上下動によって同機構に捕捉されたトレー2が、可動枠5内を鉛直方向に移動するようになる。
【0036】
そして、トレー捕捉機構は、可動枠5に対して取り付けられているので、トレー捕捉機構がトレー2を捕捉した状態で可動枠5が奥行方向にスライド移動すると、トレー2が可動枠5に連れられて奥行方向に可動枠5とともに移動するようになる。
【0037】
次に、以上のように構成された本装置1からトレー2を取り出す手順について説明する。
トレー2の出し入れ作業を行うにあたり、作業者は、本装置1の手前位置まで移動し、更に、固定枠3に保持された複数のトレー2中から一つのトレー2を対象トレーとして選択する。対象トレーを選択した後、作業者は、着座姿勢のままの状態で所定の操作を行う。かかる操作は、トレー捕捉機構を上下動させるための操作であり、当該操作が行われると、トレー捕捉機構は、鉛直方向において対象トレーと対応する位置まで移動する。ここで、「対象トレーと対応する位置」とは、当該位置から奥行方向手前側に向かってトレー捕捉機構が移動した際に対象トレーを捕捉することが可能な位置である。
【0038】
その後、作業者は、着座姿勢のままの状態で第2の操作を行う。かかる操作は、通常位置にある可動枠5を作業時位置に向けて移動させるための操作であり、当該第2の操作が行われると、対象トレーを捕捉した状態のトレー捕捉機構とともに可動枠5が奥行方向にスライド移動する。そして、可動枠5が作業時位置に到達すると、対象トレーが奥行方向において固定枠3の手前位置に到達するようになる。その後、作業者が着座姿勢のままで再びトレー捕捉機構を上下動させるための操作を行うと、トレー捕捉機構が対象トレーを保持しながら上下動する。かかる上下動により対象トレーが所定の高さ(例えば、作業者が対象トレー上のポットを取り扱える程度の高さ)に到達すると、トレー2の取り出し作業が完了する。
また、以上の手順を逆に辿れば、作業者の手前に位置するトレー2を固定枠3の所定位置に入れ込む作業が行われるようになる。
【0039】
なお、上記の可動枠5及びトレー捕捉機構は、それぞれ、作業者が行う操作が伝達されることにより、当該操作量に応じた距離だけ移動する。すなわち、本実施形態では、可動枠5及びトレー捕捉機構は、人力駆動のものであり、作業者は、可動枠5及びトレー捕捉機構の各々の移動量に応じた量だけ操作を行うこととなる。かかる構成により、電動型の可動枠5及びトレー捕捉機構を用いる構成では得られない効果が得られ、例えば、消費電力の削減、作業者の尊厳維持、及び、作業者にリハビリの機会を提供する等の副次的効果が得られるようになる。ただし、作業者の負担を軽減するために、適宜、電動アシスト機構を本装置1に搭載することとしてもよい。
【0040】
以上のように本装置1では、作業者が着座姿勢の状態で行う操作によって、トレー2を鉛直方向及び奥行方向に沿って搬送することが可能となる。一方、本装置1ではトレー2を奥行方向に並べる必要がないことに加え、通常時には、可動枠5分の設置面積内に本装置1の略全体が収まるようになる。これにより、奥行方向において装置設置スペースがより省スペース化されることになる。
【0041】
また、本装置1では、トレー2を個別搬送することが可能であるので、トレー2同士の干渉を避けながらすべてのトレー2を一斉に搬送する理由からトレー数を減らす(間引く)必要がない。このため、本装置1では、装置の稼働効率(すなわち、単位床面積あたりのトレー数)を比較的高水準で確保することが可能となる。更に、トレー2の出し入れ時には、対象トレーのみを移動させるので、対象トレー以外のトレー2が作業者の脚に干渉する事態が回避される。この結果、着座姿勢の作業者は、対象トレーに対して極力近付いた位置で作業を行うことが可能となり、余計に手を伸ばす必要がなく効率よく作業を行うことが可能となる。
【0042】
<<本実施形態に係るトレー保持装置1各部の構成>>
本装置1は、前述したように、固定枠3と搬送機構4とを備えており、搬送機構4は、可動枠5と、トレー捕捉機構としての係合部材6と、第1駆動機構7と、第2駆動機構8とを有する。第1駆動機構7は、着座姿勢の作業者が行う操作を受け付けて係合部材6を鉛直方向に移動させる機構である。第2駆動機構8は、着座姿勢の作業者が行う操作を受け付けて可動枠5を奥行方向に移動させる機構である。
以下、本装置1に保持されるトレー2の構成、及び、上述した本装置1各部の構成を、それぞれ個別に説明する。
【0043】
(トレー2について)
トレー2は、
図2に示す外形形状を有しており、ポットの載置面を構成する板部2aと、板部2aの下面に取り付けられた略角柱状の土台部2bとを有する。土台部2bは、トレー2の長手方向に沿って延びており、トレー2の奥行方向において手前側と奥側にそれぞれ1つずつ設けられている。ここで、トレー2の奥行方向とは、本装置1に保持されているとき、あるいは、本装置1に対して出し入れするときに本装置1の奥行方向と略一致する方向である。また、「奥側(手前側)」とは、本装置1に保持されているとき、あるいは、本装置1に対して出し入れするときの奥側(手前側)のことである。
【0044】
また、各土台部2bの両端部は、
図2に示すように、板部2aの長手方向端よりも外側に幾分突出している。このように土台部2bの両端部は、トレー2の長手方向に沿って突出した突出部2cを形成している。突出部2cは、トレー2の四隅部近傍の四箇所から長手方向外側に延在している。
【0045】
(固定枠3について)
固定枠3は、
図5及び
図6に図示する形状となるように組み立てられた金属製又は樹脂製の枠体である。
図5及び
図6は、固定枠3の概略図であり、
図5は、固定枠3の側面図を、
図6は、固定枠3の正面図をそれぞれ示している。
【0046】
また、固定枠3は、固定枠3の後端部をなす基部枠3aと、基部枠3aの左右両端に設けられ奥行方向に沿って手前側に延出している延出部3bと、を備えている。延出部3bは、横幅方向において間隔を空けて左右に並んで対を成しており、また、左右一対の延出部3bが、本装置1のトレー保持数と同数だけ設けられており鉛直方向に並んでいる。そして、左右一対の延出部3bの上面にトレー2の突出部2cが載置されることで、
図3に示すように、当該トレー2が固定枠3に保持されるようになる。
そして、複数対の延出部3bにおけるそれぞれの横幅方向外側の側面には、
図5及び
図6に示すように、主としてトレー2を延出部3bに載置するための調整部材10が所定の位置に固定されている。調整部材10の形状及び機能等の詳細については後述する。
また、左右一対の延出部3bの上面にトレー2の突出部2cが載置された状態では、
図1に示すように、当該突出部2cの先端部分が横幅方向において延出部3bよりも幾分外側にはみ出ている。
【0047】
(可動枠5について)
可動枠5は、
図7及び
図8に図示の外観を有する金属製又は樹脂製の枠体であり、その下端にはキャスタ5xが付いている。
図7及び
図8は、可動枠5の概略図であり、
図7は側面図を、
図8は正面図をそれぞれ示している。
可動枠5は、横幅方向及び奥行方向において、固定枠3よりも一回り大きく形成されており、通常時には
図1に示す位置、すなわち、通常位置に配置され、かかる通常位置にあるとき、可動枠5の内側に固定枠3が収容されている。そして、可動枠5は、固定枠3の側端部に沿うように奥行方向にスライド移動することで、通常位置と作業時位置との間を移動する。
【0048】
また、可動枠5の両側端部(本装置1の横幅方向における可動枠5の両端部)は、それぞれ、
図7に示すように矩形状の囲み部5aを形成しており、その内側には駆動チェーン11が設置されている。この駆動チェーン11は、囲み部5a内に複数設けられた滑車12の間に掛け回されて無端経路を形成し、各滑車12は、囲み部5aによって回転自在に支持されている。したがって、各滑車12が回転すると、これに連動する形で駆動チェーン11が循環移動するようになる。
【0049】
一方、駆動チェーン11には、
図7に示すように、トレー2の手前側の突出部2cを支持する係合部材6、及び奥側の突出部2cを支持する直方体状の支持片26が取り付けられている。本実施形態では、トレー2が水平の姿勢に保たれるように、突出部2cが載置される係合部材6の後述する本体6aの上面と支持片26の上面とは、同じ高さに位置するように駆動チェーン11に取り付けられている。このように可動枠5の両側端部には、駆動チェーン11を介して係合部材6及び支持片26が取り付けられている。このため、可動枠5は、奥行方向にスライド移動する際、係合部材6及び支持片26と一体的にスライド移動することになる。
【0050】
(係合部材6について)
次に、係合部材6の構成について、
図9及び
図10を参照して説明する。ここで、
図9(A)は、係合部6iが突出部2cに係合する状態の係合部材6を示す斜視図、
図9(B)は、係合部6iが突出部2cに係合しない状態の係合部材6を示す斜視図であり、
図10(A)は、係合部6iが突出部2cに係合している状態を、一部に断面を用いて示す正面図、
図10(B)は、係合部6iが突出部2cに係合していない状態を、一部に断面を用いて示す正面図である。
【0051】
係合部材6は、可動枠5の奥側への移動に伴って、トレー2を延出部3b上に自動的に載置したり、逆に、可動枠5の手前側への移動に伴って、延出部3b上に載置されたトレー2を自動的に取り出したりする機能を有する。
係合部材6は、収容穴6eを有する本体6aと、この本体6aの一部を囲む側壁6b、係止壁6c及び天壁6dと、収容穴6e内に収容された圧縮ばね6f及び一部を収容された係合部6iと、係合部6iに一体的に形成されて調整部材10に当接する当接片6gと、から主に構成される。
【0052】
本体6aは、トレー2の突出部2cを上側(本発明に係る一方向側)の面に載置するためのものであり、直方体状に形成されており、上下に延在して横幅方向に平行に二本形成された有底の収容穴6eを有する。収容穴6eは、後述する係合部6i及び圧縮ばね6fを収容するためのものである。また、収容穴6eの底の一部は、本体6aの下面まで貫通して形成されている。この貫通部分に、収容穴6eと本体6a外部とを連通する後述する連通棒6hが通されており、この連通棒6hには、本体6aの外に突出する後述する当接片6gが一体的に形成されている。
【0053】
側壁6b、係止壁6cは、本体6aの隣接する二側面に取り付けられており、本体6aの二側面のうち、それぞれが取り付けられた面の幅に略一致する幅で形成されており、本体6aよりも上方に延在して形成されている。
特に、係止壁6cは、後述する二本の係合部6iが形成する面に平行に配設されている。なお、係止壁6cは、後述するように、突出部2cを係止可能なように本体6aよりも上方に延在していればよく、壁状のものに限定されず、ブロック状であってもよく、横幅方向に配設された2以上の突起から成るものであってもよい。
天壁6dは、本体6aと側壁6b及び係止壁6cを上方に投射したものと略同じ大きさで、本体6aの上面に平行に形成されており、側壁6b及び係止壁6cの上面にその下面を固定されている。
【0054】
圧縮ばね6fは、次に説明する係合部6iを上方に付勢する機能を有し、本体6aに形成された二本の収容穴6eのそれぞれに一個ずつ収容されている。また、圧縮ばね6fは、その下端が収容穴6eの底に当接するように配置されている。
【0055】
係合部6iは、トレー2の突出部2cに係合して、係合部材6の移動に伴ってトレー2を移動させる機能を有し、上下に長いピン状であり、二個配設されている。二個の係合部6iのそれぞれは、収容穴6eに下側の一部が収容されており、圧縮ばね6fの上端に下面が当接するように配設されている。
また、係合部6iの下面には、連通棒6hが下方に延在して一体的に形成されている。
連通棒6hは、収容穴6eの貫通部分を通って係合部6iと当接片6gとを接続する機能を有し、係合部6i及び圧縮ばね6fの内径よりも小径である。ここで、本発明に係る係合部は、係合部6iと連通棒6hとが一体的に形成されたものに係る概念である。
当接片6gは、固定枠3の延出部3bの側面に固定された後述する調整部材10に当接することにより、連通棒6hを介して係合部6iを上下方向に移動させる機能を有する。当接片6gは、棒状であり、可動枠5の横幅方向内側に本体6aから突出するように延在しており、その上面において二本の連通棒6hの下側(本発明に係る他方向側)と一体的に接続されている。
【0056】
ここで、当接片6gに当接する調整部材10は、長方形状の取付部10aと、取付部10aの下側に連続して形成された倒立台形状の傾斜領域10bとを有し、上記のように、当接片6gに当接することで、係合部6iの本体6aからの突出高さを調整する機能を有する。
傾斜領域10bは、奥側に向かうほど下方に位置するように傾斜した面である手前側傾斜部10cと、手前側傾斜部10cの奥側端部から水平に延出する面である水平部10dと、水平部10dの奥側端部から奥側に向かうほど上方に位置するように傾斜した面である奥側傾斜部10eとから構成される。つまり、手前側傾斜部10c及び奥側傾斜部10eは、鉛直面から下方側に向くように、奥行方向において略対称に傾斜した面である。
調整部材10は、
図5及び
図6に示すように、複数の延出部3bのそれぞれに一個ずつ取り付けられている。具体的には、調整部材10は、延出部3bにおける固定枠3の横幅方向外側の側面に取付部10aで取り付けられている。
【0057】
そして、係合部材6の係止壁6c及び係合部6iは、トレー2を捕捉するためにトレー2に設けられた被係合部、具体的にはトレー2の長手方向端部に設けられた突出部2cと係合する。より厳密に説明すると、左右一対の延出部3bの上面にトレー2の突出部2cが載置された状態では、当該突出部2cの先端部分が、横幅方向において延出部3bよりも幾分外側にはみ出ており、係合部材6は、外側にはみ出た突出部2cの先端部と係合する。
【0058】
また、トレー2の長手方向両側に突出部2cが設けられていることに対応して、係合部材6も同様に可動枠5の横幅方向両側に設けられている。すなわち、トレー2は、二個の係合部材6によって捕捉されることになる。
【0059】
係合部材6の配置位置について説明すると、前述したように、可動枠5の両側端部に形成された囲み部5aの内側に配置された駆動チェーン11の手前側に係合部材6及び奥側に支持片26が取り付けられている。そして、横幅方向両端部にある囲み部5aのそれぞれに、同じ高さで係合部材6及び支持片26が取り付けられている。
【0060】
また、本実施形態では、係合部材6及び支持片26が可動枠5に対して鉛直方向に移動可能な状態で取り付けられている。より具体的に説明すると、駆動チェーン11が循環動作を行うと、駆動チェーン11に取り付けられた二個の係合部材6及び支持片26は、互いの位置関係を保ちながら鉛直方向に移動するようになる。係合部材6の詳細な動作については後述する。
【0061】
(第1駆動機構7について)
第1駆動機構7は、着座姿勢の作業者により操作され、当該操作量に応じた移動量だけ係合部材6及び支持片26を鉛直方向に移動させるものであり、前述した駆動チェーン11及び滑車12の他、操作受付機構13を備えている。
操作受付機構13は、作業者の操作を受け付けて当該操作を所定の滑車12に伝達するものである。具体的な構成について説明すると、操作受付機構13は、
図11に示すように、二個の操作レバー14、15と、伝達ギア16と、リンク17と、滑車側ギア18と、不図示の変換機器とを有する。
図11は、第1駆動機構7の説明図であり、第1駆動機構7の構成例を示す模式図である。
【0062】
操作レバー14、15は、可動枠5における一方の側端部の上方部分から吊り下がっており、不図示の変換機器及びリンク17を介して伝達ギア16に連結されている。ここで、一方の操作レバー14を引くと、当該レバー操作が変換機器に伝達される。変換機器は、伝達されたレバー操作(換言すると、操作レバー14の下降動作)を、リンク17を通じて伝達ギア16の回転運動に変換する。これにより、伝達ギア16は、
図11中、白抜き矢印にて示す方向に回転するようになる。
【0063】
そして、伝達ギア16は、所定の滑車12に取り付けられた滑車側ギア18とチェーン等の連結部材を介して連結している。したがって、伝達ギア16が回転すると、滑車側ギア18が従動して上記所定の滑車12とともに回転する。この結果、駆動チェーン11が循環動作し、最終的に、駆動チェーン11に取り付けられている係合部材6及び支持片26が上昇するようになる。
なお、可動枠5における両側端部のうち、一方の側端部に設けられた滑車側ギア18が回転すると、その回転運動が、
図8に図示の伝達バー19によって他方の側端部に設けられた滑車側ギア18に伝達される。これにより、他方の側端部側でも駆動チェーン11が循環動作し、当該駆動チェーン11に取り付けられている係合部材6及び支持片26が上昇するようになる。したがって、第1駆動機構7の機能によって係合部材6及び支持片26が上昇する際には、可動枠5に取り付けられた二個の係合部材6及び二個の支持片26が同時に上昇することになる。
【0064】
同様に、もう一方の操作レバー15を引くと、当該レバー操作が変換機器に伝達され、変換機器とリンク17との協働により、伝達ギア16が
図11中、黒抜き矢印にて示す方向に回転する。これに連動して、滑車側ギア18が回転する結果、駆動チェーン11が循環動作し、最終的に係合部材6及び支持片26が下降するようになる。この場合においても、上述の如く、可動枠5に取り付けられた二個の係合部材6及び二個の支持片26が同時に下降することになる。
【0065】
なお、本実施形態において、上記の変換機器には、操作レバー14、15を引いたときに伝達ギア16を所定の回転量だけ回転させた上で操作レバー14、15を元の位置に復帰させる機構が備わっている。かかる機構により、本実施形態では、操作レバー14、15を一回引くと、係合部材6及び支持片26が一定の移動量だけ上下動することになっている。ここで、1回のレバー操作に対応する係合部材6及び支持片26の移動量については、固定枠3におけるトレー2間の間隔(鉛直方向における間隔)に1/n(nは自然数)を乗じた量に調整することが望ましい。
【0066】
以上のように構成された第1駆動機構7を作業者が操作すると(具体的には、操作レバー14、15を引くと)、可動枠5に対して係合部材6及び支持片26が鉛直方向に移動することになる。このとき、係合部材6及び支持片26上にトレー2の突出部2cが支持された状態にあれば、当該トレー2が鉛直方向に沿って搬送されることとなる。換言すると、本装置1に搭載された搬送機構4は、トレー2の突出部2cを支持した状態の係合部材6及び支持片26を鉛直方向に移動させることで、当該トレー2を鉛直方向に沿って搬送することとなる。
【0067】
(第2駆動機構8について)
第2駆動機構8は、着座姿勢の作業者により操作され、当該操作量に応じた移動量だけ可動枠5を奥行方向に移動させるものである。第2駆動機構8は、
図12に示すように、操作部としての操作ホイール21と、回動アーム22と、位置決めアーム23と、ホイール側ギア24と、キャスタ側ギア25と、不図示の伝達機構と、を備えている。
図12は、第2駆動機構8の説明図であり、第2駆動機構8の構成例を示す模式図である。
【0068】
操作ホイール21は、作業者の操作を受け付ける部分であり、本装置1の横幅方向と平行な回転軸を中心に回転する。そして、作業者が操作ホイール21の外周面に手を掛けて操作ホイール21を回転させると、操作ホイール21に取り付けられたホイール側ギア24が回転する。この回転によって、ホイール側ギア24とチェーン等の連結部材を介して連結しているキャスタ側ギア25が回転するようになる。そして、キャスタ側ギア25の回転に伴って、キャスタ5xが転動する結果、可動枠5が奥行方向に移動するようになる。ここで、可動枠5は、
図12中、白抜き矢印が示す方向に操作ホイール21を回転させると手前側に移動し、黒抜き矢印が示す方向に操作ホイール21を回転させると奥側に移動する。
なお、上記のキャスタ側ギア25は、可動枠5の横幅方向一端側に設けられたキャスタ5xに対して設けられているが、当該キャスタ5xの転動動作は、
図8に図示の伝達バー20によって他端側のキャスタ5xに伝達されるようになっている。これにより、キャスタ側ギア25が回転すると、可動枠5の横幅方向両端部のキャスタ5xが同時に転動するようになる。
【0069】
回動アーム22は、その先端部に操作ホイール21が支持された状態で回動することにより操作ホイール21の位置を変化させるものである。位置決めアーム23は、その先端部に操作ホイール21が支持されており、回動アーム22の回動によって操作ホイール21の位置が変化することに伴って動き、かつ、操作ホイール21の位置が所定位置に達した時点で回動アーム22の回動を規制するものである。上記の回動アーム22と位置決めアーム23とが協働することで、操作ホイール21は、通常時には
図8に示すように可動枠5の脇位置に位置し、操作時には
図12に示すように可動枠5よりも幾分手前側に位置するようになる。このように操作ホイール21が作業者の操作を受け付けるにあたって手前位置に移動することで、作業者は、操作時に操作ホイール21の外周面に容易にアクセスすることが可能となる。
【0070】
また、操作ホイール21が上述した操作時の位置にあるとき、操作ホイール21の外周面のうち、着座姿勢の作業者が操作時に実際に触れる部分の少なくとも一部が、着座姿勢の作業者が座っている椅子に接している床面から700mmだけ上方に位置している。通常、着座姿勢の作業者の腕は、床面の上方700mm付近に位置している。このため、上記の構成であれば、着座姿勢の作業者の手が届く範囲に操作ホイール21のうち、操作時に作業者が触れる部分が存在することになり、作業性が向上することとなる。
なお、作業性をより一層向上させる上で、ホイール側ギア24とキャスタ側ギア25との間のギア比については、好適な値に設定しておくことが望ましい。
【0071】
以上のように構成された第2駆動機構8を作業者が操作すると(具体的には、操作ホイール21を回転させると)、可動枠5が係合部材6及び支持片26とともに奥行方向に移動することになる。このとき、係合部材6がトレー2の突出部2cと係合した状態にあれば、当該トレー2が奥行方向に沿って搬送されることとなる。換言すると、本装置1に搭載された搬送機構4は、係合部材6がトレー2の突出部2cと係合している間に可動枠5が係合部材6とともに奥行方向に移動することで、上記トレー2を奥行方向に沿って搬送することとなる。
【0072】
<<本実施形態に係るトレー保持装置1の動作例>>
(第1駆動機構7及び第2駆動機構8の動作)
次に、本装置1の動作例として、所定の固定枠3(厳密には、トレー2が無く空いている固定枠3)の所定位置にトレー2を入れ込む手順について説明する。
固定枠3にトレー2を入れ込むにあたり、作業者は、トレー2の四隅近傍から突出する四本の突出部2cのうち、奥側の二本のそれぞれを可動枠5の奥側にある二個の支持片26のそれぞれに載置する。これとともに、作業者は、四本の突出部2cのうち手前側の二本のそれぞれを、可動枠5の手前側にある二個の係合部材6のそれぞれにおける係止壁6cと二本の係合部6iとの間であって本体6a上に載置する(
図10(A)参照)。
そして、作業者は、固定枠3よりも幾分手前の位置に可動枠5とともに移動し、固定枠3の複数の延出部3bのうち、トレー2を入れ込む延出部3bを選定する。この際、作業者は、着座姿勢となっている。
【0073】
その後、着座姿勢の作業者は、第1駆動機構7が備える操作レバー14、15のうちの一方を引き下げる操作を行う。かかるレバー操作は、係合部材6及び支持片26に支持されたトレー2を、選定された延出部3bの高さまで移動させるために行われるものである。第1駆動機構7は、当該レバー操作を受け付けることにより、可動枠5の横幅方向端部にそれぞれ設けられた係合部材6及び支持片26を同時に移動させ、厳密には、1回のレバー操作あたりに所定量だけ上下動させる。そして、作業者は、鉛直方向において延出部3bの上面と対応する位置に、係合部材6の本体6aの上面及び支持片26の上面が到達するまで、上記のレバー操作を繰り返す。
【0074】
係合部材6の本体6aの上面及び支持片26の上面が選定した延出部3bの上面と鉛直方向において略一致する位置に至った後、着座姿勢の作業者は、第2駆動機構8が備える回動アーム22を回動させて、可動枠5の横脇に位置する操作ホイール21を手前位置に引き出す。そして、作業者が操作ホイール21の外周面に手を掛けて操作ホイール21を回転させると、第2駆動機構8が当該ホイール操作を受け付けて、通常位置にある可動枠5を作業時位置に向けて奥行方向に沿ってスライド移動させる。
この可動枠5の奥側へのスライド移動によって、係合部材6が奥側に移動することとなり、二個の係合部材6は、延出部3bの横幅方向外側に固定された二個の調整部材10と係合するようになる。トレー2は、係合部材6と調整部材10との係合により、自動的に固定枠3の延出部3b上に載置されることとなる。この係合部材6の動作については後述する。
【0075】
その後、可動枠5が固定枠3に重なる通常位置に到達すると、作業者は、着座姿勢で第1駆動機構7が備える操作レバー14、15を操作して、係合部材6を後述する所定の位置に上昇又は下降させる。そして、第2駆動機構8を駆動して、固定枠3から可動枠5を手前側に引き離して、トレー2の搬入作業が完了する。
【0076】
また、詳細については後述するが、上記の第1駆動機構7及び第2駆動機構8に係る一連の手順を逆に辿るように本装置1の各部が動作することにより、着座姿勢の作業者は、固定枠3に保持されたトレー2を可動枠5に取り出すことが可能となる。
【0077】
(固定枠3へのトレー2の載置)
次に、可動枠5の奥側へのスライド移動に伴って、係合部材6が固定枠3の調整部材10と係合し、自動的にトレー2が延出部3b上に載置されるまでの一連の流れについて、
図13を参照しながら説明する。
図13の(A)乃至(D)は、係合部材6がトレー2を延出部3bに載置する過程を示す図であり、(A)、(B)、(C)、(D)の順に状態が変化するものとする。なお、係合部材6が調整部材10と係合するまでの一連の流れについては、可動枠5の横幅方向の両端部で共通しているので、以下では、可動枠5の横幅方向一端側のみに着目して説明する。
【0078】
可動枠5の手前側であって、延出部3bよりも横幅方向外側に設けられた係合部材6は、可動枠5の奥側へのスライド移動に伴って、
図13(A)に示すように奥側に移動する。このとき、係合部材6は、前述したように、鉛直方向において固定枠3の調整部材10と対応する位置にある。
より厳密に説明すると、横幅方向においては、当接片6gは本体6aの横幅方向内側に突出しており、横幅方向外側に延出部3bから突出する調整部材10に係合部材6のうち当接片6gのみが重なる位置にある。
また、高さ方向においては、自然状態における係合部材6の当接片6gの上端は、調整部材10の傾斜領域10bの上端と下端の間の位置にある。更に、詳細には後述するが、調整部材10に当接することによって、係合部6iが収容穴6eに収容されるように、当接片6gの上端から調整部材10の下端までの長さは、自然状態における係合部材6の係合部6iの上端が本体6aからの突出する長さよりも長い。
【0079】
そして、可動枠5の奥側へのスライド移動により、係合部材6が対応する調整部材10に近付く。そして、
図13(B)に示すように、係合部材6の当接片6gが、調整部材10の手前側傾斜部10cに当接して垂直抗力を受けることによって、圧縮ばね6fの付勢力に抗して下方に移動する。
【0080】
これに伴って、当接片6gに連通棒6hを介して固定された係合部6iが、本体6aの収容穴6e内に収容される下方向に移動し、本体6aからの突出量が小さくなる。そして、
図13(C)に示すように、当接片6gが、傾斜領域10bの水平部10dに当接する位置まで移動すると、係合部6iが完全に収容穴6e内に収容される。このため、係合部6iによる手前側からの支持がなくなった突出部2cは、接触する延出部3bの上面から受ける摩擦力によって、その位置に留まり、トレー2が固定枠3の延出部3b上に載置されることとなる。
【0081】
なお、このように、延出部3bの摩擦力を生じさせるためには、延出部3bに接触する必要が当然にある。このため、係合部材6の本体6aの上面は、延出部3bの上面と同じか、若干低めに配置されている。
特に、本体6aの上面が延出部3bの上面よりも低い場合には、可動枠5の奥側への移動の際に、本体6aに載置された突出部2cが延出部3bにおける手前側の端部の角に当接することとなる。よって、その移動が阻害されないように、その手前側の端部の角は、その高さの差以上に面取りされている。更に、突出部2cが延出部3b上を奥行方向に移動する際に係合部6iが突出部2cの手前側の面を支持可能なように、自然状態の係合部6iが延出部3bの上面よりも上方に突出している。
【0082】
そして、係合部材6が調整部材10を通過して奥側に移動すると、当接片6gに加わる調整部材10からの下方への荷重がなくなる。このため、調整部材10に連結された係合部6iは、圧縮ばね6fの上方への付勢力によって、本体6aから上方に突出することとなる。
【0083】
そして、係合部材6が、調整部材10を通過して調整部材10の奥側に位置した状態において、上記のように、第1駆動機構7を駆動して、係合部材6及び支持片26を鉛直方向に移動させる。
ここで、他の延出部3b上に載置された他のトレー2を取り出さず、可動枠5を固定枠3から引き離す場合には、係合部材6及び支持片26の手前側の移動に固定枠3及びトレー2が干渉しない位置に鉛直方向に移動させることとなる。
具体的には、任意の延出部3b上に載置されたトレー2の突出部2cの上方から調整部材10の下方の範囲内に係合部材6及び支持片26が収まる高さ、又は、トレー2が載置されていない延出部3bの調整部材10に対応する高さに係合部材6及び支持片26を移動させることとなる。そして、第2駆動機構8を駆動して、固定枠3から可動枠5を手前側に引き離す。
一方、他のトレー2を取り出す場合は、
図14(a)を参照して次に説明するように、本体6aの上面が他の延出部3bの上面と同じか、若干低い位置となるように係合部材6及び支持片26を移動させることとなる。
【0084】
(固定枠3からのトレー2の搬出)
次に、可動枠5の手前側へのスライド移動に伴って、係合部材6がトレー2を延出部3b上から搬出するまでの一連の流れについて、
図14を参照しながら説明する。
図14の(A)乃至(D)は、係合部材6が手前側に移動して、トレー2を延出部3bから搬出する過程を示す図であり、(A)、(B)、(C)、(D)の順に状態が変化するものとする。なお、係合部材6がトレー2を搬出するまでの一連の流れについては、可動枠5の横幅方向の両端部で共通しているので、以下では、可動枠5の横幅方向一端側のみに着目して説明する。
【0085】
調整部材10の奥側であって、延出部3bよりも横幅方向外側に設けられた係合部材6は、可動枠5の手前側へのスライド移動に伴って、
図14(A)に示すように手前側に移動する。このとき、係合部材6は、前述したように、鉛直方向において固定枠3の調整部材10と対応する位置にある。
より厳密に説明すると、横幅方向においては、当接片6gは本体6aの横幅方向内側に突出しており、横幅方向外側に延出部3bから突出する調整部材10に係合部材6のうち当接片6gのみが重なる位置にある。
また、高さ方向においては、自然状態における係合部材6の当接片6gの上端は、調整部材10の傾斜領域10bの上端と下端の間の位置にある。更に、詳細には後述するが、調整部材10に当接することによって、係合部6iが収容穴6eに収容されるように、当接片6gの上端から調整部材10の下端までの長さは、自然状態における係合部材6の係合部6iの上端が本体6aからの突出する長さよりも長い。
【0086】
そして、可動枠5の手前側へのスライド移動により、係合部材6が対応する調整部材10に近付く。そして、係合部材6の当接片6gが、調整部材10の奥側傾斜部10eに当接して垂直抗力を受けることによって、圧縮ばね6fの付勢力に抗して下方に移動する。そして、
図14(B)に示すように、当接片6gが、傾斜領域10bの水平部10dに当接する位置まで移動すると、係合部6iが完全に収容穴6e内に収容される。
このため、係合部6iは、係合部材6の手前側へのスライド移動の際に、調整部材10の上方に載置された突出部2cに当接しない。
【0087】
そして、更に係合部材6が手前側に移動すると、
図14(C)に示すように、係止壁6cが突出部2cの奥側の側面に当接する。そして、
図14(D)に示すように、突出部2cを含むトレー2は、係止壁6cに支持されて、固定枠3から搬出されることとなる。
【0088】
なお、係合部材6が調整部材10を通過して手前側に移動すると、当接片6gに加わる調整部材10からの下方への荷重がなくなるため、調整部材10に連結された係合部6iは、圧縮ばね6fの上方への付勢力によって、本体6aから上方に突出することとなる。
【0089】
ここで、取り出したトレー2を他の延出部3b上に入れ込まず、可動枠5を固定枠3から引き離す場合には、引き続き第2駆動機構8を駆動して、固定枠3から可動枠5を手前側に引き離す。
一方、他の延出部3b上に搬出したトレー2を搬入する場合は、
図13(A)に示したように、本体6aの上面が他の延出部3bの上面と同じか、若干低い位置となるように係合部材6及び支持片26を移動させて、
図13に示した手順でトレー2を他の延出部3bに載置することとなる。
【0090】
以上までに説明してきた手順にて本装置1の各部が動作することで、着座姿勢の作業者は、本装置1から一つのトレー2を容易に取り出し、自分の手前位置まで容易に搬送させることが可能となる。
【0091】
なお、係合部材6は、横幅方向にある一対の延出部3bに対応する位置における駆動チェーン11の手前側にそれぞれ設けられるものとして説明した。しかし、これに限定されず、上記位置における駆動チェーン11の手前側又は奥側のいずれかに少なくとも一箇所に設けられていればよい。
このように、係合部材6が上記位置にある駆動チェーン11の手前側又は奥側のいずれかに少なくとも1つずつ設けられていることで、固定枠3に対するトレー2の搬送時に、当接片6g又は係止壁6cからトレー2に加わる合力が、重心からずれた位置に加わることを回避できる。このため、トレー2に回転モーメントが加わることを回避でき、奥行方向の位置ずれを防止しながらトレー2を奥行方向に移動させることができる。
【0092】
また、上記実施形態においては、係止壁6cをトレー2に係止させて、トレー2を固定枠3から取り出す構成についても説明した。しかし、固定枠3に入れ込む用途にのみ搬送機構4を用いる場合には、係止壁6cは必ずしも必要な構成ではない。係止壁6cが無い場合においては、通常位置から作業時位置への可動枠5の移動に際して、係合部6iは収容穴6e内に収まり突出部2cに当接する部材が何もない。このため、トレー2を載置した後、係合部材6を鉛直方向に動作させなくともトレー2に干渉せずに、可動枠5を固定枠3から離すことができる。
【0093】
(第1変形例)
上記実施形態においては、
図13(C)で説明したように、延出部3bと突出部2cとの摩擦力によってトレー2を固定枠3の延出部3b上に載置するものとして説明したが、この構成に限定されない。
例えば、第1変形例として、
図15に示すような構成にしてもよい。なお、以下に示す例において、上記実施形態に係るものと同一ものには同一の符号を付してその説明を省略し、相違点を明確にする。ここで、
図15は、第1変形例に係る係止片27が突出部2cに係止した状態を示す側面図である。
【0094】
第1変形例に係る延出部3bは、トレー2を延出部3b上に載置したときに、奥側にある突出部2cの奥側の面に当接する位置に、延出部3bの上面から突出する係止片27を有する。係止片27は、延出部3bから飛び出さない範囲内で横幅方向に延在している。なお、係止片27は、係合部6iのように横幅方向に並んだ複数の棒状の部材から構成されるものであってもよい。また、第1変形例に係る係合部材6は、駆動チェーン11の奥側に設けられている。
【0095】
このような、係止片27を備える構成によれば、
図13に示したようにトレー2を保持する可動枠5を固定枠3側である奥側に移動させる際には、奥側にある係止片27が、奥側にある係合部材6に係合する突出部2cに当接することとなる。このため、固定枠3の奥側の一定の位置でトレー2を延出部3b上に載置することができる。また、トレー2を固定枠3から取り出す際、つまり、
図14に示したようにトレー2の突出部2cを手前側に移動させる際に、係止片27及び奥側の突出部2cがその移動を阻害することがない。
したがって、第1変形例に係る延出部3bによれば、固定枠3に対するトレー2の入れ込み、取り出しが好適になる。
【0096】
(第2変形例)
上記実施形態においては、傾斜領域10bを有する調整部材10に係合部材6の当接片6gが当接することによって、係合部6iを収容穴6eに収納させる構成としていたが、本願発明はこのような構成に限定されない。
例えば、
図16(A)に示すように、傾斜領域10bを有さず角張った角部を有する調整部材31と、上方に向くように傾斜して形成された当接面を有する当接片30gを備え係合部材30とから構成されるものであってもよい。
【0097】
具体的には、調整部材31は、方形状の平板からなり、調整部材10と同様に延出部3bの横幅方向外側に固定されており下方に突出して形成されている。なお、調整部材31の角部は角張っているとして説明したが、面取り状に形成されていると、当接する当接片30gを円滑に動作させることができるため好適である。
【0098】
また、当接片30gは、奥側に向かうほど上方に位置するように傾斜した面である手前側傾斜部30hと、手前側傾斜部30hの奥側端部から水平に延出する面である水平部30iと、水平部30iの奥側端部から奥側に向かうほど下方に位置するように傾斜した面である奥側傾斜部30jとを有して断面台形状を成している。つまり、手前側傾斜部30h及び奥側傾斜部30jは、鉛直面から上方側に向くように、奥行方向において略対称に傾斜した面である。
また、当接片30gは、本体6aよりも横幅方向内側に延出して下方に配設されている。具体的には、当接片30gは、固定枠3と可動枠5とが重ねられる際に、調整部材31に当接する位置に配置されている。
【0099】
このように、構成から成る調整部材31及び当接片30gであっても、上記構成と同様に係合部6iを収容穴6eに収容することができる。具体的には、可動枠5とともに係合部材30が作業時位置から奥側に移動すると、奥側傾斜部30jが調整部材31の手前側の角部に当接する。そして、当接片30gには、調整部材31から水平方向に加わる荷重の分力である下方向の荷重が加わることとなる。このため、当接片30gは係合部6iとともに下方に移動して、係合部6iが収容穴6eに収容されることとなる。
同様に、可動枠5とともに係合部材30が通常位置から手前側に移動すると、手前側傾斜部30hが調整部材31の奥側の角部に当接する。そして、当接片30gには、調整部材31から水平方向に加わる荷重の分力である下方向の荷重が加わることとなる。このため、当接片30gは係合部6iとともに下方に移動して、係合部6iが収容穴6eに収容されることとなる。
【0100】
(第3変形例)
その他、横幅方向の断面が倒立台形状に形成された傾斜領域10bを有する調整部材10に代えて、
図16(B)に示すように、横幅方向の断面が円弧状に形成された曲面領域32bを有する調整部材32を固定枠3が備えるようにしてもよい。
【0101】
具体的には、調整部材32は、上部に形成された方形状の平板と、下部に形成された円弧状の板とが一体的に形成されたものであり、調整部材10と同様に延出部3bの横幅方向外側に固定されており下方に突出して形成されている。
【0102】
このように形成された調整部材32によっても、上記構成と同様に係合部6iを収容穴6eに収容することができる。具体的には、可動枠5とともに係合部材6が奥行方向に移動する際に、当接片6gが調整部材32に当接する。そして、当接片6gには、調整部材32から加わる荷重の分力である下方向の荷重が加わることとなる。このため、当接片6gは係合部6iとともに下方に移動して、係合部6iが収容穴6eに収容されることとなる。
【0103】
なお、第2変形例に係る当接片30g及び第3変形例に係る調整部材32は、
図13(B)及び
図13(C)示すトレー2の突出部2cを載置する区間において、係合部6iが収容穴6e内に収容されるような、大きさ、配置となっている。同様に、当接片30g及び調整部材32は、
図14(B)及び
図14(C)示すトレー2の突出部2cを載置する区間において係合部6iが収容穴6e内に収容されるような大きさ、配置となっている。
【0104】
(第4変形例)
次いで、
図17乃至
図19により、第4改変例について説明する。
図17に示すように、本例においては、上記の調整部材10に加えて第2調整部材50が更に配設される。
本例に係る調整部材10は、上記と実施形態と同様の形状に構成されているが、調整部材支持板40を介して延出部3bに取付けられている。
この調整部材支持板40は、矩形状の鋼板であり、調整部材10より下方へと延出するように取付けられている。
【0105】
なお、この第2調整部材50は、好適には、
図1とは異なり、延出部3bの奥側に取付けられるとよい。より詳しくは、延出部3bの奥端部付近に備えられているとよい。
このように構成すると好適な理由を簡単に説明する。
例えば、第2調整部材50が手前側に設置されていると、係合部材6が手前側及び奥側双方に配置されている場合、手前側の係合部材6に安全装置(係合部6iの可動による機構)が備えられ、後方側の係合部材6(安全装置が備えられていない)よりもサイズが大きくなる。
このような状態で、前側に出ている可動枠5を奥側に移動させて格納しようとすると、可動枠5後方の係合部材6(安全装置が備えられていないサイズが小さい側)が先に第2調整部材50に到達することとなる。このため、この状態を基準に第2調整部材50の構成(間隙のサイズや、各構成部材の位置)を決めてしまうと、前方の係合部材6(安全装置が備えられサイズが大きい側)が第2調整部材60に衝突して、可動枠5を元の位置(格納位置)へと戻せなくなる恐れがある。また、第2調整部材50の構成を前方の係合部材6(安全装置が備えられサイズが大きい側)に合わせてしまうと、トレー2が正しい位置にない場合であっても第2調整部材50を通過してしまう恐れがある。
よって、この第2調整部材50は、延出部3bの奥側に取付けられるとよい(この場合、安全装置のついた係合部材6もまた可動枠5の奥側に配置されることとなる)。
【0106】
そして、この調整部材支持板40において、調整部材10の下方には、第2調整部材50が取付けられている。
この第2調整部材50は、直方体形状の部材の天面側を略V字形状に切欠いた形状に形成されている。
つまり、天面部分には、第2調整部材50の上方後端部から奥行方向中央部にかけて下る奥側ガイド斜面50aと、奥行方向中央部から上方前端部にかけて上る手前側ガイド斜面50bと、を有する側面視略V字形状のガイド部50Aが形成されている。
【0107】
この奥側ガイド斜面50aは、調整部材10の奥側傾斜部10eの直下に(所定の間隔を挟んで直下に)当該傾斜に沿うように傾斜する傾斜面として構成されるとともに、同様に、手前側ガイド斜面50bは、調整部材10の手前側傾斜部10cの直下に(所定の間隔を挟んで直下に)当該傾斜に沿うように傾斜する傾斜面として構成されている。この所定の間隔が「第一間隔」に相当する。
なお、第2調整部材50は、必要に応じて、
図17に示すように、前後方向中央部(ガイド部50Aの谷頂点部分)から下方向に鉛直に延びる線で分断して2個のパーツとして形成されていてもよい。この場合、どちらかのパーツの一方のみを使用することもできる。
【0108】
このように構成された第2調整部材50の機能について説明する。
この第2調整部材50には、上方側と下方側に備えられる2種類の機能がある。
まず、
図18により、第2調整部材50の下方における機能を説明する。
これは、第2調整部材50が取付られている延出部3bの下方に配設される延出部3bに対して配置されている調整部材10(「他の調整部材」に相当する)と、第2調整部材50下端部との間での調整機能である。
当該下方において、第2調整部材50下端部と下方の調整部材10との間の間隔が「第2間隔」に相当する。
【0109】
図18(A)及び
図18(B)に示すように、係合部材6が正しい位置に設定されている場合には、係合部材6の天壁6dは、第2調整部材50の下端と干渉することなく、通過可能である。
しかし、係合部材6が正しい位置にない場合には、
図18(C)に示すように、係合部材6の天壁6dは、第2調整部材50の下端に当接し、可動枠5は、手前側へと移動することができない。
よって、トレー2の突出部2cが完全に把持されない状態で可動枠5が手前側に引き出されることを有効に防止することができる。
【0110】
次いで、
図19により、第2調整部材50のガイド部50Aの機能について説明する。
なお、本例では、当接片6gの下面において、連通棒6h,6hの直下にあたる位置には、ガイド突起106g,106gが、下方へ凸となるように突設されている。
図19(A)に示す状態は、
図9のXB-XB断面相当の図で説明すると、
図10(B)に示す状態と同様の状態となる。
つまり、圧縮バネ6fを収縮させて、連通棒6hが収容孔6e下端から引き出された状態である。
この状態から、係合部材6が移動し、当接片6gが奥側斜面50a(若しくは、手前側斜面50b)の位置へと移動すると、通常は、
図10(A)に示すように、圧縮バネ6fの復元力により、係合部6iが収容孔6e上端から突出することとなる。
【0111】
本例では、この過程において、
図19(A)に示すように、ガイド突起106g,106g下端を、奥側ガイド斜面50a(若しくは、手前側ガイド斜面50b)に当接させて、このガイド突起106g,106gを介して当接片6g及び連通棒6hへ上方に向く力を付与する。そして、この上方に向く力は圧縮バネ6fの復元力を補助し、
図19(B)(C)に示すように、当接片6gの復帰を助ける力となる。
よって、何等かの理由で係合部6iが
図10(A)の状態に復帰し難い場合に、この復帰を補助して、係合部6iの動きをガイドし、確実に
図10(A)に示す状態へと復帰させることができる(
図19(B)及び
図19(C)参照)。
このとき、奥側ガイド斜面50a及び手前側ガイド斜面50bは、斜面構成であるため、段差と乗り上げる等の衝撃がなく、スムーズに補助及びガイドを行うことが可能である。
【0112】
<<本装置1の他の利用用途・利用者等について>>
上記の実施形態では、本装置1が植物栽培工場に設置され、種苗の育成棚として利用されるケースを例に挙げて説明した。ただし、本装置1の利用用途については、上記の内容に限定されるものではない。具体的に説明すると、本装置1は、前述したように、その設置面積をより小さくするという利点を有している。かかる利点を活かすことにより、直物栽培工場以外の場所、例えば、住宅等の建物において普段は通路として利用されている空間や、クローゼットのように奥行が狭く手前側に開口が形成された空間に本装置1を設置することも可能である。
【0113】
また、上記の実施形態では、立位作業が困難な高齢者や車椅子で生活する障害者が着座姿勢のままでトレー2の出し入れを行うために本装置1が利用されるケースを例に挙げて説明した。ただし、本装置1の利用者については、上記の内容に限定されるものではない。当然ながら健常者が立位姿勢のままでトレー2の出し入れ操作を行うときであっても、本装置1を用いることで当該操作を容易に行うことが可能となる。したがって、本装置1は、トレー2の出し入れ操作を含む作業が行われる環境(作業環境)を改善する目的のために利用されるものであり、老若男女や作業姿勢を問わず幅広く適用可能である。