(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476128
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】シリコーン樹脂およびシリコーンゴムを含む組成物、それを含むパーソナルケア製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20190218BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20190218BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20190218BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20190218BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20190218BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20190218BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
A61K8/89
A61K8/891
A61Q1/04
A61Q5/00
A61Q5/12
A61Q5/06
C08L83/04
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-545509(P2015-545509)
(86)(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公表番号】特表2016-503433(P2016-503433A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】US2013072824
(87)【国際公開番号】WO2014089044
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】13/693,474
(32)【優先日】2012年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】デュソー,アン
(72)【発明者】
【氏名】ラナ,バーウナー
(72)【発明者】
【氏名】スペリング,スーザン
【審査官】
▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−501074(JP,A)
【文献】
特開平02−072110(JP,A)
【文献】
特開平04−234309(JP,A)
【文献】
特開平04−312511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C08L 83/00
C08G 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)シリコーン樹脂;および
b)シリコーンゴム
を含み、
シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物が、50℃を超える軟化点および106Pa以下の環境温度における弾性率を有し、
シリコーン樹脂(a)が、一つまたは複数の式R13SiO1/2のM単位、および式R22SiO2/2のD単位、式R3SiO3/2のT単位および式SiO4/2のQ単位、およびそれらの混合物の中から選択される一つまたは複数の更なる単位を含有し、式中、R1、R2およびR3の各々が独立してヒドロキシルラジカルまたは一価の炭化水素ラジカルであり、そしてシリコーンゴム(b)が25℃で300〜200,000,000センチポワズ(300〜200,000,000mPa・s)の粘度を有し、
シリコーン樹脂(a)が、30%以上のT単位を含み、残余があるならば一つまたは複数のQ単位、D単位、フッ素化基またはそれらの混合物から構成され、
シリコーン樹脂(a)の数平均分子量が10,000〜500,000であり、
シリコーン樹脂(a)が、MT樹脂、フッ素化MT樹脂、およびMT樹脂と少なくとも一つの他のシリコーン樹脂との混合物であってジメチコノールゴム、ジメチコンゴムおよびポリジメチルシリコーンゴムの少なくとも一つが混合されたものの少なくとも一つであり、そしてシリコーンゴム(b)が、ジメチコノールゴム、ジメチコンゴムおよびポリジメチルシリコーンゴムの少なくとも一つであり、そして
シリコーン樹脂(a)のシリコーンゴム(b)に対する重量比が、0.4〜6である、
組成物。
【請求項2】
シリコーンゴム(b)が、一つまたは複数の式R43SiO1/2のM’単位、および式R52SiO2/2のD’単位、式R6SiO3/2のT’単位および式SiO4/2のQ’単位、およびそれらの混合物の中から選択される一つまたは複数の更なる単位を含有し、式中、R4、R5およびR6の各々が独立してヒドロキシルラジカルまたは一価の炭化水素ラジカルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
本質的にカチオン性界面活性剤を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物が、非架橋型である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物が、非架橋型である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物用の揮発性有機溶媒を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
a)シリコーン樹脂;
b)シリコーンゴム;および
c)シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物用の揮発性有機溶媒
を含み、
シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物が、50℃以上の軟化点および106Pa以下の環境温度における弾性率を有し、
シリコーン樹脂(a)が、一つまたは複数の式R13SiO1/2のM単位、および式R22SiO2/2のD単位、式R3SiO3/2のT単位および式SiO4/2のQ単位、およびそれらの混合物の中から選択される一つまたは複数の更なる単位を含有し、式中、R1、R2およびR3の各々が独立してヒドロキシルラジカルまたは一価の炭化水素ラジカルであり、そしてシリコーンゴム(b)が25℃で5000〜200,000,000センチポワズ(5000〜200,000,000mPa・s)の粘度を有し、
シリコーン樹脂(a)が、少なくとも30%のT単位を含み、残余があるならばQ単位、D単位、フッ素化基またはそれらの混合物から構成され、
シリコーン樹脂(a)の数平均分子量が10,000〜500,000であり、
シリコーン樹脂(a)が、MT樹脂、フッ素化MT樹脂、およびMT樹脂と少なくとも一つの他のシリコーン樹脂との混合物であってジメチコノールゴム、ジメチコンゴムおよびポリジメチルシリコーンゴムの少なくとも一つが混合されたものの少なくとも一つであり、そしてシリコーンゴム(b)が、ジメチコノールゴム、ジメチコンゴムおよびポリジメチルシリコーンゴムの少なくとも一つであり、そして
シリコーン樹脂(a)のシリコーンゴム(b)に対する重量比が、0.4〜6である、
パーソナルケア製品。
【請求項8】
シリコーンゴム(b)が、一つまたは複数の式R43SiO1/2のM’単位、および式R52SiO2/2のD’単位、式R6SiO3/2のT’単位および式SiO4/2のQ’単位、およびそれらの混合物の中から選択される一つまたは複数の更なる単位を含有し、式中、R4、R5およびR6の各々が独立してヒドロキシルラジカルまたは一価の炭化水素ラジカルである、請求項7に記載のパーソナルケア製品。
【請求項9】
前記パーソナルケア製品が、シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物が、非架橋型であり、そして揮発性有機溶媒に溶解される本質的にカチオン性界面活性剤を含まないヘアケア製品である、請求項7に記載のパーソナルケア製品。
【請求項10】
前記ヘアケア製品で処理した髪が、以下の基準:
フィルムタック(film tack)が50g以下、
髪のツヤ因子が少なくとも1.7、
毛束量の減少値が40〜70%、および
髪の摩擦係数が0.12未満
の少なくとも二つを満たす、請求項9に記載のパーソナルケア製品。
【請求項11】
パーソナルケア製品がリップグロスである、請求項7に記載のパーソナルケア製品。
【請求項12】
請求項9に記載のヘアケア組成物で髪を処理するステップを含み、処理した髪が、以下の基準:
フィルムタック(Film tack)が50g以下、
髪のツヤ因子が少なくとも1.6、
毛束量の減少値が40〜70%、および
髪の摩擦係数が0.12未満
の少なくとも二つを満たす、髪を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン組成物およびそれを含むパーソナルケア製品に広く関する。より具体的には、本発明は、シリコーン樹脂およびシリコーンゴムの混合物を含むシリコーン組成物、およびそのような組成物を配合した、例えば、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、整髪用ジェル、ヘアクリーム、リップグロス等の、光沢またはツヤを与えるパーソナルケア製品に関する。
【0002】
高分子量の直鎖シリコーンの使用は、ヘアコンディショニングを提供したり、髪のツヤを増強させるためとして長い間知られてきた。しかしながら、直鎖シリコーンは流れやすく、そして毛髪繊維に満足できる安定な膜を提供しない。特に、シリコーンゴムの高用量において、毛髪繊維が互いに張り付きやすく、そして髪がべたついた外見を呈することがよく見られる。
【0003】
MQシリコーン樹脂および直鎖シリコーン混合物が、シリコーン感圧接着剤において広く用いられる構造化ネットワークを形成することは良く知られている。そのような混合物はまた、例えば、口紅、ファンデーション等の化粧品における着色成分の耐移り性のために一般的に用いられる。しかしながら、これらの用途において、シリコーン樹脂と直鎖シリコーンの混合物は粘着性であり、許容されるヘアケア製品に求められるであろうきれいな、非粘着性の、そして滑らかな仕上がりを提供しない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は:
a)シリコーン樹脂;および、
b)シリコーンゴム、
50℃以上の軟化点および10
6Pa以下の環境温度における弾性率を有する、樹脂(a)およびゴム(b)の混合物
を含む組成物を提供する。
【0005】
意外にも、上記の組成物が、毛髪繊維に安定な膜を形成し、そして過剰な粘着性を顕著に低下することが見出された。髪に適用すると、本発明の組成物を含む配合物は、なめらかな感触と、あったとしてもごくわずかの繊維の凝集を残しながら強い光沢を与える。
【0006】
好ましい実施態様において、本発明の組成物のシリコーン樹脂(a)は、シリコーン樹脂(a)が、一つまたは複数の式R
13SiO
1/3ので表されるM単位、および式R
22SiO
2/2で表されるD単位、式R
3SiO
3/2で表されるT単位および式SiO
4/2で表されるQ単位、およびそれらの混合物の中から選択される一つまたは複数の更なる単位を含有し、式中、R
1、R
2およびR
3の各々が独立してヒドロキシルラジカルまたは一価の炭化水素ラジカルである。
【0007】
好適な一価の炭化水素ラジカルR
1、R
2およびR
3は、非環式炭化水素ラジカル、脂環式炭化水素ラジカルおよび芳香族炭化水素ラジカルを含む。好ましい一価の炭化水素ラジカルは、アルキルラジカル、アリールラジカルおよびアラルキルラジカルである。
【0008】
ここで、表現「非環式炭化水素ラジカル」は、飽和または不飽和、そして同様の数のヒドロカルビル水素原子に代わって、一つまたは複数のヘテロ原子、例えば、酸素、窒素等、および/または一つまたは複数の官能基および/または原子、例えば、ヒドロキシル、ハロ、具体的にはクロロおよびフルオロ等を含んでよい、好ましくは22までの炭素原子を含む直鎖または分枝状炭化水素ラジカルを意味する。
【0009】
好適な一価の非環式炭化水素ラジカルは、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、シアノアルキル、カルボキシアルキル、アルキルオキシ、オキサアルキル、アルキルカルボニルオキサアルキレン、カルボキサミドおよびハロアルキルを含み、例えば、メチル、エチル、sec−ブチル、tert−ブチル、オクチル、デシル、ドデシル、セチル、ステアリル、エテニル、プロペニル、ブチニル、ヒドロキシプロピル、シアノエチル、ブトキシ、2,5,8−トリオキサデカニル、カルボキシメチル、クロロメチル、トリフルオロメチル、および3,3,3−トリフルオロプロピルである。
【0010】
ここで、表現「脂環式炭化水素ラジカル」は、好ましくは環一つにつき4〜12の炭素原子を含む、一つまたは複数の飽和炭化水素環を意味し、該飽和炭化水素環は、一つまたは複数の環上で、アルキルラジカル、ハロラジカルまたは他の官能基一つにつき、各々好ましくは2〜6の炭素原子を含む一つまたは複数のアルキルラジカルで任意に置換されていてよく、そして二つまたはそれを超える環を含む脂環式炭化水素ラジカルの場合は、縮合環であってよい。好適な一価の脂環式炭化水素ラジカルは、例えば、シクロへキシルおよびシクロオクチルを含む。
【0011】
ここで、表現「芳香族炭化水素ラジカル」は、ラジカル一つにつき一つまたは複数の芳香族環を含む炭化水素ラジカルを意味し、該炭化水素ラジカルは、芳香族環上でアルキルラジカル、ハロラジカルまたは他の官能基一つにつき、各々好ましくは2〜6の炭素原子を含む一つまたは複数のアルキルラジカルで任意に置換されていてよく、そして二つまたはそれを超える環を含む一価の芳香族炭化水素ラジカルの場合は、縮合環であってよい。好適な一価の芳香族炭化水素ラジカルは、例えば、フェニル、トリル、2,4,6−トリメチルフェニル、1,2−イソプロピルメチルフェニル、1−ペンタレニル、ナフチル、アントリルを含む。ここで、用語「アラルキル」は、アルキル基、好ましくは(C
2−C
6)アルキル基の芳香族誘導体を意味し、ここで、芳香族誘導体のアルキル部分は、例えば、フェニルエチル、フェニルプロピル、2−(l−ナフチル)エチル等、好ましくはフェニルプロピル、フェニルオキシプロピル、ビフェニルオキシプロピル等、任意で酸素原子によって中断されていてもよい。
【0012】
好ましい実施態様において、シリコーン樹脂(a)は、30%以上、好ましくは40%以上、そして更に好ましくは50%以上の割合でT単位を含み、残余があるならば、一つまたは複数のQ単位、D単位、フッ素化基およびそれらの混合物から構成される。つまり、例えば、シリコーン樹脂(a)は、MT樹脂、フッ素化MT樹脂、MT樹脂と異なるシリコーン樹脂との混合物、例えば、MT樹脂とMQ樹脂との混合物、またはフッ素化シリコーン樹脂の混合物であってよい。
【0013】
好ましい実施態様において、シリコーン樹脂(a)は、M単位のT単位に対する比が1:1〜1:7の範囲であるMT樹脂であり、そして該樹脂の軟化点は、50℃〜110℃の範囲である。このタイプの有用なシリコーン樹脂は、米国特許出願公開第2011/0040062号に開示されており、その全内容は参照することによってここに組み込まれる。
【0014】
シリコーン樹脂(a)は、好ましくは、ポリジメチルシロキサン、ジメチコノール、アモジメチコン、フェニル変性シリコーン、アミン基または第四級基を含むシリコーンブロックコポリマー、または他の荷電または非荷電シリコーンブロックコポリマー、および上記のいずれかの混合等の直鎖シリコーンである。好ましくは、シリコーン樹脂(a)は、500以上、好ましくは1000以上で最大1,000,000、そしてより好ましくは10,000〜500,000の数平均分子量を有する。
【0015】
好ましい実施態様において、本発明の組成物のシリコーンゴム(b)は、25℃で300〜200,000,000、そして好ましくは750,000〜2,000,000センチポワズ(cps)(750,000〜2,000,000mPa・s)の粘度を有するシリコーンから選択される。シリコーンゴム(b)の粘度は、公知の一般的な粘度測定装置および技術を用いて容易に測定出来る。
【0016】
好ましい実施態様において、上記の粘度性質を示すシリコーンゴム(b)は、式R
43SiO
1/2で表されるM’単位、および式R
52SiO
2/2で表されるD’単位、式R
6SiO
3/2で表されるT’単位、および式SiO
4/2で表されるQ’単位、およびそれらの混合物の中から選択される一つまたは複数の更なる単位を含有し、式中、R
4、R
5およびR
6の各々が独立してヒドロキシルラジカルまたは一価の炭化水素ラジカルである。
【0017】
好適な一価の炭素ラジカルR
4、R
5およびR
6は、上記定義および例示の通り、非環式炭化水素ラジカル、脂環式炭化水素ラジカルおよび芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0018】
好適なシリコーンゴム(b)は、公知であり、そして市販されている。例えば、ゴムは、米国特許第2,814,601号(参照することによってここに組み込まれる)に開示される方法(ここでシロキサンの粘度が本質的に一定になるまで、適したシロキサンを水溶性酸と閉鎖系で反応させる)に従って作製することが出来る。生成物をその後、洗浄し、酸を除く。有用なシリコーンゴム(b)の具体例は、全てMomentive Performance Materials Inc.製であり、Silsoft 1215(シクロジメチコン溶媒D5中にジメチコノールゴム)、SE30(ジメチコンゴム)、Viscasil 60M(ポリジメチルシロキサンゴム)およびSilsoft AX(アルキル変性アミノシリコーン)を含む。
【0019】
シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の少なくとも一部が架橋性官能基を有する場合、例えば、樹脂(a)のR
1、R
2およびR
3の一つまたは複数が、水酸基であり、そしてゴム(b)のR
4、R
5およびR
6の一つまたは複数が、水酸基であり、そうして樹脂(a)とゴム(b)の混合物においてシラノール反応基を表す場合、シリコーンゴム(a)とシリコーンゴム(b)の混合物またはそれらの一部を樹脂(a)とゴム(b)の架橋物として提供することは、本発明の範囲内である。この実施態様は、公知および従来の架橋手順の使用を意図するものであり、その中でも特に、Griswoldらの米国特許第6,890,601号(その全内容は参照することによってここに組み込まれる)に開示されている架橋剤、触媒そして条件を用いることを意図している。
【0020】
しかしながら、ヘアケア製品を含む多数の製品用途において、本発明のシリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物の全て、または殆ど全てが、非架橋型であることが望ましい。樹脂(a)とゴム(b)の非架橋型混合物は、殆どまたは全く架橋性官能基を含まず(例えば、樹脂(a)のR
1、R
2およびR
3、そしてゴム(b)のR
4、R
5およびR
6は、わずか数個の架橋性基を含み)、および/または、これらのシリコーンの混合物の作製、および目的のパーソナルケア製品の製造におけるそれらの使用において、架橋条件は避けられるであろう。
【0021】
ここで、シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物は、50℃以上、好ましくは60℃以上、そして更に好ましくは70℃以上の軟化点、および環境温度において、10
6Pa以下、好ましくは5x10
5Pa以下、そして更に好ましくは3x10
5Pa以下の弾性率を有していなければならない。一般的に、軟化点および弾性率というこれらの特性は、樹脂(a)のゴム(s)(b)に対する重量比が0.4〜6、好ましくは0.5〜5の範囲、そして更に好ましくは0.7〜4の範囲である、シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物において得られる。
【0022】
本発明のシリコーン樹脂(a)およびシリコーンゴム(b)の混合物は、50℃以上の軟化点を有する。つまり、環境温度において固体であるから、特定のパーソナルケア製品の形成において、シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物を、一つまたは複数の揮発性有機溶媒(c)、例えば、エチルトリシロキサン、オクチルトリシロキサン、シクロジメチコン等の有機ケイ素含有溶媒、および/または揮発性パラフィン系溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の、一つまたは複数の他のタイプの有機溶媒で希釈することが好都合である。そのような溶媒の例は、例えば、直鎖および異性体のペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等のC
5〜C
12非環式および環式アルカン、およびそれらの環状アナログ体、および例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族溶媒を含む。使用する場合、揮発性有機溶媒(s)(c)は一般的に、樹脂/ゴム混合物に対して、200〜0.1、好ましくは100〜1、そして更に好ましくは60〜5の溶媒の重量比で、樹脂(a)とゴム(s)(b)の混合物と併用してよい。
【0023】
好ましい実施態様において、樹脂(a)およびゴム(b)の有機溶媒溶液は、ヘアケア製品を提供する当技術分野においてよく知られる手順を用いて、水溶性または非水スプレー、水溶性または非水フォームまたはムース、水中油(w/o)エマルジョンまたは油中水(o/w)エマルジョンとして形成される。
【0024】
本発明のパーソナルケア配合物はまた、そのような製品において、公知の一般的な量で使用することが知られる、一つまたは複数の他の成分、保湿剤(パンテノール、ブチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、他のポリオール)、アミノ酸、天然保湿成分(PCAナトリウム)、非イオン性ワックス(脂肪アルコール、エトキシ化ワックス、ステアリン酸グリセロール、蜜ロウ、パラフィンワックス等)、エステル、トリグリセリド油(オリーブオイル、ホホバオイル、ひまわり油、ココナツオイル、アラガン油、ブドウ種子油等)、天然バター(シアバター、ココアバター)、乳化剤(シリコーン乳化剤、シリコーンポリエーテルコポリマー、有機乳化剤)、アニオン性または両性界面活性剤(ココベタイン、SLES、イソチアネート、糖界面活性剤)、シリコーンスーパースプレッダー(superspreaders)等の展着剤、固体粒子、顔料、ミネラル(タルク、マイカ、酸化鉄、窒化ホウ素、酸化チタン、粘土)、永久および半永久染毛剤、香料、植物エキス、ポリフェノール等の活性物質、多糖類(キトサン)、プロテイン(ケラチン、シルクプロテイン、小麦タンパク質)、脂質、ステロール、フケ予防活性物質、サリチル酸、グリコール酸、育毛剤、アンチエイジング活性物質(レチノール、α−ヒドロキシ酸)、ナイアシンアミド、還元剤(チオグリコレート、システアミン)、亜硫酸塩、酸化剤(過酸化水素、臭素酸塩)、リラクサー(水酸化ナトリウム、グアニジン)、架橋剤(アルデヒド、エポキシ含有化合物、シラン、酵素)、スタイリングポリマー(PVP、アクリレートコポリマー)、増粘ポリマー(アクリレート、ポリアクリルアミド、セルロース、でんぷん、多糖類樹脂、ペクチン等)、付着助剤ポリマー(カチオン性グアー、カチオン性セルロース、メルクアット)、防腐剤、殺生物剤(フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム、安息香酸、ソルビン酸等)、抗酸化剤(ビタミンE)、UVA UVB日焼け止め、サンレス・タンニング剤(ジヒドロキシアセトン)等を含んでよい。
【実施例】
【0025】
比較例1〜6;実施例1〜7
【0026】
【表1】
【0027】
Silform Flex MT樹脂およびSRI 000 MQ樹脂は、Momentive Performance Materials Inc.から入手可能な樹脂である。Silsoft 1215は、シリコーン溶媒D5中に、15重量%のジメチコノールガムを含有し、Momentive Performance Materials Inc.から入手可能である。SE30はまた、Momentive Performance Materials Inc.から入手可能なジメチコンゴムである。Viscasil 60 Mは、約60,000を有する、Momentive Performance Materials Inc.から入手可能なポリジメチルシロキサンである。
【0028】
(2)試験方法
a.軟化点および弾性率
樹脂(a)のゴム(b)に対する重量比が異なる、樹脂(a)とゴム(b)の混合物をシクロジメチコン溶媒D5に溶解し、アルミニウム平鍋におき、そしてD5が完全に蒸発するまで90℃で乾燥した。弾性率(G’)および貯蔵弾性率(G’’)を、TA Instrument(ニューキャッスル、デラウェア州)製の動的粘弾性測定装置(Dynamic Mechanical Analysis)を用いて、約1Hzの振動数で、−150℃〜150℃の範囲の温度の関数として測定した。最大のtanデルタ(G’’/G’比)が観測された時の温度を軟化点と定義した。この方法は、シリコーン感圧接着剤を特性づけるための確立した方法である。
【0029】
b.フィルムタック(Film tack)
60ミクロンのフィルムは、アルミニウム製鍋で、樹脂(a)とゴム(b)の混合物を溶媒D5中で乾燥させることによって、作製された。D5を蒸発させた後、最大タック力を、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザー(Texture Analyzer)(サリー、U.K.)を用いて100gの負荷および接触時間1秒で測定した。50gを超えない高さのフィルムタック(film tack)を示すヘアケア製品は、一般的に、この点で好ましく良い性能を示すと考えられる。
【0030】
c.髪のツヤ(または光沢)
髪の光沢は、株式会社 村上色彩技術研究所製(Murakami)GoniophotoMeter(東京、日本)を用いて、30°の入射角で測定した。ツヤ因子は、全反射率および式F
g=(L
max−D)/D(式中、L
maxは、最大反射率であり、そしてDは、視野角0°で得られた反射率(拡散反射率)である)を用いて得られた。髪の光沢は、ツヤ因子が1.6より高い場合に顕著に増加したと考えられる。
【0031】
d.毛束量
繊維の凝集は、顕著な毛束量の減少を生じた。量の減少は、毛髪毛束を90%相対湿度室で1時間保管した後、画像解析によって測定した。毛束量は、毛束面積(A)の画素数を数えることによって測定された。量の減少因子は、式R
v=100
*(A
o−A)/(A
o−A
min)(式中、A
oは、未処理の毛束面積(非常に縮れた毛束)の値であり、そしてA
minは、最小の毛束面積(アイロンをかけた毛束))を用いて得られた。量の減少が過剰であれば(R
v>70%)、髪は凝集して見えるであろう。量の減少が少なすぎれば(R
v<30%)、髪は縮れて見えるであろう。40%〜60%の間の量の減少では、処理した毛束は、縮れて見えず、そして毛髪繊維は凝集せず、そのため髪は自由になびであろう。
【0032】
e.髪のなめらかさ
髪の摩擦係数μは、ピンと張った平らな毛束で、フラットステンレス鋼プローブを持つCSMトライボメーター(ニーダム、マサチューセッツ)に基づいて測定された。髪は、μ<0.12である場合になめらかであると考えられた。
【0033】
(3)ヘアトリートメント配合物
【0034】
樹脂(a)とゴム(b)配合の混合物の例および該混合物で髪を処理した結果を以下の表1Aおよび1Bに示す。樹脂(a)とゴム(b)の混合物をシクロジメチコンD5で希釈し、固体分2重量%の溶液を得た。一重漂白した毛髪束を各試験溶液に1分間浸漬した。余分な液体を絞り出し、そして毛束をブロードライヤーを用いて十分に乾燥させ、溶媒D5を除き、その後、毛束を45℃のオーブンに一晩置いた。この手順により、ほぼ同量のシリコーン混合物が各毛束サンプルに提供された。毛束の測定は、50%湿度室における平衡の後に行われた。
【0035】
表1Aおよび1Bにおいて、比較例1は、低い光沢、低いタック、そしてザラザラした仕上がりを持つ未処理の毛束である。比較例2では、シリコーンゴムのみで処理した毛束は、非常に高い光沢があったが、繊毛束繊維の過度な凝集を示し、毛束はべたついて見えた。両者共非常に低い軟化点を持つ比較例3および4の樹脂(a)とゴム(b)の混合物は、高タックフィルムと過度の毛髪繊維の凝集を生成した。両者共室温で高い弾性率を持つ比較例5および6の樹脂(a)とゴム(b)の混合物は、低い光沢とザラザラした仕上がりを持つ髪という結果であった。
【0036】
比較例1〜6の組成物とは対照的に、表1Bに示すように、本発明の実例となる本発明の実施例1〜7の毛束は、高光沢、低摩擦(滑らかな手触り)および適度な量の減少、すなわち、感知できる程の凝集がないという、望ましい特性を生じた。40%〜60%の間の量の減少では、自由になびくことが出来る髪が示すように、実施例1〜7の組成物で処理した毛束は、縮れて見えず、そして毛髪繊維は凝集の形成を回避した。故に、比較例1〜6がこれらの基準を一つたりとも満たさなかった一方、実施例1〜7のシリコーン混合物は、適切に調合され機能するヘアケア製品の主要な基準を満たした。
【0037】
【表1A】
【0038】
【表1B】
【0039】
比較例7;実施例8
本質的にカチオン性界面活性剤を含まないということは、シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物を含むヘアケア製品の必須要件である。この要件は、以下の表2に示す比較によって証明される。
【0040】
【表2】
【0041】
表2に示す通り、カチオン性界面活性剤を含まない本発明の組成物(実施例8)で処理した毛束は、繊維の凝集なく強い輝きを示し、それにより髪の繊維に自由な動きと共にきれいな外観を与えた。その一方、カチオン性界面活性剤を含む組成物(比較例7)で処理した髪は、凝集およびべたつきが見られた。
【0042】
実施例9〜14
以下の表3は、本発明のヘアケア製品の構成に好適なO/Wエマルジョンの組成物を示す。本発明よると、例示した各組成物は、シリコーン樹脂(a)とシリコーンゴム(b)の混合物を含み、そしてカチオン性界面活性剤を含まない。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例15および16
以下の表4は、本発明のヘアケア製品の構成に好適なWOエマルジョンの組成物を示す。
【0045】
【表4】
【0046】
実施例17
表5は、本発明のリップグロス製品の組成を示す。
【0047】
【表5】
【0048】
本発明を具体的な実施態様と共に上述したが、当業者は、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であり、そして同等のものがその要素の代わりとなり得ることを理解するであろう。本発明は、ここに開示される特定の実施態様に限定されるものではなく、ここに添付される特許請求の範囲内にある全ての実施態様を含むことを意図する。