【実施例】
【0115】
[実施例1]
HLA-DR3 TSHRペプチドの選択
TSHRにおける重要なエピトープ領域を同定するために、TSHRのECD(AA20-418)を、以下に示すように、15アミノ酸によって重複する、28〜30アミノ酸(28〜30マー)の28個の重複ペプチドに分けた。
【0116】
【0117】
次いで、すべてのペプチドの免疫原性を、CFA中に乳化した3つのペプチドのプール200μgでHLA-DRB1*0301トランスジェニックマウス(DR3マウス)を免疫化することによって評価した。10日後、LN細胞及び脾細胞を単離し、10〜25μg/mLの対応する個々のペプチドでin vitroで刺激した。刺激指数(SI; 非刺激細胞の3H-チミジン取り込み(1分あたりのカウント)で割った、ペプチド刺激細胞の3H-チミジン取り込み(1分あたりのカウント))に基づいて、ペプチドRNB-5及びRNB-9は、高度に免疫原性であることが見出された(SI>10)。
【0118】
図1は、RNB-5免疫化マウスから単離したLN及び脾細胞が、in vitroでRNB-5刺激に強く応答することを示す。
【0119】
ここで説明するすべての例は、ペプチドRNB-5に焦点を当てる。
【0120】
[実施例2]
RNB-5内のアピトープの同定
RNB-5内の正確なエピトープ位置を決定するために、RNB-5にわたる、一連の15マーの重複ペプチドを、標準的なF-moc化学を用いて合成した。各ペプチドを、以下に示すように、1アミノ酸によって表示する:
【0121】
【0122】
まず、ペプチドを、DR3マウスから生成されたハイブリドーマを用いて分析した。TSHR及びRNB-5に特異的なハイブリドーマは、新鮮な及び固定されたVAVY細胞の両方によって提示されるRNB-5 A〜Fに応答することが示された。代表的なクローンの抗原誘導性IL-2産生は、
図2に示される。
【0123】
これらの15マーのペプチドの、HLA-DR分子に結合する能力を決定するために、2つのソフトウェアツールを使用した: NetMHCII(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCII)及びImmune Epitope DataBase (http://tools.immuneepitope.org/analyze/html/mhc_II_binding.html)。両方法を用いて、ネステッドペプチドRNB-5AからRNB-5Fまでは、HLA-DRB1*0301及びHLA-DRB1*0401分子の両方への強力な結合体として同定された。
【0124】
ヒトでのGDは、HLA-DRB1*0301ハプロタイプと強く関連しているが、HLA-DRB1*0401ハプロタイプは、多くの場合、同様にGD患者に生じる。RNB-5Aから5Fペプチドは、HLA-DRB1*0401分子に結合することが予測されたため、RNB-5を、in vivoでDR4マウスにおいて免疫応答を生成する能力について試験した。RNB-5/CFA免疫化DR4マウスから単離されたLN細胞及び脾細胞は、RNB-5ネステッドペプチドで刺激した場合、強い免疫応答を示した。さらに、DR3マウスで生成されたRNB-5特異的ハイブリドーマは、BM14細胞(HLA-DRB1*0401)によって提示されたときに、RNB-5ネステッドペプチドに応答する。したがって、新たなハイブリドーマを、TSHR/CFAでDR4マウスを免疫化することによって生成した。TSHRタンパク質及びRNB-5ペプチドの両方に特異的なハイブリドーマを、RNB-5内のアピトープを同定するために選択した。ペプチドRNB-5A〜5Fは、再びアピトープと同定された(
図3)。RNB-5 DEFネステッドペプチドを、C末端及びN末端の両方にアミノ酸「GKK」を付加することによって改変した。TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマはまた、新鮮な及び固定されたAPCの両方によって提示された場合、これらの改変ペプチドに応答する。まとめると、これらのデータは、この領域が、HLA-DRB1*0301又はHLA-DRB1*0401ハプロタイプのいずれかを有するGD患者にとって興味深いことを強調する。
【0125】
TSHR/CFAでDR4マウスを免疫化することによって生成されたTSHR特異的ハイブリドーマの一部は、RNB-5の代わりにRNB-4に結合することが示され、これは、TSHR内の他の免疫原性領域の存在を示す。RNB-4特異的ハイブリドーマを、RNB-4内のアピトープを同定するために選択した。ペプチドRNB-4Jは、アピトープと同定された(
図4)。RNB-4ネステッドペプチド配列は、以下の表に示される。
【0126】
【0127】
RNB-5D改変ペプチドのアピトープ状態も調べた(
図20)。
【0128】
RNB-4及びRNB-5アピトープに加えて、in silico予測ソフトウェアツールは、ペプチドRNB-9Aから9Dも、HLA-DRB1*0301分子への強力な結合体と同定した。ペプチド配列は、以下の表に示される。
【0129】
【0130】
TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答を試験した。結果は、
図11〜15に示される。
【0131】
[実施例3]
Ex vivo寛容アッセイ
RNB-5アピトープの、寛容を誘導する能力を評価するために、これらのアピトープの、免疫応答を阻害する能力を、最初に、ex vivoで健康なHLA-DRB1*0301又はHLA-DRB1*0401マウスにおいて調べた。方法の項に記載するように、マウスを、高用量又は用量漸増スケジュールに従って、異なるRNB-5アピトープで前処理した。研究は、RNB-5アピトープでの前処理が、DR3及びDR4マウスの両方において、TSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減することを示した(
図6A〜D)。RNB-5DEFネステッドペプチドを、C末端及びN末端の両方にアミノ酸「GKK」を付加することによって改変した。これらの改変アピトープによる前処理も、TSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減した(
図6E〜F)。
【0132】
ペプチドRNB-9Aから9Dは、HLA-DRB1*0301分子に強く結合すると予測され、特異的免疫寛容を誘導するそれらの能力も調べた。DR3マウスを、用量漸増スケジュールに従って、RNB-9Aから9Dで前処理した。RNB-9B及び9Cの前処理は、LN及び脾細胞の両方において、TSHR誘導性T細胞増殖の有意な低減を引き起こした(
図7)。
【0133】
ペプチドRNB 4K-GKKも、DR4マウスにおいてTSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減することが示された(
図16)。
【0134】
RNB-5D改変ペプチドも、TSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減した。RNB5D-K1、RNB5D-K3及びRNB5D-K16を用いた代表的な実験は、
図19に示される。
【0135】
[実施例4]
GDについての動物モデル
RNB-5アピトープの、マウスにおいてGD様症状を低減する能力を調べるために、GDについての2つの異なる動物モデルを開発した。
【0136】
第一に、C57/Bl6マウスを、抗TSHR抗体産生を誘導するために、TSHR/CFAで免疫化した。追加免疫が、抗TSHR抗体レベルをさらに増加させるかどうかを調べるために、マウスの一群は、TSHR/IFAで4週間後に2回目の免疫化を受けた。1回免疫したマウスの血清中の抗TSHR抗体レベルは、免疫化の2週後にプラトーレベルに達する。2回目の免疫化は、抗TSHR抗体レベルの強い増加を引き起こす(
図8)。
【0137】
第二に、Balb/cマウスに、甲状腺における抗TSHR抗体の作用により引き起こされる甲状腺機能亢進症を誘導するために、LacZ-Ad又はTSHR-Adウイルス粒子を注射した。T4ホルモンレベル及び総IgG抗TSHR抗体力価を、アデノウイルスベクターでの最初の注射の前、4週後、及び10週後にすべてのマウスの血清において測定した(
図9)。10
10個のTSHR-Adウイルス粒子でのマウスの免疫化は、初回免疫の4週後及び10週後に測定した場合、それぞれ、3/7のマウス及び1/7のマウスにおいて、甲状腺機能亢進症を誘導した。これは、2匹のマウスにおけるT4レベルが、実験の間に正常化したことを示す。10
11個のTSHR-Adウイルス粒子でのマウスの免疫化は、初回免疫の4週後及び10週後の両方において、1/6のマウスにおいて甲状腺機能亢進症を誘導した。ここで、4週で甲状腺機能亢進症である1匹のマウスは、10週で正常T4レベルを有し、一方、別のマウスのT4レベルが、4及び10週の間に強く増加した。抗TSHR抗体レベルを、TSHRに対するその刺激又は阻害効果を決定することなく、総IgG値として測定した(
図10)。TSHR-Adウイルス粒子でのマウスの免疫化は、抗TSHR抗体産生を明らかに誘導した。10
10又は10
11個のTSHR-Adウイルス粒子で免疫化したマウスは、LacZ-Ad免疫化マウスよりも有意に多くの抗体を産生した。抗TSHR抗体レベルは、10
10-TSHR-Ad及び10
11-TSHR-Ad免疫化マウスの間で異ならなかった。総IgG抗TSHR抗体レベルとT4レベルとの間で相関は見られなかった。
【0138】
これらの動物モデルは、RNB-5アピトープがin vivoでGD様症状を低減し得るかどうかを調べるために使用される。
【0139】
[実施例5]
RNB12領域におけるアピトープの同定
RNB12及びネステッドペプチドは、マウスにおいて免疫原性ではない。したがって、領域を、グレーブス病患者から生成されたT細胞株の応答性により同定した。
図17は、このようなT細胞株から得られた結果を示す。
【0140】
RNB12及び改変ペプチドRNB12-KKKは、アピトープであることが確認された(
図18)。
【0141】
材料及び方法
マウス
HLA-DRB1*0301トランスジェニックマウス(DR3マウス)を、メイヨークリニック(Mayo Clinic)の免疫遺伝学マウスコロニー(Immunogenetics mouse colony)で飼育し、維持した。HLA DR3-tgの創始マウス(founder mice)を、Gunter Hammerling(German Cancer Research Center, Heidelberg, Germany)から入手した。簡単に述べると、pUCにおけるHLA DRAゲノムクローンの6-kb NdeI断片及びB遺伝子を含有するcos 4.1の24-kb ClaIxSalI断片を、C57BL/6の雄と交配させた(C57BL/6xDBA/2)-F1ドナーに由来する受精卵に同時注入した。トランスジェニックマウスを、I-Abノックアウトマウスに交配させた。DR3マウスを、10世代にわたってC57BL/10背景に交配させた。これらのDR3マウスは、HLA-DRB1*0301分子を発現するが、マウスMHC-II分子を発現しない。
【0142】
HLA-DRA*0101/HLA-DRB1*0101及びmCD3-huCD4c/g構築物を、(DBA/1xA.CA)F1交配に由来する胚に共マイクロインジェクトし、生存胚を、発達のために出産まで偽妊娠雌(Balb/c x 129)F1に移したことにおいて、DR4マウス株は、もともとLars Fuggerら(PNAS 1994; volume 91:6151-6155)によって作製された。子孫を、後に、マウスMHCクラスII分子発現を欠いているIA-bノックアウトC57BL/6遺伝的背景(AB0マウス)に交配させている。したがって、これらのDR4マウスにおいて発現される唯一のMHCクラスII分子は、ヒトHLA DR4分子である。
【0143】
動物実験は、ハッセルト大学の「動物実験に関する倫理委員会」(ECD)によって承認され、病原体のない施設において最高水準のケアを用いて行った。
【0144】
ペプチド
ペプチドを、GL Biochem Ltd(Shangai, China)によって合成し、-80℃にてジメチルスルホキシド(DMSO; Sigma-Aldrich, Bornem, Belgium)中で保存した。
【0145】
HLA-DRB1*0301へのペプチド結合の調査
NetMHCII 2.2サーバ
NetMHCII 2.2サーバは、人工ニューロンネットワークを使用して、ペプチドの、HLA-DRB1*0301への結合を予測する。予測値は、nM IC50値で与えられる。強い及び弱い結合ペプチドは、出力に示される。高い親和性結合ペプチドは、50 nM未満のIC50値を有し、弱い結合ペプチドは、500 nM未満のIC50値を有する。結果は、以下のように計算される予測スコアとして提示される: 1-log50000(aff)。ウェブサイトのアドレス: http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCII。
【0146】
Immune Epitope DataBase(IEDB): コンセンサス法
各ペプチドについて、ペプチドのスコアを、SWISSPROTデータベースから選択された500万のランダムな15マーのスコアに対して比較することによって、4つの方法(ARB、コンビナトリアルライブラリー、SMM_align及びSturniolo)のそれぞれについて、パーセンタイルランクを生成した。小さな番号を付けたパーセンタイルランクは、高い親和性を示す。次いで、4つの方法の中央値パーセンタイルランクを、コンセンサス法についてのランクを生成するために使用した。ウェブサイトのアドレス: http://tools.immuneepitope.org/analyze/html/mhc_II_binding.html。
【0147】
長いペプチドの免疫原性の決定
プライミング
DR3マウスに、完全フロイントアジュバント((CFA; BD Benelux, Erembodegem, Belgium)4mg/mlの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(MTb, BD Benelux)を含有する)と共に乳化した、PBS(Lonza, Verviers, Belgium)中の100μgの抗原を、尾の基部に皮下注射した(100μl/注射)。実験に応じて、RNBペプチド又は完全長TSHR-289タンパク質を抗原として用いた。対照動物には、PBS/CFAのみを同じ時に注射した。
【0148】
細胞培養
免疫化10日後に、排出リンパ節(draining lymph node)(LN)及び脾臓を回収した。LN細胞及び脾細胞を単離し、96ウェル平底プレート中のX-vivo 15培地(グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを補充した; Lonza)中で培養した。抗原誘導性細胞増殖を調べるため、0.5×10
6細胞/ウェルを、異なる抗原濃度(0〜25μg/ml)又は12.5μg/mlの精製タンパク質誘導体(PPD; プライミング対照; Statens serum institut, Copenhagen, Denmark)と共に72時間培養した(200μL/ウェル)。
【0149】
増殖アッセイ及びサイトカイン分析
72時間後、60μLの細胞上清を回収し、凍結させた。次いで、20μL/ウェルのトリチウム化チミジン(PerkinElmer, Zaventem, Belgium)を、1μCi/ウェルの最終濃度を得るために細胞に添加した。細胞を37℃でインキュベートし、16時間後に、プレートを凍結させた。解凍したプレートを回収し、細胞増殖を評価するために、βカウンター(Wallac 1450 Microbeta Trilux液体シンチレーションカウンター)を用いて読み取った。解凍した上清を、抗原誘導性サイトカイン産生を測定するために、マウスTh1/Th2 10plex FlowCytomix Multiplex(Bender MedSystems, Vienna, Austria)を用いて分析した。
【0150】
RNB-5特異的ハイブリドーマの生成
プライミング及びT細胞株の確立
0日目に、マウスに、100μgの抗原/CFAを尾の基部に皮下注射した(DR3マウスについてRNB-5; DR4マウスについてTSHR)。対照マウスは、PBS/CFAで免疫化した。10日目に、排出LN及び脾臓を取り出し、単一細胞懸濁液を作製した。細胞のいくつかを、上述のように、抗原誘導性細胞増殖を測定するために使用した。残りの脾細胞及びLN細胞を混合し、CD4
+ T細胞を陰性精製キット(アンタッチド(untouched)CD4
+ T細胞; Miltenyi, Leiden, The Netherlands)を用いて単離した。次いで、CD4
+ T細胞を、抗原(25μg/mlのRNB-5若しくは0.5μg/mlのTSHR-289タンパク質)及びDR3マウス由来の照射された脾細胞(3000 rad)と一緒に培養した(APC:CD4
+ T細胞比1:1; 5×10
6細胞/ml)。ウシ胎児血清(FCS)誘導性細胞活性化を避けるために、細胞を、X-vivo 15培地中で培養した。4日目に、20 U/mlの組換えヒトIL-2(R&D, Abingdon, United Kingdom)を細胞に添加した。7日目に、生細胞を、Ficoll密度勾配分離(Histopaque 1083, Sigma-Aldrich)を用いて死細胞を除去することにより回収した。次いで、細胞を上記のように再刺激し、APC:CD4
+ T細胞比を2:1に変えた。9日目に、生細胞を回収し、それらのいくつかを、融合のために使用した。残りのCD4
+T細胞を培養中に残し、IL-2を10日目に添加した。14日目に、生細胞を回収し、APCの存在下で抗原で再刺激し(3:1でのAPC:CD4
+ T細胞の比)、16日目に第二の融合に使用した。
【0151】
融合
1×10
7個のBW5147細胞(Health Protection Agency Culture Collections, Salisbury, UK)及び5×10
6個のCD4
+ T細胞を、50mlチューブ中で混合し、37℃の無血清培地で洗浄した。遠心分離後、細胞ペレットを穏やかに再懸濁した。1mlの37℃ポリエチレングリコール(PEG; 40〜50%溶液、Sigma-Aldrich)を45秒かけて添加し、細胞を小さな37℃の水浴中に維持した。細胞を、45秒間37℃でインキュベートした。次いで、旋回させながら、1mlの37℃無血清培地を30秒かけて添加し、連続して2、3、4、10及び30mlが続いた。チューブを非常にゆっくりと反転させ、4分間37℃でインキュベートした。細胞を、ブレーキなしで室温(RT)で1300rpmで5分間遠心分離した。上清を除去し、50mlのRT無血清培地を、細胞ペレットを取り除くことを避けるためにゆっくりと添加した。洗浄工程を、完全培地を用いて繰り返した。最後に、細胞を、10%-FCSを有するRT完全培地に再懸濁し、96ウェル平底プレートに、異なる細胞濃度で播種した(100μl/ウェル)。48時間後、細胞を1×ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT、Sigma-Aldrich)培地中で培養し、ハイブリドーマ細胞増殖を、約6日後に検出した。クローンをそれらが安定になるまでHAT培地中で維持し、次いでヒポキサンチン-チミジン(HT、Sigma-Aldrich)培地を介して完全RPMI培地へと断ち切らせた。定期的なベースで、クローンを、凍結培地(90%FCS+10%DMSO)中で凍結させた。
【0152】
クローンの抗原特異性の評価
ハイブリドーマ細胞を、5×10
4個のVAVY若しくはBM14細胞(それぞれHLA-DRB1*0301又はHLA-DRB1*0401を発現するヒト細胞株; International Histocompatibility Working group, Seattle, USA)及び抗原(10〜25μg/ml)と共に培養した。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定した。
【0153】
IL-2 ELISA
96ウェルプレート(Immunosorb 96ウェル, Fisher Scientific, Erembodegem, Belgium)を、炭酸バッファー中に1:250希釈した、50μl/ウェルの精製ラット抗マウスIL-2捕捉Ab(BD Biosciences, Oxford, UK)を用いて4℃で一晩コーティングした。PBS-0.05%Tweenで2回洗浄した後、ウェルを、10%FCS/PBSで室温にて1時間ブロッキングした。次いで、ウェルを、50μlの細胞培養上清又はIL-2標準(BD Biosciences, Belgium, Erembodegem)と共に室温で2時間インキュベートした。ウェルを、10%FCS/PBS中に1:1000希釈した、50μl/ウェルのビオチンラット抗マウスIL-2(BD Biosciences)と共に室温で1時間インキュベートし、その後、PBS中に1:1000希釈した50μl/ウェルのエクストラアビジンペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich)との室温にて30分間のインキュベーションが続いた。抗体結合を検出するために、50μl/ウェルのTMB基質溶液(Perbio Science, Erembodegem, Belgium)を添加した。11分後、発色反応を、50μl/ウェルの2M H
2SO
4を用いて停止した。光学密度(OD)を450nm(630nm ref)で測定した(Tecan Benelux, Mechelen, Belgium)。
【0154】
抗原処理に依存しない提示システム
抗原特異的クローンを、固定された又は固定されていないVAVY又はBM14細胞(=APC)によって提示される、15マーのペプチド(RNB-5A〜5O)に対するそれらの応答性について試験した。個々のクローンからの5×10
4個の細胞を、25μg/mlのペプチド及び5×10
4個の固定された又は新鮮なAPCと共に培養した。APCを固定するために、細胞を、0.5%パラホルムアルデヒド(Merck, Darmstadt, Germany)(pH7)と共に室温で5分間インキュベートした。固定反応を、0.4Mグリシン(Sigma-Aldrich)を添加し、RPMI-10%FCS中で細胞を洗浄することにより停止させた。さらに、ヒトTSHR-289タンパク質(Chesapeake-PERL, Savage, Maryland, USA)に対する応答性を、潜在性エピトープを同定するために測定した。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を、ELISAによって測定した。
【0155】
RNB-5アピトープの溶解性の評価
ペプチドの溶解性を、Anabiotec(Zwijnaarde, Belgium)によって分析した。要するに、ペプチドサンプルを、PBS pH7.0±0.1を添加することによって、2つの異なる標的濃度(1mg/ml及び4mg/ml)で溶解した。ペプチド溶液を、少なくとも16時間室温でインキュベートした。濁度を、遠心分離の前及び後に、320及び360nmで測定した。ペプチド濃度を、280及び205nmの吸光度を用いて、かつHPLC-UVによって決定した。
【0156】
ペプチドを、DMSO中の20mg/mLのストック濃度で溶解した。標的濃度4、2及び1mg/mLの希釈系列を、PBS中で調製した。ペプチド溶液を、沈殿の形成を可能にするために、16〜17時間、室温でインキュベートした。濁度を目視観察でスコア付けし、吸光度を、Nanodrop装置を用いて205nm、280nm及び320nmで測定した。ペプチド溶液を、10分間14800rpmで遠心分離し、目視観察及び吸光度測定を繰り返した。ペプチド濃度を、以下の式を用いて計算した:
【数1】
【0157】
RNB-5アピトープ処理による寛容誘導
DR3マウスに、-8、-6、-4日目に、RNB-5 15マーペプチド(100μg/注射)又はPBSを首の後ろに皮下注射した(高用量スケジュール)(
図5)。あるいは、マウスに、-15、-13及び-11日目に、それぞれ0.1μg、1μg及び10μgペプチドを注射し、その後、-8、-6及び-4日目に100μgのペプチドの3回の注射が続いた(用量漸増スケジュール)。0日目に、マウスに、100μgの抗原/CFA(RNB-5ペプチド又はTSHR-289タンパク質)を尾の基部に皮下注射した。免疫化の10日後、排出LN及び脾臓を回収した。増殖アッセイ及びサイトカイン測定を、上記のように行った。
【0158】
GDについての動物モデル
TSHR Aサブユニットアデノウイルスによるマウスの免疫化
ヒトTSHR Aサブユニット(アミノ酸残基1〜289、AサブユニットAd)を発現するアデノウイルス及びβガラクトシダーゼを発現する対照アデノウイルス(LacZ-Ad)を、Viraquest(North Liberty, IA, USA)から購入した。6週齢の雌Balb/cJOlaHsdマウス(Harlan Laboratories, Venray, The Netherlands)に、TSHR-Ad(10
10又は10
11個の粒子)又はLacZ-Ad(10
10個の粒子)を大腿筋に筋肉内注射した。すべてのマウスを、アデノウイルスの同じバッチを使用して同時に免疫化した。マウスに、3週間間隔(0、21及び42日目)で3回注射し、血液を、初回免疫の前、及び二次免疫の1週後に採取した。すべてのマウスを、血液及び甲状腺を得るために、3回目の注射(10週)の4週後に安楽死させた。
【0159】
TSHR/CFAによるマウスの免疫化
雌の6週齢C57/Bl6JOlaHsdマウス(Harlan Laboratories)(1群あたり8匹のマウス)に、4 mg/mlのMTb(50μl)と共にCFA中で乳化させた50μgのTSHR-289タンパク質を尾の基部で皮下に投与した。マウスは、0(免疫前)、7、21、35、49、63日目(群A)、0、14、28、42、56日目(群B)又は0、21、28、42、56日目(群C)に尾から採血した。群Cのマウスは、不完全フロイントアジュバント(IFA)中に乳化させた50μgのTSHR-289タンパク質で4週に追加免疫を受けた。初回免疫の10週後、すべてのマウスを安楽死させ、血液を心臓穿刺によって採取した。
【0160】
TSHR抗体
精製したTSHR-289タンパク質(Chesapeake-Perl)に対する抗TSHR抗体(IgGクラス)を、ELISAを用いて測定した。96ウェルプレート(ハーフエリア(half area)96ウェル, Fisher Scientific)を、PBS中の50μL/ウェルのTSHR-289タンパク質(0.5μg/ml)で室温で一晩コーティングした。PBS-0.05%Tweenで洗浄した後、ウェルを、PBS中の1%BSA(w/v)で室温にて1時間ブロッキングし、試験血清(二重のアリコート、1:50希釈)と共にインキュベートした。マウス抗TSHR抗体(A9, Abcam, Cambridge, UK)を陽性対照として使用した。次いで、抗体結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Abcam)で検出し、シグナルをTMBで発色させた。光学密度(OD)を、450nmにてプレートリーダーで測定した(Tecan Benelux)。
【0161】
血清チロキシン及び甲状腺組織学
総チロキシン(T4)を、CBIマウス/ラットチロキシンELISAキット(Calbiotech, Spring Valley, CA, USA)を使用して、製造者の説明書に従って、未希釈マウス血清(10μl)において測定した。T4値をキットにおける標準から計算し、μg/dlで表した。甲状腺を、10%中性緩衝ホルマリン液(pH7.5)中で固定し、切片に加工し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。切片を、病理学的変化(肥大、上皮細胞の過形成及びリンパ球の浸潤)について観察し、スコア付けした(KWS Biotest, Bristol, UK)。
【0162】
【表1】
【0163】
ヒトPBMCに由来するT細胞株(実施例5)
健康なドナー又はグレーブス病患者からの末梢血単球(PBMC)を、単離し(Histopaque-1077, Sigma-Aldrich)、アリコートで凍結した。0日目に、細胞を解凍し、106のPBMC/mlを、6ウェルプレート(Greiner Bio-one)中に添加した5%AB血清(Sigma Aldrich)を有する、補充された(10mM HEPES、50U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン及び4mM L-グルタミン(Lonza))RPMI 1640(Lonza)中の20μg/mlのペプチドと共に培養し、37℃及び5%CO
2中でインキュベートした。7日後、rhIL-2(R&D Systems)を、20U/mlの最終濃度まで添加する。12日目に、細胞を回収し、洗浄し、5〜10μg/mlのペプチド及び20U/mlのrhIL-2で刺激された、6ウェルプレート中、1mlあたり106+2×106個の新たに解凍した照射自己PBMCの濃度で培養物に戻す。15、18及び21日目に、追加のrhIL-2を、20u/mlの最終濃度まで添加した。
【0164】
24日目に、細胞を、回収し、洗浄し、2×104個を、5〜50μg/mlの濃度において異なる抗原(ペプチド、タンパク質)の存在下で補充されたRPMI+5%AB血清において、105個の照射自己PBMC、及びヒトMHC cl II分子を発現するVAVY/BM14/MGARヒト細胞株(International Histocompatibility Working group, Seattle, US)と共に、96ウェルプレート中で培養した。培養物を、最終的な18時間に添加される0.5 uCI/ウェルの3H-チミジン(Perkin Elmer)と共に48時間インキュベートした。プレートを凍結した後、細胞を回収し、増殖を評価するために、βカウンター(Wallac 1450 Microbeta Trilux)で読み取った。3H-チミジンを添加する前に、60μl/ウェルの細胞培養上清を、サイトカイン分析のために取り出した。
【0165】
IFNγELISA
TCL培養物からの上清を、ヒトIFN-γDuosetキット、R&D Systemsを用いて、製造者の説明書に従って、IFNガンマ含有量について評価した。光学密度を、450nmで測定した(Tecan Benelux)。
【0166】
上記明細書で言及したすべての刊行物は、本明細書中に参照により組み込まれる。本発明の記載された方法及びシステムの種々の改変及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、請求項に記載の発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、分子生物学、免疫学、又は関連分野の当業者に明らかである本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。