(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476191
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】砕氷船
(51)【国際特許分類】
B63B 1/06 20060101AFI20190218BHJP
B63B 35/08 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
B63B1/06 Z
B63B35/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-541087(P2016-541087)
(86)(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公表番号】特表2016-540691(P2016-540691A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】FI2014051046
(87)【国際公開番号】WO2015092154
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】20136314
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】511220555
【氏名又は名称】エーカー アークティック テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スオヤネン、レコ − アンティ
(72)【発明者】
【氏名】マットソン、トム
(72)【発明者】
【氏名】ハンベルク、カール
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0107070(KR,A)
【文献】
特開昭61−12487(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2006−0039270(KR,A)
【文献】
特開平4−254285(JP,A)
【文献】
米国特許第5176092(US,A)
【文献】
特公昭52−7239(JP,B1)
【文献】
特開昭54−67991(JP,A)
【文献】
特公昭48−31238(JP,B1)
【文献】
特開平8−133171(JP,A)
【文献】
特開2011−126510(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3098848(JP,U)
【文献】
米国特許第5280761(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/06
B63B 1/40
B63B 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕氷船(1)であって、前記砕氷船(1)は、底部(2)と、船首部(3)と、船尾部(4)とを備えた船殻を含み、前記船首部(3)は、前方傾斜された上側船首部(31)と、前記船の長手方向における球状の下側船首部の所定の位置(S1)において球状部ルート断面(34)を備えた前記球状の下側船首部(33)と、前記前方傾斜された上側船首部と前記球状の下側船首部との間の中間船首部(32)と、を含み、前記砕氷船(1)は、構造喫水線(W1)、上側氷喫水線(W3)、及び下側氷喫水線(W2)によって設計される、砕氷船において、
前記球状の下側船首部(33)の上面は、前記船(1)の前記構造喫水線(W1)において前記船が動作するときに、水面に又は前記水面近傍に配置され、
前記球状の下側船首部(33)の下面は、前記船の前記下側氷喫水線(W2)において前記船が動作するときに、前記水面を突き進むように配置され、
前記前方傾斜された上側船首部(31)は、前記船の前記上側氷喫水線(W3)において前記船が動作するときに、前記水面を突き進むように配置され、
前記所定の位置(S1)における前記球状の下側船首部(33)の前記球状部ルート断面(34)の断面積は、前記船の長手方向において前記所定の位置(S1)の前方にある第1の位置(S2)における球状の下側船首部の断面積より小さく、船の長手方向において前記所定の位置(S1)の後部にある第2の位置(S3)における前記構造喫水線(W1)の下の前記船首部(3)の断面積より大きいことを特徴とする、砕氷船。
【請求項2】
前記船が前記上側氷喫水線(W3)において動作するときの、前記前方傾斜された上側船首部(31)と海面との間の角度(φ)が、最大40°であることを特徴とする、請求項1に記載の砕氷船。
【請求項3】
前記角度(φ)が、10°から40°の範囲であることを特徴とする、請求項2に記載の砕氷船。
【請求項4】
前記船が前記上側氷喫水線(W3)において動作するとき、前記前方傾斜された上側船首部(31)が、前記船の長手方向における第3の位置(S4)において海面と交差し、前記船の長手方向における前記第3の位置(S4)において、前記船の中心線(CL)における前記船首部(3)の外形と鉛直平面との間の角度(β1)が、少なくとも75°であることを特徴とする、請求項1に記載の砕氷船。
【請求項5】
前記船の長手方向における前記所定の位置(S1)と前記第3の位置(S4)との間の途中の位置において、前記船の中心線(CL)における前記船首部(3)の前記外形と鉛直平面との間の角度(β2)が、最大60°であることを特徴とする請求項4に記載の砕氷船。
【請求項6】
砕氷船(1)を動作させる方法であって、前記砕氷船(1)は、底部(2)と、船首部(3)と、船尾部(4)とを備えた船殻を含み、前記船首部(3)は、前方傾斜された上側船首部(31)と、前記船の長手方向における球状の船首部の所定の位置(S1)において球状部ルート断面(34)を備えた前記球状の下側船首部(33)と、前記前方傾斜された上側船首部と前記球状の下側船首部との間の中間船首部(32)と、を含み、これによって、前記砕氷船(1)は、構造喫水線(W1)、上側氷喫水線(W3)、及び下側氷喫水線(W2)によって設計される、方法において、前記方法に従って、
前記球状の下側船首部(33)の上面は、前記船の前記構造喫水線(W1)において前記船が動作するときに、水面に又は前記水面近傍に維持され、
前記球状の下側船首部(33)の下面は、前記船の前記下側氷喫水線(W2)において前記船が動作するときに、前記水面を突き進み、
前記前方傾斜された上側船首部(31)は、前記船の前記上側氷喫水線(W3)において前記船が動作するときに、前記水面を突き進み、
氷又は破砕された氷の塊の、前記船の前記長手方向における前記船殻に沿った後方への移動は、前記所定の位置(S1)における前記球状の下側船首部(33)の前記球状部ルート断面(34)の断面積が、前記船の前記長手方向において前記所定の位置(S1)の前方にある第1の位置(S2)における前記球状の下側船首部の断面積より小さく、前記船の前記長手方向において前記所定の位置(S1)の後部にある第2の位置(S3)における前記構造喫水線(W1)の下の前記船首部(3)の断面積より大きいことによって促進される
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海面位の水面を備えた水体における動作のための砕氷船に関し、その船は、底部と、船首部と、船尾部とを備えた船殻を含み、その船首部は、前方傾斜された上側船首部と、船の長手方向における球状の下側船首部の所定の位置において球状部ルート断面を備えた球状の下側船首部と、前方傾斜された上側船首部と球状の下側船首部との間の中間船首部と、を有し、その砕氷船は、請求項1のプリアンブル部による、構造喫水線、上側氷喫水線、及び下側氷喫水線によって設計される。更に本発明は、請求項8のプリアンブル部による砕氷船を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋船舶において、抵抗と、それによって要求される動力及び燃料消費は、球形状の本体、いわゆる、船の船首における球状船首の搭載によって低減され得ることが知られている。適切に設計されたとき、球状船首は、船によって生成される波のシステムに影響を与え、エネルギー損失が低減されるようになっている。実例は、例えば欧州特許第2391533号において確認されることができ、その中で、球状船首は、オープン・ウォーター条件(open water conditions)に関して設計される。
【0003】
従来、球状船首は、氷条件における船の動作に適するように考慮されてこなかった。しかし、近年、氷だらけの水の中で、すなわち氷条件において動作するための船は、球状船首を備えて設計されてきた。実例は、例えば韓国特許出願公開第20120139268号、韓国特許出願公開第20080107070号、及び韓国特許出願公開第20060039270号において確認され得る。しかし、これらの公知の船の設計は、オープン・ウォーター条件と氷条件の両方において動作させられ得る船を有するという要望及び必要性の観点において妥協を示す。氷条件は、球状船首の有利な流体力学的な外形の設計に対する様々な制約を示す。結果として、球状船首を備える公知の船の性能は、オープン・ウォーターに関して十分に設計された球状船首とも、十分に設計された砕氷船首とも比べられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2391533号
【特許文献2】韓国特許出願公開第20120139268号
【特許文献3】韓国特許出願公開第20080107070号
【特許文献4】韓国特許出願公開第20060039270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、背景技術の欠点を解決し、困難な、中度の、及び軽度の氷条件において効率的な砕氷能力を備えた船を実現し、更に、オープン・ウォーターにおける動作上の効率が低下されないことを確実にすることにある。この目的は、請求項1による砕氷船によって実現され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基本的な思想は、様々な氷条件において砕氷動作が要求されるときに、効率的な性能を有し、且つ、オープン・ウォーターにおける動作が要求されるときに、効率的な性能を有する海洋船舶を設計することにある。こうした設計の開始点は、構造喫水線である。船は、船の構造喫水線において船が動作するときに、球状の下側船首部の上面が、水面に又は水面近傍になり、船の下側氷喫水線において船が動作するときに、球状の下側船首部の下面が、水面を突き進むように配置され、船の上側氷喫水線において船が動作するときに、前方傾斜された上側船首部が、水面を突き進むように配置されるように設計される。
【0007】
本発明の利点は、以下に示され得る。
【0008】
船が構造喫水線において動作するときに、船は、トリム調整なく(without trim)負荷を受ける。この船の浮揚位置において、球状の下側船首部の上面は、水面に又は水面近傍になるように設計される。実際には、「に又は近傍に(at or in the vicinity)」の定義は、球状の下側船首部の上面が、完全に若しくは部分的に水面にある、又は、水面のわずかに下若しくはわずかに上にある、ということを定義する。氷条件において、球状の下側船首部の上面は、好適には軽度及び中度の氷条件でぶつかる、氷又は氷のシートと係合するように設計される。言い換えれば、この浮揚位置において、船は、軽度及び中度の氷条件において動作することができ、軽度及び中度の氷条件において動作するように最適化される。
【0009】
船が下側氷喫水線において動作するとき、船は、例えば貨物船の場合、貨物なく、バラスト状態で動作する。代替的に、この浮揚位置を得るために、船は、バラスト、消耗品、又は場合により貨物を移動させることによって、意図的にトリム調整されてもよい。この浮揚位置において、船は、軽度及び中度の氷条件において十分に適切な態様で動作することができる。
【0010】
船が上側氷喫水線において動作するとき、船は、船首部が下方にトリム調整されて動作する。この浮揚位置において、船は、困難な氷条件において動作することができ、困難な氷条件において動作するように最適化される。トリム調整された位置は、例えば貨物若しくはバラストの配置、又は、液体の移動によって実現されてもよい。
【0011】
本発明に係る好適な実施例において、所定の位置における球状の下側船首部の球状部ルート断面の断面積は、所定の位置の前方の第1の位置における球状の下側船首部の断面積より小さい。
【0012】
球状の下側船首部の所定の設計、すなわち、球状部ルート断面の前方の球状部の断面積と比較されたときの、球状部ルート断面における球状部のより小さな断面積は、氷条件における船の適合性及び動作上の効率を更に向上させる。これは、氷又は破砕された氷の塊が、船の船殻に沿って後ろ及び後方へと容易に移動するのを可能とする。
【0013】
本発明に係る更なる好適な実施例によれば、所定の位置における球状の下側船首部の球状部ルート断面の断面積は、所定の位置の後ろの第2の位置における構造喫水線の下の船首部の断面積より大きい。これは、氷又は破砕された氷の塊の、船の船殻に沿った後ろ及び後方への移動を更に容易にする。
【0014】
本発明に係る好適な実施例において、船が上側氷喫水線において動作するときの、前方傾斜された上側船首部と海面との間の角度は、最大40°である。これは、困難な氷条件における船の砕氷能力を向上させる。この点について、角度は、好適には、10°から40°の範囲である。
【0015】
船が上側氷喫水線において動作するとき、前方傾斜された上側船首部は、船の長手方向における第3の位置において海面と交差する。水体における船の経路を改善するために、船の長手方向の第3の位置において、船の中心線における、船首部の外形と鉛直平面との間の角度は、少なくとも75°である。
【0016】
砕氷船の動作を更に改善するために、船の長手方向における第3の位置と所定の位置との間の途中の位置において、船の中心線における、船首部の外形と鉛直平面との間の角度が最大60°であると、好適である。
【0017】
船殻、底部、船首、球状部、球状の船首及び船尾は、海洋船舶に関する従来の専門用語を示す。球状部ルート断面は、傾斜された上側船首部の下端、すなわち、中間船首部が、突出する下側の球状船首部、すなわち、球状部と交差する交差点における、球状部の鉛直な断面である。明確な交差点がない場合、中間船首部の横断するプロファイルの最も後方の屈曲点であり得る。船の長さは、船首部と船尾部との間の、船の長手方向における船の長さである。船の幅は、構造喫水線における船の最も大きな横幅を意味する。
【0018】
構造喫水線は、それに基づいて例えば、負荷、推進動力、速度等との関係において、その主要な動作のために船が設計される、喫水線を画定する。上側氷喫水線は、氷内で船が動作することを意図される、最も高い喫水線を画定する。この線は、破線であってもよい。下側氷喫水線は、氷内で船が動作することを意図される、最も低い喫水線を画定する。この線は破線であってもよい。これらの喫水線は、氷条件で船が動作可能な様々なドラフトの極限を示す。
【0019】
砕氷船は、通常こうした船が動作する能力を有する氷条件を画定する様々な氷の種別に割り当てられる。氷条件は、基本的に困難、中度又は軽度として定義される。前、前方、前において、等の表現は、船の長手方向における船首の方向に関する。後ろ、後方、端部において、等の表現は、船の長手方向の船尾の方向に関する。氷条件において船が動作するとき、その船首部と共に、船は、氷又は氷原と係合し、こうして、包囲する水体において氷又は氷原から氷の負荷を受け、さらされる。
【0020】
砕氷船の好適な特徴は、請求項2から7までにおいて定義される。砕氷船を動作させる方法は、請求項8から10までにおいて定義される。
【0021】
以下において、添付する概略図を参照しつつ実例のみによって本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】喫水線の下の砕氷船の船殻の断面、いわゆるフレーム領域曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1において、砕氷船は、参照符号1によって示される。砕氷船1は、底部2、船首部3、及び船尾部4を備えた船殻を含む。船首部3は、前方傾斜された上側船首部31と、船の長手方向における球状の下側船首部の所定の位置S1において球状部ルート断面34を備えた球状の下側船首部33と、前方傾斜された上側船首部31と球状の下側船首部33との間の中間船首部32と、を含む。砕氷船1は、構造喫水線W1、上側氷喫水線W3、及び下側氷喫水線W2によって設計される。
図2は、上述された船首部3の三次元図面を提供する。
【0024】
砕氷船1の幅は、
図6及び
図7に示されるように、参照符号Bによって示される。幅Bは、構造喫水線W1における砕氷船1の最も大きな横幅を意味する。砕氷船1の設計の点から見た幅Bの関連性は、
図6及び
図7と共に以下でより詳細に説明される。
【0026】
図3は、砕氷船1の構造喫水線W1において船が動作するときに、球状の下側船首部33の上面が、水面になるように又は水面近傍になるように配置されることを示す。実際には、これは、球状の下側船首部の上面が、水面にあるか又は水面近傍にあることを意味する。通常、この浮揚位置において、砕氷船1は、トリム調整なく負荷を受ける。氷条件において(氷は、ICEと示されている)、球状の下側船首部33の上面は、氷又は氷のシートと係合し、下側から氷を破砕する。この浮揚位置において、船は、軽度及び中度の氷条件において動作することができ、軽度及び中度の氷条件において動作するように最適化される。
【0027】
砕氷船1が下側氷喫水線W2において動作するとき、球状の下側船首部33の下面が、水面を突き進むように配置される。この浮揚位置において、船は、軽度及び中度の氷条件において、十分に適切な態様で動作することができる。
図3は、球状の下側船首部33の下面がどのように氷と係合し、球状の下側船首部の下でどのように氷を下方へと破砕するかということを示す。
【0028】
貨物船の場合、この浮揚位置において、船は、貨物がなく、バラスト状態にある。代替的に、船は、バラスト、消耗品、又は場合により貨物を移動させることによって、意図的にトリム調整され得る。
【0029】
砕氷船1が上側氷喫水線W3において動作するとき、船は、船首部を下方にトリム調整されて動作する。トリム調整された位置は、例えば貨物若しくはバラストの配置、又は、液体の移動によって実現され得る。この浮揚位置において、船は、困難な氷条件において動作することができ、困難な氷条件において動作するように最適化される。したがって、前方傾斜された上側船首部31は、砕氷船1が前方へと移動するときに、概ね従来の態様で、氷を下方及び側方へと破砕する。
【0030】
こうして砕氷船1は、3つの異なる浮揚位置において動作させられ、3つの異なる浮揚位置は、様々な氷条件において利点がある。球状の下側船首部33の上面は、船の構造喫水線W1において船が動作するときに、水面に又は水面近傍に維持され、球状の下側船首部33の下面は、船の下側氷喫水線W2において船が動作するときに、水面を突き進み、前方傾斜された上側船首部31は、船の上側氷喫水線W3において船が動作するときに、水面を突き進む。
【0031】
浮揚位置において、砕氷船1が、上側氷喫水線W3において動作するとき、前方傾斜された上側船首部31と海面(上側氷喫水線W3として
図3に示される)との間の角度φを最大40°とすると、好適である。したがって、角度φは、前方傾斜された上側船首部31の傾きの程度を示す。
図3において示されるように、前方傾斜された上側船首部31の傾きの角度φは、少なくとも前方傾斜された上側船首部31の下側部、すなわち、海面により近い、前方傾斜された船首部の部分に関連する。この船首部の上側部は、別の角度の傾きを有することができ、
図1及び
図3では、それを有するように示されている。
【0032】
この構成は、困難な氷条件における砕氷船1の砕氷能力を更に向上させる。いずれの場合においても、角度φが10°から40°の範囲であると好適である。
図3に示されるように、前方傾斜された上側船首部31は、海面と交差し、これは、砕氷船1の長手方向における第3の位置S4において、船がこの浮揚位置において動作させられるときに、上側氷喫水線W3に対応する。
【0033】
このような砕氷船としての砕氷能力の最適化は当然重要であるが、また、水体における船の効率的な移動を確実にするために、氷及び破砕された氷は、船から除去されなければならない。
【0034】
この目的のために、本発明に係る砕氷船1の船首部及び球状の下側船首部は、船首部3及び球状の下側船首部33の、船の長手方向におけるプロファイル又は横断する突出部及び体積分配に関して好適な設計を有する。これは、
図1から
図3を参照して、
図4及び
図5に示されている。
【0035】
図4は、構造喫水線W1の下の船の船殻の横断方向の断面領域を示すフレーム領域曲線、すなわちグラフを示す。
図5は、
図4の丸く囲まれた部分の拡大図を示す。所定の位置S1、第1の位置S2、及び第2の位置S3が、これらの図中に示される。以下でより詳細に説明されるように、所定の位置S1における断面積は、第1の位置S2における断面積より小さく、第2の位置S3における断面積は、所定の位置S1における断面積より小さい。
【0036】
所定の位置S1における球状の下側船首部33の球状部ルート断面34の断面積が、船の長手方向において所定の位置S1の前方にある第1の位置S2における球状の下側船首部の断面積より小さくなるように、プロファイル及び長手方向の体積分配は構成される。こうした構成、すなわち、球状の下側球状部が球状部ルート断面において球状部ルート断面の前方より小さな断面積を有する構成は、氷条件における砕氷船の動作を向上させる。砕氷船の後方の方向へ船殻に沿って氷又は破砕された氷の塊が流れることは、こうした構成によって促進される。
【0037】
砕氷船の船殻に沿って後方へ氷又は破砕された氷の塊が流れることに関する更なる改善は、所定の位置S1における球状の下側船首部の球状部ルート断面の断面積が、船の長手方向において所定の位置S1の後部にある第2の位置S3における構造喫水線W1の下の船首部の断面積より大きくなるように構成することによって、実現される。
【0038】
砕氷船1が上側氷喫水線W3において動作するとき、特に氷条件において、船首部3の外形も、水体の中での船の経路に影響を与える。
【0039】
船が上側氷喫水線W3において動作するとき、砕氷船1の船首部3の好適な設計は、船の長手方向における第3の位置S4における船の中心線CLにおいて、船首部3の外形と鉛直平面との間の角度β1が少なくとも75°であるように、船首部3を構成することによって実現される。
【0040】
更に、船の長手方向における、所定の位置S1と第3の位置S4との間の途中の位置における船の中心線CLにおいて、船首部3の外形と鉛直平面との間の角度β2が最大60°であると好適である。したがって、β1がβ2よりも大きいと少なくとも好適である。
【0041】
角度β1及び角度β2は、
図6に示される。上述したように、参照符号Bは、砕氷船1の幅を示し、その幅Bは、構造喫水線W3において船の最大の横幅となる。船首部3の外形を含む、砕氷船1の船殻2の外形は、湾曲している可能性があり、これによって、角度β1及び角度β2は、容易に計測され得ない。
【0042】
したがって、第3の位置S4における中心線CLにおいて、船首部3の外形と鉛直平面との間の角度β1は、船の中心線CLから船の外側へと向かって延びる破線の間の角度として示され、ここで、B/2は、砕氷船1の幅Bの半分を示す。
【0043】
それに対応する態様で、所定の位置S1と第3の位置S4との間の途中の位置において、船の中心線CLにおける、船首部3の外形と鉛直平面との間の角度β2は、船の中心線CLから船の外側へと向かって延びる破線の間の角度として示される。
【0044】
上述した観点において、角度β1及び角度β2は、
図7に示された角度βに基づいて定義され、ここで、角度βは、B/10の距離における、すなわち、船の中心線CLから10分の1の距離における、船首部3の外形と船の中心線CLとの間の角度として計測されるように定義される。この距離において、言い換えれば、船の中心線CLに対してかなり近くで、船殻の湾曲は、概してより一定となる。
【0045】
図及びそれらに関する詳細な説明は、本発明の基本的な思想の明確化を意図するものにすぎない。本発明は、特許請求の範囲を保証する範囲内で、詳細に変更し得る。