(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1(A)は、本発明に係る電動弁の第1実施形態を示す縦断面図であり、
図1(B)は、
図1(A)のA矢視図(ロータの上面図)、
図2〜
図6は、
図1に示される電動弁の組立方法の説明に用いる図である。
【0015】
(電動弁1の構成及び動作)
図1を用いて電動弁1の構成及び動作を説明する。
【0016】
電動弁1は、上面が開口した有底円筒状の弁本体10、弁本体10の上端面部外周側60にその下端部が溶接等により密封接合されたキャン45、弁本体10の上端面部内周側70に溶接等により固定された鍔状円板18付きのガイドステム15、ガイドステム15の小径上部15bに形成された雌ねじ部15iに、その軸状部21a外周に形成された雄ねじ部21eが螺合せしめられた弁軸21、弁軸21に一体回動可能に連結固定されたロータ30、及びロータ30を回転駆動すべくキャン45の外周に外嵌されたステータ50を備えている。
【0017】
ここでは、ロータ30とステータ50とでステッピングモータが構成され、また、ガイドステム15の雌ねじ部15iと弁軸21の雄ねじ部21eとでねじ送り機構が構成され、前記ステッピングモータとねじ送り機構とで弁軸21を回転させながら昇降させるための昇降駆動機構が構成されている。
【0018】
弁本体10は、ステンレスなどの金属板材を素材としてプレス加工により作製されたものであり、その底部(下面)10bには、弁座(弁口)11aを有する弁座部材(弁シート)11がロウ付け等で固定され、その上部にはガイドステム15の下部が挿入されている。弁本体10の弁室12の一側方には、管継手からなる第1入出口6(銅製の横側パイプ)がロウ付け等により接合されている。
【0019】
また、弁シート11には、管継手からなる第2入出口7(銅製の下側パイプ)が第2ロウ材120によりロウ付けされている。ここで、弁シート11側面の外周面には三角溝130が形成されている。
【0020】
弁軸21は、ロータ30の連結体32が外嵌せしめられる小径部21b、ガイドステム15の雌ねじ部15iに螺合する雄ねじ部21e、及び、雄ねじ部21eより下側の鍔状部21d及びかしめ部21f付きの下部連結部21cを有し、弁軸21の下端部には、そのかしめ部21fにその天井穴部分が連結固定され、ガイドステム15の大径円筒状胴部15aに摺動自在に嵌挿された天井部23b付き円筒状の弁ホルダ23が保持され、弁ホルダ23の円筒部23a下部には、弁体25の上部が摺動自在に挿入されている。
【0021】
弁体25は、逆円錐面部を有する弁座(弁口)11a内にその下部が挿入されて着座する逆円錐台状の弁体部25a、弁体部25aの上部に連なる円柱状胴部25b、及び、この円柱状胴部25bの上部に圧入・溶接等により外嵌固定された厚肉の抜止スリーブ25cを有することに加えて、前記円柱状胴部25bの下部の所定部位には鍔状部29が設けられている。ここで、前記弁ホルダ23の下端部に固定された底板部27の通し穴に挿通される前記円柱状胴部25b(の上部)の外径は、前記弁座(弁口)11aの口径よりも大きくされている。このような弁体25が弁軸21に設けられている。
【0022】
弁ホルダ23の下端部には、弁体25(の抜止スリーブ25c)を、間に薄肉の環状円板28を挟んで抜け止め係止するとともに、通し穴が設けられた厚肉板からなる底板部27がかしめ・溶接等により保持固定されている。
【0023】
一方、弁体25の上面には、断面外形がハット形のばね受け部材26が乗せられ、このばね受け部材26の鍔状部と弁ホルダ23の天井部23bとの間には弁体押圧兼緩衝用の圧縮コイルばねからなる弁体付勢ばね24が縮装されており、弁体25は弁体付勢ばね24により常時下向きに付勢されている。
【0024】
ここで、前記弁体25に設けられた鍔状部29及び弁ホルダ23に設けられた該弁ホルダ23の底部を構成する底板部27は、それぞれ組立時(組立用基準位置を検出するため)の便宜を図るための組立用ストッパ機構の固定ストッパ及び可動ストッパとなる。
【0025】
上記した弁軸21、弁ホルダ23、弁体25、及び弁体付勢ばね24は、弁体25が弁座11aから離隔している状態(開弁状態)においては実質的に一体的に回転しながら昇降せしめられる。
【0026】
また、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置を設定すべく、ガイドステム15の小径上部15bの上面には、所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形の閉弁方向用固定ストッパ55が上向きに突設され、ガイドステム15の大径円筒状胴部15aの上部には所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形の開弁方向用固定ストッパ56が下向きに突設されている。ここで、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置とは、閉弁方向用可動ストッパ35が閉弁方向用固定ストッパ55に接当して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達した時の位置のことである。
【0027】
弁軸21における雄ねじ部21eの上端部には、閉弁方向用可動ストッパ35が螺合せしめられてロータ30の円板状天井部に抜け止め係止されている。この閉弁方向用可動ストッパ35は、雄ねじ部21eに螺合する平面視外形が六角形でその一辺が円弧状とされたナット部35aとこのナット部35aから下向きに突設された所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形のストッパ部35sとからなっている。
【0028】
また、弁軸21の雄ねじ部21eの下端部には、開弁方向用固定ストッパ56に接当係止される開弁方向用可動ストッパ36が螺合せしめられて前記弁ホルダ23の天井部23bに抜け止め係止されている。この開弁方向用可動ストッパ36は、雄ねじ部21eに螺合するナット部36aとこのナット部36aから上向きに突設された所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形のストッパ部36sとからなっている。
【0029】
前記ロータ30は、天井付き円筒状のマグネット31とこれの天井部に一体結合された連結体32とからなり、連結体32は、弁軸21における小径部21bに外嵌されるとともに、閉弁方向用可動ストッパ35上に載せられて小径部21bに溶接固定されている。
【0030】
ここで、ロータ30の天井部の下面側には、
図1(B)に破線で示される如くに、両端部が平面視でD字状に形成されたDカット部を備えた凹部33が設けられ、この凹部33に形成されたDカット部以外の円弧状とされた部分に閉弁方向用可動ストッパ35のナット部35aの円弧状とされた一辺が接当した状態で嵌め込まれ、Dカット部にナット部35aの他の2辺が接当した状態で嵌め込まれており、これにより、ロータ30と閉弁方向用可動ストッパ35と弁軸21とは、一体的に回転しながら昇降せしめられる。
【0031】
一方、キャン45の外周には、ヨーク51、ボビン52、コイル53、樹脂モールド54等からなるステータ50が外嵌されている。このステータ50は、その底部に設けられた位置決め固定具(図示省略)により、弁本体10に対して所定の位置に位置決め固定されている。
【0032】
また、電動弁1には、電動弁1の動作(流量)制御等を行うべく、マイクロコンピュータを内蔵したコントローラ(図示省略)が備えられている。コントローラは、電動弁1が組み込まれているシステム内に配置された各センサ類や操作盤(リモコン)等からの信号に基づき所要の演算処理を行い、電動弁1のステータ50に駆動パルスを供給する。
【0033】
これにより、電動弁1のロータ30が供給パルス数に応じた分だけ回転する。ロータ30が回転せしめられると、それと一体に弁軸21が回転せしめられ、このとき、ねじ送り機構により弁軸21が弁体25を伴って昇降せしめられ、これによって、冷媒の通過流量が調整される。
【0034】
かかる電動弁1の動作をより具体的に説明する。
【0035】
すなわち、ステータ50に閉弁方向用駆動パターンとなるパルス(正転パルスと称することがある)を供給することにより、ロータ30及び弁軸21が一方向(例えば、平面視時計回り)に回転せしめられ、雌ねじ部15iと雄ねじ部21eからなるねじ送り機構により、弁軸21及び閉弁方向用可動ストッパ35が回転しながら下降し、弁体25が弁座11aに着座して弁口が閉じられる。
【0036】
この時点では、可動ストッパ35は未だ固定ストッパ55に接当しておらず、ロータ30及び弁軸21の回転下降は停止されず、弁体付勢ばね24が所定量圧縮されるまでパルス供給が継続され、それによって、弁体25が弁シート11に着座したままロータ30、弁軸21、弁ホルダ23等はさらに回転しながら下降する。
【0037】
このときは、弁体25に対して弁軸21及び弁ホルダ23が下降するため、弁体付勢ばね24が圧縮せしめられ、これによって弁軸21及び弁ホルダ23の下降力が吸収され、その後、弁体付勢ばね24の圧縮量が所定量となったとき、可動ストッパ35が固定ストッパ55に接当して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達し、ステータ50に閉弁方向用駆動パターンとなるパルス供給が続行されてもロータ30及び弁軸21の下降は強制的に停止される。なお、電動弁1では、ステッピングモータにおける1パルス供給による回転角度、弁軸21の雄ねじ部21eのピッチ等が予め分かっているので、弁軸21の下降量及び上昇量は、閉弁方向用駆動パターンとなる正転パルス数、開弁方向用駆動パターンとなる逆転パルス数をカウントすることにより設定できる。
【0038】
このように、弁体25が弁座11aに着座して弁口が閉じられた後においても、可動ストッパ35が固定ストッパ55に接当して係止される制御用原点位置に達するまでは、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転下降が継続されることにより、弁体付勢ばね24が圧縮されるため、弁体付勢ばね24の付勢力により弁体25が弁座11aに強く押し付けられ(この状態を押圧閉弁状態と称する)、弁漏れ等を確実に防止できる。
【0039】
一方、上記制御用原点位置(押圧閉弁状態)からステータ50に開弁方向用駆動パターンとなるパルス(逆転パルスと称することがある)を供給すると、ロータ30及び弁軸21が閉弁時とは逆方向(例えば、平面視反時計回り)に回転せしめられ、雌ねじ部15iと雄ねじ部21eからなるねじ送り機構により、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23及び開弁方向用可動ストッパ36が回転しながら上昇し、これに伴い、弁体25に対する押圧力が弱められ、弁体付勢ばね24が所定量伸張して、弁体付勢ばね24の付勢力が生じる前の状態に戻り、弁体25が弁座11aから離れ、弁口が開く。この場合、
図8に示される如くに、ステータ50への供給パルス数に応じて弁体25のリフト量が定まり、さらに前記パルス供給を続けると、最終的には、全開状態となるとともに、可動ストッパ36が開弁方向用固定ストッパ56に接当係止され、これにより、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転及び上昇が強制的に停止せしめられる。
【0040】
上記のような電動弁1においては、組立時において、正確に制御用原点位置を出して、この原点位置にて閉弁方向ストッパ機構の固定ストッパ55に可動ストッパ35が確実に接当係止されるようにしておくことが要求される。
【0041】
弁軸21が制御用原点位置にある状態において、
図1に示される如くに、弁軸21に閉弁方向用可動ストッパ35をねじ込んで閉弁方向用固定ストッパ55に接当させた状態にするとともに、その上にロータ30を被せるようにして載せ置き、ロータ30の連結体32と弁軸21の小径部21bとを溶接等で固着する。これにより、ロータ30と可動ストッパ35は一体的に回転しながら昇降し、弁軸21が制御用原点位置に達したときには、固定ストッパ55に可動ストッパ35が接当係止される。
【0042】
次に、キャン45の下端部を弁本体10に溶接等により密封接合するとともに、キャン45の外周にステータ50を位置決め固定すると、電動弁1の組立が完了する。
【0043】
(電動弁1の組立方法の詳細な説明)
図2から
図6を用いて電動弁1の組立方法を詳細に説明する。
【0044】
図2は、組立て後の電動弁1の弁シート11の周辺の拡大図である。弁本体10、弁シート11及び弁体25はステンレス製である。円筒状の弁本体10の上面は開口し、その下面には弁シート11が接合されている。
【0045】
弁シート11側面の外周面に三角溝130をくびれ部として設けている。三角溝130は例えば弁シート11を旋盤加工することによって形成できる。ここで、くびれ部は、弁シート11側面の外周面のうち、他の箇所より外径が狭くなっている部分をいう。
【0046】
図3は、電動弁1を組み立てる工程のうち、
図2に示される弁シート11に弁本体10及び第2入出口7(下側パイプ)をそれぞれロウ付けする工程を説明する図である。
【0047】
予め、弁シート11の上側に弁本体10をカシメにより仮止めし、弁シート11の下側に第2入出口7(下側パイプ)を挿入しておく。そして、
図3のように円筒状の弁本体10の上面を下側に向け、第2入出口7を上側に向けた状態で弁シート11を第1治具300の上に載せる。
【0048】
そして、弁本体10の下面の開口に、
図1に示す弁座11aを有する弁シート11を第1ロウ材110でロウ付けし、弁シート11のくびれ部が形成された部分の内側に第2入出口7を第2ロウ材120でロウ付けする。なお、本実施形態では、第1ロウ材110及び第2ロウ材120として銅合金を用いている。
【0049】
ここで、溶けた第1ロウ材110は表面張力や拡張ぬれ等の現象によって弁シート11の外周に沿って上り、上った状態でロウが固まる。しかしながら、三角溝130があるため、三角溝130を超えて上ることは無い。
【0050】
図4は、
図1に示される電動弁1を組み立てる工程のうち、弁シート11を治具で固定する工程を説明する図である。
【0051】
上述した通り、キャン45の下端部を弁本体10に溶接等により密封接合する必要がある。そのために、まず
図3の状態から上下を逆にし、弁本体10の上面を上側に向けた状態で、弁シート11の三角溝130よりも下側外周面11gを位置決めの基準面として用いて第2治具400に固定する。
【0052】
弁本体10が弁シート11を介して第2治具400に固定された状態で、
図1に示す弁体25が設けられた弁軸21と弁座(弁口)11aの中心軸とを合わせ、弁本体10の上端部内側70にガイドステム15に設けられた鍔状円板18を溶接などで固定する。これにより、弁軸21及び弁体25は弁本体10側(弁シート11)の弁座11a(弁口)の中心軸と同軸に上下動できる状態で固定される。さらに、弁軸21が固定された弁本体10の上面に、キャン45の下端部を密封接合する。
【0053】
ここで、弁本体10が弁シート11を介して第2治具400に固定された状態で、キャン45と弁本体10の中心軸をあわせてから、弁本体10の上面に、キャン45の下端部を密封接合してもよい。
【0054】
三角溝130の位置は、第1ロウ材110が弁シート11を上ってくること及び第2治具400で弁シート11を固定することを考慮すると、弁シート11の外周の中央ぐらいであることが望ましい。
【0055】
図5は、弁本体10とキャン45を密封接合した後の図であり、
図1に示されるステータ50をキャン45の外周に位置決め固定する前の縦断面図である。また、
図6は
図5の外観図である。三角溝130が弁シート11側面の外周面に沿って形成されていることがわかる。そして、弁本体10に密封接合されたキャン45の外周に、
図1に示すステータ50を位置決め固定する。
【0056】
(作用効果)
次に、作用効果について説明する。本実施形態によれば、旋盤加工など比較的容易な加工により、くびれ部としての三角溝130を弁シート11の外周に設けることができる。そして、溶けた第1ロウ材110が弁シート11の外周に沿って上がってくるのを、三角溝130で防ぐことができる。したがって、キャン45の下端部を弁本体10に溶接等により密封接合する際に、第2治具は、第1ロウ材110を挟むこと無く、弁シート11の三角溝130よりも下側外周面11gを正確に固定できる。これによって、弁シート11の三角溝130よりも下側外周面11gを位置決めの基準面として確保でき、弁軸21と弁座(弁口)11aの中心軸とを合わせることによって、弁軸21、ガイドステム15及び弁座11aの間で同軸度を高められるため、電動弁の流量の制御性や寿命を向上することができる。また、弁本体10とキャン45との位置(各部品の中心軸の同軸度)を合わせることによって、ロータ30がキャン45に接触しないこと及び、ロータ30とコイル53との中心軸を合わせることができ、電動弁の制御性や寿命を向上するとともに歩留まりを良くすることができる。
【0057】
<第2実施形態>
図7(A)は、本発明に係る電動弁の第2実施形態を示す縦断面図であり、
図7(B)は、
図7(A)のA矢視図(ロータの上面図)、
図8〜
図12は、
図7に示される電動弁の組立方法の説明に用いる図である。
【0058】
(電動弁2の構成及び動作)
電動弁2の構成及び動作は
図1で説明した通りであり、省略する。第1実施形態との相違点は、弁シート11側面の外周面に凸部230が形成されていることである。
【0059】
(電動弁2の組立方法の詳細な説明)
図8から
図12を用いて電動弁2の組立方法を詳細に説明する。
【0060】
図8は、組立て後の電動弁2の弁シート11の周辺の拡大図である。弁シート11下側側面の外周面に凸部230を設け、くびれ部を形成している。凸部230は弁シート11を切削加工することによって設ければよい。このように凸部230の側面230bを弁軸の中心軸に対して直角にすることによって、第1ロウ材110が凸部230の外周面230aに到達するまでの移動距離を稼ぐことができ、かつ、溶けたロウ材がくびれ部に留まりやすくなる。ここで、くびれ部は、弁シート11側面の外周面のうち、切削加工によって他の箇所よりも外径が狭くなっている部分231及び凸部230をいう。
【0061】
図9は、電動弁2を組み立てる工程のうち、
図7に示される弁シート11に弁本体10及び第2入出口7(下側パイプ)をそれぞれロウ付けする工程を説明する図である。
【0062】
予め、弁シート11の上側に弁本体10をカシメにより仮止めし、弁シート11の下側に第2入出口7(下側パイプ)を挿入しておく。そして、
図9のように円筒状の弁本体10の上面を下側に向け、第2入出口7を上側に向けた状態で弁シート11を第1治具300の上に載せる。
【0063】
そして、弁本体10の下面の開口に、
図7に示す弁座11aを有する弁シート11を第1ロウ材110でロウ付けし、弁シート11のくびれ部が形成された部分の内側に第2入出口7を第2ロウ材120でロウ付けする。ここで、溶けた第1ロウ材110は表面張力や拡張ぬれ等の現象によって弁シート11の外周に沿って上り、上った状態でロウが固まる。しかしながら、凸部230があるため、溶けたロウ材は凸部230の外周面230aまで移動せず、側面230bの下側(重力方向)に留まる。
【0064】
図10は、
図7に示される電動弁2を組み立てる工程のうち、弁シート11を治具で固定する工程を説明する図である。
【0065】
上述した通り、キャン45の下端部を弁本体10に溶接等により密封接合する必要がある。そのために、まず
図9の状態から上下を逆にし、弁本体10の上面を上側に向けた状態で、弁シート11の凸部230の外周面230aと下面230cを位置決めの基準面として用いて第2治具400に固定する。
【0066】
弁本体10が弁シート11を介して第2治具400に固定された状態で、
図7に示す弁体25が設けられた弁軸21と弁座(弁口)11aの中心軸とを合わせ、弁本体10の上端部内側70にガイドステム15に設けられた鍔状円板18を溶接などで固定する。これにより、弁軸21及び弁体25は弁本体10側(弁シート11)の弁座11a(弁口)の中心軸と同軸に上下動できる状態で固定される。さらに、弁軸21が固定された弁本体10の上面に、キャン45の下端部を密封接合する。
【0067】
ここで、弁本体10が弁シート11を介して第2治具400に固定された状態で、キャン45と弁本体10の中心軸をあわせてから、弁本体10の上面に、キャン45の下端部を密封接合してもよい。
【0068】
凸部230の外周面230aを第2治具400に当接させて位置決めするので、凸部230は弁シート11の下側(すなわち弁本体10から離れている側)に設けることが望ましい。
【0069】
図11は、弁本体10とキャン45を密封接合した後の図であり、
図7に示されるステータ50をキャン45の外周に位置決め固定する前の縦断面図である。また、
図12は
図11の外観図である。凸部230が弁シート11側面の外周面に沿って形成されていることがわかる。そして、弁本体10に密封接合されたキャン45の外周に、
図7に示すステータ50を位置決め固定する。
【0070】
(作用効果)
次に、作用効果について説明する。本実施形態によれば、切削加工など比較的容易な加工により、くびれ部としての凸部230を弁シート11側面の外周面に設けることができる。そして、溶けた第1ロウ材110が弁シート11の外周に沿って上がってくるのを、凸部230で防ぐことができる。したがって、キャン45の下端部を弁本体10に溶接等により密封接合する際に、第2治具は、第1ロウ材110を挟むこと無く、弁シート11の凸部230の外周面230aを正確に固定できる。これによって、弁シート11の凸部230の外周面230aと下面230cを位置決めの基準面として確保でき、弁軸21と弁座(弁口)11aの中心軸とを合わせることによって、弁軸21、ガイドステム15及び弁座11aの間で同軸度を高められるため、電動弁の流量の制御性や寿命を向上することができる。また、弁本体10とキャン45との位置(各部品の中心軸の同軸度)を合わせることによって、ロータ30がキャン45に接触しないこと及び、ロータ30とコイル53との中心軸を合わせることができ、電動弁の制御性や寿命を向上するとともに歩留まりを良くすることができる。
【0071】
さらに、第1実施形態の三角溝130よりも、多量の第1ロウ材110があっても、弁シート11に沿って上ってくる第1ロウ材110を留まらせることができる。本実施形態によれば、溶けたロウ材が弁シートの外周に沿って上る現象を制限することができる。
【0072】
以上のように、本発明の実施形態について第1実施形態、第2実施形態を示してきたが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態に設けられた全ての構成(構造)を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を削除したり、他の実施形態の構成に置き換えたり、あるいはまた、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、三角溝130を1つ設けたが、2つ以上設けてもよい。また、凸部230は片側だけに設けたが、弁シート11側面の外周面の中央を切削加工し、凸部を両側に設けてもよい。