特許第6476119号(P6476119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476119HTE電解槽相互接続部材又はSOFC燃料電池相互接続部材を構成する部品及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476119
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】HTE電解槽相互接続部材又はSOFC燃料電池相互接続部材を構成する部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20190218BHJP
   H01M 8/021 20160101ALI20190218BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20190218BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20190218BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20190218BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20190218BHJP
【FI】
   H01M8/0228
   H01M8/021
   H01M8/0215
   H01M8/0206
   C25B9/00 A
   H01M8/12 101
【請求項の数】26
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-533739(P2015-533739)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公表番号】特表2015-537329(P2015-537329A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】IB2013058814
(87)【国際公開番号】WO2014049523
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】1259040
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リシャール・ロクールネ
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム・ダルマソー
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ラドー
【審査官】 菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−544452(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/102369(WO,A1)
【文献】 特表2004−523069(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0037037(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0082434(US,A1)
【文献】 特開平02−177265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/12
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板を備える部品であって、
そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、
前記基板が、2つの主たる平坦面を有し、
前記主たる平坦面の一方が、厚いセラミック層を含むコーティングで被覆され、
前記厚いセラミック層が、気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように溝が形成される、部品。
【請求項2】
クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板を備える部品であって、
そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、
前記基板が、2つの主たる平坦面を有し、
前記主たる平坦面の一方が、厚い金属層で被覆され、
前記金属層が、気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように溝が形成される、部品。
【請求項3】
クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板を備える部品であって、
そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、
前記基板が、2つの主たる平坦面を有し、
前記主たる平坦面の一方が、厚いセラミック層を含むコーティングで被覆され、
前記主たる平坦面の他方が、厚い金属層で被覆され、
前記厚い層の各々が、気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように溝が形成される、部品。
【請求項4】
前記厚いセラミック層の材料が、M(遷移金属)がNi、Fe、Co、Mn、Crを単独で又は混合物として、式La1−xSrMOのランタンマンガナイト、又は層状組織の材料から選択される、請求項1に記載の部品。
【請求項5】
前記厚い金属層の材料が、ニッケル(Ni)及びその合金、並びに、そのベース元素が鉄(Fe)である全てのクロミア形成合金から選択される、請求項2に記載の部品。
【請求項6】
前記セラミック層の厚さが、60から500μmである、請求項1に記載の部品。
【請求項7】
前記金属層の厚さが、60から500μmである、請求項2に記載の部品。
【請求項8】
前記基板のクロミア形成金属合金が、フェライト(Fe−Cr)、オーステナイト(Ni−Fe−Cr)ステンレススチール合金、又は、クロミア層として知られる、クロム酸化物Crの層を表面に形成するニッケルベースの超合金から選択される、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項9】
前記基板が、少なくとも1つの薄いシートからなる、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項10】
前記薄いシートの厚さが、0.1から1mmである、請求項9に記載の部品。
【請求項11】
前記基板が、主たる平坦面を有する単一のプレートからなる、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項12】
前記プレートの厚さが、1から10mmである、請求項11に記載の部品。
【請求項13】
各々がカソード、アノード及び前記カソード及びアノードの間に挿入された電解質で形成される基本電解セルの積層体を含む高温電解(HTE)反応器の相互接続部材からなり、
前記溝が形成された厚いセラミック層が、2つの隣接する基本セルの一方のアノードに接触し、
前記溝が形成された厚い金属層が、前記2つの隣接する基本セルの他方のカソードに接触する、請求項3に記載の部品。
【請求項14】
各々がカソード、アノード及び前記カソード及びアノードの間に挿入された電解質で形成される基本電解セルの積層体を含む燃料電池(SOFC)の相互接続部材からなり、
前記溝が形成された厚いセラミック層が、2つの隣接する基本セルの一方のカソードに接触し、
前記溝が形成された厚い金属層が、前記2つの隣接する基本セルの他方のアノードに接触する、請求項3に記載の部品。
【請求項15】
前記流路の幅が、0.15から5mmである、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項16】
前記流路の深さが、0.1から0.5mmである、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項17】
燃料電池(SOFC)又は高温電解槽(HTE)のための相互接続部材を構成する部品の製造方法であって、
(a)クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板であって、そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、前記基板が、2つの主たる平坦面を有する基板を準備する段階、
(b1)前記基板の平坦面の一方を厚いセラミック層で被覆する段階、
(c1)気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように前記厚いセラミック層に溝を形成する段階、
を含む、製造方法。
【請求項18】
燃料電池(SOFC)又は高温電解槽(HTE)のための相互接続部材を構成する部品の製造方法であって、
(a)クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板であって、そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、前記基板が、2つの主たる平坦面を有する基板を準備する段階、
(b2)前記基板の平坦面の一方を厚い金属層で被覆する段階、
(c2)気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように前記金属層に溝を形成する段階、
を含む、製造方法。
【請求項19】
燃料電池(SOFC)又は高温電解槽(HTE)のための相互接続部材を構成する部品の製造方法であって、
(a)クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板であって、そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、前記基板が、2つの主たる平坦面を有する基板を準備する段階、
(b1)前記基板の平坦面の一方を厚いセラミック層で被覆する段階、
(b2)前記基板の平坦面の他方を厚い金属層で被覆する段階、
(c1)気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように前記厚いセラミック層に溝を形成する段階、
(c2)気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように前記金属層に溝を形成する段階、
を含む、製造方法。
【請求項20】
前記段階(b1)及び/又は段階(b2)の前に、前記厚いセラミック層又は前記金属層が、セラミック又は金属ストリップ内に注ぐことによって得られ、段階(b1)及び/又は段階(b2)が、前記基板の面の一方又は他方に対する前記セラミック又は金属の高温ボンディング又はホットプレス又は化学結合からなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記段階(b1)が、60から130℃の温度で前記セラミック層をホットプレス又は高温ボンディングすることからなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記段階(b1)及び/又は(b2)が、前記基板の一方又は他方の面にセラミック又は金属ペーストの厚い層をスクリーン印刷することからなる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記段階(c1)が、前記セラミックのポリマーの軟化点まで加熱される2つのロールの間に注ぐことによって得られる前記セラミックをカレンダー成形することによって行われ、
前記2つのロールの少なくとも一方が、画定される前記流路に対応するリブを備え、
前記段階(b1)が、前記段階(c1)の後に行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記段階(b1)及び/又は段階(b2)がそれぞれ完了すると、前記段階(c1)及び/又は段階(c2)が、レーザーアブレーションによって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記段階(c1)及び/又は(c2)が、COレーザーを用いて行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記段階(c1)及び/又は(c2)が、前記厚い層上にレーザーの幾つかの通路が形成された後に完了する、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物燃料電池(SOFC)の分野、高温電解槽(HTE)又は高温蒸気電解槽(HTSE)の分野に関連する。
【0002】
本発明は、高温に晒され、一方で、HTE反応器の蒸気のHO/Hが豊富である(蒸気の湿式水素又は水素が豊富である)又はSOFCセルのHが豊富である還元性雰囲気、及び、他方で、HTE反応器の酸素が豊富である又はSOFCセルの空気が豊富である酸化性雰囲気に晒される相互接続デバイスを構成する金属合金で作られる部品に関連し、その機能の1つは、HTE反応器の電流の通路を保証することである。
【0003】
電気及び流体相互接続デバイスは、相互接続部材又は相互接続プレートとして知られ、HTE反応器及びセルの積層体の各電気化学セル(電解セル)を直列に接続するデバイスであり、それによって各々の生成物を結合する。そのため、相互接続部材は、電流を伝えて収集する機能を保証し、ガスの循環部分(分配及び/又は収集)を制限する。
【0004】
これらの機能に加えて、相互接続部材は、典型的には600から900℃までで、HTE電解槽のカソード側において蒸気のHO/Hが豊富である雰囲気などの、非常に高い温度の範囲において非常に酸化性に富む雰囲気における腐食に耐えることができなければならず、その腐食は、これらの電解槽の耐久性に有害であり得る。
【0005】
さらに、相互接続部材は、カソード部分として知られるカソードを有する部分及びアノード部分として知られるアノードを有する部分の間の良好な気密性を保つように、これらの雰囲気において電気化学セルの熱機械的挙動に近い熱機械的挙動を有しなければならない。
【0006】
本発明は、特に、インターデジタル又は流路プレートタイプの相互接続部材の製造を単純化し、また、それが備えられるHTE電解槽又はSOFC燃料電池の製造コストを低減するように、その製造コストを低減することを対象とする。
【0007】
本発明はまた、相互接続部材及びそれを支持する電気化学セルの間の電気接触を改善することを対象とする。
【背景技術】
【0008】
SOFC燃料電池又はHTE電解槽は、各々が固体酸化物電気化学セルを含む基本ユニットの積層体からなり、それは、他方の上における3つのアノード/電解質/カソードが重畳されたもの及びバイポーラプレートとしても知られる金属合金で作られる相互接続プレート又は相互接続部材からなる。相互接続部材の機能は、各セルの領域のガスの循環及び電流の通路を保証し(HTE電解槽において抽出される、蒸気注入された水素及び酸素;SOFCセルにおいて抽出される水及び注入された空気及び酸素)、また、それぞれセルのアノード及びカソードのガスの循環用の部分であるアノード及びカソード部分を分離することである。
【0009】
典型的には600から950℃である高温における蒸気のHTE電解を行うために、HO蒸気は、カソード部分に注入される。セルに加えられる電流の影響下、蒸気の水分子の解離は、水素電極(カソード)及び電解質の界面で起こり、この解離は、二水素のガスH及び酸素イオンを生成する。この二水素は収集され、水素部分の排出口において排出される。酸素イオンOは、電解質に向かって移動し、電解質及び酸素電極(アノード)の界面において二水素と再結合する。
【0010】
SOFC燃料電池の機能を保証するために、空気(酸素)は、カソード部分に注入され、水素は、アノード部分に注入される。水素Hは、変換されてHイオンになり、アノードによって捕獲された電子を放出する。Hイオンは、カソードに達し、そこで、それらは、空気の酸素から構成されるOイオンと結合し、水を生成する。カソードへのHイオン及び電子の移動は、水素から連続する電流を生成する。
【0011】
HTE電解槽の機能の条件がSOCF燃料電池の機能の条件と非常に類似しているので、同一の技術的制約が見られる。すなわち、主に、異なる材料(セラミックス及び金属合金)の積層体の熱サイクルに関する機械的強度、アノード及びカソードの間の気密性の維持、金属相互接続部材の耐老化性及び積層体の種々の界面における抵抗損の最小化である。
【0012】
クロミア形成フェライトステンレススチールは、それらがSOFC高温燃料電池の合金として成功裏に既に使用されているという条件において、HTE電解槽に最も有望である相互接続合金に含まれる(非特許文献1から3)。これらの相互接続合金には、Fe−22%Crに基づくCrofer22APU及びCrofer22Hという名称でThyssenKrupp VDM社によって既に市販されている合金、又は、Sandvik社による、Fe−22%Crに基づくSanergy HTという名称を有する生成物、あるいは、600から900℃の作動温度用にAPERAM社によるK41Xという名称の生成物が含まれる。
【0013】
このタイプの合金は、セル材料のそれの領域における熱膨張係数及び他の金属材料と比較したときに比較的良好な耐食性を有し得る。それにもかかわらず、それは、第1に、酸化に対してそれを保護し、酸化側において空気で電極を汚染すると共にその機能を著しく劣化させる動作条件下においてCrの蒸発を避けるための特定の数のコーティングを必要とし、第2に、相互接続部材及びセルの間の電気抵抗を最小化することを可能にするコーティングを必要とする。
【0014】
これらの合金の空気中での耐酸化性が、クロムリッチ酸化物の表面層の形成によって保証されることが知られている(クロミアCr及びスピネル酸化物(Cr、Mn))(非特許文献4)。
【0015】
しかしながら、このような未処理の合金に関して、動作要件が、酸素電極に面する相互接続部材、すなわちSOCFカソード相互接続部材及びHTEアノード相互接続部材に対する用途に関して長時間にわたって完全に満足いくものではないことが知られる。第1に、電流の収集に関連する比面積抵抗(ASR)が、酸素電極側において非常に高くなることが見られる(非特許文献1、3)。さらに、水素電極側における蒸気の水素のASRは、空気のASRより大きい(非特許文献5)。さらに、動作温度におけるクロミアCrの不安定性は、SOCF酸素電極(SOCFカソード)において見られるものと比較して、その性能の劣化を伴うHTE酸素電極(HTEアノード)の汚染を引き起こす。
【0016】
そのため、文献には、一方でSOFCセル相互接続部材に対するコーティングが開示され、他方で、酸素電極に面する相互接続部材の面に対するコーティングが開示される(非特許文献6)。これらのコーティングは、クロムの蒸発を制限し、空気中、すなわち、SOCFセルのカソード部分の雰囲気中における合金の良好な耐酸化性及び電子伝導を保証する唯一の機能を有する。これらのコーティングのうち、2つの導電セラミック層の相互接続部材の形状に合わせる堆積物を生成することが周知の方法であり、1つは、その機能が金属合金を酸化(酸化部分)から保護するものである保護層として知られるものであり、第2のものは、相互接続部材及びセルの間の電気接触を改善するために電気接触層として知られるものであり、その平面性は、しばしば不完全であり、測定される平坦性の誤差は、10から20ミクロンである。
【0017】
相互接続部材の形状に関して、図1図1A及び図1Bは、HTE電解槽及びSOFC燃料電池の両方に共通して使用される流路プレート1を示す。電極における電流の伝達及び収集は、対象となる電極に直接機械的に接触する歯又はリブ10によって行われる。HTE電解槽のアノードにおける排ガス又はカソードにおける蒸気の導入、SOCFセルのアノードにおける水素又はカソードにおける空気(O)の導入は、図1において矢印で示される。HTE電解槽のアノードにおいて生成される酸素又はカソードにおいて生成される水素の収集、SOCFセルのアノードにおける過剰な水素又はカソードにおいて生成される水の収集は、流体接続部に現れる流路11によって行われ、それは、一般的に管として知られ、セルのスタックに共通のものである。これらの相互接続の構造は、導入及び収集(ガス/電流)の2つの機能の間の妥協を達成するように作られる。
【0018】
他の相互接続プレート1は、既に提案されている(非特許文献7)。矢印によって示される流体の循環に関して図2に示され、その構造は、インターデジタルタイプである。
【0019】
この流路プレート又はインターデジタル構造のプレートの主たる欠点は、それらを製造する技術に関連する。そのため、これらのプレート構造は、生成されたガスの収集の領域のために、典型的には5から10mmである、大きな厚さの材料を必要とし、またガス分配流路のバルク内での機械加工によって形成することを必要とする。このような機械加工されたプレートの正確な図は、図3に与えられる。材料及び機械加工費は高く、機械加工される流路のピッチの適合性に直接関係する:具体的には、1mm未満の流路間距離。
【0020】
引き出され、レーザー溶接によって共に組み立てられる、典型的には0.5から2mmの薄いシート金属の使用は、既に試験されている。引き出されたシート金属によって得られるこのようなプレートの正確な図は、図4に示される。この技術は、出発材料の費用を制限するという利点を有するが、機械加工によるものと同様の高さの流路整合性を実現することを可能にしない。具体的には、流路の深さ、ユニット歯の幅及び歯間のピッチに対する製造の可能性は、制限される。さらに、引き出しツールの費用は、大規模の製造を必要とする。
【0021】
多くの開発が、セル及び相互接続部材の間の電気接触並びにセルに対する流体の管理を改善する目的で行われている。
【0022】
そのため、米国特許第6106967号には、金属(超合金)で作られる平坦な薄い(1〜10mm)の相互接続部材、及び、流体の分配を保証する電極支持内部流路を有する電気化学セルが提案されている。しかしながら、この方法が流体の良好な分配を可能にするという利点を有するけれども、それは、金属及び電極の間の電気接触の質を全く改善しない。さらに、このようなセルは複雑で、結果的に製造するのに費用が嵩む。
【0023】
米国特許出願公開2004/0200187号には、電極及び平坦な金属セパレータ(超合金)の間に、金属(クロムベースの合金又は貴金属ベースの合金)で作られ穴が開けられた波形の構造体が提案されている。この構造体は、電極及びセパレータの間における電気接触を保証する。この方法は、カソード部分(SOCF)に付けられ、それによって、穴が開けられた波形の構造体を実質的な酸化に晒すという欠点を有する。
【0024】
国際特許出願公開第2010/085248には、機械加工された相互接続部材に溶接された多孔性の金属層の追加が提案されている。この層は、好ましくは、セルの何れかの側に配置される、すなわちアノード及びカソードに接触されるニッケルプレートである。しかしながら、プレートから異なる性質の金属で作られた相互接続部材を完全に取り付けられ、このプレートは、バイメタル効果によって温度の増加に伴って変形する。このバイメタル効果の結果は、電気接触の損失又はセルの劣化の何れかである。さらに、カソード部分(SOCF)にニッケルプレートを配置することによって、その酸化は、高い電気抵抗をもたらす。
【0025】
米国特許出願公開第2002/0048700号には、電極及び平坦な相互接続部材の間に配置され得る金属格子の使用が提案されている。この格子の目的は、電極に対するガスの分配を改善することである。それはまた、セルの何れかの側、すなわち酸化(カソード)及び還元(アノード)部分に配置される。選択される金属は、好ましくは、ニッケル又は銅である。しかしながら、酸化媒体の乏しい酸化抵抗のために、ニッケル又は銅又はその合金は、高抵抗の酸化物層の形成を引き起こす。この方法は、従って実現不可能である。
【0026】
加国特許第2567673号には、平坦な相互接続部材における層の堆積が提案されている。これらの層は、溶媒、ポリマー及び主要相、及びその熱機械的挙動(熱膨張係数)を電気化学セルの熱機械的挙動に調整するための二次相で構成される懸濁液から堆積される。アノード側において、主要相は、好ましくは、Ni、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、Cu、Co若しくはそれらの酸化物、又は、ドーピングされたセリウム酸化物、又は、他の導電性酸化物である。二次相は、Al、MgO、TiO、マンガン酸化物又はZrOなどの酸化物であり得る。カソード側において、主要相は、マンガナイト、又はより広い導電性ペロブスカイトで構成される。二次相は、貴金属酸化物、又は、CuO、La、SrOなどの酸化物、又はマンガン若しくはコバルト酸化物で構成される。懸濁液は、含浸、スプレー塗布、又はスクリーン印刷などの種々の方法を用いて付けられ得る。熱処理(600〜1000℃)によって、有機材料を除去することが可能になる。この方法が、アノード及びカソード部分に明確に相応しい材料を提供するという利点を有するけれども、それは、平坦な相互接続部材及び電極の間の気体の流体管理を提供しない。さらに、熱処理後における残余の層の高い緊密さのために、層によって生じる圧力の損失は、セルの良好な機能に有害である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第6106967号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2004/0200187号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第2010/085248号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0048700号明細書
【特許文献5】加国特許第2567673号明細書
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】J.W. Fergus, “Metallic interconnects for solid oxide fuel cells”, Mater. Sci. Eng. A 397 (2005) 271-283.
【非特許文献2】W.J. Quadakkers, J. Piron-Abellan, V. Shemet, L. Singheiser, “Metallic interconnectors for solid oxide fuel cells - a review”, Mat. High Temp. 20 (2) (2003) 115-127.
【非特許文献3】Z. Yang, K. Scott Weil, D.M. Paxton, J.W. Stevenson, “Selection and Evaluation of Heat-Resistant Alloys for SOFC Interconnect Applications”, J. Electrochem. Soc. 150 (9) (2003) A1188-A1201.
【非特許文献4】J.E. Hammer, S.J. Laney, R.W. Jackson, K. Coyne, F.S. Pettit, G.H. Meier, “The Oxidation of Ferritic Stainless Steels in Simulated Solid-Oxide Fuel-Cell Atmospheres, Oxid. Met”. 67(1/2) (2007) 1-38.
【非特許文献5】S.J. Geng et al., “Investigation on Haynes 242 Alloy as SOFC Interconnect in Simulated Anode Environment”, Electrochemical and Solid-State Letters, 9 (4) (2006) A211-A214.
【非特許文献6】N. Shaigan et al., “A review of recent progress in coatings, surface modifications and alloy developments for solid oxide fuel cell ferritic stainless steel interconnects”, J. Power Sources 195 (2010) 1529-1542.
【非特許文献7】Xiango Li, International Journal of hydrogen Energy 30 (2005) 359-371.
【非特許文献8】S. Fontana, R. Amendola, S. Chevalier, P. Piccardo, G. Caboche, M. Viviani, R. Molins, M. Sennour, “Metallic interconnects for SOFC: Characterisation of corrosion resistance and conductivity evaluation at operating temperature of differently coated alloys”, J. Power Sources 171 (2007) 652-662.
【非特許文献9】Maria Rosa ARDIGO, “Optimisation d’interconnecteurs metalliques pour la production d’hydrogene par electrolyse de la vapeur d’eau a haute temperature (EVHT) [Optimization of metallic interconnectors for the production of hydrogen by high-temperature steam hydrolysis (HTSE)]”, doctoral thesis defended on September, 09 2012, http://nuxeo.u-bourgogne.fr/nuxeo/site/esupversions/9a356817-2ef1-4b4e-863e-8fa66b4c4a73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
そのため、特に、それらの製造技術を単純化し、費用を抑制するために、電極に対するガスの良好な分布を保証するために、相互接続部材及び電気化学セルの間の熱機械的な差異の良好な適合を可能にし、相互接続部材の酸化から生じるクロム(Cr)の拡散に対してカソード(SOFC)を保護するために、電極及び相互接続部材の間の良好な電気接触を得るために、SOFCセル又はHTE電解槽における相互接続部材を改善する必要がある。
【0030】
本発明の一目的は、この要求を少なくとも部分的に満たすことである。
【0031】
本発明の他の目的は、前述の目的を達成し、製造するのが高価ではない相互接続部材を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
このために、本発明は、その一側面において、クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板を備える部品であって、そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、前記基板が、2つの主たる平坦面を有し、前記主たる平坦面の一方が、厚いセラミック層を含むコーティングで被覆され、前記厚いセラミック層が、HO蒸気、H;空気などの気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように溝が形成される、部品に関連する。
【0033】
本発明はまた、クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板を備える部品であって、そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、前記基板が、2つの主たる平坦面を有し、前記主たる平坦面の一方が、厚い金属層で被覆され、前記金属層が、HO蒸気、H;O、排ガスなどの気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように溝が形成される、部品に関連する。
【0034】
一実施形態によれば、前記主たる平坦面の一方は、厚いセラミック層を含むコーティングで被覆され、前記主たる平坦面の他方は、厚い金属層で被覆され、前記厚い層の各々は、HO蒸気、排ガス、空気、O、Hなどの気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように溝が形成される。
【0035】
本発明の文脈において、“厚い層”という用語は、“薄層”技術を用いて得られる層の厚さより厚い厚さの層を意味し、その厚さは、典型的には2から15μmであることが指摘される。
【0036】
“クロミア形成”という用語は、本明細書において、また本発明の文脈において、通常の意味を有し、すなわちクロムを含有する金属合金で作られる基板を含む。この定義の通常の意味を確認するために文献(非特許文献9)の第30頁にパラグラフ1.4が参照される。
【0037】
好ましくは、前記厚いセラミック層の材料は、M(遷移金属)がNi、Fe、Co、Mn、Crを単独で又は混合物として、式La1−xSrMOのランタンマンガナイト、又は、式LnNiO(Ln=La、Nd、Pr)のランタンニッケレートなどの層状組織の材料、又は、他の導電性ペロブスカイト酸化物から選択される。
【0038】
好ましくは、前記厚い金属層の材料は、ニッケル(Ni)及びその合金、並びに、そのベース元素が鉄(Fe)である全てのクロミア形成合金から選択される。
【0039】
有利には、前記セラミック層の厚さは、60から500μmである。
【0040】
有利には、前記金属層の厚さは、60から500μmである。
【0041】
前記基板のクロミア形成金属合金は、フェライト(Fe−Cr)、オーステナイト(Ni−Fe−Cr)ステンレススチール合金、又は、クロミア層として知られる、クロム酸化物Crの層を表面に形成するニッケルベースの超合金から選択され得る。
【0042】
有利な変形例によれば、前記基板は、少なくとも1つの薄いシートからなり、前記薄いシートの厚さは、好ましくは0.1から1mmである。
【0043】
有利な他の変形例によれば、前記基板は、主たる平坦面を有する単一のプレートからなり、前記プレートの厚さは、好ましくは1から10mmである。
【0044】
予測される用途によれば、本発明による部品は、各々がカソード、アノード及び前記カソード及びアノードの間に挿入された電解質で形成される基本電解セルの積層体を含む高温電解(HTE)反応器の相互接続部材を構成し、前記溝が形成された厚いセラミック層は、前記2つの隣接する基本セルの一方のアノードに接触し、前記溝が形成された厚い金属層は、前記2つの隣接する基本セルの他方のカソードに接触する。
【0045】
予測される用途によれば、本発明による部品は、各々がカソード、アノード及び前記カソード及びアノードの間に挿入された電解質で形成される基本電解セルの積層体を含む燃料電池(SOFC)の相互接続部材を構成し、前記溝が形成された厚いセラミック層は、前記2つの隣接する基本セルの一方のカソードに接触し、前記溝が形成された厚い金属層は、前記2つの隣接する基本セルの他方のアノードに接触する。
【0046】
本発明による相互接続部材は、主たる面の厚いセラミック層、適切な場合には他の主たる面における厚い金属層を有するコーティングがフレキシブルな性質を有するので、従来技術による相互接続部材より利点がある。本発明による厚いセラミック及び金属層は、相互接続部材において未加工の形態である、すなわち高密度のものではない。従って、それらは、機械的な適合性を有する。これは、HTE電解槽又はSOFC燃料電池の場合において基本的な利点であり、その各々において、積層体を構成する種々のセルの間の気密性を保証するために圧縮力(負荷)を加える必要がある。そのため、負荷が積層体に加えられたときに、厚い層としてのセラミック又は金属ストリップの堆積物は、適合され又は変形されるようになり得る。これを用いて、積層体の種々の部品(相互接続部材及び電気化学セル)間の調整欠点は、このように、厚い層のこれらの適合(変形)によって補償され得る。
【0047】
本発明の文脈において生成される流路に関して、前記流路の幅は、有利には0.15から5mmであり、一方で、前記流路の深さは、0.1から0.5mmである。
【0048】
他の側面において、本発明の主題はまた、
燃料電池(SOFC)又は高温電解槽(HTE)のための相互接続部材を構成する部品の製造方法であって、
(a)クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板であって、そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、前記基板が、2つの主たる平坦面を有する基板を準備する段階、
(b1)前記基板の平坦面の一方を厚いセラミック層で被覆する段階、
(c1)HO蒸気、H;空気などの気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路(800)を画定するように前記厚いセラミック層に溝を形成する段階、
を含む、製造方法である。
【0049】
本発明の主題は、
燃料電池(SOFC)又は高温電解槽(HTE)のための相互接続部材を構成する部品の製造方法であって、
(a)クロミア形成タイプの金属合金で作られた基板であって、そのベース元素が、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、前記基板が、2つの主たる平坦面を有する基板を準備する段階、
(b2)前記基板の平坦面の一方を厚い金属層で被覆する段階、
(c2)HO蒸気、H;空気などの気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路を画定するように前記金属層に溝を形成する段階、
を含む、製造方法である。
【0050】
一実施形態によれば、前記基板の1つの平坦面において行われる前記段階(b1)及び(c1)に関して、前記段階(b2)及び(c2)は、前記基板の他の平坦面において行われる。
【0051】
有利な変形例によれば、前記段階(b1)及び/又は段階(b2)の前に、前記厚いセラミック層又は前記金属層が、ストリップ内に注ぐことによって得られ、段階(b1)及び/又は段階(b2)が、前記基板の面の一方又は他方に対する前記ストリップの高温ボンディング又はホットプレス又は化学結合からなる。
【0052】
そのため、セラミックストリップの用意に関して、セラミック粉末、溶媒、分散剤、結合剤及び可塑剤を含有する懸濁液は、非スティック状の支持体に注がれる。溶媒を蒸発させて後に、前記未処理のストリップは得られる。
【0053】
この変形例によれば、前記段階(b1)は、60から130℃の温度で前記未処理のセラミックストリップをホットプレス又は高温ボンディングすることからなる。これらの温度が、セラミックストリップ中に含有されるポリマー結合剤を軟化させるために十分に高く、それらを熱的に劣化させないようにするために十分に高くないので、この温度範囲は有利である。
【0054】
他の変形例によれば、前記段階(b1)及び/又は(b2)は、前記基板の一方又は他方の面にセラミック又は金属ペーストの厚い層をスクリーン印刷することからなる。
【0055】
前記流路を画定するために溝を形成することに関して、前記段階(c1)は、前記セラミックストリップのポリマーの軟化点まで加熱される2つのロールの間に注ぐことによって得られる前記未処理のセラミックストリップをカレンダー成形することによって行われ得、前記2つのロールの少なくとも一方は、画定される前記流路に対応するリブを備え、前記段階(b1)は、前記段階(c1)の後に行われる。
【0056】
厚いセラミック層及び/又は厚い金属層に関係し得る第2の変形例によれば、前記段階(b1)及び/又は段階(b2)がそれぞれ完了すると、前記段階(c1)及び/又は段階(c2)は、レーザーアブレーションによって行われ得る。
【0057】
この第2の変形例によれば、前記段階(c1)及び/又は(c2)は、COレーザーを用いて行われ、より好ましくは、前記厚い層上にレーザーの幾つかの通路が形成された後に完了する。
【発明の効果】
【0058】
これまでに記載される本発明は、以下の利点を有する:
−従来技術による相互接続部材として使用されるものと比較して、薄い又は非常に薄い金属合金で作られる基板を用いる可能性によって金属合金の材料コストの低減、
−従来技術による相互接続部材の引き出し又は機械的加工と比較したときにおける、流路の製造の費用の低減又は除外、
−“保護”層及び“電気接触”層を単一のステップで堆積する可能性、
−金属合金で作られる基板と組み立てられる未処理の層のフレキシブルな性質による、相互接続部材及び電気化学セルの間の熱機械的適合性の改善、
−金の格子と同等である厚いセラミック層の低い電気接触抵抗の生成。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、従来技術によるHTE電解槽の相互接続プレートの概略前面図である。
図1A図1Aは、図1による相互接続プレートの詳細断面図である。
図1B図1Bは、プレートを通過する電流ラインを示す図1Aの図と同様の図である。
図2図2は、従来技術による電解槽の他の相互接続プレートの概略断面図である。
図3図3は、機械加工によって得られる図1に記載のプレートの正確な再現図である。
図4図4は、引き出しによって得られる図1に記載のプレートの正確な再現図である。
図5図5は、従来技術による相互接続部材を含む高温電解槽の一部の拡大概略図である。
図6図6は、従来技術による相互接続部材を含むSOFC燃料電池の一部の拡大概略図である。
図7図7は、本発明によってコーティングされた相互接続部材の概略断面図である。
図8図8は、本発明によるフェライト合金で作られた基板に高温結合された溝が開けられた厚いセラミック層の実施例の正確な再現図である。
図8A図8Aは、厚いセラミック層の流路の考えられる寸法を示す図8の概略断面図である。
図9図9は、厚いセラミック層におけるCOレーザーアブレーションによって得られる溝(わだち)の形状の代表的な曲線を示す。
図10図10は、圧縮負荷下で、800℃の温度で試験される前後における、図9に示される溝のプロファイルの変化を示す。
図11A図11Aは、圧縮負荷下で、800℃の温度で試験される厚いセラミック層の正確な再現図である。
図11B図11Bは、圧縮負荷下で、800℃の温度で試験される厚いセラミック層の正確な再現図である。
図12図12は、比較目的で金の格子の、本発明による種々の厚いセラミック層の直列抵抗測定の曲線を示し、金の格子及び層は、金属合金で作られる基板に接触する。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の他の利点及び特徴は、添付の図面を参照して非限定的な例示として与えられる本発明の実施例の詳細な説明を読むことによって、より明確に理解される。
【0061】
図1から4は、前段部において既に述べられている。これらは、従って、以下に詳細に記載されない。
【0062】
図5は、従来技術による高温蒸気電解槽の基本ユニットの拡大図を示す。このHTE電解槽は、相互接続部材8によって交互に積層される複数の基本電解セルC1、C2等を備える。各セルC1、C2等は、カソード2.1、2.2等、アノード4.1、4.2、それらの間に配置される電解質6.1、6.2からなる。蒸気の、二水素の、酸素の、電流の通路を示す記号及び矢印は、明確性のために図5に示される。
【0063】
HTE電解槽において、相互接続部材8は、それぞれ相互接続部材8及び隣接するアノード4.2の間、並びに、相互接続部材8及び隣接するカソード2.1の間の体積によって画定される、アノード7及びカソード9の部分の間に分離を提供する金属合金で作られる部品である。それらはまた、セルに対するガスの分配を保証する。各基本ユニットにおける蒸気の注入は、カソード部分9において起こる。カソード2.1、2.2における生成された水素及び残留物の蒸気の収集は、そこからの流れの分離後に、セルC1、C2の下流のカソード部分9で行われる。アノード4.2において生成される酸素の収集は、そこからの蒸気の分離後に、セルC1、C2の下流のアノード部分7において行われる。
【0064】
相互接続部材8は、隣接する電極、すなわちアノード4.2及びカソード2.1(図1)との直接接触によって、セルC1及びC2の間の電流の通路を保証する。
【0065】
図6は、基本セルC1、C2及び相互接続部材8を有するSOFC燃料電池を除いて、図5と同一の基本ユニットを示す。空気、二水素、酸素、電流の通路を示す符号及び記号は、明確性のために図6において示される。
【0066】
各基本ユニットへの酸素含有空気の注入は、カソード部分9において起こる。アノード4.2において注入された水素Hと酸素とによる水の再結合がセルC1、C2の上流のアノード部分7において行われた後に、カソード2.1、2.2において生成した水の収集は、セルC1、C2の下流のカソード部分9において行われる。水の再結合によって生成される電流は、相互接続部材8によって収集される。
【0067】
従来技術によれば、これらの相互接続部材8は、通常、厚いプレートの機械的加工、又は典型的には0.5から2mmの薄い金属シートを用いることによって用意され、引き出され、次いでレーザー溶接によって組み立てられる。材料及び機械費用は、高い。製造技術は、出発材料の費用を制限するという利点を有するが、機械加工によって、できるだけ高く流路の精密さを達成することを可能にしない。具体的には、流路の深さ、ユニットの歯の幅及び歯の間のピッチの製造可能性は、制限される。さらに、引き出しツールの費用は、大規模な製造を必要とする。また、電極及び相互接続部材の間の電気接触部は、特に複数の電極がないことによって全く満足いくものではない。
【0068】
そのため、SOFC燃料電池又はHTE電解槽のための相互接続部材を製造するための技術を単純化し、それらを高価にしないように、本発明者は、新規なタイプの相互接続部材8を提案し、その一例は、図7に示される。
【0069】
本発明による新規な相互接続部材を構成する部品8は、金属合金で作られる基板82を備え、そのベース元素は、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であり、基板は、2つの主たる平坦面を有し、主たる平坦面の一方は、厚いセラミック層80を含むコーティングで被覆され、主たる平坦面の他方は、厚い金属層81で被覆され、厚い層の各々は、HO蒸気、排ガス、空気、O、Hなどの気体を分配及び/又は収集するために相応しい流路800、810を画定するように溝が形成される。
【0070】
任意に、薄い保護セラミック層83は、厚いセラミック層80及び基板82の間に挿入され得る。
【0071】
HTE電解槽又はSOFC燃料電池を働かせるとき、動作条件は、通常使用されるものと同一である:還元ガス混合物の循環は、厚い金属層81の流路810において行われ、酸化ガス混合物の循環は、厚いセラミック層80の流路において起こる。
【0072】
その流路800を有する厚いセラミック層80の実施例の製造における各ステップ、及び、目的とする用途、すなわちSOFC燃料電池及びHTE電解槽におけるその使用の可能性を証明する種々の試験は、以下に示される。
【0073】
以下の実施例は、CROFER22APUタイプの市販のフェライト合金で作られる単一の薄い金属シートからなる基板82から開始して行われる。
【0074】
(ステップ1:未処理のLSMストリップの製造)
分散剤として0.8重量%のオレイン酸を有する60gの式La0.8Sr0.2MnOのランタンマンガナイトを有する化合物、並びに、溶媒としての15.7%の2−ブタノン及び15.7%のエタノールの混合物が用意される。
【0075】
混合物は、遊星ミル内でミリングされる。遊星ミルの作動サイクルは、以下の通りである:
−回転速度:400rpm;
−保持期間:1時間。
【0076】
溶媒として5.5gのポリエチレングリコール(PEG400)及び3.2gのポリビニル・ブチラール(PVB90)は、ミリングされた混合物に加えられ、その全体は、次いで遊星ミルを用いて混合された。遊星ミルの作動サイクルは、以下の通りである:
−回転速度:200rpm;
−保持期間:10時間。
【0077】
次いで、混合物は、ロールタイプのミキサーを用いて脱気された。ロールミキサーの作動サイクルは、以下の通りである:
−回転速度:20rpm;
−保持時間:24時間。
【0078】
次いで、脱気後に得られた懸濁液は、ドクターブレードを用いてストリップに注入された。このブレードの機能高さは、1000μmである。注入速度は、1.5m/分である。注入は、乾燥した後のストリップの取り外しを促進するようにシリコーン処理されたポリマー(ポリエステル)のシート上に行われる。
【0079】
次に、注入によって得られた未処理のストリップの乾燥は、3時間、周囲空気中で行われた。
【0080】
LSMの乾燥された未処理のストリップは、最終的に、ストリップが持つこととなるSOFCセルの空気電極に対応する大きさまで切り込まれる。切断は、例えば、レーザーカッティングテーブルを用いて行われ得る。
【0081】
(ステップ2:ホットプレス)
次いで、LSMの未処理のストリップは、1.5mmの厚さのフェライト鋼の薄いシートに配置され、次いで、プレスを用いてホットプレスによってそこに溶接された。LSMの未処理のストリップの厚さは、325μmである。薄い保護セラミック層83が加えられる場合、このプロセスは、同一の方式で行われる。
【0082】
プレスの作動サイクルは、以下の通りである:
−プレス力:1kg/mm
−プレス時間:2時間;
−2つのプレスプレートの調整温度:80℃。
【0083】
室温までの冷却の後、LSMの未処理のストリップ及びフェライト鋼の薄いシートの間に用意されたアセンブリは、プレスから除去される。
【0084】
(ステップ3:溝の生成)
溝付けは、LSMの未処理のストリップのレーザーアブレーションによって行われる。このアブレーションは、最大出力50ワットまで可変であるCOレーザーを備える平台プロッターを用いて行われる。レーザーの移動速度はまた、2cm/sの最大速度まで可変である。その可変動作特性を用いて燃やすことを可能にする、すなわち程度の差はあるが未処理のストリップを構成するポリマー、すなわちLSMを深くアブレーションを行うことを可能にし、それは、従って、関連する電荷を開放するので、このような装置の使用は、特に有利である。程度の差はあるが、溝(わだち)が掘り出され得る。必要に応じて、未処理のストリップ上におけるCOレーザーの幾つかの通路は、多かれ少なかれ溝の深さ及び/又は幅を増加させるために機能し得る。
【0085】
図8は、本発明によるCROFER22APUの単一のシートからなる基板に溝が付けられ、高温ボンディングされたLSMの厚い層の正確な再現である。正確に記載された層は、例えば、100cmの表面積を有する。
【0086】
図9は、溝(わだち)の形状、すなわち、それぞれCOレーザーの2つ及び4つの数の通路から由来するそれらの高さ及びそれらの幅の代表的な曲線を示す。そのため、得られる歯801の幅L1は、150μmまで低減され得、流路800の幅L2は、150μmまで低減され得る。言うまでもなく、幅L1、L2は、150μmを超えてもよい。
【0087】
ここで、高さゼロが、フェライト鋼の薄いシートとの界面に相当し、その形状の各々が、レーザーの動き速度を上記の最大速度の40%の値まで調整し、その電力を上記の最大出力の50%の値まで(50W)調整することによって得られることが指摘される。
【0088】
その使用中に、すなわち、それが、高温電解(HTE)反応器又はSOFC燃料電池の何れかの積層体の相互接続部材を構成するとき、以上に記載された実施例において得られるLSMの薄層が被覆された金属部品は、積層体の他の要素、特にSOFC電池のカソードとの電気接触を保証するように圧縮負荷下で積層体に配置される。さらに、HTE状態下において、それは、600℃から900℃の高温に晒され得る。
【0089】
圧縮負荷下において良好な熱機械的挙動を確認するために、LSM層が、800℃の温度に及び0.2MPaの付加に晒される試験が行われた。
【0090】
図10は、0.2MPaの付加の印加前後における溝(わだち)の形状の代表的な曲線を示す。この図から、それは、LSMの未処理の層が、ほんの約15μmだけ押しつぶされることが明らかである。これは、LSMの未処理の層が、高い動作温度条件において、HTE反応器又はSOFC燃料電池の電気化学的セルに機械的に完全に適合され得ることを証明する。すなわち、LSM層の未処理の性質は、考えられ得る電気化学セルの表面欠陥にもかかわらず、電気化学セルとの良好な機械的接触を暗に示す良好な熱機械的挙動を有することを可能にする。
【0091】
図11A及び図11Bはそれぞれ、800℃で0.2MPaの負荷における試験の前後におけるLSM層の三次元解析である。LSMの未処理の層が、その十分に高い機械的強度のために使用後において完全に揃ったままであることが明確に見られる。
【0092】
さらに、金属合金で作られた部品を用いた直列抵抗の測定は、SOFC電池のカソード部分9の導入をシミュレーションする代表的な作動条件で得られるLSM層の導電率を特徴づけるために行われた。使用される測定方法は、文献(非特許文献8)に説明されるような“四点”法である。
【0093】
このために、幾つかの試料は全て、ステンレススチールから用意され、本発明による試料番号1から4は、ホットプレスによるLSM層を有する部品の組立体からなり、比較試料番号5から6は、金の格子を有する部品の組立体からなる。
【0094】
試料番号1においては、LSM層に流路がなく、一方で、試料番号2から4においては、LSM層が、1mmの単位幅L1を有する等しい流路を画定するように溝が形成され、2つの隣接する流路が、0.25mmの単位幅L2の歯又はリブによって離隔されることが指摘される。
【0095】
図12は、時間の関数として種々の試料の直列抵抗の測定結果を示す。ここで、約7時間から10時間の測定点が図12には記載されていないことが分かる。試料番号1から4のLSM層の厚さは、325μmであり、一方で、試料番号5の格子の厚さは、500μmである。
【0096】
これらの測定から、直列抵抗が試料番号1から6の全ての間で事実上等しいことが推測される。従って、本発明による厚いLSM層の接触抵抗が、金の格子のそれに近いか等しいと結論付けられ得、それは、最低の接触抵抗を有するものとしてこれまで知られる。すなわち、本発明によるLSM層は、10mΩ・cm未満の、無視できる電気接触抵抗を有する。
【0097】
他の測定試験が24時間以上行われたが、それは、電気化学セル、本発明による相互接続部材及び接触部の積層体を用いたものである。これらの試験は、満足のいくものであった。
【0098】
厚いセラミック層を含む、対向する金属基板の面における本発明による厚い金属層の製造は、記載されたものと同様の方法で行われ得、すなわち、ストリップに注入され、その後にホットプレス、及びCOレーザーを用いたアブレーションによる製造が行われ得る。
【0099】
本発明は、以上に記載されている実施例に限定されるものではなく、特に、示された実施例の特徴は、示されていない変形例内で組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0100】
1 流路プレート
2.1 カソード
2.2 カソード
4.2 アノード
6.2 電解質
7 アノード部分
8 部品、基板
9 カソード部分
10 リブ
11 流路
80 厚いセラミック層
81 厚い金属層
82 金属合金
83 保護セラミック層
800 流路
801 歯
810 流路
図1
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8A
図9
図10
図11A-11B】
図12