特許第6476230号(P6476230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476230既使用で乾燥したセンサを検出するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476230
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】既使用で乾燥したセンサを検出するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20190218BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20190218BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   G01N27/26 391Z
   G01N27/416 338
   G01N27/327 353Z
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-89602(P2017-89602)
(22)【出願日】2017年4月28日
(62)【分割の表示】特願2015-524238(P2015-524238)の分割
【原出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-151118(P2017-151118A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】61/676,549
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516106184
【氏名又は名称】アセンシア・ダイアベティス・ケア・ホールディングス・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Ascensia Diabetes Care Holdings AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ハリスン,バーン
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/047842(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/156152(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/044513(WO,A1)
【文献】 特開平04−357452(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0219084(US,A1)
【文献】 特開2009−294213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
G01N 33/48−33/98
C12Q 1/00−3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサにおいて試験ストリップを分析する方法であって:
液体サンプルを試験ストリップに塗布するための手続メッセージを表示する工程であって、前記試験ストリップが、乾燥試薬、作用電極、対電極、検知電極、前記試験ストリップが使用されない状態では前記乾燥試薬と接触しない裸電極を有する工程と;
前記作用電極と前記対電極との間に第一の電圧を印加する工程と;
前記作用電極と前記対電極との間の第一の電流を測定する工程と;
第一の分析対象物の量を、前記測定された第一の電流に基づいて決定する工程と;
前記第一の電圧を印加したあとに、前記裸電極と前記作用電極との間に第二の電圧を印加する工程と;
前記裸電極と前記作用電極との間の第二の電流を測定し、第二の電流の測定後に前記裸電極と前記作用電極との間の第三の電流を測定する工程と;を含み、
第一の閾値より下の計算であって前記測定された第二の電流と第三の電流とに基づく計算に応答して、第一のエラーメッセージを表示前記測定された第二の電流、前記測定された第三の電流、又は両方に基づく第一の分析対象物の量の補正を含む第二の分析対象物の量であって、前記第二の分析対象物の量の表示を抑制す工程と;
前記第一の閾値より上の前記計算に応答して、前記第二の分析対象物の量を表示する工程と;の少なくとも一方を行う方法。
【請求項2】
前記第一のエラーメッセージは、前記試験ストリップが以前に湿潤されそして乾燥したものであるため、前記試験ストリップは使用できないことを示す、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第二の電圧は、前記第一の電圧よりも高い、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第一の電圧を印加する工程は、前記第一の電圧を単独の連続電位として又は複数のパルスで印加すること、
を含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第一の電流を測定する工程は、前記第一の電流を単独の測定又は複数の測定によって測定すること、
を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記第一の分析対象物の量は、グルコースの量を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記測定された第二の電流、前記測定された第三の電流、又は両方に基づいて第二の分析結果を決定すること、
をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記決定された第二の分析結果はヘマトクリットの推定を含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記手続メッセージを表示する工程の前に、
前記作用電極と前記対電極との間に第三の電圧を印加する工程と;
前記作用電極と前記対電極との間の第四の電流を測定する工程と;
第二の閾値より上の前記測定された第四の電流に応答して第二のエラーメッセージを表示する工程と;
前記第二の閾値より下の前記測定された第四の電流に応答して前記裸電極と前記対電極との間に第四の電圧を印加する工程と;
前記裸電極と前記対電極との間の第五の電流を測定する工程と;
第三の閾値より上の前記測定された第五の電流に応答して前記第二のエラーメッセージを表示する工程と;
をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記第二のエラーメッセージは、前記試験ストリップが液で湿っているため、前記試験ストリップは使用できないことを示す、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記手続メッセージを表示する工程の後であって、前記第一の電圧を印加する工程の前に、
前記裸電極と前記対電極との間に第五の電圧を印加する工程と;
前記裸電極と前記対電極との間の第六の電流を測定する工程と;
第四の閾値より上の前記測定された第六の電流に応答して前記作用電極と前記検知電極との間に第六の電圧を印加する工程と;
前記作用電極と前記検知電極との間の第七の電流を測定する工程と;
前記第四の閾値より下の前記測定された第六の電流又は第五の閾値より下の前記測定された第七の電流に応答して、より多くの液体サンプルを試験ストリップに塗布すべきこと示す改善メッセージを表示する工程と;
をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
バイオセンサであって:
プロセッサと;
一つ以上の実行可能命令を記憶するメモリとを含み、
前記命令が、前記プロセッサによって実行されるとき、
前記プロセッサを:
作用電極と、検知電極をさらに有する試験ストリップの対電極との間に第一の電圧を印加し、
前記作用電極と前記対電極との間の第一の電流を測定し、
第一の分析対象物の量を、前記測定された第一の電流に基づいて決定し、
前記第一の電圧を印加したあとに、試験ストリップの裸電極と前記作用電極との間に第二の電圧を印加し、
前記裸電極と前記作用電極との間の第二の電流を測定し、第二の電流の測定後に前記裸電極と前記作用電極との間の第三の電流を測定し、
第一の閾値より下の計算であって前記測定された第二の電流と第三の電流とに基づく計算に応答して、第一のエラーメッセージを表示前記測定された第二の電流、前記測定された第三の電流、又は両方に基づく第一の分析対象物の量の補正を含む第二の分析対象物の量であって、前記第二の分析対象物の量の表示を抑制すること
前記第一の閾値より上の前記計算に応答して、前記第二の分析対象物の量を表示すること、の少なくとも一方を行う、
ように構成するバイオセンサ。
【請求項13】
前記第一のエラーメッセージは、前記試験ストリップが以前に湿潤されそして乾燥したものであるため、前記試験ストリップは使用できないことを示す、
請求項12記載のバイオセンサ。
【請求項14】
前記第一の分析対象物の量は、グルコースの量を含む、
請求項12記載のバイオセンサ。
【請求項15】
前記命令が、前記プロセッサによって実行されるとき、
前記プロセッサを:
前記測定された第二の電流、前記測定された第三の電流、又は両方に基づいて第二の分析結果を決定するようにさらに構成する、
請求項12記載のバイオセンサ。
【請求項16】
前記決定された第二の分析結果はヘマトクリットの推定を含む、
請求項15記載のバイオセンサ。
【請求項17】
前記命令が、前記プロセッサによって実行されるとき、
前記プロセッサを:
前記作用電極と前記対電極との間に第三の電圧を印加し、
前記作用電極と前記対電極との間の第四の電流を測定し、
第二の閾値より上の前記測定された第四の電流に応答して第二のエラーメッセージを表示し、
前記第二の閾値より下の前記測定された第四の電流に応答して前記裸電極と前記対電極との間に第四の電圧を印加し、
前記裸電極と前記対電極との間の第五の電流を測定し、
第三の閾値より上の前記測定された第五の電流に応答して前記第二のエラーメッセージを表示するようにさらに構成する、
請求項12記載のバイオセンサ。
【請求項18】
前記第二のエラーメッセージは、前記試験ストリップが液で湿っているため、前記試験ストリップは使用できないことを示す、
請求項17記載のバイオセンサ。
【請求項19】
前記命令が、前記プロセッサによって実行されるとき、
前記プロセッサを:
前記裸電極と前記対電極との間に第五の電圧を印加し、
前記裸電極と前記対電極との間の第六の電流を測定し、
第四の閾値より上の前記測定された第六の電流に応答して前記作用電極と前記検知電極との間に第六の電圧を印加し、
前記作用電極と前記検知電極との間の第七の電流を測定し、
前記第四の閾値より下の前記測定された第六の電流又は第五の閾値より下の前記測定された第七の電流に応答して、より多くの液体サンプルを試験ストリップに塗布すべきこと示すメッセージを表示するようにさらに構成する、
請求項12記載のバイオセンサ。
【請求項20】
プログラムのコンピュータ可読命令が記憶された、非一時的コンピュータ可読記憶ユニットであって、
命令が、プロセッサによって実行されるとき、
前記プロセッサに:
作用電極と、検知電極をさらに有する試験ストリップの対電極との間に第一の電圧を印加し、
前記作用電極と前記対電極との間の第一の電流を測定し、
第一の分析対象物の量を、前記測定された第一の電流に基づいて決定し、
前記第一の電圧を印加したあとに、試験ストリップの裸電極と前記作用電極との間に第二の電圧を印加し、
前記裸電極と前記作用電極との間の第二の電流を測定し、第二の電流の測定後に前記裸電極と前記作用電極との間の第三の電流を測定し、
第一の閾値より下の計算であって前記測定された第二の電流と第三の電流とに基づく計算に応答して、第一のエラーメッセージを表示し、前記測定された第二の電流、前記測定された第三の電流、又は両方に基づく第一の分析対象物の量の補正を含む第二の分析対象物の量であって、前記第二の分析対象物の量の表示を抑制し、
前記第一の閾値より上の前記計算に応答して、前記第二の分析対象物の量を表示するようにさせる、
ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、開示内容を引用例として本明細書に取り込む、2012年7月27日出願の米国特許仮出願第61/676,549号の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、一般に医療機器の分野に関する。より具体的には、本開示は、体液のサンプル中の分析対象物の量を測定する装置及び方法、例えば全血のサンプル中のグルコースを測定するために使用されるようなものに関連する。
【0003】
発明の背景
アンペロメトリックグルコースバイオセンサは、通常、作用電極及び対電極を包含する少なくとも一対の電極を有する通例「試験ストリップ」と呼ばれるセンサを使用する。試験ストリップは、作用電極及び対電極と接触する乾燥試薬ならびに入口開口から作用電極及び対電極まで延伸する毛細管流路チャネルも包含する。試薬は、通常、サンプル中のグルコース、例えばグルコースオキシダーゼを酸化させることが可能な酵素と、グルコースの酸化からの結果として生じる還元酵素を再酸化させるために適応された一つ以上のメディエータとを包含し、それにより還元メディエータを形成する。試験ストリップは、測定器内に挿入され、作用電極及び対電極が測定器内の部品に電気的に接続される。試験ストリップが測定器に挿入された後、体液のサンプル、例えば血液は、毛細管流路チャネル内に導入され、作用電極、対電極及び試薬と接触し、するとすぐ、測定器内の部品が作用電極と対電極との間に一つ以上の電圧を印加し、電極間を通る電流を測定する。還元メディエータは、作用電極において酸化され、それにより作用電極において存在する還元メディエータの量に関連し、それ故に液中のグルコースの濃度に関連する測定可能な電流を生じさせる。測定された電流は、通常、高い値から始まり、その後、低下し、一定値に近づく。例として、電圧印加中の所定時間において測定された電流を使用して、サンプルのグルコース含有量を判定することができる。
【0004】
ユーザーは、時折、以前に既使用の試験ストリップで血糖値試験を実施しようとする。そのような再使用は、誤った測定値をもたらす。再使用を防止するために、測定器は、液サンプルの導入前にストリップの電極間の導電率を測定するように配置されることができる。ストリップが測定器内に挿入されるとき、測定器内の電気部品は、電極間に電圧を印加し、電流フローを測定する。新たな、未使用の試験ストリップは、電極間に乾燥試薬のみを有し、それ故に液サンプルの塗布前には電極間に非常に高い電気抵抗を有する。しかし、以前のサンプルでまだ湿潤している、以前に既使用の試験ストリップは、電極間に非常に低い電気抵抗及び高い電流フローを示す。測定器は、容易にこれを認識して、警告を発するか試験を終了させるか又はその両方をする。しかし、ストリップの最初の使用が何時間又は何日も以前に発生した場合、前の液サンプルは乾燥している。このようなケースでは、測定器による導電率試験は、問題を明らかにしない。
【0005】
以前に既使用で乾燥した試験ストリップの再使用は、誤った測定値につながることがある。例として、そのような既使用の試験ストリップからの測定値は、前の使用に起因する作用及び/又は対電極からの化学物質の損失に起因する非常に大きい負バイアスを有する可能性がある。したがって、さらなる改善が望ましい。
【0006】
発明の概要
本明細書に開示されるシステム及び方法の様々な態様は、ハードウェア、ソフトウェア又は両方の組み合わせに具現化されることができる。以前に接種され乾燥した試験ストリップの再使用を検出し、報告するシステム及び方法が提供される。様々な態様において、システム及び方法は、試験ストリップがその時以前の時間においてもう一つのサンプルを既に接種された後にサンプルを再接種された乾燥した試験ストリップであることを判定し、血液サンプルを接種された試験ストリップからのグルコース測定値を判定し、測定されたグルコース測定値を要因、例えば血液サンプルの周囲温度及び血液サンプルから判定されたヘマトクリットの量に基づいて補正するために提供される。
【0007】
バイオセンサにおいて試験ストリップの再使用を検出する方法が提供される。方法は、乾燥試薬と、正常状態では乾燥試薬と接触しない裸電極を包含する複数の電極とを有する試験ストリップに液体を接種し、液体が乾燥試薬、裸電極及び一つ以上の他の電極と接触することを包含する。方法は、さらに、電極が液体と接触する間、裸電極と一つ以上の他の電極との間に電位を印加することと、電位の印加に応じた裸電極と一つ以上の他の電極との間の電流フローを測定することとを包含する。方法は、さらに、測定された電流フローの一つ以上のパラメータに基づいて、センサストリップが接種工程に先立って以前に湿潤され乾燥したものであるか否かを判定することを包含する。
【0008】
一つの態様において、電位印加工程中の第一の時間における第一の電流値及び電位印加工程中のより遅い第二の時間における第二の電流値を測定することができる。
【0009】
第二の電流値と第一の電流値との間の比を計算することができ、比を限界比値と比較することができる。一つの態様において、限界比は、電位印加工程中に測定された電流値に少なくとも部分的に基づいて選択されることができる。さらには、限界比は、第一の電流値及び第二の電流値の一つに少なくとも部分的に基づいて選択されることができる。
【0010】
一つの態様において、限界比は、第二の電流値を第一の電流値で割った比であることができ、比が限界比値以下であるときにセンサストリップが以前に湿潤され乾燥したものであると判定を行うことができる。
【0011】
一つの実施態様において、ストリップ上の一つ以上の他の電極は、作用電極と対電極とを包含することができ、方法は、さらに作用電極と対電極との間に少なくとも一つの入力電気信号を印加することを包含することができる。少なくとも一つの入力電気信号の印加からの応答の結果として生じる少なくとも一つの出力信号を測定することができ、少なくとも一つの出力信号に少なくとも部分的に基づいてサンプル中の分析対象物の濃度を判定することができる。一つの態様において、入力電気信号は、電位であることができ、出力電気信号は、作用電極と対電極との間を流れる電流であることができる。
【0012】
サンプル中の分析対象物の判定された濃度は、測定された電流フローの少なくとも一つのパラメータに少なくとも部分的に基づいて補正されることができる。一つの実施態様において、例として、液体は、血液であることができ、分析対象物の濃度は、関連するヘマトクリットへの効果のために補正されることができる。この実施態様に従い、分析対象物は、グルコースであることができ、乾燥試薬は、さらにグルコースと反応する酵素及びメディエータを包含することができる。
【0013】
なおももう一つの態様において、方法は、電位印加工程中に測定された電流値を閾値電流と比較することを包含することができる。判定は、その後、センサストリップが接種工程に先立って以前に水で湿潤され乾燥したものとは対照的に、接種工程に先立って以前に血液で湿潤され乾燥したものであるか否かの比較に基づいて行うことができる。
【0014】
試験ストリップの再使用を検出するバイオセンサが提供される。バイオセンサは、プロセッサと、一つ以上の実行可能命令を記憶するメモリとを包含することができる。命令は、プロセッサによって実行されるとき、試験ストリップの電極が液体と接触し、試験ストリップが乾燥試薬を有し、裸電極が普通は試薬と接触しない、裸電極と試験ストリップの一つ以上の他の電極との間に電位を印加し、電位の印加に応じた裸電極と一つ以上の他の電極との間の電流フローを測定し、測定された電流フローの一つ以上のパラメータに基づいて、センサストリップが試験ストリップへの液体の接種に先立って以前に湿潤され乾燥したものであるか否かを判定するようにプロセッサを構成することができる。
【0015】
プログラムのコンピュータ可読命令が記憶された非一時的コンピュータ可読記憶ユニットが提供される。命令は、プロセッサによって実行されるとき、試験ストリップの電極が液体と接触し、試験ストリップが乾燥試薬を有し、裸電極が正常状態では試薬と接触しない、裸電極と試験ストリップの一つ以上の他の電極との間に電位を印加し、電位の印加に応じた裸電極と一つ以上の他の電極との間の電流フローを測定し、測定された電流フローの一つ以上のパラメータに基づいて、センサストリップが試験ストリップへの液体の接種に先立って以前に湿潤され乾燥したものであるか否かを判定するようにプロセッサにさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施態様に従った試験ストリップの概略平面図である。
図2】本発明の実施態様に従ったアンペロメトリックバイオセンシング測定器のブロック図である。
図3】本発明の一つの実施態様に従った方法中に測定器によって試験ストリップに印加される一連の入力パルスを図示する電圧対時間のグラフである。
図4図3の方法中に試験ストリップの電極間の出力電流の例を図示する電流対時間のグラフである。
図5図3の方法を使用して測定されたある結果を図示するグラフである。
図6】本開示のもう一つの態様に従ったある結果を図示するグラフである。
【0017】
発明を実施するための形態
図1〜2は、それぞれ、本発明の様々な態様に従った試験ストリップ100及び測定器200の例を例示する。測定器及び試験ストリップの特定の構成が示されているが、本開示は、いかなる特定の構成にも限定されるものではない。
【0018】
本発明の一つの実施態様で使用される試験ストリップ100は、本体の一つの端94から延伸する毛細管流路チャネル92を画定する本体90を包含する。流路チャネルは、流路チャネルの近位端を成す入口開口96を有する。もう一つの言い方をすれば、流路チャネルは、図1に示すように近位方向P及び遠位方向Dを画定する。例として、本体90は、最下層、流路チャネルを画定する間隙を有するスペーサ層及びスペーサ層を覆う最上層を包含する積層として作られることができる。単なる例までに、毛細管流路チャネルは、およそ1.2mm以下の幅及びおよそ.1mm以下の高さ(図1の図の平面に対して垂直方向に)を有することができる。
【0019】
試験ストリップは、本体90上に持たれる複数の電極も包含する。例として、電極は、本体の最下層上に導電性金属膜として形成されることができる。例として、金属膜は、チャネルにさらされ、故に使用中にサンプル液体にさらされる膜の表面においてパラジウムを包含することができる。電極は、流路チャネル92にわたって延伸する相互に近位に近接する作用電極102及び対電極104を包含する。図示された特定の実施態様において、対電極104は、作用電極102の近位に設けられた部分104a及び作用電極より遠位の部分104bを包含する。電極102及び104は、それぞれ、端子112及び114に接続される。化学物質、例えば生体サンプル(例えば、血液)中の分析対象物(例えば、グルコース)と反応する酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)及びメディエータ(還元及び酸化に対し感受性を持つ化合物)を包含する乾燥試薬は、ストリップの既定の領域118内に提供され、試薬が既定の領域内で作用電極102及び対電極104の両方と接触し、望ましくは覆う。もう一つの実施態様において、乾燥試薬は、FAD補因子(「FAD−GDH」)を持つグルコースデヒドロゲナーゼを包含することもできる。グルコースの測定に好適な他の酵素は、NAD又はPQQ補因子を持つグルコースデヒドロゲナーゼ及びヘキソキナーゼを包含する。
【0020】
この実施態様の試験ストリップ100は、「ヘマトクリット」電極とも本明細書において呼ぶ裸電極106も包含する。裸電極106は、作用電極102及び対電極104と近位の、乾燥試薬によって占められた領域118の外側の位置で流路チャネル92にわたって延伸する。裸電極106は乾燥試薬によって占められた領域118の外側に設けられるものの、裸電極は、望ましくは領域118に近接する。単なる例までに、裸電極の遠位縁は、領域118からおよそ.3mm以内かつ作用電極104の近位縁からおよそ.6mm以内に設けられることができる。図1に図示された未使用の状況においては、裸電極106にはいかなる化学物質もない。試験ストリップへの液体サンプル、例えば血液の接種の前には、裸電極106には、領域118内の乾燥試薬が不在である。裸電極106は、接触端子116に電気的に接続される。
【0021】
この実施態様の試験ストリップは、さらにチャネル92内の対電極104の遠位縁に設けられた検出電極107を包含する。検出電極は、さらなる端子117に接続される。検出電極は、乾燥試薬118によって覆われる。検出電極を使用して、液体が作用電極及び対電極より遠位の点までチャネル92を満たしたときを判定することができ、対電極104の部分として使用することもできる。
【0022】
図1に示される電極に加えて、試験ストリップ100は、他の電極(図示せず)、例えば追加の対電極、作用電極又は裸電極を包含することができる。
【0023】
測定器200(図2)は、試験ストリップ100を受けるためのストリップポート202を包含する。ストリップポート202は、測定器200の一つ以上の部品を試験ストリップ上の端子112、114及び116ならびに117に電気的につなぐ、したがって、測定器の部品を電極102、104、106及び107につなぐように配置される。したがって、ストリップポートは、ストリップの端子を係合するように配置される接点(図示せず)を包含する。
【0024】
測定器200は、プロセッサ204の制御下で動作することができる。プロセッサ204は、メモリ206に記憶された命令及びデータを実行する及び/又は処理するように構成されたいかなる市販されている、汎用のマイクロプロセッサであることができる。プロセッサ204は、測定器200の様々な部品につながれることができ、概して測定器200によって提供される機能に向かわせ有効にすることができる。
【0025】
メモリ206は、いかなるコンピュータ可読メモリ、例えば磁気、光又は半導体メモリであることができる。メモリ206は、固定メモリ素子(例えば、フラッシュ)又は着脱式メモリ素子、例えばメモリカードを使用して具現化されることができる。様々な態様において、メモリ206は、不揮発性メモリ(例えば、ROM又はフラッシュメモリ)の一つ以上の領域、揮発性メモリ(例えば、RAMメモリ)の一つ以上の領域又は両方の組み合わせを包含することができる。メモリ206は、プロセッサ204によって実行されるとき、下記に記載した様々な動作を遂行するように測定器200を構成する、記憶された命令又はアルゴリズムを包含することができる。さらには、プロセッサ204は、メモリ206内の様々なデータ、例えば入力インターフェース210を介して受けた情報、ディスプレイ208に出力された情報又は測定器200の動作中にポート202を介して得た及び/又は測定した情報を記憶し、読み出し、処理することができる。
【0026】
入力インターフェース210は、ユーザーが測定器200とやりとりするための仕組みを提供することができる。例として、入力インターフェース210は、測定器を励起するための電源スイッチを包含することができる。入力インターフェースは、ユーザーが測定器を動作させることを可能にするための一つ以上の追加のボタン、例えば新たな試験の開始に向かわせる又は以前の試験中に得た結果を読み出すためのボタンを包含することもできる。
【0027】
ディスプレイ208は、情報をユーザーに提示するために好適ないかなるディスプレイであることができる。例として、ディスプレイ208は、LED又はLCDディスプレイ、グラフィックスディスプレイ、プラズマディスプレイ、バックライトディスプレイ、タッチスクリーンディスプレイ又はセグメント/グラフィック組み合わせディスプレイを包含することができる。ディスプレイ208がタッチスクリーンディスプレイである実施態様において、ディスプレイ208を使用して、ユーザーが測定器に入力を提供することもできる。プロセッサ204によってディスプレイ208上に表示された情報は、英数字の形態及び/又はメモリ206に記憶された画像であることができ、測定器によって提供される(又は受けられる)一つ以上のタイプの情報を表現する一つ以上のアイコンを包含することができる。ユーザーに対して表示されることができる情報の一部は、分析対象物濃度測定値、時間及び日付インジケータ、ヘマトクリット測定値、マーカー、エラー又はアラーム情報ならびにこれらのいかなる組み合わせを包含する。例として、一つ以上のエラーメッセージは、ディスプレイ208に出力されることができ、以前に接種された試験ストリップの検出時に表示されるエラーメッセージを包含することができる。もう一つの例としては、グルコース測定値は、いかなるエラーもない試験の成功完了時にディスプレイ208上に表示されることができる。
【0028】
この実施態様の測定器200は、温度センサ(例えば、サーミスタ又は熱電対)212も包含する。温度センサ212は、測定器の周りの環境の周囲温度を表す周囲温度測定値を測定し提供するように配置される。プロセッサ204は、周囲温度測定値を定期的に受け、さらなる処理のために測定値をメモリ206に記憶することができる。
【0029】
測定器200は、信号発生器及び測定ユニット214も包含する。ユニット214は、ストリップポート202に電気的につながれ、試験ストリップが測定器内に挿入されるとき、ユニット214が試験ストリップの電極に電気的に接続される。ユニット214は、下記に記載したように試験ストリップの電極間に電圧を印加し、下記に記載したように電極間を流れる電流を測定するように配置される。ユニット214は、従来の電子的要素、例えば安定化した電圧源、そのような電圧源をストリップポート202内の適切な接点に接続するためのスイッチ及び従来の電流測定要素を包含することができる。
【0030】
さらに下記に記載したように、ユニット214は、一連の測定時間における各電流フローを測定することができ、各測定時間における電流の大きさを表す信号を提供することができる。これらの信号は、通常、デジタル形態で提供され、プロセッサ204に直接提供されるか、プロセッサ204によるさらなる処理のために又はメモリ206に記憶されることができる。
【0031】
本発明の一つの実施態様の方法において、試験ストリップ100は、ストリップポート202に係合される。プロセッサ204は、測定器部品の診断試験を包含することができ、試験ストリップの最初のチェックを包含することもできる初期設定ルーチンを遂行する。この最初のチェックにおいて、ユニット214は、作用電極102と対電極104との間に低い電圧、例として数百ミリボルトを印加し、これらの電極間を流れる電流をモニタリングする。この段階では液体がストリップに塗布されず、試薬118が乾燥しており実質的に非導電性であるため、本質的に電流フローはない。電極102と104との間の電流フローが閾値を超えた場合、これは、ストリップの以前の使用からの液でストリップが湿っていることを示す。この状況が存在する場合、プロセッサ204は、ディスプレイ208を通じてエラーメッセージを出し、試験プロセスを終了させる。プロセッサは、その後、ユニット214を作動させて裸電極106と対電極104との間に低い電圧を印加する。ここでもまた、電流が閾値を超えた場合、これは、試験ストリップの以前の使用からの水分の存在を示し、プロセッサは、エラーメッセージを出す。これらの工程が使用後に乾燥した既使用の試験ストリップを検出するものではないことに留意されたい。乾燥した既使用の試験ストリップは、先に述べた工程中に電極間に高い抵抗及び低い又はゼロの電流フローを呈する。以前に既使用で乾燥した試験ストリップは、下記に論じた追加の工程を使用して検出されることができる。
【0032】
エラー状況が発生しない場合、プロセッサは、測定器をレディ状態に置く。このレディ状態において、ユーザーに対し液体サンプルを塗布するように指示するメッセージが表示され、ユニット214は、裸電極106と対電極104との間に低い電圧を印加し、電流フローを繰り返しモニタリングする。分析すべき液体のサンプル、例えば血液又は既知の量のグルコースを含有する対照溶液は、チャネル92の入口開口96に塗布される。電極104と電極106との間の電流フローが閾値よりも上昇したとき、これは、サンプルが試験ストリップに塗布されたことを示す。プロセッサは、タイマーを起動させ、ユニット214に対し作用電極102と検出電極106との間に低い電圧を印加するように指示する。これらの電極間の電流フローが閾値よりも上昇したとき、これは、液が検出電極までチャネル92を満たし、したがって、チャネル92内に設けられた作用電極102及び対電極104のそれらの部分を完全に覆ったことを示す。これの発生に先立ってプロセッサによって起動されたタイマーが最長値に到達した場合、これは、液サンプルが適切にチャネルを満たしていないことを示す。プロセッサは、エラーメッセージを出すか、より多くのサンプル液を塗布するようユーザーに指示することができる。液がチャネルを満たすことに先立ってタイマーが最長値に到達しない場合、システムは、すぐにでもグルコース及びヘマトクリット測定ルーチンができる。
【0033】
液サンプル、例えば血液又は対照液がチャネルを満たし、乾燥試薬118と接触するとき、乾燥試薬の化学成分は、液中に分散する酵素及びメディエータを包含する。サンプル中のグルコースは、酵素を還元させ、酵素は、同様にメディエータを還元させる。したがって、サンプルは、サンプル中のグルコースの濃度に関連する濃度において還元メディエータを含有する。測定器は、一方では作用電極102と他方では対電極104及び検出電極107との間に電位を印加する。プロセスのこの段階では、検出電極107は、対電極104に電気的に接続され、対電極の一部としての役割を果たす。印加された電位は、作用電極と接触するメディエータを酸化させる。換言すれば、還元メディエータは、作用電極に電子を引き渡す。これにより、印加された電位に応答して出力電流フローと本明細書において呼ぶ電流フローが結果として生じる。出力電流フローは、存在する還元メディエータの量、故に液サンプル中のグルコースの量に関連する。当技術分野において公知のように、出力電流フローは、通常、電位の印加中に時間とともに減少する。電位は、単独の連続電位として又は複数のパルスで印加されることができ、電流フローの測定は、単独の測定又は複数の測定を包含することができる。さらなる公知の変形態様において、電位は、交流電位として印加されることができ、交流電流フローが結果として生じる。当技術分野において公知のように、この手の電流フローは、他の要因、例えば温度及びサンプルのヘマトクリット、すなわち、血球によって占められた血液量のパーセントによっても影響を受ける。
【0034】
単なる例までに、図3に示すように、測定器200は、パルス1〜パルス6として示される一連の入力電位(「入力パルス」)からなる入力信号を印加することができる。入力パルスの各々は、時間tA〜tBの期間に順々に印加されることができ、ここでtAは電位(V)が作用電極と対電極との間に印加される開始時間を示し、tBは電位が解除される時間を示す。パルス1〜6の各々は、通常、1秒よりも短い。これらのパルスの各々中に印加された電位は、通常、例として、およそ2分の1ボルト以下である。さらに例示するように、その時間中は作用電極102及び対電極104にわたって印加される電位がない、入力パルスの各々の間の静止期間があることができる。
【0035】
ユニット214は、様々な時間における作用電極102と対電極104との間を流れる電流の大きさからなる出力信号を測定し、これらの値をプロセッサ204に渡す。例として、測定器は、結果として生じる出力電流が所与の時間期間、その最大値にあることができるとき、時間tAにおける入力パルスの印加時又は直後に作用電極と対電極との間を流れる出力電流を最初に測定することができる。測定器は、入力パルスが印加される時間期間中の様々な時間における出力電流の結果として生じる(そして減少していく)値の定期的な測定を継続することができ、最後の測定値とは入力パルスが作用電極及び対電極にわたって解除される時間tBにおけるもの又はおよそその時間におけるものである。
【0036】
作用電極と対電極との間に印加された最後のパルスであるパルス6の終わりの後すぐに、プロセッサ204は、ユニット214に対し裸電極106と試験ストリップ100の一つ以上の他の電極、例えば作用電極102又は対電極104との間に電位を印加し、裸電極と他の電極との間の電流フローをモニタリングするように要求する。ここでもまた、検出電極107は、対電極104の一部としての役割を果たす。以前に言及したように、裸又はヘマトクリット電極106は、作用電極102及び対電極104とは接近していながら、なおも離れて、乾燥試薬を取り込む領域118の外側に位置する。それ故に、裸電極106と作用電極又は対電極との間の電流フローは、その時以前のパルスにおける作用電極と対電極との間の電流フローと同じようにはグルコースの濃度による影響を受けない。裸電極と作用又は対電極との間の電流フローは、体液、例えば血液中のグルコースに対して比較的非感受性であるが、ヘマトクリットに対しては感受性である。
【0037】
図3において、裸電極106と作用又は対電極との間に印加された電位は、パルス7として図示される。パルス7は、時間tC〜tD(例えば、.4秒)の期間印加されることができ、ここでtCは電位が印加される開始時間を示し、tDは電位が解除される時間を示す。裸電極106と作用又は対電極との間に印加された電位は、通常、作用電極と対電極との間に印加された電位よりも大きい。例として、裸電極に印加された電位は、約2〜3ボルトであることができる。
【0038】
図4に示すように、印加された電位に応答して裸電極106と作用電極102又は対電極104のいずれかとの間に結果として得られる出力電流フロー400は、様々な時間において測定器により測定することができる。例として、ユニット214は、パルスの開始時間tC後0.1秒である時間t1において結果として生じる出力電流を最初に測定することができる。測定器は、パルス7が印加される間の様々な時間における出力電流の定期的な測定を継続することができ、パルス7が解除される時間tDにおいて又はおよそその時間において最後の測定値が測られる。
【0039】
プロセッサ204は、他の情報、例えばセンサ212によって測定された周囲温度及びサンプル中のグルコース濃度の値を導き出すための試験ストリップと関係している校正係数と共に、先に記載した測定から得た情報を使用する。例として、グルコース濃度の原推定は、パルス1〜6中に測定された電流のうちの単独の一つから計算されることができ、その一方で、ヘマトクリットの推定は、追加の情報の有無にかかわらず、パルス7中に測定された一つ以上の電流及び周囲温度から導き出すことができる。グルコースの原推定は、ヘマトクリットの推定に基づいてヘマトクリットに対して補正されることができる。補正されたグルコース推定は、要因、例えばパルス1〜6中に測定された様々な電流値及び周囲温度に基づいてさらに精緻化されることができる。グルコース濃度を計算し補正するための多くのアルゴリズムが当技術分野において公知であり、任意のそのようなアルゴリズムを採用することができる。
【0040】
プロセッサ204は、パルス7に応答して結果として生じる出力電流400、すなわち、裸電極106と作用電極102又は対電極104のいずれかとの間への電位の印加からの結果として生じる出力電流の測定に基づいて試験ストリップ100が以前に既使用で乾燥した試験ストリップか否かを判定するルーチンも実行する。
【0041】
この態様に従って、プロセッサ204は、ヘマトクリット電極106と作用電極102又は対電極104との間への電位の印加中の第一の時間において測定された第一の電流値及びそのような電位印加中のもう一つの、より遅い時間において測定された第二の電流値を使用する。例として、図4に示すように、出力電流400は、i7,1と本明細書において呼ぶ、パルス7の始まり時間tCにおいて又はおよそその直後に測定された第一の値を有することができる。例として、パルス7に電位が印加されたおよそ0.1秒後にi7,1を測定することができる。パルス7の始まり時間tDのおよそ0.4秒後、すなわち、パルスの終わりにおいて又はその近辺でi7,4と本明細書において呼ぶ第二の又はもう一つの電流値を測定することができる。図4に示すように、パルス7中の出力電流400は、徐々に減少し、i7,4は、i7,1よりも小さくなる。
【0042】
本開示は、測定時間のいかなる具体的な事例にも限定されず、電位印加中の他の時間において測られた測定を第一の電流値及び第二の電流値として使用することができる。
【0043】
プロセッサ204は、第一の電流値と第二の電流値との間の比を計算する。例として、プロセッサは、第二の電流値を第一の電流値で割った比を計算することができる。先に論じた例において、この比は、(i7,4)/(i7,1)であり、この比を本明細書においてR7と称する。以前に既使用で乾燥した試験ストリップに見られる第一の値と第二の値との間の比は、正常な、未使用の試験ストリップに見られる比とは著しく異なる。例として、測定されたR7値は、血液で再度湿潤された以前に既使用で乾燥した試験ストリップでは、正常な試験ストリップの対応する測定された値と比較したとき、異常に低い。「以前に接種された」試験ストリップという呼称は、以前に液体(例えば、血液又は水)で湿潤され、その後、乾燥した試験ストリップを呼ぶためにも本明細書において使用される。この現象は、図5のグラフ500に例示されており、正常な又は以前に未接種の試験ストリップ、以前に血液を接種され乾燥した試験ストリップ及び以前に所与の周囲温度において水を接種され乾燥した試験ストリップを包含する三つのタイプの血液接種された試験ストリップのi7,4及びR7の測定された値がプロットされている。
【0044】
図5に見てとれるように、三つのタイプの血液接種された試験ストリップの各々に対し測定されたR7値がグラフ500の縦軸上にプロットされており、R7値が結果として生じる対応するi7,4値がグラフの横軸上にプロットされている。とりわけ、多数の正常な(又は以前に未接種の)試験ストリップを使用して血液接種された試験ストリップを試験することによって得た測定されたR7値及びi7,4値が円を使用してプロットされている。以前に血液を接種され乾燥した試験ストリップを使用して血液接種された試験ストリップを試験することによって得た測定されたR7値及びi7,4値は、四角形を使用してプロットされている。最後に、以前に水を接種され乾燥した試験ストリップを使用して血液接種された試験ストリップを試験することによって得た測定されたR7値及びi7,4値は、三角形を使用してプロットされている。グラフ500に見てとれるように、以前に既使用で乾燥した試験ストリップの測定されたR7値(それぞれ、三角形と四角形とによって表される)は、正常な試験ストリップ(円によって表される)の測定されたR7値と比較して一般により低い。
【0045】
図5からわかるように、特定の試験ストリップにおいて血液が試験されるとき、第一の電流値と第二の電流値との間の比の値と固定比閾値THとの間の比較は、正常な試験ストリップと以前に既使用でた試験ストリップとの間のはっきりとした区別を提供する。もう一つの言い方をすれば、このやり方において、血液を使用した特定の試験からの結果として生じる比R7は、固定閾値THと比較される。R7の値がTHより大きい場合、試験は、以前に使用されたことのない正常な試験ストリップで実施されたものと見なされる。R7の値がTHより下である場合、試験は、以前に既使用で乾燥した試験ストリップで実施されたものと見なされる。
【0046】
しかし、裸電極ともう一つの電極との間への電位の印加中に測定された電流値の一つの関数である比閾値を使用して一層はっきりした区別を達成することができる。破線曲線502上の点506によって示される比閾値は、第二の電流値i7,4(504として示される)の関数である。比閾値は、第二の電流値の範囲にわたって第二の電流値i7,4とともに増加し、範囲より上の第二の電流値に対しては一定を保つ。比閾値関数の正確な値の結果として生じる曲線502は、試験ストリップの構成、いつ第一の電流値及び第二の電流値が測定されたかという特定の時間ならびに測定器及び試験ストリップ構成に関連する他の要因によって変動する。しかし、所与の構成の試験ストリップ及び所与の構成の測定器については、比閾値曲線502は、既知の条件、すなわち、使用されたか未使用か、血液か対照液かに合った試験ストリップを使用した実際の測定によって判定されることができる。多くの試験において以前に既使用で乾燥した試験ストリップ及び正常な試験ストリップで得た比及び第二の電流値は、図5の曲線502によって示されるのと同じようにプロットされる。そのようなプロットを使用して、はっきりとした区別を付与する比閾値関数を検査によって判定することができる。一旦比閾値関数(又は複数のそれら)が所与の構成のプロトタイプ測定器を使用してこのように確立されると、大量生産操業において作成された同構成を有する他の測定器に比閾値関数(又は複数のそれら)を記憶することができる。比閾値を画定する関数は、測定器200のメモリ206内に、第二の電流i7,4の所与の値に対する比R7の具体的な閾値を付与するルックアップテーブルとして又は所与の第二の電流i7,4の閾値の計算をできるようにする一式のパラメータとしてのいずれかで記憶される。
【0047】
第二の電流値は、通常、周囲温度とともに変動する。所与の測定器及び試験ストリップ構成について、第二の電流値と周囲温度との間の関係は、一定である。したがって、所与の第二の電流値又は既知の周囲温度において測定されたi7,4は、公称動作温度における正規化された第二の電流値に対応する。測定された第二の電流値及び測定された周囲温度を公称温度における正規化された第二の電流値と関連付けるルックアップテーブルは、実際の試験によって編集され、使用されることができる。あるいは、同情報は、測定された第二の電流値及び測定された周囲温度を公称温度における正規化された第二の電流値と関連付ける正規化関数のパラメータとして提供されることができる。比閾値曲線を判定する試験に使用される第二の電流値又はi7,4は、そのような正規化関数又はルックアップテーブルを使用して正規化される。図5に表されたi7,4の値は、公称動作温度に正規化される。第一の電流値と第二の電流値との間の比又はR7は、通常、周囲温度に対して感受性ではなく、それ故に正規化する必要はない。
【0048】
「i7,4閾値」と本明細書において呼ぶ、第二の電流値i7,4の固定電流閾値508は、以前に血液を接種され乾燥した試験ストリップからの測定(四角形によって示される)と以前に水を接種され乾燥した試験ストリップからの測定(三角形によって示される)との間のさらなる区別のために使用されることができる。ここでもまた、i7,4閾値は、計器及び試験ストリップの構成に依存するが、所与の構成の場合は固定される。所与の構成のi7,4閾値は、先に論じたように、一式の既知のサンプルの実際の測定によって判定されることができる。ここでもまた、i7,4の値は、先に論じたように、望ましくは正規化される。i7,4の閾値は、測定器のメモリ206に記憶もされる。
【0049】
結果として、i7,4閾値508を超えるi7,4測定値を提供する乾燥した試験ストリップは、以前に水を接種されそれ以降に乾燥した、接種され乾燥した試験ストリップであると判定されることができる。そのような試験ストリップは、i7,4測定値、例として、i7,4閾値508以下である、を提供する他の乾燥した試験ストリップとは区別されることができ、以前に血液を接種されそれ以降に乾燥した、接種され乾燥した試験ストリップであると判定されることができる。
【0050】
なおももう一つの態様において、測定器200は、所与の血液が接種された試験ストリップが正常な試験ストリップか乾燥した試験ストリップかを判定するのみならず、試験ストリップが対照試験ストリップか否かを判定するように構成されることができる。対照試験ストリップは、本明細書において記載するように、血液ではなく、対照溶液、例えば、例として、対照グルコース水溶液を接種された、正常な、以前に未接種の試験ストリップである。これから図6を参照しながらこの態様を記載する。
【0051】
図6は、図5と似ているが、図6ではさらに血液ではなく対照溶液を接種された正常な試験ストリップを試験することから得た多数の測定値(楕円を使用して示される)を例示する。図6に例示されるように、正常な、以前に未使用の試験ストリップを使用する対照溶液の測定(楕円によって表される)は、血液接種された正常な試験ストリップ及び血液接種され乾燥した試験ストリップの両方からの結果として生じる測定とは区別されることができる。そのような区別は、比閾値曲線502及び電流閾値508の両方に基づくことができる。より詳細には、所与の試験ストリップは、所与のi7,4電流値に対応する測定されたR7値が所与のi7,4電流値の比閾値曲線502から判定された適用可能なR7値より大きく、一方で、同時に所与のi7,4電流値が電流閾値508よりも小さいとき、対照試験ストリップであると判定されることができる。これは、血液の測定から得たものより下の裸電極106と他の電極との間の電流値をもたらすように対照溶液の測定を構成することができるため可能である。とりわけ、対照試験ストリップは、特定の対照溶液を接種された正常な試験ストリップを試験することによって得た第二の電流値又はi7,4値が血液を接種された正常な試験ストリップを試験することからの結果として生じる第二の電流値又はi7,4値よりも一般に低く、一方で、同時に、そのような対照試験ストリップを試験することから得た測定されたR7値が以前に血液又は水を接種されそれ以降に乾燥した、乾燥した試験ストリップを試験することからの結果として生じるものより大きくなるように設計することができる。
【0052】
電流閾値508が対照溶液を接種された対照試験ストリップ(楕円)と血液を接種された正常な試験ストリップ(円)とを区別できることが図6より言及される。さらに、同電流閾値508は、以前に血液を接種され乾燥した試験ストリップ(四角形)と以前に水を接種され乾燥した試験ストリップ(三角形)とを区別することもできる。しかし、これが限定ではなく、他の実施態様においては単独の電流閾値508の代わりに二つ(又はそれ以上)の異なる電流閾値があり、対照試験ストリップと正常な試験ストリップとを識別するためにそれらの一つを使用し、一方で以前に血液を接種され乾燥した試験ストリップと以前に水を接種され乾燥した試験ストリップとを区別するために他を使用することができることが理解される。
【0053】
先に論じた方法中の動作において、プロセッサ204は、センサ212から周囲温度を得て、ユニット214から測定された第一の電流値i7,1及び第二の電流値i7,4を得る。プロセッサは、測定された第一の電流値と第二の電流値との間の測定された比R7を計算する。プロセッサは、先に論じたように、測定された第二の電流値を正規化された値と関連付ける関数又はルックアップテーブルを使用してi7,4の正規化された値も判定する。正規化された第二の電流値i7,4を使用して、プロセッサは、先に論じたように、閾値関数502を画定するルックアップテーブル又はパラメータを使用して比R7の適用可能な限界比値506を判定する(図5)。
【0054】
プロセッサは、その後、測定された比R7と閾値の適用可能な限界比値とを比較する。プロセッサは、正規化された第二の電流値i7,4とi7,4閾値508との比較もする。測定された比R7が比閾値曲線502の適用可能な限界比値506より下の場合、プロセッサは、測定を測るために使用された試験ストリップが以前に既使用で乾燥した試験ストリップであり、正常な試験ストリップではないことを判定する。この判定に応答して、プロセッサは、ディスプレイ208を通じてユーザーにエラー信号を出し、ディスプレイ上への測定されたグルコース値の表示を抑制し、又はその両方をする。測定されたR7値が比閾値曲線502の適用可能な限界比値506より大きい場合、プロセッサは、試験に使用された試験ストリップが正常な、未使用の試験ストリップであり、乾燥した試験ストリップではないと判定する。このようなケースでは、プロセッサは、ディスプレイ208を作動させて、先に論じた警告なしにグルコース値を表示させる。測定された比R7値が比R7の適用可能な限界比値506と同じ場合、プロセッサは、望ましくは試験ストリップを乾燥した試験ストリップとして扱う。他の変形態様において、プロセッサは、試験ストリップを正常な試験ストリップとして扱うことができ、又は試験ストリップが既使用で乾燥した試験ストリップか正常な試験ストリップかの判定を行うことができないという警告を出すことができる。
【0055】
第二の電流i7,4の正規化された値がi7,4閾値より下であり(又はより小さく)、同時に、測定されたR7値が比閾値曲線502の適用可能な限界比値より上である(又はより大きい)場合、プロセッサは、試験が血液ではなく対照溶液(例えばグルコース水溶液)を接種された正常な試験ストリップで実施されたことを判定する(図6)。プロセッサは、ディスプレイを作動させ、血液ではなく、対照溶液が試験されたことを示す。
【0056】
先に記載した実施態様では、乾燥した試験ストリップに以前に接種されたのが血液であるか水であるかにかかわらず、以前に既使用で乾燥した試験ストリップを正しく検出することが認められた。本発明は動作のいかなる理論によっても限定されることはないものの、乾燥した試験ストリップの以前の接種が既定の領域118内の作用電極102及び対電極104上に提供された化学物質を裸電極106上に再分配すると考えられる。以前の接種中の作用電極102及び対電極104から裸電極106への化学物質のこの再分配又は浸出は、裸電極に印加されたパルス、すなわち、パルス7に応答して電流に異常信号を引き起こすものと考えられる。
【0057】
以前に既使用で乾燥した試験ストリップを使用する血液の試験が誤ったグルコース値を提供することがあるため、以前に既使用で乾燥した試験ストリップを検出する能力は、有益な安全フィーチャを提供する。それに、このフィーチャは、試験ストリップ又は測定器への追加の物理的要素なしに、試験中にいかなる追加の測定を測ることなく提供されることができる。先に言及したように、裸電極への電位の印加中の電流測定は、ヘマトクリットの判定のために既に取得され、使用される。したがって、追加の安全は、いかなる相当なコスト又はいかなる知覚可能な遅延も試験に追加することなく提供されることができる。関与する計算をプロセッサが遂行するために要する追加の時間は、たとえあったとしてもわずかである。
【0058】
先に論じたフィーチャの多くのバリエーション及び組み合わせを採用することができる。例として、先に論じた方法において、第一の電流値と第二の電流値との間の比は、第一の電流値に対する第二の電流値の比、すなわち(i7,4)/(i7,1)又はR7である。逆比を採用することができる。したがって、プロセッサは、第二の電流値に対する第一の電流値の比又は先に論じた例における(i7,1)/(i7,4)を計算することができる。逆比を採用する場合、正常な試験ストリップを使用する試験は、以前に接種され乾燥した試験ストリップを使用する試験よりもより低い値をもたらす。先に論じた実施態様において、比閾値は、第二の電流値の関数である。しかし、比閾値は、第一の電流値又は裸電極ともう一つの電極との間への電位の印加中に測定されたもう一つの電流値の関数として選択されることもできる。
【0059】
先に論じた実施態様において、裸電極ともう一つの電極との間への電位の印加中の第一の時間において測定された第一の電流と同電位印加中のより遅い時間において測定された第二の電流との間の比を採用して、正常な試験ストリップと乾燥した試験ストリップとを区別する。しかし、裸電極ともう一つの電極との間の電流フローの一つ以上の他のパラメータを採用することができる。裸電極ともう一つの電極との間に印加された電位は、先の例において印加された一定直流電位ではなく、交流又は変動電位であることができる。
【0060】
図3に示される例において、裸電極ともう一つの電極との間の電位(パルス7)は、作用電極と対電極との間の電位(パルス1〜パルス6)が印加された後で印加される。他の実施態様において、電位は、作用電極と対電極との間の電位の印加の前に裸電極に印加されることができる。なおもさらに、電位は、作用電極と対電極との間の電位の印加間の合間中に(例えば、図3の例におけるパルス1とパルス2との間の静止期間中に)裸電極に印加されることができる。裸電極への電位の印加は、これが不確定の結果を結果として生じる可能性があるため、望ましくは他のパルスの印加と同時に発生しない。
【0061】
先に論じた実施態様において、分析対象物は、グルコースであり、試験ストリップに塗布される分析対象物を含有する対象となる液体は、血液である。しかし、本発明は、他の液体中の他の分析対象物の測定に適用されることができる。そのような他の測定に使用される試験ストリップは、他の公知の試薬、最も典型的には分析対象物と反応する酵素及び酵素との使用に適切な酸化還元電位を有するメディエータを含有する。これらの試薬は、先に論じたのと同じように、乾燥形態で試験ストリップの領域に提供される。
【0062】
他の実施態様において、電気化学的測定は、電極間の電位以外の入力信号の印加及び電極間を通る電流以外の出力信号の測定を包含することができる。例として、電流は、入力信号として印加されることができ、電位は、出力信号として測定されることができる。もっと他の実施態様において、試験ストリップは、電気化学的測定以外の測定を実施するように配置されることができる。
【0063】
先に論じた実施態様において、裸電極106(図1)は、対電極104及び作用電極102の近位に設けられる。しかし、裸電極は、作用電極及び対電極より遠位にチャネル92に沿って設けられることができる。裸電極が試験ストリップ内に導入される液体によって湿潤される位置にあり、製造中に塗布される乾燥試薬によって覆われた領域118の外側にあるのであれば、他の位置を採用することもできる。望ましくは、裸電極は、作用電極及び対電極に近接してある。
【0064】
もっと他の実施態様において、試験ストリップは、乾燥試薬によって覆われた領域の外側に両方が設けられた二つ以上の裸電極を包含することができる。裸電極の両方は、試験ストリップ内に導入される液体によって湿潤される位置に設けられる。この実施態様において、裸電極ともう一つの電極との間に印加された電位は、二つの裸電極間に印加された電位であることができる。ここでもまた、以前に既使用で乾燥した試験ストリップが採用される場合、そのような電位に応じた電流フローの一つ以上のパラメータは、異なる。
【0065】
対照溶液閾値508を参照しながら先に論じたように(図6)、対照溶液を使用する試験と血液を使用する試験との区別を提供することは重要ではない。このフィーチャは、全体的に省くことができる。
【0066】
特定の実施態様を参照しながら本開示を例示してきたものの、これらの例が単に本開示の原理及び適用の事例的なものであることが理解される。また、事例的実施態様に対して多くの他の変形を行うことができることが理解される。しかし、これら及びあれらの他の配置は、請求の範囲に定義されるような本開示の本質及び範囲を逸することなく考案されることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6