特許第6476095号(P6476095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476095
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】補強土一体型プレキャスト格子枠工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20190218BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   E02D17/20 103E
   E02D17/18 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-174367(P2015-174367)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-48647(P2017-48647A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】501232528
【氏名又は名称】株式会社複合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】舘山 勝
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 澄雄
(72)【発明者】
【氏名】池戸 茂
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正広
(72)【発明者】
【氏名】前田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴之
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−012534(JP,U)
【文献】 特開2005−213977(JP,A)
【文献】 特開平11−152735(JP,A)
【文献】 特開2009−084988(JP,A)
【文献】 特表平10−506160(JP,A)
【文献】 実開昭53−007902(JP,U)
【文献】 実開昭54−022304(JP,U)
【文献】 特開2008−240479(JP,A)
【文献】 特開昭54−021008(JP,A)
【文献】 特開平09−088076(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02104121(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00−17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山ののり面に、あらかじめ連結係止装置が取り付けられた複数のビーム部材を組み立ててプレキャスト格子枠を構築し、該プレキャスト格子枠の前記ビーム部材の接地面側にジオテキスタイルの袋体にモルタルを充填した底面馴染みモルタルを備え、前記プレキャスト格子枠の交点部に地山補強材を打設し、該地山補強材の頭部を包含するように前記プレキャスト格子枠の前記交点部に場所打ちコンクリートを打設する補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、
前記連結係止装置には、前記プレキャスト格子枠の交点部に前記地山補強材が打設される空隙部分を形成する隅切部が設けられ、前記ビーム部材への前記連結係止装置の取り付け位置の調整により、前記空隙部分の大きさを調整して、径の異なる地山補強材への対応を可能にすることを特徴とする補強土一体型プレキャスト格子枠工法。
【請求項2】
請求項1記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記連結係止装置が取り付けられた前記ビーム部材を連結するのみで前記プレキャスト格子枠を構築可能にすることを特徴とする補強土一体型プレキャスト格子枠工法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記ビーム部材の長さ調整のみで、格子幅の異なる前記プレキャスト格子枠を構築可能にすることを特徴とする補強土一体型プレキャスト格子枠工法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記底面馴染みモルタルの前記ジオテキスタイルの袋体には、前記ビーム部材側と前記地山ののり面側とで性質の異なる2種類のジオテキスタイルを用いることで、前記プレキャスト格子枠と前記地山ののり面との密着性をさらに高めるようにすることを特徴とする補強土一体型プレキャスト格子枠工法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記プレキャスト格子枠の前記交点部に前記地山補強材の頭部を収納可能にすることを特徴とする補強土一体型プレキャスト格子枠工法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記連結係止装置と前記地山補強材の頭部が定着されていることを特徴とする補強土一体型プレキャスト格子枠工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強土一体型プレキャスト格子枠工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道や道路構造物の自然地山の斜面、切土のり面、あるいは盛土のり面を対象に、大規模地震・集中豪雨等に対する耐災害性に関して、性能ランク別に要求性能が高まってきている。
【0003】
そのため、その安全性に関する再評価が全国各地で実施されており、本発明は、これらの要求に応える「のり面保護工」と「地山補強土工法」を併用した新しい補強土一体型プレキャスト格子枠工法を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−22304号公報
【特許文献2】実開平6−12534号公報
【特許文献3】登録実用新案第3026691号公報
【特許文献4】特開昭50−9905号公報
【特許文献5】特開昭53−132110号公報
【特許文献6】特開昭63−51525号公報
【特許文献7】特許第3499488号公報
【特許文献8】特許第3605765号公報
【特許文献9】特許第4318749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自然地山あるいは盛土のり面は、そのまま放置すると降雨や地震によって、侵食、表層剥離、滑落、風化の進行、湧水による土砂流出等の表層崩壊が発生する恐れがある。そのため、種々の崩壊要因に対する「のり面保護工」が提案されている。その場合、のり面上にのり枠を設置してその枠内に、砕石、コンクリート、モルタル、あるいは客土や植生等を充填してのり面の安定を図ろうとしているものが多い。
【0006】
一方、近年集中豪雨やゲリラ豪雨が多発し、また、東海・東南海・南海地震に代表される大規模地震が近い将来発生すると想定されることなどを考慮すると、降雨の程度や地震の規模によっては、上記の表層崩壊のみではなく、もっと深い位置での深層崩壊が生じる可能性が高い。そこで、このような場合には、ロックボルトや中径〜大径補強材、あるいはグランドアンカーなどの補強材をのり面内に挿入し、当該補強材の引張り補強効果、せん断補強効果、圧縮補強効果等を利用してのり面の補強を図る工法(地山補強土工法)も種々提案されている。
【0007】
特に、既設盛土のような緩い地山のり面の掘削や地盤の掘削土留め工事に用いる場合には、ロックボルトのような鉄筋補強材では効率よく補強することができず、また、永久構造物への適用に当たっては補強材の耐久性や品質向上に対する要求が高まっている。このため使用目的によって特徴ある補強材が多数提案されているが、現状では各種の補強材を補強材の機能によってネイリング、ダウアリング、マイクロパイリングの3種類に大きく分類されている。
【0008】
ここで、ネイリングとは補強材直径が10cm程度以下のもので、主として補強材の引張り抵抗によって地山の安定性を向上させる工法であり、マイクロパイリングは、補強材直径10〜20cm程度でネイリングに比べれば直径や補強材剛性も大きく、引張り抵抗に加えて曲げや圧縮抵抗も期待できるため支持力補強などにも用いられている。また、ダウアリングは補強材直径30〜50cm程度で直径や剛性が大きいため特に周面摩擦抵抗力が得られにくい盛土や崩壊性地山で使用されている。
【0009】
ダウアリングの代表的な工法に、機械攪拌混合方式の深層混合処理工法の技術を応用することで地盤条件に応じて30〜50cm(一般的には40cm)の大径の補強体の構築を可能にしたラディッシュアンカー工法がある。ラディッシュアンカー工法は、ネイリング工法と比べて大径であるため、その合理的な補強効果を生かして既設盛土のり面や地山の急勾配化、掘削土留め工の支保工としての適用、既設擁壁の耐震補強、既設のり面の耐震・降雨対策などにも適用されている。
【0010】
さらに、「地山補強土工法」に用いられる補強材の内、補強材自身に曲げ剛性がほとんど無い場合には補強材の引張り抵抗を期待する工法となる。この引張り補強土工法では土の変形に伴って、補強材表面に軸方向のせん断力が発生し、その結果、補強材に引張り力が受動的に発生すると考えられる。
【0011】
以上のような背景から、のり面の表層崩壊および深層崩壊、あるいはこれらの崩壊の進行性破壊を防止するためには、上記「のり面保護工」と「地山補強土工法」を併用すれば効果的な対策工法となりうると想定されるが、現状では、現場条件、適用範囲、安全性、経済性、および補強効果の点で、適切な両者の併用形態が提案されるに至っていない。
【0012】
現状では自然斜面および切土・盛土のり面等において降雨・豪雨および地震に対する対策工法としては、「地山補強土工法」が採用される場合が多く、その「のり面保護工」として「場所打ち格子枠工」が実施される場合が多い。
【0013】
図6は従来の「地山補強土工法」で併用される「場所打ち格子枠工」の施行例を示す図であり、図6(a)はその側面模式図、図6(b)は施工後の状態を示す図面代用写真である。
【0014】
これらの図において、101は地山、102は場所打ち格子枠〔現場打ち吹付格子枠、フリーフレーム(登録商標)等〕、103は地山補強材を示している。
【0015】
このような「場所打ち格子枠工」を採用した場合、一般に工期が長く、工費も高い。また、図6(b)にも示されるように、場所打ち格子枠102と地山補強土工法に用いられる地山補強材103との接続部において、地山補強材103の頭部が突出するため、景観上および安全上の問題点もあった。
【0016】
本発明は、上記状況に鑑みて、「のり面保護工」と「地山補強土工法」を併用することで、地山・のり面等の表層崩壊と深層崩壊の両対策に効果を発揮するとともに、「格子枠」を主に連結係止装置およびビーム部材の2部材のみで構成される構造とすることによって、施工の迅速化・工費の低廉化が可能となる補強土一体型プレキャスト格子枠工法をを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、地山ののり面に、あらかじめ連結係止装置が取り付けられた複数のビーム部材を組み立ててプレキャスト格子枠を構築し、このプレキャスト格子枠の前記ビーム部材の接地面側にジオテキスタイルの袋体にモルタルを充填した底面馴染みモルタルを備え、前記プレキャスト格子枠の交点部に地山補強材を打設し、この地山補強材の頭部を包含するように前記プレキャスト格子枠の前記交点部に場所打ちコンクリートを打設する補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記連結係止装置には、前記プレキャスト格子枠の交点部に前記地山補強材が打設される空隙部分を形成する隅切部が設けられ、前記ビーム部材への前記連結係止装置の取り付け位置の調整により、前記空隙部分の大きさを調整して、径の異なる地山補強材への対応を可能にすることを特徴とする。
【0018】
〔2〕上記〔1〕記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記連結係止装置が取り付けられた前記ビーム部材を連結するのみで前記プレキャスト格子枠を構築可能にすることを特徴とする。
【0019】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記ビーム部材の長さ調整のみで、格子幅の異なる前記プレキャスト格子枠を構築可能にすることを特徴とする。
【0020】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記底面馴染みモルタルの前記ジオテキスタイルの袋体には、前記ビーム部材側と前記地山ののり面側とで性質の異なる2種類のジオテキスタイルを用いることで、前記プレキャスト格子枠と前記地山ののり面との密着性をさらに高めるようにすることを特徴とする。
【0022】
〔6〕上記〔1〕又は〔2〕記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記プレキャスト格子枠の前記交点部に前記地山補強材の頭部を収納可能にすることを特徴とする。
【0023】
〔7〕上記〔1〕又は〔2〕記載の補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、前記連結係止装置と前記地山補強材の頭部が定着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0025】
(1)補強土一体型プレキャスト格子枠工法において、「格子枠」を主に連結係止装置およびビーム部材の2部材のみで構成される構造とすることによって、施工の迅速化・工費の低廉化が可能となる。
【0026】
(2)従来の「プレキャスト格子枠工」と違って、プレキャスト格子枠と地山補強土工法の地山補強材との定着部を一体化することによって、のり面表層部の薄い小崩落を防止する効果に関して「場所打ち格子枠工」等と同等以上の効果が期待できる。
【0027】
(3)プレキャスト格子枠の交点部を補強材頭部が収納可能な構造としたことによって、補強材頭部が突出することなく景観上および安全上優位となる。
【0028】
(4)プレキャスト格子枠工とのり面地山との密着を高めるために、ビーム部材の接地面側にモルタル等を充填したジオテキスタイルの袋を備え、さらにビーム部材側とのり面地山側とで性質の異なる2種類のジオテキスタイルを用いることによって、のり面地山との密着性をさらに高めることが可能となる。
【0029】
(5)以上のことを総合的に判断すると、従来の「場所打ち格子枠工」と違って、原位置での施工性が向上し、工期短縮、品質の向上、工費の低廉化を図ることが可能となる。
【0030】
(6)基本的に、工場生産による「プレキャスト格子枠」は、大型の施工機械を使用しなくても施工が可能な寸法・重量であることから、狭隘な場所での施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】プレキャスト格子枠工の施工例を示す側面図である。
図2】プレキャスト格子枠工の施工例を示す正面図である。
図3】連結係止装置を示す図である。
図4】連結係止装置を取り付けたビーム部材を示す図である。
図5】補強土一体型プレキャスト格子枠工の組み立て方法を示す図である。
図6】従来の「地山補強土工法」で併用される「場所打ち格子枠工」の施行例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工法は、地山ののり面に、あらかじめ連結係止装置が取り付けられた複数のビーム部材を組み立ててプレキャスト格子枠を構築し、該プレキャスト格子枠の前記ビーム部材の接地面側にジオテキスタイルの袋体にモルタルを充填した底面馴染みモルタルを備え、前記プレキャスト格子枠の交点部に地山補強材を打設し、該地山補強材の頭部を包含するように前記プレキャスト格子枠の前記交点部に場所打ちコンクリートを打設する。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0034】
図1はプレキャスト格子枠工の施工例を示す側面図、図2はプレキャスト格子枠工の施工例を示す正面図である。
【0035】
これらの図において、1は補強土一体型プレキャスト格子枠工、2は地山、3はビーム部材、4は底面馴染みモルタル(袋体に充填)、5は地山補強材、6は連結係止装置、7は場所打ちコンクリート(モルタル等)である。
【0036】
本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では、主にビーム部材3と連結係止装置6の2部材のみで構成されるプレキャスト格子枠を用いる。このプレキャスト格子枠は、各部材を工場にて生産し、あらかじめ連結係止装置6を取り付けたビーム部材3を現場(地山2ののり面等)に搬入し、該連結係止装置6を取り付けたビーム部材3を後述する手順で連結して組み立てることで構築される。その後、プレキャスト格子枠の交点部5Aに地山補強材5を打設し、該地山補強材5の頭部を包含する形でプレキャスト格子枠の交点部5Aに場所打ちコンクリートを打設するようにする。
【0037】
このように、本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では、主に2部材のみからなるプレキャスト格子枠を用いるので、施工の迅速化、工費の低廉化が可能となる。格子枠の設計変更も容易であり、例えば、ビーム部材3の長さを調整することのみで、格子幅の異なる格子枠を構築することができる。さらに、工場で構成部材を生産し、現場に搬入した後に組み立てを行うため施工が容易であり、現場状況に合わせてシステマティックに構築することができ、特に原位置での施工性が向上する。
【0038】
本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では、従来の「場所打ち格子枠工(現場打ち吹付格子枠工等)」と比較して、格子枠交点部が一体成形されてはいないが、場所打ちコンクリート(モルタル等)を打設して一体化するようにしたので、表層崩壊の防止に高い効果を得ることができる。場所打ちコンクリートを打設する際には、地山補強材の頭部を包含するようにしたので、プレキャスト格子枠と地山補強材も容易に一体化することができる。
【0039】
本発明のプレキャスト格子枠工では、さらに、ビーム部材3の接地面にモルタル等を充填したジオテキスタイルの袋体(底面馴染みモルタル4)を有する構造とし、プレキャスト格子枠と地山2ののり面等を密着させる。これにより、地山2ののり面等に凹凸の違いがあっても、プレキャスト格子枠とのり面等を確実に密着させることができる。プレキャスト格子枠と地山2ののり面等の密着性をさらに高めるため、この底面馴染みモルタル4の袋体に、ビーム部材側と地山2ののり面側とで性質の異なる2種類のジオテキスタイルを用いることもできる。性質の異なる2種類のジオテキスタイルとしては、ビーム部材、地山2ののり面との密着性をより高めることができるものを選択すればよく、例えば、地山2ののり面側に比較的軟質なジオテキスタイルを用い、ビーム部材側に比較的硬質なジオテキスタイルを用いると、プレキャスト格子枠と地山2ののり面等との密着性をより高めることができる。なお、ジオテキスタイルの袋体は、内部に充填するモルタル等が漏れ出さない編み目を有したものが適用される。
【0040】
なお、ビーム部材3は、地山補強材5間の土塊の抜き出しに対して、曲げおよびせん断抵抗を有する構造体とする。
【0041】
また、施工過程で生じる継ぎ手部やプレキャスト格子枠交点部もビーム部材3と同等以上の強度・剛性を有するものとする。
【0042】
図3は連結係止装置を示す図であり、図3(a)は立体図、3(b)は正面図、3(c)は上面図、3(d)は下面図、3(e)は側面図である。ここで、6Aは連結係止装置の正面、6Bは連結係止装置の裏面、6Cは連結係止装置の上面、6Dは連結係止装置の下面、6Eは連結係止装置の側面を示す。
【0043】
この図において、11は凸部、12は本体、13は底部、14はボルト締結部、15は隅切部である。
【0044】
また、図4は連結係止装置を取り付けたビーム部材を示す図であり、図4(a)は連結係止装置を取り付けたビーム部材の上面図、4(b)は連結係止装置を取り付けたビーム部材の側面図である。
【0045】
本発明にかかるプレキャスト格子枠工で用いる連結係止装置は、あらかじめビーム部材に取り付けられ、互いに連結されてプレキャスト格子枠の交点を形成する。
【0046】
なお、連結係止装置では、図3(e)の側面図に示されるように、凸部11と本体12とが段差を構成しており、連結組み立て時に一方の連結係止装置の凸部11が他方の連結係止装置の本体12と係合し、連結可能な構成となっている。また、本体11には隅切部15が設けられている。
【0047】
図5は補強土一体型プレキャスト格子枠の組み立て方法を示す図であり、図5(a)は手順1、図5(b)は手順2、図5(c)は手順3、図5(d)は手順4をそれぞれ示している。
【0048】
手順1では、ビーム部材(2)を矢印方向に移動させ、ビーム部材(2)に取り付けられた連結係止装置の凸部11とビーム部材(1)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結する。
【0049】
手順2では、ビーム部材(3)を矢印方向に移動させ、ビーム部材(3)に取り付けられた連結係止装置の凸部11と、ビーム部材(2)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結する。
【0050】
手順3では、ビーム部材(4)を矢印方向に移動させ、ビーム部材(1)に取り付けられた連結係止装置の凸部11と、ビーム部材(4)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結するとともに、ビーム部材(4)に取り付けられた連結係止装置の凸部11とビーム部材(3)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結する。
【0051】
手順4では、各連結部分において連結係止装置6のボルト締結部14でボルトを締め付け、プレキャスト格子枠の組立を完了する。
【0052】
このように、本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では主にビーム部材と連結係止装置の2部材のみでプレキャスト格子枠を構築する。
【0053】
また、連結係止装置の本体12に隅切部15を設けることで、プレキャスト格子枠の交点部に隅切部15による空隙部分が形成され、この空隙部分にあと施工の地山補強材を打設することで、地山補強材の頭部はプレキャスト格子枠の交点部に収納される。これにより、場所打ちコンクリート打設後も、地山補強材の頭部が突出せず、景観上も安全上も優位な構造となる。さらに、隅切部の寸法調整もしくは、ビーム部材への連結係止装置の取り付け位置の調整により、異なる補強材径に対応可能である。
【0054】
なお、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工法は、「格子枠」を主に連結係止装置およびビーム部材の2部材のみで構成される構造とすることによって、施工の迅速化・部材の低廉化が可能となる補強土一体型プレキャスト格子枠工法として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 補強土一体型プレキャスト格子枠工
2 地山
3 ビーム部材
4 底面馴染みモルタル(袋体に充填)
5 地山補強材
5A プレキャスト格子枠の交点部
6 連結係止装置
6A 連結係止装置の正面
6B 連結係止装置の裏面
6C 連結係止装置の上面
6D 連結係止装置の下面
6E 連結係止装置の側面
7 場所打ちコンクリート(モルタル等)
11 凸部
12 本体
13 底部
14 ボルト締結部
15 隅切部
図1
図2
図3
図4
図5
図6