特許第6476181号(P6476181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476181
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/72 20060101AFI20190218BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20190218BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   C07K14/72ZNA
   A61K38/17
   A61P5/14
【請求項の数】16
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2016-532780(P2016-532780)
(86)(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公表番号】特表2016-527304(P2016-527304A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】IB2014063739
(87)【国際公開番号】WO2015019302
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】1314052.0
(32)【優先日】2013年8月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515126008
【氏名又は名称】アピトープ インターナショナル エヌブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100188271
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 優子
(72)【発明者】
【氏名】レイス,デヴィッド
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−531497(JP,A)
【文献】 特表2009−517015(JP,A)
【文献】 特表2004−506921(JP,A)
【文献】 特開2006−188507(JP,A)
【文献】 特表2012−527440(JP,A)
【文献】 J Clin Endocrinol Metab (2010) Vol.95, No.6, pp.2909-2916
【文献】 THYROID (2009) Vol.19, No.11, pp.1271-1280
【文献】 Journal of Autoimmunity (1995) Vol.8, pp.685-698
【文献】 Clin. exp. Immunol. (1992) Vol.89, pp.468-473
【文献】 J Clin Endocrinol Metab (1997) Vol.82, No.10, pp.3361-3366
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vitroでMHC分子に結合し、抗原処理無しにT細胞に提示されることが可能なペプチドであって、以下の甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)ペプチドのうちの1つを含む、ペプチド。
RNB_5: ISRIYVSIDVTLQQLESHSFYNLSKVTHI (配列番号1)
RNB_4: LRTIPSHAFSNLPNISRIYVSIDVTLQQL (配列番号2)
RNB_9: TGLKMFPDLTKVYSTDIFFILEITDNPYM (配列番号3)
RNB_12: LTLKLYNNGFTSVQGYAFNGTKLDAVYL (配列番号64)
【請求項2】
以下から選択される、in vitroでMHC分子に結合し、抗原処理無しにT細胞に提示されることが可能なペプチド。
RNB_5D-GKK: KKGIYVSIDVTLQQLESHGKK (配列番号12)
RNB_5D-KKK: KKKIYVSIDVTLQQLESHKKK (配列番号21)
RNB_5E-GKK: KKGYVSIDVTLQQLESHSGKK (配列番号13)
RNB_5A: ISRIYVSIDVTLQQL (配列番号6)
RNB_5B: SRIYVSIDVTLQQLE (配列番号7)
RNB_5C: RIYVSIDVTLQQLES (配列番号8)
RNB_5D: IYVSIDVTLQQLESH (配列番号9)
RNB_5E: YVSIDVTLQQLESHS (配列番号10)
RNB_5F: VSIDVTLQQLESHSF (配列番号11)
RNB_5F-GKK: KKGVSIDVTLQQLESHSFGKK (配列番号14)
RNB_4J-GKK: KKGSNLPNISRIYVSIDVGKK (配列番号16)
RNB_4J: SNLPNISRIYVSIDV (配列番号15)
RNB_4K: NLPNISRIYVSIDVT (配列番号62)
RNB_4K-GKK: KKGNLPNISRIYVSIDVTGKK (配列番号63)
RNB_9B: GLKMFPDLTKVYSTD (配列番号18)
RNB_9A: TGLKMFPDLTKVYST (配列番号17)
RNB_9C: LKMFPDLTKVYSTDI (配列番号19)
RNB_9D: KMFPDLTKVYSTDIF (配列番号20)
RNB_12A: LTLKLYNNGFTSVQG (配列番号65)
RNB_12B: TLKLYNNGFTSVQGY (配列番号66)
RNB_12B-KKK: KKKTLKLYNNGFTSVQGYKKK (配列番号67)
【請求項3】
以下の群から選択される、in vitroでMHC分子に結合し、抗原処理無しにT細胞に提示されることが可能なペプチド:
KKGIYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号12)、
KKGKYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号22)、
KKGIKVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号23)、
KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、
KKGIYVSIDVKLQQLESHGKK(配列番号25)、
KKGIYVSIDVTLQKLESHGKK(配列番号26)、
KKGIYVSIDVTLQQKESHGKK(配列番号27)、
KKGIYVSIDVTLQQLKSHGKK(配列番号28)、
KKGIYVSIDVTLQQLEKHGKK(配列番号29)、
KKGIYVSIDVTLQQLESKGKK(配列番号30)、
KKGYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号31)、
KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、
KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、
KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、
KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、
KKGIYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号36)、
KKGIYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号37)、
KKGIYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号38)、
KKGIYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号39)、
KKGIYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号40)、
KKGTYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号41)、
KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、
KKGTYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号43)、
KKGTYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号44)、
KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、
KKKIYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号21)、
KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、
KKKIKVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号47)、
KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、
KKKIYVKIDVTLQQLESHKKK(配列番号49)、
KKKIYVSIDVKLQQLESHKKK(配列番号50)、
KKKIYVSIDVTLKQLESHKKK(配列番号51)、
KKKIYVSIDVTLQKLESHKKK(配列番号52)、
KKKIYVSIDVTLQQKESHKKK(配列番号53)、
KKKIYVSIDVTLQQLKSHKKK(配列番号54)、
KKKIYVSIDVTLQQLEKHKKK(配列番号55)、
KKKIYVSIDVTLQQLESKKKK(配列番号56)、
KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、
KKKYVSIDVKLQQLEKKK(配列番号58)、
KKKYVSIDVTLQKLEKKK(配列番号59)、
KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)、
KKKYVSIDVKLQKKEKKK(配列番号61)。
【請求項4】
以下からなる群から選択される、請求項に記載のペプチド:
KKGKYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号22)、
KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、
KKGYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号31)、
KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、
KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、
KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、
KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、
KKGIYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号40)、
KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、
KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、
KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、
KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、
KKKIYVKIDVTLQQLESHKKK(配列番号49)、
KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、
KKKYVSIDVKLQQLEKKK(配列番号58)、
KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)、
KKKYVSIDVKLQKKEKKK(配列番号61)。
【請求項5】
以下からなる群から選択される、請求項に記載のペプチド:
KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、
KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、
KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、
KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、
KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、
KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、
KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、
KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、
KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、
KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、
KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)。
【請求項6】
以下からなる群から選択される、請求項に記載のペプチド:
KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号32)、
KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号34)、
KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、
KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、
KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、
KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の1つ以上のペプチドを含む、組成物。
【請求項8】
複数のペプチドを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
被験体におけるin vivoでのTSHR自己抗体の産生の抑制又は阻止に使用するための、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
被験体におけるグレーブス病の治療及び/又は予防に使用するための、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項11】
被験体におけるin vivoでのTSHR自己抗体の産生を抑制又は阻止するための医薬の製造における、請求項1〜のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項7又は8に記載の組成物の使用。
【請求項12】
被験体におけるグレーブス病を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、請求項1〜のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項7又は8に記載の組成物の使用。
【請求項13】
被験体が、HLA-DR3である、請求項9又は10に記載の組成物
【請求項14】
被験体が、HLA-DR4である、請求項9又は10に記載の組成物
【請求項15】
被験体が、HLA-DR3である、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項16】
被験体が、HLA-DR4である、請求項11又は12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その少なくとも部分が甲状腺刺激ホルモン受容体(Thyroid Stimulating Hormone Receptor)(TSHR)に由来する、ペプチドに関する。これらのペプチドはグレーブス病(Graves Disease)(GD)の予防及び/又は治療に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
グレーブス病は、甲状腺機能亢進によって特徴付けられ、これは甲状腺ホルモンの過剰量の産生及び甲状腺の肥大(甲状腺腫)をもたらす。甲状腺機能亢進症の結果の状態は、広範囲の神経心理学的及び身体的症状を引き起こし得る。GDは、甲状腺機能亢進症の最も一般的な原因であり(すべての症例の60〜90%)、通常は中年の間にそれ自体を提示するが、子供、青年及び高齢者においても現れる。これは、女性人口の最大2%に影響を与え、男性の5〜10倍女性によく見られる。小児GDは、米国で約6,000人の子供、及びEUで6000人に影響を与える。GDはまた、重度の甲状腺機能亢進症の最も一般的な原因であり、これは、より軽度の甲状腺機能亢進症と比較して、より多くの臨床徴候及び症状並びに検査異常を伴う。
【0003】
GDとリンクしている強力な遺伝的要素がある。GDには最近の集団調査はないが、甲状腺機能亢進症には、いくつかの準集団調査が存在し、したがって、GDの発生率及び罹患率に対するすべての推定値は概算である。甲状腺機能亢進症の発生率は、26:100,000〜93:100,000まで変化し、全体の罹患率は、1.3%であると推定され、症例の42%が顕性であり、62%が不顕性である。
【0004】
GDを有する人の約30〜50%はまた、片目又は両目の突出である、グレーブス眼症(GO)に罹患する。GOの多くの症例は、軽度かつ自己限定性であるが、症例の20%が、顕著/中等度から重度の疾患を有し、これらの少なくとも半分はステロイドを要し、GO患者の3〜5%は、甲状腺異常性視神経症(DON)を伴う、痛みのある、視力を脅かす疾患を有する。まぶたが夜に閉じることができないため、目の動き(budging)は、角膜の深刻な乾燥を引き起こし得る。視神経内の圧力の増加は、視野欠損及び失明につながり得る。GOはまた、前脛骨粘液水腫と関連し得る。
【0005】
GDの症状及び徴候は、GO、甲状腺腫、及び前脛骨粘液水腫である主な例外を除いて、実質的にすべて、甲状腺機能亢進症の直接的及び間接的な影響から生じる。甲状腺機能亢進症の症状は、不眠、手の震え、多動、抜け毛、過度の発汗、熱不耐性、及び食欲増加であるが体重減少を含み得る。さらなる徴候は、最も一般的には、グレーブス眼症、心臓の不整脈及び高血圧に起因する、散在性に肥大した(通常は対称的)圧痛のない甲状腺、眼瞼遅滞、過度の流涙である。甲状腺中毒症患者は、精神病、興奮(agitation)、及びうつ病などの、行動及び性格の変化を経験し得る。より穏やかな甲状腺機能亢進症では、患者は、あまり明らかでない症状、例えば、不安、不穏、いら立ち及び情緒不安定を経験し得る。
【0006】
GDについて利用可能な治療法は現在なく、したがって、現在の治療は、現れている症状を標的とすることに向けられている。GDのための3つの治療法、経口抗甲状腺薬(ATD)、放射性ヨウ素(RAI)及び甲状腺摘出術がある。後者の2つのアプローチは、甲状腺ホルモンの生涯にわたる補充をもたらす。放射性ヨウ素を用いた治療は、米国で最も一般的な治療であり、一方、ATDは、ヨーロッパ、日本及び世界の残りの大部分における一次治療である。
【0007】
ATD療法は、いくつかのまれな副作用と関連し、50〜60%の寛解率を有する。RAIが活動性GOを引き起こす(precipitate)又は悪化させ得るという認識が増加しており、米国においてATDで治療した患者の数は増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
各治療選択肢の変化する成功のため、最初に試みた治療が完全に成功したことが分からない場合は、患者は多くの場合、2つ以上のアプローチに供される。再発又はその後の甲状腺機能低下症の危険性がかなりあり、GDのために利用可能な治療の一般的な有効性は、所望されるよりも少ない。したがって、GDの治療に、及び該疾患の症状の緩和若しくは軽減に有効である、GDのための代替療法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、GDの予防及び/又は治療に有用である、TSHR由来のいくつかのペプチドを同定した。
【0010】
第1の態様では、本発明は、in vitroでMHC分子に結合し、抗原処理無しにT細胞に提示されることが可能なペプチドであって、以下の甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)ペプチドのすべて又は部分を含む、ペプチドを提供する:
【0011】
ペプチドは、以下のTSHRペプチド及びその誘導体から選択され得る:
【0012】
ペプチドは、RNB 5A、5B、5C、5D、5E、5F、4J、4K、9A、9B、9C、9D、12A若しくは12B配列、又は例えば「GKK」若しくは「KKK」配列の導入によって、一方若しくは両方の末端で改変されている、1つ以上のアミノ酸が、Kなどの別のアミノ酸によって置換されているそれらの変異体を含み得る。
【0013】
ペプチドは、RNB-5D配列、又は例えば「GKK」若しくは「KKK」配列の導入によって、一方若しくは両方の末端で改変されている、1つ以上のアミノ酸が、Kなどの別のアミノ酸によって置換されているその変異体を含み得る。
【0014】
本発明はまた、配列:
[ここで、
aa1は、アミノ酸無し、I、K又はTであり、
RNB-5Dペプチドは、YVSIDVTLQQLE、又は1つ以上のアミノ酸がKによって置換されているその変異体であり、
aa2は、アミノ酸無し、S又はKであり、
aa3は、アミノ酸無し、H又はKである]
を含み、in vitroでMHC分子に結合し、抗原処理無しにT細胞に提示されることが可能な、ペプチドを提供する。
【0015】
本実施形態では、RNB-5Dペプチドは、YVSIDVTLQQLE、又は1、2若しくは3つのアミノ酸がKによって置換されているその変異体であってよい。
【0016】
ペプチドは、以下の群から選択されてよく、これらはすべてアピトープ(apitope)であると同定される(表1):KKGIYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号12)、KKGKYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号22)、KKGIKVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号23)、KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、KKGIYVSIDVKLQQLESHGKK(配列番号25)、KKGIYVSIDVTLQKLESHGKK(配列番号26)、KKGIYVSIDVTLQQKESHGKK(配列番号27)、KKGIYVSIDVTLQQLKSHGKK(配列番号28)、KKGIYVSIDVTLQQLEKHGKK(配列番号29)、KKGIYVSIDVTLQQLESKGKK(配列番号30)、KKGYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号31)、KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、KKGIYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号36)、KKGIYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号37)、KKGIYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号38)、KKGIYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号39)、KKGIYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号40)、KKGTYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号41)、KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、KKGTYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号43)、KKGTYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号44)、KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、KKKIYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号21)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIKVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号47)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKIYVKIDVTLQQLESHKKK(配列番号49)、KKKIYVSIDVKLQQLESHKKK(配列番号50)、KKKIYVSIDVTLKQLESHKKK(配列番号51)、KKKIYVSIDVTLQKLESHKKK(配列番号52)、KKKIYVSIDVTLQQKESHKKK(配列番号53)、KKKIYVSIDVTLQQLKSHKKK(配列番号54)、KKKIYVSIDVTLQQLEKHKKK(配列番号55)、KKKIYVSIDVTLQQLESKKKK(配列番号56)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、KKKYVSIDVKLQQLEKKK(配列番号58)、KKKYVSIDVTLQKLEKKK(配列番号59)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)、KKKYVSIDVKLQKKEKKK(配列番号61)。
【0017】
ペプチドは、以下の群から選択されてよく、これらはすべてアピトープとして同定され、改善した溶解性を有する: KKGKYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号22)、KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、KKGYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号31)、KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、KKGIYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号40)、KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKIYVKIDVTLQQLESHKKK(配列番号49)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、 KKKYVSIDVKLQQLEKKK(配列番号58)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)、KKKYVSIDVKLQKKEKKK(配列番号61)。
【0018】
ペプチドは、以下の群から選択されてよく、これらはすべてアピトープとして同定され、最も良い溶解性を有する: KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)。
【0019】
以下のペプチドは特に興味深い: KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号34)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)。
【0020】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に従う1つ以上のペプチドを含む、複数のペプチドを含む組成物を提供する。
【0021】
第3の態様では、本発明は、in vivoにおけるTSHR自己抗体の産生の抑制又は阻止に使用するための、本発明の第1の態様に従うペプチド、又は本発明の第2の態様に従う組成物を提供する。
【0022】
第4の態様では、本発明は、被験体におけるグレーブス病の治療及び/又は予防に使用するための、本発明の第1の態様に従うペプチド、又は本発明の第2の態様に従う組成物を提供する。
【0023】
第5の態様では、本発明は、in vivoにおけるTSHR自己抗体の産生を抑制又は阻止するための医薬の製造における、本発明の第1の態様に従うペプチド、又は本発明の第2の態様に従う組成物の使用を提供する。
【0024】
第6の態様では、本発明は、グレーブス病を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、本発明の第1の態様に従うペプチド、又は本発明の第2の態様に従う組成物の使用を提供する。
【0025】
第7の態様では、本発明は、被験体においてTSHR自己抗体の産生を抑制又は阻止する方法であって、被験体に、本発明の第1の態様に従うペプチド、又は本発明の第2の態様に従う組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0026】
第8の態様では、本発明は、被験体においてグレーブス病を治療する方法であって、被験体に、本発明の第1の態様に従うペプチド、又は本発明の第2の態様に従う組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0027】
被験体は、HLA-DR3又はHLA-DR4であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】DR3マウスにおけるRNB-5の免疫原性。マウス(N=2雄; N=2雌)をRNB-5でプライミングし、10日後、LN細胞(性別ごとにプールした)及び脾細胞を、異なる濃度のペプチドと共に培養し、細胞増殖を測定した。刺激指数(SI)は、ペプチド刺激培養のチミジン取り込みの、非刺激培養のものに対する比率を表す。F、雌; M、雄; LN、リンパ節。
図2】RNB-5内のアピトープ(apitope)の同定。DR3マウスを、RNB-5/CFAで免疫化し、ハイブリドーマを生成した。5×104個のTSHR特異的ハイブリドーマ細胞を、5×104個の新鮮な(黒棒)又は固定された(白棒)VAVY細胞及び25μg/mLの抗原(RNB-5又はRNB-5ネステッド(nested)ペプチド)と共に培養した。代表的なクローンを示す。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を測定した。グラフは、二重測定の平均を表し、結果は2回の独立した実験の代表である。APC、抗原提示細胞。
図3】RNB-5内のアピトープの同定。DR4マウスを、TSHR/CFAで免疫化し、ハイブリドーマを生成した。5×104個のTSHR特異的ハイブリドーマ細胞を、5×104個の新鮮な(黒棒)又は固定された(白棒)BM14細胞及び25μg/mLの抗原(TSHR、RNB-5又はRNB-5ネステッドペプチド)と共に培養した。代表的なクローンを示す。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を測定した。グラフは、二重測定の平均を表す。APC、抗原提示細胞。
図4A】RNB-4内のアピトープの同定。DR4マウスを、TSHR-CFAで免疫化し、ハイブリドーマを生成した。5×104個のTSHR特異的ハイブリドーマ細胞を、5×104個の新鮮な(黒棒)又は固定された(白棒)BM14細胞及び25μg/mLの抗原(TSHR、RNB-4又はRNB-4ネステッドペプチド)と共に培養した。代表的なクローンを示す。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を測定し、OD値として示した。グラフは、二重測定の平均を表し、結果は3回の独立した測定の代表である。APC、抗原提示細胞。
図4B】RNB-4内のアピトープの同定。DR4マウスを、TSHR/CFAで免疫化し、ハイブリドーマを生成した。5×104個のTSHR特異的ハイブリドーマ細胞を、5×104個の新鮮な(黒棒)又は固定された(白棒)BM14細胞及び抗原(25μg/mL RNB-4のTSHR; 100μg/mL RNB-4ネステッドペプチド)と共に培養した。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を測定し、OD値として示した。
図5】Ex vivo寛容化プロトコール。A、マウスに、-8、-6及び-4日目に100μgのペプチドを首の後ろに皮下注射する(高用量スケジュール)。0日目に、マウスに、RNB-5/CFAを尾の基部に皮下注射する。B、マウスに、-15、-13及び-11日目に0.1μg、1μg及び10μgのペプチドを首の後ろに皮下注射し、その後、-8、-6及-4日目に100μgのペプチドの3回の注射が続く(用量漸増スケジュール)。0日目に、マウスに、TSHR/CFA又はペプチド/CFAを尾の基部に皮下注射する。両方のスケジュールについて、マウスを、TSHR再刺激時のLN細胞及び脾細胞の増殖を測定するために、免疫化10日後に屠殺する。
図6】RNB-5アピトープによるEx vivo寛容誘導。マウスを、高用量スケジュール(A-B)又は用量漸増スケジュール(C-F)に従って、RNB-5アピトープで前処理する。データは、PBS処置マウス(黒線)及びペプチド処置マウス(赤線)についてSI値の平均±SEMを表す。グラフA、B、C、E及びFは、DR3マウスで行った実験を表し、グラフDは、DR4マウスで行った実験を表す。二元ANOVAを使用して、T細胞増殖に対する全体的な処置効果を測定し、p値をグラフに記載する。ボンフェローニ事後検定を使用し、有意差をグラフに示す(*p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001)。SI、刺激指数; LN、リンパ節。
図7】RNB-9ペプチドによるEx vivo寛容誘導。DR3マウスを、RNB-9B(A、C)又はRNB-9C(B、D)で用量漸増スケジュールに従って前処理する。データは、PBS処置マウス(黒線)及びペプチド処置マウス(赤線)についてSI値の平均±SEMを表す。二元ANOVAを使用して、T細胞増殖に対する全体的な処置効果を測定し、p値をグラフに記載する。ボンフェローニ事後検定を使用し、有意差をグラフに示す(*p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001)。SI、刺激指数; LN、リンパ節。
図8】ELISAにより測定されたTSHR抗体レベル(総IgG)。マウスを、アジュバント中の50μg TSHRで1回(群A+B)又は2回(群C)免疫化した。OD値は平均±SEMとして群ごとに示される。
図9】LacZ-Ad及びAd-TSHR-Ad免疫化マウスにおける血清T4レベル。示されたデータは、初回免疫の前(A)、4週後(B)、及び10週後(C)の異なる群からのマウスについての個々の値である。各群についての総数に対する甲状腺機能亢進症の数を示す。T4レベルが、LacZ-Ad免疫化マウスにおける血清T4値の平均+2SDを超えた場合、マウスを甲状腺機能亢進症と見なした。平均T4レベルは、4又は10週に、TSHR-Ad及びLacZ-Ad注射マウスの間で有意差はなかった。一元ANOVA、ボンフェローニ事後検定、p<0.05を有意差があると見なした。
図10】LacZ-Ad及びTSHR-Ad免疫化マウスにおける抗TSHR抗体レベル(総IgG、ELISA)。示されたデータは、初回免疫の前(A)、4週後(B)、及び10週後(C)の異なる群からのマウスについての個々の値である。統計分析は、一元ANOVA及びボンフェローニ事後検定を用いて行った。有意差をグラフに示す(*p<0.05; **p<0.01)。
図11】TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答。ハイブリドーマクローン(異なる色で表される)を、IL-2産生の測定前48時間、新鮮なAPC及び25μg/mLの抗原と共に培養した。RNB-5D-GKK又はRNB-5D-KKKの中央領域におけるアミノ酸の交換は、ハイブリドーマクローンによる認識を妨げ、これらのアミノ酸がエピトープ領域において重要であることを示す。
図12】TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答。ハイブリドーマクローン(異なる色で表される)を、IL-2産生の測定前48時間、新鮮な(黒棒)若しくは固定された(白棒)APC、並びに25μg/mLの抗原と共に培養した。
図13】TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答。ハイブリドーマクローン(異なる色で表される)を、IL-2産生の測定前48時間、新鮮なAPC、及び25μg/mLの抗原と共に培養した。
図14】TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答。ハイブリドーマクローン(異なる色で表される)を、IL-2産生の測定前48時間、固定されたAPC、及び25μg/mLの抗原と共に培養した。
図15】TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答。ハイブリドーマクローン(異なる色で表される)を、IL-2産生の測定前48時間、新鮮な及び固定されたAPC、並びに25μg/mLの抗原と共に培養した。
図16】用量漸増スケジュールに従うDR4マウスにおけるRNB 4K-GKKによるEx vivo寛容誘導。二元ANOVAを使用して、T細胞増殖に対する全体的な処置効果を測定し、p値をグラフに記載する。ボンフェローニ事後検定を使用し、有意差をグラフに示す(*p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001)。データは、PBS処置(黒線)及びペプチド処置マウス(赤線)について平均±SEMを表す。SI、刺激指数; LN、リンパ節。
図17】グレーブス病患者から生成したT細胞株の応答性によるRNB12領域の同定。T細胞株を、グレーブス病患者から単離されたPBMCをRNB12で12日間刺激することによって生成した。12日の追加の再刺激サイクルの後、RNB12特異的T細胞を、RNB12領域中の個々のネステッドペプチドの認識について試験した。SI、刺激指数。
図18】健康なドナーから生成したRNB12特異的TCLを用いた、RNB12領域内のアピトープの同定。RNB12特異的T細胞を、BM14、ペプチドの存在下でヒトMHCクラスII分子を発現するヒト細胞株と共に培養した。黒棒は、新鮮だが、照射したBM14細胞の存在下での刺激を表し、白棒は、固定されたAPCの存在下での刺激を表す。(材料及び方法を参照)。培養物への3H-チミジンの添加前に、培養上清を回収し、凍結させた。上清を、IFNガンマ(A)について分析し、増殖性T細胞応答(B)を確認した。TCL、T細胞株; APC、抗原提示細胞; MHCクラスII、主要組織適合性複合体クラスII; SI、刺激指数; OD、光学密度。
図19】用量漸増スケジュールに従うDR3マウスにおける改変RNB5D改変ペプチドによるEx vivo寛容誘導の例。二元ANOVAを使用して、T細胞増殖に対する全体的な処置効果を測定し、p値をグラフに記載する。(*p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001; ****p<0.0001)データは、PBS処置(黒線)及びペプチド処置マウス(赤線)について平均±SEMを表す。SI、刺激指数。A: RNB5D-K1; B: RNB5D-K3; C: RNB5D-K16
図20】RNB5D改変ペプチドのアピトープ状態を示すグラフ。TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答の例。ハイブリドーマクローンを、IL-2産生の測定前48時間、新鮮な(黒棒)及び固定された(白棒)APC、並びに25μg/mLの抗原と共に培養した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ペプチド
第1の態様では、本発明は、ペプチドに関する。
【0030】
用語「ペプチド」は、通常の意味で使用され、典型的には隣接するアミノ酸のα-アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって、1つのものから別のものへ接続された一連の残基、典型的にはL-アミノ酸を意味する。この用語は、改変されたペプチド及び合成ペプチド類似体を含む。
【0031】
本発明のペプチドは、化学的方法を用いて製造され得る(Peptide Chemistry, A practical Textbook. Mikos Bodansky, Springer-Verlag, Berlin)。例えば、ペプチドは、固相技術(Roberge JY et al (1995) Science 269: 202-204)によって合成され、樹脂から切断され、予備的(preparative)高速液体クロマトグラフィー(例えば、Creighton (1983) Proteins Structures And Molecular Principles, WH Freeman and Co, New York NY)によって精製され得る。自動合成は、例えば、ABI 43 1 Aペプチドシンセサイザー(Perkin Elmer)を用いて、製造業者によって提供される説明書に従って、達成され得る。
【0032】
ペプチドは、代わりに、組換え手段によって、又はより長いポリペプチドからの切断によって作製されてもよい。例えば、ペプチドは、チロトロピン受容体タンパク質からの切断によって得てよく、この後に、一方又は両方の末端の改変が続いてもよい。ペプチドの組成は、アミノ酸分析又は配列決定(例えば、エドマン分解法)によって確認され得る。
【0033】
実用的な目的のために、ペプチドが示し得る様々な他の特性がある。例えば、ペプチドは、治療的に有用であるためにin vivoで十分に安定であることが重要である。in vivoでのペプチドの半減期は、少なくとも10分、30分、4時間、又は24時間であってよい。
【0034】
ペプチドはまた、in vivoで良好なバイオアベイラビリティを示し得る。ペプチドは、相当な妨害無しに、細胞表面でMHC分子に結合することを可能にする、コンホメーションをin vivoで維持し得る。
【0035】
アピトープ(Apitope)
適応免疫応答では、Tリンパ球は、タンパク質抗原の内部エピトープを認識することができる。抗原提示細胞(APC)は、タンパク質抗原を取り込み、それらを短いペプチド断片に分解する。ペプチドは、細胞内部の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI又はII分子に結合し、細胞表面に運ばれ得る。MHC分子と共に細胞表面に提示された場合、ペプチドは、T細胞によって(T細胞受容体(TCR)を介して)認識され得、その場合、ペプチドは、T細胞エピトープである。
【0036】
したがって、エピトープは、MHCクラスI又はII分子のペプチド結合溝(groove)に結合し、T細胞によって認識されることが可能である、抗原から誘導可能なペプチドである。
【0037】
最小エピトープは、MHCクラスI又はII分子のペプチド結合溝に結合し、T細胞によって認識されることが可能である、エピトープから誘導可能な最も短い断片である。所定の免疫原性領域について、エピトープとして作用する重複ペプチドの「ネステッド(nested)セット」を生成することが典型的には可能であり、それらはすべて、最小エピトープを含有するが、それらの隣接領域が異なる。
【0038】
同様に、切断型ペプチドへの応答を測定することによって、特定のMHC分子:T細胞の組み合わせについて最小エピトープを同定することが可能である。例えば、応答が、重複ライブラリーにおける残基1-15を含むペプチドに対して得られる場合、両端で切断されるセット(すなわち、1-14、1-13、1-12等及び2-15、3-15、4-15等)を用いて最小エピトープを同定することができる。
【0039】
本発明者らは、MHCクラスI又はII分子に結合し、さらなる処理無しにT細胞に提示されるペプチドの能力と、ペプチドのin vivoでの寛容を誘導する能力との間にリンクがあると以前に決定した(WO 02/16410)。ペプチドが、長すぎて、さらなる処理(例えば、トリミング)無しにMHC分子のペプチド結合溝に結合することができないか、又は不適切なコンホメーションで結合する場合、それは、in vivoで寛容原性(tolerogenic)ではない。一方、ペプチドが、MHCペプチド結合溝に直接結合し、T細胞に提示されるのに適切なサイズ及びコンホメーションである場合、このペプチドは、寛容誘導に有用であると予測することができる。
【0040】
したがって、MHCクラスI又はII分子に結合し、in vitroでさらなる抗原処理無しにT細胞に提示されることができるかどうかを調べることによって、ペプチドの寛容原性能力を調べることが可能である。
【0041】
本発明のペプチドは、MHC分子に結合し、さらなる抗原処理無しにTSHR特異的T細胞からの応答を刺激することが可能であるという点で、アピトープ(抗原処理非依存的エピトープ)である。このようなアピトープは、WO 02/16410に記載のルールベースの方法に従って、TSHRに対する寛容を引き起こすことが予測できる。
【0042】
本発明のペプチドは、任意のさらなる処理無しに、MHCクラスI又はII分子に結合することが可能な任意の長さであってよい。典型的に、本発明のペプチドは、MHCクラスIIに結合することが可能である。
【0043】
MHCクラスI分子と結合するペプチドは、典型的には7〜13、より通常は8〜10アミノ酸長である。ペプチドの結合は、ペプチドの主鎖、及びすべてのMHCクラスI分子のペプチド結合溝における不変部位における原子間の接触によって、その2つの末端において安定化される。ペプチドのアミノ末端及びカルボキシ末端に結合する、溝の両端における不変部位がある。ペプチド長の変動は、ペプチド骨格における、多くの場合、柔軟性を持たせるプロリン又はグリシン残基における、ねじれによって収容される。
【0044】
MHCクラスII分子に結合するペプチドは、典型的には8〜20アミノ酸長、より通常は10〜17アミノ酸長であり、より長くすることができる(例えば、最大40アミノ酸)。これらのペプチドは、(MHCクラスIペプチド結合溝とは異なり)両端が開放されている(open)、MHCIIペプチド結合溝に沿って、伸長したコンホメーションにおいて位置する。ペプチドは、主に、ペプチド結合溝に並ぶ保存残基との主鎖原子接触によって、所定の位置に保持される。
【0045】
本発明のペプチドは、8〜30アミノ酸、例えば8〜25アミノ酸、8〜20アミノ酸、8〜15アミノ酸又は8〜12アミノ酸を含み得る。
【0046】
部分(Portion)
本発明のペプチドは、配列番号1〜3として示されるTSHR由来ペプチドのすべて又は部分を含み得る。
【0047】
用語「部分」は、配列番号1〜3から誘導され、ペプチドの少なくとも最小エピトープを含有する、ペプチドを指す。
【0048】
このようなペプチドは、TSHR由来配列内に1つ以上の突然変異、典型的にはアミノ酸置換を含み得る。アミノ酸は、グリシン、リジン又はグルタミン酸などのアミノ酸の代わりに使用され得る。ペプチドは、TSHR由来配列からの最大3つ、最大2つ又は1つのアミノ酸置換を含み得る。
【0049】
このようなペプチドは、TSHR配列から誘導できない、一方又は両方の末端におけるアミノ酸を含み得る。例えば、ペプチドは、一方又は両方の末端に1つ以上のグリシン及び/又はリジン及び/又はグルタミン酸残基を有してよい。例えば、追加のアミノ酸は、一方又は両方の末端にアミノ酸対KK、KE、EK又はEEが続くグリシン又はリジンスペーサーを含んでよい。
【0050】
例えば、ペプチドは、以下の式:
を有してよい。
【0051】
非TSHR由来アミノ酸を含めたペプチドは、アピトープである必要があり、すなわち、in vitroでMHC分子に結合し、抗原処理無しにT細胞に提示されることが可能である必要がある。
【0052】
甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)
GDは、一次自己抗原、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)を標的とする自己反応性T及びBリンパ球によって引き起こされる自己免疫疾患である。
【0053】
TSHRは、そのリガンド、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の結合時のcAMPシグナルカスケードを介して、チロキシン(T4)及びトリヨードチロニン(T3)の産生を刺激する、甲状腺における甲状腺濾胞細胞上のGタンパク質共役受容体である。APCによるTSHRの内在化、分解及び提示の際に、T細胞が活性化され、自己反応性B細胞と相互作用し、これは次にTSHRに対する刺激性アゴニスト自己抗体を生産する。甲状腺刺激免疫グロブリンは、TSHと同じ受容体ポケットに結合し、TSHR介在シグナル伝達を活性化し、甲状腺からの過剰な甲状腺ホルモンの産生及び甲状腺増殖をもたらす。
【0054】
チロトロピン受容体としても知られているTSHRは、主に甲状腺上皮細胞上で発現される。
【0055】
TSHRホロ受容体は、764残基を有し、TSHが結合するN末端細胞外ドメイン、サーペンタイン(serpentine)(又は膜貫通ドメイン)及びC末端細胞内ドメインを含む。
【0056】
TSHRは、リガンド結合及び不活性受容体コンホメーションの両方において重要であり得る細胞外ドメイン三次構造の形成を促進する、高度に保存されたCys残基を有する大きな細胞外ドメイン(418アミノ酸)を含む。細胞外ドメインは、総タンパク質長の半分超を含み、高親和性リガンド結合に十分である。細胞表面に輸送された後、受容体分子は、分子内切断に供され、残基316と366の間の50アミノ酸配列の除去をもたらす。結果として、受容体は、ジスルフィド結合で一緒に結合した、2つのサブユニット、細胞外リガンド結合ドメインを含むαサブユニットと、膜貫通ドメイン及び短いC末端配列を含むβサブユニットとを含む。後続のステップにおいて、αサブユニットは除去され、細胞膜上の過剰の、リガンド結合ドメインを奪われたβサブユニットをもたらす。
【0057】
循環TSHのTSHRへの結合に続き、Gタンパク質シグナル伝達カスケードは、アデニリルシクラーゼを活性化し、cAMPの細胞間レベルが上昇する。cAMPは、甲状腺細胞のすべての機能的側面を活性化し、これは、ヨウ素ポンプ(iodine pumping)、サイログロブリン合成、ヨード化、エンドサイトーシス及びタンパク質分解、甲状腺ペルオキシダーゼ活性及びホルモン放出を含む。
【0058】
成熟TSHRのアミノ酸配列は以下に与えられる(配列番号21)。
【0059】
本発明のペプチドは、TSHRから少なくとも部分的に誘導可能である。ペプチド又はその部分は、TSHRの64-92、78-106、107-135、136-164又は201-229の領域から誘導可能であり得る。ペプチド又はその部分は、抗原提示細胞による抗原の天然の処理によって生じる抗原の断片から誘導可能であり得る。
【0060】
TSHRの領域64-92(RNB_4)は、以下の配列を有する:
【0061】
ペプチドは、以下のペプチドに由来する最小エピトープを含み得る:
【0062】
ペプチドは、以下のペプチドに由来する最小エピトープを含み得る:
【0063】
TSHRの領域78-106(RNB_5)は、以下の配列を有する:
【0064】
ペプチドは、以下のペプチドに由来する最小エピトープを含み得る: TSHR 78-92(RNB_5A)、79-93(RNB_5B)、80-94(RNB_5C)、81-95(RNB_5D)、82-96(RNB_5E)及び83-97(RNB_5F)。
【0065】
TSHR 78-92、79-93、80-94、81-95、82-96及び83-97の配列は、以下である:
【0066】
TSHRの領域136-164(RNB_9)は、以下の配列を有する:
【0067】
ペプチドは、以下のペプチドに由来する最小エピトープを含み得る: TSHR 136-150(RNB_9A)、137-151(RNB_9B)、138-152(RNB_9C)及び139-153(RNB_9D)。
【0068】
TSHR 136-150、137-151、138-152及び139-153の配列は以下である:
【0069】
TSHRの領域180-207(RNB_12)は、以下の配列を有する:
【0070】
ペプチドは、以下の表に示されるペプチドの1つに由来する最小エピトープを含み得る:
【0071】
ペプチドは、以下のペプチドの1つに由来する最小エピトープを含み得る:
【0072】
本発明はまた、配列:
[ここで、
aa1は、アミノ酸無し、I、K又はTであり、
RNB-5Dペプチドは、YVSIDVTLQQLE、又は1つ以上のアミノ酸がKによって置換されているその変異体であり、
aa2は、アミノ酸無し、S又はKであり、
aa3は、アミノ酸無し、H又はKである]
を含み、in vitroでMHC分子に結合し、抗原処理無しにT細胞に提示されることが可能な、ペプチドを提供する。
【0073】
本実施形態では、RNB-5Dペプチドは、YVSIDVTLQQLE、又は1、2若しくは3つのアミノ酸がKによって置換されているその変異体であってよい。
【0074】
ペプチドは、以下の群から選択されてよく、これらはすべてアピトープであると同定される(表1): KKGIYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号12)、KKGKYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号22)、KKGIKVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号23)、KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、KKGIYVSIDVKLQQLESHGKK(配列番号25)、KKGIYVSIDVTLQKLESHGKK(配列番号26)、KKGIYVSIDVTLQQKESHGKK(配列番号27)、KKGIYVSIDVTLQQLKSHGKK(配列番号28)、KKGIYVSIDVTLQQLEKHGKK(配列番号29)、KKGIYVSIDVTLQQLESKGKK(配列番号30)、KKGYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号31)、KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、KKGIYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号36)、KKGIYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号37)、KKGIYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号38)、KKGIYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号39)、KKGIYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号40)、KKGTYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号41)、KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、KKGTYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号43)、KKGTYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号44)、KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、KKKIYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号21)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIKVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号47)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKIYVKIDVTLQQLESHKKK(配列番号49)、KKKIYVSIDVKLQQLESHKKK(配列番号50)、KKKIYVSIDVTLKQLESHKKK(配列番号51)、KKKIYVSIDVTLQKLESHKKK(配列番号52)、KKKIYVSIDVTLQQKESHKKK(配列番号53)、KKKIYVSIDVTLQQLKSHKKK(配列番号54)、KKKIYVSIDVTLQQLEKHKKK(配列番号55)、KKKIYVSIDVTLQQLESKKKK(配列番号56)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、KKKYVSIDVKLQQLEKKK(配列番号58)、KKKYVSIDVTLQKLEKKK(配列番号59)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)、KKKYVSIDVKLQKKEKKK(配列番号61)。
【0075】
ペプチドは、以下の群から選択されてよく、これらはすべてアピトープとして同定され、改善した溶解性を有する: KKGKYVSIDVTLQQLESHGKK(配列番号22)、KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、KKGYVSIDVTLQQLEGKK(配列番号31)、KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、KKGIYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号40)、KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKIYVKIDVTLQQLESHKKK(配列番号49)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、 KKKYVSIDVKLQQLEKKK(配列番号58)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)、KKKYVSIDVKLQKKEKKK(配列番号61)。
【0076】
ペプチドは、以下の群から選択されてよく、これらはすべてアピトープとして同定され、最も良い溶解性を有する: KKGIYKSIDVTLQQLESHGKK(配列番号24)、KKGYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号33)、KKGYVSIDVTLQQKEGKK(配列番号34)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号35)、KKGTYVSIDVKLQQLEGKK(配列番号42)、KKGTYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号45)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)。
【0077】
以下のペプチドは、特に興味深い: KKGYVSIDVTLQKLEGKK(配列番号32)、KKGYVSIDVKLQKKEGKK(配列番号34)、KKKKYVSIDVTLQQLESHKKK(配列番号46)、KKKIYKSIDVTLQQLESHKKK(配列番号48)、KKKYVSIDVTLQQLEKKK(配列番号57)、KKKYVSIDVTLQQKEKKK(配列番号60)。
【0078】
寛容(Tolerance)
T細胞エピトープは、自己であれ又は外来であれ、任意の抗原に対する適応免疫応答において中心的役割を果たす。過敏性疾患(アレルギー、自己免疫疾患及び移植拒絶を含む)におけるT細胞エピトープによって果たされる中心的役割は、実験モデルの使用によって実証されている。アジュバントと組み合わせた合成ペプチド(T細胞エピトープの構造に基づく)の注射によって、炎症又はアレルギー疾患を誘発することが可能である。
【0079】
対照的に、可溶性形態のペプチドエピトープを投与することにより、特定の抗原に対する免疫原性寛容を誘導することが可能であることが示されている。可溶性ペプチド抗原の投与は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE-多発性硬化症(MS)のためのモデル)(Metzler and Wraith (1993) Int. Immunol. 5:1159-1165; Liu and Wraith (1995) Int. Immunol. 7:1255-1263; Anderton and Wraith (1998) Eur. J. Immunol. 28:1251-1261)及び関節炎、糖尿病、及びぶどう膜網膜炎の実験モデル(上記のAnderton and Wraith (1998)に概説される)において疾患を阻害する有効な手段として実証されている。これはまた、EAEにおける進行中の疾患を治療する手段として実証されている(上記のAnderton and Wraith (1998))。
【0080】
寛容は、抗原に応答しないことである。自己抗原に対する寛容は、免疫系の重要な特徴であり、これが失われると、自己免疫疾患が生じ得る。適応免疫系は、それ自身の組織内に含まれる自己抗原の自己免疫攻撃を回避しながら、莫大な種類の感染性物質に応答する能力を維持しなければならない。これは、胸腺におけるアポトーシス細胞死に対する未成熟Tリンパ球の感受性によってかなりの程度まで制御される(中枢性寛容)。しかし、すべての自己抗原が胸腺でで検出されるわけではなく、そのため自己応答性胸腺細胞の死は不完全なままである。したがって、寛容が末梢組織における成熟自己応答性Tリンパ球によって獲得され得るメカニズムもある(末梢性寛容)。中枢性及び末梢性寛容のメカニズムの概説は、Anderton et al (1999)(Immunological Reviews 169: 123-137)に与えられる。
【0081】
GDは、TSHRに結合し、TSHRを活性化し、それによって、甲状腺ホルモン合成及び分泌、並びに甲状腺増殖を刺激する、TSHR刺激性自己抗体によって引き起こされると現在考えられている。本発明のペプチドは、被験体に投与された場合、それらがTSHR自己タンパク質に対する寛容を回復し、病原性免疫応答を抑え得るように、TSHRに対する寛容を誘導することが可能である。
【0082】
寛容は、CD4+ T細胞の少なくとも部分におけるアネルギーの誘導から生じ得るか又はそれによって特徴付けることができる。T細胞を活性化するために、ペプチドは、T細胞に2つのシグナルを送達することが可能な「プロフェッショナル」APCと結び付く必要がある。第一のシグナル(シグナル1)は、APCの細胞表面上のMHC-ペプチド複合体により送達され、TCRを介してT細胞によって受信される。第二のシグナル(シグナル2)は、CD80及びCD86のようなAPCの表面上の共刺激分子により送達され、T細胞の表面上のCD28によって受信される。T細胞がシグナル2の非存在下でシグナル1を受信した場合、それは活性化されず、実際には、アネルギー性になると考えられている。アネルギー性T細胞は、その後の抗原投与に対して不応性であり、他の免疫応答を抑制することが可能であり得る。アネルギー性T細胞は、T細胞寛容の媒介に関与すると考えられている。
【0083】
MHC分子と共に提示され得る前に処理を必要とするペプチドは、成熟抗原提示細胞によって対処される必要があるため、寛容を誘導しない。成熟抗原提示細胞(マクロファージ、B細胞及び樹状細胞など)は、抗原処理が可能であるが、T細胞へのシグナル1及び2の両方の送達も可能であり、これはT細胞活性化をもたらす。一方、アピトープは、未成熟APC上のクラスII MHCに結合することができる。したがって、それらは共刺激無しにT細胞に提示され、T細胞アネルギー及び寛容をもたらす。
【0084】
もちろん、アピトープはまた、成熟APCの細胞表面でMHC分子に結合することが可能である。しかし、免疫系は、成熟APCより豊富な量の未成熟APCを含有する(樹状細胞の10%未満が活性化されることが示唆されている、Summers et al. (2001) Am. J. Pathol. 159: 285-295)。したがって、アピトープに対するデフォルト位置は、活性化よりもむしろ、アネルギー/寛容である。
【0085】
寛容がペプチド吸入によって誘導される場合、抗原特異的CD4+ T細胞の増殖する能力が低下することが示されている。また、これらの細胞によるIL-2、IFN-γ及びIL-4産生が下方調節されるが、IL-10の産生は増加する。ペプチド誘導性寛容の状態のマウスにおけるIL-10の中和が、疾患に対する感受性を完全に回復することが示されている。IL-10を産生し、免疫調節を媒介する調節細胞の集団が、寛容状態において存続することが提案されている(Burkhart et al (1999) Int. Immunol. 11:1625-1634)。
【0086】
TSHRに対する寛容の誘導は、以下のレベルの低下を当技術分野で公知の技術により探すことによって、in vivoでモニターすることができる:
(i)TSHR自己抗体、
(ii)TSHRに特異的なCD4+ T細胞、及び/又は
(iii)TSHR自己抗体を分泌することが可能なB細胞。
【0087】
したがって、寛容の誘導はまた、以下を含めた様々な技術によってモニターすることができる:
(a)CD4+ T細胞におけるアネルギーの誘導(in vitroでの続く抗原投与によって検出され得る)、
(b)以下を含む、CD4+ T細胞集団の変化
(i)増殖の低下、
(ii)IL-2、IFN-γ及びIL-4の産生の下方調節、並びに
(iii)IL-10の産生の増加。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「寛容原性(tolerogenic)」は、寛容を誘導可能であることを意味する。
【0089】
組成物
本発明また、本発明の第一又は第二の態様に従う1つ以上のペプチドを含む医薬組成物などの組成物に関する。
【0090】
ペプチドは、複数のペプチド、例えば2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのペプチドを含み得る。
【0091】
本発明の組成物は、予防的又は治療的使用のためのものであってもよい。
【0092】
予防的使用のために投与される場合、組成物は、TSHRに対する免疫応答の発生を低減又は阻止し得る。免疫応答のレベルは、患者が組成物で治療されていなかった場合に得られるであろうよりも小さい。用語「低減する」は、免疫応答における部分的低減、例えば、患者が組成物で治療されていなかった場合に観察されたであろう応答における(又は同じ期間にわたって未治療の患者で観察される応答における)50%、70%、80%又は90%の低減が観察されることを示す。用語「阻止する」は、TSHRに対する感知できるほどの免疫応答が観察されないことを示す。
【0093】
治療的使用のために投与される場合、組成物は、TSHRに対するすでに進行中の免疫応答を抑制し得る。用語「抑制する」は、ペプチド治療前のレベル、又は治療が与えられていなかった場合に同じ時点で観察されたであろうレベルと比較した、進行中の免疫応答のレベルにおける低減を示す。
【0094】
本発明の組成物による治療は、以下のいずれか又はすべてのレベルの低減を引き起こし得る:
(i)TSHR自己抗体
(ii)TSHRに特異的なCD4+ T細胞
(iii)TSHR自己抗体を分泌するB細胞。
【0095】
要素のすべての検出は、ELISA、フローサイトメトリーなどの当技術分野で公知の技術によって実施され得る。
【0096】
本発明の組成物での治療はまた、又は代わりに、TSHRに特異的なCD4+ T細胞においてアネルギーを引き起こし得る。アネルギーは、例えば、その後のin vitroでのTSHR投与によって検出することができる。
【0097】
2つ以上のアピトープが存在する場合、医薬組成物は、アピトープのいくつか又はそれぞれが、同時、個別又は連続投与のために別々に提供される、キットの形態であってもよい。
【0098】
あるいは(又は加えて)、医薬組成物(又はその一部)が、複数用量で投与される場合、それぞれの用量は、別々にパッケージされてもよい。
【0099】
また、本発明の医薬組成物において、その又はそれぞれのアピトープは、任意の適切な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)又は可溶化剤(複数可)と混合されてもよい。
【0100】
製剤
組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製され得る; 注射前の液体における溶液又は懸濁液に好適な固体形態も調製され得る。調製物はまた、乳化されてよく、又はペプチドは、リポソームに封入されてもよい。活性成分は、薬学的に許容され、かつ活性成分と相溶性のある添加剤と混合されてよい。好適な添加剤は、例えば、水、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組合せである。
【0101】
加えて、所望の場合、組成物は、湿潤剤又は乳化剤及び/又はpH緩衝剤などの少量の補助物質を含有してもよい。緩衝塩は、pH調整のために使用され得るリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩酸及び/又は水酸化ナトリウムを含む。安定化のため、スクロース又はトレハロースなどの二糖類を、使用してもよい。
【0102】
組成物が、複数のペプチドを含む場合、ペプチドの相対比率は、ほぼ等しくてよい。あるいは、例えば、自己応答性T細胞の特定のサブセットにおける寛容原性応答に集中するため、又は1つのペプチドが特定のHLAタイプにおいて他のものより良く作用することが見出される場合、各ペプチドの相対比率は、変更されてよい。
【0103】
製剤化後、組成物は、滅菌容器に組み込まれてよく、次いで、密封され、低い温度、例えば4℃で保存されるか、又はそれは凍結乾燥されてもよい。
【0104】
好都合に、組成物は、凍結乾燥(フリーズドライ)粉末として調製される。凍結乾燥は、安定化形態での長期保存を可能にする。凍結乾燥手順は、当技術分野において周知であり、例えばhttp://www.devicelink.com/ivdt/archive/97/01/006.htmlを参照のこと。マンニトール、デキストラン又はグリシンなどの充填剤は、一般に、凍結乾燥前に使用される。
【0105】
組成物は、経口、静脈内(水溶性の場合)、筋肉内、皮下、舌下、鼻腔内、皮内若しくは坐薬経路、又はインプラント(例えば、徐放性分子を用いて)によってなどの都合の良い方法で投与され得る。
【0106】
組成物は、有利には、鼻腔内、皮下又は皮内経路を介して投与され得る。
【0107】
本発明のペプチド及び組成物は、ヒト被験体を治療するために使用され得る。被験体は、GDを有していてもよい。被験体は、TSHR自己抗体を有していてよい。
【0108】
被験体は、阻害性THSR自己抗体を生じる素因と関連しているHLA-ハプロタイプであってもよい。被験体は、HLA-DR3又はHLA-DR4を発現してよい。個体のHLAハプロタイプを決定する方法は、当技術分野で公知である。
【0109】
典型的には、医師は、個々の被験体に最も適した実際の用量を決定し、それは特定の患者の年齢、体重及び応答によって変化する。
【0110】
好ましい実施形態では、複数の用量が上昇濃度において患者に与えられる、「用量漸増」プロトコールに従ってもよい。このようなアプローチは、例えば、ハチ毒アレルギーに対する免疫療法適用においてホスホリパーゼA2ペプチドについて使用されてきた(Muller et al (1998) J. Allergy Clin Immunol. 101:747-754 and Akdis et al (1998) J. Clin. Invest. 102:98-106)。
【0111】
キット
好都合に、組成物が複数のペプチドを含む場合、それらは、混合組成物又はカクテルの形態で、一緒に投与されてよい。しかし、同時、別々、連続又は併用投与のために、ペプチドをキットの形態で別個に提供することが好ましい状況があり得る。
【0112】
キットはまた、混合及び/又は投与手段を含み得る(例えば、鼻腔内投与のための噴霧器(vapouriser)、又は皮下/皮内投与のためのシリンジ及び針)。キットはまた、使用説明書を含み得る。
【0113】
本発明の医薬組成物又はキットは、疾患を治療及び/又は予防するために使用され得る。
【0114】
特に、組成物/キットは、GDを治療及び/又は予防するために使用され得る。
【実施例】
【0115】
[実施例1]
HLA-DR3 TSHRペプチドの選択
TSHRにおける重要なエピトープ領域を同定するために、TSHRのECD(AA20-418)を、以下に示すように、15アミノ酸によって重複する、28〜30アミノ酸(28〜30マー)の28個の重複ペプチドに分けた。
【0116】
【0117】
次いで、すべてのペプチドの免疫原性を、CFA中に乳化した3つのペプチドのプール200μgでHLA-DRB1*0301トランスジェニックマウス(DR3マウス)を免疫化することによって評価した。10日後、LN細胞及び脾細胞を単離し、10〜25μg/mLの対応する個々のペプチドでin vitroで刺激した。刺激指数(SI; 非刺激細胞の3H-チミジン取り込み(1分あたりのカウント)で割った、ペプチド刺激細胞の3H-チミジン取り込み(1分あたりのカウント))に基づいて、ペプチドRNB-5及びRNB-9は、高度に免疫原性であることが見出された(SI>10)。
【0118】
図1は、RNB-5免疫化マウスから単離したLN及び脾細胞が、in vitroでRNB-5刺激に強く応答することを示す。
【0119】
ここで説明するすべての例は、ペプチドRNB-5に焦点を当てる。
【0120】
[実施例2]
RNB-5内のアピトープの同定
RNB-5内の正確なエピトープ位置を決定するために、RNB-5にわたる、一連の15マーの重複ペプチドを、標準的なF-moc化学を用いて合成した。各ペプチドを、以下に示すように、1アミノ酸によって表示する:
【0121】
【0122】
まず、ペプチドを、DR3マウスから生成されたハイブリドーマを用いて分析した。TSHR及びRNB-5に特異的なハイブリドーマは、新鮮な及び固定されたVAVY細胞の両方によって提示されるRNB-5 A〜Fに応答することが示された。代表的なクローンの抗原誘導性IL-2産生は、図2に示される。
【0123】
これらの15マーのペプチドの、HLA-DR分子に結合する能力を決定するために、2つのソフトウェアツールを使用した: NetMHCII(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCII)及びImmune Epitope DataBase (http://tools.immuneepitope.org/analyze/html/mhc_II_binding.html)。両方法を用いて、ネステッドペプチドRNB-5AからRNB-5Fまでは、HLA-DRB1*0301及びHLA-DRB1*0401分子の両方への強力な結合体として同定された。
【0124】
ヒトでのGDは、HLA-DRB1*0301ハプロタイプと強く関連しているが、HLA-DRB1*0401ハプロタイプは、多くの場合、同様にGD患者に生じる。RNB-5Aから5Fペプチドは、HLA-DRB1*0401分子に結合することが予測されたため、RNB-5を、in vivoでDR4マウスにおいて免疫応答を生成する能力について試験した。RNB-5/CFA免疫化DR4マウスから単離されたLN細胞及び脾細胞は、RNB-5ネステッドペプチドで刺激した場合、強い免疫応答を示した。さらに、DR3マウスで生成されたRNB-5特異的ハイブリドーマは、BM14細胞(HLA-DRB1*0401)によって提示されたときに、RNB-5ネステッドペプチドに応答する。したがって、新たなハイブリドーマを、TSHR/CFAでDR4マウスを免疫化することによって生成した。TSHRタンパク質及びRNB-5ペプチドの両方に特異的なハイブリドーマを、RNB-5内のアピトープを同定するために選択した。ペプチドRNB-5A〜5Fは、再びアピトープと同定された(図3)。RNB-5 DEFネステッドペプチドを、C末端及びN末端の両方にアミノ酸「GKK」を付加することによって改変した。TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマはまた、新鮮な及び固定されたAPCの両方によって提示された場合、これらの改変ペプチドに応答する。まとめると、これらのデータは、この領域が、HLA-DRB1*0301又はHLA-DRB1*0401ハプロタイプのいずれかを有するGD患者にとって興味深いことを強調する。
【0125】
TSHR/CFAでDR4マウスを免疫化することによって生成されたTSHR特異的ハイブリドーマの一部は、RNB-5の代わりにRNB-4に結合することが示され、これは、TSHR内の他の免疫原性領域の存在を示す。RNB-4特異的ハイブリドーマを、RNB-4内のアピトープを同定するために選択した。ペプチドRNB-4Jは、アピトープと同定された(図4)。RNB-4ネステッドペプチド配列は、以下の表に示される。
【0126】
【0127】
RNB-5D改変ペプチドのアピトープ状態も調べた(図20)。
【0128】
RNB-4及びRNB-5アピトープに加えて、in silico予測ソフトウェアツールは、ペプチドRNB-9Aから9Dも、HLA-DRB1*0301分子への強力な結合体と同定した。ペプチド配列は、以下の表に示される。
【0129】
【0130】
TSHR/CFAで免疫化したHLA-DR3又はHLA-DR4マウスから単離した、TSHR及びRNB-5特異的ハイブリドーマクローンの、RNB-5D改変ペプチドに対する応答を試験した。結果は、図11〜15に示される。
【0131】
[実施例3]
Ex vivo寛容アッセイ
RNB-5アピトープの、寛容を誘導する能力を評価するために、これらのアピトープの、免疫応答を阻害する能力を、最初に、ex vivoで健康なHLA-DRB1*0301又はHLA-DRB1*0401マウスにおいて調べた。方法の項に記載するように、マウスを、高用量又は用量漸増スケジュールに従って、異なるRNB-5アピトープで前処理した。研究は、RNB-5アピトープでの前処理が、DR3及びDR4マウスの両方において、TSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減することを示した(図6A〜D)。RNB-5DEFネステッドペプチドを、C末端及びN末端の両方にアミノ酸「GKK」を付加することによって改変した。これらの改変アピトープによる前処理も、TSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減した(図6E〜F)。
【0132】
ペプチドRNB-9Aから9Dは、HLA-DRB1*0301分子に強く結合すると予測され、特異的免疫寛容を誘導するそれらの能力も調べた。DR3マウスを、用量漸増スケジュールに従って、RNB-9Aから9Dで前処理した。RNB-9B及び9Cの前処理は、LN及び脾細胞の両方において、TSHR誘導性T細胞増殖の有意な低減を引き起こした(図7)。
【0133】
ペプチドRNB 4K-GKKも、DR4マウスにおいてTSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減することが示された(図16)。
【0134】
RNB-5D改変ペプチドも、TSHR誘導性T細胞増殖を有意に低減した。RNB5D-K1、RNB5D-K3及びRNB5D-K16を用いた代表的な実験は、図19に示される。
【0135】
[実施例4]
GDについての動物モデル
RNB-5アピトープの、マウスにおいてGD様症状を低減する能力を調べるために、GDについての2つの異なる動物モデルを開発した。
【0136】
第一に、C57/Bl6マウスを、抗TSHR抗体産生を誘導するために、TSHR/CFAで免疫化した。追加免疫が、抗TSHR抗体レベルをさらに増加させるかどうかを調べるために、マウスの一群は、TSHR/IFAで4週間後に2回目の免疫化を受けた。1回免疫したマウスの血清中の抗TSHR抗体レベルは、免疫化の2週後にプラトーレベルに達する。2回目の免疫化は、抗TSHR抗体レベルの強い増加を引き起こす(図8)。
【0137】
第二に、Balb/cマウスに、甲状腺における抗TSHR抗体の作用により引き起こされる甲状腺機能亢進症を誘導するために、LacZ-Ad又はTSHR-Adウイルス粒子を注射した。T4ホルモンレベル及び総IgG抗TSHR抗体力価を、アデノウイルスベクターでの最初の注射の前、4週後、及び10週後にすべてのマウスの血清において測定した(図9)。1010個のTSHR-Adウイルス粒子でのマウスの免疫化は、初回免疫の4週後及び10週後に測定した場合、それぞれ、3/7のマウス及び1/7のマウスにおいて、甲状腺機能亢進症を誘導した。これは、2匹のマウスにおけるT4レベルが、実験の間に正常化したことを示す。1011個のTSHR-Adウイルス粒子でのマウスの免疫化は、初回免疫の4週後及び10週後の両方において、1/6のマウスにおいて甲状腺機能亢進症を誘導した。ここで、4週で甲状腺機能亢進症である1匹のマウスは、10週で正常T4レベルを有し、一方、別のマウスのT4レベルが、4及び10週の間に強く増加した。抗TSHR抗体レベルを、TSHRに対するその刺激又は阻害効果を決定することなく、総IgG値として測定した(図10)。TSHR-Adウイルス粒子でのマウスの免疫化は、抗TSHR抗体産生を明らかに誘導した。1010又は1011個のTSHR-Adウイルス粒子で免疫化したマウスは、LacZ-Ad免疫化マウスよりも有意に多くの抗体を産生した。抗TSHR抗体レベルは、1010-TSHR-Ad及び1011-TSHR-Ad免疫化マウスの間で異ならなかった。総IgG抗TSHR抗体レベルとT4レベルとの間で相関は見られなかった。
【0138】
これらの動物モデルは、RNB-5アピトープがin vivoでGD様症状を低減し得るかどうかを調べるために使用される。
【0139】
[実施例5]
RNB12領域におけるアピトープの同定
RNB12及びネステッドペプチドは、マウスにおいて免疫原性ではない。したがって、領域を、グレーブス病患者から生成されたT細胞株の応答性により同定した。図17は、このようなT細胞株から得られた結果を示す。
【0140】
RNB12及び改変ペプチドRNB12-KKKは、アピトープであることが確認された(図18)。
【0141】
材料及び方法
マウス
HLA-DRB1*0301トランスジェニックマウス(DR3マウス)を、メイヨークリニック(Mayo Clinic)の免疫遺伝学マウスコロニー(Immunogenetics mouse colony)で飼育し、維持した。HLA DR3-tgの創始マウス(founder mice)を、Gunter Hammerling(German Cancer Research Center, Heidelberg, Germany)から入手した。簡単に述べると、pUCにおけるHLA DRAゲノムクローンの6-kb NdeI断片及びB遺伝子を含有するcos 4.1の24-kb ClaIxSalI断片を、C57BL/6の雄と交配させた(C57BL/6xDBA/2)-F1ドナーに由来する受精卵に同時注入した。トランスジェニックマウスを、I-Abノックアウトマウスに交配させた。DR3マウスを、10世代にわたってC57BL/10背景に交配させた。これらのDR3マウスは、HLA-DRB1*0301分子を発現するが、マウスMHC-II分子を発現しない。
【0142】
HLA-DRA*0101/HLA-DRB1*0101及びmCD3-huCD4c/g構築物を、(DBA/1xA.CA)F1交配に由来する胚に共マイクロインジェクトし、生存胚を、発達のために出産まで偽妊娠雌(Balb/c x 129)F1に移したことにおいて、DR4マウス株は、もともとLars Fuggerら(PNAS 1994; volume 91:6151-6155)によって作製された。子孫を、後に、マウスMHCクラスII分子発現を欠いているIA-bノックアウトC57BL/6遺伝的背景(AB0マウス)に交配させている。したがって、これらのDR4マウスにおいて発現される唯一のMHCクラスII分子は、ヒトHLA DR4分子である。
【0143】
動物実験は、ハッセルト大学の「動物実験に関する倫理委員会」(ECD)によって承認され、病原体のない施設において最高水準のケアを用いて行った。
【0144】
ペプチド
ペプチドを、GL Biochem Ltd(Shangai, China)によって合成し、-80℃にてジメチルスルホキシド(DMSO; Sigma-Aldrich, Bornem, Belgium)中で保存した。
【0145】
HLA-DRB1*0301へのペプチド結合の調査
NetMHCII 2.2サーバ
NetMHCII 2.2サーバは、人工ニューロンネットワークを使用して、ペプチドの、HLA-DRB1*0301への結合を予測する。予測値は、nM IC50値で与えられる。強い及び弱い結合ペプチドは、出力に示される。高い親和性結合ペプチドは、50 nM未満のIC50値を有し、弱い結合ペプチドは、500 nM未満のIC50値を有する。結果は、以下のように計算される予測スコアとして提示される: 1-log50000(aff)。ウェブサイトのアドレス: http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCII。
【0146】
Immune Epitope DataBase(IEDB): コンセンサス法
各ペプチドについて、ペプチドのスコアを、SWISSPROTデータベースから選択された500万のランダムな15マーのスコアに対して比較することによって、4つの方法(ARB、コンビナトリアルライブラリー、SMM_align及びSturniolo)のそれぞれについて、パーセンタイルランクを生成した。小さな番号を付けたパーセンタイルランクは、高い親和性を示す。次いで、4つの方法の中央値パーセンタイルランクを、コンセンサス法についてのランクを生成するために使用した。ウェブサイトのアドレス: http://tools.immuneepitope.org/analyze/html/mhc_II_binding.html。
【0147】
長いペプチドの免疫原性の決定
プライミング
DR3マウスに、完全フロイントアジュバント((CFA; BD Benelux, Erembodegem, Belgium)4mg/mlの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(MTb, BD Benelux)を含有する)と共に乳化した、PBS(Lonza, Verviers, Belgium)中の100μgの抗原を、尾の基部に皮下注射した(100μl/注射)。実験に応じて、RNBペプチド又は完全長TSHR-289タンパク質を抗原として用いた。対照動物には、PBS/CFAのみを同じ時に注射した。
【0148】
細胞培養
免疫化10日後に、排出リンパ節(draining lymph node)(LN)及び脾臓を回収した。LN細胞及び脾細胞を単離し、96ウェル平底プレート中のX-vivo 15培地(グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを補充した; Lonza)中で培養した。抗原誘導性細胞増殖を調べるため、0.5×106細胞/ウェルを、異なる抗原濃度(0〜25μg/ml)又は12.5μg/mlの精製タンパク質誘導体(PPD; プライミング対照; Statens serum institut, Copenhagen, Denmark)と共に72時間培養した(200μL/ウェル)。
【0149】
増殖アッセイ及びサイトカイン分析
72時間後、60μLの細胞上清を回収し、凍結させた。次いで、20μL/ウェルのトリチウム化チミジン(PerkinElmer, Zaventem, Belgium)を、1μCi/ウェルの最終濃度を得るために細胞に添加した。細胞を37℃でインキュベートし、16時間後に、プレートを凍結させた。解凍したプレートを回収し、細胞増殖を評価するために、βカウンター(Wallac 1450 Microbeta Trilux液体シンチレーションカウンター)を用いて読み取った。解凍した上清を、抗原誘導性サイトカイン産生を測定するために、マウスTh1/Th2 10plex FlowCytomix Multiplex(Bender MedSystems, Vienna, Austria)を用いて分析した。
【0150】
RNB-5特異的ハイブリドーマの生成
プライミング及びT細胞株の確立
0日目に、マウスに、100μgの抗原/CFAを尾の基部に皮下注射した(DR3マウスについてRNB-5; DR4マウスについてTSHR)。対照マウスは、PBS/CFAで免疫化した。10日目に、排出LN及び脾臓を取り出し、単一細胞懸濁液を作製した。細胞のいくつかを、上述のように、抗原誘導性細胞増殖を測定するために使用した。残りの脾細胞及びLN細胞を混合し、CD4+ T細胞を陰性精製キット(アンタッチド(untouched)CD4+ T細胞; Miltenyi, Leiden, The Netherlands)を用いて単離した。次いで、CD4+ T細胞を、抗原(25μg/mlのRNB-5若しくは0.5μg/mlのTSHR-289タンパク質)及びDR3マウス由来の照射された脾細胞(3000 rad)と一緒に培養した(APC:CD4+ T細胞比1:1; 5×106細胞/ml)。ウシ胎児血清(FCS)誘導性細胞活性化を避けるために、細胞を、X-vivo 15培地中で培養した。4日目に、20 U/mlの組換えヒトIL-2(R&D, Abingdon, United Kingdom)を細胞に添加した。7日目に、生細胞を、Ficoll密度勾配分離(Histopaque 1083, Sigma-Aldrich)を用いて死細胞を除去することにより回収した。次いで、細胞を上記のように再刺激し、APC:CD4+ T細胞比を2:1に変えた。9日目に、生細胞を回収し、それらのいくつかを、融合のために使用した。残りのCD4+T細胞を培養中に残し、IL-2を10日目に添加した。14日目に、生細胞を回収し、APCの存在下で抗原で再刺激し(3:1でのAPC:CD4+ T細胞の比)、16日目に第二の融合に使用した。
【0151】
融合
1×107個のBW5147細胞(Health Protection Agency Culture Collections, Salisbury, UK)及び5×106個のCD4+ T細胞を、50mlチューブ中で混合し、37℃の無血清培地で洗浄した。遠心分離後、細胞ペレットを穏やかに再懸濁した。1mlの37℃ポリエチレングリコール(PEG; 40〜50%溶液、Sigma-Aldrich)を45秒かけて添加し、細胞を小さな37℃の水浴中に維持した。細胞を、45秒間37℃でインキュベートした。次いで、旋回させながら、1mlの37℃無血清培地を30秒かけて添加し、連続して2、3、4、10及び30mlが続いた。チューブを非常にゆっくりと反転させ、4分間37℃でインキュベートした。細胞を、ブレーキなしで室温(RT)で1300rpmで5分間遠心分離した。上清を除去し、50mlのRT無血清培地を、細胞ペレットを取り除くことを避けるためにゆっくりと添加した。洗浄工程を、完全培地を用いて繰り返した。最後に、細胞を、10%-FCSを有するRT完全培地に再懸濁し、96ウェル平底プレートに、異なる細胞濃度で播種した(100μl/ウェル)。48時間後、細胞を1×ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT、Sigma-Aldrich)培地中で培養し、ハイブリドーマ細胞増殖を、約6日後に検出した。クローンをそれらが安定になるまでHAT培地中で維持し、次いでヒポキサンチン-チミジン(HT、Sigma-Aldrich)培地を介して完全RPMI培地へと断ち切らせた。定期的なベースで、クローンを、凍結培地(90%FCS+10%DMSO)中で凍結させた。
【0152】
クローンの抗原特異性の評価
ハイブリドーマ細胞を、5×104個のVAVY若しくはBM14細胞(それぞれHLA-DRB1*0301又はHLA-DRB1*0401を発現するヒト細胞株; International Histocompatibility Working group, Seattle, USA)及び抗原(10〜25μg/ml)と共に培養した。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって測定した。
【0153】
IL-2 ELISA
96ウェルプレート(Immunosorb 96ウェル, Fisher Scientific, Erembodegem, Belgium)を、炭酸バッファー中に1:250希釈した、50μl/ウェルの精製ラット抗マウスIL-2捕捉Ab(BD Biosciences, Oxford, UK)を用いて4℃で一晩コーティングした。PBS-0.05%Tweenで2回洗浄した後、ウェルを、10%FCS/PBSで室温にて1時間ブロッキングした。次いで、ウェルを、50μlの細胞培養上清又はIL-2標準(BD Biosciences, Belgium, Erembodegem)と共に室温で2時間インキュベートした。ウェルを、10%FCS/PBS中に1:1000希釈した、50μl/ウェルのビオチンラット抗マウスIL-2(BD Biosciences)と共に室温で1時間インキュベートし、その後、PBS中に1:1000希釈した50μl/ウェルのエクストラアビジンペルオキシダーゼ(Sigma-Aldrich)との室温にて30分間のインキュベーションが続いた。抗体結合を検出するために、50μl/ウェルのTMB基質溶液(Perbio Science, Erembodegem, Belgium)を添加した。11分後、発色反応を、50μl/ウェルの2M H2SO4を用いて停止した。光学密度(OD)を450nm(630nm ref)で測定した(Tecan Benelux, Mechelen, Belgium)。
【0154】
抗原処理に依存しない提示システム
抗原特異的クローンを、固定された又は固定されていないVAVY又はBM14細胞(=APC)によって提示される、15マーのペプチド(RNB-5A〜5O)に対するそれらの応答性について試験した。個々のクローンからの5×104個の細胞を、25μg/mlのペプチド及び5×104個の固定された又は新鮮なAPCと共に培養した。APCを固定するために、細胞を、0.5%パラホルムアルデヒド(Merck, Darmstadt, Germany)(pH7)と共に室温で5分間インキュベートした。固定反応を、0.4Mグリシン(Sigma-Aldrich)を添加し、RPMI-10%FCS中で細胞を洗浄することにより停止させた。さらに、ヒトTSHR-289タンパク質(Chesapeake-PERL, Savage, Maryland, USA)に対する応答性を、潜在性エピトープを同定するために測定した。48時間後、抗原誘導性IL-2産生を、ELISAによって測定した。
【0155】
RNB-5アピトープの溶解性の評価
ペプチドの溶解性を、Anabiotec(Zwijnaarde, Belgium)によって分析した。要するに、ペプチドサンプルを、PBS pH7.0±0.1を添加することによって、2つの異なる標的濃度(1mg/ml及び4mg/ml)で溶解した。ペプチド溶液を、少なくとも16時間室温でインキュベートした。濁度を、遠心分離の前及び後に、320及び360nmで測定した。ペプチド濃度を、280及び205nmの吸光度を用いて、かつHPLC-UVによって決定した。
【0156】
ペプチドを、DMSO中の20mg/mLのストック濃度で溶解した。標的濃度4、2及び1mg/mLの希釈系列を、PBS中で調製した。ペプチド溶液を、沈殿の形成を可能にするために、16〜17時間、室温でインキュベートした。濁度を目視観察でスコア付けし、吸光度を、Nanodrop装置を用いて205nm、280nm及び320nmで測定した。ペプチド溶液を、10分間14800rpmで遠心分離し、目視観察及び吸光度測定を繰り返した。ペプチド濃度を、以下の式を用いて計算した:
【数1】
【0157】
RNB-5アピトープ処理による寛容誘導
DR3マウスに、-8、-6、-4日目に、RNB-5 15マーペプチド(100μg/注射)又はPBSを首の後ろに皮下注射した(高用量スケジュール)(図5)。あるいは、マウスに、-15、-13及び-11日目に、それぞれ0.1μg、1μg及び10μgペプチドを注射し、その後、-8、-6及び-4日目に100μgのペプチドの3回の注射が続いた(用量漸増スケジュール)。0日目に、マウスに、100μgの抗原/CFA(RNB-5ペプチド又はTSHR-289タンパク質)を尾の基部に皮下注射した。免疫化の10日後、排出LN及び脾臓を回収した。増殖アッセイ及びサイトカイン測定を、上記のように行った。
【0158】
GDについての動物モデル
TSHR Aサブユニットアデノウイルスによるマウスの免疫化
ヒトTSHR Aサブユニット(アミノ酸残基1〜289、AサブユニットAd)を発現するアデノウイルス及びβガラクトシダーゼを発現する対照アデノウイルス(LacZ-Ad)を、Viraquest(North Liberty, IA, USA)から購入した。6週齢の雌Balb/cJOlaHsdマウス(Harlan Laboratories, Venray, The Netherlands)に、TSHR-Ad(1010又は1011個の粒子)又はLacZ-Ad(1010個の粒子)を大腿筋に筋肉内注射した。すべてのマウスを、アデノウイルスの同じバッチを使用して同時に免疫化した。マウスに、3週間間隔(0、21及び42日目)で3回注射し、血液を、初回免疫の前、及び二次免疫の1週後に採取した。すべてのマウスを、血液及び甲状腺を得るために、3回目の注射(10週)の4週後に安楽死させた。
【0159】
TSHR/CFAによるマウスの免疫化
雌の6週齢C57/Bl6JOlaHsdマウス(Harlan Laboratories)(1群あたり8匹のマウス)に、4 mg/mlのMTb(50μl)と共にCFA中で乳化させた50μgのTSHR-289タンパク質を尾の基部で皮下に投与した。マウスは、0(免疫前)、7、21、35、49、63日目(群A)、0、14、28、42、56日目(群B)又は0、21、28、42、56日目(群C)に尾から採血した。群Cのマウスは、不完全フロイントアジュバント(IFA)中に乳化させた50μgのTSHR-289タンパク質で4週に追加免疫を受けた。初回免疫の10週後、すべてのマウスを安楽死させ、血液を心臓穿刺によって採取した。
【0160】
TSHR抗体
精製したTSHR-289タンパク質(Chesapeake-Perl)に対する抗TSHR抗体(IgGクラス)を、ELISAを用いて測定した。96ウェルプレート(ハーフエリア(half area)96ウェル, Fisher Scientific)を、PBS中の50μL/ウェルのTSHR-289タンパク質(0.5μg/ml)で室温で一晩コーティングした。PBS-0.05%Tweenで洗浄した後、ウェルを、PBS中の1%BSA(w/v)で室温にて1時間ブロッキングし、試験血清(二重のアリコート、1:50希釈)と共にインキュベートした。マウス抗TSHR抗体(A9, Abcam, Cambridge, UK)を陽性対照として使用した。次いで、抗体結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Abcam)で検出し、シグナルをTMBで発色させた。光学密度(OD)を、450nmにてプレートリーダーで測定した(Tecan Benelux)。
【0161】
血清チロキシン及び甲状腺組織学
総チロキシン(T4)を、CBIマウス/ラットチロキシンELISAキット(Calbiotech, Spring Valley, CA, USA)を使用して、製造者の説明書に従って、未希釈マウス血清(10μl)において測定した。T4値をキットにおける標準から計算し、μg/dlで表した。甲状腺を、10%中性緩衝ホルマリン液(pH7.5)中で固定し、切片に加工し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。切片を、病理学的変化(肥大、上皮細胞の過形成及びリンパ球の浸潤)について観察し、スコア付けした(KWS Biotest, Bristol, UK)。
【0162】
【表1】
【0163】
ヒトPBMCに由来するT細胞株(実施例5)
健康なドナー又はグレーブス病患者からの末梢血単球(PBMC)を、単離し(Histopaque-1077, Sigma-Aldrich)、アリコートで凍結した。0日目に、細胞を解凍し、106のPBMC/mlを、6ウェルプレート(Greiner Bio-one)中に添加した5%AB血清(Sigma Aldrich)を有する、補充された(10mM HEPES、50U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン及び4mM L-グルタミン(Lonza))RPMI 1640(Lonza)中の20μg/mlのペプチドと共に培養し、37℃及び5%CO2中でインキュベートした。7日後、rhIL-2(R&D Systems)を、20U/mlの最終濃度まで添加する。12日目に、細胞を回収し、洗浄し、5〜10μg/mlのペプチド及び20U/mlのrhIL-2で刺激された、6ウェルプレート中、1mlあたり106+2×106個の新たに解凍した照射自己PBMCの濃度で培養物に戻す。15、18及び21日目に、追加のrhIL-2を、20u/mlの最終濃度まで添加した。
【0164】
24日目に、細胞を、回収し、洗浄し、2×104個を、5〜50μg/mlの濃度において異なる抗原(ペプチド、タンパク質)の存在下で補充されたRPMI+5%AB血清において、105個の照射自己PBMC、及びヒトMHC cl II分子を発現するVAVY/BM14/MGARヒト細胞株(International Histocompatibility Working group, Seattle, US)と共に、96ウェルプレート中で培養した。培養物を、最終的な18時間に添加される0.5 uCI/ウェルの3H-チミジン(Perkin Elmer)と共に48時間インキュベートした。プレートを凍結した後、細胞を回収し、増殖を評価するために、βカウンター(Wallac 1450 Microbeta Trilux)で読み取った。3H-チミジンを添加する前に、60μl/ウェルの細胞培養上清を、サイトカイン分析のために取り出した。
【0165】
IFNγELISA
TCL培養物からの上清を、ヒトIFN-γDuosetキット、R&D Systemsを用いて、製造者の説明書に従って、IFNガンマ含有量について評価した。光学密度を、450nmで測定した(Tecan Benelux)。
【0166】
上記明細書で言及したすべての刊行物は、本明細書中に参照により組み込まれる。本発明の記載された方法及びシステムの種々の改変及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、請求項に記載の発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、分子生物学、免疫学、又は関連分野の当業者に明らかである本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]