特許第6476053号(P6476053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476053軟弱地盤改良システムおよび軟弱地盤改良方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476053
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】軟弱地盤改良システムおよび軟弱地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   E02D3/10 103
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-89689(P2015-89689)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-205027(P2016-205027A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390001993
【氏名又は名称】みらい建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502080047
【氏名又は名称】キャドテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109233
【氏名又は名称】チカミミルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓也
(72)【発明者】
【氏名】関谷 千尋
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太
(72)【発明者】
【氏名】赤金 秀孝
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 文伯
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−202495(JP,A)
【文献】 実開昭62−189056(JP,U)
【文献】 実開平02−037253(JP,U)
【文献】 特開昭51−053711(JP,A)
【文献】 特開2009−209571(JP,A)
【文献】 特開2010−127055(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0298895(US,A1)
【文献】 特開2011−099285(JP,A)
【文献】 特開2002−242171(JP,A)
【文献】 米国特許第05597264(US,A)
【文献】 特開2011−156347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00−3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空圧密を適用する改良地盤に密封シートを被覆して周辺部から隔離し、該密封シートの下に打設された複数の鉛直ドレーン、および該鉛直ドレーンと地表近傍で通水可能に係合された水平ドレーンに対し、真空ポンプの負圧を付与して減圧領域を形成するとともに、前記負圧を付与する経路をたどって前記減圧領域から排水することにより前記改良地盤を改良する軟弱地盤改良システムであって、
前記負圧を付与する経路は前記真空ポンプから無孔管、前記水平ドレーンおよび前記鉛直ドレーンの順番であり、
前記無孔管と前記水平ドレーンとは双方の接続部における前記負圧の低下を抑制させる接続部材を介在させた接続形態であり、
前記接続部材は、前記接続部を嵌合して連通する4端子を有し、該4端子は管状胴体の長手方向の両端に形成された第1端子対と、前記管状胴体から直径方向に突出した中空翼の両翼端に形成された第2端子対とにより構成され、前記第1端子対に前記無孔管の前記接続部が嵌合し、前記第2端子対に前記水平ドレーンの前記接続部が嵌合し、
前記第1端子対は円筒形の開口端により形成され、
前記第2端子対は、矩形断面の開口端により形成されており、前記矩形断面の少なくとも2箇所に開口端から奥へとつながる切り込みを設けられ、前記開口端から奥へとつながる経路の断面が幅方向に変形可能である
ことを特徴とする軟弱地盤改良システム。
【請求項2】
前記第2端子対には、前記開口端から嵌入される前記水平ドレーンの奥行き位置を規制する嵌入ストッパが、前記中空翼の基部に位置し、該中空翼の厚さ方向を支持するように格子状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の弱地盤改良システム
【請求項3】
真空圧密を適用する改良地盤に密封シートを被覆して周辺部から隔離し、該密封シートの下に打設された複数の鉛直ドレーン、および該鉛直ドレーンと地表近傍で通水可能に係合された水平ドレーンに対し、真空ポンプの負圧を付与して減圧領域を形成するとともに、前記負圧を付与する経路をたどって前記減圧領域から排水することにより前記改良地盤を改良する軟弱地盤改良方法であって、
前記真空ポンプから無孔管、前記水平ドレーンおよび前記鉛直ドレーンの順番に前記負圧を付与し、
前記無孔管と前記水平ドレーンとの双方の接続部を嵌合して連通する4端子を有し、該4端子は管状胴体の長手方向の両端に形成された第1端子対と、前記管状胴体から直径方向に突出した中空翼の両翼端に形成された第2端子対とにより構成され、前記第1端子対に前記無孔管の前記接続部が嵌合し、前記第2端子対に前記水平ドレーンの前記接続部が嵌合し、前記第1端子対は円筒形の開口端により形成され、前記第2端子対は、矩形断面の開口端により形成されており、前記矩形断面の少なくとも2箇所に開口端から奥へとつながる切り込みを設けられ、前記開口端から奥へとつながる経路の断面が幅方向に変形可能である接続部材を介在させて、前記無孔管と前記水平ドレーンとは双方の接続部における前記負圧の低下を抑制させるように接続することを特徴とする軟弱地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤改良システム、接続部材および軟弱地盤改良方法に関し、より詳細には、泥土による埋立地等、水分の多い軟弱地盤を、真空圧密工法により圧密排水して改良する軟弱地盤改良システムおよび軟弱地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空圧密の技術分野において、改良すべき軟弱地盤(以下、「改良地盤」ともいう)上を密封シートで被覆するとともに、その改良地盤中に真空圧(以下、「負圧」ともいう)を付与することで、改良地盤中に改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を作り出す軟弱地盤の改良装置、およびそれに用いる分岐管が知られている(特許文献1)。特に、その改良装置は、真空圧密による軟弱地盤の改良装置において、鉛直ドレーン材と、水平ドレーン材と、鉛直ドレーン材と水平ドレーン材を介して繋がる配管と、配管の集水経路に接続された気水分離タンクと、気水分離タンクに集水された間隙水を、排水管を介して排水タンクへ排水する水中ポンプと、配管に負圧を負荷する真空ポンプとを備え、配管は、第1の管部と、複数の分岐部を介して第1の管部と連通し、第1の管部の鉛直下方向に配置された第2の管部とを有し、第1の管部が水平ドレーン材と連通し、第2の管部が気水分離タンクと連通している、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−202495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の軟弱地盤の改良装置および分岐管において、改良地盤内の水を場外へ排出するまでの排水経路は、概ね以下のとおりである。すなわち、鉛直ドレーンの頭部から、水平ドレーン、有孔管、無孔管、および真空装置(真空ポンプ)を経て場外へと排出されるという順番である。
【0005】
なお、有孔管は、塩化ビニル樹脂等の管の周面に適切な間隔ごとに穿孔したものである。有孔管の孔は、真空圧を周囲へ付与することにより、軟弱地盤中の水分(間隙水)を吸収するために設けられている。この孔から水分を吸収する際に、水分に伴って土砂まで吸入されることを防止するために、有孔管は外周面をフィルタで被覆して用いられる。
【0006】
また、無孔管より真空ポンプ側の接続形態は、緊密に接続するという一般的な配管接続による。これに対し、有孔管よりも各ドレーン側、すなわち、有孔管と、水平ドレーンと、鉛直ドレーンとの相互間の接続形態は、通水可能な接続部を交差させて軽く接触するように掛け渡すだけの簡易接続形態であった。この簡易接続形態によれば、接続部において、負圧と水分の相当割合が排水経路から改良地盤の表層部を介在して受け渡しされる。
【0007】
排水経路が上述の簡易接続形態であっても、改良地盤の有する水分を、鉛直ドレーンの頭部から、場外までの順番どおりに、送り出して排出できる理由は、改良地盤中に改良地盤周辺部と隔離された減圧領域が形成されているためである。つまり、改良地盤全体がシートで覆われて密閉されているため真空圧密の状態を維持される。その結果、改良地盤内の水分を、より真空度の高い方の排水経路内へと吸い込むからである。
【0008】
ここで、排水経路の有孔管の孔からは、改良地盤内の水分とともに、土粒子までが排水経路内へと吸い込まれる。特に、有孔管については、土粒子の吸入を防止するために、有孔管の外周面をフィルタで被覆して用いることが一般的であった。特に、水平ドレーンと有孔管との簡易接続部において、水平ドレーンの被覆フィルタの内側から外側へと通過した水の相当割合が、改良地盤の表層部を経由して有孔管の孔に吸い込まれる。
【0009】
しかしながら、有孔管の外周面を被覆して土粒子の吸入を防止するため、フィルタは使用頻度に応じて当然に目詰まりして排水効率を低下させる傾向にある。そのため、地盤改良が完了する以前であるにもかかわらず、限度を超えてフィルタが目詰まりした場合、埋設された有孔管を発掘して、その外周面を被覆していたフィルタを新品交換する必要に迫られるなど、工事の進捗に対する重大な阻害要因になる。より詳しくは、孔径が約1cmの有孔管に負圧が作用することにより、改良地盤に含まれる砂礫およびシルト等の細粒成分が、フィルタのメッシュに付着して孔を塞いでしまう危険性がある。このように、有孔管の孔が塞がれた場合、ドレーンからの水の流れが絶たれドレーン機能が失われる。
また、完全に目詰まりしなくとも、真空圧の伝達が悪化することにより、地盤改良の効率が低下する。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、有孔管
の外周面を被覆しているフィルタの目詰まりの害、すなわち、フィルタの目詰まりによる
接続部における真空度の低下と透水性の低下、場合によっては埋設された有孔管の外周面
を被覆していたフィルタを新品交換するために掘り返しと埋め戻しを要する追加工事等の
無駄をなくし、施工の信頼性を高め、より経済性を向上させることが可能な軟弱地盤改良
システムおよび軟弱地盤改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、真空圧密を適用する改良地盤(1)に密封シート(20)を被覆して周辺部から隔離し、該密封シート(20)の下に打設された複数の鉛直ドレーン(10)、および該鉛直ドレーン(10)と地表近傍で通水可能に係合された水平ドレーン(50)に対し、真空ポンプ(30)の負圧を付与して減圧領域を形成するとともに、前記負圧を付与する経路をたどって前記減圧領域から排水することにより前記改良地盤(1)を改良する軟弱地盤改良システム(100)であって、前記負圧を付与する経路は前記真空ポンプ(30)から無孔管(40)、前記水平ドレーン(50)および前記鉛直ドレーン(10)の順番であり、前記無孔管(40)と前記水平ドレーン(50)とは双方の接続部(41,51)における前記負圧の低下を抑制させる接続部材(60,70,90)を介在させた接続形態であり、前記接続部材(60,70,90)は、前記接続部(41,51)を嵌合して連通する4端子を有し、該4端子は管状胴体(71)の長手方向(Y)の両端に形成された第1端子対(81)と、前記管状胴体(71)から直径方向(X)に突出した中空翼(72,73)の両翼端に形成された第2端子対(82,83,93)とにより構成され、前記第1端子対81)に前記無孔管(40)の前記接続部(41)が嵌合し、前記第2端子対(82,83,93)に前記水平ドレーン(50)の前記接続部(51)が嵌合し、前記第1端子対(81)は円筒形の開口端により形成され、前記第2端子対(82,83,93)は、矩形断面の開口端により形成されており、前記矩形断面の少なくとも2箇所に開口端から奥へとつながる切り込みを設けられ、前記開口端から奥へとつながる経路の断面が幅方向に変形可能であることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の軟弱地盤改良システム(100)において、前記第2端子対(82,83,93)には、前記開口端から嵌入される前記水平ドレーン(50)の奥行き位置を規制する嵌入ストッパ(74)が、前記中空翼(72,73)の基部に位置し、該中空翼(72,73)の厚さ方向を支持するように格子状に設けられていることを特徴とする
【0017】
また、請求項に記載の発明は、真空圧密を適用する改良地盤(1)に密封シート(20)を被覆して周辺部から隔離し、該密封シート(20)の下に打設された複数の鉛直ドレーン(10)、および該鉛直ドレーン(10)と地表近傍で通水可能に係合された水平ドレーン(50)に対し、真空ポンプ(30)の負圧を付与して減圧領域を形成するとともに、前記負圧を付与する経路をたどって前記減圧領域から排水することにより前記改良地盤(1)を改良する軟弱地盤改良方法であって、前記真空ポンプ(30)から無孔管(40)、前記水平ドレーン(50)および前記鉛直ドレーン(10)の順番に前記負圧を付与し、前記無孔管(40)と前記水平ドレーン(50)との双方の接続部(41,51)を嵌合して連通する4端子を有し、該4端子は管状胴体(71)の長手方向(Y)の両端に形成された第1端子対(81)と、前記管状胴体(71)から直径方向(X)に突出した中空翼(72,73)の両翼端に形成された第2端子対(82,83,93)とにより構成され、前記第1端子対(81)に前記無孔管(40)の前記接続部(41)が嵌合し、前記第2端子対(82,83,93)に前記水平ドレーン(50)の前記接続部(51)が嵌合し、前記第1端子対(81)は円筒形の開口端により形成され、前記第2端子対(82,83,93)は、矩形断面の開口端により形成されており、前記矩形断面の少なくとも2箇所に開口端から奥へとつながる切り込み(G)が設けられ、前記開口端から奥へとつながる経路の断面が幅方向に変形可能である接続部材(90)を介在させて、前記無孔管(40)と前記水平ドレーン(50)とは双方の接続部(41,51)における前記負圧の低下を抑制させるように接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有孔管の外周面を被覆しているフィルタの目詰まりの害、すなわち、フィルタが目詰まりすることによる真空度の低下、場合によっては埋設された有孔管の外周面を被覆していたフィルタを新品交換するために発掘を要する補修工事などの無駄をなくし、施工の信頼性を高め、より経済性を向上させることが可能な軟弱地盤改良システムおよび軟弱地盤改良方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良システム(以下、「本システム」ともいう)の概略を説明するために一部透視した斜視図である。
図2】本システムにおける無孔管と水平ドレーンとの接続構成の一例を示す斜視図である。
図3】本システムにおける接続部材を用いた無孔管と水平ドレーンとの接続構成の一例を示す斜視図である。
図4】接続部材の一例を示す投影図であり、(a)正面図、(b)平面図(A−A線による断面)、(c)側面図である。
図5】接続部材の変形例を示す投影図であり、(a)正面図、(b)水平ドレーンを接続する際の側面図、(c)圧密時の側面図である。
図6】鉛直ドレーンの構造を説明するために一部断裁した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る軟弱地盤改良システム(以下、「本システム」ともいう)の概略を説明するために一部透視した斜視図である。図1に示すように、本システム100は、改良地盤1を対象として設置され、鉛直ドレーン10と、密封シート20と、真空ポンプ30と、負圧センサ2と、負圧計3と、無孔管40(排水管)と、水平ドレーン50と、気水分離タンク5と、排水タンク8と、を備えている。
【0021】
多数の鉛直ドレーン10は、改良地盤1を平面視して網羅するように、例えば碁盤目の交点といった所定間隔毎に配置され、それぞれが鉛直方向に深く埋設され、頭部のみを地上に残して負圧系統へ接続可能にされる。密封シート20は、定尺ものを適宜枚数だけ熱溶着してつなぎ合わせることにより、改良地盤1の全面に漏れなく被覆される。真空ポンプ30は負圧を発生し、その負圧を無孔管40から水平ドレーン50および鉛直ドレーン10の上から下へと向かう順に末梢まで浸透させるように負圧系統が構成されている。なお、図1の矢印は、改良地盤1の地下水が排水される方向を示しており、負圧の付与される方向の逆方向である。
【0022】
本システム100は、真空圧密を適用する改良地盤1に密封シート20を被覆して周辺部から隔離し、その密封シート20の下に打設された複数の鉛直ドレーン10、および鉛直ドレーン10と地表近傍で通水可能に係合された水平ドレーン50に対し、真空ポンプ30の負圧を付与して減圧領域を形成するとともに、負圧を付与する経路をたどって減圧領域から排水することにより改良地盤1を改良するように構成されている。また、負圧を付与する経路は真空ポンプ30から無孔管40、水平ドレーン50および鉛直ドレーン10の順番であり、無孔管40と水平ドレーン50とは双方の接続部41,51における負圧の低下を最小限にする接続形態である。この接続形態は、後述する接続部材によって実現する。
【0023】
本システム100は、改良地盤1に設置されて稼動し、鉛直ドレーン10の末端まで負圧を浸透させて減圧領域を形成する。また、改良地盤1は、密封シート20を被覆して端部を改良地盤1の中へ埋設するので、減圧領域の負圧を漏らし難く、維持し易い。このため、改良地盤1は、大気圧が載荷されて強く押下られる。その結果、軟弱地盤であった改良地盤1から、土壌の間隙水および空気が鉛直ドレーン10を通して吸い出されることにより、軟弱地盤は改良される。
【0024】
気水分離タンク5は、真空ポンプ30と無孔管40の間に配設され、気水分離の機能を備えている。負圧センサ2は、負圧系統から離れて負圧の波及し難い箇所、すなわち、改良地盤1における周縁近傍の内側かつ表層近傍で、真空ポンプ30と、無孔管40と、水平ドレーン50と、鉛直ドレーン10と、のいずれからも離れた箇所に埋設されている。この負圧センサ2が検出した負圧値を監視データとしてフィードバック制御装置(不図示)等に入力することにより、自動制御運転に寄与する。負圧計3は、運転員(不図示)等が監視又は運転操作しやすい位置に配設され、負圧センサ2の検出した負圧値を表示する。
【0025】
図2は、本システムにおける無孔管と水平ドレーンとの接続構成の一例を示す斜視図である。図2に示すように、接続部材(以下、「十字ソケット」又は「分岐管」ともいう)13は、所定長さの2組の管が、十文字に交差して結合し、内部が連通する4端子より構成されている。より詳しくは、管状胴体71の長手方向Yの中間部に、その外周面より筒状の連結口14が左右に突出して形成されている。管状胴体71の両端が、無孔管40をそれぞれ嵌入するための2端子を形成する。同様に、連結口14の両端が、接続部材15の嵌合凸部17をそれぞれ嵌入するための2端子を形成している。
【0026】
接続部材15における嵌合凸部17の反対側には細長く長方形に開口する挿入孔16が設けられている。挿入孔16には、水平ドレーン50の先端の接続部51が嵌入される。このように、水平ドレーン50が接続された接続部材15と、無孔管40とを、十字ソケット13の4端子に、それぞれ嵌入することにより、水平ドレーン50は、無孔管40に接続部での真空圧の低下が最小限になるように接続される。その結果、主に水分を良好に流通させる。また、水平ドレーン50の通水断面と同等の開口を排水管(無孔管40)に設けることができるので、従来技術の有孔管を用いた場合に比べて排水効率が向上する。
【0027】
なお、図示を省略するが、水平ドレーン50に代えて、鉛直ドレーン10が、接続部材15の挿入孔16に直結されても構わない。
【0028】
ここで、密封シート20に覆われた改良地盤1は、その全域にわたって概ね均等に負圧状態が維持されている。そのように均等に維持された負圧状態の改良地盤1よりも、水平ドレーン50および鉛直ドレーン10の内部側に、高い真空度が伝達され易い。このため、いずれかのドレーンの開口部、つなぎ目、あるいは隙間等が存在していれば、そこからも改良地盤1内の水分をドレーン側に吸引する。
【0029】
真空ポンプ30で発生した負圧は、無孔管40から分岐管13を介して分岐された水平ドレーン50および、水平ドレーン50に接続された鉛直ドレーン10へ伝搬される。その結果、改良地盤1における間隙水および空気が負圧によって鉛直ドレーン10内に吸い出される。間隙水および空気は、鉛直ドレーン10、分岐管13、水平ドレーン50および無孔管40を介して真空設備4に流入する。真空設備4は真空ポンプ30と気水分離タンク5と排水ポンプ9とにより構成されている。真空ポンプ30により吸引される水と空気は、真空ポンプ30の直前で気水分離タンク5に流入して水と空気に分離する。水は気水分離タンク5のそばにある排水ポンプ9で排出され、空気のみが真空ポンプ30に達して排出される。これにより、本システム100は、改良地盤1の圧密、強度増加を行うことができる。
【0030】
このとき、無孔管40に水平ドレーン50が、直結された双方の接続部41,51(図2および図3参照)において、負圧の低下が少ない程、無孔管40に接続されている真空ポンプ30のエネルギーをロスなく用いることができる。
【0031】
このように、本システム100に十字ソケット(接続部材)13を用いることにより、有孔管を介在させないため、有孔管の外周面を被覆して土砂の吸入を防止するためフィルタの目詰まりの害、すなわち、フィルタが目詰まりすることによる真空度の低下、場合によっては埋設された有孔管の外周面を被覆していたフィルタを新品交換するために発掘を要する補修工事、などによる無駄をなくし、施工の信頼性を高め、より経済性を向上させることが可能である。
【0032】
図3は、本システムにおける接続部材を用いた無孔管と水平ドレーンとの接続構成の一例を示す斜視図である。図3に示すように、接続部材(以下、「有翼ソケット」ともいう)60は、管状胴体71における長手方向Yの中間部から左右に中空翼72を突出した飛行機のような形状であり、2方向の短い中空の管体71,72が、十文字に交差して結合し、内部が連通する4端子より構成されている。
【0033】
有翼ソケット60は、無孔管40を接続する接続部41と、水平ドレーン50を接続する接続部51と、の間に介在し、それぞれを嵌合して連通する。このように、本システム100は、水平ドレーン50と、無孔管40と、双方の接続部41,51が連通することを特徴とする。その結果、十字交差型で接続部における負圧の低下が少ない有翼ソケット60により、水分を良好に流通させることが可能である。
【0034】
図4は、接続部材の一例を示す投影図である。図4(a)は接続部材70の正面図である。図4(b)は図4(a)に示す接続部材70のA−A線による断面を平面視した平面図である。図4(c)は接続部材(有翼ソケット)70の側面図である。図4(b)に示すように、有翼ソケット70は、2種類の短い中空の管体71,73が、十文字に交差して結合し、内部が連通する4端子より構成されている。
【0035】
有翼ソケット70の4端子は、異なる2系統の第1端子対81と、第2端子対83が連通する4端子構成である。第1端子対81は、管状胴体71の長手方向Yの両端に、円筒形の開口端により形成され、無孔管40の接続部41が嵌合する。第2端子対83は、管状胴体71から直径方向Xに突出した中空翼73の両翼端において、矩形断面の開口端により形成され、図3に示した水平ドレーン50の接続部51が嵌合する。このような、十字交差型の接続形態は、図3に示した接続部材60と同様である。なお、嵌入ストッパ74は、中空翼73の基部に位置し、中空翼73の厚さ方向を支持するように格子状に形成されている。第2端子対83に嵌入された水平ドレーン50は、嵌入ストッパ74に突き当たるため、それ以上は深く進入できないように適切な奥行き位置で保持される。また、有翼ソケット70全体が一体成形されることにより構成されている。
【0036】
図1にも示すように、有翼ソケット70は、4端子の全てに対する接続を完了することにより、無孔管40の接続部41と、水平ドレーン50の接続部51と、を嵌合して連通する。つまり、水平ドレーン50は無孔管40に双方の接続部41,51で連通する。有翼ソケット70は、塩化ビニル樹脂等の材料により簡素かつ安価に提供できるため本システム100に好適であり、工事完了の後は、使い捨てと、反復利用とのいずれであっても構わない。また、接続部材13,60,70は、基本的に十字型の4端子形状を例示したが、接続形態によっては、T字型の3端子形状、L字型の2端子形状、あるいは斜め交差であっても構わない。
【0037】
図5は、接続部材の変形例を示す投影図であり、(a)正面図、(b)水平ドレーンを接続する際の側面図、(c)圧密時の側面図である。図5に示す接続部材90は、基本的な外形およびその機能について、図4に示した接続部材70と同等であり、相違点は、図5に示す接続部材90の第2端子対93にのみ、矩形断面の少なくとも2箇所に開口端から奥へとつながる切り込みGを設けたことである。この切り込みGにより、矩形断面により形成されている第2端子対93は、開口端から奥へとつながる経路の断面を幅方向にある程度変形可能となった。
【0038】
この変形について、より具体的には、接続部材90を構成する塩化ビニル樹脂等の樹脂材料が有する僅かな弾力性により、接続部材90の第2端子対93と、水平ドレーン50の接続部51(図1,3参照)とを、より緊密に嵌合して連通する。これらを接続する際、すなわち、設置前の初期状態における接続時では、図5(b)に示すように開口端を広く維持して水平ドレーン50の挿入を容易にする。一方、設置後に改良工事の施工状態における圧密時には、接続部材90の第2端子対93の開口端から奥へとつながる経路の断面を幅方向に狭めるようにある程度変形させる。
【0039】
図5に示す接続部材90は、矩形断面の少なくとも2箇所に開口端から奥へとつながる切り込みGを設けたので、開口端から奥へとつながる経路の断面を幅方向に変形可能である。このことにより、接続部材90の第2端子対93と、水平ドレーン50の接続部51と、が真空圧低下の原因となる隙間をなくすように、より緊密に嵌合して連通する。
【0040】
図5に示すような接続部材90の構造を採用すれば、大気圧作用時に、接続部材90の開口端の断面が、水平ドレーン50の接続部51を密着して取り囲むように変形する。このため、接続部材90の第2端子対93と、水平ドレーン50の接続部51と、の間に若干の施工余裕(隙間)があっても、真空圧密実施時には、テーピング等による目張り加工することなく、その隙間が無くなり、土粒子が管状胴体(排水管)71へ侵入して管内を詰まらせる害をなくすことができる。このように、接続部材90の構造を採用すれば、信頼性および効率を向上させることが可能である。
【0041】
[鉛直ドレーン]
図6は鉛直ドレーンの構造を説明するために一部断裁した斜視図である。図6に示すように、鉛直ドレーン10は、改良地盤1(図1参照)中の間隙水が通る芯材18と、芯材18の周囲に設けられ改良地盤1中の間隙水が透過するフィルタ19とを有する。芯材18は、長尺体の両面に長手方向に亘る隔壁が幅方向に複数立設されることにより、長手方向に改良地盤1内の水分の通水路となる溝18aが複数形成されている。この芯材18は、地盤沈下へ追随する可撓性と、変形しても通水性能を維持する材料である。この可撓性により長尺ものを供給容易なリール巻きにできるため、コンパクトで運搬等の利便性や使い勝手も良好である。この芯材18は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、その他の樹脂材料を用いて形成される。また、芯材18は、例えば生分解性の樹脂材料で形成することにより、改良地盤1中に残置した場合にも環境負荷を低減させることができる。
【0042】
芯材18の周囲を覆うフィルタ19は、透水性を有する材料、例えばポリエステル製の不織布から形成されている。フィルタ19は、芯材18の周囲に巻回され、熱溶着等によって接着されることにより芯材18の周囲を覆う。また、フィルタも、芯材同様に、例えば生分解性の不織布で形成することにより、環境負荷を低減させることができる。
【0043】
鉛直ドレーン10は、予め製造工場において、前述のように芯材18をフィルタ19で覆うことにより製造されるとともに、ロール状に巻回された後、施工現場となる改良地盤1に搬入され、改良地盤1に所定間隔で打設される。次いで、鉛直ドレーン10は、地表に突出されている余長部を水平ドレーン50の上に重ねて接続される。あるいは、鉛直ドレーン10の接続部11を無孔管40に直結する。
【0044】
[水平ドレーン]
水平ドレーン50は、鉛直ドレーン10と同様に、芯材と、芯材を覆うフィルタとを有し、長尺状に形成されている。芯材は、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、その他の樹脂材料を用いてエンボス加工により形成され、フィルタは、ポリエステル系不織布から形成されている。また、水平ドレーン50は、芯材、フィルタともに、例えば生分解性材料により形成することにより、環境負荷を低減させることができる。かかる水平ドレーン50は、地盤変形への追従性および通水性能に優れ、かつ軽量で作業効率もよい。また、水平ドレーン50は、無孔管40と接続され、その無孔管40を介して負圧が伝搬されるとともに、鉛直ドレーン10が吸引した改良地盤1中の間隙水を無孔管40へ流す。
【0045】
本システム100は、改良地盤1の表面を密封シート20で覆う工法に特化しているため、接続部からの漏気など気密性の問題が生じない。すなわち、使用する接続部材については特段の気密性を要求されずに接続作業ができる。したがって、表層近傍に配設された水平ドレーン50に、より強い負圧を付与しても、密封シート20で覆うので、表層近傍から大気に通じることはなく負圧は低下しない。その上、接続部材60,70を介して、無孔管40と水平ドレーン50とを直結させることで、より強い負圧を水平ドレーン50に付与しても、負圧系統の末端に至るまで密封シート20で覆われているので漏れない。したがって、無孔管40に接続されている真空ポンプ30のエネルギーを無駄なく有効利用することができる。
【0046】
本発明に係る軟弱地盤改良システム、接続部材および軟弱地盤改良方法によれば、有孔管を介在させないため、有孔管の外周面を被覆しているフィルタの目詰まりの害、すなわち、フィルタが目詰まりすることによる接続部における真空度の低下と透水性の低下、場合によっては埋設された有孔管の外周面を被覆していたフィルタを新品交換するために発掘を要する補修工事などの無駄をなくし、施工の信頼性を高め、より経済性を向上させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る軟弱地盤改良システム、接続部材および軟弱地盤改良方法は、泥土による埋立地等、水分の多い軟弱地盤を真空圧密工法により圧密排水して改良する軟弱地盤改良工事への利用可能性がある。
【符号の説明】
【0048】
1 改良地盤、2 負圧センサ、3 負圧計、4 真空設備、5 気水分離タンク、8 排水タンク、9 排水ポンプ、10 鉛直ドレーン、11 (鉛直ドレーン10の)接続部、13 十字ソケット(分岐管、接続部材)、14 連結口、15 接続部材、16 挿入孔、17 嵌合凸部、18 芯材、18a 溝、19 フィルタ、20 密封シート、30 真空ポンプ、40 無孔管(排水管)、41 (無孔管40の)接続部、50 水平ドレーン、51 (水平ドレーン50の)接続部、60,70,90 有翼ソケット(接続部材)、71 管状胴体(排水管)、72,73 中空翼、74 嵌入ストッパ、81 第1端子対、82,83,93 第2端子対、100 軟弱地盤改良システム(本システム)、G 隙間、X (管状胴体71の)直径方向、Y (管状胴体71の)長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6