特許第6476111号(P6476111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476111
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】プロセス制御ループ電流検証
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20190218BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G05B23/02 V
   G01D21/00 N
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-514951(P2015-514951)
(86)(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公表番号】特表2015-524108(P2015-524108A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】RU2012000422
(87)【国際公開番号】WO2013180591
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年1月26日
【審判番号】不服2016-18546(P2016-18546/J1)
【審判請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルナク,ヴァレンチン・ゲンナジーヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,パヴェル・パヴロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ベロフ,レオニド・イオシフォヴィッチ
【合議体】
【審判長】 西村 泰英
【審判官】 栗田 雅弘
【審判官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0086474(US,A1)
【文献】 特開平6−209493(JP,A)
【文献】 特開平11−132812(JP,A)
【文献】 特開2012−99088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B23/00-23/02
G01D18/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知されたプロセス変数を示す出力信号(126)を生成するように構成されたプロセス変数センサ(120)と、
前記出力信号(126)を表すデジタル測定値(132)をアナログ信号(152)に変換するように構成され、前記アナログ信号(152)から高周波ノイズを除去してアナログ測定値(138)を生成するための第1のローパスフィルタ(150)を含むデジタル−アナログ変換回路(136)と、
2線式プロセス制御ループ(106)上のループ電流値を、前記アナログ測定値(138)の関数として制御するように構成されたループ電流出力回路(122)と、
前記2線式プロセス制御ループに結合され、前記ループ電流値を測定するように構成され、測定結果を示すアナログ信号から高周波ノイズを除去して測定されたループ電流値(142)を生成するための第2のローパスフィルタ(156)、及び前記測定されたループ電流値(142)をアナログ信号からデジタル信号に変換するためのアナログ−デジタル変換器(158)を含むループ電流測定回路(140)と、
前記デジタル測定値(132)と、前記第1及び第2のローパスフィルタ(150、156)の特性とに基づく計算によって、近似ループ電流値(164)を算出し、該近似ループ電流値(164)と、デジタル信号に変換された前記ループ電流値(142)との比較に基づいて診断信号(144)を生成するように構成されたループ電流検証回路(124)と、
を含む、プロセス装置(102)。
【請求項2】
前記ループ電流検証回路が、前記第1のローパスフィルタの時定数に基づいて、前記近似ループ電流値を算出するように構成される、請求項1記載のプロセス装置。
【請求項3】
前記ループ電流検証回路が、前記第2のローパスフィルタの時定数に基づいて、前記近似ループ電流値を算出するように構成される、請求項記載のプロセス装置。
【請求項4】
前記ループ電流検証回路が、
前記測定されたループ電流値と前記近似ループ電流値との間の差分に対応する誤差評価出力(166)を有する差分評価器(160)と、
前記誤差評価出力と基準値(168)とを比較し、比較に応じた前記診断信号を出力するように構成されたコンパレータ(162)と、
を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項5】
前記ループ電流検証回路が、以下の式
C1(n)=a*I(n)+b*IC1(n−1);及び
C2(n)=a*IC1(n)+b*IC2(n−1);
(ここで、nは現行のサンプルを表し、n−1は先行のサンプルを表し、Iはデジタル測定値であり、a及びbは、前記第1のローパスフィルタの時定数に基づいて計算され、a及びbは、前記第2のローパスフィルタの時定数に基づいて計算される)
に基づいて、前記近似ループ電流値(IC2(n))を再帰的に生成するように構成される、請求項3又は4に記載のプロセス装置。
【請求項6】
前記ループ電流検証回路が、メモリ(134)に記憶された補正係数に基づいて、前記近似ループ電流値を算出するように構成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項7】
前記ループ電流検証回路が、以下の式
(n)=I(n)−k*ΔI=I(n)−k*(I(n)−I(n−1));
(ここで、kは補正係数であり、nは現行のサンプルを表し、n−1は先行のサンプルを表し、Iはデジタル測定値である)
に基づいて、前記近似ループ電流値を算出するように構成される、請求項6記載のプロセス装置。
【請求項8】
前記2線式プロセス制御ループが、4−20ミリアンペアループである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項9】
前記プロセス装置が、前記2線式プロセス制御ループによって電力供給される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス装置。
【請求項10】
プロセス装置(102)において、2線式プロセス制御ループ(106)内のループ電流値を検証するための方法であって、
プロセス変数を検知する(184)ことと、
デジタル測定値(132)を、前記検知されたプロセス変数の関数として、第1の値から第2の値まで変化させる(186)ことと、
第1のローパスフィルタ(150)を用いて、前記デジタル測定値(132)をアナログ測定値(138)に変換する(188)ことと、
前記2線式プロセス制御ループ(106)内のループ電流値を、前記アナログ測定値(138)の関数として調整する(190)ことと、
前記2線式プロセス制御ループ(106)内の前記ループ電流値を検知する(192)ことと、
第2のローパスフィルタ(156)を用いて、前記検知されたループ電流値を測定されたループ電流値(142)に変換する(194)ことと、
アナログ−デジタル変換器(158)を用いて、前記測定されたループ電流値(142)をアナログ信号からデジタル信号に変換することと、
前記デジタル測定値(132)と、前記第1及び第2の各ローパスフィルタ(150、156)の特性とに基づく計算によって、近似ループ電流値(14)を算出すること(196)
前記近似ループ電流値(164)とデジタル信号に変換された前記ループ電流値(142)との比較(198)に基づいて、診断信号(144)を生成すること(200)と、
を含む方法。
【請求項11】
前記測定されたループ電流値を近似化することが、以下の式
C1(n)=a*I(n)+b*IC1(n−1);及び
C2(n)=a*IC1(n)+b*IC2(n−1);
(ここで、nは現行のデジタルサンプルを表し、n−1は先行のデジタルサンプルを表し、Iはデジタル測定値であり、a及びbは第1のローパスフィルタの時定数に基づいて計算され、a及びbは、第2のローパスフィルタの時定数に基づいて計算される)
に基づいて、前記近似ループ電流値(IC2)を再帰的に生成することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記a、b、a及びbの値をメモリ(134)から取り出すことをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記近似ループ電流値を算出することが、前記デジタル測定値に、前記第1及び前記第2のローパスフィルタの特性に基づく補正係数を適用することを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記プロセス装置のメモリ(134)から前記補正係数を取り出すことをさらに含む、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロセス制御/監視システムで用いられるプロセス装置に関する。より具体的には、本開示は、プロセス装置における誤差を特定するためのループ電流診断を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス変数トランスミッタは、プロセス制御/監視システムにおけるプロセスパラメータ(又はプロセス変数)を測定し、制御室に測定値を送信するために用いられる。たとえば、プロセス流体の圧力に関する情報が、制御室に送信されて、精油等のプロセスを制御するために用いられることができる。
【0003】
プロセス変数測定の送信は、2線式プロセス制御ループを経由して行われることが多い。そのようなプロセス制御ループでは、電流は、たとえば制御室内のような場所にある電流源から供給され、トランスミッタは、フィールド内のその離間した場所からのループを流れる電流を制御する。たとえば、4mA信号を用いて、ゼロ読み取り値を示すことができ、20mA信号を用いて、フルスケールの読み取り値を示すことができる。また、同じ2線式を用いて、トランスミッタに電力供給することもできる。
【0004】
最近になって、トランスミッタは、プロセス制御ループを通して流れるアナログ電流信号上に重畳されるデジタル信号を用いて、制御室と通信するデジタル回路を使用している。そのような技術の一例は、HART(登録商標)通信プロトコルである。HART(登録商標)プロトコル及び他のそのようなプロトコルは、通常は、トランスミッタに送られて、所望の応答、たとえばトランスミッタ制御または問い合わせを引き出すコマンド又は指示のセットを含む。
【0005】
アナログループ電流を用いて、たとえばプロセス変数等の情報を表す場合、ループ電流が設定されることができる精度は、送信されたプロセス変数の精度に対する制限要因となる可能性がある。トランスミッタが経年劣化するに従い、ループ電流を制御してプロセス変数測定を正確に表すトランスミッタの能力は劣化する可能性がある。したがって、ループ電流がプロセス変数測定値の正確な表示であることを確認することによって、トランスミッタに周期的な診断試験を行うことが望ましい。この診断機能を行う代表的な装置は、米国特許第7,280,048号及び米国公開第2005/0030186号に記載され、これらはChanhassen, MinnesotaのRosemount Inc.に譲渡されている。
【0006】
トランスミッタによって行われる診断試験は、故障しているトランスミッタを誤って特定することを防止するために、可能な限り正確である必要がある。従来のトランスミッタ診断試験は、プロセス変数が変化している間は、故障しているトランスミッタを誤って特定する場合がある。変化しているプロセス変数は、トランスミッタが正しく動作しているにもかかわらず、トランスミッタが、ループ電流を、プロセス変数測定値とは異なる値に設定する結果となる可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
プロセス装置は、検知されたプロセス変数を示す出力信号を生成するように構成されたプロセス変数センサと、2線式プロセス制御ループ上のループ電流を、出力信号に基づく値に制御するように構成されたループ電流出力回路と、プロセス制御ループに結合され、ループ電流に基づいて測定されたループ電流値を生成するように構成されたループ電流測定回路と、出力信号と、ローパスフィルタの特性とに基づいて、ループ電流値を近似化し、近似化されたループ電流値と測定されたループ電流値との比較に基づいて診断信号を生成するように構成されたループ電流検証回路とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プロセス管に接続されたプロセス変数トランスミッタを含む、プロセス制御システムの図である。
図2】プロセス変数トランスミッタの斜視図であり、その内部に有する1つの代表的な構成を示す。
図3】本発明の実施形態によるプロセス装置の簡略化されたブロック図である。
図4】プロセス装置における代表的な信号の3つのチャートである。
図5】本発明の実施形態による、ループ電流検証回路の簡略化された図である。
図6】本発明の実施形態による、代表的なローパスフィルタの簡略化された図である。
図7】本発明の実施形態による、近似ループ電流値を計算する方法を図示する。
図8】本発明の実施形態による、近似ループ電流値を計算する方法を図示する。
図9】本発明の実施形態による、2線式プロセス制御ループ内のループ電流を検証するための、プロセス装置における方法を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、デジタル測定値から変換されたアナログ出力が、測定されたデジタル値を正確に反映する検証を提供する。1つの代表的な実施では、本発明の実施形態は、プロセス装置によってプロセス制御ループに付与された、電流(たとえば4−20mA、0−20mA)又は電圧(たとえば1−5V、0−5V)等のアナログ出力が、所望の値を正確に反映する値に設定される検証を提供する。本発明は、プロセス制御ループ内の電流を制御するために用いられるあらゆるプロセス装置で実施されることができるが、本明細書で述べられた、実例となるプロセス装置に限定されない。たとえば、本明細書に記載された1つのプロセス装置は、プロセス変数を検知するためのセンサを含むプロセス変数トランスミッタである。このトランスミッタは、プロセス制御ループを通して流れる電流を、検知されたプロセス変数を表すアナログ値に制御する。しかし、本発明のさまざまな態様を実施するために、プロセス装置がプロセス変数を検知することが必要ではないことが理解される。本発明の実施形態はまた、アナログ出力がデジタル信号から変換される、他のシステムでの診断に用いてもよい。たとえば、本発明の実施形態を用いて、多変数トランスミッタからHART(登録商標)デジタル情報(一次、二次及び他の変数)を読み取って、それを3つのアナログ出力信号(たとえば4−20mA信号)に変換するRosemount 333 HART(登録商標)3線式変換器での診断を行ってもよい。
【0010】
図1は、プロセス変数トランスミッタの形態のプロセス装置102を含み、プロセス管104に接続されている代表的なプロセス制御システム100の図であるプロセス装置102は、固有の又は標準的なプロトコル、たとえばHART(登録商標)通信プロトコルに従って動作する2線式プロセス制御ループ106に結合されている。しかし、本発明は、この規格に限定されない。
【0011】
2線式プロセス制御ループ106は、プロセス装置102と制御室108との間を通っている。1つの実施形態では、ループ106は、プロセス変数センサ120を用いて検知された、検知されたプロセス変数を表す電流Iを運ぶ。加えて、ループ106は、他のプロトコル、たとえばHART(登録商標)プロトコルに従って動作することができ、ループ106を通る電流上にデジタル信号重畳されることを可能にし、デジタル情報がプロセス装置102に送信され、またそこから受信されることができるようにする。
【0012】
図2は、プロセス装置102の斜視図であり、その内部に有する1つの代表的な構成を示している。この代表的な実施形態では、プロセス装置102は、検知モジュール112に結合されたトランスミッタモジュール110を含む。検知モジュール112は、マニホールドプロセス継手114を通して、プロセス配管104(図1に図示)に結合する。
【0013】
トランスミッタモジュール110は、検知モジュール112内に設けられた検知モジュール電子回路118に結合するトランスミッタモジュール電子回路116を含む。通常は、検知モジュール電子回路118は、プロセス変数センサ、たとえばプロセスの動作に関連するプロセス変数を検知するために用いられるセンサ120(図1)に結合する。トランスミッタモジュール電子回路116は、ループ電流出力回路122、及びループ電流検証回路124を含む。回路124は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれら2つのハイブリッドな組み合わせで実施されることができ、プロセス装置102内部のどこにでも位置することができる。
【0014】
動作中、ループ電流出力回路122は、測定されたプロセス変数等を表すように、ループ106を通って流れる電流Iの値を制御する。これを用いて、工業用プロセスの動作を監視又は制御することができる。いくつかの用途では、出力回路122をさらに用いて、プロセス装置102内部の回路に、従来の技術に従って、ループ106を経由して受けた電力を用いて生成された電力供給する。いくつかの用途では、たとえば安全度水準(Safety Integrity Level:SIL)認定を得るために、プロセス装置102が一定の信頼性基準を満たす必要がある。たとえば、故障又は今にも起こりそうな故障の場合にプロセスが停止されることを確実にするために、いくつかの認定は、コンポーネントのいくつかがプロセス装置102で故障したとしても、警報信号が正しく送られて、安全な停止を起こすことができるようにすることを必要とする。ループ電流検証回路124は、そのような構成に適用可能とすることができる。
【0015】
図3は、本発明の実施形態によるプロセス装置102の簡略化されたブロック図である。いくつかの実施形態では、プロセス装置102は、プロセスに結合し、検知されたプロセスの測定値を示す出力信号126を発生させるように構成されたプロセス変数センサ120を含む。プロセス装置102は、測定信号126の初期処理を提供する測定回路をさらに含む。1つの実施形態では、測定回路は、アナログ−デジタル変換器128を含み、アナログ出力信号126をデジタル測定信号に変換する。1つの実施形態では、測定回路は、変換器128からのデジタル測定信号を処理し、デジタル測定値132を出力するマイクロコントローラ130に代表される、1以上のマイクロプロセッサを含む。本測定回路は、たとえばデジタル化されたセンサ出力信号を処理するためにマイクロコントローラ128によって用いられるための記憶された値、当該1以上のプロセッサによって実行可能であるプログラム命令を行うための方法ステップ、及び本明細書に記載された他の機能を含み得るメモリ134をさらに含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、プロセス装置102は、デジタル測定値132をアナログ測定値138に変換するデジタル−アナログ変換回路136を含む。アナログ測定値138は、ループ電流出力回路122に提供され、これは、従来の技術に従って、2線式プロセス制御ループ106内のループ電流値Iをアナログ測定値138の関数として制御する。
【0017】
1つの実施形態では、プロセス装置102は、プロセス制御ループ106に結合されたループ電流測定回路140を含み、ループ電流値Iに基づく被測定ループ電流値142を生成するように構成される。1つの実施形態では、プロセス装置102は、ループ電流検証回路124を含み、これは一般的には、測定されたループ電流値142をデジタル測定値132と比較し、それに応答して、比較に関連する診断信号144を生成するように構成される。たとえば、ループ電流検証回路124は、ループ電流値Iがデジタル測定値132によって示された目的とする値の、所定の又は調整可能な閾値外であることを示す診断信号144を提供し得る。設定された閾値は、固定された閾値に基づくか、又は比率差異(percentage discrepancy)に基づくか、もしくはループ電流値Iの目的とする値132との他の関係であってもよい。加えて、診断信号144は、実際のループ電流値I対所望の出力ループ電流値132の誤差量の絶対的又は相対的な表示であることができる。診断信号144は、従来の技術に従って、2線式プロセス制御ループ106を経由して通信されることができる。
【0018】
デジタル−アナログ変換回路136の1つの実施形態は、デジタル−アナログ変換器146及びローパスフィルタ150を含む。デジタル−アナログ変換器146は、デジタル測定値132をアナログ信号152に変換する。信号152は、ローパスフィルタ150を通過して、アナログ測定値138を発生させる。
【0019】
ループ電流測定回路140の1つの実施形態は、電流センサ154、又は2線式プロセス制御ループ106内のループ電流値Iを測定するための他の装置を含む。電流センサ154は、ループ電流値Iと直列である抵抗の両端の電圧の測定を通して、又は他の好適な従来の技術を通して、ループ電流を測定してもよい。1つの実施形態では、電流センサ154からの出力は、ローパスフィルタ156を通してアナログ−デジタル変換器158に渡され、ループ電流検証回路124に提供される測定されたループ電流値142を形成する。ローパスフィルタ156は、一般的には、アナログ−デジタル変換器158による処理の前に、ループ電流測定値142から高周波ノイズを除去するように動作する。
【0020】
上述したように、ループ電流検証回路124は、ループ電流値Iをループ電流の所望の値と比較する。1つの実施形態では、ループ電流の所望の値は、デジタル測定値132によって表され、センサ出力126を表す。図3に示されるように、ループ電流検証回路124は、好適な接続を通してデジタル測定値132を受信する。
【0021】
別の例によれば、プロセス装置102は試験モードに入ることができ、この中で2線式プロセス制御ループ106を通るループ電流値Iは、1つ以上の所定のループ電流値に、又はループ電流値のパターンに設定される。この試験モード中、ループ電流検証回路124は、プロセス制御ループ106を通って流れる実際のループ電流値Iを、デジタル測定値132ではなく、所定のループ電流値を表す基準値と比較する。したがって、プロセス装置102の代表的な図は、デジタル測定値132がループ電流検証回路124に提供されることを示しているが、プロセス装置102が試験モードである間に生成された所定のループ電流値Iに対応する基準デジタル測定値が、ループ電流検証回路124に代替的に提供されてもよいことが理解される。以下、デジタル測定値と、所定の試験モードループ電流値Iを示す基準信号との両方を、デジタル測定値132と呼ぶ。
【0022】
ループ電流検証回路124に、測定されたデジタル値132によって示されたループ電流値Iの所望の値と、実際のループ電流値Iとの間の誤差を正確に表す診断信号144を発生させるために、ループ電流検証回路124は、測定されたループ電流値142に影響する測定誤差を考慮しなければならない。そのような測定誤差の考慮を怠ると、プロセス装置102内の誤差を誤って示す診断信号144につながる可能性がある。
【0023】
本発明の実施形態は、センサ出力信号126が一般的に、プロセス変数の変化に応じて変化するときに生じる動的測定誤差に対応するように動作する。そのようなセンサ出力信号126の変化は、図4に示された上段のチャートに示されたように、デジタル測定値132の電圧でのステップ変化を発生させる。デジタル測定値132の電圧のステップ変化に応じて発生する、結果として得られるアナログ測定値138が、図4の中段のチャートに示される。アナログ測定値138は、その値とデジタル測定値132との間の差分に対応した動的測定誤差を有する。この誤差は、図4の下段のチャートに示された測定されたループ電流値142によって示されるように、ループ電流測定回路140によってさらに拡大される。デジタル測定値132と測定されたループ電流値142との間の、結果として得られる動的誤差は、一般的には、ローパスフィルタ150及び156によって引き起こされる。説明がない限り、この動的誤差は、プロセス装置102の誤差を誤って示す診断信号144の生成を引き起こす可能性がある。
【0024】
図5は、本発明の実施形態による、ループ電流検証回路124の簡略化された図である。いくつかの実施形態では、ループ電流検証回路124は、差分評価器160及びコンパレータ162を含む。差分評価器160は、測定されたループ電流値142と近似ループ電流値164との間の差分を定める。差分値166はコンパレータ162に出力され、これは差分値166を基準値168と比較して、比較に応じた診断信号144を出力する。基準値168は、上述のように、各種の診断信号144、たとえば一組の閾値誤差値を誘発するために用い得る1以上の値を表す。基準値168は、プロセス装置102のメモリ、たとえばメモリ134から取り出されてもよい。本明細書に提示された装置102の他のモジュールと同様に、差分評価器160及びコンパレータ162は、たとえばマイクロコントローラ130の1以上のプロセッサによって実行されるハードウェア又はソフトウェアを通して、プロセス装置102に組み込まれてもよい。
【0025】
近似ループ電流値164は、デジタル測定値132と、ローパスフィルタ150及び156の特性とに基づいて生成されて、動的測定誤差を近似化する。結果として得られた、測定されたループ電流値142と、差分評価器160から出力された近似ループ電流値164との間の差分値166は、デジタル測定値132を用いて可能であるよりも変化している期間中、装置102の実際の誤差のより良いインジケータである。
【0026】
1つの実施形態では、近似化されたデジタルループ電流値164は、ローパスフィルタ150及び156の時定数を考慮する。図6は、フィルタ150及び156に用いられることができ、ローパスフィルタ150として図示された代表的なローパスフィルタの簡略化された図である。ローパスフィルタ150は、ループ電流出力回路122と直列である抵抗Rと、ループ電流出力回路122と並列であるコンデンサCとを含む。コンデンサCはリアクタンスを呈し、デジタル−アナログ変換器146からの低周波信号をブロックして、それらをループ電流出力回路122に進ませる。コンデンサCのリアクタンスは、デジタル−アナログ変換器146から出力されたより高い周波数の信号とともに降下し、コンデンサCを短絡接地として効果的に機能させ、それによって、より高い周波数のノイズをフィルタリングする。当業者には理解されるように、ローパスフィルタの時定数は、抵抗R及びキャパシタンスCの結果に基づく。
【0027】
いくつかの実施形態では、ループ電流検証回路124は、図7に概略的に図示されるように、一対の巡回型フィルタ170及び172を用いて、近似ループ電流値164を計算する。巡回型フィルタ170及び172は、メモリ134内に記憶されたソフトウェア、又はマイクロコントローラ130の1以上のプロセッサによって実行されるプロセス装置102の他のメモリに組み込まれ得る。代替的に、フィルタ170及び172は、ハードウェアに組み込まれてもよい。
【0028】
巡回型フィルタ170は、デジタル測定値132のデジタルサンプル値(I(n))を受信し、デジタル測定値サンプル値I(n)に基づく修正サンプル値IC1(n)、先行の修正済みサンプル値IC1(n−1)及び値a及びbを出力し、これらは、式1で示されたように、ローパスフィルタ150の時定数に基づいて計算される。1つの実施形態では、巡回型フィルタ170は、プロセス装置102のメモリ、たとえばメモリ134から、先行のデジタル測定値サンプル値I(n−1)及び先行の修正済みサンプル値IC1(n−1)を受信する。
C1(n)=a*I(n)+b*IC1(n−1) 式1
【0029】
巡回型フィルタ172は、巡回型フィルタ170から修正済みサンプル値IC1を受信し、修正済みデジタル測定値サンプル値IC1(n)、先行の近似デジタル測定値IC2(n−1)、及び値a及びbに基づいて、デジタル測定値サンプル値I(n)に対応する近似ループ電流値164サンプル値IC2(n)を計算し、これらは式2に示されるように、ローパスフィルタ156の時定数に基づいて計算される。1つの実施形態では、巡回型フィルタ172は、プロセス装置102のメモリ、たとえばメモリ134から、先行の近似ループ電流値IC2(n−1)を受信する。
C2(n)=a*IC1(n)+b*IC2(n−1) 式2
【0030】
いくつかの実施形態では、a、b、a及びbの値は、ローパスフィルタ150及び156の時定数に基づいて、式3及び4に従って計算される。Dは、時間間隔の量で表現された時定数であり、T/Mと等しく、ここでMは巡回型フィルタ再計算周期であり、Tはハードウェアフィルタの時定数である。
a=1−b 式3
b=exp(−1/D) 式4
【0031】
そして、巡回型フィルタ172から出力された近似ループ電流値サンプル値164(IC2)は、差分評価器160(図5)に提供されて、差分値166の計算に用いられる。いくつかの実施形態では、近似ループ電流値サンプル値164(IC2)は、プロセス装置102のメモリ134、又はプロセス装置102の他のメモリから取り出される。
【0032】
各々の近似ループ電流値サンプル値164(IC2(n))は、ローパスフィルタ150及び156によって引き起こされる動的誤差の適正な近似をもたらす。結果として、近似ループ電流値サンプル値164は、プロセス装置102が正しく機能している場合に、測定されたループ電流値142が取るべき値を表す。このように、近似ループ電流値サンプル値164は、ループ電流検証回路124が、プロセス装置102の健全性について、ローパスフィルタ150及び156の特性に基づいてデジタル測定値132を較正することなく可能であるよりも、より正確な評価を行うことを可能にする。
【0033】
ループ電流検証回路124によって実施され得る、近似ループ電流値サンプル164を計算するための別の技術が、図8に図示される。いくつかの実施形態では、ループ電流検証回路124は、差分評価器180及び補正器182を含む。差分評価器180及び補正器182は、装置102のメモリ、たとえばマイクロコントローラ130の1以上のプロセッサによって実行可能であるメモリ134等に記憶されたソフトウェアに組み込まれてもよい。代替的に、差分評価器180及び/又は補正器182は、プロセス装置102のハードウェアに組み込まれてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、差分評価器180は、電流デジタル測定値132(I(n))及び先行のデジタル測定値サンプル値(I(n−1))を受信し、デジタル測定値(ΔI=I(n)−I(n−1))の変化を計算する。先行のデジタル測定値サンプル値I(n−1)は、プロセス装置102のメモリ、たとえばメモリ134から取り出され得る。
【0035】
差分評価器180は、補正器182に、デジタル測定値サンプル値ΔIの変化を出力する。補正器182は、電流デジタル測定値サンプル値I(n)及び補正係数kを受信し、式5に従って近似ループ電流値164(I)を計算する。補正係数kは、プロセス装置102のメモリ、たとえばメモリ134から取り出されてもよく、ローパスフィルタ150及び156の特性に基づく。いくつかの実施形態では、ループ電流検証回路124は、この診断デジタル測定値132の変化に応じて、この診断評価を行うようにトリガされる。
(n)=I(n)−k*ΔI=I(n)−k*(I(n)−I(n−1)) 式5
【0036】
いくつかの実施形態では、補正係数kは、プロセス装置102の製造段階で決定され、デジタル測定値がその最小値からその最大値まで推移するときに測定されたループ電流値142の傾斜に概ね対応する。いくつかの実施形態では、補正係数kは、デジタル−アナログ変換器146の更新と、定数を除いたアナログ−デジタル変換器158の更新との間の期間の関数である。
【0037】
図9は、本発明の実施形態によるプロセス装置102において2線式プロセス制御ループ内のループ電流を検証するための方法を図示するフローチャートである。ステップ184において、プロセス変数は、図3に示されるようなプロセス装置102のセンサ120を用いて検知される。ステップ186において、デジタル測定値132は、図4の上段のチャートに図示されたように、検知されたプロセス変数の関数として、第1の値から第2の値まで変換する。そして、デジタル測定値132は、ステップ188において、第1のローパスフィルタ150(図3)を用いてアナログ測定値138に変換される。1つの実施形態では、ローパスフィルタ150は、図3に示されるように、デジタル−アナログ変換器146から出力信号152を受信する、デジタル−アナログ変換回路136のコンポーネントである。
【0038】
ステップ190において、2線式プロセス制御ループ106内のループ電流値Iが調整される。いくつかの実施形態では、ループ電流値Iに対するこの調整は、ループ電流出力回路122の関数として、アナログ測定値138によって行われる。
【0039】
ステップ192において、ループ電流値Iが検知される。いくつかの実施形態では、このループ電流値Iの検知は、ループ電流測定回路140の電流センサ154によって行われ、これはループ電流値Iを示す出力を発生させる。ステップ194において、検知されたループ電流値は、第2のローパスフィルタ156を用いて、測定されたループ電流値142を変換する。上述のように、ローパスフィルタ156は、検知されたループ電流値から高周波信号を取り除き、フィルタリングされ検知されたループ電流値をアナログ−デジタル変換器158に提供して、測定されたループ電流値142を発生させる。
【0040】
ステップ196において、測定されたループ電流値142は、デジタル測定値132と、第1及び第2のローパスフィルタ150及び156の特性とに基づいて近似化され、近似ループ電流値164を生成する。いくつかの実施形態では、ステップ196は、図6を参照して上記された再帰的プロセスを用いて行われる。いくつかの実施形態では、ステップ196は、図7を参照して上記されたプロセスに従って行われる。
【0041】
ステップ198において、近似ループ電流値164は、測定されたループ電流値142と比較される。200において、診断信号144は、比較に基づいて生成される。いくつかの実施形態では、ステップ198は、図5に示されるように、ループ電流検証回路124によって行われる。上述のように、ステップ200で生成された診断信号144を用いて、たとえばループ電流値I又はプロセス装置102の誤差を示し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、診断信号144は、警告の発行をトリガする。警告は、可聴及び/又は可視警報、メッセージ(たとえばeメール、テキストメッセージ等)、及び/又は他の警告の形式を取ってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、診断信号144は、検出された誤差の補償として用いられる。たとえば、診断信号144は、マイクロコントローラ130にフィードバックされてもよく、これはデジタル測定値132を調整して、誤差を補償することができる。
【0044】
本発明の実施形態は、プロセス装置におけるループ電流診断に関する。いくつかの実施形態は、アナログ・デジタル変換回路、ループ電流出力回路、ループ電流測定回路及びループ電流検証回路を含むプロセス装置に向けられる。アナログ・デジタル変換回路は、検知されたパラメータに対応するデジタル測定値を、アナログ測定値に変換するように構成される。1つの実施形態では、アナログ・デジタル変換回路は、第1のローパスフィルタを含む。ループ電流出力回路は、2線式プロセス制御ループ上のループ電流値を、アナログ測定値の関数として制御するように構成される。ループ電流測定回路は、プロセス制御ループに結合され、ループ電流値に基づいて、デジタルループ電流値を生成するように構成される。1つの実施形態では、測定回路は、第2のローパスフィルタを含む。ループ電流検証回路は、デジタル測定値と、第1及び第2のローパスフィルタの特性とに基づいて、デジタルループ電流値を近似化するように構成される。加えて、ループ電流検証回路は、近似化されたデジタルループ電流値と、デジタルループ電流値との比較に基づいて、診断信号を生成するように構成される。
【0045】
いくつかの実施形態は、2線式プロセス制御ループ内でループ電流値を検証するためのプロセス装置における方法に向けられる。本方法では、プロセス変数が検知される。デジタル測定値は、検知されたプロセス変数関数として、第1の値から第2の値まで変化する。そして、デジタル測定値は、第1のローパスフィルタを用いて、アナログ測定値に変換される。2線式プロセス制御ループ内のループ電流値は、アナログ測定値の関数として調整される。2線式プロセス制御ループ内のループ電流値が検知され、検知されたループ電流値は、第2のローパスフィルタを用いて、デジタルループ電流値に変換される。デジタルループ電流値は、デジタル測定値と、第1及び第2のローパスフィルタの特性とに基づいて近似化される。診断信号は、近似化されたデジタルループ電流値と、デジタルループ電流値との比較に基づいて生成される。
【0046】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者においては、本発明の本質及び範囲から逸脱することなく、形式及び詳細に変更を加えてもよいことが認識されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9