(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0185】
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図1】ペプチドのジゴキシゲニン化(ジゴキシゲニンのコンジュゲーション)のための手順(
図1A)。ジゴキシゲニン標識の(フォアフォア−Cy5;
図1B)、及びジゴキシゲニン化ポリペプチド(PYY−誘導体(DIG−PYY);
図1C)の例。
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図2】単一特異性二価抗ジゴキシゲニン抗体及びジゴキシゲニンCy5コンジュゲートの複合体(
図2A)の、並びに単一特異性二価抗ジゴキシゲニン抗体及びジゴキシゲニン−ポリペプチドコンジュゲートの複合体(
図2B)のスキーム。二重特異的四価抗ジゴキシゲニン抗体及びジゴキシゲニン−ポリペプチドコンジュゲートの複合体のスキーム(
図2C)。
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図3】定義されたサイズの複合体の単一ピークを示すペプチド(DIG−PYY)にコンジュゲーションされた、抗ジゴキシゲニン抗体及びジゴキシゲニンを含む複合体の(280nmで記録された)サイズ排除クロマトグラム。
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図4】A:ジゴキシゲニン(丸で囲んだ)が、VH及びVL領域のCDRにより形成された深いポケット中に捕捉されることを示す抗ジゴキシゲニンFabの構造モデル(左)。B:ビオシチンアミド(丸で囲んだ)が、VH及びVL領域のCDRにより形成された深いポケット中に捕捉されることを示す抗ビオチンFabの構造モデル(右)。
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図5】導入されたVH53C変異を伴わない組換えヒト化抗ビオチン抗体の結合の比較。結合特性を、BIAcore T100又はBIAcore 3000機器を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)技術により分析した。a)ヒト化抗ビオチン抗体。ヒト化抗ビオチン抗体へのビオチン化siRNAの結合、KD=624pM;b)ヒト化Cys53変異抗ビオチン抗体。ビオチン化siRNAの結合、KD=643pM;siRNA濃度:0.14、0.41、1.23、3.70、11.1、33.3、及び100nM;抗ビオチン抗体濃度:2nM;センサーチップCM3;抗ヒトIgG Fc抗体を介した抗体の結合。
【表1】
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図6】ハプテン中並びに抗体中の適切な位置でのSH官能基の導入によって、抗体及びハプテンが、共有結合を形成することが可能になり、コンジュゲートがもたらされる。
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図7】SDS−PAGE自己蛍光バンドパターン(SDS−PAGEゲルのさらなる染色を伴わない)のスキーム:A:共有結合が、還元又は非還元の両方の条件下で、抗体とハプテン−フルオロフォアコンジュゲートの間に形成されていない場合、遊離ハプテン−フルオロフォアコンジュゲートの分子量での1つの自己蛍光バンドを検出することができる。B:共有結合が、非還元条件下で、抗体とハプテン−フルオロフォアコンジュゲートの間に形成される場合、抗体及びハプテン−フルオロフォアコンジュゲートの組み合わせた分子量での1つの自己蛍光バンドを検出することができる。還元条件下では、抗体とハプテン−フルオロフォアコンジュゲート(ハプテン化合物)の複合体中のジスルフィド架橋が切断され、遊離ハプテン−フルオロフォアコンジュゲートの分子量で、1つの自己蛍光バンドを検出することができる。
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図8】酸化還元活性剤:酸化剤(グルタチオンジスルフィド、GSSG)及び還元剤(ジチオエリスリトール、DTE)の存在におけるハプテン−Cys−蛍光標識コンジュゲート(ハプテン化化合物)を伴うハプテン結合Cys変異抗体のコンジュゲート形成:抗体複合体化及び、定義された位置でのその後の共有結合を、SDS PAGE分析における蛍光シグナルにより検出する。非還元(上画像)及び還元(下画像)SDS−PAGE分析を実施例11に記載する通りに実施した。共有結合抗体連結ハプテンは、非還元条件下で、適切な位置でのより大きなサイズのタンパク質結合シグナルとして検出可能である。これらのシグナルは、還元時にタンパク質から脱離し、還元条件下で小実体として目に見える。左:蛍光画像右:クーマシーブルー染色シリーズ1:52bC変異を伴う抗ジゴキシゲニン抗体シリーズ2:位置52bで野生型残基を伴う抗ジゴキシゲニン抗体(A)3mM DTE及び10mM GSSGを用いた共有結合カップリング;(B)0.3mM DTE及び1mM GSSGを用いた共有結合カップリング;(C)0.03mM DTE及び0.1mM GSSGを用いた共有結合カップリング。
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図9】酸化剤(グルタチオンジスルフィド、GSSG)のみの存在における、しかし、還元剤の非存在における、又は、両方の非存在におけるハプテン−Cys−蛍光標識コンジュゲートを伴うハプテン結合Cys変異抗体の複合体形成:抗体複合体化及び、定義された位置でのその後の共有結合を、SDS PAGE分析における蛍光シグナルにより検出する。非還元(上画像)及び還元(下画像)SDS−PAGE分析を実施例12に記載する通りに実施した。共有結合抗体連結ハプテンは、非還元条件下で、適切な位置でのより大きなサイズのタンパク質結合シグナルとして検出可能である。これらのシグナルは、還元時にタンパク質から脱離し、還元条件下で小実体として目に見える。左:蛍光画像右:クーマシーブルー染色シリーズ1:52bC変異を伴う抗ジゴキシゲニン抗体シリーズ2:位置52bで野生型残基を伴う抗ジゴキシゲニン抗体(A)添加剤なし;(B)1mM GSSGを用いた共有結合カップリング;(C)0.1mM GSSGを用いた共有結合カップリング。
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図10】Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2)の構造。
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図11】DIG−3−cme−eda−Cy5の構造。
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図12】DIG−マレイイミド(maleiimid)−Cy5の構造。
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図16】Ac−PYY(PEG3−Dig)の構造。
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図17】Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)の構造。
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図18】PEG3−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)の構造。
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図24】Ac−PYY(PEG2−Btn)の構造。
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図25】Ac−PYY−PEG3−Cys−β−Ala−Btnの構造。
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図26】Ac−PYY−PEG3−Ser−PEG2−Btnの構造。
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図27】Ac−PYY−PEG3−Cys−PEG2−Btnの構造。
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図28】Ac−PYY(PEG3−Cys−4−Abu−5−Fluo)の構造。
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図29】Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−5−Fluo)の構造。
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図30】Ac−PYY(PEG2−Btn)の生成のためのスキーム。
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図31】Ac−PYY(PEG3−Cys−β−Ala−Btn)の生成のためのスキーム。
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図32】Ac−PYY(PEG3−Cys−4−Abu−Dig)の生成のためのスキーム。
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図33】ビオシチンアミドを伴う複合体中でのマウス抗ビオチン抗体のX線構造。ビオシチンアミドと相互作用するアミノ酸残基を、スティック表示で示す。
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図34-1】非複合体化抗原/ハプテンに比較した、共有結合コンジュゲート及び非共有結合複合体を用いたインビボ血液PK試験の結果;ビオチン−Cy5非共有結合複合体(
図34A)及び共有結合(ジスルフィド架橋)コンジュゲート(
図35B)の、並びに非複合体化ビオチン−Ser−Cy5(アスタリスク)のCy5媒介性蛍光の相対残存蛍光強度(%、実線印)を示す。時刻t=0.08時間での蛍光シグナルを100%に設定した;加えて、マウス血清サンプル中のヒトIgGの相対残量を示す(オープン印);t=0.08時間でのIgG血清濃度(mg/ml)を100%に設定した。
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図34-2】非複合体化抗原/ハプテンに比較した、共有結合コンジュゲート及び非共有結合複合体を用いたインビボ血液PK試験の結果;ビオチン−Cy5非共有結合複合体(
図34A)及び共有結合(ジスルフィド架橋)コンジュゲート(
図35B)の、並びに非複合体化ビオチン−Ser−Cy5(アスタリスク)のCy5媒介性蛍光の相対残存蛍光強度(%、実線印)を示す。時刻t=0.08時間での蛍光シグナルを100%に設定した;加えて、マウス血清サンプル中のヒトIgGの相対残量を示す(オープン印);t=0.08時間でのIgG血清濃度(mg/ml)を100%に設定した。
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図35】マウスの血清中のジゴキシゲニン化PYYポリペプチドの量の決定のウエスタンブロット。
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図36】抗ハプテン抗体を伴うハプテン化合物の親和性駆動型の複合体化の分析。抗体複合体化及び、定義された位置でのその後の共有結合連結を、実施例20に記載する通りに実施された、SDS PAGE分析における蛍光シグナルにより指示する。左:非還元(ゲルの左側)及び還元(ゲルの右側)サンプルを用いた蛍光画像。右:クーマシーブルー染色。1:ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体+ビオチン−Cys−Cy52:ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC+ビオチンCys−Cy53:ヒト化抗ビオチン抗体+ビオチン−Cys−Cy54:ヒト化抗ビオチン抗体VH53C+ビオチン−Cys−Cy5白色矢印は、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCを使用した場合での、有意に高い過剰な(非カップリング)ビオチン−Cys−Cy5をマークする。なぜなら、コンジュゲーション反応は、この場合において親和性駆動されないからである。
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図37】ハプテン媒介部位特異的定方向性共有結合ペイロードカップリングのための位置52bで、追加のシステインを伴うDig抗体結合を形成するために要求されるFab領域内のシステイン位置及びジスルフィドパターン。(A)機能的Fabフラグメントを形成するために要求されるVH及びCH1ドメインにおける、並びにVL及びCLドメインにおけるシステイン及びジスルフィドパターン。(B)ハプテン媒介部位特異的定方向性共有結合ペイロードカップリングのための位置52bでの追加のシステインを伴う機能的Fabフラグメントを形成するために要求されるVH及びCH1ドメインにおける、並びにVL及びCLドメインにおけるシステイン及びジスルフィドパターン。(C&D)ミスフォールドされた非機能的抗体をもたらし得る、VH52bバリアントのVHドメイン内で正しくないジスルフィド結合を形成する潜在能。E)ミスフォールドされた非機能性抗体をもたらし得る、VH52bバリアントのFv領域内での潜在的な正しくないドメイン間ジスルフィド結合についての例。
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図38】ハプテン媒介部位特異的定方向性共有結合ペイロードカップリングのための位置52bで、追加のシステインを伴うDig結合ジスルフィド安定化一本鎖Fvを形成するために要求されるシステイン位置及びジスルフィドパターン。(A)機能的scFvs、dsscFvs、及び52b変位dsscFvsを形成するために要求されるVH及びVLドメインにおけるシステイン。(B)機能的scFvs、dsscFvs、及び52b変位dsscFvsを生成するために形成されなくてはならないジスルフィド結合の正しいパターン。(C)ミスフォールドされた非機能的scFvsをもたらし得る、正しくないジスルフィド結合を形成する潜在能。(D)ミスフォールドされた非機能的dsscFvsをもたらし得る、正しくないジスルフィド結合を形成する潜在能。(E)ミスフォールドされた非機能的52b変位dsscFvsをもたらし得る、正しくないジスルフィド結合を形成する潜在能。
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図39】共有結合的にカップリングしたペイロードのための送達媒体としてのLey−Dig二重特異性抗体誘導体の組成。
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図40】共有結合ペイロードの標的化送達のための二重特異性抗ハプテン抗体誘導体の発現及び精製。(A)ウエスタンブロット分析のために、細胞培養上清をSDS PAGE(NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gel(1.0mM×12ウェル)(Invitrogen;カタログNP0322)に供し、タンパク質を、その後、Immobilon Transfer Membranes(Immobilon-P)(Millipore;カタログIPVH07850)、PVDF(孔径0.45μm)に移した。抗体誘導体を、ヤギにおいて産生されたAnti-Human Kappa Light Chain-Alkaline Phosphatase抗体(親和性精製)、Sigma(カタログ番号A3813)(1:1000希釈)、及びヤギにおいて産生されたAnti-Human IgG(Fc特異的)Alkaline Phosphatase抗体、Sigma(カタログ番号A9544)(1:1000希釈)により検出した。基質BCIP/NBT Blue Liquid Substrate(Sigmaカタログ番号B3804)をウエスタンブロットの展開のために適用した。レーン1−分子量マーカー;レーン2&3 − 未改変重鎖を伴う対照抗体;レーン4−伸長H鎖を伴うLeY−Dig(52bC)二重特異性抗体。(B)SDS−PAGE分析(NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gel[Invitrogen])及び、クマシーブリリアントブルーを用いたその後の染色によって、タンパク質調製物の純度が示され、それらの計算された分子量に対応する見掛け上の分子サイズを伴うIgGに関連したポリペプチド鎖が可視化される。レーン1−分子量マーカー;レーン2−還元伸長H鎖を伴うLeY−Dig(52bC)二重特異性抗体;レーン3−非還元伸長重鎖を伴うLeY−Dig(52bC)二重特異性抗体;(C)サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)によって、プロテインA精製後のLeY−Dig(52bC)二重特異性抗体誘導体のタンパク質調製物中の均質性及び凝集体の欠如が実証される。
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図41】非複合体化ハプテン化合物Dig−Cy5に比較した、共有結合コンジュゲート及び非共有結合複合体を用いたインビボ血中薬物動態試験の結果;Dig−Cy5非共有結合複合体(上パネル)Dig−Cys−Cy5共有結合(ジスルフィド架橋)複合体(下パネル)の、並びに非複合体化Dig−Cy5(灰色の三角)の相対残存蛍光強度(%)を示す;時刻t=0.08時間での蛍光シグナルを100%に設定した;加えて、マウス血清サンプル中のヒトIgGの相対残量を示す;t=0.08時間でのIgG血清濃度(mg/ml)を100%に設定した。
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図42】Cy5蛍光のインビボでの薬物動態を、ビオチン−Cy5又はビオチン−Cys−Cy5をそれぞれ含む非共有結合複合体の、又は共有結合(ジスルフィド架橋)コンジュゲートの、或いは非複合体化ビオチン−Cy5の注射後、非侵襲的な眼イメージングにより決定した;実線ダイヤモンド:ビオチン−Cy5;実線四角:ビオチン−Cy5抗ビオチン抗体複合体;三角形:ビオチン−Cy5抗ビオチン抗体コンジュゲート。
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図43-1】a)テオフィリン−Cys−Cy5の組成、構造、及び分子量;b)サイズ排除クロマトグラフィーによって、精製テオフィリン結合抗体バリアントの純度及び均質性が実証される;ピーク#2は精製産物を示し、ピーク#1の欠如は、そのような調製物が凝集体を含まないことを示す。c)テオフィリン結合抗体とテオフィリン−Cys−Cy5の間での共有結合複合体の形成(非還元(左レーン)及び還元(右レーン)SDS PAGEにより実証される通り);Cy5は、テオフィリン−Cys−Cy5及びCys変異抗体を含むサンプル中だけで、非還元条件下で、H鎖にカップリングされて現れるが、これらの共有結合コンジュゲートは、還元時(右レーン)に崩壊する;レーン1:分子量マーカー;2−4非還元、2:抗テオフィリン抗体(Cys変異を伴わない)+テオフィリン−Cys−Cy5(複合体);3:抗テオフィリン抗体cys_55+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート);4:抗テオフィリン抗体cys_54+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート);5−7還元、5:抗テオフィリン抗体(Cys変異を伴わない)+テオフィリン−Cys−Cy5(複合体);6:抗テオフィリン抗体cys_55+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート);7:抗テオフィリン抗体cys_54+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート)。
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図43-2】a)テオフィリン−Cys−Cy5の組成、構造、及び分子量;b)サイズ排除クロマトグラフィーによって、精製テオフィリン結合抗体バリアントの純度及び均質性が実証される;ピーク#2は精製産物を示し、ピーク#1の欠如は、そのような調製物が凝集体を含まないことを示す。c)テオフィリン結合抗体とテオフィリン−Cys−Cy5の間での共有結合複合体の形成(非還元(左レーン)及び還元(右レーン)SDS PAGEにより実証される通り);Cy5は、テオフィリン−Cys−Cy5及びCys変異抗体を含むサンプル中だけで、非還元条件下で、H鎖にカップリングされて現れるが、これらの共有結合コンジュゲートは、還元時(右レーン)に崩壊する;レーン1:分子量マーカー;2−4非還元、2:抗テオフィリン抗体(Cys変異を伴わない)+テオフィリン−Cys−Cy5(複合体);3:抗テオフィリン抗体cys_55+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート);4:抗テオフィリン抗体cys_54+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート);5−7還元、5:抗テオフィリン抗体(Cys変異を伴わない)+テオフィリン−Cys−Cy5(複合体);6:抗テオフィリン抗体cys_55+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート);7:抗テオフィリン抗体cys_54+テオフィリン−Cys−Cy5(コンジュゲート)。
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図44】ビオチン結合抗体とビオチン−Cys−Cy5の間での共有結合複合体の形成は、非還元及び還元SDS PAGEにより実証される;カップリング反応は、37℃で1時間にわたり、マウス血清中で実施した。Cy5は、ビオチン−Cys−Cy5及びCys変異抗体を含むサンプル中だけで、非還元条件下で、H鎖にカップリングされて現れる;これらの共有結合コンジュゲートは、還元時(右レーン)に崩壊する;レーン1:分子量マーカー;2−3非還元、2:抗ビオチン抗体(Cys変異を伴わない)+ビオチン−Cys−Cy5(複合体);3:抗ビオチン抗体−Cys+ビオチン−Cys−Cy5(コンジュゲート);4−5還元、5:抗ビオチン抗体(Cys変異を伴わない)+ビオチン−Cys−Cy5(複合体);6:抗ビオチン抗体−Cys+ビオチン−Cys−Cy5(コンジュゲート)。
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図45】Cy5蛍光のインビボでの薬物動態を、ビオチン−Cy5又はビオチン−Cys−Cy5をそれぞれ含む非共有結合複合体の、又は共有結合(ジスルフィド架橋)コンジュゲートの、或いは非複合体化ビオチン−Cy5の注射後、非侵襲的な眼イメージングにより決定した;実線ダイヤモンド:ビオチン−Cy5;実線四角:ビオチン−Cy5抗ビオチン抗体複合体;三角形:ビオチン−Cy5抗ビオチン抗体コンジュゲート。
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図46】マウス抗ビオチン抗体Fabフラグメントのタンパク質構造を、ビオシチンアミドを伴う複合体中で測定した:複合体化ハプテンは、アミノ酸の負荷電クラスターに近接して位置付けられる;ビオチン(‐ハプテンとして‐そのカルボキシル基でのペイロードカップリングのために誘導体化されている)は、良好な有効性を伴い結合する。なぜなら、この位置で電荷反発がないからである(COOH基の欠如による);対照的に、遊離の(正常な)ビオチンは、抗体に効率的に結合しない。なぜなら、そのカルボキシル基は、この負荷電クラスターに近接し得るが、故に、反発するからである。
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図47】血液脳関門シャトルモジュール組成物のスキーム。
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図48】実施例27において産生された血液脳関門シャトルモジュールのSECプロファイル及びSDS−PAGE。
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図49】TfR発現BBB由来細胞株としてのhCMEC/D3細胞及び蛍光ペイロードとしてのDig−Cy5を使用したFACS解析の結果。
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図50】ハプテン結合二重特異性抗体の血液脳関門−シャトルモジュールの内皮細胞からのトランスサイトーシス及び放出; A:抗CD33−dig抗体トランスウェルアッセイ、huFc ELISA;B:抗TfR1抗体トランスウェルアッセイ、huFc ELISA;C:抗TfR1抗体Digトランスウェルアッセイ、huFc ELISA; D:抗TfR2抗体トランスウェルアッセイ、huFc ELISA; E:抗TfR2抗体Digトランスウェルアッセイ、huFc ELISA。
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図51-1】A:二重特異性抗体−ハプテン化ペイロード非共有結合複合体の組成及び定量化;B:TfRに対する、低下した親和性を伴う二重特異性抗体を使用した、ハプテン化ペイロードの内皮細胞からの:トランスサイトーシス及び放出(A:抗CD33−Dig + Dig−DNA トランスウェルアッセイ、qPCR;B:抗CD33−Bio + Bio−DNA トランスウェルアッセイ、qPCR、C:抗TfR2−Dig + Dig−DNA トランスウェルアッセイ、qPCR、D:抗TfR2−Bio + Bio−DNAトランスウェルアッセイ、qPCR)。
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図51-2】A:二重特異性抗体−ハプテン化ペイロード非共有結合複合体の組成及び定量化;B:TfRに対する、低下した親和性を伴う二重特異性抗体を使用した、ハプテン化ペイロードの内皮細胞からの:トランスサイトーシス及び放出(A:抗CD33−Dig + Dig−DNA トランスウェルアッセイ、qPCR;B:抗CD33−Bio + Bio−DNA トランスウェルアッセイ、qPCR、C:抗TfR2−Dig + Dig−DNA トランスウェルアッセイ、qPCR、D:抗TfR2−Bio + Bio−DNAトランスウェルアッセイ、qPCR)。
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図52】TfRに対する高親和性を伴う非放出血液脳関門シャトルモジュールを適用した、ハプテン化ペイロードの内皮細胞からのトランスサイトーシス及び放出; A:抗TrF1−Dig+Dig−DNAトランスウェルアッセイ、qPCR、B:抗TfR1抗体−Bio+Bio−DNAトランスウェルアッセイ、qPCR)。
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図53】TfRに対する高親和性を伴う非放出血液脳関門シャトルモジュールからのハプテン化ペイロードの結合、取り込み、及び細胞内分離;示すのは、37℃での3時間のインキュベーションに続く、hCMEC/D3細胞における二重特異性抗体複合化ハプテン蛍光ペイロードの細胞内分離である。DIG−DNA−CY5又はBio−DNA−Cy5(濃い灰色)は、内在化した抗ジゴキシゲニン又は抗ビオチン結合二重特異性抗体(中灰色)と重複しない別個の細胞内小胞中に現れる。
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図54】2.5モル過剰のヘリカーモチーフアミノ酸配列を含む化合物形態、共有結合複合体0156を使用した、ヘリカーモチーフアミノ酸配列のシステインバリアント2を伴う抗体0155のカップリングのSDS PAGEゲル;1=ヘリカーモチーフアミノ酸配列のシステインバリアント2;2=抗体0019;3 =抗体0155。
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図55】ヘリカーモチーフアミノ酸配列のシステインバリアント1を伴う抗体0157のカップリングのSDS PAGEゲル;1=ヘリカーモチーフのアミノ酸配列のシステインバリアント1(酸化);2=対照カップリング(酸化);3=共有結合コンジュゲート(酸化);4=分子量マーカー;5=共有結合コンジュゲート(還元);6=対照カップリング(還元);7=ヘリカーモチーフアミノ酸配列のシステインバリアント1(還元)。
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図56】抗体0155(シュードモナス外毒素分子LR8Mを含み、配列番号28の欠失したC末端リジン残基及びその共有結合コンジュゲートを伴う、ヘリカーモチーフアミノ酸配列のシステインバリアント1)のSECクロマトグラム。
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図57】非還元サンプルについてのSDS-CE、Caliperによるコンジュゲーション効率の分析。
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図58】A:SEC−MALLS分析を実施し、BrdU標識DNA並びに遊離二重特異性抗体及び遊離BRDU−DNAを伴う抗TfR/BRDU二重特異性抗体の複合体を同定し、特徴付けた。複合体は、244.9kDaのMWでカラムから溶出し、遊離二重特異性抗体は、215.4kDaのMWで検出され、遊離BRDU−DNAは、16.4kDaのMWで検出される。B:SEC−MALLS分析を実施し、BrdU標識DNA並びに遊離二重特異性抗体及び遊離BRDU−DNAを伴う抗TfR/BRDU二重特異性抗体の複合体を同定し、特徴付けた。複合体は、6.8nmの流体力学的半径を示すのに対し、遊離二重特異性抗体は、6.2nmの流体力学半径を示す。
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図59-1】A:SEC−MALLS分析を実施し、ビオチン標識抗pTau抗体並びに遊離二重特異性抗体及び遊離ビオチン標識抗pTau抗体を伴う抗TfR/ビオチン二重特異性抗体の複合体を同定し、特徴付けた。複合体は、8.0nmの流体力学的半径を示すのに対し、遊離二重特異性抗体は、6.2nmの流体力学半径を示し、遊離ビオチン標識抗pTau抗体は、5.5nmの流体力学半径を示す。B:SEC−MALLS分析を実施し、ビオチン標識抗pTau抗体並びに遊離二重特異性抗体及び遊離ビオチン標識抗pTau抗体を伴う抗TfR/ビオチン二重特異性抗体の複合体を同定し、特徴付けた。複合体は、501kDaのMWでカラムから溶出し、遊離二重特異性抗体は、205kDaのMWで検出され、遊離ビオチン標識抗pTau抗体は、150kDaのMWで検出される。C:複合体は、ハプテン及び抗ハプテン抗体の誤った組み合わせが使用された場合、形成されない。
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図59-2】A:SEC−MALLS分析を実施し、ビオチン標識抗pTau抗体並びに遊離二重特異性抗体及び遊離ビオチン標識抗pTau抗体を伴う抗TfR/ビオチン二重特異性抗体の複合体を同定し、特徴付けた。複合体は、8.0nmの流体力学的半径を示すのに対し、遊離二重特異性抗体は、6.2nmの流体力学半径を示し、遊離ビオチン標識抗pTau抗体は、5.5nmの流体力学半径を示す。B:SEC−MALLS分析を実施し、ビオチン標識抗pTau抗体並びに遊離二重特異性抗体及び遊離ビオチン標識抗pTau抗体を伴う抗TfR/ビオチン二重特異性抗体の複合体を同定し、特徴付けた。複合体は、501kDaのMWでカラムから溶出し、遊離二重特異性抗体は、205kDaのMWで検出され、遊離ビオチン標識抗pTau抗体は、150kDaのMWで検出される。C:複合体は、ハプテン及び抗ハプテン抗体の誤った組み合わせが使用された場合、形成されない。
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図60】ビオチン標識抗pTau抗体及び抗CD33/ビオチン二重特異性抗体(左上パネル)及び遊離ビオチン標識抗pTau抗体(右上パネル)の複合体は、効果的にエンドサイトーシスされず(細胞溶解物、線)、(3.8/mlローディング)側底(左列、明るい灰色)又は頂端(右列、黒色)コンパートメント中に輸送されない。抗TfR/ビオチン二重特異性抗体1(左下パネル)又は抗TfR/ビオチン二重特異性抗体2(右下パネル)のいずれかを用いてビオチン標識抗pTau抗体を複合体化することによって、側底(左列、明るい灰色)コンパートメント中へのビオチン標識抗pTau抗体の効果的なエンドサイトーシス(細胞溶解物、線)及びその後の輸送、並びに頂端(右列、黒色)コンパートメント中への戻りが媒介される(3.8μg/mlローディング)。
【
図61】ハプテン化ペイロードの、及びハプテン結合二重特異性抗体の血液脳関門シャトルモジュールの内皮細胞からのトランスサイトーシス及び放出のトランスウェルアッセイ;TfR(TfR2)に対して低下した親和性を伴う二重特異性抗体及び非結合二重特異性抗体(抗CD33)を使用、並びに、34merオリゴヌクレオチドペイロード(オリゴヌクレオチドS1)を使用。A、B、C、D:DNAペイロードのqPCR定量化E、F、G、H: 血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)のELISA定量化A、E:抗TfR2−Bio + Bio−DNAオリゴヌクレオチドS1B、F:抗CD33−Bio + Bio−DNAオリゴヌクレオチドS1C、G:抗TfR2−Dig + Dig−DNAオリゴヌクレオチドS1D、H:抗CD33−Dig + Dig−DNAオリゴヌクレオチドS1
【
図62】ハプテン化ペイロードの、及びハプテン結合二重特異性抗体の血液脳関門シャトルモジュールの内皮細胞からのトランスサイトーシス及び放出のトランスウェルアッセイ;TfR(TfR2)に対して低下した親和性を伴う二重特異性抗体及び非結合二重特異性抗体(抗CD33)を使用、並びに、28merオリゴヌクレオチドペイロード(オリゴヌクレオチドS2)を使用。A、B、C、D、H:オリゴヌクレオチドペイロードのqPCR定量化E、F、G:血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)のELISA定量化A、E:抗TfR2−Bio + Bio−DNAオリゴヌクレオチドS2B、F:抗CD33−Bio + Bio−DNAオリゴヌクレオチドS2C、G:抗TfR2−Dig + Dig−DNAオリゴヌクレオチドS2D:抗CD33−Dig + Dig−DNAオリゴヌクレオチドS2H:Dig−DNAオリゴヌクレオチドS2ペイロードだけ。
【
図63】ハプテン化ペイロードの、及びハプテン結合二重特異性抗体の血液脳関門シャトルモジュールの内皮細胞からのトランスサイトーシス及び放出のトランスウェルアッセイ;TfR(TfR1)に対して高親和性を伴う二重特異性抗体を使用、及び、34merオリゴヌクレオチドペイロード(オリゴヌクレオチドS1)又は28merオリゴヌクレオチドペイロード(オリゴヌクレオチドS2)を使用。A、B、C、D:DNAペイロードのqPCR定量化E、F、G、H:血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)のELISA定量化A、E:抗TfR1−Bio + Bio−DNAオリゴヌクレオチドS1B、F:抗TfR1−Dig + Dig−DNAオリゴヌクレオチドS1C、G:抗TfR1−Bio + Bio−DNAオリゴヌクレオチドS2D、H:抗TfR1−Dig + Dig−DNAオリゴヌクレオチドS2
【0186】
[発明の詳細な説明]
I.定義
本明細書において使用する通り、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置が、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)において記載されるKabatナンバリングシステムに従って番号付けされており、本明細書において「Kabatに従ったナンバリング」として言及される。具体的には、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のKabatナンバリングシステム(ページ647−660を参照のこと)は、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLのために使用され、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(ページ661−723を参照のこと)は、定常重鎖ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3)のために使用される。
【0187】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下の通りに定義されるヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得る、或いは、それは、アミノ酸配列変化を含み得る。一部の実施形態において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、或いは2以下である。一部の実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列において同一である。
【0188】
用語「アミノ酸」は、天然に生じる、即ち、直接的に、若しくは前駆体の形態で、核酸によりコードされ得るか、又は非天然に生じる、カルボキシαアミノ酸の群を意味する。個々の自然に生じるアミノ酸は、3つのヌクレオチド、いわゆる、コドン又は塩基トリプレットからなる核酸によりコードされる。各々のアミノ酸は、少なくとも1つのコドンによりコードされる。これは、「遺伝コードの縮重」として公知である。本願内で使用する用語「アミノ酸」は、天然に生じるカルボキシαアミノ酸を意味し、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、及びバリン(Val、V)を含む。非天然に生じるアミノ酸の例は、Aad(アルファ−アミノアジピン酸)、Abu(アミノ酪酸)、Ach(アルファ‐アミノシクロヘキサン‐カルボン酸)、Acp(アルファ−アミノシクロペンタン‐カルボン酸)、Acpc(1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸)、Aib(アルファ−アミノイソ酪酸)、Aic(2−アミノインダン−2−カルボン酸;また、2−2−Aicと呼ばれる)、1−1−Aic(1−アミノインダン−1−カルボン酸)、(2−アミノインダン−2−カルボン酸)、アリルグリシン(AllylGly)、アロイソロイシン(allo−Ile)、Asu(アルファ−アミノスベリン酸、2−アミノオクタン酸(Aminooctanedioc acid))、Bip(4−フェニル−フェニルアラニン−カルボン酸)、BnHP((2S、4R)−4−ヒドロキシプロリン)、Cha(ベータ−シクロヘキシルアラニン)、Cit(シトルリン)、シクロヘキシルグリシン(Chg)、シクロペンチルアラニン(Cyclopentylalanine)、ベータ−シクロプロピルアラニン、Dab(1,4−ジアミノ酪酸)、Dap(1,3−ジアミノプロピオン酸)、p(3,3−ジフェニルアラニンカルボン酸)、3,3−ジフェニルアラニン、ジ−n−プロピルグリシン(Dpg)、2−フリルアラニン、ホモシクロヘキシルアラニン(HoCha)、ホモシトルリン(HoCit)、ホモシクロロイシン、ホモロイシン(HoLeu)、ホモアルギニン(HoArg)、ホモセリン(HoSer)、ヒドロキシプロリン、Lys(Ac)、(1)Nal(1−ナフチルアラニン)、(2)Nal(2−ナフチルアラニン)、4−MeO−Apc(1−アミノ−4−(4−メトキシフェニル) − シクロヘキサン−1−カルボン酸)、ノル−ロイシン(Nle)、Nva(ノルバリン)、オマチン(Omathine)、3−Pal(アルファ−アミノ−3−ピリジルアラニン−カルボン酸)、4−Pal(アルファ−アミノ−4−ピリジルアラニン−カルボン酸)、3,4,5,F3−Phe(3,4,5−トリフルオロ−フェニルアラニン)、2,3,4,5,6,F5−Phe(2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−フェニルアラニン)、Pqa(4−オキソ−6−(1−ピペラジニル)−3(4H)−キナゾリン−酢酸(CAS 889958−08−1))、ピリジルアラニン、キノリルアラニン(Quinolylalanine)、サルコシン(Sar)、チアゾリルアラニン、チエニルアラニン、Tic(アルファ−アミノ−1,2,3,4テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸)、Tic(OH)、Tle(タートブチルグリシン)、及びTyr(Me)を含むが、これらに限定されない。
【0189】
用語「アミノ酸配列バリアント」は、天然/親/野生型アミノ酸配列とある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。通常、アミノ酸配列バリアントは、天然/親/野生型アミノ酸配列と少なくとも約70%の配列同一性を持つ。一実施形態において、バリアントは、天然/親/野生型アミノ酸配列と約80%以上の配列同一性を有する。一実施形態において、バリアントは、天然/親/野生型アミノ酸配列と約90%以上の配列同一性を有する。一実施形態において、バリアントは、天然/親/野生型アミノ酸配列と約95%以上の配列同一性を有する。一実施形態において、バリアントは、天然/親/野生型アミノ酸配列と約98%以上の配列同一性を有する。アミノ酸配列バリアントは、天然/親/野生型アミノ酸配列のアミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失、及び/又は挿入を持つ。アミノ酸は、従来の名称、1文字及び3文字コードにより指定することができる。
【0190】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味において使用され、それらが、所望の抗原結合活性及び特異性を示す限り、種々の抗体構造(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含むが、これらに限定されない)を包含する。
【0191】
用語「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体も特異的に結合する抗原に特異的に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を意味する。抗体フラグメントの例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子(例、scFv)、一本鎖Fabフラグメント(scFab)、単一重鎖抗体(VHH)、及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。
【0192】
抗体のパパイン消化によって、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント(各々が、単一の抗原結合部位を伴う)、及び残りの「Fc」フラグメント(その名称は、容易に結晶化するその能力を反映する)が産生される。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することが可能であるF(ab’)
2フラグメントがもたらされる。
【0193】
Fabフラグメントは、また、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含む、重鎖CHlドメインのカルボキシル末端での数個の残基の付加により、Fabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは、Fab’についての本明細書における命名であり、それにおいて、定常ドメインのシステイン残基は、少なくとも1つの遊離チオール基を担持する。F(ab’)
2抗体フラグメントは、本来は、その間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも公知である。
【0194】
「Fv」は完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、堅固な非共有結合的会合における1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各々の可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用し、VH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義する。集合的に、6つの超可変領域が、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は、抗原について特異的なわずか3つの超可変領域を含むFvの半分)でさえ、抗原を認識し、それに結合する能力を有するが、全体的な結合部位よりも低い親和性である。
【0195】
用語「ビオチン」、短い「BI」は、5−[(3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]ペンタン酸を意味する。ビオチンは、また、ビタミンH又は補酵素Rとして公知である。
【0196】
用語「ビオチン化ペイロード」は、ビオチン部分、場合により、リンカー及びペイロードを含むコンジュゲーションされた実体を意味する。リンカーは、任意のリンカー(例えばペプチドリンカー又は化学的リンカーなど)であり得る。
【0197】
用語「二重特異性抗体」は、2つの異なる(抗原/ハプテン)結合特異性を有する抗体を意味する。一実施形態において、本明細書において報告する二重特異性抗体は、2つの異なる抗原(即ち、ハプテン及び非ハプテン抗原)について特異的である。
【0198】
用語「ブロモデオキシウリジン」、短い「BrdU」は、5−ブロモ−2’−デソキシウリジン(desoxyuridine)を意味する。ブロモデオキシウリジンは、また、ブロクスウリジン(broxuridine)、BudR、BrdUrdとして公知である。
【0199】
用語「ブロモデオキシウリジン化ペイロード」は、ブロモデオキシウリジン部分、場合により、リンカー及びペイロードを含むコンジュゲーションされた実体を意味する。リンカーは、任意のリンカー(例えばペプチドリンカー又は化学的リンカーなど)であり得る。
【0200】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の供給源又は種に由来している抗体を指し、重鎖及び/又は軽鎖の残り部分は、異なる供給源又は種に由来する。
【0201】
抗体の「クラス」は、その重鎖により持たれる定常ドメイン又は定常領域の型を指す。抗体の5つの主要なクラス(IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)、及びこれらのいくつかを、サブクラス(アイソタイプ)(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)に更に分けてもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0202】
用語「細胞傷害性薬剤」は、本明細書において使用する通り、細胞機能を阻害若しくは防止する、及び/又は細胞死若しくは破壊を起こす物質を指す。細胞傷害性薬剤は、特定のペイロードである。細胞傷害性薬剤は、放射性同位体(例、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法薬剤又は薬物(例、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、又は他の挿入剤);成長阻害剤;酵素及びそれらのフラグメント、例えば核酸分解酵素など;抗生物質;毒素、例えば細菌、真菌、植物、又は動物起源の小分子毒素又は酵素活性毒素(それらのフラグメント及び/又はバリアントを含む);及び以下に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌薬剤を含むが、これらに限定されない。
【0203】
用語「ジゴキシゲニン」、短い「DIG」は、3−[(3S,5R,8R,9S,10S,12R,13S,14S,17R)−3,12,14−トリヒドロキシ−10,13−ジメチル−1,2,3,4,5,6,7,8,9,11,12,15,16,17−テトラデカヒドロ−シクロペンタ[a]−フェナントレン−17−イル]−2H−フラン−5−オン (CAS番号1672−46−4)を意味する。ジゴキシゲニン(DIG)は、植物ジギタリス・パープレア(Digitalis purpurea)、ジギタリス・オリエンタリス(Digitalis orientalis)、及びジギタリス・ラナタ(Digitalis lanata)(フォックスグローブス)の花及び葉においてもっぱら見出されるステロイドである(Polya, G., Biochemical targets of plant bioactive compounds, CRC Press, New York (2003) p. 847)。
【0204】
用語「ジゴキシゲニン化ペイロード」は、ジゴキシゲニン部分、場合により、リンカー及びペイロードを含むコンジュゲーションされた実体を意味する。リンカーは、任意のリンカー(例えばペプチドリンカー又は化学的リンカーなど)であり得る。
【0205】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因し得る、それらの生物学的活性を意味し、それらは、抗体クラスに伴って変動する。抗体エフェクター機能の例は以下を含む:C1q結合及び補体依存的細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存的細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例、B細胞受容体)の下方調節;及びB細胞活性化。エフェクター機能を伴わないFc領域(=エフェクターレスFc領域)は、C1q又はFcγ受容体へのFc領域の結合を消失させる、アミノ酸配列における変異を含む。
【0206】
薬剤(例、医薬的製剤)の用語「効果的な量」は、所望の治療的又は予防的結果を達成するために必要な投与量で、及び期間にわたり効果的である量を意味する。
【0207】
本明細書における用語「Fc領域」を使用し、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義する。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端に伸長する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在し得る、又はしないことがある。本明細書において他に特定しない場合、Fc領域又は定常領域中のアミノ酸残基のナンバリングは、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従い、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242において記載される通りである。
【0208】
用語「フルオレセイン」、短い「FLUO」は、6−ヒドロキシ−9−(2−カルボキシフェニル)−(3H)−キサンテン−3−オン、或いは、2−(6−ヒドロキシ−3−オキソ−(3H)−キサンテン(xanthen)−9−イル)−安息香酸を意味する。フルオレセインは、また、レゾルシノールフタレイン、C.I.45350、溶媒イエロー94、D & Cイエローno.7、アンギオフルオル(angiofluor)、ジャパンイエロー201、又はソープイエローとして公知である。
【0209】
用語「フルオレセイン化ペイロード」は、フルオレセイン部分、場合により、リンカー及びペイロードを含むコンジュゲーションされた実体を意味する。リンカーは、任意のリンカー(例えばペプチドリンカー又は化学的リンカーなど)であり得る。
【0210】
用語「フレームワーク」、短い「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の重鎖及び軽鎖可変ドメインのアミノ酸残基を意味する。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメインからなる:FR1、FR2、FR3、及びFR4。したがって、HVR配列及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)において、以下の配列中で現れる:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
【0211】
用語「人工システイン残基」は、(親)抗体又は(親)ポリペプチド中に操作されたシステインアミノ酸残基を意味し、それらは、チオール官能基(SH)を有し、それらは、分子内ジスルフィド架橋として対になっていない。それにもかかわらず、人工システイン残基は、分子間ジスルフィド架橋として(例、グルタチオンを用いて)対になることができる。
【0212】
用語「完全長抗体」は、天然の抗体構造に実質的に類似する構造を有する、又は本明細書において定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体を意味する。天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。NからC末端へ、各々の重鎖は、可変領域(VH)(可変重ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる)を有しており、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、NからC末端へ、各々の軽鎖は、可変領域(VL)(可変軽ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる)を有しており、定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの型(カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる)の1つに割り当てられ得る。
【0213】
「完全長抗体」は、VL及びVHドメイン、並びに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む抗体である。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例、ヒト天然配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列バリアントであり得る。完全長抗体は、抗体のFc定常領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因する、それらの生物学的活性を指す、1つ又は複数の「エフェクター機能」を有し得る。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合;補体依存的細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存的細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;並びに細胞表面受容体(例えばB細胞受容体及びBCRなど)の下方調節を含む。
【0214】
用語「ハプテン」は、大きな担体(例えばタンパク質など)に付着された場合にだけ、免疫応答を誘発することができる小分子を意味する。例示的なハプテンは、アニリン、o、m、及びpアミノ安息香酸、キノン、ヒスタミン−スクシニル−グリシン(HSG)、ヒドララジン、ハロタン、インジウムDTPA、フルオレセイン、ビオチン、ジゴキシゲニン、テオフィリン、ブロモデオキシウリジン、並びにジニトロフェノールである。一実施形態において、ハプテンは、ビオチン又はジゴキシゲニン又はテオフィリン又はフルオレセイン又はブロモデオキシウリジンである。
【0215】
用語「ハプテン化ペイロード」は、ペイロードに(共有結合的に)コンジュゲーションされたハプテンを意味する。活性化ハプテン誘導体は、そのようなコンジュゲートの形成のための出発材料として使用することができる。一実施形態において、ハプテンは、リンカーを介して(一実施形態において、その3ヒドロキシ基を介して)ペイロードにコンジュゲーションされる。一実施形態において、リンカーは、a)1つ又は複数の(一実施形態において、3から6の)メチレン−カルボキシ−メチル基(−CH
2−C(O)−)、及び/又はb)1から10の(一実施形態において、1から5の)アミノ酸残基(一実施形態において、グリシン、セリン、グルタミン酸、βアラニン、γアミノ酪酸、εアミノカプロン酸、又はリジンより選択される)、及び/又はc)構造式NH
2−[(CH
2)nO]xCH
2−CH
2−COOH(式中、nは2又は3であり、xは1から10であり、一実施形態において、1から7である)を有する1つ又は複数の(一実施形態において、1又は2の)化合物を含む。最後のエレメントは、式−NH−[(CH
2)nO]xCH
2−CH
2−C(O)−のリンカー(部分)を(少なくとも部分的に)もたらす。そのような化合物の1つの例は、例えば、12アミノ4,7,10トリオキサドデカン酸(TEG(トリエチレン)リンカーをもたらす)である。一実施形態において、リンカーは、マレイミド基を更に含む。リンカーは、安定化及び可溶化効果を有する。なぜなら、それは電荷を含む、又は/及び、水素架橋を形成することができるからである。また、それは、ハプテン化ペイロードへの抗ハプテン抗体の結合を立体的に促進することができる。一実施形態において、リンカーは、ペイロード(一実施形態において、ポリペプチド)のアミノ酸の側鎖にコンジュゲーションされている(例、アミノ基又はチオール基を介してリジン又はシステイン側鎖にコンジュゲーションされている)。一実施形態において、リンカーは、ペイロード(一実施形態において、ポリペプチド)のアミノ末端又はカルボキシ末端にコンジュゲーションされている。ペイロードへのリンカーのコンジュゲーション位置は、典型的には、リンカーへのコンジュゲーションが、ペイロードの生物学的活性に影響しない領域中になるように選ばれる。したがって、リンカーの付着位置は、ペイロードの性質及びペイロードの生物学的活性に関与している関連構造エレメントに依存する。ハプテンが付着しているペイロードの生物学的活性は、インビトロアッセイにおいて、コンジュゲーションの前後に試験することができる。
【0216】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)を指す。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、それらは、継代の数にかかわらず、一次形質転換細胞及びそれらに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含量において完全に同一ではないことがあり、しかし、変異を含み得る。本来は形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物学的活性を有する変異子孫が、本明細書において含まれる。
【0217】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞により産生される、又は、ヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のそれに対応するアミノ酸配列を持つものである。ヒト抗体のこの定義では、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が除外される。
【0218】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全て又は実質的に全てを含み、それにおいて、HVR(例、CDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体の「ヒト化形態」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0219】
用語「超可変領域」又は「HVR」は、本明細書において使用する通り、配列(「相補性決定領域」又は「CDR」)中で超可変である、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触部」)を含む、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般的に、抗体は6つのHVRを含む;VH中の3つ(H1、H2、H3)及びVL中の3つ(L1、L2、L3)。
【0220】
本明細書におけるHVRは、以下を含む:
(a)アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)、及び96−101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917);
(b)アミノ酸残基24−34(L1)、50−56(L2)、89−97(L3)、31−35b(H1)、50−65(H2)、及び95−102(H3)で生じるCDR(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242);
(c)アミノ酸残基27c−36(L1)、46−55(L2)、89−96(L3)、30−35b(H1)、47−58(H2)、及び93−101(H3)で生じる抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));並びに
(d)HVRアミノ酸残基46−56(L2)、47−56(L2)、48−56(L2)、49−56(L2)、26−35(H1)、26−35b(H1)、49−65(H2)、93−102(H3)、及び94−102(H3)を含む(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ。
【0221】
「個体」又は「被験者」は哺乳動物である。哺乳動物は、家畜(例、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサルなど)、ウサギ、及び齧歯類(例、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、個体又は被験者はヒトである。
【0222】
「単離」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。一部の実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動(例、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例、イオン交換又は逆相HPLC)により決定される通り、95%を上回る、又は99%の純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman, S. et al., J. Chrom. B 848 (2007) 79-87を参照のこと。
【0223】
「単離」核酸は、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸は、通常、核酸分子を含む細胞中に含まれる核酸分子を含むが、しかし、核酸分子は、染色体外に、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在している。
【0224】
本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を含む個々の抗体は、同一であり、及び/又は可能なバリアント抗体(例、天然に生じる変異を含む、又は、モノクローナル抗体調製の産生の間に生じる。そのようなバリアントは、一般的に、少量で存在する)を除き、同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた、異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。このように、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られるとして、抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要求するとして解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、種々の技術(ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ方法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は部分を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない)により作製され得る。モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的な方法が、本明細書において記載されている。
【0225】
用語「単一特異性抗体」は、各々が、同じ結合特異性を有する、即ち、同じ抗原又はハプテンに結合する、1つ又は複数の結合部位を有する抗体を意味する。
【0226】
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例、細胞傷害性部分)又は放射標識にコンジュゲーションされていない抗体を指す。ネイキッド抗体は、医薬的製剤中に存在し得る。
【0227】
用語「添付文書」を使用し、治療的産物の市販パッケージ中に習慣的に含まれる説明書を指し、それには、そのような治療的産物の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、併用治療、禁忌、及び/又は警告に関する情報が含まれている。
【0228】
用語「ペイロード」は、ハプテンにコンジュゲーションすることができる、任意の分子又は分子の組み合わせを意味する。用語「ペイロード」は、さらに、その生物学的活性が、細胞又は組織(中)に送達及び/又は局在化されることが望まれる部分を意味する。ペイロードは、標識、化学療法薬剤、抗血管新生剤、細胞毒(例、シュードモナス外毒素、リシン、アブリン、ジフテリア毒素など)、サイトカイン、プロドラッグ、酵素、成長因子、転写因子、薬物、放射性核種、リガンド、抗体又はそれらのフラグメント、リポソーム、ナノ粒子、ウイルス粒子、サイトカインなどを含むが、これらに限定されない。
【0229】
「化学療法薬剤」は、癌の処置において有用な化学的化合物である。化学療法薬剤の例は、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(商標))など;アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなど;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなど;エチレンイミン及びメチルアミルアミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホアミド、トリエチレン、及びトリメチロメラミンを含む);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、ミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプト、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど;抗代謝産物、例えばメトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)など;葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど;プリン類似体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUなど;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;葉酸補充液、例えばフロリン(frolinic)酸など;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン;エリプチニウム酢酸;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、NJ)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rh6ne-Poulenc Rorer、Antony、France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチンなど;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−II;35トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;及び上記のいずれかの医薬的に許容可能な塩、酸、又は誘導体を含む。また、この定義において含まれるのは、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン薬剤、例えば抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む);並びに抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びに上記のいずれかの医薬的に許容可能な塩、酸、又は誘導体である。
【0230】
「抗血管新生剤」は、血管の発達を、ある程度、遮断する、又はそれに干渉する化合物を指す。抗血管新生剤は、例えば、血管新生を促す際に含まれる成長因子又は成長因子受容体に結合する小分子又は抗体であり得る。抗血管新生因子は、一実施形態において、血管内皮成長因子(VEGF)に結合する抗体である。
【0231】
用語「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用する1つの細胞集団により放出されるタンパク質の総称である。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインの間に含まれるのは、成長ホルモン(例えばヒト成長ホルモン、Nメチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモンなど);副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン(例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)など);肝成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子α及びP;ミュラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子(例えばNGF−pなど);血小板成長因子;形質転換成長因子(TGF)(例えばTGF−α及びTGF−pなど);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン(例えばインターフェロンa、P、及びyなど);コロニー刺激因子(CSF)(例えばマクロファージCSF(M−CSF)など);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF);及び顆粒球CSF(GCSF);インターロイキン(ILS)(例えばIL−I、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−IO、IL−II、IL−12など);腫瘍壊死因子(例えば、TNF−α又はTNF−Pなど);並びに他のポリペプチド因子(LIF及びkitリガンド(KL)を含む)である。本明細書において使用する通り、用語「サイトカイン」は、天然供給源からの、又は組換え細胞培養物からのタンパク質及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0232】
用語「fMLP」は、Nホルミルメチオニン、ロイシン、及びフェニルアラニンからなるトリペプチドを意味する。一実施形態において、エフェクター部分は、fMLP又はその誘導体である。
【0233】
用語「プロドラッグ」は、親薬物と比較し、腫瘍細胞にそれほど細胞傷害性ではなく、酵素的に活性化される、又は、より活性な親形態に変換されることが可能な医薬的に活性な物質の前駆体又は誘導体形態を指す。例えば、Wilman, “Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions, Vol. 14, 615th Meeting Belfast (1986) pp. 375-382及びStella, et al., “Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery”, Directed Drug Delivery, Borchardt, et al., (eds.), pp. 247-267, Humana Press (1985)を参照のこと。エフェクター部分として使用することができるプロドラッグは、リン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、Dアミノ酸改変プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、bラクタム含有プロドラッグ、場合により、置換フェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、又は、場合により、置換フェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5フルオロシトシン及び他の5フルオロウリジンプロドラッグ(それらは、より活性な細胞傷害性遊離薬物に変換されることができる)を含むが、これらに限定されない。本発明における使用のためのプロドラッグ形態に誘導体化することができる細胞傷害性薬物の例は、本明細書において記載する化学療法薬剤を含むが、これらに限定されない。
【0234】
用語「細胞毒素」は、細胞機能を阻害若しくは防止し、及び/又は、細胞死若しくは破壊を起こす物質を指す。細胞毒素は、放射性同位体(例、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体);化学療法薬剤又は薬物(例、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入薬剤);成長阻害剤;酵素及びそれらのフラグメント(例えば核酸分解酵素など);抗生物質;毒素、例えば細菌、真菌、植物、又は動物起源の小分子毒素又は酵素活性毒素(それらのフラグメント及び/又はバリアントを含む)など;並びに、本明細書において開示する種々の抗腫瘍又は抗癌薬剤を含むが、これらに限定されない。
【0235】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、ギャップを導入し(必要な場合)、最高パーセント配列同一性を達成した後(任意の保存的置換を配列同一性の部分として考えず)、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当技術分野内にある種々の方法において、例えば、公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどを使用して達成することができる。当業者は、配列を整列させるための適切なパラメーター(比較されている配列の全長にわたる最高アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む)を決定することができる。本明細書における目的のために、しかし、%アミノ酸配列同一性の値を、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成する。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムが、Genentech, Inc.により作成され、ソースコードが、米国著作権局(Washington D.C., 20559)において、ユーザー文書と提出されており、そこでは、それは、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムが、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaを通じて公的に利用可能である。ALIGN-2プログラムを、UNIX操作システム(デジタルUNIX V4.0Dを含む)上での使用のためにコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメーターが、ALIGN-2プログラムにより設定され、変動しない。
【0236】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bに、それと、又はそれに対する、所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(或いは、所与のアミノ酸配列Bに、それと、又はそれに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有する、又は含む所与のアミノ酸配列Aとして表現することができる)を以下の通りに計算する:100×分数X/Y
式中、Xは、A及びBのそのプログラムのアラインメントにおける配列アラインメントプログラムALIGN-2による同一のマッチとしてスコア化されるアミノ酸残基の数であり、式中、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さとは等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは等しくないと理解されるであろう。別に特記なき場合、本明細書において使用する全ての%アミノ酸配列同一性の値は、直前のパラグラフにおいて記載される通りに、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0237】
用語「医薬的製剤」は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が効果的になることを許すような形態であり、及び製剤が投与され得る被験者に、非許容可能に有毒である追加成分を含まない調製物を指す。
【0238】
「医薬的に許容可能な担体」は、被験者に非毒性である、活性成分以外の、医薬的製剤中の成分を指す。医薬的に許容可能な担体は、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含むが、これらに限定されない。
【0239】
「ポリペプチド」は、天然で又は合成的に産生されたかにかかわらず、ペプチド結合により連結されたアミノ酸からなるポリマーである。約20アミノ酸残基未満のポリペプチドを「ペプチド」として言及してもよいのに対し、2つ以上のポリペプチドからなる、又は100を上回るアミノ酸残基の1つのポリペプチドを含む分子を「タンパク質」として言及してもよい。ポリペプチドは、また、非アミノ酸成分、例えば糖基、金属イオン、又はカルボン酸エステルなどを含み得る。非アミノ酸成分は、細胞により加えられ得るが、それにおいて、ポリペプチドが発現され、細胞の型により変動し得る。ポリペプチドは、それらのアミノ酸骨格構造又は同をコードする核酸の点で、本明細書において定義される。付加基、例えば糖基などは、一般的に特定されないが、しかし、それにもかかわらず存在し得る。
【0240】
全てのポリペプチド配列が、一般的に受け入れられた慣習に従って書かれており、それにより、アルファ−N末端アミノ酸残基は左にあり、アルファ−C末端アミノ酸残基は右にある。本明細書において使用する通り、用語「N末端」は、ポリペプチド中のアミノ酸の遊離アルファ−アミノ基を指し、用語「C末端」は、ポリペプチド中のアミノ酸の遊離aカルボン酸末端を指す。基を用いてN末端化されているポリペプチドは、N末端アミノ酸残基のアルファ−アミノ窒素上に基を担持するポリペプチドを指す。基を用いてN末端化されているアミノ酸は、アルファ−アミノ窒素上に基を担持するアミノ酸を指す。
【0241】
他に示さない場合、「D」の接頭辞(例、D−Ala又はN−Me−D−Ile、又は小文字のフォーマットで書かれる(例、a、i、1、(Ala、Ile、LeuのDバージョン))により、本明細書及び添付の特許請求の範囲において記載されるポリペプチド中のアミノ酸及びアミノアシル残基のアルファ炭素の立体化学は、天然又は「L」立体配置である。Cahn−Ingold−Prelog「R」及び「S」の記号は、ポリペプチドのN末端での特定のアシル置換基におけるキラル中心の立体化学を特定するために使用される。記号「R、S」は、2つのエナンチオマー形態のラセミ混合物を示すことを意味する。この命名法は、Cahn, R.S., et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 5 (1966) 385-415において記載されるものに従う。
【0242】
用語「一本鎖Fv」、短い「scFv」は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、それにおいて、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。一実施形態において、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーを更に含み、それによって、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp.269-315 (1994)を参照のこと。
【0243】
用語「テオフィリン」、短く「THEO」は、1,3−ジメチル−7Hプリン−2,6−ジオンを意味する。テオフィリンは、また、ジメチルキサンチンとして公知である。
【0244】
用語「テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードは、テオフィリン部分、場合により、リンカー及びペイロードを含むコンジュゲーションされた実体を意味する。リンカーは、任意のリンカー(例えばペプチドリンカー又は化学的リンカーなど)であることができる。
【0245】
用語「処置」(及び、その文法的なバリエーション、例えば「処置する」又は「処置している」など)は、処置されている個体の自然経過を変化させる意図における臨床介入であり、予防のために、又は臨床病理の経過の間のいずれかに実施することができる。処置の所望の効果は、疾患の発生又は再発を防止すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的転帰の減弱、転移を防止すること、疾患進行の速度を減少させること、疾患状態の寛解又は緩和、及び寛解又は改善された予後を含む。一部の実施形態において、本発明の抗体を使用し、疾患の発生を遅延させる、又は、疾患の進行を遅らせる。
【0246】
用語「x価」(例、「一価」又は「二価」又は「三価」又は「四価」)は、抗体分子における結合部位の特定された数、即ち、「x」の存在を意味する。そのようなものとして、用語「二価」、「四価」、及び「六価」は、それぞれ、抗体分子中の2つの結合部位、4つの結合部位、及び6つの結合部位の存在を意味する。本明細書において報告する二重特異性抗体は、少なくとも「二価」であり、「三価」又は「多価」(例、「四価」又は「六価」)であり得る。一実施形態において、本明細書において報告する二重特異性抗体は、二価、三価、又は四価である。一実施形態において、二重特異性抗体は二価である。一実施形態において、二重特異性抗体は三価である。一実施形態において、二重特異性抗体は四価である。
【0247】
特定の態様及び実施形態において、本明細書において報告する抗体は、2つ以上の結合部位を有し、二重特異性である。すなわち、抗体は、2を上回る結合部位がある(即ち、抗体が三価又は多価である)場合においてでさえ、二重特異性であり得る。用語「二重特異性抗体」は、例えば、多価一本鎖抗体、ダイアボディ及びトリアボディ、並びに完全長抗体の定常ドメイン構造を有する抗体(それには、さらなる抗原結合部位(例、一本鎖Fv、VHドメイン、及び/又はVLドメイン、Fab又は(Fab)2)が、1つ又は複数のペプチドリンカーを介して連結されている)を含む。抗体は、単一の種からの完全長である、又は、キメラ化若しくはヒト化されることができる。2を上回る抗原結合部位を伴う抗体について、一部の結合部位は、タンパク質が、2つの異なる抗原についての結合部位を有する限り、同一であり得る。すなわち、第1の結合部位が、ハプテンについて特異的であるのに対し、第2の結合部位は、非ハプテン抗原について特異的であり、及び、その逆も同様である。
【0248】
用語「可変領域」は、抗体をその抗原に結合させる際に含まれる抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを意味する。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれVH及びVL)の可変ドメインは、一般的に、類似の構造を有し、各々のドメインが、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む(例、Kindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91を参照のこと)。単一のVHドメイン又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、その抗原に結合する抗体からのVHドメイン又はVLドメインを使用して単離し、相補的VLドメイン又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングしてもよい。例えば、Portolano, S. et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887;Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照のこと。
【0249】
用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を伝搬することが可能である核酸分子を意味する。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、並びに、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に連結された核酸の発現に向けることが可能である。そのようなベクターは、本明細書において、「発現ベクター」として言及される。
II.本明細書において報告するコンジュゲート
【0250】
本明細書において報告するのは、ハプテンについての第1の結合特異性及び血液脳関門受容体(BBBR)についての第2の結合特異性を伴う二重特異性抗体である血液脳関門シャトルモジュール(BBBシャトルモジュール)である。そのようなBBBシャトルモジュールは、血液脳関門上のトランスサイトーシス可能な細胞表面標的(例えばTfR、LRP又は他の標的、BBBRなど)を認識し、ハプテン化ペイロードに同時に結合する。
【0251】
結合価、抗体フォーマット、BBBR結合親和性に関するさらなる要求を満たさなくてもよいことが見出されている。
【0252】
さらに、本明細書において報告する二重特異性抗体ベースのシャトルモジュールが、ハプテン化ペイロードのトランスサイトーシスを媒介するために、血液脳関門の内皮細胞から放出されることが要求されないことが見出されている。代わりに、ハプテン化ペイロードは、BBBRへの結合時に二重特異性抗体ベースのシャトルモジュールにより複合体化され/それに結合し、BBB細胞内で、即ち、細胞内小胞システムにおいて二重特異性抗体ベースのシャトルモジュールから放出され、シャトルモジュールから分離され、その後、BBB細胞から脳中へエキソサイトーシスされ、BBB細胞中に二重特異性抗体を残す。
【0253】
本明細書において報告する二重特異性抗体ベースのシャトルモジュールは、結合特異性の価数並びにBBBR結合特異性の親和性の点で非常に変動している。同時に、それによって、シャトルモジュールからのペイロード放出が可能になる。
非共有結合複合体
【0254】
本明細書において報告する二重特異性抗体は、治療的又は診断的ペイロードのためのハプテン化ペイロード送達媒体として使用される。治療的又は診断的ペイロードは、ハプテンを用いてコンジュゲーションされ、このように、本明細書において報告する二重特異性抗体のハプテン結合部位により複合体化される。この複合体は定義され、安定であり、ハプテン化ペイロードを標的細胞又は組織に送達する。ハプテン化された治療的又は診断的ペイロードは、二重特異性抗体により、非共有結合の様式において複合体化されるため、ハプテン化ペイロードは、一方で、循環中のその時間の間に、その送達媒体(=二重特異性抗体)に結合されるが、しかし、また、他方で、内在化又はトランスサイトーシス後に効率的に放出されることができる。ハプテンを用いたコンジュゲーションは、治療的又は診断的ペイロードの活性に干渉することなくもたらすことができる。二重特異性抗体は、異常な共有結合的付加を含まず、したがって、免疫原性の任意のリスクを未然に防ぐ。したがって、この単純な複合体化手順は、1つだけの抗ハプテン抗体との組み合わせにおいて、任意のペイロードのために使用することができる;例えば、ペプチド、タンパク質、小分子、造影試薬、及び核酸。ハプテン特異的結合部位を含む、本明細書において報告する二重特異性抗体を用いたハプテン化された診断的又は治療的ペイロードの複合体は、診断的又は治療的ペイロードに(例、診断的又は治療的ポリペプチド或いは小分子に)、良性の生物物理学的挙動及び改善されたPKパラメーターを付与する。さらに、そのような複合体は、二重特異性抗体の第2の結合特異性により認識される抗原を示す細胞又は組織への送達ロードを標的化することが可能である。
【0255】
標的組織及び標的細胞への核酸の特異的標的化及び送達は、主要な課題である。治療的適用のために、均質な定義された実体が望まれる。抗体又は抗体フラグメント媒介核酸送達が、いくつかの例において示されている(例、Lieberman et al., Nat. Biotechnol. 23 (2005) 709)。特に興味深いのは、標的組織及び標的細胞への二本鎖RNA分子(dsRNA)の特異的な標的化及び送達である。二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子は、RNA干渉(RNAi)として公知である高度に保存された調節機構において遺伝子発現を遮断することが示されている。dsRNAは、良好な安定性を伴う抗体にコンジュゲーションさせ、特定の標的化を保証し、全身性の非特定の放出を避けることができる。他方、dsRNAは、標的細胞で、又はその内で放出され、細胞中への侵入を可能にしなければならない。
【0256】
本明細書において報告する二重特異性抗体は、核酸(DNA又はRNA)のための送達媒体として使用することができる。このように、本発明は、標的化遺伝子治療のための特異的な送達プラットフォーム、標的化RNAi、及び標的化LNA送達を提供する。
【0257】
一実施形態において、ハプテン化核酸及び本明細書において報告する二重特異性抗体の複合体は、細胞又は組織への核酸の特異的な標的化送達のために使用される。核酸は、ハプテン化されている、並びに抗体により複合体化されているにもかかわらず、それらの機能性を保持する。また、二重特異性抗体の血液脳関門受容体結合部位は、複合体化したハプテン化核酸の存在において、その結合特異性及び親和性を保持する。本明細書において報告する二重特異性抗体を伴うハプテン化核酸の複合体は、核酸を、血液脳関門受容体を発現する細胞に特異的に標的化するために使用することができる。それにより、トランスサイトーシス後に血液脳関門受容体又は脳により認識される細胞を、核酸により選択的に対処され、核酸により起こされる活性(例、RNAi又は核酸媒介性細胞傷害性)は、したがって、血液脳関門受容体を発現する細胞又は脳において増強されている。一実施形態において、これらの活性は、標的化エンドソームに調節剤を追加的に適用することにより、更に増強される。核酸は、抗原発現細胞に特異的に送達されるだけでなく、しかし、また、標的細胞中に内在化されるようになる。ハプテン化核酸は、本明細書において報告する二重特異性抗体への非共有結合様式においてカップリングされるため、ペイロード(例、核酸)は、内在化又はトランスサイトーシス後に放出されることができる。
【0258】
1つの好ましい実施形態において、核酸はDNAである。1つの好ましい実施形態において、核酸はdsRNAである。1つの好ましい実施形態において、核酸はLNAである。
【0259】
それらの活性(例、siRNAによるmRNAの特異的破壊)を媒介するために、治療的又は診断的な核酸は、それらの標的細胞の細胞質にアクセスしなければならない。特定の核酸活性の送達のための1つの重要な因子は、分子が細胞に送達されるだけでなく、しかし、また、核酸の十分な量が、これらの細胞の細胞質中に移動されなければならないことである。そのために、これらの分子は、少なくとも1回、生体膜に浸透しなければならない。生物製剤は、膜を横切って簡単に通過しないため、このプロセスは、核酸活性の効果的な送達のために克服しなければならないボトルネックである。このボトルネックを克服するための手段は、膜浸透、膜を横切るタンパク質移行、又は膜破壊プロセスを含み得るエンドソームエスケープ又は小胞エスケープ機構であり得る。
【0260】
一実施形態において、本明細書において報告する二重特異性抗体又は、ハプテン化核酸を伴う、本明細書において報告する二重特異性抗体の非共有結合複合体は、エンドソーム機能のモジュレーター、又はエンドソームエスケープ/破壊モジュールが連結された核酸送達モジュールとして使用される。一実施形態において、エンドソームエスケープモジュールは、ペプチドを含む。
【0261】
一実施形態において、エンドソームエスケープモジュールは、ダイナミックポリコンジュゲート(DPC)を含む。DPCは、細胞結合及び内在化時に、siRNAのエンドソームエスケープを起こす化学的実体である(Rozema, D.B., et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104(2007) 12982-12987)。そのようなDPCは、PBAVE(ブチルアミノビニルエーテルのポリマー)スキャフォールドで構成されており、それには、PEG分子が、二官能性マレアミド(maleamate)連結を使用して可逆的に付着されている。後者について、カルボキシル化ジメチルマレイン酸(CDM)を適用することができる。PEGユニットを使用し、PBAVEのエンドソーム溶解正電荷を遮蔽する。また、PBAVEに連結されているのは、siRNAカーゴである(例、可逆的ジスルフィド結合を介した)。結果として得られた送達媒体は、siRNAダイナミックポリコンジュゲートと呼ばれる。なぜなら、siRNAは、遮蔽基(及び追加の標的リガンド)が、可逆的な様式で、ポリマーにコンジュゲーションされているからである。siRNAの細胞質送達を起こす、そのようなDPCのエンドソーム溶解特性は、その化学的環境により誘導される:成熟エンドリソーム(endolysomes)内のpHにおける減少は、CDM−PEGの放出を誘導し、順に、エンドソーム溶解(endosomolysis)を媒介するPBAVEの正電荷を曝露する。
【0262】
したがって、一実施形態において、二重特異性ハプテン化ペイロード送達システムの特異的標的特性を伴うDPCのエンドソーム溶解特色を組み合わせる。
【0263】
一実施形態において、本明細書において報告する二重特異性抗体及びハプテン化核酸の非共有結合複合体が、イメージング分析のために使用される。本実施形態において、核酸は、ハプテン及び検出可能な標識に同時にコンジュゲーションされる。それにより、血液脳関門受容体を発現する細胞に標的化された核酸の局在化を、顕微鏡又は他のイメージング技術により可視化することが可能である。一実施形態において、検出可能な標識は、蛍光標識である。一実施形態において、核酸の局在化は、細胞において、即ち、インビトロで可視化される。別の実施形態において、核酸の局在化は、インビボで可視化される。
【0264】
それらの化学的及び物理的特性(例えば分子量及びドメイン構築物(二次改変を含む)など)のため、抗体の下流プロセシングは、非常に複雑である。例えば、製剤化薬物のためだけでなく、下流プロセシング(DSP)における中間体のためにも、濃縮溶液が、経済的な取り扱い及び適用保存のための低容積を達成するために要求される。
【0265】
しかし、増加する抗体の濃度に伴い、凝集体を形成する傾向を観察することができる。これらの凝集抗体は、単離抗体と比較し、損なわれた特徴を有する。本明細書において報告する抗体の凝集は、単一特異的二価親抗体に接続された一本鎖抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン間のジスルフィド結合の導入により低下させることができる。この改善された安定性は、産生プロセスの間だけでなく、抗体の保存のためにも有用である。一実施形態において、本明細書において報告する二重特異性抗体中に含まれる一本鎖抗体の可変ドメイン間のジスルフィド結合は、各々の一本鎖抗体について、以下より独立に選択される:
i)重鎖可変ドメインの位置44から軽鎖可変ドメインの位置100、
ii)重鎖可変ドメインの位置105から軽鎖可変ドメインの位置43、又は
iii)重鎖可変ドメインの位置101と軽鎖可変ドメインの位置100。
【0266】
一実施形態において、本明細書において報告する二重特異性抗体中に含まれる一本鎖抗体の可変ドメイン間のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置44と軽鎖可変ドメインの位置100の間である。
【0267】
一実施形態において、本明細書において報告する二重特異性抗体中に含まれる一本鎖抗体の可変ドメイン間のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置105と軽鎖可変ドメインの位置43の間である。
共有結合コンジュゲート
【0268】
抗ハプテン抗体へのハプテン化ペイロードの共有結合により、ペイロードの安定化及びPK特性の改善を達成することができることが見出されている。
【0269】
ハプテン化ペイロード及び抗ハプテン抗体の共有結合的複合体は、良性の生物物理学的挙動及びポリペプチドへの改善されたPK特性を付与し得る。さらに、二重特異性抗体を使用した場合において、コンジュゲートは、二重特異性抗体の第2の結合特異性により認識される抗原を示す細胞に、ポリペプチドを標的化するために使用することができる。そのようなコンジュゲートは、1つの抗ハプテン結合特異性及び1つの(非ハプテン)抗原結合特異性で構成される。抗体とハプテン化ペイロードとの化学量論比は、二重特異性抗体のフォーマットに依存し、1:1、1:2、2:1、2:2、2:4、4:2(抗体:ハプテン−ポリペプチド)であり得る。
【0270】
ペイロードが、ハプテンにコンジュゲーションされ、並びに抗体にコンジュゲーションされているにもかかわらず、良好な生物学的活性を保持することが望ましい。また、二重特異性抗体の細胞表面標的結合部位が、共有結合的にコンジュゲーションされたハプテン化ペイロードの存在において、その結合特異性及び親和性を保持することが、(二重特異的標的化モジュールの場合において)が望ましい。
【0271】
ハプテン化ペイロード中の反応基は、任意の反応基、例えばマレイミド(例、N−エチルマレイミド(NEM))、ヨードアセトアミド、ピリジルジスルフィド、又は他の反応性結合パートナーなどであり得る(例、Haugland, 2003, Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Inc.; Brinkley, 1992, Bioconjugate Chem. 3:2;Garman,1997, Non-Radioactive Labeling: A Practical Approach, Academic Press, London; Means (1990) Bioconjugate Chem. 1:2;Hermanson, G. in Bioconjugate Techniques (1996)Academic Press, San Diego, pp. 40-55 and 643-671を参照のこと)。
【0272】
抗体上の反応基は、選択的に、即ち、位置特異的に生成することができるものに限定される。したがって、それは、アミノ酸残基システイン、セリン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸の側鎖基に限定される。
【0273】
抗体とハプテン化ペイロードの間での共有結合コンジュゲートの形成のために、両方の化合物を、反応基の導入により改変しなければならない。抗体によるハプテン化ペイロードの結合時、2つの反応基は、近接してもたらされ、共有結合の形成を可能にする。一実施形態において、改変は、化合物の各々におけるチオール官能基の導入である。一実施形態において、チオール化合物はシステイン残基である。
【0274】
官能基を含む位置は、2つの要件を同時に満たさなければならない:(i)カップリング位置は、有向カップリングのためのハプテン位置決め効果を利用するために、抗体の抗ハプテン結合特異性の結合領域に近接してあるべきである、及び(ii)変異及びカップリング位置は、ハプテン結合が、それ自体により影響されない様式で位置付けられなければならない。適切な位置を見出すためのこれらの要件は、事実上、互いに「矛盾」している。なぜなら、要件は、(i)結合位置に近い位置により最良に提供されるが、(ii)結合部位から遠い位置により最も安全に達成されるからである。
【0275】
これらの実質的な除外要件にもかかわらず、ハプテンの位置付けに影響することなく変異させることができ、それにもかかわらず、有向共有結合的カップリングを同時に可能にする位置を同定した。
【0276】
第1の位置は、重鎖可変ドメインのKabatナンバリングに従った位置VH52bに、又は位置VH53にそれぞれ位置付けられる。抗体が短いVH CDR2(それは、間欠的な残基(例えば52a、52c、52c、及び52dなど)を有さない)を有する場合、その位置は53(抗体重鎖可変ドメインについてのKabatのナンバリングスキーム及びルールに従ったナンバリング及びアラインメント)である。抗体が、残基52a及び52b、並びに、場合により、さらなる残基52c及び52dなどを含む長いVH CDR2を有する場合、その位置は52b(抗体重鎖可変ドメインについてのKabatのナンバリングスキーム及びルールに従ったナンバリング及びアラインメント)である。
【0277】
任意のペイロードを、ハプテン化ペイロードと抗体の重鎖CDR2中のアミノ酸残基の間の共有結合の形成のための官能基を含むユニバーサルリンカーを用いた誘導体化時に、ハプテン化ペイロードにおいて(ビオチン化ペイロード、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロード、ジゴキシゲニン化ペイロード、及びフルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードからなる群より選択されるハプテン化ペイロードの場合において)使用することができることが見出されている。ユニバーサルリンカー中の官能基の場所は、抗体の重鎖CDR2中の官能基の合成及び位置(ペイロードを変化させる場合)を再操作する必要がないという利点を有する。
【0278】
任意のペイロードを、ヘリカー化(helicarylated)ペイロードと抗体の軽鎖CDR2中のシステイン残基の間の共有結合的なジスルフィド結合の形成のための官能基を含むシステインを用いたヘリカーアミノ酸配列の誘導体化時に、ヘリカー化(helicarylated)ペイロード中に使用することができることが更に見出されている。ヘリカーモチーフアミノ酸配列中のシステイン残基(チオール官能基)の場所は、抗体の軽鎖CDR2中のシステイン残基の合成及び位置(ペイロードを変化させる場合)を再操作する必要がないという利点を有する。
【0279】
第2の位置は、Kabatナンバリングに従った位置VH28に位置付けられる。
【0280】
例えば、抗ジゴキシゲニン抗体構造において、ハプテンは、疎水性残基により形成される深いポケット中に結合される。蛍光ジゴキシゲニン−Cy5コンジュゲートが、この結晶学的試験において使用されたが、それにおいて、フルオロフォア並びにジゴキシゲニンとCy5の間のリンカーは、高い柔軟性及び結果として得られる結晶中の無秩序のため、構造中では目に見えなかった。しかし、リンカー及びCy5は、重鎖のCDR2の方向中を指し示す、ジゴキシゲニンのO32に付着される。ジゴキシゲニンのO32からKabatに従った位置52bにおけるアミノ酸残基のCαの間の距離は、約10.5Aである。
【0281】
位置が「ユニバーサル」位置である、即ち、位置が、それぞれ任意の(抗ハプテン)抗体又はヘリカー化(helicarylated)ペイロードに適用可能であり、このように、例えば、結晶構造を提供し、ハプテンに位置付けられた共有結合カップリングを可能にする適切な位置を決定することにより、新たな共有結合複合体を生成しなくてはならない度に、最初から開始することは要求されないことが見出されている。
【0282】
本明細書において報告する通りに改変された抗体は、それらの親(即ち、野生型)抗体対応物のハプテン(抗原)結合能力を保持する。このように、操作された抗体は、結合することが可能であり、一実施形態において、それは、ハプテン(抗原)に特異的に結合することが可能である。
【0283】
用語「特異的に結合する結合部位」又は「特異的に結合する抗体」は、結合部位又は抗体を含む分子が、特定の様式において、さらなる分子と複合体を形成することができることを意味する。結合は、インビトロアッセイにおいて、例えばプラズモン共鳴アッセイ(BIAcore, GE-Healthcare Uppsala, Sweden)などにおいて検出することができる。複合体形成の親和性は、用語ka(化合物の会合が、複合体を形成する速度定数)、k
D(解離定数、複合体の解離)、及びK
D(k
D/ka)により定義される。結合する、又は特異的に結合するは、約10
−7M以下の結合親和性(K
D)を意味する。
【0284】
ハプテンとペイロードの間のリンカーにおいて、又はハプテン内に、又はペイロード内にシステイン残基を担持する、システイン改変抗体とシステイン改変ハプテン化ペイロードの間での共有結合的な結合の形成が、形成される結合がジスルフィド結合である場合、還元剤及び/又は酸化剤の添加の要求を伴わず、ハプテン化ペイロードへの抗体の結合時に起こることが見出されている。このように、2つの化合物の間でのジスルフィド架橋が、非共有結合複合体の形成時に自発的に形成される。したがって、本明細書において報告する共有結合的な複合体の形成のための方法では、2つの化合物の混合が単純に要求される。ジスルフィド結合の形成のための唯一の前提条件は、互いに関する2つの化合物の適した配向である。
【0285】
Cys残基を用いた、それぞれ位置VH52b及びVH53(Kabatナンバリングスキームに従う)のアミノ酸残基の置換によって、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCについては配列番号20及び28において、抗テオフィリン抗体VH53Cについては配列番号84及び92において、抗ビオチン抗体VH53Cについては配列番号52及び60において、抗フルオレセイン抗体VH52bCについては配列番号108において、並びに抗ブロモデオキシウリジン抗体VH53Cについては配列番号226において列挙される重鎖可変領域配列を伴う抗体誘導体がもたらされた。
【0286】
Cys残基を用いた、位置VH28(Kabatナンバリングスキームに従う)の重鎖可変ドメインアミノ酸残基の置換によって、それぞれ配列番号116、124、132、140、148、156、及び164において列挙される重鎖可変領域配列を伴う抗体誘導体がもたらされた。
【0287】
改変点として同定されたさらなる位置は、Kabatナンバリングに従った位置VH28である。
【0288】
Cysを用いたKabatに従った位置VH28のアミノ酸の置換によって、抗ジゴキシゲニン抗体VH28Cについては配列番号124及び132において、抗テオフィリン抗体VH28Cについては配列番号156及び164において、抗ビオチン抗体VH28Cについては配列番号140及び148において、抗フルオレセイン抗体VH28Cについては配列番号116において、並びに抗ブロモデオキシウリジンVH28Cについては配列番号227において列挙される重鎖可変領域配列を伴う抗体誘導体が生成された。
【0289】
ESI−MS分析によって、ハプテン化ペイロード(ペイロード=治療的ペプチド)の共有結合的な抗体コンジュゲーションが、非複合体化抗体又は非複合体化ペプチドよりも大きな、定義されたサイズのコンジュゲートをもたらすことが実証される。
【表2】
【0290】
インビボ実験の結果は、ハプテン及びTfR結合二重特異性BBBシャトル媒体が、ハプテン化ペイロード抗体に結合し、BBBを横切るペイロードの輸送を可能にすることを示す。これらの実験の結果は、また、ペイロードがシャトル媒体から放出されることができ、その後、脳中のその標的に結合し、それに蓄積することを示す。
抗体親和性
【0291】
特定の実施形態において、本明細書において報告する抗体自体又は本明細書において報告する複合体中の抗体は、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nMの(例、約10
−8M以下、例、約10
−8M〜約10
−13M、例、約10
−9M〜約10
−13Mの)解離定数(Kd)を有する。
【0292】
一実施形態において、Kdは、以下のアッセイにより記載される通り、目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて実施される放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。抗原についてのFabの溶液結合親和性を、Fabを、非標識抗原の滴定系列の存在において、最小濃度の(
125I)標識抗原を用いて平衡化し、次に、結合抗原を、抗Fab抗体コーティングされたプレートを用いて捕捉することにより測定する(例、Chen, Y. et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881を参照のこと)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)を用いて一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2〜5時間にわたり室温(約23℃)でブロックした。非吸着プレート(Nunc#269620)中で、100pM又は26pMの[
125I]抗原を、目的のFabの希釈系列と混合した(例、Presta, L.G. et al., Cancer Res. 57 (1997) 4593-4599における抗VEGF抗体Fab−12の評価と一致する)。目的のFabを、次に、一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションを、より長い期間(例、約65時間)にわたり継続し、平衡に達することを確実にしてもよい。その後、混合物を、室温での(例、1時間にわたる)インキュベートのために、捕捉プレートに移す。溶液を次に除去し、プレートを、PBS中の0.1%ポリソルベート20(Tween20(登録商標))を用いて8回洗浄する。プレートが乾燥した際、150μL/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packard)を加え、プレートを10分間にわたりTOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)でカウントする。20%を下回る、又は、それと等しい最大結合を与える、各々のFabの濃度を、競合結合アッセイにおける使用のために選ぶ。
【0293】
別の実施形態に従い、Kdを、〜10反応単位(RU)での固定化された抗原CM5チップを用いて、25℃でBIACORE(登録商標)2000又はBIACORE(登録商標)3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定する。簡単には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE, Inc.)を、供給者の使用説明書に従って、N−エチル−N’(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS) を用いて活性化させる。抗原を、5μL/分の流速での注射前に、10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いて5μg/ml(約0.2μM)に希釈し、カップリングタンパク質の約10反応単位(RU)を達成する。抗原の注射に続き、1Mエタノールアミンを注射し、未反応基をブロックする。動態測定のために、Fabの2倍連続希釈物(0.78nM〜500nM)を、0.05%ポリソルベート20(Tween20(商標))界面活性剤(PBST)を伴うPBD中で、25℃で、約25μL/分の流速で注射する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を、単純一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用し、会合及び解離センサーグラムを同時に適合することにより計算する。平衡解離定数(Kd)を、比率k
off/k
onとして計算する。例えば、Chen, Y. et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881を参照のこと。オン速度が、上の表面プラズモン共鳴アッセイにより、10
6M
−1s
−1を超える場合、次に、オン速度は、PBS(pH 7.2)中の20nM抗抗原抗体(Fab形態)の、25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を使用することにより、分光計、例えばストップ−フロー装備の分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを伴う8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などにおいて測定される、抗原の増加濃度の存在において決定することができる。
抗体フラグメント
【0294】
特定の実施形態において、本明細書において提供する、又は、本明細書において報告するコンジュゲート中の抗体は、抗体フラグメントである。抗体フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、Fv、及びscFvフラグメント、並びにそれらのコンジュゲート、及び、フラグメントが二価及び多特異性である、又は、組み合わせて、二価の二重特異性抗体フラグメント融合ポリペプチドを形成する限り、下記に記載する他のフラグメントを含むが、これらに限定されない。特定の抗体フラグメントの概説については、Hudson, P.J. et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照のこと。scFvフラグメントの概説については、例えば、Plueckthun, A., In; The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.), Springer-Verlag, New York (1994), pp. 269-315を参照のこと;また、WO 93/16185;並びに米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、及び、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)
2フラグメントの考察については、US 5,869,046を参照のこと。
【0295】
ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を伴う抗体フラグメントである。例えば、EP 0 404 097;WO 1993/01161;Hudson, P.J. et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134;及びHolliger, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディが、また、Hudson, P.J. et al., Nat. Med. 9 (20039 129-134)に記載されている。
【0296】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て、若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全て、若しくは一部を含む抗体フラグメントである。特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例、US 6,248,516を参照のこと)。
【0297】
抗体フラグメントは、種々の技術(インタクトな抗体のタンパク質分解性消化並びに組換え宿主細胞(例、大腸菌又はファージ)による産生を含むが、これらに限定されない)により、本明細書において記載する通りに作製することができる。
キメラ抗体及びヒト化抗体
【0298】
特定の実施形態において、本明細書において提供する抗体又は本明細書において報告するコンジュゲート中の抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、US 4,816,567;及びMorrison, S.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855)において記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又は非ヒト霊長類(例えばサルなど)に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが、親抗体のものから変化されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、それらの抗原結合フラグメントを含む。
【0299】
特定の実施形態において、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトへの免疫原性を低下させるためにヒト化されており、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持している。一般的に、ヒト化抗体は、1つ又は複数の可変ドメインを含み、それにおいて、HVR(例、CDR(又はその一部))は、非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、場合により、また、ヒト定常領域の少なくとも一部を含むであろう。一部の実施形態において、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、非ヒト抗体(例、HVR残基が由来する抗体)からの対応する残基を用いて置換され、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善する。
【0300】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法が、例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633において概説されており、さらに、例えば、Riechmann, I. et al., Nature 332 (1988) 323-329;Queen, C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033;米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号;Kashmiri, S.V. et al., Methods 36 (2005) 25-34(SDR(a−CDR)移植が記載されている);Padlan, E.A., Mol. Immunol. 28 (1991) 489-498(「リサーフェイシング」が記載されている);Dall’Acqua, W.F. et al., Methods 36 (2005) 43-60(「FRシャフリング」が記載されている);並びにOsbourn, J. et al., Methods 36 (2005) 61-68、及びKlimka, A. et al., Br. J. Cancer 83 (2000) 252-260(FRシャフリングへの「ガイド付き選択」アプローチが記載されている)において記載されている。
【0301】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域は、「ベストフィット」方法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims, M.J. et al., J. Immunol. 151 (1993) 2296-2308を参照のこと);軽又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289;及びPresta, L.G. et al., J. Immunol. 151 (1993) 2623-2632を参照のこと);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633を参照のこと);及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca, M. et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 10678-10684及びRosok, M.J. et al., J. Biol. Chem. 271 (19969 22611-22618を参照のこと)を含むが、これらに限定されない。
ヒト抗体
【0302】
特定の実施形態において、本明細書において提供する抗体又は本明細書において報告するコンジュゲート中の抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体を、当技術分野において公知の種々の技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk, M.A. and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol. 5 (2001) 368-374及びLonberg, N., Curr. Opin. Immunol. 20 (2008) 450-459において記載されている。
【0303】
ヒト抗体は、抗原刺激に応答して、ヒト可変領域を伴うインタクトなヒト抗体又はインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製され得る。そのような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て、又は一部を含むが、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換し、或いは、それらは、染色体外に存在する、又は動物の染色体中にランダムに組み込まれる。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg, N., Nat. Biotech. 23 (2005) 1117-1125を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載するUS 6,075,181及びUS 6,150,584;HUMAB(登録商標)技術を記載するUS 5,770,429;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載するUS 7,041,870、並びにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載するUS 2007/0061900を参照のこと。そのような動物により生成されるインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なる定常領域と組み合わせることにより、更に改変され得る。
【0304】
ヒト抗体は、又はイブリドーマベースの方法により作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒト異種細胞株が記載されている。(例、Kozbor, D., J. Immunol. 133 (1984) 3001-3005;Brodeur, B.R. et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987), pp. 51-63;及びBoerner, P. et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体が、また、Li, J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103 (2006) 3557-3562において記載されている。追加の方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)及びNi, J., Xiandai Mianyixue 26 (2006) 265-268(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載する)において記載されるものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma技術)が、また、Vollmers, H.P. and Brandlein, S., Histology and Histopathology 20 (2005) 927-937及びVollmers, H.P. and Brandlein, S., Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27 (2005) 185-191において記載されている。
【0305】
ヒト抗体は、また、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することにより生成され得る。そのような可変ドメイン配列を、次に、所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を、以下記に記載する。
ライブラリー由来抗体
【0306】
本発明の抗体又は本明細書において報告するコンジュゲート中の抗体は、所望の活性又は活性を伴う抗体について、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。例えば、種々の方法が、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を持つ抗体について、そのようなライブラリーをスクリーニングするために、当技術分野において公知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboom, H.R. et al., Methods in Molecular Biology 178 (2001) 1-37において概説されており、例えば、McCafferty, J. et al., Nature 348 (1990) 552-554;Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628;Marks, J.D. et al., J. Mol. Biol. 222 (1992) 581-597;Marks, J.D. and Bradbury, A., Methods in Molecular Biology 248 (2003) 161-175;Sidhu, S.S. et al., J. Mol. Biol. 338 (2004) 299-310;Lee, C.V. et al., J. Mol. Biol. 340 (2004) 1073-1093;Fellouse, F.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 12467-12472;及びLee, C.V. et al., J. Immunol. Methods 284 (2004) 119-132において更に記載されている。
【0307】
特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリーにおいてランダムに組み換えられ、それらは、次に、Winter, G. et al., Ann. Rev. Immunol. 12 (1994) 433-455において記載される通りに、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)フラグメントとして、又はFabフラグメントとして、抗体フラグメントを示す。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築することを要求せず、免疫原への高親和性抗体を提供する。或いは、未感作レパートリーをクローニングし(例、ヒトから)、Griffiths, A.D. et al., EMBO J. 12 (1993) 725-734により記載される通りに、任意の免疫化を伴わず、広範な非自己抗原及び、また、自己抗原への抗体の単一供給源を提供することができる。最後に、未感作ライブラリーが、また、幹細胞からの非再配列V遺伝子セグメントをクローニングし、高度に可変なCDR3領域をコードし、インビトロでの再配列を達成するためのランダム配列を含むPCRプライマーを使用することにより(Hoogenboom, H.R. and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388により記載される通り)、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許公開は、例えば、米国特許第5,750,373号、並びに米国特許公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、及び第2009/0002360号を含む。
【0308】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体フラグメントは、本明細書において考慮されるヒト抗体又はヒト抗体フラグメントである。
抗体フォーマット
【0309】
上に概説する抗体及び抗体フラグメントを、複数の方法において組み合わせ、異なる抗体フォーマットを生成することができる。
【0310】
例えば、1つ又は複数のscFv抗体フラグメントを、完全抗体の1つ又は複数のポリペプチド鎖のC末端に融合することができる。特に、各々の重鎖C末端に、又は各々の軽鎖C末端に、scFv抗体フラグメントを融合させることができる。
【0311】
例えば、1つ又は複数の抗体Fabフラグメントを、完全抗体の1つ又は複数のポリペプチド鎖のC末端に融合することができる。特に、各々の重鎖C末端に、又は各々の軽鎖C末端に、抗体Fabフラグメントを融合させることができる。
【0312】
例えば、1つのscFv及び1つの抗体Fabフラグメントを、抗体Fc領域のN末端に融合することができる。
【0313】
例えば、1つのscFv又は抗体Fabフラグメントを、抗体Fc領域のN末端に融合することができ、1つのscFv又は抗体Fabフラグメントを、抗体Fc領域のそれぞれの他の鎖のC末端に融合することができる。
多重特異性抗体
【0314】
多種多様な組換え抗体フォーマットが開発されており、例えば、IgG抗体フォーマット及び一本鎖ドメインの融合による四価の二重特異性抗体である(例、Coloma, M.J., et al., Nature Biotech 15 (1997) 159-163;WO 2001/077342;及びMorrison, S.L., Nature Biotech 25 (2007) 1233-1234を参照のこと)。
【0315】
また、抗体コア構造(IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)がもはや保持されない、いくつかの他のフォーマット(例えばジア、トリア、又はテトラボディ、ミニボディ、いくつかの一本鎖フォーマット(scFv、Bis−scFv)などで、それらは、2つ以上の抗原に結合すること可能である)が開発されている(Holliger, P., et al., Nature Biotech 23 (2005) 1126-1136;Fischer, N., Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14;Shen, J., et al., Journal of Immunological Methods 318 (2007) 65-74;Wu, C., et al., Nature Biotech. 25 (2007) 1290-1297)。
【0316】
全てのそのようなフォーマットでは、リンカーを使用し、さらなる結合タンパク質(例、scFv)へ抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)を融合させる、又は、例えば、2つのFabフラグメント若しくはscFv(Fischer, N. and Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14)を融合させる。天然抗体との高度の類似性を維持することにより、エフェクター機能(例えば補体依存性細胞傷害性(CDC)又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)(それらは、Fc受容体結合を通じて媒介される)など)を保持することが望まれ得ることを念頭に置かなければならない。
【0317】
WO 2007/024715において報告するのは、操作された多価及び多重特異性結合タンパク質としての二重可変ドメイン免疫グロブリンである。生物学的に活性な抗体二量体の調製のためのプロセスが、US 6,897,044において報告されている。ペプチドリンカーを介して互いに連結されている少なくとも4つの可変ドメインを有する多価FV抗体構築物が、US 7,129,330において報告されている。二量体及び多量体の抗原結合構造が、US 2005/0079170において報告されている。接続構造により互いに共有結合的に結合された、3つ又は4つのFabフラグメントを含む、三価又は四価の単一特異性の抗原結合タンパク質(そのタンパク質は、天然免疫グロブリンではない)が、US 6,511,663において報告されている。WO 2006/020258において、四価の二重特異性抗体が報告されており、それは、原核細胞及び真核細胞中で効率的に発現させることができ、治療的及び診断的方法において有用である。2つの型のポリペプチド二量体を含む混合物からの少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合を介して結合されていない二量体から、少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合を介して結合されている二量体を分離する、又は優先的に合成する方法が、US 2005/0163782において報告されている。二重特異性の四価受容体が、US 5,959,083において報告されている。3以上の官能性の抗原結合部位を伴う操作抗体が、WO 2001/077342において報告されている。
【0318】
多重特異性及び多価抗原結合ポリペプチドが、WO 1997/001580において報告されている。WO 1992/004053には、ホモコンジュゲート(典型的には、同じ抗原決定基に結合するIgGクラスのモノクローナル抗体から調製される)が、合成架橋により共有結合的に連結されていることが報告されている。抗原についての高い結合力を伴うオリゴマーモノクローナル抗体が、WO 1991/06305において報告されており、それにより、オリゴマー(典型的にはIgGクラスの)が分泌され、2つ以上の免疫グロブリン単量体を一緒に会合し、四価又は六価のIgG分子を形成する。ヒツジ由来抗体及び操作抗体構築物が、US 6,350,860において報告されており、それらは、インターフェロンガンマ活性が病原性である疾患を処置するために使用することができる。US 2005/0100543において報告されるのは、二重特異性抗体の多価担体である標的化可能な構築物である(即ち、標的化可能な構築物の各々の分子が、2つ以上の二重特異性抗体の担体としての役割を果たすことができる)。遺伝的に操作された二重特異性四価抗体が、WO 1995/009917において報告されている。WO 2007/109254において、安定化scFvからなる、又はそれを含む安定化結合分子が報告されている。
【0319】
特定の実施形態において、本明細書において提供する抗体又は本明細書において報告するコンジュゲート中の抗体は、多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位についての結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、結合特異性の1つは、ハプテンについてであり、他は、任意の他の(非ハプテン)抗原についてである。二特異性抗体を、また、細胞傷害性薬剤を細胞に局在化させるために使用してもよい。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体フラグメントとして調製することができる。
【0320】
多重特異性抗体を作製するための技術は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え同時発現(Milstein, C. and Cuello, A.C., Nature 305 (1983) 537-540, WO 93/08829、及びTraunecker, A. et al., EMBO J. 10 (1991) 3655-3659を参照のこと)、及び「ノブ・イン・ホール」操作(例、米国特許第5,731,168号を参照のこと)を含むが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために、静電ステアリング効果を操作すること(WO 2009/089004);2つ以上の抗体又はフラグメントを架橋すること(例、米国特許第4,676,980号、及びBrennan, M. et al., Science 229 (1985) 81-83を参照のこと);二重特異性抗体を産生するためにロイシンジッパーを使用すること(例、Kostelny, S.A. et al., J. Immunol. 148 (1992) 1547-1553を参照のこと);二重特異性抗体フラグメントを作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例、Holliger, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448を参照のこと);及び一本鎖Fv(scFv)二量体を使用すること(例、Gruber, M et al., J. Immunol. 152 (1994) 5368-5374を参照のこと);及び三重特異性抗体を調製すること(例、Tutt, A. et al., J. Immunol. 147 (1991) 60-69において記載される通り)により作製することができる。
【0321】
一実施形態において、二重特異性抗体の重鎖のCH3ドメインは、「ノブ−インツ−ホール」技術により変化され、それは、例えば、WO 96/027011、WO 98/050431、Ridgway J.B., et al., Protein Eng. 9 (1996) 617-621、Merchant, A.M., et al., Nat Biotechnol 16 (1998) 677-681において、いくつかの例を用いて詳細に記載されている。この方法において、2つのCH3ドメインの相互作用表面を変化させ、これら2つのCH3ドメインを含む両方の重鎖のヘテロ二量体化を増加させる。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインの各々は、「ノブ」であり得るが、他は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入によって、ヘテロ二量体を安定化させ(Merchant, A.M, et al., Nature Biotech 16 (1998) 677 681, Atwell, S., et al. J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収量を増加させる。
【0322】
全ての態様の一実施形態において、二重特異性抗体は、以下において特徴付けられる:
−1つの重鎖のCH3ドメイン及び他の重鎖のCH3ドメイン(各々が、抗体CH3ドメイン間に元の界面を含む界面で会合する)、
それにおいて、界面を変化させ、二重特異性抗体の形成を促し、それにおいて、変化は、以下であることを特徴とする:
a)1つの重鎖のCH3ドメインを変化させ、
元の界面内で、1つの重鎖のCH3ドメインが、二重特異性抗体内の他の重鎖のCH3ドメインの元の界面と会合するようにし、
アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基を用いて置換されており、それにより、他の重鎖のCH3ドメインの界面内の空洞内に配置可能である、1つの重鎖のCH3ドメインの界面内に突起を生成し、
及び
b)他の重鎖のCH3ドメインを変化させ、
元の界面内で、第2のCH3ドメインが、二重特異性抗体内の第1のCH3ドメインの元の界面と会合するようにし、
アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基を用いて置換されており、それにより、第2のCH3ドメインの界面内の空洞を生成し、その内で、第1のCH3ドメインの界面内の突起を配置可能である。
【0323】
このように、本明細書において報告する抗体は、一実施形態において、以下において特徴付けられる:
−完全長抗体の第1の重鎖のCH3ドメイン及び完全長抗体の第2の重鎖のCH3ドメインは、各々、抗体CH3ドメイン間の元の界面において変化を含む界面で会合する。
それにおいて、i)第1の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基を用いて置換されており、それにより、他の重鎖のCH3ドメインの界面内の空洞内に配置可能である、1つの重鎖のCH3ドメインの界面内に突起を生成し、
及び、それにおいて、ii)第2の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基を用いて置換されており、それにより、第2のCH3ドメインの界面内の空洞を生成し、その内で、第1のCH3ドメインの界面内の突起を配置可能である。
【0324】
一実施形態において、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群より選択される。
【0325】
一実施形態において、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)からなる群より選択される。
【0326】
一実施形態において、両方のCH3ドメインは、各々のCH3ドメインの対応する位置におけるアミノ酸としてのシステイン(C)の導入により更に変化され、両方のCH3ドメイン間のジスルフィド架橋を形成できるようにする。
【0327】
1つの好ましい実施形態において、多重特異性抗体は、「ノブ鎖」の第1のCH3ドメイン中のアミノ酸T366W変異及び「ホール鎖」の第2のCH3ドメイン中のアミノ酸T366S、L368A、Y407V変異を含む。CH3ドメイン間の追加の鎖間ジスルフィド架橋は、また、例えば、「ホール鎖」のCH3ドメイン中にアミノ酸Y349C変異及び「ノブ鎖」のCH3ドメイン中にアミノ酸E356C変異又はアミノ酸S354C変異を導入することにより、使用することができる(Merchant, A.M, et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681)。
【0328】
一実施形態において、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいてY349C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他においてE356C、T366S、L368A、Y407V変異を含む。一実施形態において、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいてY349C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他においてS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含む(鎖間ジスルフィド架橋を形成する、1つのCH3ドメイン中の追加のY349C変異及び他のCH3ドメイン中の追加のE356C又はS354C変異)(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング;(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。EP 1 870 459 A1により記載される通りのさらなるノブ−イン−ホール技術を、代わりに、又は追加で使用することができる。このように、二重特異性抗体についての別の例は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン中のR409D、K370E変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン中のD399K、E357K変異である(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。
【0329】
一実施形態において、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン中のT366W変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン中のT366S、L368A、Y407V変異を、並びに、追加で、「ノブ鎖」のCH3ドメイン中のR409D、K370E変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン中のD399K、E357K変異を含む。
【0330】
一実施形態において、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおけるY349C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他におけるS354C、T366S、L368A、Y407V変異を含み、又は、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおけるY349C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他におけるS354C、T366S、L368A、Y407V変異、並びに、追加で、「ノブ鎖」のCH3ドメイン中のR409D、K370E変異及び「ホール鎖」のCH3ドメイン中のD399K、E357K変異を含む。CH3ドメイン中のそのようなノブ及びホール変異は、典型的には、配列番号169、配列番号170、配列番号171、又は配列番号172(ヒトIgG1サブクラスアロタイプ(白人及びアフリカ系アメリカ人又は変異体L234A/L235A、及びL234A/L235A/P329G)、配列番号173、配列番号174、又は配列番号175(ヒトIgG4サブクラス又は変異体S228P、L235E、及びS228P/L235E/P329G)(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のEUインデックスに従ったナンバリング)のヒト重鎖定常領域において使用される。
【0331】
一実施形態において、二重特異性抗体は、配列番号169、配列番号170、配列番号171、又は配列番号172、配列番号173、配列番号174、又は配列番号175のヒト重鎖定常領域を含む(CH3ドメイン中のそのような「ノブ」及び「ホール」変異(例、2つのCH3ドメインの1つにおけるY349C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他におけるS354C、T366S、L368A、Y407V変異)を更に含む)(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のEUインデックスに従ったナンバリング)。
【0332】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う操作抗体も本明細書において含まれる(例、US 2006/0025576を参照のこと)。
【0333】
本明細書における抗体又はフラグメントは、また、ハプテン並びに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」又は「DAF」を含む(例えば、US 2008/0069820を参照のこと)。
【0334】
本明細書における抗体又はフラグメントは、また、WO 2009/080251、WO 2009/080252、WO 2009/080253、WO 2009/080254、WO 2010/112193、WO 2010/115589、WO 2010/136172、WO 2010/145792、及びWO 2010/145793において記載される多重特異性抗体を含む。
【0335】
1つの好ましい実施形態においては、多重特異性抗体(それは、各々の重鎖においてCH3ドメインを含む)は、2つのCH3ドメインの1つにおいてアミノ酸S354C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他においてアミノ酸Y349C、T366S、L368A、Y407V変異(1つのCH3ドメイン中の追加のアミノ酸S354C変異及び鎖間ジスルフィド架橋を形成する他のCH3ドメイン中の追加のアミノ酸Y349C変異)を含む(Kabatに従ったナンバリング)。
【0336】
ヘテロ二量体を強制するCH3改変のための他の技術が、代替物として熟慮され、例えば、WO 96/27011、WO 98/050431、EP 1870459、WO 2007/110205、WO 2007/147901、WO 2009/089004、WO 2010/129304、WO 2011/90754、WO 2011/143545、WO 2012/058768、WO 2013/157954、WO 2013/096291において記載されている。
【0337】
一実施形態において、EP1870459 A1において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用される。このアプローチは、両方の重鎖間でのCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置に反対の電荷を伴う荷電アミノ酸の置換/変異の導入に基づく。1つの好ましい実施形態において、多重特異性抗体は、(多重特異性抗体の)第1の重鎖のCH3ドメインにおいてアミノ酸R409D、K370E変異及び(多重特異性抗体の)第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおいてアミノ酸D399K、E357K変異を含む(Kabatに従ったナンバリング)。
【0338】
別の実施形態において、多重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸T366W変異及び「ホール鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸T366S、L368A、Y407V変異を、並びに、追加で、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸R409D、K370E変異及び「ホール鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸D399K、E357K変異を含む。
【0339】
別の実施形態において、多重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおけるアミノ酸S354C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他におけるアミノ酸Y349C、T366S、L368A、Y407V変異を含み、又は、多重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおけるアミノ酸Y349C、T366W変異及び2つのCH3ドメインの他におけるアミノ酸S354C、T366S、L368A、Y407V変異並びに、追加で、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸R409D、K370E変異及び「ホール鎖」のCH3ドメインにおけるアミノ酸D399K、E357K変異を含む。
【0340】
一実施形態において、WO2013/157953において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用される。一実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366K変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸L351D変異を含む。さらなる実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351K変異を更に含む。さらなる実施形態において、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D、及びL368Eより選択されるアミノ酸変異(好ましくL368E)を更に含む。
【0341】
一実施形態において、WO2012/058768において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用される。一実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351Y、Y407A変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366A、K409F変異を含む。さらなる実施形態において、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390、又はK392(例えば、a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E、又はT411W、b)D399R、D399W、D399Y、又はD399K、c)S400E、S400D、S400R又はS400K、F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、N390R、N390K又はN390D、K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392Eより選択される)でさらなるアミノ酸変異を含む。さらなる実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351Y、Y407A変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366V、K409F変異を含む。さらなる実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366A、K409F変異を含む。さらなる実施形態において、第2のCH3ドメインは、アミノ酸K392E、T411E、D399R、及びS400R変異を更に含む。
【0342】
一実施形態において、WO2011/143545において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用され、例えば、368及び409からなる群より選択される位置にアミノ酸改変を伴う。
【0343】
一実施形態において、WO2011/090762において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用され、そこでは、また、上記に記載するノブ−インツー−ホール技術が使用される。一実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366W変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A変異を含む。一実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366Y変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸Y407T変異を含む。
【0344】
一実施形態において、多重特異性抗体は、IgG2アイソタイプであり、WO2010/129304において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用される。
【0345】
一実施形態において、WO2009/089004において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用される。一実施形態において、第1のCH3ドメインは、負荷電アミノ酸(例、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK392D又はN392D)を用いた、アミノ酸残基K392又はN392の置換を含み、及び、第2のCH3ドメインは、正荷電アミノ酸(例、リジン(K)又はアルギニン(R)、好ましくD399K、E356K、D356K、又はE357K、並びに、より好ましくD399K及びE356K)を用いた、アミノ酸残基D399、E356、D356、又はE357の置換を含む。さらなる実施形態において、第1のCH3ドメインは、負荷電アミノ酸(例、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK409D又はR409D)を用いた、アミノ酸残基K409又はR409の置換を更に含む。さらなる実施形態において、第1のCH3ドメインは、負荷電アミノ酸(例、グルタミン酸(E)、又はアスパラギン酸(D))を用いた、アミノ酸残基K439及び/又はK370の置換を更に、又は代わりに含む。
【0346】
一実施形態において、WO2007/147901において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用される。一実施形態において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸K253E、D282K、及びK322D変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸D239K、E240K、及びK292D変異を含む。
【0347】
一実施形態において、WO2007/110205において記載されるヘテロ二量体化アプローチが使用される。
【0348】
一実施形態において、二重特異性抗体の第1の結合特異性は、ハプテンに対してであり、第2の結合特異性は、非ハプテン抗原に対してである。一実施形態において、非ハプテン抗原は、白血球マーカー、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD22、CD23、CD27及びそのリガンド、CD28及びそのリガンドB7.1、B7.2、B7.3、CD29及びそのリガンド、CD30及びそのリガンド、CD40及びそのリガンドgp39、CD44、CD45及びアイソフォーム、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA−4、LFA−1及びTCR;組織適合性抗原、MHCクラスI又はII、ルイスY抗原、SLex、SLey、SLea、及びSLeb;インテグリン、VLA−1、VLA−2、VLA−3、VLA−4、VLA−5、VLA−6、αVβ3、及びLFA−1、Mac−1、及びpl50,95、αVβ1、gpIIbIIIa、αRβ3、α6β4、αVβ5、αvβ6、及びαV627;セレクチン、Lセレクチン、Pセレクチン、並びにEセレクチン及びそれらのカウンター受容体VCAM−1、ICAM−1、ICAM−2、及びLFA−3;インターロイキン、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、及びIL−15より選択される;インターロイキン受容体は、IL−1R、IL−2R、IL−3R、IL−4R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、IL−8R、IL−9R、IL−10R、IL−11R、IL−12R、IL−13R、IL−14R、及びIL−15Rからなる群より選択される;ケモカインは、PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、NAP−2、Groα、Groβ、及びIL−8からなる群より選択される;成長因子は、TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、VEGFA、VEGFB、VEGF111、VEGF121、VEGF165、VEGF189、VEGF206、PTHrP、EGFファミリー、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(Fibrosin)(FSF−1)、ヒトラミニン、及びガストリン放出ペプチド(GRP)、PLGF、HGH、HGHRから成る群より選択される;成長因子受容体は、TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO−R、GCSF−R、及び他の造血受容体からなる群より選択される;インターフェロン受容体は、IFNCαR、IFNβR、及びIFNλRからなる群より選択される;Ig及びその受容体は、IgE、FcγRI、及びFcγRIIからなる群より選択される;腫瘍抗原は、her2−neu、ムチン、CEA及びエンドシアリンからなる群より選択される;アレルゲンは、ハウスダストダニ抗原、lol p1(グラス)抗原、及び得るシオールからなる群より選択される;ウイルス性ポリペプチドは、CMV糖タンパク質B、H、及びgCIII、HIV−1エンベロープ糖タンパク質、RSVエンベロープ糖タンパク質、HSVエンベロープ糖タンパク質、HPVエンベロープ糖タンパク質、肝炎ファミリー表面抗原からなる群より選択される;毒素は、シュードモナスエンドトキシン及びオステオポンチン/ウロポンチン(uropontin)、ヘビ毒、クモ毒、及びハチ毒コノトキシンからなる群より選択される;血液因子は、補体C3b、補体C4a、補体C4b−9、Rh因子、フィブリノゲン、フィブリン、及びミエリン関連成長阻害物質からなる群より選択される;酵素は、コレステロールエステル転移ポリペプチド、膜結合マトリクスメタロプロテアーゼ、及びグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)からなる群より選択される。
抗体バリアント
【0349】
特定の実施形態において、本明細書において提供する抗体のアミノ酸配列バリアントが熟慮される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれ得る。抗体のアミノ酸配列バリアントを、抗体をコードするヌクレオチド配列中へ適切な改変を導入することにより、又はペプチド合成により調製してもよい。そのような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はその中への挿入、及び/又はその置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを作製し、最終的な構築物に達することができる(最終的な構築物が、所望の特徴(例、抗原結合)を持つとの条件で)。
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
【0350】
特定の実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発のための目的の部位は、HVR及びFRを含む。アミノ酸置換を、目的の抗体中に導入し、産物を、所望の活性(例、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDC)についてスクリーニングしてもよい。
【表3】
【0351】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ化してもよい:
(1) 疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2) 中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3) 酸性:Asp、Glu;
(4) 塩基性:His、Lys、Arg;
(5) 鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6) 芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0352】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスについて交換することを伴い得る。
【0353】
置換バリアントの1つの型は、親抗体(例、ヒト化又はヒト抗体)の1つ又は複数の超可変領域の残基を置換することを含む。一般的には、さらなる試験のために選択された、結果として得られたバリアントは、親抗体と比べて、特定の生物学的特性における改変(例、改善)を有するであろう(例、増加した親和性、低下した免疫原性)、及び/又は、親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換バリアントは、親和性成熟抗体であり、それらは、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術(例えば、本明細書において記載するものなど)を使用して簡便に生成され得る。簡単には、1つ又は複数のHVR残基を変異させ、バリアント抗体が、ファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0354】
変化(例、置換)をHVR中に作製し、例えば、抗体の親和性を改善させてもよい。そのような変化は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異を受けるコドンによりコードされる残基(例、Chowdhury, P.S., Methods Mol. Biol. 207 (2008) 179-196を参照のこと)、及び/又はSDR(a−CDR)において作製され、結果として得られたバリアントVH又はVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーから構築及び再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom, H.R. et al., Methods in Molecular Biology 178 (2002) 1-37において記載されている。親和性成熟の一部の実施形態において、多様性が、種々の方法(例、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド定方向性変異誘発)のいずれかにより、成熟について選ばれた可変遺伝子中に導入される。二次ライブラリーが、次に作製される。ライブラリーを、次に、スクリーニングし、所望の親和性を伴う任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、HVR定方向性アプローチを含み、それにおいて、いくつかのHVR残基(例、一度に4〜6残基)が無作為化される。抗原結合に含まれるHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用し、特異的に同定され得る。重鎖CDR3及び軽鎖CDR3が、特に、しばしば標的化される。
【0355】
特定の実施形態において、置換、挿入、又は欠失が、そのような変化が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ又は複数のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(例、本明細書において提供する保存的置換)を、HVRにおいて作製してもよい。そのような変化は、HVR「ホットスポット」又はSDRの外側であり得る。上に提供するバリアントVH及びVL配列の特定の実施形態において、各々のHVRのいずれかが不変である、又は、わずか1、2、若しくは3のアミノ酸置換を含む。
【0356】
変異誘発のために標的化され得る、抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれ、Cunningham and Wells in Science, 244: 1081-1085 (1989)により記載される通りである。この方法において、標的残基(例、荷電残基、例えばArg、Asp、His、Lys、及びGluなど)の残基又は群が同定され、中性又は負に荷電したアミノ酸(例、アラニン又はポリアラニン)により置換され、抗体と抗原との相互作用が影響を受けているか否かを決定する。さらなる置換を、アミノ酸位置に導入し、初期置換への機能的感受性を実証してもよい。或いは、又は、加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するための、抗原−抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基を、置換のための候補として標的化又は排除してもよい。バリアントをスクリーニングし、それらが所望の特性を含むか否かを決定してもよい。
【0357】
アミノ酸配列の挿入は、1つの残基から、100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ及び/又はカルボキシ末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入バリアントは、酵素(例、ADEPT用)、又は抗体の血清中半減期を増加させるポリペプチドへの、抗体のN又はC末端への融合を含む。
b)グリコシル化バリアント
【0358】
特定の実施形態において、本明細書において提供する、又は本明細書において報告するコンジュゲート中に含まれる抗体を変化させ、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させる。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が作製又は除去されるように、アミノ酸配列を変化させることにより、簡便に達成され得る。
【0359】
抗体がFc領域を含む場合、それに付着した糖を変化させてもよい。哺乳動物細胞により産生される天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN連結により一般的に付着されている分枝鎖、二分岐オリゴ糖を典型的に含む。例えば、Wright, A. and Morrison, S.L., TIBTECH 15 (1997) 26-32を参照のこと。オリゴ糖は、種々の糖(例、マンノース、Nアセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸)、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中でGlcNAcに付着したフコースを含み得る。一部の実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾を、特定の改善された特性を伴う抗体バリアントを作るために作製してもよい。
【0360】
一実施形態において、Fc領域に(直接的又は間接的に)付着したフコースを欠く糖構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、又は20%〜40%であり得る。フコースの量は、MALDI−TOF質量分析法により測定される通り、Asn297に付着されている全ての糖構造(例、複雑なハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される決定される(例えば、WO2008/077546に記載される通り)。Asn297は、Fc領域中の位置297(Fc領域残基のEUナンバリング)あたりに位置するアスパラギン残基を指す;しかし、Asn297は、また、抗体中の小さな配列変動に起因し、位置297の約±3アミノ酸上流又は下流、即ち、位置294と300の間に位置してもよい。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、US 2003/0157108;US 2004/0093621を参照のこと。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例は、以下を含む:US 2003/0157108;WO 2000/61739;WO 2001/29246;US 2003/0115614;US 2002/0164328;US 2004/0093621;US 2004/0132140;US 2004/0110704;US 2004/0110282;US 2004/0109865;WO 2003/085119;WO 2003/084570;WO 2005/035586;WO 2005/035778;WO 2005/053742;WO 2002/031140;Okazaki, A. et al., J. Mol. Biol. 336 (2004) 1239-1249;Yamane-Ohnuki, N. et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質フコシル化の欠損したLec13 CHO細胞(Ripka, J. et al., Arch. Biochem. Biophys. 249 (1986) 533-545;US 2003/0157108;及びWO 2004/056312、特に、実施例11)及び細胞株ノックアウト(例えばα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞など)(例、Yamane-Ohnuki, N. et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622;Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688;及びWO 2003/085107を参照のこと)を含む。
【0361】
抗体バリアントは、二分オリゴ糖と更に提供され、例えば、それにおいて、抗体のFc領域に付着した二分岐オリゴ糖が、GlcNAcにより二分されている。そのような抗体バリアントは、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO 2003/011878;米国特許第6,602,684号;及びUS 2005/0123546において記載されている。Fc領域に付着されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を伴う抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有する。そのような抗体バリアントは、例えば、WO 1997/30087;WO 1998/58964;及びWO 1999/22764において記載されている。
【0362】
c) Fc領域バリアント
特定の実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸改変を、本明細書において提供する抗体のFc領域中に導入してもよく、それにより、Fc領域バリアントを生成する。Fc領域バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例、置換)を含むヒトFc領域配列(例、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含んでもよい。
【0363】
特定の実施形態において、本発明では、一部の、しかし、全てではないエフェクター機能を持つ抗体バリアントが熟慮され、それらによって、それが、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、しかし、特定のエフェクター機能(例えば補体及びADCCなど)が不要又は有害である適用のための望ましい候補になる。インビトロ及び/又はインビボでの細胞傷害アッセイを行い、CDC及び/又はADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行い、抗体がFcγR結合を欠く(故に、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、しかし、FcRn結合能力を保持することを確認することができる。ADCC、NK細胞を媒介する主要な細胞が、FcRIIIだけを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現が、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492のページ464の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例が、米国特許第5,500,362号(例、Hellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 (1986) 7059-7063;及びHellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985) 1499-1502を参照のこと);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361を参照のこと)において記載されている。或いは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega, Madison, WI)。そのようなアッセイにのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。或いは、又は加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、動物モデル(例えば、Clynes, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (1998) 652-656において開示されるものなど)において評価してもよい。C1q結合アッセイは、また、抗体がC1qに結合できず、故に、CDC活性を欠くことを確認するために行ってもよい。例えば、WO 2006/029879及びWO 2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoro, H. et al., J. Immunol. Methods 202 (1996) 163-171;Cragg, M.S. et al., Blood 101 (2003) 1045-1052;及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103 (2004) 2738-2743を参照のこと)。FcRn結合及びインビボでのクリアランス/半減期の決定は、また、当該分野において公知の方法を使用して実施することができる(例、Petkova, S.B. et al., Int. Immunol. 18 (2006: 1759-1769)を参照のこと)。
【0364】
低下したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329の1つ又は複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体は、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327の2つ以上に置換を伴うFc変異体(いわゆる、アラニンへの残基265及び297の置換を伴う「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む)を含む。
【0365】
FcRへの改善又は減弱された結合を伴う、特定の抗体バリアントが記載されている(例、米国特許第6,737,056号;WO 2004/056312、及びShields, R.L. et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604を参照のこと)。
【0366】
特定の実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善させる1つ又は複数アミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/又は334(残基のEUナンバリング)での置換を伴うFc領域を含む。
【0367】
一部の実施形態において、変化をFc領域中に作製し、それらは、変化した(即ち、改善又は減弱した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす(例、米国特許第6,194,551号、WO 99/51642、及びIdusogie, E.E. et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184に記載される通り)。
【0368】
増加した半減期及び、胎児への母性IgGの移動に関与する、新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を伴う抗体(Guyer, R.L. et al., J. Immunol. 117 (1976) 587-593、及びKim, J.K. et al., J. Immunol. 24 (1994) 2429-2434)が、US 2005/0014934に記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善させる、それにおける1つ又は複数の置換を伴うFc領域を含む。そのようなFcバリアントは、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434の1つ又は複数での置換(例、Fc領域残基434の置換)を伴うものを含む(米国特許第7,371,826号)。
【0369】
また、Fc領域バリアントの他の例に関するDuncan, A.R. and Winter, G., Nature 322 (1988) 738-740;US 5,648,260;US 5,624,821;及びWO 94/29351を参照のこと。
【0370】
1つの好ましい実施形態において、抗体は、両方の重鎖において、変異L234A、L235A、及びP329G(EUインデックスに従ったナンバリング)を含む。
d)システイン操作抗体バリアント
【0371】
特定の実施形態において、システイン操作抗体(例、「thioMAbs」)を作ることが望ましいことがあり、それにおいて、抗体の1つ又は複数の残基が、システイン残基で置換されている。特定の実施形態において、置換された残基は、抗体の接近可能な部位で生じる。それらの残基をシステインと置換することにより、反応性チオール基が、それにより、抗体の接近可能な部位に位置付けられ、抗体を他の部分(例えば薬物部分又はリンカー−薬物部分など)にコンジュゲーションさせるために使用し、イムノコンジュゲートを作製してもよい(本明細書において更に記載する通り)。特定の実施形態において、以下の残基の任意の1つ又は複数をシステインで置換してもよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作抗体を、例えば、米国特許第7,521,541号において記載される通りに生成してもよい。
e) 抗体誘導体
【0372】
特定の実施形態において、本明細書において提供する抗体を更に改変させ、当技術分野において公知であり、容易に入手可能である追加の非タンパク質性部分を含んでもよい。抗体の誘導体化のために適切な部分は、水溶性ポリマーを含むが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例は、限定はしないが、以下を含む:ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオル(例、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であり得る、分岐又は非分岐であり得る。抗体に付着するポリマーの数は変動し得るが、1つを上回るポリマーが付着する場合、それらは同じ又は異なる分子であり得る。一般的に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又は型は、抗体誘導体が、定義された条件などの下での治療において使用されるか否かにかかわらず、考察(限定はしないが、改善される抗体の特定の特性又は機能を含む)に基づいて決定することができる。
【0373】
別の実施形態において、照射(radiation)への曝露により選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600-11605)。照射は、任意の波長であり得るが、通常の細胞に害を与えず、しかし、抗体−非タンパク質性部分に近い細胞が死滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これに限定されない。
ハプテン化化合物
【0374】
本明細書において報告するコンジュゲート中のハプテンは、それ自体が分子の1つではない場合、治療用薬剤(薬物)、細胞傷害性薬剤(例、毒素、例えばドキソルビシン又は百日咳毒素など)、フルオロフォア(例えばフルオレセイン又はローダミンなどのフルオレセイン色素など)、イメージング又は放射線治療用金属のためのキレート剤、ペプチジル標識又は非ペプチジル標識又は検出タグ、或いはクリアランス修飾剤(例えばポリエチレングリコールの種々の異性体など)、第3成分に結合するペプチド、或いは別の糖又は親油性薬剤にコンジュゲーションされ得る。そのようなコンジュゲートは、ハプテン化化合物として表示される。コンジュゲーションは、直接的に、又は介在リンカーを介することができる。
a) 治療用部分
【0375】
ハプテン−薬物コンジュゲート(ADC、ハプテン化薬物)の薬物部分(D)は、細胞傷害性効果又は細胞分裂阻害効果を有する任意の化合物、部分、又は基であり得る。薬物部分は以下を含む:(i)化学療法薬剤(微小管阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、又はDNAインターカレーターとして機能し得る);(ii)タンパク質毒素(酵素的に機能し得る);及び(iii)放射性同位体。
【0376】
例示的な薬物部分は、マイタンシノイド、オーリスタチン、ドラスタチン、トリコテセン、CC1065、カリケアマイシン及び他のエンジイン抗生物質、タキサン、アントラサイクリン、並びにその立体異性体、アイソスター(isosters)、それらの類似体又は誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0377】
タンパク質毒素は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌からの)、リシンA鎖、(Vitetta et al (1987) Science, 238:1098)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−5)、ゴーヤー阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含む(WO 93/21232)。
【0378】
治療用の放射性同位元素は、
32P、
33P、
90Y、
125I、
131I、
131In、
153Sm、
186Re、
188Re、
211At、
212B、
212Pb、及びLuの放射性同位体を含む。
【0379】
放射性同位元素又は他の標識を、公知の方法において組み入れてもよい(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57;”Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”Chatal, CRC Press 1989)。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、複合体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である(WO 94/11026)。
b)標識
【0380】
ハプテン化化合物は、ハプテン化標識であることができる。ハプテンに共有結合的に付着させることができる任意の標識部分を使用することができる(例、Singh et al (2002) Anal. Biochem. 304:147-15;Harlow E. and Lane, D. (1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Lundblad R. L. (1991) Chemical Reagents for Protein Modification, 2nd ed. CRC Press, Boca Raton, Fla.を参照のこと)。標識は、以下のために機能し得る:(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第2の標識と相互作用し、第1又は第2の標識により提供される検出可能なシグナルを改変し、例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を与える;(iii)電荷、疎水性、形状、又は他の物理的パラメーターにより、移動度(例、電気泳動移動度又は細胞透過性)に影響を及ぼす、或いは(iv)捕捉部分を提供し、例えば、イオン錯体形成を調節する。
【0381】
本明細書において報告するハプテン化標識を含むコンジュゲートは、例えば、特定の細胞、組織、又は血清において目的の抗原の発現を検出するための診断アッセイにおいて有用であり得る。診断適用のために、二重特異性抗体が使用され、それにおいて、第1の結合特異性は標的に結合し、第2の結合特異性はハプテン化標識に結合する。ハプテンは、典型的には、検出可能な部分を用いて標識される。多数の標識が利用可能であり、それらは、一般的に、以下のカテゴリー中に分類することができる:
【0382】
(a)放射性同位元素(放射性核種)、例えば
3H、
11C、
14C、
18F、
32P、
35S、
64Cu、
68Gn、
86Y、
89Zr、
99TC、
111In、
123I、
124I、
125I、
131I、
133Xe、
177Lu、
211At、又は
131Biなど。放射性同位体標識コンジュゲートは、受容体標的化イメージング実験において有用である。抗原(ハプテン)は、Current Protocols in Immunology, (1991) Volumes 1 and 2, Coligen et al, Ed. Wiley-Interscience, New York, N.Y., Pubsにおいて記載される技術を使用し、放射性同位体金属に結合する、キレート化する、又は、そうでなければ複合体化するリガンド試薬を用いて標識することができる。金属イオンと複合体化し得るキレートリガンドは、DOTA、DOTP、DOTMA、DTPA、及びTETA(Macrocyclics, Dallas, Tex.)を含む。放射性核種は、本明細書において報告する通りの複合体との複合体化を介して標的化することができる(Wu et al, Nature Biotechnology 23(9) (2005) 1137-1146)。放射性核種で標識された複合体を用いた受容体標的イメージングによって、腫瘍組織中での複合体又は対応する治療用抗体の進行性蓄積の検出及び定量化により、経路活性化のマーカーを提供することができる(Albert et al (1998) Bioorg. Med. Chem. Lett. 8:1207-1210)。
【0383】
イメージング実験用の標識として適切な金属キレート複合体(US 2010/0111856;US 5,342,606;US 5,428,155;US 5,316,757;US 5,480,990;US 5,462,725;US 5,428,139;US 5,385,893;US 5,739,294;US 5,750,660;US 5,834,456;Hnatowich et al, J. Immunol. Methods 65 (1983) 147-157;Meares et al, Anal. Biochem. 142 (1984) 68-78;Mirzadeh et al, Bioconjugate Chem. 1 (1990) 59-65;Meares et al, J. Cancer (1990), Suppl. 10:21-26;Izard et al, Bioconjugate Chem. 3 (1992) 346-350;Nikula et al, Nucl. Med. Biol. 22 (1995) 387-90;Camera et al, Nucl. Med. Biol. 20 (1993) 955-62;Kukis et al, J. Nucl. Med. 39 (1998) 2105-2110;Verel et al., J. Nucl. Med. 44 (2003) 1663-1670;Camera et al, J. Nucl. Med. 21 (1994) 640-646;Ruegg et al, Cancer Res. 50 (1990) 4221-4226;Verel et al, J. Nucl. Med. 44 (2003) 1663-1670;Lee et al, Cancer Res. 61 (2001) 4474-4482;Mitchell, et al, J. Nucl. Med. 44 (2003) 1105-1112;Kobayashi et al Bioconjugate Chem. 10 (1999) 103-111;Miederer et al, J. Nucl. Med. 45 (2004) 129-137;DeNardo et al, Clinical Cancer Research 4 (1998) 2483-90;Blend et al, Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18 (2003) 355-363;Nikula et al J. Nucl. Med. 40 (1999) 166-76;Kobayashi et al, J. Nucl. Med. 39 (1998) 829-36;Mardirossian et al, Nucl. Med. Biol. 20 (1993) 65-74;Roselli et al, Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals, 14 (1999) 209-20)。
【0384】
(b)蛍光標識、例えば希土類キレート(ユウロピウムキレート)、フルオレセイン型(FITC、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセインを含む);ローダミン型(TAMRAを含む);ダンシル;リサミン;シアニン;フィコエリトリン;テキサスレッド;及びそれらの類似体など。蛍光標識は、例えば、Current Protocols in Immunology(上記)に開示されている技術を使用して、抗原(ハプテン)にコンジュゲーションさせることができる。蛍光色素及び蛍光標識試薬は、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene, Oregon, USA)及びPierce Biotechnology, Inc.(Rockford, Ill.)から商業的に入手可能であるものを含む。
【0385】
検出標識(例えば蛍光色素及び化学発光色素など)(Briggs et al “Synthesis of Functionalised Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,” J. Chem. Soc., Perkin-Trans. 1 (1997) 1051-1058)は、検出可能なシグナルを提供し、一般的に、標識のために適用可能であり、以下の特性を伴う:(i)標識コンジュゲートは、少量のコンジュゲートを、無細胞及び細胞ベースの両方のアッセイにおいて高感度に検出できるように、低バックグラウンドを伴う非常に高いシグナルを産生すべきである;及び、(ii)標識コンジュゲートは、蛍光シグナルが、有意な光退色を伴わずに、観察、モニター、及び記録され得るように、光安定的であるべきである。膜又は細胞表面(特に生細胞)への標識コンジュゲートの細胞表面結合を含む適用のために、標識は、(iii)効果的なコンジュゲート濃度及び検出感度を達成するために、良好な水溶性を有し、及び(iv)細胞の正常な代謝プロセスを破壊しないように、又は早期の細胞死を起こさないように、生細胞に非毒性であるべきである。
【0386】
(c)種々の酵素−基質標識が、入手可能であるか、又は開示されている(例、US4,275,149を参照のこと)。酵素は、一般的に、種々の技術を使用して測定することができる発色基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、基質における色の変化を触媒し得るが、それは、分光光度的に測定することができる。或いは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させ得る。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起され、次に、(例えば、化学発光計を使用して)測定することができる光を放出し得る、又はエネルギーを蛍光アクセプターに供与する。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)など、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む。酵素をポリペプチドにコンジュゲーションさせるための技術が、O’Sullivan et al “Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay”, in Methods in Enzym. (ed. by J. Langone & IT Van Vunakis), Academic Press, New York, 73 (1981) 147-166に記載されている。
【0387】
酵素−基質の組み合わせの例(US 4,275,149;US 4,318,980)は、例えば、以下を含む:
(i)基質として水素ペルオキシダーゼを伴う西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(それにおいて、水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)発色基質としてパラ−ニトロフェニルホスフェートを伴うアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii)発色基質(例、p−ニトロフェニル(3−D−ガラクトシダーゼ))又は蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル−(3−D−ガラクトシダーゼ)を伴う3−D−ガラクトシダーゼ(3−D−Gal)。
【0388】
本明細書において報告する標識コンジュゲートは、任意の公知のアッセイ方法(例えばELISA、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイなど)において用いてもよい(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques (1987) pp. 147-158, CRC Press, Inc.)。
【0389】
本明細書において報告する標識コンジュゲートは、生物医学的及び分子イメージングの種々の方法及び技術、例えば(i)MRI(磁気共鳴イメージング);(ii)マイクロCT(コンピュータ断層撮影);(iii)SPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影);(iv)PET(陽電子放射断層撮影)Tinianow, J. et al Nuclear Medicine and Biology, 37(3) (2010) 289-297;Chen et al, Bioconjugate Chem. 15 (2004) 41-49;US 2010/0111856;(v)生物発光;(vi)蛍光;及び(vii)超音波などによる、イメージングバイオマーカー及びプローブとして有用である。免疫シンチグラフィーは、放射性物質を用いて標識されたコンジュゲートが、動物又はヒト患者に投与され、コンジュゲートが局在化する身体中の部位の写真を撮る、イメージング手順である(US 6,528,624)。イメージングバイオマーカーは、治療的介入への正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は薬理学的応答の指標として客観的に測定され、評価され得る。バイオマーカーは、いくつかの型であり得る:0型マーカーは、疾患の自然経過マーカーであり、公知の臨床指標(例、関節リウマチにおける滑膜炎症のMRI評価)と長期的に相関する;I型マーカーは、作用機構に従った介入の効果を捕捉する(その機構が、臨床転帰に関連付けられないであろう場合でさえ);II型マーカーは、サロゲートエンドポイントとして機能し、そこでは、バイオマーカーにおける変化、又はそこからのシグナルによって、標的化応答(例えば、CTによる関節リウマチにおける、測定された骨侵食など)を「検証」するための臨床的利益が予測される。イメージングバイオマーカーは、このように、以下に関する薬力学的(PD)な治療情報を提供することができる:(i)標的タンパク質の発現、(ii)標的タンパク質への治療用薬剤の結合(即ち、選択性)、並びに(iii)クリアランス及び半減期の薬物動態データ。ラボベースのバイオマーカーに関するインビボのイメージングバイオマーカーの利点は、非侵襲的治療、定量化可能な、全身評価、反復投与及び評価、すなわち、複数の時点、及び臨床(ヒト)の結果と前臨床(小動物)から潜在的に移転可能効果を含む。一部の適用について、バイオイメージングによって、前臨床試験における動物実験の数が取って代わられる、又は最小限になる。
【0390】
ペプチド標識方法は周知である。Haugland (2003) Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Inc.;Brinkley (1992) Bioconjugate Chem. 3:2;Garman, (1997) Non-Radioactive Labeling: A Practical Approach, Academic Press, London;Means (1990) Bioconjugate Chem. 1:2;Glazer et al Chemical Modification of Proteins. Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology (T. S. Work and E. Work, Eds.) American Elsevier Publishing Co., New York;Lundblad, R. L. and Noyes, C. M. (1984) Chemical Reagents for Protein Modification, Vols. I and II, CRC Press, New York;Pfleiderer, G. (1985) “Chemical Modification of Proteins”, Modern Methods in Protein Chemistry, H. Tschesche, Ed., Walter DeGruyter, Berlin and New York;and Wong (1991) Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking, CRC Press, Boca Raton, Fla.);DeLeon-Rodriguez et al, Chem. Eur. J. 10 (2004) 1149-1155;Lewis et al, Bioconjugate Chem. 12 (2001) 320-324;Li et al, Bioconjugate Chem. 13 (2002) 110-115;Mier et al Bioconjugate Chem. 16 (2005) 240-237を参照のこと。
抗体コンジュゲート
【0391】
本明細書において報告するコンジュゲート中の抗体は、それが、それ自体により、分子の1つではない場合、治療用薬物(薬物)、細胞傷害性薬剤、(例、毒素、例えばドキソルビシン又は百日咳毒素など)、フルオロフォア(例えばフルオレセイン又はローダミンのような蛍光色素など)、イメージング又は放射線治療用金属のためのキレート剤、ペプチジル標識若しくは非ペプチジル標識又は検出タグ、又はクリアランス修飾剤(例えばポリエチレングリコールの種々の異性体など)、第3成分に結合するペプチド、又は他の糖若しくは親油性薬剤に更にコンジュゲーションさせることができる。
イムノコンジュゲート
【0392】
本発明は、また、1つ又は複数の細胞傷害性薬剤、例えば化学療法用の薬剤又は薬物、成長阻害剤、毒素(例、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、又はそれらのフラグメント)、又は放射性同位体にコンジュゲーションされた、本明細書において報告する抗体又は本明細書において報告するコンジュゲートを含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0393】
一実施形態において、イムノコンジュゲートは、抗体が、以下の1つ又は複数の薬物にコンジュゲーションされた抗体−薬物コンジュゲート(ADC)である:メイタンシノイド(US 5,208,020、US 5,416,064、及びEP 0 425 235 B1を参照のこと);アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチン薬剤部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)など(US 5,635,483、US 5,780,588、及びUS 7,498,298を参照のこと);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(US 5,712,374、US 5,714,586、US 5,739,116、US 5,767,285、US 5,770,701、US 5,770,710、US 5,773,001、及びUS 5,877,296;Hinman, L.M. et al., Cancer Res. 53 (1993) 3336-3342;及びLode, H.N. et al., Cancer Res. 58 (1998) 2925-2928を参照のこと);アントラサイクリン、例えばダウノマイシン又はドキソルビシンなど(Kratz, F. et al., Curr. Med. Chem. 13 (2006) 477-523;Jeffrey, S.C. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 16 (2006) 358-362;Torgov, M.Y. et al., Bioconjug. Chem. 16 (2005) 717-721;Nagy, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000) 829-834;Dubowchik, G.M. et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12 (2002) 1529-1532;King, H.D. et al., J. Med. Chem. 45 (2002) 4336-4343;及び米国特許第6,630,579号を参照のこと);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなど;トリコテセン;並びにCC1065を含む。
【0394】
別の実施形態において、イムノコンジュゲートは、酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント(ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンタンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン(restrictocin)、エノマイシン、及びトリコテセンを含むが、これらに限定されない)にコンジュゲーションされた、本明細書において記載する抗体を含む。
【0395】
別の実施形態において、イムノコンジュゲートは、本明細書において記載する抗体又は本明細書において報告する複合体を含み、放射性原子にコンジュゲーションされ、放射性コンジュゲートを形成する。種々の放射性同位体が、放射性コンジュゲートの産生に利用可能である。例は、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー試験用の放射性原子(例えばTC
99m又はI
123)、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング用のスピン標識(磁気共鳴イメージング(MRI)としても公知)(例えばヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン、又は鉄など)を含み得る。
【0396】
抗体及び細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング薬剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHClなど)、活性エステル(例えばスベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p型アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6−ジイソシアネートなど)、及びビス−活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)などを使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta, E.S. et al., Science 238 (1987) 1098-1104において記載される通りに調製することができる。炭素−14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO 94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞において、細胞傷害性薬物の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定なリンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari, R.V. et al., Cancer Res. 52 (1992) 127-131;米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0397】
本明細書におけるイムノコンジュゲート又はADCでは、架橋試薬(BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホEMCS、スルホGMBS、スルホKMUS、スルホMBS、スルホSIAB、スルホSMCC、及びスルホSMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル(4−ビニルスルホン)安息香酸)を含むが、これらに限定されず、これらは、商業的に入手可能である(例、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから))を用いて調製された、そのようなコンジュゲートが明示的に熟慮されるが、これらに限定されない。
リンカー
【0398】
用語「リンカー」は、他の部分(例えば検出可能な標識又は薬物など)に抗原(例、ハプテン)をコンジュゲーション(連結)するために使用することができる二官能性又は多官能性部分を意味する。抗原(ハプテン)コンジュゲートを、薬物への、抗原(ハプテン)への、及び抗ハプテン抗体への結合のための反応性官能基を有するリンカーを使用して簡便に調製することができる。
【0399】
一実施形態において、リンカーは抗ハプテン抗体上に存在する求核基に反応性である求電子基を有する反応性部位を有する。抗体上のシステインチオール基は、例えば、リンカー上の求電子基と反応性であり、リンカーに共有結合を形成する。有用な求電子基は、別のチオール基、マレイミド基、及びハロアセトアミド基を含むが、これらに限定されない(例、Klussman et al, Bioconjugate Chemistry 15(4) (2004) 765-773のページ766のコンジュゲーション方法を参照のこと)。
【0400】
チオール反応性官能基の例は、チオール、マレイミド、アルファ−ハロアセチル、活性化エステル(例えばスクシンイミドエステル、4−ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステルなど)、無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、イソシアネート、及びイソチオシアネートを含むが、これらに限定されない。
【0401】
リンカーは、ペイロードに抗原(ハプテン)を連結するアミノ酸残基を含み得る。アミノ酸残基は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチド、又はドデカペプチドの単位を形成し得る。アミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに非天然に生じるアミノ酸類似体(例えばシトルリン)又はβアミノ酸(例えば、βアラニンなど)、又はωアミノ酸(例えば4−アミノ酪酸など)を含む。
【0402】
別の実施形態において、リンカーは、抗原(ハプテン)又は抗体(抗ハプテン抗体)上に存在する求電子基に反応性である求核基を有する反応性官能基を有する。有用な求電子基は、アルデヒド基及びケトンカルボニル基を含むが、これらに限定されない。リンカーの求核基のヘテロ原子は、ハプテン又は抗体上の求電子基と反応し、抗原(ハプテン)又は抗体に共有結合を形成することができる。リンカー上の有用な求核基は、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジドを含むが、これらに限定されない。抗原(ハプテン)上の求電子基は、リンカーへの付着のための簡便な部位を提供する。
【0403】
典型的には、ペプチド型リンカーは、2つ以上のアミノ酸及び/又はペプチドフラグメントの間でペプチド結合を形成することにより調製することができる。そのようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知である、液相合成方法(E. Schroder and K. Lubke “The Peptides”, volume 1 (1965) 76-136, Academic Press)に従って調製することができる。
【0404】
別の実施形態において、リンカーは溶解性又は反応性が調節された基を用いて置換されてもよい。例えば、荷電置換基(例えばスルホン酸(SO
3−)若しくはアンモニウムなど)又はポリマー(例えばPEGなど)は、試薬の水溶性を増加し得る、抗原(ハプテン)又は薬剤部分を伴うリンカー試薬のカップリング反応を促進し得る、或いは、用いられる合成経路に依存して、カップリング反応を促進し得る。
【0405】
本明細書において報告する薬物又は標識を含むコンジュゲートでは、架橋試薬(BMPEO、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホEMCS、スルホGMBS、スルホKMUS、スルホMBS、スルホSIAB、スルホSMCC、スルホSMPB、及びSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)安息香酸)、並びにビスマレイミド試薬DTME、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BM(PEO)
3、及びBM(PEO)
4を含み、これらは、商業的に入手可能である(例、Pierce Biotechnology, Inc.から))を用いて調製された複合体が明示的に熟慮されるが、これらに限定されない。ビスマレイミド試薬は、例えば、連続又は同時の様式において、チオール含有薬物部分、標識、又はリンカー中間体へのチオール基の付着を可能にする。例えば、チオール基と反応性である、マレイミド以外の他の官能基は、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート、及びイソチオシアネートを含む。
【0406】
例示的なリンカーは、マレイミドストレッチャー及びパラ−アミノベンジルカルバモイル(PAB)自壊性スペーサーを持つバリン−シトルリン(val−cit又はvc)ジペプチドリンカー試薬、並びにマレイミドストレッチャー単位及びp−アミノベンジル自壊性スペーサーを有するphe−lys(Mtr)ジペプチドリンカー試薬を含む。
【0407】
システインチオール基は求核性であり、反応し、リンカー試薬及びハプテン化化合物上で、求電子基と共有結合を形成することが可能であり、以下を含む:(i)活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、及び酸性ハロゲン化物;(ii)アルキル及びベンジルハライド(例えばハロアセトアミドなど);(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル基、及びマレイミド基;並びに(iv)スルフィド交換を介したジスルフィド(ピリジルジスルフィドを含む)。ハプテン化化合物上の求核基は、アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジド基(反応し、リンカー部分及びリンカー試薬上で求電子基と共有結合を形成することが可能である)を含むが、これらに限定されない。
III.核酸
【0408】
本明細書において報告する、又は本明細書において報告するコンジュゲート中に含まれる、抗体のアミノ酸配列バリアントをコードするDNAは、当技術分野において公知の種々の方法により調製することができる。これらの方法は、部位定方向性(又はオリゴヌクレオチド媒介性)変異誘発、PCR変異誘発、及びポリペプチドをコードする以前に調製されたDNAのカセット変異誘発による調製を含むが、これらに限定されない。組換え抗体のバリアントは、また、制限フラグメント操作により、又は合成オリゴヌクレオチドを用いたオーバーラップ伸長PCRにより構築され得る。変異誘発プライマーは、システインコドン置換をコードする。標準的な変異誘発技術を用いて、そのような改変操作抗体をコードするDNAを生成することができる。一般的なガイダンスは、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; and Ausubel et al Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, N.Y., 1993において見出すことができる。
IV.発現及び精製
【0409】
抗体は、組換え方法及び組成物を使用して産生してもよい(例、US4,816,567において記載される通り)。一実施形態において、本明細書において記載する抗体をコードする単離核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列をコードし得る(例、抗体の軽及び/又は重鎖)。さらなる実施形態において、そのような核酸を含む、1つ又は複数のベクター(例、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのそのような一実施形態において、宿主細胞(例、形質転換された)は、以下を含む:(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一実施形態において、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ細胞(例、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態において、本明細書において報告する抗体を作製する方法が提供され、それにおいて、この方法は、上に提供する抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現のために適切な条件下で培養すること、及び、場合により、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することを含む。
【0410】
本明細書において報告する抗体の組換え産生のために、抗体をコードする核酸(例、上記に記載する通り)を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/又は発現のために、1つ又は複数のベクター中に挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用し、容易に単離及び配列決定され得る(例、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)。
【0411】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現のための適切な宿主細胞は、本明細書において記載する原核細胞又は真核細胞を含む。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ではない場合、細菌中で産生させてもよい。細菌における抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、US 5,648,237、US 5,789,199、及びUS 5,840,523を参照のこと。(また、Charlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp. 245-254(大腸菌における抗体フラグメントの発現が記載されている)を参照のこと)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離してもよく、更に精製することができる。
【0412】
原核生物に加えて、真核微生物(例えば糸状菌又は酵母など)は、グリコシル化経路が「ヒト化」された、抗体コードベクター用の適切なクローニング又は発現宿主(真菌及び酵母株を含む)であり、部分的な、又は完全なヒトグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす。Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414;及びLi, H. et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照のこと。
【0413】
グリコシル化抗体の発現のための適切な宿主細胞は、また、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例は、植物細胞及び昆虫細胞を含む。多数のバキュロウイルス株が同定されており、それらは、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と組み合わせて使用され得る。
【0414】
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、及び第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照のこと。
【0415】
脊椎動物細胞も宿主として使用してもよい。例えば、懸濁液中で成長するように適応された哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7);ヒト胚腎臓株(例、Graham, F.L. et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74において記載される293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252において記載されるTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎細胞(MDCK;緩衝液ローラット肝細胞(BRL 3A));ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);TRI細胞(Mather, J.P. et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68において記載される通り);MRC 5細胞;及びFS4細胞。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFR−CHO細胞(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含む);並びに骨髄腫細胞株(例えばY0、NS0、及びSp2/0など)を含む。抗体産生にための適切な特定の哺乳動物宿主細胞系の概説については、例えば、Yazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2004), pp. 255-268を参照のこと。
V.診断及び検出のための方法及び組成物
【0416】
特定の実施形態において、抗体、特に二重特異性抗体、及び本明細書において報告するコンジュゲートのいずれかが、生物学的サンプル中の1つ又は複数の標的分子の存在を検出するために有用である。本明細書において使用する用語「検出する」は、定量的又は定性的な検出を包含する。一実施形態において、生物学的サンプルは細胞又は組織を含む。
【0417】
一実施形態において、診断又は検出の方法における使用のための、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートが提供される。特定の実施形態において、この方法は、標的への抗体又はコンジュゲートの結合のための許容可能な条件下で、生物学的サンプルを、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートと接触させること、及び、複合体が、抗体又はコンジュゲートと標的の間で形成されるか否かを検出することを含む。そのような方法は、インビトロ又はインビボの方法であり得る。
【0418】
特定の実施形態において、標識された抗体又はコンジュゲートが提供される。標識は、直接的に検出される標識又は部分(例えば蛍光標識、発色標識、高電子密度標識、化学発光標識、及び放射性標識など)、並びに、例えば、酵素反応又は分子間相互作用を通じて間接的に検出される部分(例えば酵素又はリガンドなど)を含むが、これらに限定されない。例示的な標識は、放射性同位元素
32P、
14C、
125I、
3H、及び
131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ(例、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(US4,737,456))、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ(色素前駆体(例えばHRPなど)を酸化するために過酸化水素を用いた酵素とカップリングされている)、ラクトペルオキシダーゼ、又はミクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン標識、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカルなどを含むが、これらに限定されない。
VI.医薬的製剤
【0419】
本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートの医薬的製剤を、所望の程度の純度を有するそのような抗体又はコンジュゲートを、1つ又は複数の任意の医薬的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980))を用いて、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態において混合することにより調製する。医薬的に許容可能な担体は、一般的に、用いられる投薬量及び濃度で、レシピエントに非毒性であり、緩衝剤、例えばリン酸、クエン酸、及び他の有機酸など;抗酸化剤(アスコルビン酸及びメチオニンを含む);保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベンなど;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン)など;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなど;単糖類、二糖類、及び他の糖(グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む);キレート剤、例えばEDTAなど;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;金属錯体(例、亜鉛タンパク質複合体);並びに/或いは、非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)などを含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な医薬的に許容可能な担体は、さらに、間質性薬物分散剤、例えば可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)などを含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用の方法(rhuPH20を含む)が、米国特許公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPを、1つ又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼ(例えばコンドロイチナーゼなど)と組み合わせる。
【0420】
例示的な凍結乾燥抗体製剤が、US 6,267,958に記載されている。水性抗体製剤は、US 6,171,586及びWO 2006/044908に記載されているものを含み、後者の製剤は、ヒスチジン−酢酸緩衝液を含む。
【0421】
本明細書における製剤は、また、処置されている特定の適応症について必要な際に1を上回る活性成分、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的な活性を伴うものを含み得る。そのような活性成分は、意図される目的のために効果的である量で、組み合わせで適切に存在する。
【0422】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術により、又は、界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれコロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中又はマクロエマルジョン中のヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中に封入してもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980)に開示されている。
【0423】
持続放出調製物を調製してもよい。持続放出製剤の適切な例は、抗体又はコンジュゲートを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは、成形品(例、フィルム、又はマイクロカプセル)の形態である。
【0424】
インビボ投与のために使用される製剤は、一般的に無菌である。無菌性は、例えば、無菌濾過膜を通した濾過により容易に達成され得る。
VII.治療的方法及び組成物
【0425】
本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートのいずれかを、治療的方法において使用してもよい。
【0426】
一態様において、医薬としての使用のための、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートが提供される。さらなる態様において、疾患の処置における使用のための、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートが提供される。特定の実施形態において、処置の方法における使用のための、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートが提供される。特定の実施形態において、本発明は、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートの効果的な量を個体に投与することを含む、個体を処置する方法における使用のための、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートを提供する。1つのそのような実施形態において、方法は、少なくとも1つの追加の治療用薬剤の効果的な量を個体に投与することを更に含む(例、下記に記載する通り)。上記の実施形態のいずれかに従った「個体」は、ヒトであり得る。
【0427】
さらなる態様において、本発明は、医薬の製造又は調製における、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートの使用を提供する。一実施形態において、医薬は、疾患の処置のためである。さらなる実施形態において、医薬は、医薬の効果的な量を、疾患を有する個体に投与することを含む、疾患を処置する方法における使用のためである。1つのそのような実施形態において、方法は、少なくとも1つの追加の治療用薬剤の効果的な量を個体に投与することを更に含む(例、下記に記載する通り)。上記の実施形態のいずれかに従った「個体」は、ヒトであり得る。
【0428】
さらなる態様において、本発明は、疾患を処置するための方法を提供する。一実施形態において、方法は、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートの効果的な量を、そのような疾患を有する個体に投与することを含む。1つのそのような実施形態において、方法は、少なくとも1つの追加の治療用薬剤の効果的な量を個体に投与することを更に含む(例、下記に記載する通り)。上記の実施形態のいずれかに従った「個体」は、ヒトであり得る。
【0429】
さらなる態様において、本発明は、例えば、上の治療的方法のいずれかにおける使用のための、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートのいずれかを含む医薬的製剤を提供する。一実施形態において、医薬的製剤は、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートのいずれか、及び医薬的に許容可能な担体を含む。別の実施形態において、医薬的製剤は、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートのいずれか、及び少なくとも1つの追加の治療用薬剤(例、以下記に記載する通り)を含む。
【0430】
本明細書において報告する抗体及びコンジュゲートは、治療において、単独で、又は他の薬剤との組み合わせにおいて使用することができる。例えば、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートは、少なくとも1つの追加の治療用薬剤と同時投与され得る。
【0431】
上に記述するそのような組み合わせ治療は、組み合わせ投与(そこでは、2つ以上の治療用薬剤が、同じ又は別々の製剤中に含まれる)、及び別々の投与(その場合において、本発明の抗体の投与は、追加の治療用薬剤及び/又はアジュバントの投与に先立ち、それと同時に、及び/又はそれに続いて起こり得る)を包含する。本明細書において報告する抗体及びコンジュゲートは、また、放射線治療との組み合わせにおいて使用することができる。
【0432】
本明細書において報告する抗体又はコンジュゲート(及び任意の追加の治療用薬剤)を、任意の適切な手段(非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに、局所処置のために望ましい場合、病巣内投与を含む)により投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は、投与が短期又は慢性であるかに部分的に依存し、任意の適切な経路により、例えば、注射(例えば静脈内又は皮下注射など)によることができる。種々の投薬スケジュール(種々の時間点にわたる単一又は複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない)を、本明細書において熟慮する。
【0433】
本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートを、良好な医学的行為と一致した様式において、製剤化、投薬、及び投与し得る。この文脈における考慮のための因子は、処置されている特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与の方法、投与のスケジュール、及び医療従事者に公知の他の因子を含む。抗体又はコンジュゲートは、問題の障害を防止又は処置するために現在使用される1つ又は複数の薬剤を用いて、必要はないが、しかし、場合により、製剤化される。そのような他の薬剤の効果的な量は、製剤中に存在する抗体又はコンジュゲートの量、障害又は処置の型、及び上に考察する他の因子に依存する。これらは、一般的に、同じ投与量において、及び本明細書において記載する投与経路を用いて、又は、本明細書において記載する投与量の約1〜99%、又は、任意の投与量において、及び経験的/臨床的に適切であると決定された任意の経路により使用される。
【0434】
疾患の防止又は処置のために、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲート(単独で、或いは、1つ又は複数の他の追加の治療用薬剤との組み合わせにおいて使用される場合)の適切な投与量は、処置される疾患の型、抗体又はコンジュゲートの型、疾患の重症度及び経過、抗体又はコンジュゲートが、防止的又は治療的な目的のために投与されるか否か、以前の治療、患者の病歴及び抗体又はコンジュゲートへの応答、並びに主治医の判断に依存する。抗体又はコンジュゲートは、1回で、又は一連の処置にわたり患者に適切に投与される。疾患の型及び重症度に依存して、抗体又はコンジュゲートの約1μg/kg〜15mg/kg(例、0.5〜10mg/kg)は、例えば、1つ又は複数の別々の投与による、又は連続注入によるかにかかわらず、患者に投与するための初期候補投与量であることができる。1つの典型的な1日投与量は、上に言及する因子に依存して、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であり得る。数日間又はそれより長い反復投与のために、状態に依存し、処置を、一般的に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続し得る。抗体又はコンジュゲートの1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲であろう。このように、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1つ又は複数の用量を、患者に投与してもよい。そのような用量は、間欠的に、例えば、毎週又は3週間毎(例、患者が、約2〜約20、又は、例えば、約6用量の抗体を受けるように)に投与することができる。初期のより高い負荷用量、それに続く1つ又は複数の低用量を投与してもよい。しかし、他の投与計画が有用であり得る。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイにより簡単にモニターされる。
【0435】
上の製剤又は治療的方法のいずれかを、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートの代わりに、又はそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを使用して行ってもよいことが理解される。
VIII.製造品
【0436】
本発明の別の態様において、上記に記載する障害の処置、防止、及び/又は診断のために有用な材料を含む製造品が提供される。製造品は、容器及び容器上に、又はそれと関連するラベル若しくは添付文書を含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどを含む。容器は、種々の材料(例えばガラス又はプラスチックなど)から形成され得る。容器は、それ自体である、又は状態を処置、防止、及び/又は診断するために効果的な別の組成物と組み合わせた組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書において報告する抗体又は複合体である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選んだ状態を処置するために使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)本明細書において含まれる組成物を伴う第1の容器(それにおいて、組成物は、本明細書において報告する抗体又は複合体を含む);及び(b)本明細書において含まれる組成物を伴う第2の容器(それにおいて、組成物は、さらに、細胞傷害性又は他の治療用薬剤を含む)を含み得る。本発明のこの実施形態における製造品は、組成物が、特定の状態を処置するために使用することができることを示す添付文書を含み得る。或いは、又は加えて、製造品は、さらに、医薬的に許容可能な緩衝液(例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、及びデキストロース溶液など)を含む第2の(又は第3の)容器を含み得る。それは、さらに、商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料(他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む)を含み得る。
【0437】
上の製造品のいずれかが、本明細書において報告する抗体又はコンジュゲートの代わりに、又はそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを含み得ることが理解される。
IX.具体的な実施形態
【0438】
1.以下を含む共有結合コンジュゲート:
i) ハプテン化ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性及び血液脳関門受容体に特異的に結合する第2の結合特異性を有する二重特異性抗体、並びに
ii)ハプテン化ペイロード、
ここで、ハプテン化ペイロードは、第1の結合特異性により特異的に結合され、
ここで、共有結合コンジュゲートは、ハプテン化ペイロードと、ハプテン化ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性の間に共有結合を有し、並びに
ここで、ハプテン化ペイロードは、ビオチン化ペイロード、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロード、ジゴキシゲニン化ペイロード、カルボラン化(carboranylated)ペイロード、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロード、ヘリカー化(helicarylated)ペイロード、及びブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードからなる群より選択される。
【0439】
2.ハプテン化ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性及び血液脳関門受容体に特異的に結合する第2の結合特異的を有する二重特異性抗体及びハプテン化ペイロード(それにおいて、ハプテン化ペイロードは、第1の結合特異性により特異的に結合される)を含む非共有結合複合体。
【0440】
3.ハプテン化ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性及び血液脳関門受容体に特異的に結合する第2の結合特異的を有する二重特異性抗体及びハプテン化ペイロード(それにおいて、ハプテン化ペイロードは、第1の結合特異性により特異的に結合され、それは、ハプテン化ペイロードと、ハプテン化ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性の間に共有結合を有する)を含む共有結合コンジュゲート。
【0441】
4.項目1〜3のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、ビオチン化ペイロード、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロード、ジゴキシゲニン化ペイロード、カルボラン化(carboranylated)ペイロード、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロード、ヘリカー化(helicarylated)ペイロード、及びブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードを含む群より選択される。
【0442】
5.項目1〜4のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテンは、ヌクレオチド又はヌクレオシドの誘導体又は類似体である。一実施形態において、ハプテンは、アミノ酸の誘導体又は類似体である。
【0443】
6.項目1〜5のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、血液脳関門受容体は、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、及びヘパリン結合上皮成長因子様成長因子(HB−EGF)からなる群より選択される。
【0444】
7.項目1〜6のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、2つの結合部位を含む完全長抗体である.
【0445】
8.項目1〜7のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、1つ又は2つのscFv又はscFabが融合されており、3つ又は4つの結合部位を含む完全長抗体である。
【0446】
9.項目1〜8のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は抗体フラグメントである。一実施形態において、抗体フラグメントは、F(ab’)
2及びダイアボディより選択される。
【0447】
10.項目1〜9のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0448】
11.二重特異性抗体にエフェクター機能がない、項目1〜10のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲート。
【0449】
12.項目1〜11のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、機能的Fc領域を有さない。
【0450】
13.項目1〜12のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、Fc領域を有さない。
【0451】
14.項目1〜13のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、変異L234A、L235A、及びP329Gを伴うヒトIgG1サブクラスのFc領域を有し、それにおいて、位置は、KabatのFc領域ナンバリング(Kabat EUインデックス)に従って決定される。
【0452】
15.項目1〜14のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、変異S228P、L235E、及びP329Gを伴うヒトIgG4サブクラスのFc領域を有し、それにおいて、位置は、KabatのFc領域ナンバリング(Kabat EUインデックス)に従って決定される。
【0453】
16.項目1〜15のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、以下を含む:
a)ハプテン化ペイロードのための1つの結合部位及び血液脳関門受容体のための1つの結合部位、又は
b)ハプテン化ペイロードのための2つの結合部位及び血液脳関門受容体のための1つの結合部位、又は
c)ハプテン化ペイロードのための1つの結合部位及び血液脳関門受容体のための2つの結合部位、又は
d)ハプテン化ペイロードのための2つの結合部位及び血液脳関門受容体のための2つの結合部位。
【0454】
17.項目1〜16のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ハプテン化ペイロードのための2つの結合部位及び血液脳関門受容体のための2つの結合部位を含む。
【0455】
18.項目1〜17のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、ハプテンとペイロードの間にリンカーを含む。
【0456】
19.項目18に従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、リンカーはペプチドリンカーである。
【0457】
20.項目18に従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、リンカーは化学的リンカー(非ペプチドリンカー)である。
【0458】
21.項目1〜20のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体及びハプテン化ペイロードは、各々、官能基を含み、それにより、二重特異性抗体によるハプテン化ペイロードの結合時、共有結合が、ハプテン化ペイロードと二重特異性抗体の間に形成される。
【0459】
22.項目1〜21のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、抗体のCDR2中のアミノ酸残基に官能基を含み、ここで、CDR2が、Kabatに従い決定される。
【0460】
23.項目22に従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体のCDR2中のアミノ酸残基での官能基は、チオール基である。
【0461】
24.項目1〜23のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、抗体のCDR2中にシステインアミノ酸残基を含む。
【0462】
25.項目1〜24のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、ハプテン中に、又は、リンカー中に存在する場合、ハプテンとペイロードの間に、官能基を含む。
【0463】
26.項目25に従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、官能基は、チオール、又はマレイミド、又はハロアセチルである。
【0464】
27.項目25〜26のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン中の、又は、存在する場合、リンカー中の官能基は、チオール基である。
【0465】
28.項目1〜27のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、共有結合は、抗体のCDR2中のシステイン残基とハプテン化ペイロード中のチオール基の間である。
【0466】
29.項目28に従った複合体又はコンジュゲート、それにおいて、共有結合はジスルフィド結合である。
【0467】
30.項目28〜29のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、共有結合はジスルフィド結合であり、それは、酸化還元活性剤の添加を伴わず形成される。
【0468】
31.項目1〜30のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、CDR2が、ビオチン化ペイロード、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロード、ジゴキシゲニン化ペイロード、及びフルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードからなる群より選択されるハプテン化ペイロードの場合において、重鎖CDR2である。
【0469】
32.項目31に従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体の重鎖CDR2中のシステイン残基は、Kabatの重鎖可変ドメインナンバリングに従った位置52、又は位置52a、又は位置52b、又は位置52c、又は位置52d、又は位置53にある。
【0470】
33.項目31〜32のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体の重鎖CDR2中のシステイン残基は、Kabatの重鎖可変ドメインナンバリングに従った位置52a、又は位置52b、又は位置52c、又は位置53にある。
【0471】
34.項目31〜33のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体の重鎖CDR2中のシステイン残基は、Kabatの重鎖可変ドメインナンバリングに従った位置52bに、又は位置53にある。
【0472】
35.項目1〜30のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、CDR2は、ヘリカー化(helicarylated)ペイロードの場合において、軽鎖CDR2である。
【0473】
36.項目35に従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体の軽鎖CDR2中のシステイン残基は、Kabatの軽鎖可変ドメインナンバリングに従った位置51に、又は位置55にある。
【0474】
37.項目35〜36のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体の軽鎖CDR2中のシステイン残基は、Kabatの軽鎖可変ドメインナンバリングに従った位置55にある。
【0475】
38.項目1〜37のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、CDR2当たり正確に1つの共有結合が形成される。
【0476】
39.項目1〜38のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ペイロードは、結合部分、標識部分、及び生物学的活性部分より選択される。
【0477】
40.項目1〜39のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、生物学的に活性な部分は、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲートポリペプチド、1つ又は複数のCNS標的の天然リガンド、1つ又は複数のCNS標的の天然リガンドの改変バージョン、アプタマー、阻害性核酸(即ち、小さな阻害性RNA(siRNA)及び短いヘアピンRNA(shRNA))、ロックド核酸(LNA)、リボザイム、及び小分子、又は前述の任意の活性フラグメントを含む群より選択される。
【0478】
41.項目1〜40のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ペイロードは、核酸又は核酸誘導体である。
【0479】
42.項目1〜41のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、核酸はiRNA又はLNAである。
【0480】
43.項目1〜42のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ペイロードはポリペプチドである。
【0481】
44.項目1〜43のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ペイロードは、小分子(非ポリペプチドの生物学的に活性な部分)である。
【0482】
45.項目1〜44のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、生物学的に活性な部分は、ポリペプチドである。
【0483】
46.項目45に従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ポリペプチドは、5〜500のアミノ酸残基からなる。
【0484】
47.項目45〜46のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ポリペプチドは、10〜450のアミノ酸残基を含む。
【0485】
48.項目45〜47のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ポリペプチドは、15〜400のアミノ酸残基を含む。
【0486】
49.項目45〜48のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ポリペプチドは、18〜350のアミノ酸残基を含む。
【0487】
50.項目1〜49のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性(抗ジゴキシゲニン結合特異性;抗DIG結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性;抗(h)TfR結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性;抗LRP8結合特異性)に特異的に結合する第2の結合特異性を含む。
【0488】
51.項目1〜50のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する2つの結合特異性(2つの抗ジゴキシゲニン結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(2つの抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性)に特異的に結合する2つの結合特異性を有する。
【0489】
52.項目1〜51のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、それにおいて、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号01のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号02のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号03のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号05のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号06のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号07のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0490】
53.項目1〜52のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、ヒト化結合特異性である。
【0491】
54.項目1〜53のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、上記の実施形態のいずれかにおける通りのCDR及びアクセプターヒトフレームワーク(例、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。
【0492】
55.項目1〜54のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号09又は25のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号10又は26のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号11又は27のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号13又は29のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号14又は30のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号15又は31のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0493】
56.項目1〜55のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号04又は12又は20又は28のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0494】
57.項目1〜56のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗ジゴキシゲニン抗体は、ジゴキシゲニンに結合する能力を保持する。
【0495】
58.項目1〜57のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号01又は09又は17又は25において置換、挿入、及び/又は欠失されている。
【0496】
59.項目1〜58のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0497】
60.項目1〜59のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗ジゴキシゲニン抗体は、配列番号01又は09又は17又は25においてVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0498】
61.項目1〜60のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ジゴキシゲニン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号08又は16又は24又は32のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を更に含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0499】
62.項目1〜61のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗ジゴキシゲニン抗体は、ジゴキシゲニンに結合する能力を保持する。
【0500】
63.項目1〜62のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号08又は16又は24又は32において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0501】
64.項目1〜63のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗ジゴキシゲニン抗体は、配列番号08又は16又は24又は32においてVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0502】
65.項目1〜49のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性(抗ビオチン結合特異性;抗BI結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性;抗(h)TfR結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性;抗LRP8結合特異性)に特異的に結合する第2の結合特異性を含む。
【0503】
66.項目1〜49及び65のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する2つの結合特異性(2つの抗ビオチン結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(2つの抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性)に特異的に結合する2つの結合特異性を有する。
【0504】
67.項目1〜49及び65〜66のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号37のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0505】
68.項目1〜49及び65〜67のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、ヒト化結合特異性である。
【0506】
69.項目1〜49及び65〜68のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、上記の実施形態のいずれかにおける通りのCDR及びアクセプターヒトフレームワーク(例、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。
【0507】
70.項目1〜49及び65〜69のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号41又は57のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号42又は58のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号43又は59のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号45又は61のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号46又は62のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号47又は64のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0508】
71.項目1〜49及び65〜70のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号36又は44又は52又は60のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0509】
72.項目1〜49及び65〜71のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗ビオチン抗体は、ビオチンに結合する能力を保持する。
【0510】
73.項目1〜49及び65〜72のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号36又は44又は52又は60において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0511】
74.項目1〜49及び65〜73のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗ビオチン抗体は、配列番号36又は44又は52又は60においてVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0512】
75.項目1〜49及び65〜74のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ビオチン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号40又は48又は56又は64のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を更に含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0513】
76.項目1〜49及び65〜75のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗ビオチン抗体は、ビオチンに結合する能力を保持する。
【0514】
77.項目1〜49及び65〜76のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号40又は48又は56又は64において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0515】
78.項目1〜49及び65〜77のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗ビオチン抗体は、配列番号40又は48又は56又は64においてVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0516】
79.項目1〜49のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性(抗テオフィリン結合特異性;抗THEO結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性;抗(h)TfR結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性;抗LRP8結合特異性)に特異的に結合する第2の結合特異性を含む。
【0517】
80.項目1〜49及び79のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する2つの結合特異性(2つの抗テオフィリン結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(2つの抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性)に特異的に結合する2つの結合特異性を有する。
【0518】
81.項目1〜49及び79〜80のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号67のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号69のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号70のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号71のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0519】
82.項目1〜49及び79〜81のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、ヒト化結合特異性である。
【0520】
83.項目1〜49及び79〜82のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、上記の実施形態のいずれかにおける通りのCDR及びアクセプターヒトフレームワーク(例、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。
【0521】
84.項目1〜49及び79〜83のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号73又は89のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号74又は90のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号75又は91のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号77又は93のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号78又は94のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号79又は95のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0522】
85.項目1〜49及び79〜84のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号68又は76又は84又は92のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0523】
86.項目1〜49及び79〜85のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗テオフィリン抗体は、テオフィリンに結合する能力を保持する。
【0524】
87.項目1〜49及び79〜86のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号68又は76又は84又は92において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0525】
88.項目1〜49及び79〜87のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗テオフィリン抗体は、配列番号68又は76又は84又は92においてVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0526】
89.項目1〜49及び79〜88のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、テオフィリン化(theophyllinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号72又は80又は88又は96のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を更に含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0527】
90.項目1〜49及び79〜89のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗テオフィリン抗体は、テオフィリンに結合する能力を保持する。
【0528】
91.項目1〜49及び79〜90のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号72又は80又は88又は96において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0529】
92.項目1〜49及び79〜91のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗テオフィリン抗体は、配列番号72又は80又は88又は96においてVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0530】
93.項目1〜49のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性(抗フルオレセイン結合特異性;抗FLUO結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性;抗(h)TfR結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性;抗LRP8結合特異性)に特異的に結合する第2の結合特異性を含む。
【0531】
94.項目1〜49及び93のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードに特異的に結合する2つの結合特異性(2つの抗フルオレセイン結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(2つの抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性)に特異的に結合する2つの結合特異性を有する。
【0532】
95.項目1〜49及び93〜94のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号98のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号99のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号101のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号102のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0533】
96.項目1〜49及び93〜95のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、フルオレセイン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、ヒト化結合特異性である。
【0534】
97.項目1〜49及び93〜96のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、上記の実施形態のいずれかにおける通りのCDR及びアクセプターヒトフレームワーク(例、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。
【0535】
98.項目1〜49及び93〜97のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号105又は113のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号106又は114のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号107又は115のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号109又は117のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号110又は118のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号111又は119のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0536】
99.項目1〜49及び93〜98のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号108又は116のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0537】
100.項目1〜49及び93〜99のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗フルオレセイン抗体は、フルオレセインに結合する能力を保持する。
【0538】
101.項目1〜49及び93〜100のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号108又は116において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0539】
102.項目1〜49及び93〜101のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗フルオレセイン抗体は、配列番号108又は116においてVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0540】
103.項目1〜49及び93〜102のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、フルオレセイン化(fluoresceinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号112又は120のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を更に含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0541】
104.項目1〜49及び93〜103のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗フルオレセイン抗体は、フルオレセインに結合する能力を保持する。
【0542】
105.項目1〜49及び93〜104のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号112又は120において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0543】
106.項目1〜49及び93〜105のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗フルオレセイン抗体は、配列番号112又は120においてVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0544】
107.項目1〜49のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードに特異的に結合する第1の結合特異性(抗ブロモデオキシウリジン結合特異性;抗BrdU結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性;抗(h)TfR結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性;抗LRP8結合特異性)に特異的に結合する第2の結合特異性を含む。
【0545】
108.項目1〜49及び107のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、二重特異性抗体は、ブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードに特異的に結合する2つの結合特異性(2つの抗ブロモデオキシウリジン結合特異性)及び(ヒト)トランスフェリン受容体(2つの抗(ヒト)トランスフェリン受容体結合特異性)に、又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(抗低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8結合特異性)に特異的に結合する2つの結合特異性を有する。
【0546】
109.項目1〜49及び107〜108のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号214のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号216のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号218のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号219のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号220のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号221のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0547】
110.項目1〜49及び107〜109のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、ヒト化結合特異性である。
【0548】
111.項目1〜49及び107〜110のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ブロモデオキシウリジン化ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、非ヒト抗体及びアクセプターヒトフレームワーク(例、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク)からのCDRを含む。
【0549】
112.項目1〜49及び107〜111のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、(a)配列番号214又は215のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、(b)配列番号216又は217のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、(c)配列番号218のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、(d)配列番号219のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、(e)配列番号220のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び(f)配列番号221のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0550】
113.項目1〜49及び107〜112のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号222又は224のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0551】
114.項目1〜49及び107〜113のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗ブロモデオキシウリジン抗体は、ブロモデオキシウリジンに結合する能力を保持する。
【0552】
115.項目1〜49及び107〜114のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号222又は224において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0553】
116.項目1〜49及び107〜115のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗ブロモデオキシウリジン抗体は、配列番号223又は225においてVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0554】
117.項目1〜49及び107〜116のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ブロモデオキシウリジン化(bromodeoxyuridinylated)ペイロードに特異的に結合する結合特異性は、配列番号223又は225のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を更に含む、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインの対である。
【0555】
118.項目1〜49及び107〜117のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比べて、置換(例、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、しかし、その配列を含む抗ブロモデオキシウリジン抗体は、ブロモデオキシウリジンに結合する能力を保持する。
【0556】
119.項目1〜49及び107〜118のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、合計1〜10のアミノ酸が、配列番号223又は225において置換、挿入、及び/又は欠失されており、場合により、置換、挿入、又は欠失が、CDRの外側の領域中(即ち、FR中)で生じる。
【0557】
120.項目1〜49及び107〜119のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗ブロモデオキシウリジン抗体は、配列番号223又は225においてVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。
【0558】
121.項目1〜38、40、43及び45〜120のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ペイロードは、ハプテン化完全長抗体又はハプテン化抗体フラグメントである。
【0559】
122.項目1〜38、40、43及び45〜121のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、ハプテン化された完全長抗アルファシヌクレイン抗体である。
【0560】
123.項目1〜38、40、43及び45〜121のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、アルファ−シヌクレインに特異的に結合する、ハプテン化された抗アルファ−シヌクレイン抗体フラグメントである。
【0561】
124.項目121〜123のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテンはビオチンである。
【0562】
125.項目1〜38、40、43及び45〜124のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号243〜245のHVR、及び軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号246〜248のHVRを含む。
【0563】
126.項目1〜38、40、43及び45〜125のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号249、250、及び245のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号251〜253のHVRを含む。
【0564】
127.項目1〜38、40、43及び45〜126のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、配列番号254からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号255からなる軽鎖可変ドメインを含む。
【0565】
128.項目1〜38、40、43及び45〜127のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、配列番号254からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号255からなる軽鎖可変ドメインを含む抗体をヒト化することにより得られている。
【0566】
129.項目1〜38、40、43及び45〜128のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であり、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号243〜245のHVR、及び軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号246〜248のHVRを含み、それにおいて、各々のHVRにおいて、3までのアミノ酸残基を変化させることができる。
【0567】
130.項目1〜38、40、43及び45〜129のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であり、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号249、250、及び245のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号251〜253のHVRを含み、それにおいて、各々のHVRにおいて、3までのアミノ酸残基を変化させることができる。
【0568】
131.項目1〜38、40、43及び45〜130のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であって、重鎖可変ドメインは、配列番号254からなる重鎖可変ドメインに由来し、軽鎖可変ドメインは、配列番号255からなる軽鎖可変ドメインに由来する。
【0569】
132.項目1〜38、40、43及び45〜131のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、重鎖において、配列番号256〜258のHVR、及び軽鎖において、配列番号259〜261のHVRを含む抗体と同じエピトープに結合する。
【0570】
133.項目1〜38、40、43及び45〜132のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、重鎖において、配列番号262、263、及び258のHVR、並びに軽鎖において、配列番号264〜266のHVRを含む抗体と同じエピトープに結合する。
【0571】
134.項目1〜38、40、43及び45〜133のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、配列番号267からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号268からなる軽鎖可変ドメインを含む。
【0572】
135.項目1〜38、40、43及び45〜134のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、配列番号267からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号268からなる軽鎖可変ドメインを含む抗体をヒト化することにより得られている。
【0573】
136.項目1〜38、40、43、及び45〜135のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であって、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号256〜258のHVR、及び軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号259〜261のHVRを含み、それにおいて、各々のHVRにおいて、3までのアミノ酸残基を変化させることができる。
【0574】
137.項目1〜38、40、43、及び45〜136のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であって、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号262、263、及び258のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号264〜266のHVRを含み、それにおいて、各々のHVRにおいて、3までのアミノ酸残基を変化させることができる。
【0575】
138.項目1〜38、40、43、及び45〜137のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であって、重鎖可変ドメインは、配列番号267からなる重鎖可変ドメインに由来し、軽鎖可変ドメインは、配列番号268からなる軽鎖可変ドメインに由来する。
【0576】
139.項目1〜38、40、43、及び45〜138のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、重鎖において、配列番号269〜271のHVR、及び軽鎖において、配列番号272〜274のHVRを含む抗体と同じエピトープに結合する。
【0577】
140.項目1〜38、40、43、及び45〜139のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、重鎖において、配列番号269、275、及び271のHVR、並びに軽鎖において、配列番号276〜278のHVRを含む抗体と同じエピトープに結合する。
【0578】
141.項目1〜38、40、43、及び45〜140のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、配列番号279からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号280からなる軽鎖可変ドメインを含む。
【0579】
142.項目1〜38、40、43、及び45〜141のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、配列番号279からなる重鎖可変ドメイン及び配列番号280からなる軽鎖可変ドメインを含む抗体をヒト化することにより得られている。
【0580】
143.項目1〜38、40、43、及び45〜142のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であって、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号269〜271のHVR、及び軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号272〜274のHVRを含み、それにおいて、各々のHVRにおいて、3までのアミノ酸残基を変化させることができる。
【0581】
144.項目1〜38、40、43、及び45〜143のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であって、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号269、275、及び271のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号276〜278のHVRを含み、それにおいて、各々のHVRにおいて、3までのアミノ酸残基を変化させることができる。
【0582】
145.項目1〜38、40、43、及び45〜144のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体はヒト化抗体であって、重鎖可変ドメインは、配列番号279からなる重鎖可変ドメインに由来し、軽鎖可変ドメインは、配列番号280からなる軽鎖可変ドメインに由来する。
【0583】
146.項目1〜38、40、43、及び45〜121のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、ハプテン化された完全長抗ヒトTau(pS422)抗体である。
【0584】
147.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び146のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、位置422のセリンでリン酸化されたヒトTauに特異的に結合する、ハプテン化された抗ヒトTau(pS422)抗体フラグメントである。
【0585】
148.項目146〜147のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテンはビオチンである。
【0586】
149.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び146〜148のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗ヒトTau(pS422)抗体は、以下を含む:
a)重鎖可変ドメインにおいて、配列番号230、239、及び232のHVR、又は
b)重鎖可変ドメインにおいて、配列番号230、231、及び232のHVR。
【0587】
150.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び146〜149のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、以下を更に含む:
a)軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号234、235、及び236のHVR、又は
b)軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号233、229、及び236のHVR。
【0588】
151.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び146〜150のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、以下を含む:
a)重鎖可変ドメインにおいて、配列番号230、239、及び232のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号234、235、及び236のHVR、又は
b)重鎖可変ドメインにおいて、配列番号230、231、及び232のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号233、229、及び236のHVR、又は
c)重鎖可変ドメインにおいて、配列番号230、231、及び232のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号234、235、及び236のHVR。
【0589】
152.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び146〜151のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、以下を含む:
a)配列番号241の重鎖可変ドメイン及び配列番号238の軽鎖可変ドメイン、又は
b)配列番号240の重鎖可変ドメイン及び配列番号237の軽鎖可変ドメイン、又は
c)配列番号240の重鎖可変ドメイン及び配列番号238の軽鎖可変ドメイン、又は
d)配列番号242の重鎖可変ドメイン及び配列番号238の軽鎖可変ドメイン。
【0590】
153.項目1〜38、40、43、及び45〜121のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、ハプテン化された完全長抗Abeta抗体である。
【0591】
154.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び154のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、ヒトAbetaに特異的に結合する、ハプテン化された抗Abeta抗体フラグメントである。
【0592】
155.項目153〜154のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、ハプテンはビオチンである。
【0593】
156.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び153〜155のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗Abeta抗体は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号281、282、及び283のHVRを含む。
【0594】
157.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び153〜156のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、さらに、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号284、285、及び286のHVRを含む。
【0595】
158.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び153〜157のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号281、282、及び283のHVR、並びに軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号284、285、及び286のHVRを含む。
【0596】
159.項目1〜38、40、43、及び45〜121及び153〜158のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートであって、それにおいて、抗体は、以下を含む:
a)配列番号287の重鎖可変ドメイン及び配列番号290の軽鎖可変ドメイン、又は
b)配列番号288の重鎖可変ドメイン及び配列番号291の軽鎖可変ドメイン、又は
c)配列番号289の重鎖可変ドメイン及び配列番号292の軽鎖可変ドメイン。
【0597】
160.項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲート及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬的製剤。
【0598】
161.医薬としての使用のための、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲート。
【0599】
162.癌又は神経学的障害の処置のための、項目1〜159のいずれか1つに従ったコンジュゲート。
【0600】
163.医薬の製造における、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの使用。
【0601】
164.項目163に従った使用であって、それにおいて、医薬は、癌の処置用である。
【0602】
165.項目163に従った使用であって、それにおいて、医薬は、神経学的障害の処置用である。
【0603】
166.項目165に従った使用であって、それにおいて、神経学的障害は、アルツハイマー病(AD)(軽度認知障害及び前駆ADを含むが、これらに限定されない)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌(例、CNS又は脳に影響する癌)、及び外傷性脳損傷より選択される。
【0604】
167.診断剤としての、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの使用。
【0605】
168.ペイロードの安定性を増加させるための、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの使用。
【0606】
169.ペイロードの活性を増加させるための、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの使用。
【0607】
170.ペイロードのインビボ半減期を増加させるための、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの使用。
【0608】
171.疾患の処置における、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの使用。
【0609】
172.項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの効果的な量を個体に投与することを含む、疾患を有する個体を処置する方法。
【0610】
173.項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの効果的な量を個体に投与することを含む、個体において疾患を処置する方法。
【0611】
174.項目171〜173のいずれか1つに従った使用又は方法であって、それにおいて、疾患は癌である。
【0612】
175.項目171〜173のいずれか1つに従った使用又は方法であって、それにおいて、疾患は神経学的障害である。
【0613】
176.項目175に従った使用又は方法であって、それにおいて、神経学的障害は、アルツハイマー病(AD)(軽度認知障害及び前駆ADを含むが、これらに限定されない)、脳卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、癌(例、CNS又は脳に影響する癌)、及び外傷性脳損傷より選択される。
【0614】
177.血液脳関門を横切るハプテン化ペイロードの標的化送達のための、項目1〜159のいずれか1つに従った複合体又はコンジュゲートの使用。
【0615】
178.項目177に従った使用であって、それにおいて、使用は、血液脳関門を横切る遊離(即ち、単離)ハプテン化ペイロードの標的化送達用である。
【0616】
179.血液脳関門を横切るハプテン化ペイロードの標的化送達及び血液脳関門又は脳中でのハプテン化ペイロードの放出のための、項目1〜2及び4〜159のいずれか1つに従った複合体の使用。
【0617】
180.項目179に従った使用であって、それにおいて、ハプテン化ペイロードの送達は、二重特異性抗体又は複合体の非存在における送達と比較し、より高い。
【0618】
181.項目180に従った使用であって、それにおいて、送達は2倍高い。
【0619】
182.項目180〜181のいずれか1つに従った使用であって、それにおいて、送達は10倍高い。
【0620】
183.項目179〜182のいずれか1つに従った使用であって、それにおいて、ハプテン化ペイロードは、二重特異性抗体又は複合体の存在においてよりも、二重特異性抗体又は複合体の非存在において、より高い生物学的活性を有する。
【0621】
184.項目183に従った使用であって、それにおいて、生物学的活性は、二重特異性抗体又は複合体の非存在において2倍高い。
【0622】
185.項目183〜184のいずれか1つに従った使用であって、それにおいて、生物学的活性は、二重特異性抗体又は複合体の非存在において10倍高い。
【0623】
本明細書において引用する全ての参考文献の開示が、本明細書とともに、参照により組み入れられる。
【0624】
以下記の実施例及び図、及び配列を提供し、本発明の理解を助け、その真の範囲が添付の特許請求の範囲において示される。本発明の精神から逸脱することなく、示した手順において改変を作ることができることが理解される。
【実施例】
【0625】
実施例1
マウスハイブリドーマからのカッパ軽鎖を伴うIgG1クラスのマウス抗ジゴキシゲニン抗体及びマウス抗ビオチン抗体のVH及びVLドメインをコードするcDNAの単離及び特徴付け
【0626】
抗ジゴキシゲニン抗体のVH及びVLドメインをコードするcDNAの単離及び特徴付け、RNA調製、DNAフラグメントの生成、プラスミド中へのDNAフラグメントのクローニング、並びにDNA配列及びアミノ酸配列の決定が、WO 2011/003557及びWO 2011/003780においてそれぞれ記載された。
【0627】
マウスハプテン結合抗体のVH及びVLドメインのタンパク質及び(DNA)配列情報が、ハイブリドーマクローンから直接的に得られた。その後に実施された実験工程は、(i)抗体産生ハイブリドーマ細胞からのRNAの単離、(ii)cDNAへのこのRNAの変換(VH及びVLを保有するPCRフラグメント中への移動)、並びに(iii)大腸菌における増殖のためのプラスミドベクター中へのこれらのPCRフラグメントの組込み、及びそれらのDNA(及び推定タンパク質)配列の決定であった。
ハイブリドーマ細胞からのRNA調製:
【0628】
RNAを、RNAeasyキット(Qiagen)を適用し、5×10
6個の抗体発現ハイブリドーマ細胞から調製した。簡単には、沈降した細胞を、PBS中で1回洗浄し、沈降させ、その後、500μLのRLT緩衝液(+β−ME)中での溶解のために再懸濁した。細胞を、Qiashredder(Qiagen)を通して完全に溶解させ、次に、製造者のマニュアルに記載されている通り、マトリックス媒介精製手順(ETOH、RNAeasyカラム)に供した。最後の洗浄工程後、RNAを、50μLのRNaseフリー水中で、カラムから回収した。回収されたRNAの濃度を、1:20希釈したサンプルのA260及びA280を定量化することにより決定した。単離されたRNAサンプルの完全性(品質、分解の程度)を、ホルムアミド−アガロースゲル上での変性RNAゲル電気泳動(Maniatis Manualを参照のこと)により分析した。インタクトな18s及び28sリボソームRNAを表す別々のバンドが得られ、これらのバンドのインタクトさ(及び約2:1強度比)は、RNA調製物の良好な品質を示した。ハイブリドーマからの単離RNAを凍結し、−80℃でアリコート中に保存した。
RACE PCRによるVH及びVHをコードするDNAフラグメントの生成、プラスミド中へのこれらのDNAフラグメントのクローニング、並びにそれらのDNA配列及びアミノ酸配列の決定
【0629】
その後の(RACE)PCR反応のためのcDNAを、国際特許出願WO 2012/093068において記載されている技術を適用することにより、RNA調製物から調製した。その後、VH及びVLをコードするPCRフラグメントを、標準的な分子生物学的技術によるアガロースゲル抽出及びその後の精製により単離した。PWO生成された精製PCRフラグメントを、製造者の使用説明書に厳密に従い、pCR bluntII topo Kit(Invitrogen)を適用することにより、ベクターpCR bluntII topo中に挿入した。Topoライゲーション反応物を、大腸菌Topo10−ワンショットコンピテント細胞中に形質転換した。その後、VL又はVHのいずれかを含むインサートを伴うベクターを含む大腸菌クローンを、LBカナマイシン寒天プレート上のコロニーとして同定した。プラスミドを、これらのコロニーから調製し、ベクター中の所望のインサートの存在を、EcoRIを用いた制限消化により確認した。ベクター骨格は、インサートの各々の側に隣接するEcoRI制限認識部位を含むため、インサートを保有するプラスミドを、約800bp(VL用)又は約600bp(VH用)のEcoRI放出可能インサートを有することにより定義した。DNA配列並びにVL及びVHの推定タンパク質配列を、VH及びVLについての複数のクローン上での自動化DNA配列決定により決定した。
【0630】
抗ビオチン抗体のマウスVL配列が、配列番号40に描写されている。抗ビオチン抗体のマウスVH配列が、配列番号36に描写されている。
【0631】
抗ジゴキシゲニン抗体のマウスVL配列が、配列番号08に描写されている。抗ジゴキシゲニン抗体のマウスVH配列が、配列番号04に描写されている。
【0632】
実施例2
マウスハイブリドーマからのカッパ軽鎖を伴うIgG1クラスのマウス抗テオフィリン抗体のVH及びVLドメインをコードするcDNAの単離及び特徴付け
【0633】
抗テオフィリン抗体の配列が、実施例1において概説する通りに得られた。
【0634】
抗テオフィリン抗体のマウスVL配列が、配列番号72に描写されている。抗テオフィリン抗体のマウスVH配列が、配列番号68に描写されている。
【0635】
実施例3
マウス抗ジゴキシゲニン抗体及び抗ビオチン抗体のVH及びVLドメインのヒト化
【0636】
ジゴキシゲニン結合抗体のヒト化バリアントの生成が、WO 2011/003557及びWO 2011/003780において詳細に記載されている。マウスビオチン結合抗体muM33を、以下の通りに、同様の様式でヒト化した:
【0637】
マウスハイブリドーマからのカッパ軽鎖を伴うIgG1クラスのマウス抗ビオチン抗体のVH及びVLドメインを含むコード配列及びアミノ酸配列の生成及び特徴付けが、WO 2011/003557及びWO 2011/003780に記載されている。この情報に基づき、対応するヒト化抗ビオチン抗体を、ヒト生殖系列フレームワークIGHV1−69−02及びIGKV1−27−01の組み合わせに基づいて生成した(huM33)。VLについて、ヒトIGKV1−27−01及びIGKJ2−01生殖系列のヒトJエレメントのフレームワーク中に任意の復帰変異を組み込む必要はなかった。ヒト化VHは、ヒトIGHV1−69−02生殖系列及びIGHJ4−01−3生殖系列のヒトJエレメントに基づく。位置24(A24S)のフレームワーク領域1における、及び位置73(K73T)のフレームワーク領域3における2つの復帰変異が導入された。ヒト化VHのアミノ酸配列を配列番号44に描写し、ヒト化VLのアミノ酸配列を配列番号48に示す。
【0638】
実施例4
マウス抗テオフィリン抗体のVH及びVLドメインのヒト化
【0639】
マウステオフィリン結合抗体を、以下の通りにヒト化した:ヒト化抗テオフィリン抗体を、ヒト生殖系フレームワークIGHV4−31−02及びIGKV2−30−01の組み合わせに基づいて生成した。ヒト化VHは、ヒトIGHV4−31−02生殖系列及びIGHJ4−01−3生殖系列のヒトJエレメントに基づく。位置71(V71R)での、フレームワーク領域3における1つの復帰変異が導入された。ヒト化VLは、ヒトIGHV2−30−01生殖系列及びIGKJ2−01生殖系列のヒトJエレメントに基づく。位置46(R46L)での、フレームワーク領域2における1つの復帰変異が導入された。ヒト化VHのアミノ酸配列を配列番号76に描写し、ヒト化VLのアミノ酸配列を配列番号80に示す。
【0640】
実施例5
ジゴキシゲニンの存在におけるマウス抗ジゴキシゲニンFv領域の結合領域の、及びビオチンの存在におけるマウス抗ビオチンFv領域の結合領域の結晶化及びX線構造決定。
【0641】
ジゴキシゲニン結合抗体のFabフラグメントの構造の決定は、WO 2011/003557及びWO 2011/003780において詳細に記載されており、また、Metz, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108 (2011) 8194-8199において公開されている(3RA7)。
【0642】
マウス抗ビオチン抗体の構造を決定した。したがって、Fabフラグメントを、精製IgGのプロテアーゼ消化により生成し、その後、周知の最先端の方法(パパイン消化)を適用して精製した。
【0643】
アポの結晶化のために、20mM His−HCl、140mM NaCl(pH 6.0)中のFabフラグメント(精製Fab)を13mg/mlに濃縮した。結晶化液滴を、蒸気拡散シッティングドロップ実験において、0.2μLのタンパク質溶液を0.2μLのリザーバー溶液と混合することにより、21℃に設定した。結晶が、0.1M Tris pH 8.5、0.01M塩化コバルト、20%ポリビニルピロリドンK15から5日間以内に出現し、8日間以内に0.3mm×0.06mm×0.03mmの最終サイズまで成長した。
【0644】
結晶は、凍結保護剤としての15%グリセロール中に収集し、次に、液体N2中で急速凍結した。回折像を、Swiss Light SourceのビームラインX10SAで、100Kの温度でPilatus 6M検出器を用いて回収し、プログラムXDS(Kabsch, W., J. Appl. Cryst. 26 (1993) 795-800)を用いて加工し、SCALA(BRUKER AXSから得た)でスケーリングし、2.22A分解能までのデータをもたらした。このFabフラグメント結晶は、a=90.23A、b=118.45A、c=96.79A、及びβ=117.53°の格子寸法を伴う単斜晶空間群P21に属し、結晶非対称単位当たり4個のFab分子を含む(表3を参照のこと)。
【0645】
CCP4ソフトウェアスイートからの標準的な結晶学的プログラムを使用し、検索モデルとしてのPDBエントリー3PQPとの分子置換により構造を解析し、電子密度を計算し、X線構造を精緻化した(CCP4, Collaborative Computational Project, Acta Crystallogr. D, 760-763 (1994))。構造モデルを、COOTを使用し、電子密度中に再構築した(Emsley, P., et al. Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 60 (2010) 486-501)。座標を、REFMAC5(Murshudov, G.N., et al. Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 53 (1997) 240-55)を用いて、及び、autoBUSTER(Global Phasing Ltd.)を用いて精緻化した。
【表4】
【0646】
ビオチン誘導体を伴う複合体中でのFabフラグメントの結晶化のために、浸漬実験のために使用したFabフラグメントのアポ結晶を、スクリーニング後3日以内に0.8Mコハク酸から得て、5日以内に0.25mm×0.04mm×0.04mmの最終的なサイズまで成長させた。ビオシチンアミドを、水中で、100mMで溶解した。その後、化合物を、結晶化溶液中の10mMの作業濃度に希釈し、結晶化小滴中の結晶に適用した。結晶を、2μLの10mM化合物溶液で3回洗浄し、最後に、21℃でビオシチンアミドと16時間にわたりインキュベートした。
【0647】
結晶は、凍結保護剤としての15%グリセロール中に収集し、次に、液体N
2中で急速凍結した。回折像を、Swiss Light SourceのビームラインX10SAで、100Kの温度でPilatus 6M検出器を用いて回収し、プログラムXDS(Kabsch, W., J. Appl. Cryst. 26 (1993) 795-800)を用いて加工し、SCALA(BRUKER AXSから得た)でスケーリングし、2.35A分解能までのデータをもたらした。このFabフラグメント結晶は、a=89.09A、b=119.62A、c=96.18A、及びβ=117.15°の格子寸法を伴う単斜晶空間群P21に属し、結晶非対称単位当たり4個のFab分子を含む(表4を参照のこと)。
【0648】
CCP4ソフトウェアスイートからの標準的な結晶学プログラムを使用し、検索モデルとしてのアポFabフラグメントの座標との分子置換により構造を解析し、電子密度を計算し、X線構造を2.5Aの分解能まで精緻化した(CCP4)。構造モデルを、COOT(Emsley, P., Lohkamp, B., Scott, W.G. & Cowtan, K. Features and development of COOT. Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 60, 486-501 (2010))を使用し、電子密度中に再構築した。座標を、REFMAC5(Murshudov, G.N., et al. Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 53, 240-255 (1997))を用いて、及び、autoBUSTER(Global Phasing Ltd.)を用いて精緻化した。
【表5】
【0649】
実験的構造決定の結果を
図33に示す。複合体の結晶形態は、全てのFab分子により同様に結合されたビオシチンアミドを伴う、非対称単位中の4つの独立したビオシチンアミド:抗ビオチンFab複合体を含んだ。ビオシチンアミドは、重鎖のCDR1及び3並びに全ての3つの軽鎖のCDRにより形成されたポケット中で結合される。リガンドの結合ポケットを、重鎖からの残基ASN29、ASP31、THR32、PHE33、GLN35、TRP99、及びTRP106並びに軽鎖からの残基ASN31、TYR32、LEU33、SER34、TYR49、SER50、PHE91、及びTYR96により定義する。ビオチン頭部基は、ポケットの一端でのCDR2及びCDR1の残基と水素結合を形成する:ビオシチンアミドのN3は、Ser50のヒドロキシル酸素と相互作用するのに対し、O22は、同じ残基の主鎖アミド窒素と接触する。また、ビオシチンアミドのO22は、また、Ser34のヒドロキシル基の酸素に水素結合する。それに加えて、疎水性相互作用が、ビオシチンアミドと結合ポケットを裏打ちする芳香族側鎖の間に観察される。ビオチンの(CH2)4脂肪族尾の末端でのアミド結合が、重鎖CDR1のPHE33上に積み重なり、PHE33の骨格アミド窒素への、及びAsp31への追加の水素結合により安定化される。これによって、アミド窒素が位置付けられ、それは、窒素に続く原子が、結合ポケットから溶媒に向かって離れる方法で、活性実体への結合部位である。
【0650】
2.5Aの分解能での結合領域の実験的決定の結果によって、リガンドの、その抗体への結合様式の特徴付けが可能になり、それは、組換えビオチン結合モジュールのタンパク質工学を介した詳細なモデリング及びさらなる改善のための前提条件である。
【0651】
実施例6
共有結合的コンジュゲーションのための、導入された機能性を伴う抗ハプテン抗体の定義及び生成
【0652】
上記に記載する抗ハプテン抗体のヒト化VH及びVL配列の誘導体化を行い、定義された位置での、抗体への抗原/ハプテンの共有結合的カップリングを可能にする化合物を生成した。
【0653】
ジゴキシゲニンに結合した抗ジゴキシゲニンFabフラグメント(3RA7)の実験的に決定された構造(Metz, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108 (2011) 8194-8199)を使用し、変化によって、抗体とその複合体化抗原/ハプテンの間での部位特異的カップリング反応が生じることを可能にする位置を同定した。ビオシチンアミドに結合した抗ビオチンのFabフラグメントの構造(実施例5を参照のこと)によって、ビオチン結合抗体フラグメントのための導入システイン残基の正しい位置が確認され、同定位置の一般的な適用可能性の証拠が提供される。
【0654】
変異させる位置は、2つの要件を同時に満たさなければならない:(i)カップリング位置は、有向カップリングのための抗原/ハプテン位置決め効果を利用するために、結合領域に近接してあるべきである、並びに(ii)変異及びカップリング位置は、抗原/ハプテン結合が、それ自体により影響されない様式で位置付けられなければならない。適切な位置を見出すためのこれらの要件は、事実上、互いに「矛盾」している。なぜなら、要件は、(i)結合位置に近い位置により最良に提供されるが、(ii)結合部位から遠い位置により最も安全に達成されるからである。
【0655】
これらの実質的な除外要件にもかかわらず、本発明者らは、ハプテンの位置付けに影響することなく変異させることができ、それにもかかわらず、ハプテン化化合物の有向共有結合的カップリングを同時に可能にする位置を同定することができた。
【0656】
第1の位置は、それぞれの抗体のCDR2の実際の長さに依存して、Kabatナンバリングに従った位置VH52b又はVH53に位置付けられる。抗ジゴキシゲニン抗体構造において、ハプテンは、疎水性残基により形成される深いポケット中に結合される。蛍光ジゴキシゲニン−Cy5コンジュゲートが、この結晶学的試験において使用されたが、それにおいて、フルオロフォア並びにジゴキシゲニンとCy5の間のリンカーは、高い柔軟性及びその結果としての結晶中の無秩序のため、構造中では見えなかった。しかし、リンカー及びCy5は、重鎖のCDR2の方向中を指し示す、ジゴキシゲニンのO32に付着される。ジゴキシゲニンのO32(上を参照のこと)からKabatナンバリングに従った位置52bにおけるアミノ酸残基のCαの間の距離は、10.5Aである。
【0657】
Cysを用いた位置VH52b/VH53のアミノ酸の置換によって、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCについては配列番号20及び28、抗テオフィリン抗体VH53Cについては配列番号84及び92、抗ビオチン抗体VH53Cについては配列番号52及び60、並びに抗フルオレセイン抗体VH52bCについては配列番号108として列挙される重鎖可変領域配列を伴う抗体誘導体が生成された。
【0658】
改変点として同定されたさらなる位置は、Kabatナンバリングに従った位置VH28である。
【0659】
結果として、本発明者らは、Kabat位置VH28にシステインを導入した。Cysを用いた位置VH28のアミノ酸の置換によって、抗ジゴキシゲニン抗体VH28Cについては配列番号124及び132、抗テオフィリン抗体VH28Cについては配列番号156及び164、抗ビオチン抗体VH28Cについては配列番号140及び148、並びに抗フルオレセイン抗体VH28Cについては配列番号116として列挙される重鎖可変領域配列を伴う抗体誘導体が生成された。
【0660】
これらの位置の1つが「ユニバーサル」位置である、即ち、この位置が、任意の抗体に適用可能であり、このように、結晶構造を提供し、ハプテンに位置付けられた共有結合カップリングを可能にする適切な位置を決定することにより、新たな抗体を改変しなくてはならない度に、最初から開始することが要求されないことが見出されている。
【0661】
Kabatの重鎖可変領域のナンバリングにそれぞれ従った変異VH52bC又はVH53Cを、各々のハプテン結合抗体(抗ハプテン抗体)について使用することができる。抗体及びそれらの結合ポケットの構造が、非常に多様であるにもかかわらず、VH52bC/VH53C変異を、ジゴキシゲニン、ビオチン、フルオレセイン、並びにテオフィリンに結合する抗体への抗原/ハプテンの共有結合的な付着のために使用することができることが示されている。
【0662】
これらの配列で構成される結合実体を発現させ、標準的なプロテインA及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製することができ得る(実施例7を参照のこと)。結果として得られた分子が、完全に機能的であり、それらの未修飾の親分子と同じ様式で、それらの同族ハプテンに対する親和性を保持していた。これは、表面プラズモン共鳴(SPR)実験により実証された(実施例9を参照のこと)。
【0663】
実施例7
組換え抗ハプテン抗体の組成、発現、及び精製
【0664】
マウス及びヒト化抗ハプテン抗体の可変領域を、ヒト由来の定常領域と組み合わせ、単一又は二重特異性キメラ又はヒト化抗体を形成した。
【0665】
ハプテン並びに異なる非ハプテン標的(例、受容体チロシンキナーゼ又はIGF−1R)に特異的に結合する単一特異性ヒト化抗ハプテン抗体及び二重特異性ヒト化抗ハプテン抗体の生成では、(i)そのような分子についてのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列の設計及び定義、(ii)トランスフェクトされた培養哺乳動物細胞におけるこれらの分子の発現、並びに(iii)トランスフェクト細胞の上清からのこれらの分子の精製が要求される。これらの工程を、WO 2012/093068において以前に記載された通りに実施した。
【0666】
一般的に、(元の)マウス抗ハプテン抗体の結合特異性を有するIgGクラスのヒト化抗体を生成するために、ヒト化VH配列を、サブクラスIgG1のヒトFc領域のCH1−ヒンジ−CH2−CH3のN末端にインフレームで融合した。同様に、ヒト化VL配列を、ヒトCLカッパ定常領域のN末端にインフレームで融合した。
【0667】
ハプテン結合特異性並びに他の標的への特異性を含む二重特異性抗体誘導体を生成するために、抗ハプテン抗体、scFv又はFabフラグメントを、以前に記載された抗体の重鎖のC末端にインフレームで融合した。多くの場合において、適用される抗ハプテンscFvは、さらに、以前に記載されているVH44−VL100ジスルフィド結合の導入により安定化した(例、Reiter, Y., et al., Nature biotechnology 14 (1996) 1239-1245)。
発現プラスミド
【0668】
重鎖及び軽鎖の発現のための発現カセットを含む発現プラスミドを、哺乳動物細胞発現ベクター中で別々に組み立てた。
【0669】
それにより、個々のエレメントをコードする遺伝子セグメントを、上に概説する通りに連結した。
【0670】
コドン使用を推定することができる、ヒト軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報が、以下において与えられる:Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication No 91-3242。
【0671】
κ軽鎖の転写単位は、以下のエレメントで構成される:
−ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)からの最初期エンハンサー及びプロモーター、
−Kozak配列を含む合成5’−UT、
−シグナル配列イントロンを含むマウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
−5’末端に固有のBsmI制限部位並びに3’末端にスプライスドナー部位及び固有のNotI制限部位を伴い配置された、クローン化された可変軽鎖cDNA、
−イントロン2マウスIg−κエンハンサーを含むゲノムヒトκ遺伝子定常領域(Picard, D., and Schaffner, W. Nature 307 (1984) 80-82)、並びに
−ヒト免疫グロブリンκポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列。
【0672】
γl重鎖の転写単位は、以下のエレメントで構成される:
−ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)からの最初期エンハンサー及びプロモーター、
−Kozak配列を含む合成5’−UT、
−シグナル配列イントロンを含む改変マウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
−5’にユニークなBsmI制限部位並びに3’末端にスプライスドナー部位及びユニークなNotI制限部位を配置した、クローン化された単一特異性可変重鎖cDNA又はクローン化された二重特異性融合scFv可変重鎖cDNA、
−マウスIgμエンハンサーを含むゲノムヒトγl重遺伝子定常領域(Neuberger, M.S., EMBO J. 2 (1983) 1373-1378)、及び
−ヒトγL−免疫グロブリンのポリアデニル化(「ポリA」)シグナル配列。
【0673】
κ軽鎖又はγ1重鎖発現カセットの他、これらのプラスミドは以下を含む:
−ハイグロマイシン耐性遺伝子、
−エプスタインバーウイルス(EBV)の複製起点oriP、
−大腸菌においてこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18からの複製起点、及び
−大腸菌においてアンピシリン耐性を付与するβラクタマーゼ遺伝子。
組換えDNA技術
【0674】
クローニングは、Sambrook et al., 1999(上記)において記載される通り、標準的なクローニング技術を使用して実施した。全ての分子生物学的試薬は、商業的に入手可能で(他に示さない場合)、製造者の使用説明書に従って使用された。
【0675】
コード配列、変異、又はさらなる遺伝子エレメントを含むDNAが、Geneart AG, Regensburgにより合成された。
【0676】
DNA配列が、SequiServe(SequiServe GmbH, Germany)で実施された二本鎖シーケンシングにより決定された。
DNA及びタンパク質配列分析並びに配列データ管理
【0677】
Vector NTI Advanceスイートバージョン9.0を、シーケンス作成、マッピング、分析、注釈、及び図示のために使用した。
抗ハプテン抗体及び誘導体の発現
【0678】
抗ハプテン抗体を、懸濁液中でのヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞の一過性トランスフェクションにより発現させた。そのために、対応する単一又は二重特異性抗体の軽鎖及び重鎖を、上に概説する通り、原核生物及び真核生物の選択マーカーを保有する発現ベクター中で構築した。これらのプラスミドを、大腸菌において増幅させ、精製し、その後、一過性トランスフェクションのために適用した。標準的な細胞培養技術を、細胞の取り扱いのために使用した(Current Protocols in Cell Biology (2000), Bonifacino, J.S., Dasso, M., Harford, J.B., Lippincott-Schwartz, J. and Yamada, K.M. (eds.), John Wiley & Sons, Inc.において記載される通り)。
【0679】
細胞を、適切な発現培地中で、37℃/8%CO
2で培養した。トランスフェクションの日、細胞を、新鮮培地中に1〜2×10
6個の生細胞/mlの密度で播種した。トランスフェクション試薬を伴うDNA複合体を、250mlの最終トランスフェクション容積についての1:1モル比において250μgの重鎖及び軽鎖プラスミドDNAを含むOpti-MEM I培地(Invitrogen、USA)中で調製した。単一特異性又は二重特異性抗体を含む細胞培養上清を、トランスフェクション後7日目に、14,000gで30分間にわたる遠心分離及び滅菌フィルター(0.22μM)を通じた濾過により浄化した。上清を、精製まで−20℃で保存した。
【0680】
細胞培養物上清中の抗体及び誘導体の濃度を決定するために、親和性HPLCクロマトグラフィーを適用した。そのために、プロテインAに結合する単一若しくは二重特異性抗体又はそれらの誘導体を含む細胞培養上清を、200mM KH
2PO
4、100mMクエン酸ナトリウム(pH7.4)を含む溶液中で、Applied Biosystems Poros A/20に適用した。クロマトグラフィー材料からの溶出を、200mM NaCl、100mMクエン酸(pH2.5)を含む溶液を適用することにより実施した。UltiMate 3000 HPLCシステム(Dionex)を使用した。溶出タンパク質を、UV吸収及びピーク面積の積分により定量化した。精製IgG1抗体は、標準としての役割を果たした。
ジゴキシゲニン、フルオレセイン、テオフィリン、又はビオチンに結合する抗ハプテン抗体の精製
【0681】
トランスフェクション後7日目、HEK293細胞上清を収集した。その中に含まれる組換え抗体(又は誘導体)を、プロテインA Sepharose(商標)親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare、スウェーデン)及びSuperdex200サイズ排除クロマトグラフィーを使用した親和性クロマトグラフィーにより、2つの工程において上清から精製した。簡単には、抗体を含む、浄化した培養上清を、PBS緩衝液(10mM Na
2HPO
4、1mM KH
2PO
4、137mM NaCl、及び2.7mM KCl、pH 7.4)を用いて平衡化したMabSelectSuReプロテインA(5〜50ml)カラム上に適用した。非結合タンパク質を、平衡化緩衝液で洗浄した。抗体(又は誘導体)を、50mMクエン酸緩衝液(pH3.2)を用いて溶出した。タンパク質含有画分を、0.1mlの2M Tris緩衝液(pH9.0)を用いて中和した。次に、溶出タンパク質画分をプールし、Amicon Ultra遠心フィルター装置(MWCO:30K、Millipore)を用いて濃縮し、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)を用いて平衡化したSuperdex200 HiLoad 26/60ゲル濾過カラム(GE Healthcare、スウェーデン)上にロードした。精製抗体及び誘導体のタンパク質濃度を、Pace et. al., Protein Science 4 (1995) 2411-2423に従い、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を使用し、バックグラウンド補正としての320nmでのODで280nmの光学密度(OD)を決定することにより決定した。単量体抗体画分をプールし、急速凍結し、−80℃で保存した。サンプルの一部を、その後のタンパク質分析及び特徴付けのために提供した。
【0682】
抗体の均質性を、還元剤(5mM1,4−ジチオスレイトール)の存在及び非存在におけるSDS−PAGE並びにクマシーブリリアントブルーを用いた染色により確認した。NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen、USA)を、製造者の使用説明書に従って使用した(4〜20%Tris−グリシンゲル)。
【0683】
還元条件下で、IgGに関連するポリペプチド鎖を、SDS−PAGE後、計算された分子量と類似の見掛け上の分子サイズで同定した。全ての構築物の発現レベルを、プロテインAにより分析した。平均タンパク質収量は、そのような非最適化された一過性発現実験において、細胞培養上清1リットル当たり6mgと35mgの間の精製タンパク質であった。
【0684】
実施例8
ハプテン化化合物の生成
【0685】
非共有結合的な複合体化のための化合物の生成のために、並びにコンジュゲーション(共有結合的な複合体化)のために、(i)ハプテンを、適切なリンカーを介して、化合物(=ペイロード)にカップリングすること、及び、(ii)カップリングが、化合物がその官能性を保持することを可能にする様式で生じることを保証することが必要である。
a)ハプテン−ポリペプチドコンジュゲート:
【0686】
任意のポリペプチドを、反応性残基(例えばシステイン残基など)を、ポリペプチドとハプテンの間のリンカー中に導入することができる限り、ハプテン担持リンカーにより、N若しくはC末端又は側鎖の位置において誘導体化することができる。特に、ポリペプチドは、非天然アミノ酸残基を含むことができる。
【0687】
例示的なハプテン化化合物を、以下の表5に列挙する。
【表6】
【0688】
略語:4Abu=4−アミノ−ブチル酸
Ahx=アミノヘキサン酸
Btn=ビオチニル
cme=カルボキシメチル
Cy5=インドジカルボシアニン、シアニン−5
Dadoo=1,8−ジアミノ−3,6−ジオキソ−オクタン
DCM=ジクロロメタン
Dig(OSu)=ジゴキシゲニン−3−カルボキシメチル−N−ヒドロキシスクシンイミド
Dy636=フルオロフォア
eda=エチレンジアミン
Fluo=5−カルボキシ−フルオレセイン
HATU=0−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HFIP=1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロ−2−プロパノール
Mmt=4−メトキシトリチル
MR121=オキサジンフルオロフォア
MTBE=tert.ブチル−メチル−エーテル
NMM=N−メチル−モルホリン
NMP=N−メチル−2−ピロリドン
PEG2=8−アミノ−3,6−ジオキサ−オクタン酸
PEG3=12−アミノ−4,7,10−トリオキサドデカン酸
O
2Oc=8−アミノ−3,6−ジオキサ−オクタン酸
Pip=ピペリジン
Pqa=4−オキソ−6−ピペラジン−1−イル−4H−キナゾリン−3−イル)−酢酸
TBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
TCEP=Tris(2−クロロエチル)ホスフェート
TFE=2,2,2,トリフルオロエタノール
TIS=トリイソプロピルシラン
【0689】
カップリング手順及び用いられる試薬のスキームを、
図30、31、及び32に示す。
【0690】
本明細書において使用されている例示的なポリペプチドは、ニューロペプチド2受容体アゴニスト誘導体であった。このポリペプチドは、ペプチドチロシンチロシン又は膵臓ペプチドYYの短いPYY(3−36)類似体(WO 2007/065808において報告する通り)である。それは、位置2におけるいアミノ酸残基リジンを介してジゴキシゲニン化された。ジゴキシゲニン化PYYポリペプチドは、ジゴキシゲニン残基へのポリペプチドの側鎖連結に関係なく、以下のテキストにおいてDIG−PYYと呼ばれる。
【0691】
他の例示的な化合物は、非ペプチド蛍光色素Cy5、Dy636、及びMR121である。これらの化合物は、NHSエステル化学を介して、ジゴキシゲニン又はビオチン含有リンカーシステムにカップリングすることができる。
i)PYY(3−36)由来ポリペプチドコンジュゲーション前駆体の生成のための一般的な方法
【0692】
自動化されたマルチプルシンセサイザーでのPYY誘導体についての標準プロトコール:
シンセサイザー:ボルテックス撹拌システムを伴うMultiple Synthesizer SYRO I(MultiSynTech GmbH, Witten)
樹脂:200mg TentaGel S RAM(0.25mmol/g)、RAPP Polymere、Tubingen、反応容器としてテフロンフリットを伴う10mlプラスチックシリンジ
ストック溶液:
Fmocアミノ酸:DMF又はNMP中の0.5M
デブロッキング試薬:DMF中の30%ピペリジン
活性化剤:それぞれ0.5M TBTU及びHATU
基剤:NMP中の50%NMM
カップリング:
Fmocアミノ酸:519μl
基剤:116μl
活性化剤:519μl
反応時間:二重カップリング:2×30分
Fmoc−デブロック:
デブロッキング試薬:1200μl
反応時間:5分 + 12分
洗浄:
溶媒:1200μl
容積:1300μl
反応時間:5×1分
最終切断:
切断試薬:8ml TFA/チオアニソール/チオクレゾール/TIS(95:2,5:2,5:3)
反応時間:4時間
操作:切断溶液を濾過し、1−2mlに濃縮し、ペプチドを、MTBEの添加により沈殿させた。白色固体を遠心分離により回収し、MTBEで2回洗浄し、乾燥させた。
Ac IK Pqa R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂(配列番号176)
【0693】
PYY(3−36)−ポリペプチド誘導体(PYYと呼ばれる)は、結合ペプチド配列Ac−IK(Mmt)−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(tBu)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel−RAM樹脂の自動化固相合成により得られた。ペプチド合成は、Fmoc化学を使用したボルテックス撹拌システムを伴うマルチプルシンセサイザーSYRO I(MultiSynTech GmbH、Witten)に従って実施した。TentaGel RAM樹脂(ローディング:0.2mmol/g;Rapp Polymers、Germany)を用いて、ペプチド配列は、対応するFmocアミノ酸の連続的カップリング(スケール:0.05mmol)により、反復サイクルにおいて組み立てた。すべてのカップリング工程において、N末端Fmoc基は、ジメチルホルムアミド(DMF)中の30%ピペリジンを用いた樹脂(5分間+12分間)の処理により除去した。カップリングは、位置1、13、14及び15でTBTU(0.25mmol)により活性化されたFmoc保護アミノ酸(0.25mmol)並びにNMP中のNMM50%(二重カップリング2×30分間ボルテックス)を用いて行った。全ての他の位置で、HATU(0.25mmol)及びNMP中のNMM50%を、活性剤として使用した。各々のカップリング工程の間に、樹脂を、DMFを用いて5×1分間洗浄した。線形前駆体の合成後、アセチル化を、15分間、DMF/DIPEA/Ac2Oを用いた反応及びDMFを用いた洗浄により実施し、Ac−IK(Mmt)−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂をもたらした。
【0694】
Mmt基の除去のために、ペプチドを、DCM/HFIP/TFE/TIS(6.5:2:1:0.5)で処理し(2×1時間)、DMFでの洗浄後、部分的にデブロックされた前駆体Ac IK Pqa R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂をもたらした。
Ac−PYY(PEG3−Dig)/Ac−IK(PEG3−Dig)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH
2(配列番号177)
【0695】
合成、WO 2012/093068も参照のこと。
【0696】
水(5mL)中のペプチドAc−IK(H2N−TEG)−Pqa−RHYLNWVTRQ(Nメチル)RY(100mg、40.6μmol)の溶液に、NMP(1mL)に溶解したジゴキシゲニン−3−カルボキシメチル−N−ヒドロキシスクシンイミド(26.6mg、48.8μmol)を加えた。トリエチルアミン(13.6L、97.6μmol)を加え、混合物を室温で2時間にわたり混転した。その後、NMP(0.5mL)中に溶解した追加のジゴキシゲニン−3−カルボキシメチル−N−ヒドロキシスクシンイミド(13.3mg、24.4μmol)、及びトリエチルアミン(6.8μL、48.8μmol)を加え、溶液を15時間にわたり混転した。粗生成物を、0.1%TFA(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)を含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLCにより精製し、無色固体としてDIG PYYペプチド(29mg、10.0μmol、25%)を提供した。ペプチド誘導体の分析的特徴付けのために、本発明者らは以下の条件を適用し、以下のデータを受けた:分析用HPLC:t
R=11.3分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間);ESI−MS(陽イオンモード):m/z:C
140H
207N
35O
32についての計算値:2892.4;検出:964.9[M+2H]
2+、計算値:965.1。抗体への複合体化のポイントまで、本発明者らは、ジゴキシゲニン化ペプチドを凍結乾燥物として4℃で保存する。
図2Cは、DIG−moPYYの構造を示す。
ii) システイン含有リンカーを伴うジゴキシゲニン化PYY(3−36)由来ポリペプチドの生成
Ac−IK(PEG3−Cys−4Abu−NH2)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH
2(配列番号178)
【0697】
前駆体Ac−IK−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂(配列番号176)を用いて開始し、ペプチド合成を、以下の工程を伴い継続した:
【0698】
2×30分間にわたるNMM中での66.5mg(3等量)Fmoc−12−アミノ−4,7,10−トリオキサドデカン酸(PEG3スペーサー)、57.0mg(3等量)のHATU及び16.7μL(3等量)のNMMを用いたマニュアル二重カップリング。DMFを用いた洗浄後(5×1分間)、Fmoc基を、30%Pip/DMFを用いて切断し、樹脂を、標準プロトコールを使用し、DMFで洗浄した。
【0699】
Fmoc−Cys(Trt)−OH及びFmoc−4−Abu−OHの以下の二重カップリングを、自動化マルチプルシンセサイザーでのPYY誘導体についての標準的なプロトコールに記載されている通りのプロトコールを用いて、SYRO1シンセサイザーにおいて自動的に実施した。最後に、樹脂を、DMF、EtOH、MTBEで洗浄し、乾燥した。
【0700】
樹脂からの切断を、4時間にわたり8mlのTFA/チオアニソール/チオクレゾール/TIS(95:2.5:2.5:3)を用いて実施した。切断溶液を濾過し、1〜2mlに濃縮し、ペプチドを、MTBEの添加により沈殿させた。白色固体を遠心分離により回収し、MTBEで2回洗浄し、乾燥させた。
【0701】
粗生成物を分取逆相HPLCにより精製し、無色固体を与えた。収量:28.0mg
精製プロトコール
HPLC:UV-Vis検出器SPD-6Aを伴うShimadzu LC-8A
溶媒A:水中の0.05% TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05% TFA
カラム:UltraSep ES, RP-18、10μm、250×20mM(SEPSERV, Berlin)
流速:15ml/分
検出:230nm
勾配:20−50%B(30分間)
分析データ:
HPLC:フォトダイオードアレイ検出器SPD-M6Aを伴うShimadzu LC-9A
溶媒A:水中の0.05% TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05% TFA
カラム:UltraSep ES、RP-18、7μm,250×3mM(SEPSERV, Berlin)
流速:0.6ml/分
勾配:5−80%B(30分間)
MS:Shimadzu飛行時間形質量分析計AXIMA Linear(MALDI−TOF)(分子量を質量平均として計算する)
m/z:C122H185N37O28Sの計算値=2650.13;検出:2650.3
Ac−IK(PEG3−Cys−4Abu−Dig)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH2(配列番号179)
【0702】
50μLのDMSO中のペプチドAc−IK(PEG3−Cys−4Abu−NH2)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−アミドの15mgの溶液に、250μLのPBS緩衝液(pH7.4)を加え、溶液を一晩撹拌した。二量体形成をHPLCにより制御した。18時間の適用後、二量体の90%が形成された。
【0703】
この溶液に、100μLのDMF中に溶解した7.3mgのジゴキシゲニン−3−カルボキシメチル−N−ヒドロキシスクシンイミド(Dig−OSu)を加え、混合物を室温で5時間にわたり撹拌した。その後、100μLのDMF中に溶解した追加の16.9mgのDig−OSuを加え、2時間にわたり撹拌した。100μLのDMF中の6.9mgのさらなる量を加え、18時間にわたり撹拌した。還元のために、二量体TCEPを加え、3時間にわたり攪拌し、溶液を、分取逆相HPLCを用いた精製のために直接的に使用した。
分析データ:
条件は、配列番号178について記載されてものと同じであった。
分取HPLC用の勾配:38−58%B(30分間)
収量:5.3mg
m/z:C
147H
219N
37O
34Sの計算値=3080.7;検出:3079.8
PEG3−IK(PEG3−Cys−4Abu−Dig)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH2(配列番号180)
樹脂結合PYY配列の自動化固相合成:
PEG2−IK(ivDde)−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(tBu)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel−RAM樹脂(配列番号181)
【0704】
ペプチド合成は、確立されたプロトコール(FastMoc 0.25mmol)に従い、Fmoc化学を使用した自動化Applied Biosystems ABI 433Aペプチドシンセサイザーにおいて実施した。TentaGel RAM樹脂(ローディング:0.18mmol/g;Rapp Polymers、Germany)を用いて、ペプチド配列を、対応するFmoc−アミノ酸の連続的カップリング(スケール:0.25mmol)により、反復サイクルにおいて組み立てた。すべてのカップリング工程において、N末端Fmoc基は、Nメチルピロリドン(NMP)中の20%ピペリジンを用いた樹脂の処理(3×2.5分間)により除去した。カップリングは、DMF中のHBTU/HOBtの(各々1mmol)及びDIPEA(2mmol)(45〜60分間ボルテックス)により活性化されたFmoc保護アミノ酸(1mmol)を用いて行った。位置2、3、及び14で、それぞれ、アミノ酸誘導体Fmoc−Lys(ivDde)−OH、Fmoc−Pqa−OH、及びFmoc−N−Me−Arg(Mtr)−OHを合成配列中に組み込んだ。すべてのカップリング工程後、未反応のアミノ基を、NMP中のAc2O(0.5M)、DIPEA(0.125M)、及びHOBt(0.015M)の混合物を用いた処理によりキャップした(10分間ボルテックス)。各々のステップの間で、樹脂をNメチルピロリドン及びMFを用いて広範囲に洗浄した。立体障害アミノ酸の組み込みは、自動化された二重カップリングにおいて達成した。この目的のために、樹脂を、カップリングサイクルの間でのキャッピング工程を伴わず、1mmolの活性化された構築ブロックで2回処理した。標的配列の完了後、N末端Fmoc基を、NMP中の20%ピペリジンを用いて除去し、2−[2−(メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(4mmol)を、HBTU/HOBt(それぞれ2mmol)及びDIPEA(それぞれ4mmol)を用いた活性化後にカップリングした。その後、樹脂を、さらなる操作のために、フリット固相リアクターに移した。
PEG2−IK(PEG3−Cys−Abu−NH2)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH2(配列番号182)
【0705】
ivDde基の除去のために、ペプチド樹脂(PEG2−IK(ivDde)−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(tBu)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel−RAM樹脂;配列番号181)を、DMFで30分間にわたり膨潤させ、その後、DMF中のヒドラジン水和物の2%溶液(60ml)で2時間にわたり処理した。樹脂を、イソプロパノール及びDMFを用いて広範囲洗浄した後、DMF(3mL)中のFmoc−12アミノ4,7,10−トリオキサドデカン酸(PEG3スペーサー)(887mg、2mmol)、HBTU(2mmol)、HOBt(2mmol)、及び2Mジイソプロピルエチルアミン(2mL、4mmol)を加え、混合物を3時間にわたり振盪した。樹脂を、DMFで洗浄し、Fmoc基を、DMF中の混合物20%ピリジンを用いて切断した。その後、樹脂を、Fmoc−Cys(Trt)−OH(1.2g;2mmol)、HBTU/HOBt(各々2mmol)、及びDIPEA(4mmol)の混合物で2時間にわたり処理した。樹脂を、DMFで洗浄し、Fmoc基を、DMF中の20%ピリジンの混合物を用いて切断し、HBTU/HOBt(各々2mmol)及びDIPEA(4mmol)を用いて活性化したFmoc−4−アミノ酪酸(0.65g、2mmol)をカップリングした(2時間)。N末端Fmoc基を、NMP中の20%ピペリジンを用いて除去し、樹脂を、DMFを用いて繰り返し洗浄した。その後、樹脂を、トリフルオロ酢酸、水、及びトリイソプロピルシラン(19mL:0.5mL:0.5mL)の混合物で2.5時間にわたり処理した。切断溶液を濾過し、ペプチドを、冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(300ml)の添加により沈殿させ、無色固体を提供し、それを、ジイソプロピルエーテルを用いて繰り返し洗浄した。粗生成物を、酢酸/水の混合物中に再溶解し、凍結乾燥し、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製した。
【0706】
分析用HPLC:t
R=8.6分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間);ESI−MS(陽イオンモード):m/z:C127H195N37O31Sについての計算値:2768.3;検出:1385.0[M+2H]
2+、計算値:1385.1;923.7[M+3H]
3+、計算値:923.8;693.1[M+4H]4+、計算値:693.1。
PEG2−IK(PEG3−Cys−4Abu−Dig)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH2(PEG2−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)(配列番号183)
【0707】
DMF(3mL)中のペプチドPEG2−IK(PEG3−Cys−Abu−NH2)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH2(配列番号182、4.1mg、1.48μmol)の溶液に、NMP(1mL)中に溶解したジゴキシゲニン−3−カルボキシメチルN−ヒドロキシスクシンイミド(0.81mg、1.48μmol)を加えた。DMF中のトリエチルアミン(0.41μL、97.6μmol)を加え、混合物を室温で2時間にわたり混転した。粗生成物を、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水勾配を用いた分取逆相HPLCにより精製し(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)、無色固体としてPEG3−Cys−4Abu−Digペプチド(1.2mg、0.375μmol、25%)を提供した。
【0708】
分析用HPLC:t
R=10.2分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間);ESI−MS(陽イオンモード):m/z:C
152H
229N
37O
37Sについての計算値:3198.8;検出:1067.3[M+3H]
3+、計算値:1067.3。
iii)ビオチンを伴う、又はビオチン及びシステイン含有リンカーを伴うPYY(3−36)由来ポリペプチドの生成:
Ac−IK(PEG2−ビオチン)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−アミド/Ac−PYY(PEG2−Biot)(配列番号184)
【0709】
共通の前駆体ペプチド樹脂(配列番号176)を用いて開始し、ペプチドを、1.2mlのDMF中の57.8mg(3等量)のFmoc−8−アミノ−ジオキサオクタン酸(PEG2スペーサー)、48.2mg(3等量)のTBTU、及び33.3μL(6等量)のNMMを用いて手動で2回コンジュゲーションし(各々30分間)、DMFで洗浄した。Fmoc基を、配列番号176について記載される標準的なプロトコールを使用し、30%Pip/DMFを用いて切断し、樹脂を、DMFで洗浄し、NMP中のビオチンOBt溶液(1.2mlのNMP中の48.9mgビオチン(4当量)、64.2mgのTBTU(4当量)、及び44.4μLのNMM(8当量)、プレ活性化3分間)で2時間にわたり処理した。DMF、EtOH、及びMTBEを用いた洗浄後、ペプチド樹脂を乾燥させた。
【0710】
最終的な切断を、上記に記載する通りに実施した。粗生成物を、30分間の22−52%Bの勾配を用いた分取逆相HPLCにより精製し、固体を与えた。収量:42mg。
精製プロトコール
HPLC:UV−Vis検出器SPD−6Aを伴うShimadzu LC-8A
溶媒A:水中の0.05% TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05% TFA
カラム:UltraSep ES,RP−18,10μm,250×20mm(SEPSERV,Berlin)
流速:15ml/分
検出:230nm
分析データ:
HPLC:フォトダイオードアレイ検出器SPD-M6Aを伴うShimadzu LC-9A
溶媒A:水中の0.05% TFA
溶媒B:80%アセトニトリル/水中の0.05% TFA
カラム:UltraSep ES, RP-18、7μm、250×3mM(SEPSERV, Berlin)
流速:0.6ml/分
勾配:5−80%B(30分間)
MS:Shimadzu飛行時間形質量分析計AXIMA Linear
(MALDI−TOF)、(分子量を質量平均として計算する)
m/z:C
122H
181N
37O
27Sの計算値=2630.10;検出:2631.5
Ac−IK(PEG3−Cys−β−Ala−ビオチン)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH
2/Ac−PYY(PEG3−Cys−β−Ala−Biot)(配列番号185)
【0711】
前駆体Ac−IK−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂(配列番号176)を用いて開始し、ペプチドを、1.2mlのDMF中の66.5mg(3等量)のFmoc−12−アミノ−4,7,10トリオキサドデカン酸(PEG3スペーサー)、57.0mg(3等量)のHATU、及び16.7μL(3等量)のNMMを用いて手動で2回30分間コンジュゲーションした。DMFを用いた洗浄後、Fmoc基を、30%Pip/DMFを用いて切断し、樹脂を、標準的なプロトコールを使用し、DMFで洗浄した。
【0712】
標準プロトコールを用いて、SYRO1シンセサイザーにおいて自動的に実施された、Fmoc−Cys(Trt)−OH及びFmoc−β−Ala−OHの二重カップリングに続き、NMP中のビオチンOBt(48.9mgのビオチン(4当量)から調製)、64.2mgのTBTU(4当量)、及び1.2mlのNMP中の44.4μLのNMM(8当量)(プレ活性化3分)の溶液を手動で加え、室温で撹拌した。2時間後、樹脂を、DMF、EtOH、MTBEで洗浄し、乾燥させた。
【0713】
最終的な切断を、上記に記載する通りに実施した。粗生成物を、配列番号184について記載される通りの分取逆相HPLCにより精製し、無色の固体を与えた。収量:41.4mg
分析データ:
分取HPLC用の勾配:28−58%B(30分間)
m/z:C
131H
197N
39O
30S
2の計算値=2862.4;検出:2862.4
Ac−IK(PEG3−Cys−PEG2−ビオチン)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH
2/Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−Biot)(配列番号186)
【0714】
前駆体Ac−IK−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂(配列番号176)を用いて開始し、ペプチド合成を、以下の工程を伴い継続した:
Fmoc−PEG3−OHを用いた二重カップリング(標準的なプロトコールを用いる)、
Fmoc Cys(Trt)−OHの二重カップリング(標準的なプロトコールを用いる)、
1.2mlのDMF中の57.8mg(3等量)のFmoc−8−アミノ−ジオキサオクタン酸(PEG2スペーサー)、48.2mg(3等量)のTBTU、及び33.3μL(6等量)のNMMを用いたFmoc−PEG2−OHの二重カップリング(2×30分間)、1.2mlのNMP中の48.9mgビオチン(4等量)、64.2mgのTBTU(4等量)、及び44.4μLのNMM(8等量)の溶液を用いたビオチン化(プレ活性化3分間)、単一カップリング(2時間)。
【0715】
樹脂からの切断、精製、及び分析を、配列番号184について記載される通りに実施した。収量:47.7mg
分析データ:
条件は、配列番号184について記載されてものと同じであった。
分取HPLC用の勾配:25−45%B(30分間)。
m/z:C
134H
203N
39O
32S
2の計算値=2936.5;検出:2937.8
iv)フルオレセインを用いた、又はフルオレセイン及びシステイン含有リンカーを用いたPYY(3−36)由来ポリペプチドの生成。
Ac−IK(PEG3−Cys−4−Abu−5−Fluo)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH
2/Ac−PYY(PEG3−Cys−4−Abu−5−Fluo)(配列番号187)
【0716】
前駆体Ac−IK−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂(配列番号176)を用いて開始し、ペプチド合成を、配列番号179と同様に継続した。標識のために、DMF中の54.2mgの5カルボキシフルオレセイン、33.1mgのHOBt、及び35.6μLのDICの溶液を加え、室温で18時間にわたり撹拌した。
【0717】
樹脂からの切断、精製、及び分析を、配列番号179について記載される通りに実施した。収量:41.6mg
分析データ:
分取HPLC用の勾配:29−49%B(30分間)
m/z:C
143H
195N
37O
34Sの計算値=3008.44;検出:3007.2
Ac−IK(PEG3−Cys−PEG2−5−Fluo)−Pqa−RHYLNWVTRQ−MeArg−Y−NH2/Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−5−Fluo)(配列番号188)
【0718】
前駆体Ac−IK−Pqa−R(Pbf)H(Trt)Y(tBu)LN(Trt)W(Boc)VT(But)R(Pbf)Q(Trt)−MeArg(Mtr)−Y(tBu)−TentaGel S RAM樹脂(配列番号176)を用いて開始し、ペプチド合成を、以下の工程を伴い継続した:
Fmoc−PEG3−OHを用いた二重カップリング(標準的なプロトコールを用いる)、
Fmoc Cys(Trt)−OHの二重カップリング(標準的なプロトコールを用いる)、
二重カップリングFmoc−PEG2−OH(配列番号186を参照のこと)
【0719】
標識のために、ペプチド樹脂を、DMF中の56.7mgの5カルボキシフルオレセイン、34.6mgのHOBt、及び37.3μLのDICの溶液で18時間にわたり撹拌した。樹脂からの切断、精製、及び分析を、配列番号185において記載される通りに実施した。収量:41.7mg
分析データ:
分取HPLC用の勾配:34−64%B(30分間)。
m/z:C
145H
199N
37O
36S
1の計算値=3068.5;検出:3069.2
b)ハプテン標識蛍光色素:
i)ジゴキシゲニン化Cy5の生成
【0720】
合成、WO 2012/093068を参照のこと。
ii)Dig−Cys−MR121の生成
【0721】
三角フラスコにおいて、1,2−ジアミノ−プロパントリチル樹脂(250mg、0.225mmol、ローディング0.9mmol/g)を、DMF(5mL)で30分間にわたり膨潤させた。その後、DMF(2mL)中のFmoc−Cys(Trt)−OH(395mg、0.675mmol)の溶液並びにDMF(8mL)中のHATU(433mg、1.2375mmol)及びHOAt(164mg、1.2375mmol)の溶液を樹脂に加えた。この懸濁液に、DIPEA(385μL、2.25mmol)を加え、混合物を、周囲温度で16時間にわたりかき混ぜ、濾過し、DMFを用いて繰り返し洗浄した。カップリング工程後、未反応アミノ基を、DMF中のAc2O(20%)の混合物を用いた処理によりキャップし、DMFを用いた洗浄工程が続いた。N末端Fmoc基の除去は、2時間にわたる、DMF中のピペリジン(20%)を用いた樹脂の処理により達成された。その後、樹脂を、DMF及びイソプロパノール、並びに、再びDMFを用いて完全に洗浄し、次に、DMF(10ml)中の1%DIPEA中のMR121(25mg、0.05mmol)の溶液で16時間にわたり処理した。濾過及びDMFを用いた洗浄後、樹脂を、トリフルオロ酢酸、水、及びトリイソプロピルシラン(9mL:9mL:1mL)の混合物で3時間にわたり処理した。切断溶液を濾過し、減圧下で濃縮し、結果として得られた固体を、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥した。分析用HPLC:t
R=7.7分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間。その後、この中間体の一部(10.0mg、17.6μmol)をDMF(1mL)中に溶解し、DMF(1mL)中のジゴキシゲニン−3−カルボキシメチル−N−ヒドロキシスクシンイミド(9.6mg、17.6μmol)の溶液及びDMF(2ml)中の1%トリエチルアミンを加え、混合物を16時間にわたり混転した。溶液をその後に濃縮し、標的化合物を、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製した。収量:1.0mg。分析用HPLC:t
R=10.1分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:996.3;検出:995.8[M]
1+。
iii) DIG−Cys−AHX−Cy5の生成
【0722】
三角フラスコにおいて、1,2−ジアミノ−プロパントリチル樹脂(250mg、0.225mmol、ローディング0.9mmol/g)を、DMF(5mL)で30分間にわたり膨潤させた。その後、DMF(2mL)中のFmoc−Cys(Trt)−OH(395mg、0.675mmol)の溶液並びにDMF(8mL)中のHATU(433mg、1.2375mmol)及びHOAt(164mg、1.2375mmol)の溶液を樹脂に加えた。この懸濁液に、DIPEA(385μL、2.25mmol)を加え、混合物を、周囲温度で16時間にわたりかき混ぜ、濾過し、DMFを用いて繰り返し洗浄した。カップリング工程後、未反応アミノ基を、DMF中のAc2O(20%)の混合物を用いた処理によりキャップし、DMFを用いた洗浄工程が続いた。N末端Fmoc基の除去は、DMF中のピペリジン(20%)を用いた樹脂の処理により達成された。その後、樹脂を、DMF及びイソプロパノール、並びに、再びDMFを用いて完全に洗浄し、次に、DMF(10ml)中の1%DIPEA中のCy5モノNHSエステル(25mg、0.0316mmol)の溶液で16時間にわたり処理した。濾過及びDMFを用いた洗浄後、樹脂を、トリフルオロ酢酸、水、及びトリイソプロピルシラン(9mL:9mL:1mL)の混合物で3時間にわたり処理した。切断溶液を濾過し、減圧下で濃縮し、結果として得られた固体を水中で再溶解し、凍結乾燥した。中間体の精製は、0.1% TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により達成し、凍結乾燥後に青色固体をもたらした。分析用HPLC:t
R=6.2分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間。その後、この中間体の一部(6.5mg、7.9μmol)を、DMF(1mL)中のDig−Amcap−OSu(5.2mg、7.9μmol)の溶液及びDMF(2ml)中の1%トリエチルアミンを加え、混合物を16時間にわたり混転した。溶液をその後に濃縮し、標的化合物を、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製した。収量:3mg。分析用HPLC:t
R=8.7分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:1360.0;検出:1360.7[M]
1+。
iv)ビオチンeda−Dy636の生成
【0723】
0.1M K
3PO
4緩衝液(pH 8.0、500μL)中のビオチンエチレンジアミン臭化水素酸塩(2.14mg、5.83μmol)の溶液に、0.1M K
3PO
4緩衝液(pH8.0、500μL)中のDy636−OSu(5mg、5.83μmol)の溶液を加え、結果として得られた混合物を、周囲温度で2時間にわたり混転し、濾過し、標的化合物を、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により単離した。凍結乾燥後、Dy636−エチレンジアミン(Ethylendiamin)Biコンジュゲートを無色固体(2.8mg、48%%)として得た。分析用HPLC:t
R=8.5分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×4.6mm、水+0.1%TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間);ESI−MS(陽イオンモード):m/z:C
50H
65N
6O
10S
3についての計算値:1006.3;検出:1007.3[M+H]
+。
v)ビオチン−Ser−Dy636の生成
工程1:ビオチン−O
2Oc−Ser−O
2Oc−DADOO−NH
2
【0724】
O−ビス−(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(176mg、0.125mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)上に、FmoC−O
2Oc−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、FmoC−O
2Oc−OH(全てIris Biotech)、及びDMTr−D−ビオチン(Roche)を連続的にコンジュゲーションさせた。ペプチド合成は、確立されたプロトコール(FastMoc 0.25mmol)に従い、Fmoc化学を使用した自動化Applied Biosystems ABI 433Aペプチドシンセサイザーにおいて実施した(配列番号180について記載する通り)。
【0725】
合成後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンを用いて完全に洗浄し、真空下で乾燥させた。次に、樹脂を三角フラスコに入れ、トリフルオロ酢酸、水、及びトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物を用いて、室温で2時間にわたり処理した。切断溶液を濾過し、ペプチドを、冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(80ml)の添加により沈殿させ、無色固体を提供し、それを、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。粗生成物を水中に再溶解し、凍結乾燥し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に無色固体をもたらした。収量:56mg(60%)。分析用HPLC:t
R=4.5分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.1% TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:751.9;検出:752.4[M+H]
+;376.9[M+2H]
2+。
工程2:ビオチン−O
2Oc−Ser−O
2Oc−DADOO−Dy−636(Bi−Ser−Dy−636)
【0726】
ペプチド(5.3mg、7.0μmol)を、200mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(583μL)中に溶解した。DY−636−NHSエステル(4mg、4.7μmol、Dyomics)を水(583μL)中に溶解し、ペプチド溶液に加えた。反応溶液を、室温で2時間にわたり撹拌し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に青色固体をもたらした。収量:3.9mg(55%)。分析用HPLC:t
R=8.3分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:1472.8;検出:[M+H]
+;737.0[M+2H]
2+。
vi)ビオチン−Cys−Dy636の生成
工程1:ビオチン−O
2Oc−Cys−O
2Oc−DADOO−NH
2
【0727】
O−ビス−(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(352mg、0.25mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)上に、FmoC−O
2Oc−OH、Fmoc−Cys(Trt)−OH、FmoC−O
2Oc−OH(全てIris Biotech)、及びDMTr−D−ビオチン(Roche)を連続的にコンジュゲーションさせた。ペプチド合成は、確立されたプロトコール(FastMoc 0.25mmol)に従い、Fmoc化学を使用した自動化Applied Biosystems ABI 433Aペプチドシンセサイザーにおいて実施した(配列番号180について記載する通り)。
【0728】
合成後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンを用いて完全に洗浄し、真空下で乾燥させた。次に、樹脂を三角フラスコに入れ、トリフルオロ酢酸、水、及びトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物を用いて、室温で2時間にわたり処理した。切断溶液を濾過し、ペプチドを、冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(100ml)の添加により沈殿させ、無色固体を提供し、それを、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。粗生成物を水中に再溶解し、凍結乾燥し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に無色固体をもたらした。収量:79mg(41%)。分析用HPLC:t
R=5.3分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.1% TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:767.9;検出:768.4 [M+H]
+;384.8 [M+2H]
2+。
工程2:ビオチン−O
2Oc−Cys(TNB)−O
2Oc−DADOO−NH
2
【0729】
ペプチド(30mg、39μmol)を、100mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(4mL)中に溶解し、5,5′−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(77mg、195μmol)を加えた。混合物を、室温で30分間にわたり撹拌し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に黄色固体をもたらした。収量:31mg(83%)。分析用HPLC:t
R=5.4分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:965.1;検出:965.4[M+H]
+;483.3[M+2H]
2+。
工程3:ビオチン−O
2Oc−Cys(TNB)−O
2Oc−DADOO−Dy−636
【0730】
TNB保護ペプチド(1.35mg、1.4μmol)を、200mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(291μL)中に溶解した。DY−636−NHSエステル(1mg、1.2μmol、Dyomics)を水(291μL)中に溶解し、ペプチド溶液に加えた。反応液を室温で1時間にわたり撹拌し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に青色固体をもたらした。収量:1mg(50%)。分析用HPLC:t
R=9.0分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023% TFA 80:20、25分間ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:1686.0;検出:1686.7[M+H]
+;844.2[M+2H]
2+。
工程4:ビオチン−O
2Oc−Cys−O
2Oc−DADOO−Dy−636(Bi−Cys−Dy−636)
【0731】
TNB保護ペプチド及び色素標識ペプチド(1mg、0.6μmol)を、200mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(250μL)及び水(192μL)の混合物中に溶解した。100mMTris(2カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩溶液(58μL)を加え、反応混合物を室温で30分間にわたり撹拌した。精製を、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により実施し、凍結乾燥後に青色固体をもたらした。収量:0.7mg(79%)。分析用HPLC:t
R=8.6分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023% TFA 80:20、25分間ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:1488.9;検出:1488.6[M+H]
+;745.1[M+2H]
2+。
vii) ビオチン−Cys−Cy5の生成
工程1:ビオチン−O
2Oc−Cys−O
2Oc−DADOO−NH
2
【0732】
O−ビス−(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(352mg、0.25mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)上に、FmoC−O
2Oc−OH、Fmoc−Cys(Trt)−OH、FmoC−O
2Oc−OH(全てIris Biotech)、及びDMTr−D−ビオチン(Roche)を連続的にコンジュゲーションさせた。ペプチド合成は、確立されたプロトコール(FastMoc 0.25mmol)に従い、Fmoc化学を使用した自動化Applied Biosystems ABI 433Aペプチドシンセサイザーにおいて実施した(配列番号180について記載する通り)。
【0733】
合成後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンを用いて完全に洗浄し、真空下で乾燥させた。次に、樹脂を三角フラスコに入れ、トリフルオロ酢酸、水、及びトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物を用いて、室温で2時間にわたり処理した。切断溶液を濾過し、ペプチドを、冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(100ml)の添加により沈殿させ、無色固体を提供し、それを、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。粗生成物を水中に再溶解し、凍結乾燥し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に無色固体をもたらした。収量:79mg(41%)。分析用HPLC:t
R=5.3分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.1% TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:767.9;検出:768.4[M+H]
+;384.8[M+2H]
2+。
工程2:ビオチン−O
2Oc−Cys(TNB)−O
2Oc−DADOO−NH
2
【0734】
ペプチド(30mg、39μmol)を、100mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(4mL)中に溶解し、5,5′−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(77mg、195μmol)を加えた。混合物を、室温で30分間にわたり撹拌し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に黄色固体をもたらした。収量:31mg(83%)。分析用HPLC:t
R=5.4分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:965.1;検出:965.4[M+H]
+;483.3[M+2H]
2+。
工程3:ビオチン−O
2Oc−Cys(TNB)−O
2Oc−DADOO−Cy5
【0735】
TNB保護ペプチド(9.9mg、10.3μmol)を、200mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(1026μL)中に溶解した。Cy5−モノNHSエステル(6.5mg、8.2μmol、GE Healthcare)を水(1026μL)中に溶解し、ペプチド溶液に加えた。反応液を室温で2時間にわたり撹拌し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に青色固体をもたらした。収量:10mg(80%)。分析用HPLC:t
R=7.2分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023% TFA 80:20、25分間ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:1603.9;検出:1604.9[M+H]
+;803.1[M+2H]
2+。
工程4:ビオチン−O
2Oc−Cys−O
2Oc−DADOO−Cy5(Bi−Cys−Cy5)
【0736】
TNB保護ペプチド及び色素標識ペプチド(10mg、6.1μmol)を、200mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(1522μL)及び水(1218μL)の混合物中に溶解した。100mMTris(2カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩溶液(304μL)を加え、反応混合物を室温で30分間にわたり撹拌した。精製を、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により実施し、凍結乾燥後に青色固体をもたらした。収量:7.6mg(86%)。分析用HPLC:t
R=6.4分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023% TFA 80:20、25分間ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:1406.8;検出:1406.8[M+H]
+;704.0[M+2H]
2+。
viii) ビオチン−Ser−Cy5の生成
工程1:ビオチン−O
2Oc−Ser−O
2Oc−DADOO−NH
2
【0737】
O−ビス−(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂(176mg、0.125mmol、ローディング0.71mmol/g、Novabiochem)上に、FmoC−O
2Oc−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、FmoC−O
2Oc−OH(全てIris Biotech)、及びDMTr−D−ビオチン(Roche)を連続的にコンジュゲーションさせた。ペプチド合成は、確立されたプロトコール(FastMoc 0.25mmol)に従い、Fmoc化学を使用した自動化Applied Biosystems ABI 433Aペプチドシンセサイザーにおいて実施した(配列番号180について記載する通り)。
【0738】
合成後、樹脂を、DMF、メタノール、ジクロロメタンを用いて完全に洗浄し、真空下で乾燥させた。次に、樹脂を三角フラスコに入れ、トリフルオロ酢酸、水、及びトリイソプロピルシラン(9.5mL:250μL:250μL)の混合物を用いて、室温で2時間にわたり処理した。切断溶液を濾過し、ペプチドを、冷(0℃)ジイソプロピルエーテル(80ml)の添加により沈殿させ、無色固体を提供し、それを、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。粗生成物を水中に再溶解し、凍結乾燥し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に無色固体をもたらした。収量:56mg(60%)。分析用HPLC:t
R=4.5分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.1% TFA→アセトニトリル/水+0.1%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:751.9;検出:752.4[M+H]
+;376.9[M+2H]
2+。
工程2:ビオチン−O
2Oc−Ser−O
2Oc−DADOO−Cy5(Bi−Ser−Cy5)
【0739】
ペプチド(5.7mg、7.6μmol)を、200mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5(789μL)中に溶解した。Cy5−モノNHSエステル(5mg、6.3μmol、GE Healthcare)を水(789μL)中に溶解し、ペプチド溶液に加えた。反応溶液を、室温で2時間にわたり撹拌し、その後、0.1%TFAを含むアセトニトリル/水の勾配を用いた分取逆相HPLC(Merck Chromolith prep RP-18eカラム、100×25mm)により精製し、凍結乾燥後に青色固体をもたらした。収量:6mg(58%)。分析用HPLC:t
R=6.1分間(Merck Chromolith Performance RP-18e、100×3mM、水+0.025%TFA→アセトニトリル/水+0.023%TFA80:20、25分間。ESI−MS(陽イオンモード):m/z:[M]についての計算値:1390.72;検出:1391.2[M+H]
+。
【0740】
実施例9
ビオチン標識化合物(ハプテン化化合物)への組換えヒト化抗ビオチン抗体の結合
【0741】
ヒト化手順及びその後のシステイン変異の導入が、完全な結合活性を保持していた誘導体をもたらしたか否かを決定するために、以下の実験を実施した。
【0742】
組換え抗ビオチン抗体誘導体の結合特性を、Octet QK機器(Fortebio Inc.)を使用した生体層干渉法(BLI)技術により分析した。このシステムは、分子相互作用の試験のために十分に確立されている。BLi技術は、バイオセンサーチップの表面及び内部参照から反射された白色光の干渉パターンの測定に基づく。バイオセンサーチップへの分子の結合は、測定することができる干渉パターンのシフトをもたらす。上記に記載するヒト化手順によって、ビオチンに結合する抗ビオチン抗体の能力が減弱されるか否かを分析するために、ビオチン化タンパク質に結合するそれらの能力における、抗体のキメラ及びヒト化バージョンの特性を、直接的に比較した。結合試験は、抗huIgG Fc抗体Capture(AHC)Biosensors(Fortebio)上に抗ビオチン抗体を捕捉することにより実施した。最初に、バイオセンサーを、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中の0.5mg/mlの濃度を伴う抗体溶液中で1分間にわたりインキュベートした。その後、バイオセンサーを、1×PBS(pH 7.4)中で1分間にわたりインキュベートし、安定したベースラインに達した。結合を、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中の0.06mg/mlの濃度を伴うビオチン化タンパク質を含む溶液中で、抗体コーティングされたバイオセンサーを5分間にわたりインキュベートすることにより測定した。解離を、5分間にわたり1×PBS(pH 7.4)中でモニターした。キメラ及びヒト化抗ビオチン抗体について、結果として得られた結合曲線を、直接的に比較した。
【0743】
抗体のヒト化バージョンは、キメラ抗体と等しい、又はそれよりも更に良好な、ビオチン化抗原の結合を示した。同じことが、Kabat位置VH53にCys変異を伴うヒト化抗体について該当する。ビオチン化タンパク質は、バイオセンサーが、ビオチンに結合しないハーセプチンを用いてコーティングされた場合、低下したバイオセンサーへの残留の非特異的結合を示した。このように、抗ビオチン抗体の機能性は、そのヒト化バリアント(それらは、配列番号44及び48、配列番号60及び64において描写される配列により定義される)において保持された。
表面プラズモン共鳴
【0744】
表面プラズモン共鳴測定を、BIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare Biosciences AB、スウェーデン)で、25℃で実施した。捕捉システム(Human Antibody Capture Kit、BR−1008−39、GE Healthcare Biosciences AB、Swedenからの10μg/ml Anti-human Capture(IgG Fc))の約4300共鳴単位(RU)を、GE Healthcare により供給される標準的なアミンカップリングキット(BR−1000−50)を使用することにより、CM3チップ(GE Healthcare、BR−1005−36)上にpH5.0でカップリングさせた。アミンカップリング用の泳動緩衝液は、HBS−N(10mM HEPES(pH 7.4)、150mM NaCl、GE Healthcare、BR−1006−70)であった。泳動及び希釈用緩衝液は、PBS−T(0.05% Tween20を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)(pH7.4)であった。ヒト化抗ビオチン抗体を、5μL/分の流速で、60秒間にわたり2nM溶液を注射することにより捕捉した。ビオチン化siRNAを、PBS−Tを用いて、0.14‐100nM(1:3希釈系列)の濃度で希釈した。結合を、30μL/分の流速、解離時間600秒で、180秒間にわたり、各々の各濃度を注入することにより測定した。表面を、5μL/分の流速で、3mMgCl
2溶液を用いた30秒間の洗浄により再生した。データを、BIAevaluationソフトウェア(GE Healthcare Biosciences AB、Sweden)を使用して評価した。バルク屈折率の差を、抗ヒトIgG Fc表面から得られた応答を減算することにより補正した。ブランク注射も減算する(=二重参照)。KD及び動力学的パラメーターの計算のために、ラングミュア1:1モデルを使用した。
【0745】
表面プラズモン共鳴(SPR)による動態結合分析を、ヒト化抗ビオチン抗体の配列番号44及び48、並びにヒト化抗ビオチン抗体VH53Cの配列番号60及び64について実施した。2nMの濃度での抗ビオチン抗体を、CM3センサーチップに結合させた抗ヒトIgG Fc抗体により捕捉した。ビオチン化siRNA(Mw:13868Da)の結合を、濃度0.41、1.23、3.7、11.1、33.3、100、及び300nMで記録した。測定は、二通り行った。ヒト化抗ビオチン抗体及びヒト化抗ビオチン抗体VH53Cについての、計算されたK
Dは、それぞれ0.633nM及び0.654nMであった。
【0746】
実施例10
抗ハプテン抗体を伴うハプテン化化合物の非共有結合複合体の生成
一般的な方法:
【0747】
ハプテン化化合物を伴う抗ハプテン抗体の複合体(=ペイロードにコンジュゲーションされたハプテン)の生成は、定義された複合体をもたらすものとし、これらの複合体中の化合物(=ペイロード)が、その活性を保持することを保証しなければならない。それぞれの抗ハプテン抗体を伴うハプテン化化合物の複合体の生成のために、ハプテン化化合物を、1mg/mlの最終濃度までH
2O中に溶解した。抗体を、20mMヒスチジン緩衝液、140mM NaCl(pH =6.0)中で、1mg/ml(4.85μM)の最終濃度まで濃縮した。ハプテン化ペイロード及び抗体を、1:2のモル比(化合物対抗体)まで、上下のピペッティングにより混合し、15分間にわたり室温でインキュベートした。
【0748】
或いは、ハプテン化化合物は、10mg/mlの最終濃度まで100%DMF中に溶解した。抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH=8.2)中で、10mg/mlの最終濃度まで濃縮した。ハプテン化化合物及び抗体を、2.5:1のモル比(化合物対抗体)まで、上下のピペッティングにより混合し、60分間にわたり室温及び350rpmでインキュベートした。
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体の複合体の形成のための例示的な方法−非共有結合ジゴキシゲニンCy5複合体
【0749】
ヒト化及びマウス抗ジゴキシゲニン抗体又は二重特異性抗ジゴキシゲニン抗体誘導体を、抗体成分として使用した。抗ジゴキシゲニン抗体を伴うジゴキシゲニン化Cy5の複合体の生成のために、Cy5ジゴキシゲニンコンジュゲートを、0.5mg/mlの最終濃度までPBS中に溶解した。抗体を、20mMヒスチジン及び140mM NaClで構成される緩衝液(pH6)中で1mg/ml(約5μM)の濃度で使用した。ジゴキシゲニン化Cy5及び抗体を、2:1モル比(ジゴキシゲニン化Cy5対抗体)で混合した。この手順によって、定義された組成の複合体の均質な調製物がもたらされた。
【0750】
複合体形成反応は、サイズ排除カラム上の抗体会合フルオロフォアの蛍光(650/667nm)を決定することによりモニターすることができる。これらの実験の結果は、抗体が、ジゴキシゲニンについての結合特異性を含む場合、複合体形成だけが生じることを実証する。ジゴキシゲニンについての結合特異性を伴わない抗体は、ジゴキシゲニンCy5コンジュゲートに結合しない。増加シグナルが、ジゴキシゲニンCy5コンジュゲート対抗体比2:1まで、二価抗ジゴキシゲニン抗体について観察することができる。その後、組成依存性蛍光シグナルが、プラトーに達する。
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体の複合体の形成のための例示的な方法−ビオチンCy5/キメラ抗ビオチン抗体(ヒトIgGサブクラス)複合体
【0751】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化Cy5(ビオチン−Cys−Cy5)の複合体の生成のために、0.16mgのビオチン−Cys−Cy5を、10mg/mlの濃度まで、100%DMF中に溶解した。1mgの抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTAで構成される緩衝液(pH 8.2)中に、10.1mg/ml(約69μM)の濃度で使用した。ビオチン−Cys−Cy5及び抗体を、2.5:1モル比(ビオチン−Cys−Cy5対抗体)で混合し、350rpmで振盪しながら、60分間にわたり室温でインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを、実施例11aに記載する通りに、SDS−PAGEにより分析した。蛍光の検出を、実施例11aに記載する通りに行った。
ビオチン化蛍光色素及び抗ビオチン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−ビオチン−Ser−Cy5/ヒト化抗ビオチン抗体:
【0752】
リンカー内にセリン残基を含むビオチン誘導体化Cy5(ビオチン−Ser−Cy5の)の複合体の生成のために、0.61mgのビオチン−Ser−Cy5を、10mg/mlの濃度まで、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中に溶解した。18.5mgのヒト抗ビオチン抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTAで構成される緩衝液(pH8.2)中で、10mg/ml(約69μM)の濃度で使用した。ビオチン−Ser−Cy5及び抗体を、2.5:1モル比(ビオチン−Ser−Cy5対抗体)で混合し、350rpmで振盪しながら、60分間にわたり室温でインキュベートした。サンプルを、次に、1.5ml/分の流速及び移動相として20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)を伴う、Superdex 200 16/60ハイロードプレップグレードカラム(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィーに供した。ピーク画分を回収し、純度について、SDS−PAGEにより分析した。色素対抗体比を、(1)波長280nm(タンパク質)及び650nm(Cy5)でサンプルの吸光度を測定するにより;(2)式:(標識タンパク質/ε(Cy5)*タンパク質濃度(M)のA
650=モル色素/モルタンパク質(式中、ε(Cy5)=250000M
−1cm
−1、複合体のA
650=47.0、及びタンパク質濃度は86.67μMである)を使用することにより計算した。結果として得られる抗体分子への色素の比率は2.17であったが、それは、全ての抗体パラトープが、ビオチン−Cy5分子で飽和されていることを示す。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体の複合体の形成のための例示的な方法−ジゴキシゲニンPYY(3−36)/抗ジゴキシゲニン抗体複合体
【0753】
抗ジゴキシゲニン抗体を伴うジゴキシゲニン化ポリペプチドの非共有結合複合体の生成のために、マウスハイブリドーマ由来抗体(10mM KPO
4、70mM NaClからの凍結乾燥物;pH7.5)を、12mlの水中に溶解し、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH 6.0)を含む溶液に対して透析し、11mlの緩衝液中で、300mg(2×10
−6モル)をもたらした(c=27.3mg/ml)。ジゴキシゲニンPYY(3−36)コンジュゲート(11.57mg、4×10
−6モル、2当量)を、1時間以内に2.85mgの4部分で加え、1時間にわたり室温でインキュベートした。複合体化反応の完了後、複合体を、Superdex20026/60 GLカラム(320ml)を介したサイズ排除クロマトグラフィーにより、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中で2.5ml/分の流速で精製した。溶出された複合体は、4mlの画分中に回収し、プールし、0.2μMフィルター上で滅菌し、14.3mg/mlの濃度で234mgの複合体を与えた。同様の様式で、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体の複合体の生成のために、抗体を、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中で、10.6mg/ml(0.93ml中の9.81mg、6.5×10
−8モル)の濃度に調整した。0.57mg=1.97×10
−7モル=3.03等量のジゴキシゲニン化ポリペプチド(DIG−PYY)を、凍結乾燥物として抗体溶液に加えた。ポリペプチド及び抗体を、1.5時間にわたり室温でインキュベートした。過剰なポリペプチドを、Superose 6 10/300 GLカラムを介したサイズ排除クロマトグラフィーにより、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中で0.5ml/分の流速で除去した。溶出された複合体を、0.5mlの画分中に回収し、プールし、0.2μMフィルター上で滅菌し、1.86mg/mlの濃度で4.7mgの複合体を与えた。
【0754】
結果として得られたハプテン化ポリペプチド−抗ハプテン抗体複合体は、サイズ排除クロマトグラフィーにおいて単一のピークの発生を介した単量体IgG様分子として定義した。結果として得られた複合体は、抗体分子当たり2つのジゴキシゲニンPYY誘導体を保有する、単量体IgG様分子として定義した。これらのペプチド複合体の定義された組成は、サイズ排除クロマトグラフィーにより確認されたが、それは、また、タンパク質凝集体の非存在を示した。これらの二重特異性ペプチド複合体の定義された組成(及び2:1ポリペプチド対タンパク質比率)は、さらに、SEC−MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱)により確認された。SEC−MALLS分析のために、100〜500μgのそれぞれのサンプルを、移動相として1×PBS(pH7.4)を用いて、0.25〜0.5ml/分の流速でSuperdex 20010/300 GLサイズ排除カラムに適用した。光散乱を、Wyatt MiniDawn TREOS/QELS検出器を用いて検出し、屈折率を、Wyatt Optilab rEX検出器を用いて測定した。結果として得られたデータを、ソフトウェアASTRA(バージョン5.3.4.14)を使用して分析した。SEC−MALLS分析の結果は、複合体の質量、半径、及びサイズに関する情報を提供する。これらのデータを、対応する非複合体化抗体のデータと比較した。これらの実験の結果は、抗ジゴキシゲニン抗体へのジゴキシゲニン−PYYの曝露によって、1つの抗体分子当たり2つのジゴキシゲニンPYY誘導体を含む複合体がもたらされることを実証する。このように、ジゴキシゲニン化PYYは、定義された部位(結合領域)で、定義された化学量論を伴い、抗ジゴキシゲニン抗体と複合体化することができる。
【0755】
表面プラズモン共鳴試験による複合体の特徴付けによって、複合体化反応が、定義された、完全に複合体化された分子を生成するとの追加の証拠が提供された。抗ジゴキシゲニン抗体は、シグナル増加をもたらすSPRチップに結合させることができる。ジゴキシゲニンPYYコンジュゲートのその後の添加によって、全ての結合部位が完全に占有されるまで、さらなるシグナル増加がもたらされる。これらの条件で、より多くのジゴキシゲニンPYYの添加によって、シグナルは更に増加されない。これは、複合体化反応が特異的であること、及び、そのシグナルが、ジゴキシゲニン化ポリペプチドの非特異的粘着性により起こされないことを示す。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体の複合体の形成のための例示的な方法−Ac−PYY−PEG3−Cys−β−Ala−Biot/キメラ抗ビオチン抗体複合体
【0756】
システイン化リンカーを含むビオチン化PYYポリペプチドの非共有結合複合体の生成のために、0.19mgのAC−PYY−PEG3−Cys−SS−ALA−Biotを、10mg/mlの濃度で、100%DMF中に溶解した。抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.2)で構成される緩衝液中に、10.7mg/ml(約73μM)の濃度で使用した。Ac−PYY−PEG3−Cys−β−Ala−Biot及び抗体を2.5:1モル比(Ac−PYY−PEG3−Cys−β−Ala−Biot対抗体)で混合し、室温及び350rpmで、60分間にわたりインキュベートした。結果として得られた複合体を、サイズ排除クロマトグラフィーにおける単一ピーク(95%単量体)の発生を介した単量体IgG様分子として定義した。結果として得られた複合体を、SDS−PAGE及びその後のウエスタンブロット分析により更に分析した。10μgの複合体を、4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)と混合し、5分間にわたり95℃でインキュベートした。サンプルを、4〜12%ビス−Trisポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)に適用し、それは、200V及び120mAで、35分間にわたり泳動された。ポリアクリルアミドゲル中で分離された分子を、25V及び160mAで、40分間にわたりPVDFメンブレン(0.2μM孔径、Invitrogen)にトランスファーした。メンブレンを、1×PBST(1×PBS+0.1%Tween20)中の1%(w/v)スキムミルク中で、室温で1時間にわたりブロックした。メンブレンを、1×PBST中で5分間にわたり3回洗浄し、その後、ストレプトアビジン‐PODコンジュゲート(2900U/ml、Roche)(1:2000希釈で使用した)とインキュベートした。メンブレン上のビオチンに結合したストレプトアビジン‐PODの検出は、Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)を使用して行った。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体の複合体の形成のための例示的な方法−Ac−PYY−PEG3−Cys−PEG2−Biot/キメラ抗ビオチン抗体複合体
【0757】
システイン化リンカーを含むビオチン化PYYポリペプチドの非共有結合複合体の生成のために、0.16mgのAc−PYY−PEG3−Cys−PEG2−Biotを、10mg/mlの濃度に、100%DMF中で溶解した。抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.2)で構成される緩衝液中で、10.7mg/ml(約73μM)の濃度で使用した。AC−PYY−PEG3−Cys−PEG2−Biot及び抗体を2.5:1のモル比(Ac−PYY−PEG3−Cys−PEG2−Biot対抗体)で混合し、室温及び350rpmで、60分間にわたりインキュベートした。結果として得られた複合体は、サイズ排除クロマトグラフィーを介した、63%単量体IgG様分子及び37%二量体可溶性凝集体として定義した。結果として得られた複合体を、SDS−PAGE及びその後のウエスタンブロット分析により更に分析した。10μgの複合体を、4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)と混合し、5分間にわたり95℃でインキュベートした。サンプルを、4〜12%ビス−Trisポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)に適用し、それは、200V及び120mAで、35分間にわたり泳動された。ポリアクリルアミドゲル中で分離された分子を、25V及び160MAで、40分間にわたりPVDFメンブレン(0.2μM孔径、Invitrogen)にトランスファーした。メンブレンを、1×PBST(1×PBS+0.1%Tween20)中の1%(w/v)スキムミルク中で、室温で1時間にわたりブロックした。メンブレンを、1×PBST中で5分間にわたり3回洗浄し、その後、ストレプトアビジン‐PODコンジュゲート(2900U/ml、Roche)(1:2000希釈で使用した)とインキュベートした。メンブレン上のビオチンに結合したストレプトアビジン‐PODの検出は、Lumi-Light Western Blotting Substrate(Roche)を使用して行った。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体の複合体の形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−5−Fluo)/キメラ抗フルオレセイン抗体複合体
【0758】
システイン化リンカーを含むフルオレセイン結合−PYYポリペプチドの非共有結合複合体の生成のために、0.33mgのAC−PYY(PEG3−Cys−PEG2−5−Fluo)を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTAで構成される緩衝液(pH 8.2)中に、9.99mg/ml(約68μM)の濃度で使用した。Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−5−Fluo及び抗体を、2.5:1モル比(Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−5−Fluo)対抗体)で混合し、室温及び350rpmで、60分間にわたりインキュベートした。結果として得られた複合体を、サイズ排除クロマトグラフィーを介した76%単量体IgG様分子及び24%二量体可溶性凝集体として定義した。結果として得られた複合体を、ポリアクリルアミドゲル中でのSDS−PAGE及びフルオレセイン関連蛍光のその後の検出により、更に分析した。8μgの複合体を、4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)と混合し、5分間にわたり95℃でインキュベートした。フルオレセイン関連蛍光を、645nmの励起波長でLumiImager F1装置(Roche)を使用して記録した。
【0759】
実施例11
酸化還元剤の存在における抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cを伴う、ハプテン化色素又はポリペプチドの定義された共有結合コンジュゲートの生成
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Dig−Cys−Ahx−Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC
【0760】
システイン−リンカーを含む、抗ハプテン抗体及びハプテン化蛍光色素の共有結合コンジュゲートの生成によって、定義されたコンジュゲートがもたらされ、それにおいて、ジスルフィド架橋が、抗ハプテン抗体のCDR2中のVH52bCと、ハプテンと蛍光色素の間のリンカー中のシステインの間の特定の位置で形成される。コンジュゲーション反応は、酸化還元試薬の存在において行った。Dig−Cys−Ahx−Cy5を、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中に溶解した。可溶化は、10%(v/v)酢酸の滴下添加により促進された。最終濃度を0.4mg/mlに調整した。20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)中の抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCを、10mg/mlの濃度にした。抗ジゴキシゲニン抗体を、対照として使用し、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCと同じ方法で処理した。4.7nmolの各々の抗体を、2.5モル当量のDig−Cys−Ahx−Cy5と混合した。これは、11.7nmolのこの物質を、4部分(各々2.9nmol)中に15分毎に加えることにより達成した。これらの添加の間に、サンプルを、穏やかに振盪しながら、25℃でインキュベートした。最後の部分の添加後、0.64nmolの各々の抗体−Dig−Cys−Ahx−Cy5複合体を、以下の酸化還元試薬を含む緩衝液に移した:3mM DTE(ジチオエリスリトール)+10mM GSSG(酸化グルタチオン)、0.3mM DTE+1mM GSSG、及び0.03mM DTE+0.1mM GSSG。全てのサンプルを、これらの条件において15分間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、サンプルを半分に分け(各々0.34nmol)、SDSゲル電気泳動のために調製した。このために、4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)を加えた。各々のサンプルについて、また、還元バージョンを、10×NuPAGEサンプル還元剤(Invitrogen)を加えることにより調製した。全てのサンプルを、1×MOPS緩衝液(Invitrogen)を用いた4〜12%ビス−Trisポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)での電気泳動の前に、5分間にわたり70℃でインキュベートした。ゲル中のCy5関連蛍光を、645nmの励起波長で、LumiImager F1装置(Roche)を用いて検出した。蛍光の検出後、ゲルを、SimplyBlue SafeStain(Invitrogen)を用いて染色した。ゲルを
図8に示す。
【0761】
部位特異的なジスルフィド結合形成が、CDR2中のシステインを伴わない抗ジゴキシゲニン抗体を使用した場合(レーン2 A〜C)、低バックグラウンドの蛍光シグナルを伴い、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCについて示された(
図8、上部のゲル、レーン1 A〜C)。対照反応におけるバックグラウンドシグナルは、通常、抗体−鎖間ジスルフィド結合の形成において含まれるシステインへのDig−Cys−Ahx−Cy5のカップリングにより説明することができる。酸化還元試薬の増加量によって、抗体の重鎖及び軽鎖を接続するジスルフィド架橋が実質的に低下され、主に3/4抗体(− 1x LC)、HC二量体(− 2x LC)、及び1/2抗体(1x HC + 1x LC)を産生する。ゲルの下部では、抗体に共有結合的に連結されていないDig−Cys−Ahx−Cy5の蛍光を検出することができる。
図8の下部のゲルは、そのサンプルの還元時に、Cy5関連蛍光は、抗体の重鎖及び軽鎖の近くに検出可能ではなく、共有結合的な連結がジスルフィド架橋により実際に形成されたことを示す。各々のゲルのクーマシー染色は、各々のレーンにおけるタンパク質の総量が等しかったことを示す。
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Dig−Cys−Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC
【0762】
Dig−Cys−Cy5を、3.25mg/mlの最終濃度に、8.3mM HCl、10%(v/v)DMF中に溶解した。20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH 6.0)中の抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC抗体を、15mg/mlの濃度にした。抗ジゴキシゲニン抗体を、対照として使用し、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCと同じ方法で処理した。13.3nmolの各々の抗体を、10mg/mlの最終抗体濃度で、1mM GSH(還元型グルタチオン)及び5mm GSSG(酸化型グルタチオン)の存在において、2モル当量のDig−Cys−Cy5と混合した。これは、26.6nmolのこの物質を、2部分中に5分毎に加えることにより達成した。これらの添加の間に、サンプルを、穏やかに振盪しながら、室温でインキュベートした。最後の部分の添加後、サンプルを室温で1時間にわたりインキュベートした。カップリング反応の効率を、SDS−PAGE及びCy5関連蛍光シグナルのその後の記録により評価した。5、10、及び20μgの各々のサンプルを、SDS−PAGEのために調製した。このために、4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)を加えた。全てのサンプルを、1×MOPS緩衝液(Invitrogen)を用いた4〜12%ビス−Trisポリアクリルアミドゲル(NuPAGE、Invitrogen)での電気泳動の前に、5分間にわたり70℃でインキュベートした。ゲル中のCy5関連蛍光を、645nmの励起波長で、LumiImager F1装置(Roche)を用いて検出した。蛍光の検出後、ゲルを、SimplyBlue SafeStain(Invitrogen)を用いて染色した。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−PEG3−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)/ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC
【0763】
システイン化リンカーを含むジゴキシゲニン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、1.4mgのPEG3−PYY(PEG3−Cys−4Abu−DIG)を、10mg/mlの濃度に100%DMF中に溶解した。1mgの抗体を、5mm TrisHCl、1mM EDTA、1mM GSH、5mm GSSG(pH8.2)で構成される緩衝液中に10mg/ml(約68μM)の濃度で使用した。PEG3−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)及び抗体を、2:1モル比(PEG3−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)対抗体)で混合し、100rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の43%が、2つのポリペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、46%が、1つのポリペプチド分子にカップリングされた抗体であり、11%が、非カップリング抗体として同定された。
【0764】
実施例12
酸化還元剤の非存在における抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cを伴うハプテン色素及びポリペプチドの定義された共有結合コンジュゲートの生成
【0765】
共有結合抗ハプテン抗体/ハプテン化ポリペプチド又はハプテン化色素ジスルフィド連結コンジュゲートの生成のために、(i)ハプテン(例、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、ビオチン、又はテオフィリン)を、リンカーを含む適切な反応基(例えばシステイン、マレイミドなど)を介して、抗体表面上に曝露され、それが保持されることを可能にするポリペプチド又は色素にカップリングさせ、及び(ii)ポリペプチドの生物学的活性が保持されているシステイン変異を伴う抗ハプテン抗体(=抗体VH52bC/VH53C)を用いて、ハプテン化ポリペプチドの共有結合性の部位特異的コンジュゲートを生成し、及び(iii)抗体鎖間ジスルフィド架橋の還元を避けるために、還元剤の非存在において反応を行うことが必要である。
一般的な方法:
【0766】
ハプテン化化合物を伴う抗ハプテン抗体のコンジュゲートの生成によって、定義された化学量論を伴うコンジュゲートがもたらされるものとし、これらのコンジュゲート中の化合物が、その活性を保持することを保証しなければならない。それぞれの抗ハプテン抗体を伴うハプテン化化合物のコンジュゲートの生成のために、ハプテン化化合物を、10mg/mlの最終濃度に、100%DMF中に溶解した。抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cを、50mMTrisHCl、1mM EDTA(pH=8.2)中で10mg/mlの濃度にした。ハプテン化化合物及び抗ハプテン抗体VH52bC/VH53Cを、2.5:1モル比(化合物対抗体)で、上下のピペッティングにより混合し、60分間にわたり室温及び350rpmでインキュベートした。
【0767】
システインを含むリンカーを介してハプテンにコンジュゲーションされたポリペプチドを、以下においてハプテン−Cysポリペプチド又はポリペプチドCys−ハプテンと呼ぶ。ポリペプチドは、遊離N末端又はキャップN末端のいずれかを有し得る(例、アセチル基(AC−ポリペプチドCys−ハプテン)又はPEG残基(PEGポリペプチドCys−ハプテンを伴う)。
【0768】
システイン含有リンカーを介してハプテンにコンジュゲーションされた蛍光色素は、以下において、色素Cysハプテン又はハプテンCys色素と呼ぶ。
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Dig−Cys−Ahx−Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC
【0769】
サンプルを、実施例11aに記載する通りに正確に調製し、抗体Dig−Cys−Ahx−Cy5複合体を、酸化還元化合物、0.1mM GSSG(酸化型グルタチオン)、又は1mM GSSGのいずれかを含まない緩衝液に移すという差を伴った。結果として得られた蛍光スキャンされ、クーマシー染色されたポリアクリルアミドゲルを
図9に示す。全ての3つの条件が、部位特異的なジスルフィド結合形成について、類似の特異性を示し(
図9、上部ゲル、レーン1 A〜C)、低レベルのバックグラウンド反応を伴う(
図9、レーン2A〜C)。これによって、ジスルフィド結合の形成が、還元剤の必要を伴わずに達成することができることが確認される。これによって、抗体が有意に安定化される/抗体崩壊が低下される。なぜなら、3/4抗体(− 1×LC)、HC二量体(− 2×LC)、及び1/2抗体(1x HC + 1x LC)の残留量だけが、実施例11との比較において検出される。
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Dig−Cys−Cy5/抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC
【0770】
サンプルを、実施例11bに記載する通りに正確に調製し、13.3nmolの抗体を、2モル等量のDig−Cys−Cy5と10mg/mlの最終抗体濃度で、酸化還元試薬の非存在において混合するという差を伴った。
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−ビオチン−Cys−Cy5/キメラ抗ビオチン抗体VH53C
【0771】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化Cy5のコンジュゲートの生成のために、0.16mgのビオチンCys−Cy5を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。1mgの抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.2)で構成される緩衝液中で、9.7mg/ml(約68μM)の濃度で使用した。ビオチンCys−Cy5及び抗体を、2.5:1モル比(AC−ビオチンCys−Cy5対抗体)で混合し、350rpmで振盪しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを、実施例11aに記載する通り、SDS−PAGEにより分析した。蛍光の検出を、実施例11aに記載する通りに行った。
ハプテン化蛍光色素及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−ビオチン−Cys−Cy5/ヒト化抗ビオチン抗体VH53C
【0772】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化Cy5のコンジュゲートの生成のために、0.16mgのビオチンCys−Cy5を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。1mgのヒト抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中で7.4mg/ml(約51μM)の濃度で使用した。ビオチンCys−Cy5及び抗体を、2.5:1のモル比(AC−ビオチンCys−Cy5対抗体)で混合し、350rpmで振盪しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを、実施例11aに記載する通り、SDS−PAGEにより分析した。蛍光の検出を、実施例11aに記載する通りに行った。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)/ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC
【0773】
システイン化リンカーを含むジゴキシゲニン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、2.4mgのAC−PYY(PEG3−Cys−4Abu−DIG)を、5mg/mlの濃度に、20%酢酸中に溶解した。10mgのヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC(68.4nmol)を、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)で構成される緩衝液中に19.5mg/ml(約133μM)の濃度で使用した。Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)及び抗体を、2:1モル比(Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−Dig)対抗体)で混合し、100rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の7.4%が、2つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、40%が、1つのペプチド分子にカップリングされた抗体であり、52%が、非カップリング抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−βAla−Biot)/キメラ抗ビオチン抗体VH53C
【0774】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、0.19mgのAc−PYY(PEG3−Cys−βAla−Biot)を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。1mgのキメラ抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中に9.7mg/ml(約67μM)の濃度で使用した。Ac−PYY[PEG3−Cys−βAla−Biot及び抗体を、2.5:1モル比(Ac−PYY[PEG3−Cys−βAla−Biot]対抗体)で混合し、350rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の87.7%が、2つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、12.3%が、1つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−Biot)/キメラ抗ビオチン抗体VH53C
【0775】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、0.16mgのAc−PYY(PEG3−Cys−PEG2−Biot)を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。1mgのキメラ抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中に9.9mg/ml(約68μM)の濃度で使用した。Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Biot及び抗体を、2.5:1モル比(Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Biot対抗体)で混合し、350rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の100%が、2つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−βAla−Biot)/ヒト化抗ビオチン抗体VH53C
【0776】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、0.06mgのAc−PYY(PEG3−Cys−βAla−Biot)を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。0.8mgのヒト化抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中に9mg/ml(約62μM)の濃度で使用した。Ac−PYY[PEG3−Cys−βAla−Biot及び抗体を、2.5:1モル比(Ac−PYY[PEG3−Cys−βAla−Biot対抗体)で混合し、350rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の62.2%が、2つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、33.9%が、1つのペプチド分子にカップリングされた抗体であり、3.9%が、非カップリング抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−Biot)/ヒト化抗ビオチン抗体VH53C
【0777】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、0.08mgのAc−PYY(PEG3−Cys−PEG2−Biot)を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。0.8mgのヒト化抗ビオチン抗体VH53Cを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中に9mg/ml(約62μM)の濃度で使用した。Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Biot及び抗体を、2:1モル比(Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Biot対抗体)で混合し、350rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の71.4%が、2つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、26%が、1つのペプチド分子にカップリングされた抗体であり、2.5%が、非カップリング抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−Fluo)/抗フルオレセイン抗体VH52bC
【0778】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、0.33mgのAc−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Fluoを、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。1mgの抗フルオレセイン抗体VH52bCを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中に9.3mg/ml(約63μM)の濃度で使用した。Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Fluo及び抗体を、2.5:1モル比(Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Fluo対抗体)で混合し、350rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の95%が、2つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、5%が、1つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
ハプテン化ポリペプチド及び抗ハプテン抗体のコンジュゲートの形成のための例示的な方法−Ac−PYY(PEG3−Cys−PEG2−Fluo)/抗フルオレセイン抗体VH28C
【0779】
システイン化リンカーを含むビオチン誘導体化PYYポリペプチドのコンジュゲートの生成のために、0.33mgのAc−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Fluoを、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。1mgの抗フルオレセイン抗体VH28Cを、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中に9.5mg/ml(約63μM)の濃度で使用した。Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Fluo及び抗体を、2.5:1モル比(Ac−PYY[PEG3−Cys−PEG2−Fluo]対抗体)で混合し、350rpmで撹拌しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られたコンジュゲートを質量分析により分析した。検出された種の100%が、2つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定された。
【0780】
実施例13
共有結合テオフィリン抗テオフィリン抗体複合体の生成
【0781】
テオフィリン及びテオフィリン結合抗体をハプテン認識システムとして利用する共有結合抗体複合体の形成を評価するために、テオフィリン−Cys−Cy5を、一般的に、ジゴキシゲニンCys−Cy5又はビオチン−Cys−Cy5について記載されている合成及び精製技術を適用し(ハプテンが、テオフィリンに対して交換されていることを除く)、蛍光ペイロードとして生成した(実施例8並びに
図13、14、及び22を参照のこと)。合成されたテオフィリン−Cys−Cy5誘導体の組成を、
図43a)に示す。共有結合ジスルフィドの形成を実証するために、テオフィリン結合抗体を生成し、それらは、重鎖可変領域の位置54又は55で、設計されたCysを含んだ(抗テオフィリン抗体Cys)。これらの抗体の純度を、
図43b)において、Y54Cバリアントについて例示的に示す。これらの抗体誘導体を、テオフィリン−Cys−Cy5と複合体化し、その後、実施例12に記載する通り、非還元及び非還元条件下でSDS−PAGEに供した。非還元条件下で、ジスルフィド連結抗テオフィリン抗体複合体化Cy5を、実施例12に記載するのと同じ様式で、ゲル内のそのH鎖関連蛍光により検出した。これを
図43cに描写し、それは、抗体間の共有結合複合体が、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、又はビオチンをハプテンとして使用した場合に観察されたジスルフィドと同じ様式で、単純なローディング反応の結果として形成されていたことを実証する。これらの複合体は、還元時に予測通りに会合し、即ち、ジスルフィドが還元された時だけ、H鎖からペイロードを放出した(
図43c)。
【0782】
実施例14
インビボ様条件下での共有結合ハプテン−抗体複合体の生成、及びインビボでの有向ジスルフィド形成についての証拠
【0783】
インビボ様条件下で共有結合ハプテン−抗体複合体の形成を評価するために、抗ビオチン抗体−Cysを、ビオチンCys−Cy5を伴うマウス血清中で、60分間にわたり、37℃でインキュベートした。その後、抗体を、プロテインAによりマウス血清から捕捉した。その後、捕捉抗体を、実施例12に記載する通り、非還元及び非還元条件下でSDS−PAGEに供した。ジスルフィド連結抗体複合体化Cy5を、実施例12に記載するのと同じ様式で、ゲル内でH鎖関連蛍光により検出した。
図44は、抗体間の共有結合複合体が、37℃の血清中で、即ち、インビボの条件に似た条件下で形成することを実証する。これらの複合体は、予測通りに、還元時に解離する、即ち、ペイロードは、ジスルフィドが還元された時だけ、H鎖から放出される(
図44)。ハプテン位置決め時に、抗体とペイロードの間での有向ジスルフィド結合が、血清の存在においてでさえ形成することができるとの観察は、予想外である。なぜなら、血清は、多量のタンパク質、ペプチド、及び他の化合物(それらは、ジスルフィド形成反応に干渉し得る)を含むからである。ハプテン位置決め時に、抗体とペイロードの間での有向ジスルフィド結合が、37℃の血清中で形成することができるとの観察は、また、プレターゲティング設定において、このPK調節システムを適用する可能性を開く:抗体及びハプテン‐ペイロードの別々の適用、それに続く、抗体複合体のインビボでの組立及びその後のジスルフィド形成。
【0784】
潜在的なインビボでの「プレターゲティング」適用を更に評価するために、ビオチン−Cy5の薬物動態を、プレターゲティング条件下で、実施例19に記載する通りの、動物の眼の非侵襲的な光学イメージングにより決定した。これらの実験において、Cy5の存在を、動物の眼の光学イメージングにより、非侵襲的に決定し、それによって、毛細血管中のCy5の蛍光が明らかになった。本発明者らが、マウスの眼において、ビオチン−Cy5の注射後10分に検出したCy5媒介性蛍光値を、100%値として設定し、その後の時点に測定した蛍光値を、それに対して表した。この実験において、1mgの抗体(抗ビオチン抗体又は抗ビオチン抗体−Cys(=抗ビオチン抗体のCys変異体)のいずれか)を、ビオチン−Cy5の注射及び眼イメージングの開始前24時間に適用した。対照群は、抗ビオチン抗体を用いて事前に注射しなかった。
【0785】
これらの実験の結果を
図45に示す:事前に注射された抗体を受けなかった動物中へのビオチン−Cy5の注射は、低い血清中半減期及び低い曝露レベル(ダイヤモンド)を伴って排除された。抗ビオチン抗体(Cys変異を伴わない)の24時間の事前の注射を伴う動物中に注射されたビオチン−Cy5の血清中レベル及び半減期が、大幅に増加した。これは、抗体が、循環中のその抗原(ペイロードを伴う)を捕捉し、抗原の(及び、コンジュゲーションされたペイロードも同様)血清中半減期を延長することを示す。抗ビオチン抗体Cys(即ち、共有結合ペイロードカップリングのための、本明細書において報告するCys変異を含む抗体)を用いて24時間事前に注射された動物中に注射されたビオチンCys−Cy5の相対的な血清中レベル及び半減期が、更に増加された。これらのサンプル中で、相対的なCy5レベルは、非複合体化化合物のものより高いだけでなく、しかし、また、複合体化(しかし、ジスルフィド結合ではない)Cy5のレベルより高かった。このように、ハプテン複合体化ジスルフィド連結ペイロード(それらは、インビボでのプレターゲティング条件下で形成される)は、循環中で、非共有結合複合体化ペイロードよりも安定であり、より高い曝露レベルに達することができる。
【0786】
実施例15
抗ハプテン抗体を伴う、コンジュゲート中、及び複合体中のポリペプチドは、機能性を保持する。
【0787】
本発明者らは、非共有結合ハプテン−ポリペプチドコンジュゲートの部分であるポリペプチドが、抗ハプテン抗体を伴う複合体中で機能性を保持することを以前に示している(WO2011/003557、WO 2011/003780、及びWO 2012/093068)。カップリングされたペプチドが、共有結合的なジスルフィドカップリング時にも機能性を保持することを実証するために、抗ジゴキシゲニン抗体複合体化ポリペプチドと、抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCを伴うそれらのジスルフィドコンジュゲートの生物活性を比較した。
【0788】
PYY由来ペプチドの治療的に望ましい機能性は、その同族受容体NPY2に結合し、そのシグナル伝達に干渉することである。NPY2受容体を介したシグナル伝達は、代謝プロセス中に含まれる、及び/又はそれを調節する。
【0789】
抗ジゴキシゲニン抗体を伴うポリペプチドDig−PYYの複合体化若しくはSSコンジュゲーション又は抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCを伴うポリペプチドDig−Cys−PYYのコンジュゲーションが、それぞれ、その活性に影響するか否かを評価するために、本発明者らは、NPY2受容体を発現するHEK293細胞におけるフォルスコリン刺激cAMP蓄積を阻害するその能力を評価した(cAMPアッセイ)。
【0790】
以下の表6は、PYY(3−36)、そのY2受容体特異的改変類似体moPYY、その抗体複合体化Digバリアント、及びそのジスルフィドでコンジュゲーションされたDig−Cys誘導体の生物学的活性を評価するために実施されたcAMPアッセイの結果を示す。
【表7】
【0791】
cAMPアゴニストアッセイのために、以下の材料を使用した:384ウェルプレート、Tropix cAMP-Screen Kit;cAMP ELISA System(Applied Biosystems、カタログ#T1505;CS20000);フォルスコリン(Calbiochemカタログ#344270);細胞:HEK293/hNPY2R;成長培地:ダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM、Gibco);10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)、熱不活性化;1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ペニシリン10000単位/mL:ストレプトマイシン10000mg/ml、Gibco);500μg/ml G418(Geneticin、Gibcoカタログ#11811−031);及びプレーティング培地:DMEM/F12 w/oフェノールレッド(Gibco);10%FBS(Gibco、カタログ#10082−147);熱不活性化;1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、カタログ#15140−122);500μg/ml G418(Geneticin、Gibco、カタログ#11811−031)。
【0792】
アッセイを実施するために、最初の日に、培地を捨て、単層細胞を、フラスコ当たり10mlのPBS(T225)で洗浄した。PBSを用いたデカントした後、5mLのVERSENE(Gibco、カタログ番号1504006)を使用し、細胞を除去した(5分間@37℃)。フラスコを穏やかにタッピングし、細胞懸濁液をプールした。各々のフラスコを10mlのプレーティング培地で洗浄し、5分間にわたり1000rpmで遠心分離した。懸濁液をプールし、カウントした。懸濁液をHEK293/hNPY2Rのための2.0×10
5個細胞/mLの密度でプレーティング培地中に再懸濁した。50マイクロリットルの細胞(HEK293/hNPY2R − 10,000個細胞/ウェル)を、マルチドロップディスペンサーを使用して、384ウェルプレート中に移した。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。2日目に、細胞を、75%〜85%コンフルエンスについてチェックした。培地及び試薬を室温に戻した。希釈液を調製する前に、ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma、カタログ#D2650)中の刺激化合物のストック溶液を、5〜10分間にわたり32℃まで温めた。希釈液は、0.5mm 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX、Calbiochem、カタログ#410957)及び0.5mg/ml BSAを用いてDMEM/F12中で調製した。刺激培地中の最終DMSO濃度は、5μMのフォルスコリン濃度を伴い、1.1%であった。細胞培地を、ペーパータオル上での細胞プレートの穏やかな反転を伴い、タップオフした。50μLの刺激培地を、1ウェル当たりに置いた(各々の濃度が4連で行われた)。プレートを室温で30分間にわたりインキュベートし、細胞を、毒性について顕微鏡下でチェックした。30分間の治療後、刺激培地を捨て、50μL/ウェルのAssay Lysis Buffer(Tropixキット中で提供される)を加えた。プレートを、37℃で45分間にわたりインキュベートした。20μLの溶解液を、刺激プレートから、Tropixキットからのプレコーティング抗体プレート(384ウェル)中に移した。10μLのAPコンジュゲート及び20μLの抗cAMP抗体を加えた。プレートを、1時間にわたり振盪しながら、室温でインキュベートした。プレートを、次に、洗浄緩衝液(各々の洗浄について1ウェル当たり70μL)を用いて5回洗浄した。プレートをタップし、乾燥させた。30μL/ウェルのCSPD/Sapphire−II RTU基質/エンハンサー溶液を加え、室温で45分間にわたりインキュベートした(振盪)。Luminometer(VICTOR-V)中の1秒/ウェルについてのシグナルを測定した。
【0793】
これらのアッセイの結果(表6)は、改変ペプチド誘導体moPYYが、野生型PYYよりも無視できる低い活性を有することを示す。cAMPアッセイのIC
50値は、野生型PYYについて0.09nM及び改変類似体について0.14nMであった。共有結合ジスルフィドコンジュゲーションは、生物学的活性のわずかな低下をもたらした。IC
50値は、コンジュゲートについて5〜36nMであった。驚くべきことに、共有結合ジスルフィドコンジュゲートは、10.91nMのIC
50値を伴う非共有結合複合体よりも2倍活性である。
【0794】
実施例16
ヒト化抗ビオチン抗体VH53Cを伴うビオチン化Cy5の共有結合コンジュゲートと比較した、ヒト化抗ビオチン抗体を伴うビオチン化Cy5の複合体の血清中安定性。
【0795】
記載されるペプチド改変技術の目的は、ペプチドの治療的適用性を改善することある。ペプチドの治療的適用のための主要なボトルネックは、現在、インビボでの限定された安定性並びに/或いは短い血清中半減期及び速いクリアランスである。フルオロフォアの抗体コンジュゲートのPKパラメーターを、インビボで決定し、非共有結合抗体−蛍光複合体のPKと比較した。したがって、(i)抗ビオチン抗体VH53Cを、共有結合ビオチン化フルオロフォアBiot−Cys−Cy5に共有結合的にコンジュゲーションし、(ii)ビオチン化フルオロフォアBiot−Cys−Cy5を伴う抗ビオチン抗体の非共有結合複合体を生成し、(iii)共有結合及び非共有結合複合体化化合物を動物に投与し、及び(iv)これらの動物における経時的な化合物の血清中濃度を、Cy5(A650)の蛍光の決定により測定し、対応する抗体の血清中濃度を、ヒト化抗体を特異的に検出するELISA方法により測定した。
【0796】
実験手順
小さな蛍光基質の抗体複合体化又は抗体コンジュゲーションのPKパラメーターに対する影響を分析するために、13nmolのCy5−ビオチン/ヒト化抗ビオチン抗体VH53Cコンジュゲート、又は対応する抗体非共有結合複合体化化合物、又は蛍光化合物単独(20mMヒスチジン/140mM NaCl(pH 6.0)中)を、各々の物質について6匹の雌マウス(NMRI系統)に投与した。約0.1mlの血液サンプルを以下の時点後に回収した:第1群におけるマウス1、2、及び3について0.08時間、4時間、及び48時間並びに第2群におけるマウス1、2、及び3について0.08時間、24時間、及び48時間。約50μLの血清サンプルを、1時間後、室温で遠心分離(9300 x gで3分間、4℃)により得た。血清サンプルを−80℃で保存した。
【0797】
所与の時点での血清中の化合物(フルオロフォア)の量を決定するために、Cy5の蛍光特性を使用する:血清サンプル中のCy5蛍光は、ケアリーエクリプス蛍光分光光度計(Varian)を使用し、室温で、120μL石英キュベット中で測定した。励起波長は640nmであり、発光を667nmで測定した。血清サンプルを1×PBS中で希釈し、発光強度の適切な範囲に達した。それぞれのサンプルとして、1×PBS中での同じ希釈における未処置マウスの血清を、ブランクプローブとして使用し、任意の蛍光シグナルを示さなかった。
【0798】
所与の時点での血清中のヒトIgG抗体の量を決定するために、以下のアッセイ原理を使用した:血清サンプル中のヒトIgG1抗体を、抗ヒトカッパ鎖モノクローナルIgG抗体を用いてコーティングされた固相(Maxisorb(登録商標)マイクロタイタープレート、NUNC Immuno(商標))上に捕捉した。血清サンプルを1:10
5及び1:10
6希釈し、これらの希釈物の100μLをウェルに加えた。インキュベーション後、ウェルを、各々、300μLのPBS/0.05%Tween20で3回洗浄した。ヒトIgG抗体の検出は、0.25μg/mlの濃度のC末端でジゴキシゲニン化された、100μLの抗ヒトC
H1ドメインIgGを加えることにより行った。各々、300μLの1×PBS/0.05%Tween20で3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲーションさせた100μLの抗ジゴキシゲニン抗体Fabフラグメントを、25mU/mlの濃度で加えた。最後に、1ウェル当たり100μLのABTS(登録商標)を加えた。周囲温度での30分間のインキュベーション後、吸光度(OD)を、商業的マイクロタイタープレートELISAリーダー(例、Tecan Sunrise)において、405nm及び492nm[405/492]で測定した。
【0799】
図34は、抗体−ビオチン-Cy5複合体及びコンジュゲートで処置したマウスにおけるBio−Cy5血清レベル並びにヒトIgGの血清レベルを示す。データを、注射後5分目の(ピーク)血清レベルに対して標準化された、相対的な(%)ヒトIgG又は蛍光レベルとして示す。抗体−ハプテン複合体及びコンジュゲートの両方の相対的なヒトIgG血清レベルは、抗体−ハプテンコンジュゲートについて測定された相対蛍光に沿っている。このように、ビオチン-Cys−Cy5化合物は、それがコンジュゲートされた抗体と類似のインビボ安定性を示し、それは、抗体−ハプテンコンジュゲートが、インビボで、インタクトで留まることを意味する。これは、明らかに、抗体−ハプテン複合体については該当せず、それについては、相対的なCy5媒介性蛍光が、相対的なヒトIgG血清レベルよりも速く減少する。これは、複合体が、インビボで、経時的にペイロードを放出することを意味する。
【0800】
要約すると、ハプテン化化合物のインビボでの安定性は、抗ハプテン抗体により結合された場合、有意に増加する。しかし、抗体−ハプテン複合体は、インビボで完全に安定ではない。なぜなら、ハプテン−Cy5血清レベルの減少は、抗体血清レベルの減少よりも速いからである。これは、抗体−ハプテン−Cy5コンジュゲートについては該当せず、それは、通常のIgG抗体と同様のインビボでの挙動を示す。
【0801】
実施例17
ヒト化抗ジコキシゲニン抗体を伴うジゴキシゲニンCys−Cy5の共有結合コンジュゲートと比較した、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体を伴うジゴキシゲニン−Cy5の複合体の血清中安定性。
【0802】
抗体複合体又は抗体コンジュゲートの薬物動態に対する異なるハプテンの影響を分析するために、ジゴキシゲニンCy5を用いて複合体化された、又はジゴキシゲニンCys−Cy5を用いて共有結合的にコンジュゲーションされた抗ジゴキシゲニン抗体のPKパラメーターを、インビボで測定した。ビオチンCy5又はビオチンCys−Cy5について記載したのと同じ様式において(実施例16を参照のこと)、ジゴキシゲニンCy5若しくは抗体−複合体化又は抗体−Cys連結ジゴキシゲニン(Cys)−Cy5を雌NMRIマウスに投与し、0.08時間、2時間、4時間、及び24時間での血液の回収が続いた。ジゴキシゲニン(Cys)−Cy5レベルを、その蛍光を測定することにより決定し、対応する抗体濃度を、実施例16において記載する通り、ELISAにより決定した。データを、注射後5分目の(ピーク)血清レベルに対して標準化された、相対的な(%)ヒトIgG又は蛍光レベルとして
図41に示す。
【0803】
これらの実験の結果によって、ジゴキシゲニンCy5について、適用した蛍光(5分値)の10%未満が、注射後2時間目に検出可能であったことが実証される。後の時点(それぞれ注射後4時間及び24時間)で、非複合体化ジゴキシゲニンCy5シグナルは検出可能ではなかった(
図41を参照のこと。両方のグラフ中の灰色の三角)。非複合体化化合物とは対照的に、抗体−複合体化化合物は、ずっと高いレベルで、後の時点で検出可能であった(
図41、上のグラフ)。これは、抗体の複合体形成が、非常に小さい化合物ジゴキシゲニン-Cy5の血清半減期を増加させることを示す。さらに、共有結合的に連結されたペイロードは、非共有結合的に連結された複合体に比較し、より大きな血清安定性を示す。ジゴキシゲニン-Cy5レベル及び抗体レベルの直接的な比較によって、経時的な抗体からの複合体化ペイロードの喪失が示され、Cy5レベルは、抗体レベルよりも早く減少する。対照的に、共有結合的に連結されたジゴキシゲニン-コンジュゲートは、ほぼ同一のCy5及びIgG血清半減期を示した(
図41、下のグラフ)。これは、ジスルフィド連結ペイロードが、抗体に安定的に接続したままであり、非共有結合複合体が、経時的に解離することを示す。
【0804】
実施例18
ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体と複合体化したジゴキシゲニン化ポリペプチドの血清中安定性。
【0805】
ジゴキシゲニン化ポリペプチドの抗体複合体化のPKパラメーターに対する影響を分析するために、32.1nmolのポリペプチド、又はジゴキシゲニン化ポリペプチドと対応する抗ジゴキシゲニン抗体の間での32.1nmolの非共有結合複合体(20mMヒスチジン/140mM NaCl(pH 6.0))を、2匹の雌マウス(NMRI系統)に各々投与した。約0.1mlの血液サンプルを、以下の時点後に回収した:マウス1について0.08時間、2時間、及び24時間並びにマウス2について0.08時間、4時間、及び24時間。約50μLの血清サンプルを、1時間後に室温で遠心分離(9300×g、3分間、4℃)により得た。血清サンプルは−80℃で保存した。
【0806】
所与の時点での血清中のジゴキシゲニン化ペプチドの量の決定は、Dig−Cy5の検出に比較し、困難であった。なぜなら、血清サンプル中のポリペプチドを検出するための直接的な手段が、利用可能でなかったためである。したがって、血清中のジゴキシゲニン化ペプチドを検出するためのウエスタンブロット関連アッセイが確立された。第1の工程において、血清サンプルを、還元SDS−PAGE上で分離した。サンプル調製は、高濃度のSDS及び還元剤への血清の曝露を含んだため、複合体化Digポリペプチドコンジュゲートは、(完全に変性された/アンフォールドされた)抗ジゴキシゲニン抗体から放出されることができるのに対し、共有結合コンジュゲートは結合したままであった。非共有結合抗体複合体からのポリペプチドの放出を媒介し、SDS−PAGEにより個々の成分を分離するために、2μLの各々の血清サンプルを、18μLの20mMヒスチジン/140mM NaCl(pH6.0)中に希釈し、6.7μLの4×LDSサンプル緩衝液及び3μLの10×サンプル還元剤(NuPAGE、Invitrogen)と95℃で5分間にわたり混合した。対照として、同系統の未処置マウスの2μLの血清を使用した。サンプルを、4〜12%Bis−Tris Gel(NuPAGE、Invitrogen)に適用し、それを、泳動緩衝液として1×MES(Invitrogen)を使用し、200V/120mAで20分間にわたり泳動した。その後、分離されたポリペプチドを、XCell Sure Lock(登録商標)Mini-Cellシステム(Invitrogen)を使用し、25V/130mAで40分間にわたりPVDFメンブレン(0.22μM孔径、Invitrogen)上にブロットした。メンブレンを、1×PBS + 1 %Tween20(PBST)中の1%スキムミルク中で、室温で1時間にわたりブロッキングした。ジゴキシゲニン化ポリペプチドを、その後、抗ジゴキシゲニン抗体を用いて、メンブレン上で検出した。そのために、抗ジゴキシゲニン抗体を、10mlの1%脱脂乳/PBST中の13μg/mlの濃度で、室温で2時間にわたりメンブレンに適用した。メンブレンを、1×PBST中で3×5分間にわたり洗浄した。LumiLightPLUSウェスタンブロッティングキット(Roche)からのPODにカップリングした抗マウスIgGのFabフラグメントを、10mlの1%スキムミルク/PBST中の1:25希釈で、室温で1時間にわたり適用した。メンブレンを、3×5分間、1×PBSTで洗浄した。検出を、メンブレンを、4mlのLumiLightウェスタンブロッティング基質中で、室温で5分間にわたりインキュベートすることにより行った。化学発光を、LumiImager F1(Roche)で20分の曝露時間で検出した。
【0807】
これらの分析の結果を、
図35A及びBに示す。異なる時点でのマウス血清中のジゴキシゲニンポリペプチドの存在/量を決定している。抗体複合体化ペプチドを受けたマウス(
図35左)が、最も早い時点(投与後5分間)で強いシグナルを示した。これらのシグナルは、対照のブロット上でのサイズ及び位置により示される通り、明らかに割り当て可能であった。抗体−複合体化ポリペプチドで処置したマウスの血清において、ポリペプチド関連シグナルは、早期の時点で最も強く、経時的に減少した。それにもかかわらず、ポリペプチドは、依然として、全ての時点で、及び投与後24時間でさえ、良好なシグナルを伴い検出可能であった。
【0808】
非複合体ポリペプチドを受けたマウスにおいて、小さなポリペプチドに関連する任意のシグナルは、最も早い時点でさえ、ほとんど検出可能ではなかった。
図35は、右に、通常の曝露条件下で、遊離ポリペプチドが、ブロット上に見えないことを示す。ブロットのコントラスト強調によって、投与後5分で、一部のポリペプチドの存在が(微量だけ)明らかになった。後の時点では、定義されたポリペプチドバンドは、検出可能ではなかった。
【0809】
非複合体ハプテン−Cy5と同様に、非複合体化ポリペプチドは、マウスの血清中で非常に短い半減期を有することを見ることができる。同じポリペプチドを(しかし、抗体複合体形態において)受けたマウスは、増加した期間にわたり、血清中で、これらのポリペプチドの存在を示す。注射後24時間、ポリペプチドは、依然として、これらのマウスの血清中で決定することができる。
【0810】
実施例19
共有結合的に連結されたハプテン−抗体コンジュゲート及び非共有結合複合体の血清中半減期及び曝露レベルのインビボでのリアルタイム測定
【0811】
共有結合的に連結されたハプテン化合物に比較した、非共有結合的に複合体化されたハプテン化合物の薬物動態学的特性を更に分析するために、ビオチンCy5又はビオチンCys−Cy5と対応する抗ビオチン抗体の間での、注射された複合体又はコンジュゲートのインビボ動態を、非侵襲的な光学イメージング技術を通じて決定し、それによって、動物の眼の毛細血管中のCy5蛍光が明らかになった。値を、10分目の値(100%として設定した)に対して標準化した。これらの実験の結果を
図42に示す:非複合体化ビオチンCy5は、それ自体が、短い血清中半減期及び低曝露レベルを有する。共有結合的に連結されていなかった抗体複合体化ビオチン−Cy5は、ずっと高いレベルで、延長した半減期を伴い検出可能であった。共有結合的に連結されたペイロードは、非共有結合的に連結された複合体に比較し、より高い血清レベルにより示される、更に大きな血清中安定性を示した。これらの実験によって、共有結合的にジスルフィド連結されたペイロードが、非共有結合的に複合体化されたペイロードよりも、循環中でより安定であり、より高い曝露レベルに達することができることが確認される。
【0812】
実施例20
異なるハプテンに結合する抗体のペプチド複合体化及び共有結合的なコンジュゲーション
【0813】
ハプテン化合物(=ペイロード)を標的化媒体にカップリングさせるためのハプテン結合モジュールの適用は、ハプテン媒介送達を実現することができる1つの技術的可能性である。その概念は、化合物を捕捉し、それらを標的化モジュールに接続する追加のハプテン又は他の実体に拡張することができる。例えば、ポリペプチドの送達又は安定化のために、ジゴキシゲニン又は他のハプテンに結合する単一又は二重特異性抗体を適用し、治療用ポリペプチドを安定化及びPK最適化することができる。
【0814】
ポリペプチド捕捉モジュールとしての適用のための前提条件は、(i)ハプテンへの化合物のカップリングが、ポリペプチド活性に重度に干渉しないこと、及び(ii)ハプテン化化合物への抗体の効果的な結合/複合体化の可能性である。
【0815】
ハプテン定方向性結合は、抗ハプテンシステイン化抗体を伴う、ハプテン化色素又はポリペプチドの効率的な共有結合的カップリングのための前提条件である。
【0816】
抗ハプテン抗体を伴う、ハプテン化合物の親和性駆動型の複合体化を示すことは、効率的なジスルフィド結合形成のための前提条件であり、ビオチン−Cys−Cy5を、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体及びヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH53Cとインキュベートした。ヒト抗ビオチン抗体及びヒト化抗ビオチン抗体VH53Cを伴う、ビオチン−Cys−Cy5のインキュベーションを、対照反応として行った。
【0817】
0.13mgのビオチン−Cys−Cy5を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。0.7mgの各々の抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中で、6.7mg/ml(約46μM)の濃度で使用した。ビオチン−Cys−Cy5及び抗体を、2.5:1モル比(AC−ビオチン−Cys−Cy5対抗体)で混合し、350rpmで振盪しながら、室温で60分間にわたりインキュベートした。結果として得られた複合体/コンジュゲートを、ポリアクリルアミドゲル中でのSDS−PAGE及びCy5関連蛍光のその後の検出により更に分析した。15μgの複合体/コンジュゲートを、4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)と混合し、5分間にわたり95℃でインキュベートした。Cy5関連蛍光を、645nmの励起波長で、LumiImager F1装置(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を使用して記録した。
【0818】
非還元サンプルは、CDR2においてシステインを伴わないヒト化抗ビオチン抗体を使用した場合、非常に低いバックグラウンド蛍光シグナルを伴うヒト化抗ビオチン抗体VH53C(
図36、レーン4)について、共有結合的な部位特異的ジスルフィド結合形成を示す(
図36、レーン3)。ビオチン−Cys−Cy5は、また、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体を使用した場合(
図36、レーン2)、低いバックグラウンドシグナルを伴い、しかし、有意に低い効率を伴い、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC(
図36、レーン2)に共有結合的にカップリングされた。これは、ゲルの下部で検出される過剰なビオチン−Cys−Cy5から推定することができる(矢印)。ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCの場合において、ヒト化抗ビオチン抗体VH53C(レーン4)を用いるよりも、有意に多い非カップリングビオチン−Cys−Cy5を検出することができる(レーン2)。サンプルの還元時、Cy5関連蛍光は、抗体重鎖及び軽鎖の近くでは検出可能ではなく、共有結合がジスルフィド架橋により実際に形成されたことを示す。各々のゲルのクーマシー染色は、各々のレーンにおけるタンパク質の総量が等しかったことを示す。
【0819】
実施例21
ハプテン定方向性結合は、抗ハプテンシステイン化抗体を伴う、ハプテン化色素又はポリペプチドの効率的な共有結的カップリングのための前提条件である。
【0820】
抗ハプテン抗体を伴う、ハプテン化合物の親和性駆動型の複合体化を示すことは、効率的なジスルフィド結合形成のための前提条件であり、非ハプテン化ペプチドAc−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2)(Biosynthan 1763.1、配列番号178)を、ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bC及びヒト化抗ジゴキシゲニン抗体とインキュベートした。1.4mgのAc−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2)を、10mg/mlの濃度に、100%DMF中に溶解した。2mgの各々の抗体を、50mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH 8.2)で構成される緩衝液中で、11〜13mg/ml(約75〜89μM)の濃度で使用した。AC−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2)及び抗体を、2.1:1モル比(AC−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2)対抗体)で混合した。ペプチドを、溶液を、攪拌棒を用いて500rpmで攪拌しながら、3部分で加えた。各々の添加の間に、サンプルを、200rpmで5分間にわたりインキュベートした。最後の部分の添加後、サンプルを、1時間にわたり、室温及び200rpmでインキュベートした。
【0821】
結果として得られた複合体/コンジュゲートは、サイズ排除クロマトグラフィーを介して、Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCコンジュゲートについて97%単量体IgG様分子及び3%二量体可溶性凝集体として、並びにAc−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体複合体について100%単量体として定義した。さらに、結果として得られた複合体/コンジュゲートを質量分析により分析した。Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体VH52bCコンジュゲートについて、検出種の17%が、2つのペプチド分子にカップリングした抗体として同定され、51%が、1つのペプチド分子にカップリングされた抗体として同定され、32%が、カップリングペプチドを伴わない抗体として同定された。Ac−PYY(PEG3−Cys−4Abu−NH2):ヒト化抗ジゴキシゲニン抗体複合体について、抗体の100%が非カップリングであった。
【0822】
実施例22
共有結合的ペイロードカップリングのためのシステイン変異を伴う、適切に折り畳まれた機能的ハプテン結合抗体の生成のために要求されるジスルフィドパターン
【0823】
共有結合性化合物/ペイロードカップリングのためのハプテン結合モジュールは、ハプテン化化合物/ペイロードの共有結合的な付着を可能にする余分なシステインを含む「標準的な」抗体(例えばIgGなど)で構成され得る。本明細書において報告する方法によって、構造及び配列が抗体機能性のための基礎を提供する、折り畳まれたドメイン内に、要求される官能基(システイン)が導入される。抗体のドメイン内、並びにその間での定義されたジスルフィド結合の正しい形成は、正しい構造及び機能性の形成及び維持のために不可欠である。
図37(A)は、機能的結合アーム(例えば未改変抗体のFabなど)を形成するために要求されるジスルフィドパターンを示し、
図37(B)は、VH52cB/VH53C変異抗体誘導体の構造及び機能性を維持するために必要であるジスルフィドパターンを示す。適切なジスルフィドパターンを維持するために、VHドメイン中に導入された追加のシステインは、非占有でなくてはならず、隣接システインに干渉する、又はそれと反応してはならない。
図37(C)及び
図37(D)は、余分なシステインの添加によって、そのような分子の生合成の間に、VHドメイン内に正しくないジスルフィドを形成する可能性が生成されることを示す。VH52bC/VH53C位置が、VHドメイン内に(及び他のシステインに非常に近く)位置付けられるという事実によって、正しくないジスルフィドが、重鎖の生合成の間に形成され得るリスクが悪化する。別の潜在的な問題は、VH及びVLドメインが、1つのFvフラグメントへの分泌経路内で組み立てられることである。分泌経路は、酸化還元シャッフリング条件並びにジスルフィド形成及びシャフリング酵素を含む。したがって、VH52bC/VH53C変異の添加により正しくないジスルフィドを導入する可能性が、軽鎖のジスルフィドにも「拡大」し得る(
図37(E)に例示的に示す)。これによって、不適切に折り畳まれた非機能性分子を取得/生成するリスクが更に増強される。これらのリスクにもかかわらず、VH52bC/VH53C変異を含む均質な機能的抗体誘導体の良好な量が発現され、得られ、それらを、ハプテン化化合物/ペイロードに共有結合的に接続することが可能であることは、非常に驚くべきことである。
【0824】
実施例23
共有結合カップリングのためのシステイン変異を有する抗ハプテンジスルフィド安定化一本鎖Fv断片の組成と生成
【0825】
共有結合的な化合物/ペイロードカップリングのためのハプテン結合モジュールは、「標準的な」抗体(例えばIgGなど)からなり得る。或いは、それらは、改変実体(例えば組換えFv又はFabフラグメントなど)、又はそれらの誘導体であり得る。一本鎖Fvフラグメントは、特に小モジュールサイズが要求される、又は、追加の結合モジュールが、二重又は多特異性抗体誘導体を生成することが望まれる用途において、完全長抗体の代替物として頻繁に適用される。生成された抗ハプテンFv由来実体の一例は、ジゴキシゲニン化化合物/ペイロードに結合する、又は共有結合的に接続されるジスルフィド安定化一本鎖Fvである。Dig結合特異性を伴うジスルフィド安定化一本鎖Fvは、互いに、可動性のGly及びSerリッチリンカーを介して、互いに抗ジゴキシゲニン抗体のVH及びVLドメインを連結することにより生成した。これらのVH及びVLドメインは、追加的に、VHの位置44及びVLの位置100(Kabatらに従った位置)においてシステイン変異を持つ。これらの追加のシステインは、VHとVLの間の安定した分子間ジスルフィド結合を形成する。これによって、以前に記載された通り、scFvが安定化される(例、Reiter, Y., et al., Nature Biotechnology 14 (1996) 1239-1245)。
【0826】
それに加えて、別のシステインが、Kabatナンバリングに従った、それぞれ、位置52b又は53で、VH中に導入され、Fvフラグメントに共有結合的な連結機能を加えた。
【0827】
しかし、ジスルフィド安定化Fvフラグメント中にそのような変異を導入することは、それらを完全長抗体中に配置するよりもずっと困難である。一本鎖Fvフラグメントは、本質的に、完全長IgG又はFabフラグメントよりも安定している。なぜなら、それらは、安定化及びヘテロ二量体化強制実体としての定常ドメインを欠くためである。安定性は、追加のシステイン変異(例えばVH44−VL100ジスルフィドなど)をFv中に配置することにより付与することができる。しかし、この安定化の原則は、ジスルフィドが、正しいシステイン間の正しい位置で形成される場合でだけ作動する。このように、定義されたドメイン内ジスルフィド(VH中の1つ、及びVL中の1つ)に加えて、1つの単一の定義された正しいドメイン間ジスルフィドが形成される必要がある。非マッチングシステイン間のジスルフィド接続によって、ミスフォールドした不安定で非機能的な実体が生成される。ジスルフィド安定化Fvフラグメントが、6つのシステインを含むことを考慮すると、21の異なるジスルフィド接続が、理論上、形成することができるが、しかし、3つの定義されたジスルフィドの正しい組み合わせだけが、機能的な安定化dsscFvを形成する。この課題は、VHドメイン中への別のフリーなシステインの付加時に悪化する。望まれる安定化dsscFvは、2つの定義されたドメイン内ジスルフィド(VH及びVLにおける各々1つ)、1つの定義されたドメイン間ジスルフィド(VHとVLの間)、及びハプテン化化合物/ペイロードカップリングのための更に1つのフリーなシステイン(位置52b/53での、VH中)。共有結合的カップリングのための余分なシステイン変異を伴うジスルフィド安定化Fvフラグメントが、7つのシステインを含むことを考慮すると、多くの異なるジスルフィド接続が、理論上、形成することができるが、しかし、3つの定義されたジスルフィドの正しい組み合わせ(VH52b/VH53で厳密なフリーなシステイン位置を伴う)は、機能的な、安定化された共有結合カップリング能のあるdsscFvをもたらす。1つの追加の課題は、追加のフリーなシステイン(VH52b/VH53)が、天然システインではなく、しかし、ジスルフィド安定化のために導入された変異であるVH44システインに近接して位置するという事実である。VH44Cは、正しいドメイン間ジスルフィド結合を形成するために必要であり、このジスルフィドは、この理論に拘束されないが、VH及びVLの独立した折り畳み及び組み立て後に形成する可能性が最も高い。VH44CとVH52bC/VH53Cの近接によって、ドメイン内ジスルフィドが、正しい様式で形成しないというリスクが悪化される。しかし、ジゴキシゲニンに結合し、ジゴキシゲニン化ペイロードに同時に共有結合的に接続することが可能である機能的なジスルフィド安定化一本鎖Fvモジュールを産生することができることが見出されている。正しい位置において正しいジスルフィド及びフリーなシステインを含む、ジスルフィド安定化された短鎖Fc分子の組成、並びに非所望の正しくなく折り畳まれた分子とのその比較を
図38に示す。VH52bC変異Fv抗体誘導体を伴う、このDig結合dsscFvの軽鎖可変領域及び改変重鎖可変領域をコードする配列が、配列番号190(VH)下に、及び、対応するVLが配列番号189下に列挙されている。二重特異性抗体誘導体の生成のためのモジュールとしての、そのようなdsscFvの成功裏の生成が、実施例24(下)において、並びに
図40(A)、
図40(B)、及び
図40(C)において記載されている。
【0828】
実施例24
共有結合的にカップリングされた化合物/ペイロードの標的化送達のための二重特異性抗ハプテン抗体誘導体の組成、発現、及び精製
【0829】
共有結合化合物/ペイロードカップリングのためのハプテン結合抗体モジュールを含む二重特異性抗体を生成した。これらの抗体は、追加的に、他の抗原への標的化を可能にする結合モジュールを含む。そのような二重特異性抗体の適用は、標的抗原を保有する細胞又は組織へのハプテン化化合物/ペイロードの特異的標的化を含む。生成されたそのような分子についての1つの例は、腫瘍関連糖抗原LeYを認識する結合領域を伴う、及び、同時に、ジゴキシゲニン化化合物/ペイロードに結合し、共有結合的にそれを接続するジスルフィド安定化Fvを伴う二重特異性抗体である。したがって、ジスルフィド安定化一本鎖Fvは、可動性のGly及びSerリッチコネクターペプチドを介して、LeY抗体のCH3ドメインのC末端に接続され、2つのLeY結合アーム及び、追加的に、2つのジゴキシゲニン結合実体を伴う四価分子をもたらした。ジゴキシゲニン結合実体は、以前に記載されたVH44−VL100ジスルフィド結合を持っていた(例、Reiter, Y., et al., Nature Biotechnology 14 (1996) 1239-1245)。ジゴキシゲニン結合実体は、追加で、共有結合カップリングのためのVH52bC変異を含んでいた。このLeY−Dig抗体誘導体の軽鎖及び改変重鎖をコードする配列を、配列番号191及び配列番号192下に列挙する。共有結合的にカップリングされた化合物/ペイロードのための送達媒体としてのLeY−Dig二重特異性抗体誘導体の組成を、
図39に模式的に示す。
【0830】
二重特異性分子を、分子生物学的技術により生成し、培養細胞からの分泌により発現させ、その後、上記に記載するのと同じ様式で、培養上清から精製した。
図40(A)は、細胞培養上清中のこのLeY−Dig(52bC)二重特異性抗体の改変H鎖及びL鎖の存在を示し、抗体L鎖及びH鎖を検出するウエスタンブロット分析において可視化されている。
図40(B)は、還元剤の存在における、SDS−PAGEによる精製後のこれらの抗体の均質性を実証する。クマシーブリリアントブルーを用いたSDS−PAGEの染色によって、それらの計算された分子量と類似の見掛け上の分子サイズを伴うIgGに関連したポリペプチド鎖が可視化される。
図40(C)は、プロテインA精製後のLeY−Dig(52bC)二重特異性抗体のSECプロファイルを示し、タンパク質調製物中での凝集体の均質性及び欠如を実証する。このように、標的化モジュール並びにハプテン化化合物/ペイロードの共有結合的カップリングのためのモジュールを含む二重特異性抗体を生成し、均質にまで精製することができる。
【0831】
実施例25
ビオシチンアミドとの複合体中のマウス抗ビオチン抗体FabフラグメントのX線構造決定
【0832】
マウス抗ビオチン抗体のFabフラグメントのタンパク質構造を、ビオシチンアミドとの複合体中で測定した。したがって、Fabフラグメントの結晶を0.8Mコハク酸中で成長させ、ビオシチンアミドを用いた抗体結晶の負荷が続いた(結晶化液滴中の結晶に適用される、結晶化溶液中の10mM作業濃度に希釈)。結晶を、2μLの10mMビオシチンアミド溶液で3回洗浄し、最後に16時間にわたり、ビオシチンアミドと21℃でインキュベートし、凍結保護剤として15%グリセロールを用いて収集し、液体窒素中で急速凍結した。処理された回折像によって、2.5Aの分解能でのタンパク質構造が得られた。ビオチン結合可変領域の構造と電荷組成を
図46に示す:ビオチンは、CDR領域からのアミノ酸で構成される荷電領域に隣接した表面ポケット中に特異的に結合する。複合体化ハプテンは、アミノ酸の負荷電クラスターに近接して位置付けられる。ハプテンとして、そのカルボキシ基でのペイロードカップリングのために誘導体化されるビオチンは、良好な有効性を伴い結合する。なぜなら、この位置では電荷反発(COOH基の欠如に起因する)がないからである。対照的に、遊離(正常)ビオチンは、効率的に抗体に結合することはできない。なぜなら、そのカルボキシル基は、この負荷電クラスターに近接し、故に、反発し得るからである。
【0833】
実施例26
血液脳関門シャトルモジュールの操作
【0834】
ハプテン結合二重特異性血液脳関門シャトルモジュールを、ジスルフィド安定化ハプテン結合一本鎖Fvを、抗TfR抗体のCH3ドメインのC末端に融合することにより生成した。類似の設計及び技術を、以前に記載された通りに適用した(例、PCT/EP2013/064100を参照のこと)。これらの血液脳関門シャトルモジュールの組成についての例を、
図47に示す。
【0835】
血液脳関門シャトルモジュールは、血液脳関門の内皮細胞上のトランスサイトーシス可能な細胞表面標的(血液脳関門受容体)を認識する。例示的に、本発明者らは、異なる親和性を伴い、トランスフェリン受容体に結合する2つの異なる抗体を使用した。抗体TfR1は、高親和性を伴い、トランスフェリン受容体に結合し、抗体TfR2は、低下した親和性を伴い、トランスフェリン受容体に結合する(例、WO 2012/075037を参照のこと)。これらの抗TfR抗体に由来するTfR結合部位を、無変化Fabアームとして二重特異性抗体中に設定し、二価の完全長IgGモジュールを得た。ジスルフィド安定化ハプテン結合一本鎖Fvを、短いGSリンカーを介して、生成された二重特異性抗体のCH3ドメインのC末端に融合した。例示的には、抗ハプテン結合部位として、以前に記載された、ジゴキシゲニン(Dig)又はビオチン(Bio)の誘導体に結合する実体を使用した(配列については、上を参照のこと)。
【0836】
これらのシャトル媒体の配列組成についての例は、配列番号193(LC抗TfR1抗体)、配列番号194(scFv抗ジゴキシゲニン抗体フラグメントにコンジュゲーションされたHC抗TfR1抗体)、配列番号195(scFv抗ビオチン抗体フラグメントにコンジュゲーションされたHC抗TfR1抗体)、配列番号196(LC抗TfR2抗体)、配列番号197(scFv抗ジゴキシゲニン抗体フラグメントにコンジュゲーションされたHC抗TfR2抗体)、配列番号198(scFv抗ビオチン抗体フラグメントにコンジュゲーションされたHC抗TfR2抗体)として列挙される。
【0837】
実施例27
二重特異性抗体(血液脳関門シャトルモジュール)の発現及び精製
【0838】
血液脳関門シャトルモジュール二重特異性抗体を、以前に記載された通りに(上記参照)、定義された無血清培地中の哺乳動物細胞において産生した。HEK293懸濁細胞を、L鎖及びH鎖をコードする発現プラスミドを用いて一過性にトランスフェクトし、血液脳関門シャトルモジュール二重特異性抗体を発現する培養物を生成した。
【0839】
高親和性を伴いTfRに結合するジゴキシゲニン化ペイロード結合血液脳関門シャトルモジュールを生成するために、配列番号193コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを、配列番号194コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを用いてコトランスフェクトした。
【0840】
高親和性を伴いTfRに結合するビオチン化ペイロード結合血液脳関門シャトルモジュールを生成するために、配列番号193コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを、配列番号195コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを用いてコトランスフェクトした。
【0841】
低下した親和性を伴いTfRに結合するジゴキシゲニン化ペイロード結合血液脳関門シャトルモジュールを生成するために、配列番号196コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを、配列番号197コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを用いてコトランスフェクトした。
【0842】
低下した親和性を伴いTfRに結合するビオチン化ペイロード結合血液脳関門シャトルモジュールを生成するために、配列番号196コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを、配列番号198コード核酸/発現カセットを含む発現プラスミドを用いてコトランスフェクトした。
【0843】
二重特異性抗体を、L及びH鎖をコードする発現プラスミドを用いて一過性にトランスフェクトしたHEK293懸濁細胞の上清から、プロテインAクロマトグラフィー(上記参照)により精製した。その後、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を適用し、凝集体又は混入物のない二重特異性抗体を得た。精製された血液脳関門シャトルモジュールの純度及び組成についての例を、SECプロファイル及びSDS−PAGEとして
図48において示す。
【0844】
実施例28
二重特異性ハプテン結合血液脳関門シャトルモジュールは、ハプテン化ペイロード及び血液脳関門受容体に同時に結合する。
【0845】
二重特異性抗体の血液脳関門−シャトル機能性を可能にするためには、それらが、血液脳関門の内皮細胞上の血液脳関門受容体に、及び、往復するハプテン化ペイロードに同時に結合しなければならない。本明細書において報告するハプテン結合二重特異性抗体のこの機能を評価するために、同時細胞表面及びペイロード結合を、FACS分析により取り組んだ。これらの分析のために、血液脳関門シャトルモジュール(=二重特異性抗体)の細胞結合を、二次抗体を認識するフィコエリトリン(phytoerythrin)標識IgGにより検出した。同時のペイロード結合を、ハプテン化蛍光ペイロード(ジゴキシゲニン化Cy5;DIG−Cy5(上記参照))の適用により検出した。TfR発現BBB由来細胞株としてのhCMEC/D3細胞及び蛍光ペイロードとしてのDig−Cy5を使用したFACS分析の結果を
図49に示す:両方のトランスフェリン受容体結合二重特異性抗体が、抗IgG−PE関連シグナルにより示される通り、hCMEC/D3に結合する。同様に、両方の二重特異性抗体は、細胞関連Cy5に起因するシグナルにより示される通り、また、同時にDig−Cy5に結合する。(高親和性)TfR1二重特性抗体と(低下親和性)TfR2二重特性抗体の間でのシグナル強度の比較によって、(予想通り)、中親和性二重特異性抗体に比較し、高親和性を伴い、細胞上でより高いシグナル強度が示された。hCMEC/D3(CD33−Dig)上に検出可能な量で存在しない抗原を認識する対照二重特異性抗体は、(予想通り)、抗IgG抗体との、又はDig−Cy5との関連シグナルを生成しなかった。
【0846】
これらの結果は、二重特異性ハプテン結合血液脳関門シャトルモジュールが、内皮細胞の表面上のそれらの標的に特異的に結合することを示している。さらに、これらの二重特異性抗体は、ハプテン化ペイロードに同時に結合し、それにより、それらを、血液脳関門の内皮細胞に向けることができる。
【0847】
実施例29
血液脳関門シャトルモジュールの受容体結合モードは、脳内皮細胞からの放出に影響する。
【0848】
本発明者らは、脳内皮細胞(hCMEC/D3)を使用し、本明細書において報告するシャトルモジュールの細胞結合及びトランスサイトーシスを研究した。以前の試験(Crepin et al., 2010;Lesley et al., 1989、WO 2012/075037、WO 2014/033074)では、TfR結合抗体の価数及び親和性が、血液脳関門の内皮細胞への結合、それを通じたトランスサイトーシス、及びそこからの放出の有効性に影響することが報告された。hCMEC/D3における細胞結合及びトランスサイトーシスを研究するために、フィルタインサート上で培養したhCMEC/D3細胞を、二重特異性抗体又は親抗体(対照としてハプテン結合scFvを伴わない)を用いて、頂端で、37℃で1時間にわたりインキュベートした。細胞単層は、無血清培地中で、頂端(400μL)及び側底(1600μL)を、各々3〜5分間にわたり3回、室温で洗浄した。全ての洗浄容積を回収し、非結合リガンド又は抗体の除去の効率をモニターした。予め温めておいた培地を頂端チャンバーに加え、フィルターを、1600μLの予め温めておいた培地を含む新しい12ウェルプレート(1%BSAを含むPBSを用いて一晩ブロッキングした)に移した。この時点で、特異的な取り込みを決定するために、フィルターの一部の細胞を、500μLのRIPA緩衝液(Sigma, Munich, Germany, #R0278)中で溶解した。残りのフィルターを、37℃でインキュベートし、細胞の、並びに側底及び頂端培地のサンプルを、種々の時点で回収し、頂端又は側底の放出を決定した。サンプル中の抗体の含量を、高感度IgG ELISAを使用して定量した。これらの分析結果を
図50に示す:高親和性二価抗TfR抗体(TfR1)は、効率的に細胞に結合するが、しかし、頂端又は側底コンパートメントには放出されない。同じ様式において、高親和性TfR結合部位(TfR1−Dig、TfR1−Bio)を含む二重特異性抗体は、効率的に細胞に結合するが、しかし、頂端又は側底コンパートメントには放出されない。対照的に、低下した親和性を伴う二価抗TfR抗体(TfR2)は、効率的に細胞に結合し、その後、頂端又は側底コンパートメントに経時的に放出される。低下した親和性二価TfR結合部位(TfR2−Dig、TfR2−Bio)を含む二重特異性抗体も、効率的に細胞に結合し、親抗体と同じ程度で頂端又は側底コンパートメントに放出される。hCMEC/D3上に存在しない抗原に結合する対照の二重特異性抗体(CD33−Dig、CD33−Bio)は、これらの細胞に結合せず、したがって、また、頂端又は側底コンパートメントに経時的に放出されない。
【0849】
実施例30
内皮細胞向を横切るTfRシャトルに対する低下した親和性を伴う血液脳関門シャトルモジュールは、ハプテン化ペイロードのトランスサイトーシス及び放出を支持する。
【0850】
脳内皮細胞(hCMEC/D3)を使用し、ハプテン結合血液脳関門シャトルモジュールと非共有結合複合体を形成するハプテン化ペイロードの細胞結合及びトランスサイトーシスを研究した。ペイロードのトランスサイトーシスが、非共有結合複合体ペイロードについて本明細書において報告するハプテン結合性血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)を介して達成することができるか否かを評価するために、トランスウェルシステム中のhCMEC/D3細胞を、本明細書において報告する二重特異性抗体により複合体化したハプテン化ペイロード(例示的な構築物については、前の実施例を参照のこと)に1時間にわたり曝露し、TfR結合を可能にした。洗浄によるシャトル及びペイロードの除去に続き(実施例28を参照のこと)、結合分子、内在化、細胞内選別、トランスサイトーシス及びペイロードの放出を、シャトルモジュールについて実施例28において記載する同様の様式で、経時的に(実験の開始後0〜5時間=洗浄工程)モニターした。本実施例において使用したペイロードは、モノハプテン化DNAであったが、それは、本明細書において報告する二重特異性抗体を用いたインキュベーション時に、2:1(モル)比で非共有結合的に複合体化する(
図51Aにおいて示す通り)。ペイロードの存在は、細胞抽出物、頂端及び側底コンパートメント中で、qPCRにより検出及び定量化することができる。例示的に、Roche LightCyclerで、2つのPCRプライマーPrFor(配列番号200)及びPrRev(配列番号201)を使用した、ペイロードとしての末端モノビオチン化又はモノジゴキシゲニン化一本鎖DNA 50mer(配列番号199)の定量化を、
図51Aに示す。これらの分析の結果(
図51B)によって、非共有結合的に付着されたハプテン化ペイロードが、細胞に結合し、内在化され、その後、頂端及び側底コンパートメント中に放出されることが実証される。結合及びその後の放出は、TfR結合血液脳関門シャトルモジュールにより媒介される。なぜなら、細胞への結合又は放出は、CD33結合対照二重特異性抗体を適用する場合、検出されないからである。さらに、細胞への結合又は放出は、二重特異性抗体を伴わないハプテン化ペイロードを適用する場合において検出されない。非共有結合複合体化ペイロードのトランスサイトーシスが、ジゴキシゲニン結合部位について、並びに二重特異性抗体及び対応するハプテン化ペイロードを含むビオチン結合部位について観察された。これは、異なるハプテンを使用し、非共有結合二重特異性抗体の血液脳関門シャトルモジュールを設計することができることを示す。このように、血液脳関門を横切るペイロードトランスサイトーシスは、非共有結合複合体化ハプテン化ペイロードのためのハプテン結合二重特異性抗体を使用して達成することができる。
【0851】
実施例31
TfRに対して高親和性を伴う結合部位を伴う血液脳関門シャトルモジュールは、内皮細胞に結合するが、しかし、そこから放出されず、しかし、依然として、ハプテン化ペイロードのトランスサイトーシス及び放出を支持する。
【0852】
脳内皮細胞(hCMEC/D3)を使用し、前の実施例30に記載するのと同じ様式において、ハプテン結合血液脳関門シャトルモジュールと非共有結合複合体を形成することができるハプテン化ペイロードの細胞結合及びトランスサイトーシスを研究した。トランスウェルシステムにおけるHCMEC/D3細胞を、血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)により複合体化されたハプテン化ペイロードに1時間にわたり曝露させ、TfR結合、内在化及び細胞内選別、並びにトランスサイトーシスを可能にした。ペイロードは、モノハプテン化DNAであったが、それは、二重特異性抗体とのインキュベーション時に、2:1(モル比)で非共有結合的に複合体化される(
図51Aに示す通り)。モノビオチン化又はモノジゴキシゲニン化一本鎖DNA 50 merペイロード(配列番号199)の存在は、細胞抽出物、頂端及び側底コンパートメント中で、qPCRにより定量化した(前の実施例30において記載する通り)。
【0853】
これらの分析の結果(
図52)によって、非共有結合的に複合体化されたハプテン化ペイロードが、細胞に結合し、内在化され、その後、頂端及び側底コンパートメント中に放出されることが実証される。これは驚くべき知見である。なぜなら、二価高親和性シャトルモジュールは、それ自体、細胞から放出されないからである。結合及びその後のペイロード放出は、TfR 結合二重特異性抗体血液脳関門シャトルモジュールにより媒介される。なぜなら、細胞への結合又は放出は、CD33結合対照二重特異性抗体を適用する場合、検出されないからである。さらに、細胞への結合又は放出は、二重特異性抗体血液脳関門シャトルモジュールを伴わないハプテン化ペイロードを適用する場合において検出されない。非共有結合複合体化ペイロードのトランスサイトーシス及び放出が、ジゴキシゲニン結合部位、並びに二重特異性抗体及び対応するハプテン化ペイロードを含むビオチン結合部位について観察された。これは、異なるハプテンを使用し、二重特異性抗体血液脳関門シャトルモジュールを伴うハプテン化ペイロードの非共有結合複合体を設計することができることを示す。血液脳関門を含む細胞を横切るペイロードトランスサイトーシスは、血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)により非共有結合的に複合体化されたハプテン化ペイロードを介して達成することができる。驚くべきことに、トランスサイトーシスは、シャトル媒体自体の放出に頼らない。なぜなら、ペイロードは、放出されないシャトルモジュールを適用する場合でさえ、放出されるからである。
【0854】
実施例32
ハプテン化ペイロードは、小胞コンパートメント内の血液脳関門シャトルモジュールから分離する。
【0855】
内皮細胞に結合するが、しかし、これらの細胞(TfR1)からそれら自体が放出されない血液脳関門シャトルモジュールを含む高親和性TfR結合部位を用いたトランスサイトーシスアッセイは、驚くべき結果を示した:ハプテン化ペイロードは、細胞を横切り往復し、頂端及び側底コンパートメント中に放出されたが、シャトルモジュール自体は、細胞に付着した/細胞中に含まれたままであった。二重特異性抗体媒介性細胞結合、取り込み、及びペイロードの分布を、共焦点顕微鏡により分析した。したがって、脳内皮細胞(hCMEC/D3)を、二重特異性抗体複合体化ハプテン化蛍光ペイロード(ハプテン−Cy5又はハプテン−DNA−Cy5)に曝露し、共焦点蛍光顕微鏡により分析した。したがって、hCMEC/D3細胞を、顕微鏡グレードのガラスカバースリップ上に播種し、細胞培養培地中で、37℃で3時間にわたり、50nM二重特異性抗体複合体化ハプテン化蛍光ペイロードとインキュベートした。細胞を、次に、洗浄し、固定し(4%パラホルムアルデヒド)、シャトルモジュールのIgG部分を、抗カッパ軽鎖特異的抗体、続いて、ALEXA Fluor 488にコンジュゲーションされた二次抗体を用いた対比染色により検出した。画像を、ALEXAFluor488(IgG)及びCy5(ハプテン−DNA−CY5ペイロード)のための適切なバンドパスフィルター設定を使用し、100×/1.46NA対物レンズを使用したLEICA SP5x共焦点顕微鏡で撮った。これらの分析の結果を
図53に示す。蛍光標識ハプテン化ペイロード(DNA−Cy5)を伴う高親和性二重特異性抗体の複合体は、TfRに結合し、最初は細胞表面上に位置する。その後、それらは、それらの同族受容体と共内在化し、細胞内で、小胞コンパートメント、即ち、エンドソーム及びリソソーム中に現れる。内在化後、間もなく(3時間)、本発明者らは、ハプテン化ペイロードに起因するものからのシャトルモジュールに起因する蛍光シグナルの実質的な分離を観察した。このように、本明細書において報告する血液脳関門シャトルモジュールの非共有結合複合体及びハプテン化ペイロードは、細胞内部の異なる小胞コンパートメント中に解離することができる。それにより、ペイロードは、シャトルモジュールから放出され、シャトルモジュールが、細胞に結合した/細胞中に保持されたままである場合でさえ、トランスサイトーシスを介して、内皮細胞から出ることができる。非共有結合複合体化ハプテン化ペイロードの細胞内分離が、ジゴキシゲニン結合並びにビオチン結合血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)及び対応するハプテン化ペイロードについて観察された。このように、異なるハプテンを使用し、ペイロードのトランスサイトーシスを可能にする、ハプテン化ペイロード及び血液脳関門シャトルモジュールの非共有結合複合体を設計することができる。
【0856】
実施例33
ペプチドYYを含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列
【0857】
ペプチドYYは、摂食に応答して、回腸及び結腸中の細胞により放出される短い(36アミノ酸)ペプチドである。ヒトにおいて、それは、食欲を低下させるように見える。循環PYYの最も一般的な形態は、PYY
3−36であり、それは、受容体のYファミリーのY2受容体(Y2R)に結合する。PYYは、胃腸管の粘膜中、特に回腸及び結腸中のL細胞において見出される。また、PYYの少量(約1〜10%)が、食道、胃、十二指腸、及び空腸において見出される。循環において、PYY濃度が、食物摂取後に増加し、絶食時に減少する。PYYは、NPY受容体を通じてその作用を発揮する;それは、胃の運動性を阻害し、結腸における水分及び電解質の吸収を増加させる。PYY及びPYY模倣体は、肥満に対処するために使用されてきた。
【0858】
PYYは、抗体の薬物動態学的特性の利点を得るために、及び、PYYの内因性の不安定性を回避するために、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列を含むように改変し、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体により複合体化した。
【0859】
非共有結合性複合体の形成
PYY3−36ペプチドの構造研究(Nygaard, R., et al., Biochem. 45 (2006) 8350-8357;配列番号211)によって、中心アミノ酸についてのヘリカルモチーフ(ヘリカー様モチーフのアミノ酸配列)が明らかになる。N末端イソロイシン及び改変C末端が、ペプチドの機能的活性のために必須であると記載されてきたように、中心ヘリックスを、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列中のアミノ酸を反映するために改変した。
【表8】
【0860】
完全IgG1の抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体を、定常ヒトIgG1及び定常ヒトラムダドメインをそれぞれ含むベクターにおいて挿入された重鎖及び軽鎖の可変領域を含む2つのプラスミドをトランスフェクトすることにより、HEK293細胞中で産生させた。抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体(0019)を、プロテインAクロマトグラフィーを使用した標準的な手順により精製した。質量分析実験によって、抗体0019の同一性が確認された。
【0861】
抗体0019と改変PYYペプチドPYY_ヘリカーの間の複合体は、抗体溶液に小過剰のペプチドを適用することにより、インビトロで得られた。複合体0052が形成された。複合体の化学量論は、SEC−MALLS分析実験により、1つの二価抗体で複合体化した1.6のペプチドであることが決定された。
【0862】
抗体0019、PYY(3−36)野生型、PYY_ヘリカー、及び複合体0052を、Y2受容体ファミリーに対するそれらの効果について試験した。
【表9】
【0863】
実証されている通り(Hoffmann, E., et al., J. Cont. Rel. 171 (2013) 48-56.)、抗体により複合体化されたペプチドは、インビボで延長した半減期を有する。さらに、驚くべきことに、複合体では、非複合体ペプチドと比較し、NPY2R受容体について、わずかに良好な親和性が実証されている;抗体は、ポリペプチドを安定化し、その固定された生物学的に活性な立体構造においてペプチドを提示する。
【0864】
共有結合的な複合体の形成(共有結合的なジスルフィド結合)
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体とヘリカーモチーフのアミノ酸配列を含む化合物の間での複合体のインビトロ及びインビボでの安定性を増加させるために、結合時でのジスルフィド架橋の形成が使用されてきた。
【0865】
第1工程は、特異的な認識工程(高親和性相互作用)、即ち、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列を含む化合物−抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体複合体の形成である。これは、安定性が改善した共有結合的な複合体を形成するための、ジスルフィド架橋の自発シャッフリングによる第2工程において続く。
【0866】
12−merペプチド(ヘリカーモチーフのアミノ酸配列)は、比較的剛性の実体であるため(少なくとも、特異的抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体により複合体化された場合)、ジスルフィド架橋のための構造的に特異的な設計を使用しなければならないことが見出されている。複合体形成及びその後にもたらされる共有結合的カップリングが、2つの組換え産生された実体の間であるため、共有結合的なジスルフィド結合の形成のために導入された人工システイン残基は、必ずしも、フリーなシステイン残基として産生されないが、しかし、還元形態で(即ち、フリーなシステイン又はホモシステインアミノ酸にコンジュゲーションされて)発現される。
【0867】
人工のフリーなシステイン残基が導入される、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体の可変ドメインのアミノ酸配列中での位置が重要である。抗体可変ドメインのアミノ酸配列中の非曝露システインは、フリーなシステイン(コンジュゲーションされていない)として発現されるより多い可能性を有するのに対し、結合ポケットに近い曝露システイン残基によって、フリーなシステインなどの追加部分へのシステインコンジュゲーションにより誘導される立体障害に起因して、12merペプチド(ヘリカーモチーフのアミノ酸配列)の結合を消失させることができる。
a)蛍光化合物を含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列を伴う複合体。
【0868】
立体障害及び大きな親和性低下のリスクが最小である適切な位置を同定するために、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列における人工システイン残基の導入のための異なる位置がテストされた。システイン残基は、パラトープの大部分を不変にするために、12mer(ヘリカーモチーフのアミノ酸配列)のC末端に導入されている。ペプチドを合成し、蛍光モチーフに融合している。
【表10】
【0869】
抗体上で、構造設計が行われ、異なる3D環境において各々のシステインを含む両方の設計ペプチドについてジスルフィド架橋の形成を可能にしている。
【0870】
12merのヘリカルペプチドAHLENEVARLKK(ヘリカーモチーフのアミノ酸配列)が、VH及びVHドメインにモデル化される。ペプチドのC末端で、残基L10及びK11が、可能な位置として同定され、軽鎖可変ドメインにおいて、Kabatの軽鎖ナンバリングに従った位置N55及びG51が同定される。
【0871】
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体(0019)の重鎖可変ドメインは、以下のアミノ酸配列を有する:
【表11】
【0872】
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体(0019)の軽鎖可変ドメインは、以下のアミノ酸配列を有する:
【表12】
【0873】
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体(0155)の軽鎖可変ドメインN55Cは、以下のアミノ酸配列を有する:
【表13】
【0874】
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体(0157)の軽鎖可変ドメインN51Cは、以下のアミノ酸配列を有する:
【表14】
i)抗体0155を伴う化合物を含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列の共有結合コンジュゲート
【0875】
二価抗体0155は、フリーなシステインを伴わないその親分子Y2R(bck)−0019と同様に、HEK293細胞において発現される。改変抗体を、抗体0019について使用されるのと同じプロトコールを使用して精製する。質量分析によって、脱グリコシル化抗体の実験的に決定された質量が、142,001Daであることが示される。これは、計算された質量を259Daだけ超えている。還元鎖は、48,167Da(完全重鎖、計算値48,168Da、Cys=SH,C−Term=−K)及び22,720Da(完全軽鎖、N55C、計算値22,720Da、Cys=SH)の実験的に決定された質量を有する。鎖の配列を、還元後に確認した。
【0876】
抗体0155は、100%DMF中の化合物を含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列の2.5モル過剰を使用し、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント2にカップリングさせ、共有結合複合体0156を形成した。
【0877】
SDS PAGE(変性条件、
図54を参照のこと)上で、蛍光は、抗体0155上だけで見られる;還元条件において、小ペプチドだけが目に見える。
結果:
【0878】
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体への、蛍光化合物を含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列の共有結合的なコンジュゲーションに成功した。抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体の合計約43%が、2つのヘリカーモチーフのアミノ酸配列に共有結合的にコンジュゲーションされ、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体の約40%が、1つのヘリカーモチーフのアミノ酸配列に共有結合的にコンジュゲーションされ、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列の約17%がコンジュゲーションされなかった。
【0879】
2つのヘリカーモチーフのアミノ酸配列を含むコンジュゲートは、約50%まで改変される。この種は、定量化のために考慮されてこなかった。出発原料について既に決定されている通り、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列を伴わない抗体は、約128Daの2つの改変を含む。1つのヘリカーモチーフのアミノ酸配列にコンジュゲーションされた抗体は、約128Daの1つだけの改変を有する。
ii)抗体0157を伴う化合物を含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列の共有結合コンジュゲート
【0880】
抗体0155と同様に、抗体0157は、大部分がシステイン化形態として発現される。質量分析によって、脱グリコシル化抗体の実験的に決定された質量が、141,863Daであることが示される。これは、計算された質量を3Daだけ超えている。抗体は、単一又は二重ホモシステイン化形態として主に存在する。還元鎖は、48,168Da(完全重鎖、計算値48,168Da、Cys=SH,C−Term=−K)及び22,777Da(完全軽鎖、N51C、計算値22,777Da、Cys=SH)の実験的に決定された質量を有する。鎖の配列を、還元後に確認した。
【0881】
ヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1を伴う抗体0157のカップリングは、予想される共有結合複合体をもたらさなかった。蛍光が、予想されるレーンではなく、この実験において陰性であるはずの参照で見られた(
図55を参照)。
【0882】
抗体0157を、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1とインキュベートした。対照抗体として、0019を、同じヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1とインキュベートした。
結果:
【0883】
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体への、蛍光化合物を含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列の共有結合的なコンジュゲーションは成功しなかった。この理論に束縛されないが、この場合において、抗体システイン化は、結合ポケットにおいて、蛍光化合物を含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列が、C51を攻撃する適切な位置において、求核性チオール基に効率的に結合し、送達することを可能にするには深すぎると仮定される。
b)組換えポリペプチドを含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列を伴う複合体
【0884】
ヘリカーベースの方法論は、ポリペプチドを含む組換え的に産生されたヘリカーモチーフのアミノ酸配列を伴う共有結合複合体の形成を考慮する場合、特に魅力的になる。
【0885】
ヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1(AHLENEVARLCK;配列番号203)を伴うVL−N55C変異を含む抗体0155のコンジュゲーションが、代替物(ヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント2(AHLENEVARCKK;配列番号204)を伴うVL上のG51C)と比較し、良好に実施されているため、ヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1を含むポリペプチドを用いた0155のコンジュゲーションを、更に研究した。ポリペプチドは、N末端に融合されたヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1(AHLENEVARLCK;配列番号203)を含んだ。
【0886】
欠失されたC末端リジン残基を伴うシュードモナス外毒素分子LR8Mを含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1(0236;配列番号213)が、大腸菌中で産生され、陰イオン交換クロマトグラフィー及びSECの組み合わせを使用して精製されている(例、WO 2011/032022を参照のこと)。
【0887】
抗体0155を、配列番号213の欠失されたC末端リジン残基を伴うシュードモナス外毒素分子LR8Mを含むヘリカーモチーフのアミノ酸配列システインバリアント1と共有結合的にコンジュゲーションさせる。SECクロマトグラムを
図56に示す。コンジュゲーション効率は、非還元サンプルについて、SDS−CE、キャリパーにより分析する(
図57を参照のこと)。
【0888】
抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体の合計約4%が、配列番号213の2つのポリペプチドに共有結合的にコンジュゲーションされ、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体の約41%が、配列番号213の1つのポリペプチドに共有結合的にコンジュゲーションされ、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列の約55%が、コンジュゲーションされなかった。
【0889】
結論として、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列モノクローナル抗体を使用し、12merのヘリカーモチーフのアミノ酸配列の高親和性認識を介して、ペプチド、ペプチドリンカーを伴う小分子、及び組換えタンパク質を複合体化することができる。ヘリックスとしてフォールドする傾向を伴うペプチドを改変し、元の12merのヘリカーモチーフのアミノ酸配列AHLENEVARLKK(配列番号202)を模倣することができ、その後、抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列モノクローナル抗体と複合体化可能である。高親和性複合体形成に加えて、共有結合的なコンジュゲーションは、システインを含む配列番号202のシステインバリアント及び、安定したジスルフィド結合の形成を介して、CDR中にシステインを含む改変された抗ヘリカーモチーフのアミノ酸配列抗体を用いて可能になる。異なるシステムにより発現される組換えタンパク質は、特定の反応条件を伴わず、しかし、自発的なジスルフィド架橋シャッフリングを介して、インビトロで、その後にコンジュゲーションさせることができる。
【0890】
実施例34
BrdU含有ペイロードを伴う複合体からのBrdU結合二重特異性抗体
【0891】
SEC−MALLS分析を適用し、トランスフェリン受容体(TfR)及びブロモデオキシウリジン(BRDU)結合二重特異性抗体(bsAb)が、BRDU含有ペイロードに結合することが可能であるのか否か、及びどの程度可能であるのかを評価した。したがって、BRDU−DNAを、2:1の化学量論比(350μg、2.5mg/ml)でTfR−BRDU bsAbに加えて、bsAb/ペイロード−複合体の形成のために、30分間にわたり室温でインキュベートした。対照試薬として、本発明者らは、遊離二重特異性抗体(2.5mg/ml)及び遊離BRDU−DNA(3.2mg/ml)を調製した。BRDU−DNA(BRDU−ACC AAG CCT AGA GAG GAG CAA TAC AAC AGT ACA TAT CGC GTG GTA AGC GT;配列番号228)は、DNAの5’末端に、DNA分子当たり1つのBRDUを含んだ。複合体及び対照試薬を、分析まで−80℃で保存した。
【0892】
それにより生成された複合体及び対照試薬をSEC−MALLS分析を供し、遊離の二重特異性抗体、遊離のペイロード、及び両方の複合体を同定し、特徴付けした。SEC−MALLS分析は、Wyatt miniDawnTREOS/QELS検出器及びOptilab rEX検出器を備えたDionex Ultimate 3000 HPLCで実施した。分析物を、PBS緩衝液(pH7.4)中で1mg/mlで溶解し、0.5ml/分の流速でSuperdex200 10/300GLカラムに適用し、60分間にわたり、PBS緩衝液(pH7.4)を用いて溶出した。
【0893】
これらの分析の結果(
図58に示す)は、BRDU含有DNAが、二重特異性抗体を伴う、定義された複合体を形成することを示す。これらの複合体は、244.9kDaのMWでカラムから溶出し(
図58A)、6.8nmの流体力学半径を示し(
図58B)、二重特異性抗体当たり約2つ(1.8)のDNA分子の化学量論比の計算を可能にする。それに比較し、遊離の二重特異性抗体は、215.4kDaのMWで検出され、その流体力学的半径は6.2nMで決定された。遊離のBRDU−DNAは、16.4kDaのMWで検出された。
【0894】
このように、BRDU含有DNAは、抗TfR/BRDU二重特異性抗体により効果的及び化学量論的に結合され、2:1モル比の複合体がもたらされることが示された。
【0895】
実施例35
ビオチン結合二重特異性抗体は、ビオチン含有IgGに結合する
【0896】
TfR/ビオチン二重特異性抗体が、モノビオチン化完全長IgGに結合することが可能であるのか否かを、及び、それがどの程度までかを分析するために、pTauに特異的に結合するIgGアイソタイプのモノビオチン化抗体(ビオチン標識抗pTau抗体、BIO−pTau)を、抗TfR/ビオチン二重特異性抗体に2:1化学量論比(300μg、1.3mg/ml)で加え、混合物を、室温で30分間にわたりインキュベートした(二重特異性抗体ペイロード複合体の形成)。モノビオチン化IgGは、IgGアイソタイプのノブインツーホールヘテロ二量体抗体の1つの鎖のC末端でAviタグを伴うIgG誘導体を産生することにより生成した。Aviタグは、定義された様式において、1つのビオチンに酵素的にコンジュゲーションされる。
【0897】
複合体形成の特異性についての対照として、抗TfR/ジゴキシゲニン二重特異性抗体をBIO−pTauと混合した。さらなる対照試薬として、遊離の二重特異性抗体及び遊離のBIO−pTauの両方のアリコートを調製した。複合体及び対照試薬は、分析まで−80℃で保存した。
【0898】
生成された複合体をSEC−MALLS分析を供し、遊離の二重特異性抗体、遊離のBIO−pTau、及びそれらの複合体を同定し、特徴付けした。SEC−MALLS分析は、Wyatt miniDawnTREOS/QELS検出器及びOptilab rEX検出器を備えたDionex Ultimate 3000 HPLCで実施した。分析物を、PBS緩衝液(pH7.4)中で1〜2mg/mlで溶解し、0.5ml/分の流速でSuperose610/300GLカラムに適用し、60分間にわたり、PBS緩衝液(pH7.4)を用いて溶出した。
【0899】
これらの分析の結果(
図59に示す)は、BIO−pTauが、二重特異性抗体を伴う、定義された複合体を形成することを示す。これらの複合体は、501kDaのMWでカラムから溶出し(
図59A)、8.0nmの流体力学半径を示す(
図59B)。それに比較し、遊離の二重特異性抗体は、205kDaのMWで検出され、その流体力学的半径は6.2nMで決定された。遊離のBIO−pTauは、150kDaのMWで検出され、その流体力学的半径は5.5nmで測定された。
【0900】
複合体は、ビオチンと二重特異性抗体のビオチン結合部分の間での相互作用により特異的に形成される。なぜなら、ジゴキシゲニン結合二重特異性抗体は、BIO−pTauと複合体を形成しないためである(
図59C)。
【0901】
実施例36
ビオチン標識抗pTau抗体のトランスサイトーシス
【0902】
抗TfR/ビオチン二重特異性抗体が、完全長抗体ペイロードのトランスサイトーシスを促進するのか否かを、及び、それがどの程度までかを分析するために、抗TfR/ビオチン二重特異性抗体(抗TfR/ビオチンbsAb−1及び抗TfR/ビオチンbsAb−2)及びBIO−pTauの複合体を形成し(実施例35において記載する通り)、トランスサイトーシスアッセイに供した(例、実施例31において上記に記載する通り)。非特異的トランスサイトーシスについての対照として、抗CD33/ビオチン二重特異性抗体及びBIO−pTau並びに遊離BIO−pTauの複合体を並行で試験した。頂端及び側底コンパートメントの、並びに細胞溶解物のサンプルを、細胞のロード後0、1、2、3、4、及び5時間に採取した。ロード濃度は常に3.8μg/mlであった。
【0903】
ビオチン標識抗pTau抗体の量をELISAにより測定した。したがって、pTauタンパク質は、NUNC Maxisorb White 384ウェルプレート上に、500ng/mlで、一晩2〜8℃で、又は室温で1時間にわたりコーティングした。プレートを、2%BSA及び0.05%Tween20を含むPBSを用いて、少なくとも1時間にわたりブロックした。0.5%BSA及び0.05%Tween20を含むPBS中の1/729までのサンプル希釈物を、1.5〜2時間にわたり適用し、30分間にわたるPoly-HRP40-Streptavidin(Fitzgerald)及び10分間にわたるSuper Signal ELISA Pico substrate(Thermo Scientific)が続いた(全て室温で)。BIO−pTau抗体の標準希釈液(100ng/ml〜0.5pg/ml)を、同じプレート上でアッセイした。プレートを、連続的なインキュベーション工程の間に、0.1%Tween20を含むPBSで洗浄した。
【0904】
これらのトランスサイトーシスアッセイの結果(
図60)は、抗TfR/ビオチンbsAb−1又は抗TfR/ビオチンbsAb−2のいずれかにBIO−pTauを複合体化させることによって、側底コンパートメント中へ、並びに頂端コンパートメント中に戻す、BIO−pTauの効果的なエンドサイトーシス及びその後の輸送が媒介されることを示す。対照的に、抗CD33/ビオチン二重特異性抗体又は遊離BIO−pTauへのBIO−pTauの複合体のいずれも、効果的にエンドサイトーシス又はトランスサイトーシスされず、観察されたトランスサイトーシスが、細胞の表面上での、TfRへの抗TfR/ビオチン二重特異性抗体の特異的な結合により起こされることを示す。
【0905】
実施例37
ハプテン結合血液脳関門−シャトルによって、短いオリゴヌクレオチドのトランスサイトーシス及び放出が可能になる
【0906】
この実施例において、血液脳関門を形成する内皮細胞を横切る核酸のトランスサイトーシスが、小核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドなど)又は改変核酸誘導体(例えば「ロックド」核酸など)について達成することができることを示す。一本鎖核酸ペイロード(実施例30及び31において記載するDNAフラグメントよりも小さい)が生成されている。これらのペイロード(ハプテンカップリング形式において生成される)は、治療的アンチセンスオリゴヌクレオチド又はロックド核酸に密接に似ており、それにより、前記実体の代理としての役割を果たすことができる。ハプテン化(例、モノ−ビオチン化又はモノ−ジゴキシゲニン化)一本鎖34mer又は28merオリゴヌクレオチド(それぞれ配列S1又はS2)の正確な検出は、実施例30に記載されるものと類似のqPCRアッセイにより達成された。特異的な検出を、PCRプライマーPrFor(配列番号200)及びPrRev(配列番号201)を使用し、hCMEC/D3培地中及び細胞抽出物中でのS1及びS2 DNAの連続希釈物を分析することにより検証した。頂端若しくは側底細胞上清コンパートメント中又は細胞抽出物中のオリゴヌクレオチドS1又はS2の存在を検出するためのqPCRアッセイのための条件は、以下の通りである:95℃で10分間にわたる変性;10秒間にわたる95℃、15秒にわたる54℃、10秒間にわたる72℃の45サイクル;高解像度融解及び冷却が続く。アッセイは、Roche LightCycler 480 IIで実施した。
【0907】
脳内皮細胞(hCMEC/D3)を使用し、実施例30及び31に記載するのと同じ様式において、ハプテン結合血液脳関門シャトルモジュールを伴う非共有結合複合体を形成することができるハプテン化ペイロードの細胞結合及びトランスサイトーシスを研究した。トランスウェルシステムにおけるHCMEC/D3細胞を、血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)により複合体化されたハプテン化ペイロードに1時間にわたり曝露させ、TfR結合、内在化及び細胞内選別、並びにトランスサイトーシスを可能にした。ペイロードは、モノハプテン化オリゴヌクレオチドS1又はS2であったが、それらは、二重特異性抗体とのインキュベーション時に、2:1(モル)比で非共有結合的に複合体化される(
図51Aに示す通り)。モノビオチン化又はモノジゴキシゲニン化オリゴヌクレオチドS1又はS2の存在を、細胞抽出物、頂端及び側底コンパートメント中で、qPCRにより定量化した(前の実施例30及び31において記載する通り)。同じ抽出物、頂端及び側底コンパートメント中での血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)の存在を、ヒトIgGについて特異的なELISAにより定量化した(実施例29において記載する通り)。
【0908】
これらの分析の結果(
図61〜63)は、非共有結合的に付着されたハプテン化ペイロードS1及びS2が、細胞に結合し、内在化され、その後、頂端及び側底コンパートメント中に放出されるようになることを実証する。実施例31における50merのDNAペイロードについての場合と同様に、それ自体により細胞から放出されない二価高親和性シャトルモジュールが、それにもかかわらず、ペイロードS1及びS2の両方のトランスサイトーシスを促進することが観察された。結合及びその後の放出は、TfR結合血液脳関門シャトルモジュールにより媒介される。なぜなら、細胞への結合又は放出は、CD33結合対照二重特異性抗体が適用される場合、検出されないためである。非共有結合的に複合体化されたペイロードS1及びS2のトランスサイトーシスが、ジゴキシゲニン結合シャトルについて、並びに二重特異性抗体及び対応するハプテン化ペイロードを含むビオチン結合シャトルについて観察された。逆に、細胞への有意な特異的な結合又は有意な放出は、二重特異性抗体を伴わないハプテン化ペイロードが適用される、又はハプテン化ペイロードが、非対応ハプテンを認識する二重特異性抗体と一緒に適用される場合において検出されない。これは、短いオリゴヌクレオチド由来ペイロードが、非共有結合二重特異性抗体の血液脳関門シャトルモジュールにより、脳内皮細胞を横切って送達されることを示す。このように、血液脳関門を形成する細胞を横切った短い核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド又は「ロックド」核酸など)のトランスサイトーシスは、血液脳関門シャトルモジュール(二重特異性抗体)により非共有結合的に複合体化されたハプテン化ペイロードを介して達成することができる。実施例31において記載されるのと同じ様式において、短い核酸誘導体のトランスサイトーシスは、シャトル媒体自体の放出に頼らない。なぜなら、ペイロードは、放出されないシャトルモジュールを適用する場合でさえ、シャトル実体から放出されるようになるからである。
【0909】
実施例38
血液脳関門を横切ったペイロード送達のためのハプテン及びトランスフェリン受容体結合シャトル媒体のインビボでの機能性の評価
【0910】
動物実験を適用し、二重特異性ハプテン及びトランスフェリン受容体結合シャトル媒体が、血液脳関門(BBB)を横切ったペイロード送達をインビボでどの程度可能にするかを評価する。輸送され、脳中で検出されるペイロードは、モノビオチン化リン酸化Tau結合抗体誘導体である。この抗体(Tauタンパク質)の標的は、脳中に位置付けられる。そのため、抗体は、その標的にアクセスするために、血液脳関門を通過する必要がある。この抗体は、したがって、インビボ実験のためのペイロードとして適用される。ペイロードと組み合わされるシャトル媒体は、記載されているものと同じ、又は類似の方法で構成されており、上に提示する実施例におけるインビトロ実験のために適用されるが、しかし、ヒトの対応物の代わりに、マウストランスフェリン受容体に結合する結合領域を有する。特異性を切り替える理由は、培養BBBトランスサイトーシス解析システム(トランスウェルアッセイ、上記を参照のこと)では、ヒトTfRを伴うヒト細胞が適用され、動物実験が、BBBでマウスTfRを持つマウスにおいて実施されることである。
【0911】
マウスTfR認識ハプテン(例、ビオチン)結合シャトル媒体を、ビオチン化pTau結合抗体と複合体化し、その後、TauPS2APPマウスに適用する。或いは、マウスTfR認識ハプテン(例、ビオチン)結合シャトル媒体は、また、TauPS2APPマウス中に注射することができ、その後、後の時点でのビオチン化pTau結合抗体の注射が続く(=標的化前設定)。
【0912】
マウスの群を、抗CD4の単一用量で1日目に処置して免疫寛容を誘導し、その後、10〜12週間にわたる試験物質の毎週の静脈内注射が続く:
A群:無処置
B群:(ビオチン化)p−Tau結合抗体のみ
C群:二重特異性抗TfR/ビオチン抗体(シャトル媒体)と複合体化されたビオチン化p−Tau結合抗体
D群:抗TfR抗体に共有結合的に連結されたp−Tau結合抗体
【0913】
A群のマウスを0日目に屠殺し、ベースライン群を与える。残りの群は、合計12週間にわたり、それぞれの化合物の静脈内投与を毎週受け、最後の投与後1週間に屠殺する。
【0914】
BBBを横切ったペイロード抗体の移動を決定するために、各々のマウス脳を2つの半球に矢状に切開し、以下の通りに使用する:
(1)右半球:pTau含有凝集体の免疫組織化学
(2)左半球:特異的AlphaLISAによるリン酸化Tauタンパク質及び全Tauタンパク質の測定のための脳ホモジネートの調製。