【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0034】
図1はプレキャスト格子枠工の施工例を示す側面図、
図2はプレキャスト格子枠工の施工例を示す正面図である。
【0035】
これらの図において、1は補強土一体型プレキャスト格子枠工、2は地山、3はビーム部材、4は底面馴染みモルタル(袋体に充填)、5は地山補強材、6は連結係止装置、7は場所打ちコンクリート(モルタル等)である。
【0036】
本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では、主にビーム部材3と連結係止装置6の2部材のみで構成されるプレキャスト格子枠を用いる。このプレキャスト格子枠は、各部材を工場にて生産し、あらかじめ連結係止装置6を取り付けたビーム部材3を現場(地山2ののり面等)に搬入し、該連結係止装置6を取り付けたビーム部材3を後述する手順で連結して組み立てることで構築される。その後、プレキャスト格子枠の交点部5Aに地山補強材5を打設し、該地山補強材5の頭部を包含する形でプレキャスト格子枠の交点部5Aに場所打ちコンクリートを打設するようにする。
【0037】
このように、本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では、主に2部材のみからなるプレキャスト格子枠を用いるので、施工の迅速化、工費の低廉化が可能となる。格子枠の設計変更も容易であり、例えば、ビーム部材3の長さを調整することのみで、格子幅の異なる格子枠を構築することができる。さらに、工場で構成部材を生産し、現場に搬入した後に組み立てを行うため施工が容易であり、現場状況に合わせてシステマティックに構築することができ、特に原位置での施工性が向上する。
【0038】
本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では、従来の「場所打ち格子枠工(現場打ち吹付格子枠工等)」と比較して、格子枠交点部が一体成形されてはいないが、場所打ちコンクリート(モルタル等)を打設して一体化するようにしたので、表層崩壊の防止に高い効果を得ることができる。場所打ちコンクリートを打設する際には、地山補強材の頭部を包含するようにしたので、プレキャスト格子枠と地山補強材も容易に一体化することができる。
【0039】
本発明のプレキャスト格子枠工では、さらに、ビーム部材3の接地面にモルタル等を充填したジオテキスタイルの袋体(底面馴染みモルタル4)を有する構造とし、プレキャスト格子枠と地山2ののり面等を密着させる。これにより、地山2ののり面等に凹凸の違いがあっても、プレキャスト格子枠とのり面等を確実に密着させることができる。プレキャスト格子枠と地山2ののり面等の密着性をさらに高めるため、この底面馴染みモルタル4の袋体に、ビーム部材側と地山2ののり面側とで性質の異なる2種類のジオテキスタイルを用いることもできる。性質の異なる2種類のジオテキスタイルとしては、ビーム部材、地山2ののり面との密着性をより高めることができるものを選択すればよく、例えば、地山2ののり面側に比較的軟質なジオテキスタイルを用い、ビーム部材側に比較的硬質なジオテキスタイルを用いると、プレキャスト格子枠と地山2ののり面等との密着性をより高めることができる。なお、ジオテキスタイルの袋体は、内部に充填するモルタル等が漏れ出さない編み目を有したものが適用される。
【0040】
なお、ビーム部材3は、地山補強材5間の土塊の抜き出しに対して、曲げおよびせん断抵抗を有する構造体とする。
【0041】
また、施工過程で生じる継ぎ手部やプレキャスト格子枠交点部もビーム部材3と同等以上の強度・剛性を有するものとする。
【0042】
図3は連結係止装置を示す図であり、
図3(a)は立体図、3(b)は正面図、3(c)は上面図、3(d)は下面図、3(e)は側面図である。ここで、6Aは連結係止装置の正面、6Bは連結係止装置の裏面、6Cは連結係止装置の上面、6Dは連結係止装置の下面、6Eは連結係止装置の側面を示す。
【0043】
この図において、11は凸部、12は本体、13は底部、14はボルト締結部、15は隅切部である。
【0044】
また、
図4は連結係止装置を取り付けたビーム部材を示す図であり、
図4(a)は連結係止装置を取り付けたビーム部材の上面図、4(b)は連結係止装置を取り付けたビーム部材の側面図である。
【0045】
本発明にかかるプレキャスト格子枠工で用いる連結係止装置は、あらかじめビーム部材に取り付けられ、互いに連結されてプレキャスト格子枠の交点を形成する。
【0046】
なお、連結係止装置では、
図3(e)の側面図に示されるように、凸部11と本体12とが段差を構成しており、連結組み立て時に一方の連結係止装置の凸部11が他方の連結係止装置の本体12と係合し、連結可能な構成となっている。また、本体11には隅切部15が設けられている。
【0047】
図5は補強土一体型プレキャスト格子枠の組み立て方法を示す図であり、
図5(a)は手順1、
図5(b)は手順2、
図5(c)は手順3、
図5(d)は手順4をそれぞれ示している。
【0048】
手順1では、ビーム部材(2)を矢印方向に移動させ、ビーム部材(2)に取り付けられた連結係止装置の凸部11とビーム部材(1)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結する。
【0049】
手順2では、ビーム部材(3)を矢印方向に移動させ、ビーム部材(3)に取り付けられた連結係止装置の凸部11と、ビーム部材(2)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結する。
【0050】
手順3では、ビーム部材(4)を矢印方向に移動させ、ビーム部材(1)に取り付けられた連結係止装置の凸部11と、ビーム部材(4)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結するとともに、ビーム部材(4)に取り付けられた連結係止装置の凸部11とビーム部材(3)に取り付けられた連結係止装置の本体12を連結する。
【0051】
手順4では、各連結部分において連結係止装置6のボルト締結部14でボルトを締め付け、プレキャスト格子枠の組立を完了する。
【0052】
このように、本発明の補強土一体型プレキャスト格子枠工では主にビーム部材と連結係止装置の2部材のみでプレキャスト格子枠を構築する。
【0053】
また、連結係止装置の本体12に隅切部15を設けることで、プレキャスト格子枠の交点部に隅切部15による空隙部分が形成され、この空隙部分にあと施工の地山補強材を打設することで、地山補強材の頭部はプレキャスト格子枠の交点部に収納される。これにより、場所打ちコンクリート打設後も、地山補強材の頭部が突出せず、景観上も安全上も優位な構造となる。さらに、隅切部の寸法調整もしくは、ビーム部材への連結係止装置の取り付け位置の調整により、異なる補強材径に対応可能である。
【0054】
なお、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。