(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水性の光触媒担持用接着層は、接着層に使用する樹脂によっては光触媒活性が必ずしも高くならない場合があった。従って本願発明は、十分な光触媒活性を発揮する水性接着層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、接着層形成用組成物に特定の水性シリコーン変性樹脂エマルジョンを用いることで高い光触媒活性が得られることを見出した。さらにこれにカップリング剤を添加することで、白化を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)水性シリコーン変性樹脂を含む接着層を介して担体に光触媒層を有する光触媒担持構造体であって、
該水性シリコーン変性樹脂が、
(a)アルコール性水酸基を有する有機溶媒、(b)加水分解性シリル基を有する重合性単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤及び加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(c)酸基を有する重合性単量体、を含む混合物中で、重合性単量体を重合させることにより、加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体を調製する工程を含む方法により得られる樹脂であり、かつ塩基性化合物で部分的に又は完全に中和されていてもよい酸基を有する樹脂である、光触媒担持構造体、
(2)水性シリコーン変性樹脂が、
加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体と、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンとを縮合反応させる工程を含む方法により得られる樹脂である、(1)に記載の光触媒担持構造体、
(3)水性シリコーン変性樹脂が、
加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体の存在下で、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するケイ素化合物の加水分解縮合反応を行う工程を含む方法により得られる樹脂である、(1)に記載の光触媒担持構造体、
(4)水性シリコーン変性樹脂が、
ケイ素原子に結合した水酸基及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンの存在下で、加水分解性シリル基を有する重合性単量体及び酸基を有する重合性単量体を含む混合物を重合させる工程を含む方法により得られる樹脂である、(1)に記載の光触媒担持構造体、
(5)酸基がカルボキシル基である、(1)〜(4)のいずれかに記載の光触媒担持構造体、
(6)水性シリコーン変性樹脂が、重合単位として(メタ)アクリル酸を含むものである、(5)に記載の光触媒担持構造体、
(7)水性シリコーン変性樹脂中におけるケイ素の含有量が、二酸化ケイ素換算で10mg/g以上である、(1)〜(6)のいずれかに記載の光触媒担持構造体、
(8)水性シリコーン変性樹脂の重量平均分子量が10
5以上である、(1)〜(7)のいずれかに記載の光触媒担持構造体、
(9)水性シリコーン変性樹脂が、さらに水性エマルジョン中でカップリング剤と混合する工程を含む方法により得られる樹脂である、(1)〜(8)のいずれかに記載の光触媒担持構造体、
(10)カップリング剤が、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系のカップリング剤から選ばれる少なくとも1種である、(9)に記載の光触媒担持構造体、及び
(11)カップリング剤がキレート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種である、(9)に記載の光触媒担持構造体、に関する。また、
(12)水性シリコーン変性樹脂のエマルジョンを含有する、光触媒層を担体に担持するための接着層形成用組成物であって、
該水性シリコーン変性樹脂が、
(a)アルコール性水酸基を有する有機溶媒、(b)加水分解性シリル基を有する重合性単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤及び加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(c)酸基を有する重合性単量体、を含む混合物中で、重合性単量体を重合させることにより、加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体を調製する工程を含む方法により得られる樹脂であり、かつ塩基性化合物で部分的に又は完全に中和されていてもよい酸基を有する樹脂である、接着層形成用組成物、
(13)水性シリコーン変性樹脂が、
加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体と、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンとを縮合反応させる工程を含む方法により得られる樹脂である、(12)に記載の接着層形成用組成物、
(14)水性シリコーン変性樹脂が、
加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体の存在下で、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するケイ素化合物の加水分解縮合反応を行う工程を含む方法により得られる樹脂である、(12)に記載の接着層形成用組成物、
(15)水性シリコーン変性樹脂が、
ケイ素原子に結合した水酸基及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンの存在下で、加水分解性シリル基を有する重合性単量体及び酸基を有する重合性単量体を含む混合物を重合させる工程を含む方法により得られる樹脂である、(12)に記載の接着層形成用組成物、
(16)酸基がカルボキシル基である、(12)〜(15)のいずれかに記載の接着層形成用組成物、
(17)水性シリコーン変性樹脂が、重合単位として(メタ)アクリル酸を含むものである、(16)に記載の接着層形成用組成物、
(18)水性シリコーン変性樹脂におけるケイ素の含有量が、二酸化ケイ素換算で10mg/g以上である、(12)〜(17)のいずれかに記載の接着層形成用組成物、
(19)水性シリコーン変性樹脂の重量平均分子量が10
5以上である、(12)〜(18)のいずれかに記載の接着層形成用組成物、
(20)さらにカップリング剤を含有することを特徴とする、(12)〜(19)のいずれかに記載の接着層形成用組成物、
(21)カップリング剤が、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系のカップリング剤から選ばれる少なくとも1種である、(20)に記載の接着層形成用組成物、及び
(22)カップリング剤がキレート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種である、(20)に記載の接着層形成用組成物、に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性シリコーン変性樹脂を含む接着層を有する光触媒担持構造体は、光触媒活性及び耐候性に優れている。また接着層にカップリング剤を併用すれば、白化せず、耐候性、光沢度に関してさらに優れたものとなる。特に事前の紫外線照射(初期化)をしなくても優れた光触媒活性を有する。
本発明の接着層形成用組成物は、本発明の光触媒担持構造体の接着層を形成するのに適しており、有害な揮発性有機溶媒を含まないので、室内等の現場での塗工に適している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光触媒担持構造体は、担体と、水性シリコーン変性樹脂を含む接着層を介して前記担体に担持された光触媒層とを設けた構造を有する光触媒担持構造体であって、前記水性シリコーン変性樹脂が、
(a)アルコール性水酸基を有する有機溶媒、(b)加水分解性シリル基を有する重合性単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤及び加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(c)酸基を有する重合性単量体、を含む混合物中で、重合性単量体を重合させることにより、加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体を調製する工程を含む方法により得られる樹脂であり、かつ塩基性化合物で部分的に又は完全に中和されていてもよい酸基を有する樹脂である、ことを特徴とするものである。
【0010】
前記のアルコール性水酸基を有する有機溶剤としては、水溶性のアルコール類、または水溶性のグリコール・グリコールエーテル類が好ましい。水溶性のアルコール類としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、又はイソプロパノール等が挙げられる。また水溶性のグリコール・グリコールエーテル類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、又は3−メチル−3−メトキシブタノール等が挙げられる。
【0011】
前記の酸基とは、水中で酸性を示す酸基、又は水中で酸基に容易に変換される酸無水基若しくはエステル基(ブロックされた酸基)を指す。具体的には、酸基として、カルボキシル基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、亜リン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ブロックされた酸基として、カルボン酸無水基、リン酸無水基、スルホン酸無水基、カルボン酸・スルホン酸混合酸無水基、シリルエステル基、tert−ブチルエステル基や1−アルコキシエチルエステル基等のエステル基としてブロックされた、カルボキシル基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、亜リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
このうち、カルボキシル基が特に好ましい。
【0012】
前記の加水分解性シリル基を有する重合性単量体は、アルコキシ基、アシルオキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等の1ないし3個の加水分解性基がケイ素原子に直接結合してなる加水分解性シリル基と、ビニル基等の重合性官能基とを併有する化合物である。
加水分解性シリル基を有する重合性単量体の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0013】
前記の加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤は、上述のような加水分解性シリル基と、メルカプト基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のような遊離ラジカルにより活性化される基とを併有する化合物である。
加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジクロロシラン、3−メルカプトプロピルジメチルクロロシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0014】
前記の加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤は、上述のような加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤である。
加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−トリメトキシシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−トリエトキシシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−ジメトキシメチルシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−ジエトキシメチルシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等の活性水素含有基を有するアゾ系開始剤と、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシシラン等のイソシアナートシランとを反応せしめて得られる、アミド結合あるいはウレタン結合を介して加水分解性シリル基が結合したアゾ系化合物;あるいは、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリメトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリエトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジメトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジエトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−3−メチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−4−エチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエート等の過酸化物が挙げられる。
【0015】
前記の水性シリコーン変性樹脂の具体的な製造方法は、
(a)アルコール性水酸基を有する有機溶媒、(b)加水分解性シリル基を有する重合性単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤及び加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(c)酸基を有する重合性単量体、を含む混合物中で、重合性単量体を重合させることにより、加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体を調製する工程を含むものである。
さらに具体的には、上記工程と、シリコーン構造を有する化合物を縮合させる工程の少なくとも2工程を含むものである。
上記の2工程は、別個に実施し、両工程で得られた重合物を縮合させる工程を加えてもよい。
また、一方の工程をまず実施し、それによって得られた重合体の存在下で、他方の工程を実施してもよい。例えば、(a)アルコール性水酸基を有する有機溶媒と、(b)加水分解性シリル基を有する重合性単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤及び加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(c)酸基を有する重合性単量体を含む混合物を重合させ、得られた重合物の存在下で、シリコーン構造を有する化合物を縮合させてもよい。シリコーン構造を有する化合物を縮合させて得られたポリシロキサンの存在下で、(a)アルコール性水酸基を有する有機溶媒と、(b)加水分解性シリル基を有する重合性単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤及び加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(c)酸基を有する重合性単量体を含む混合物を重合させるとともに、これによって得られた重合体とポリシロキサンとの縮合を行ってもよい。
また、上記の2工程を並行して実施してもよい。例えば、(a)アルコール性水酸基を有する有機溶媒と、(b)加水分解性シリル基を有する重合性単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤及び加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも1種、及び(c)酸基を有する重合性単量体を含む混合物を重合させる工程の途中で、シリコーン構造を有する化合物をさらに添加し、これを縮合させる工程をともに実施してもよい。
【0016】
この中で好ましい製造方法としては、以下の3種がある。
(A)加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体と、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンとを各々準備する。これらを混合し縮合反応させることにより、シリコーン変性させて、目的の水性シリコーン変性樹脂を得る。
(B)加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体の存在下で、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するケイ素化合物の加水分解縮合反応を行うことにより、目的の水性シリコーン変性樹脂を得る。
(C)ケイ素原子に結合した水酸基及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンの存在下で、アルコール性水酸基を有する有機溶媒、加水分解性シリル基を有する重合性単量体及び酸基を有する重合性単量体を含む混合物を重合させることにより、目的の水性シリコーン変性樹脂を得る。
【0017】
(A)及び(B)の方法における、加水分解性シリル基及び酸基を有する重合体は、好ましくは、加水分解性シリル基を有する重合性単量体及び酸基を有する重合性単量体を含む混合物を重合させてなるものである。
【0018】
前記の重合性単量体として、好ましくは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する単量体、すなわちビニル系単量体が挙げられる。
【0019】
前記の加水分解性シリル基として、好ましくはアルコキシシリル基が挙げられる。
【0020】
また、(C)の方法における、加水分解性シリル基を有する重合性単量体として、好ましくは、アルコキシシリル基を有するビニル系単量体、具体的には、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられ、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0021】
(C)の方法における、酸基を有する重合性単量体は、好ましくは、前記に例示した酸基を有するビニル系単量体、より好ましくは、カルボキシル基又はカルボン酸無水基を有するビニル系単量体である。具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びその半エステル、フマル酸及びその半エステル、マレイン酸、その半エステル及びその無水物が挙げられ、この中でアクリル酸とメタクリル酸が好ましい。
【0022】
前記の「加水分解性シリル基を有する重合性単量体及び酸基を有する重合性単量体を含む混合物」には、既述の重合性単量体以外に、これらと共重合可能な重合性単量体を含有してもよい。このような重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート単量体;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アジピン酸モノビニル、コハク酸モノビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン等のビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;ブタジエン、エチレン等が例示される。
このうち、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びスチレンから選ばれる少なくとも1種が含まれることが好ましい。
【0023】
(A)及び(C)の方法における、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンは、好ましくは、一般式(R
1)
nSi(OR
2)
4−n(式中、R
1は水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数4〜5のヘテロアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、又は炭素数1〜10の(メタ)アクロイルオキシアルキル基を表し、R
2は、炭素数1〜8のアルキル基又はアシル基、若しくは水素原子を表し、nは、1又は2を表し、nが2の場合、R
1同士は、同一でも相異なっていてもよく、また、R
1同士で結合して環を形成してもよく、R
2同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される化合物、又は環状ポリシロキサンを、縮合してなる重合体である。
【0024】
(B)の方法における、1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有するケイ素化合物は、好ましくは、一般式(R
1)
nSi(OR
2)
4−n(式中、R
1は水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数4〜5のヘテロアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、又は炭素数1〜10の(メタ)アクロイルオキシアルキル基を表し、R
2は、炭素数1〜8のアルキル基又はアシル基、若しくは水素原子を表し、nは、1又は2を表し、nが2の場合、R
1同士は、同一でも相異なっていてもよく、また、R
1同士で結合して環を形成してもよく、R
2同士は、同一でも相異なっていてもよい。ただし、R
2で表される基のうち炭素数1〜8のアルキル基及びアシル基の個数は2以上である。)で表される化合物である。
【0025】
また前記の酸基は、さらに塩基性化合物によって、部分的に、又は完全に中和されていることが好ましい。この中和のための反応工程は、具体的には、他の反応への影響を勘案して、後記の重合性単量体の重合前、重合中、若しくは重合後のいずれかに行うことができるが、重合後に行うことが好ましい。
【0026】
前記塩基性化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属を含む化合物、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属を含む化合物、アンモニア、1〜3級アミン化合物、4級アンモニウム化合物等が挙げられる。このうちで1〜3級アミン化合物が好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0027】
本発明に用いられる水性シリコーン変性樹脂においては、さらに、分子量及びケイ素の含有量が特定範囲に限定されることが好ましい。
【0028】
前記水性シリコーン変性樹脂中におけるケイ素の含有量は、二酸化ケイ素換算で10mg/g以上であることが好ましく、50mg/g以上であることがより好ましい。これにより、光触媒活性が高く維持される。ケイ素の含有量は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP−AES)等の方法により測定することができる。
【0029】
本発明に用いられる水性シリコーン変性樹脂の重量平均分子量は、10
5以上であることが好ましく、10
6以上であることがより好ましい。これにより、接着層に含まれる低分子量有機物が光触媒層最表面にブリードアウトしにくくなり、光触媒による分解に使われないため、光触媒の活性が担保されると考えられる。なお、水性シリコーン変性樹脂の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0030】
本発明に用いられる水性シリコーン変性樹脂として、具体的には、DIC社製のセラネート(登録商標)WSA−104、WSA−1060、WSA−1070、WHW−822、MFGコートSD−101等を好ましく例示することができ、また特開平10−36514号公報、特開平10−36515号公報、特開平11−92536号公報等に記載された方法で製造される水性樹脂も好ましい。
このうち、DIC社製のセラネートWSA−104及びWSA−1070が特に好ましい。
【0031】
本発明に用いられる水性シリコーン変性樹脂は、以上の条件に加え、さらに水性エマルジョン中でカップリング剤と混合する工程を含む方法により得られる樹脂であることが好ましい。
このカップリング剤との反応により、水性シリコーン樹脂の分子が架橋されることにより、光触媒担持構造体表面の白化が防止され、耐候性、光沢度ともさらに優れたものとなる。
【0032】
前記のカップリング剤と混合する工程は、水性シリコーン変性樹脂を水性エマルジョンとした後に、所定量のカップリング剤を添加し混合する工程である。本工程は、水性シリコーン変性樹脂を水性エマルジョンとした後に行えばよく、必要に応じてさらに実施される、その他の成分を混合する工程との前後を問わない。
【0033】
前記カップリング剤は、本発明に用いられる水性シリコーン変性樹脂のポリシロキサン部分の加水分解性基と反応して架橋する化合物であり、シラン系、ジルコネート系、チタネート系、アルミネート系の各カップリング剤が知られている。
このうち、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤及びジルコネート系カップリング剤が好ましい。
またキレート系カップリング剤であるものが好ましい。キレート系カップリング剤とは、金属キレート化合物であるカップリング剤であり、より具体的には、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等から選ばれる多価金属原子に、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等から選ばれる多座配位子が配位した化合物である。複数種の配位子が配位していてもよく、また金属はアルコキシドを形成していてもよい。このうち、アセチルアセトナート系カップリング剤が特に好ましい。
【0034】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート等のチタンアルコキシド;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレート等がある。
【0035】
アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムエチレート等のアルミニウムアルコレート;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトナート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、ジエトキシモノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−i−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシモノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシモノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、エトキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、n−プロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、n−ブトキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム等のアルミニウムキレート;環状アルミニウムオリゴマー等がある。
【0036】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、ジ−n−ブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジルコニウムテトラキス(エチルアセトアセテート)、ジエトキシビスアセチルアセトナートジルコニウム、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシモノエチルアセトアセテートジルコニウム、トリ−n−ブトキシモノアセチルアセトナートジルコニウム等がある。
【0037】
アセチルアセトナート系カップリング剤としては、前記のチタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、及びジルコネート系カップリング剤のうちアセチルアセトナート系カップリング剤であるものが挙げられる。
【0038】
また本発明の光触媒担持構造体における接着層は、前記した、塩基性化合物で部分的に又は完全に中和されていてもよい酸基を有する水性シリコーン変性樹脂のエマルジョンを含有する、光触媒層を担体に担持するための接着層形成用組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0039】
本発明の、光触媒層を担体に担持するための接着層形成用組成物は、前記の水性シリコーン変性樹脂のエマルジョンを含有することを特徴とする。
本発明の接着層形成用組成物には、さらに前記のカップリング剤を含有することが好ましい。カップリング剤としてはチタネート系カップリング剤及びアルミネート系カップリング剤が好ましく、具体的には前記のカップリング剤が挙げられる。
【0040】
本発明の接着層形成用組成物中、水性シリコーン変性樹脂は、固形分として、1〜30質量%の範囲で用いるのが好ましく、3〜20質量%の範囲で用いるのがより好ましい。水性シリコーン変性樹脂の量が少ないと、接着層形成用組成物を担体に塗工した際、ハジキが発生し、良好な塗膜を形成することができない。一方、多すぎると、塗膜に刷毛筋が生じる。
【0041】
本発明の接着層形成用組成物中、カップリング剤は、水性シリコーン変性樹脂の固形分1質量部に対し、0.01〜0.3の範囲で用いるのが好ましい。
【0042】
本発明の接着層形成用組成物には、前記水性シリコーン変性樹脂のエマルジョン、及び好ましくは前記カップリング剤のほかに、通常、水系塗料などに添加配合される成分、例えば、成膜助剤、有機溶媒、増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、染料、防腐剤などを任意に配合することができる。特に成膜助剤を配合するのが好ましい。
【0043】
成膜助剤としては、特にエマルジョンの成膜性を向上させるものであれば、特に制限されず、具体的には、一般式:HO−(CH
2CH
2O)
m−R
3(式中、R
3は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、mは1〜5の整数を示す)で表される(ポリ)エチレングリコール又は(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル、一般式:R
5CO−O−(CH
2CH
2O)
q−R
4(式中、R
4は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、qは1〜5の整数、R
5は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す)で表わされる(ポリ)エチレングリコールエステル又は(ポリ)エチレングリコールエーテルエステル、一般式:HO−(C
3H
6O)
r−R
6(式中、R
6は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、rは1〜5の整数を示す)で表される(ポリ)プロピレングリコール又は(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、一般式:R
8CO−O−(C
3H
6O)
s−R
7(式中、R
7は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、sは1〜5の整数、R
8は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す)で表される(ポリ)プロピレングリコールエステル又は(ポリ)プロピレングリコールエーテルエステル等を好ましく例示することができる。より具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルなどのエーテル類;エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル類等、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3− モノイソブチレート等を例示することができる。これら成膜助剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。成膜助剤の使用量は、接着層形成用組成物中、2〜15質量%の範囲で用いるのが好ましい。上記の範囲内であれば、接着層は透明になる。
【0044】
また、エマルジョンの基板に対する濡れ性を改善するために、あるいはカップリング剤等の水難溶成分を添加する際の溶媒として、有機溶媒を併用してもよい。有機溶媒の種類としては、水溶性の溶媒が好ましく、具体的には、低級アルコール類を、さらに具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等を例示することができる。用いる溶媒量は、接着層形成用組成物中、10〜70質量%の範囲で用いるのが好ましく、40〜60質量%の範囲で用いるのがより好ましい。溶媒の添加量が少ないと、塗工した際、ハジキが発生し、良好な塗膜を形成することができない場合がある。一方、エタノールの添加量が多いと、接着層形成用組成物を重ね塗りした際、下塗りした層が削れることがある。
【0045】
本発明の光触媒担持構造体における接着層の厚さは、0.5〜5μmが好ましく、1〜3μmがより好ましい。
【0046】
本発明の光触媒担持構造体に用いる担体の材質としては、特に制限されないが、具体的には、ガラス、樹脂、再生繊維、天然繊維、金属、木材等を例示することができる。
担体の形状は、特に限定されるものではなく、フィルム状、板状、管状、球状、繊維状など、いかなる形状であってもよい。光触媒層を強固に担持するためには、その厚さ(直径)は10μm以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の光触媒担持構造体における光触媒層は、金属酸化物ゲル又は金属水酸化物ゲルを含有する光触媒粒子複合体から構成されている。
光触媒層中の金属酸化物ゲル又は金属水酸化物ゲルは、光触媒粉末を固着し、接着層と強固に接着させる効果を有している。また、金属酸化物ゲル又は金属水酸化物ゲルは、多孔質であることから、吸着性を有し、光触媒活性を高める効果もある。光触媒層中の金属酸化物ゲル又は金属水酸化物ゲルの含有量は、25〜95質量%であることが好ましい。
光触媒粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化ニオブ等からなるものが挙げられ、特に酸化チタン又は酸化タングステンからなるものが好ましい。
前記光触媒層を形成するための組成物としては、日本曹達社製のビストレイター(登録商標)シリーズの光触媒層用コーティング剤が例示される。
【実施例】
【0048】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0049】
[実施例1](700C/104)
接着層形成用組成物として、DIC社製水性無機有機ハイブリッド樹脂セラネートWSA−104(固形分40質量%、重量平均分子量1.41×10
6、ケイ素含有量(二酸化ケイ素換算)100mg/g、アクリル樹脂とポリシロキサンの複合樹脂)10gに水9g、変性アルコール21g、界面活性剤0.5g、及びジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル1gを混合して、接着層形成用組成物を調製した。
光触媒層形成用組成物としては、ビストレイターNDC−700C(日本曹達社製、光触媒として酸化タングステン含有)を用いた。
担体としてのガラス板の表面に、バーコート成膜により、接着層形成用組成物を1回塗布し、100℃で乾燥させて厚さ約1.0μmの接着層を形成し、さらに光触媒層形成用組成物をバーコート成膜により塗布し厚さ約0.5μmの光触媒層を形成し、100℃で加熱乾燥して、光触媒担持構造体を作製した。
【0050】
[実施例2](700C/1070)
接着層形成用組成物の調製に、セラネートWSA−104に代えて、DIC社製水性無機有機ハイブリッド樹脂セラネートWSA−1070(固形分40質量%、重量平均分子量1.50×10
6、ケイ素含有量(二酸化ケイ素換算)100mg/g、アクリル樹脂とポリシロキサンの複合樹脂)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0051】
[比較例1](700C/250AW)
旭化成ケミカルズ社製ポリデュレックスG627S(固形分46質量%、重量平均分子量1.47×10
6、ケイ素含有量(二酸化ケイ素換算)5.7mg/g、シリコーン変性アクリル樹脂)43.5質量部、エタノール30質量部、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル2.6質量部、及び水(残部)を混合して、接着層形成用組成物を調製した。
接着層形成用組成物以外については、実施例1と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0052】
[試験例1]
上記で得た光触媒担持構造体に、紫外線強度1mW/cm
2のブラックライトの光を72時間照射し、次いで容量4リットルのパイレックス(登録商標)製ガラス容器中に設置した。この容器中に空気とアセトアルデヒドの混合ガスをアルデヒド濃度が50ppmとなるように加えた。次いで、該試料に波長380nm以下をカットした蛍光灯の光(試料表面での照度8000Lx)を一定時間照射後、容器内部のアルデヒドガス濃度をガスクロマトグラフィーにより測定し、その減少量により光触媒活性評価をした。ブランクとしては、担体のガラス板を用いた。評価結果を
図1に示す。図中の700C/104は実施例1、700C/1070は実施例2、700C/250AWは比較例1を表す。
【0053】
[試験例2]
上記で得た光触媒担持構造体を、容量4リットルのパイレックス(登録商標)製ガラス容器中に設置した。この容器中に空気とアセトアルデヒドの混合ガスをアルデヒド濃度が50ppmとなるように加えた。次いで該試料に、波長380nm以下をカットした蛍光灯の光(試料表面での照度8000Lx)を一定時間照射後、容器内部のアルデヒドガス濃度をガスクロマトグラフィーにより測定し、その減少量により光触媒活性評価をした。ブランクとしては、担体のガラス板を用いた。評価結果を
図2に示す。図中の700C/104は実施例1、700C/1070は実施例2、700C/250AWは比較例1を表す。
【0054】
以上から、本発明の光触媒担持構造体は、可視光照射時に、従来の水性シリコーン変性樹脂を含む接着層を用いた光触媒担持構造体に比較して優れた光触媒活性を有すること、特に事前の紫外線照射(初期化)をしなくても光触媒活性を有することが明らかになった。
【0055】
[実施例3](360C/104)
接着層形成用組成物として、DIC社製水性無機有機ハイブリッド樹脂セラネートWSA−104(固形分40質量%、重量平均分子量1.41×10
6、ケイ素含有量(二酸化ケイ素換算)100mg/g)10gに水9g、変性アルコール21g、界面活性剤0.5g、及びジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル1gを混合して、接着層形成用組成物を調製した。
光触媒層形成用組成物としては、ビストレイターNRC−360C(日本曹達社製、光触媒として酸化チタン含有)を用いた。
担体としてのガラス板の表面に、バーコート成膜により、接着層形成用組成物を1回塗布し、100℃で乾燥させて厚さ約1.0μmの接着層を形成し、さらに光触媒層形成用組成物をバーコート成膜により塗布し厚さ約0.5μmの光触媒層を形成し、100℃で加熱乾燥して、光触媒担持構造体を作製した。
【0056】
[実施例4](360C/1070)
接着層形成用組成物の調製に、セラネートWSA−104に代えて、DIC社製水性無機有機ハイブリッド樹脂セラネートWSA−1070(固形分40質量%、重量平均分子量1.50×10
6、ケイ素含有量(二酸化ケイ素換算)100mg/g)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0057】
[比較例2](360C/300A)
接着層形成用組成物としてビストレイターNRC−300A(非水系樹脂溶液、日本曹達社製)を用い、光触媒層形成用組成物としてビストレイターNRC−360Cを用い、実施例3と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0058】
[試験例3]
上記で得た光触媒担持構造体を、JIS K5400に規定されたサンシャインカーボンアークウェザーメーターによる促進耐候性試験(スガ試験機社製S80型を用いて、ブラックパネル温度63℃、120分サイクル、18分間降雨の条件)にかけた。これらの試料につき、一定時間ごとに接触角を測定した。接触角は、DropMaster700(協和界面科学社製)を用い、水液滴0.4μLを滴下し、3sec後に測定し、3点平均値として求めた。
結果を
図3に示す。図中、360C/104は実施例3、360C/1070は実施例4、360C/300Aは比較例2を表す。
【0059】
本発明の光触媒担持構造体は、長期間にわたって低い接触角を保持し、高い耐候性を示すことが判った。
【0060】
[実施例5](チタネート系カップリング剤)
セラネートWSA−104 10gに、水8g、及びチタネート系カップリング剤T−50(ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、日本曹達社製)0.6gとジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル4.5gのイソプロパノール溶液27gを混合して、接着層形成用組成物を調製した。
接着層形成用組成物以外については、実施例1と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0061】
[実施例6](アルミネート系カップリング剤)
T−50に代えてアルミネート系カップリング剤S−75P(エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、川研ファイン社製)を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0062】
[実施例7](アルミネート系カップリング剤)
セラネートWSA−104 22.3gに、水17.2g、及びアルミネート系カップリング剤アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)(アルドリッチ社製)0.3gとジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル10gのイソプロパノール溶液58.7gを混合して、接着層形成用組成物を調製した。
接着層形成用組成物以外については、実施例1と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0063】
[実施例8]
アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)の使用量を0.3gに代えて0.8gとした以外は、実施例7と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0064】
[実施例9]
アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)の使用量を0.3gに代えて1.5gとした以外は、実施例7と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0065】
[実施例10](ジルコネート系カップリング剤)
アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)0.3gに代えて、ジルコネート系カップリング剤ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)(東京化成社製)0.2gを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0066】
[実施例11]
ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)の使用量を0.2gに代えて0.5gとした以外は、実施例10と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0067】
[実施例12]
ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)の使用量を0.2gに代えて1.0gとした以外は、実施例10と同様の方法で、光触媒担持構造体を作製した。
【0068】
実施例1及び2で作製した光触媒担持構造体は、表面に白化が見られた。しかし、実施例5〜12で作製した光触媒担持構造体には、白化は起こらなかった。