特許第6476286号(P6476286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ハウシス・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6476286-重合体粉末の製造方法 図000004
  • 特許6476286-重合体粉末の製造方法 図000005
  • 特許6476286-重合体粉末の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476286
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】重合体粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20190218BHJP
【FI】
   C08J3/12 101
   C08J3/12 ZCER
   C08J3/12 ZCEZ
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-517009(P2017-517009)
(86)(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公表番号】特表2017-530232(P2017-530232A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】KR2015010225
(87)【国際公開番号】WO2016052958
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年3月29日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0130551
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0136095
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】カン・キョンミン
(72)【発明者】
【氏名】カン・ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン・ジュンビョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ドクリュル
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−252449(JP,A)
【文献】 特開2004−238432(JP,A)
【文献】 特開2013−133355(JP,A)
【文献】 特表2007−534314(JP,A)
【文献】 特開2014−097440(JP,A)
【文献】 特表2011−527329(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0257097(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/073285(WO,A1)
【文献】 特開2005−036076(JP,A)
【文献】 特開2010−018640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
B01J 2/00− 2/30
G03G 9/00−9/10;9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体の溶融物を形成する段階;
前記重合体の溶融物に超臨界流体を投入して混合組成物を形成する段階;及び
前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階を含む、
平均粒径が20μmないし300μmで、粒径が10μm未満の粒子が10質量%以下で、粒径が300μm超過の粒子が10質量%以下であり、重量平均分子量(Mw)が50,000ないし300,000である重合体粉末の製造方法。
【請求項2】
前記重合体の溶融物は、重合体を100℃ないし290℃で溶融させて形成される、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項3】
前記混合組成物を形成する段階は、
前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を投入した後で加圧し、前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を分散させる段階を含む、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項4】
前記混合組成物を形成する段階は、
前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を投入した後、50barないし500barの圧力になるように加圧する段階である、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項5】
前記混合組成物は、前記重合体の溶融物100重量部に対して前記超臨界流体5ないし15重量部を投入して形成される、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項6】
前記超臨界流体は、二酸化炭素、ヘリウム、窒素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メチレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項7】
前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階は、
前記混合組成物を平均口径が0.01ないし3.0mmのノズルを通じて噴射する段階である、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項8】
前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階は、
前記混合組成物を噴射と同時に−30℃ないし30℃で冷却させる段階である、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項9】
前記重合体と前記重合体粉末の重量平均分子量(Mw)の差は200,000以下である、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【請求項10】
前記重合体と前記重合体粉末の熱分解温度の差は50℃以下である、請求項に記載の重合体粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粉末及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、車両及びフィルターなどに使われる内装材または部品に適用される複合材(Thermoplastic
Composite)は、多様な目的に起因して高分子粉末を含んでもよく、例えば、前記粉末が纎維に含浸された構造を含んでもよい。このような高分子粉末の場合、粒子の大きさが小さいほど後続工程が有利であり、粒度分布が狭くて均一な大きさを有するほど多様な応用性を確保することができる。従来は、ボールミル(ball mill)粉砕方式または冷凍粉砕方式などを使って、低費用で球形の微粒子を製造しようとした。ただし、前記冷凍粉砕方式は、粒子の大きさを小さくするために高費用の窒素を使わなければならないし、多段階の粉砕過程を経るので、費用及び時間の側面で問題がある。また、このような冷凍粉砕方式で製造された最終粒子形態が比較的に尖った破砕模様を持つため、流動性の側面で不利で、多様な応用性を確保できない問題がある。前記ボールミル(ball mill)粉砕方式の場合、冷凍粉砕よりは粒子の形態が球形に近いが、このような球形の粒子を得るためには、溶媒に分散させた後で回収する別途工程が必要で、これもまた費用及び時間の側面で不利であり、製造された粒子の粒度分布が広くて不均一であり、凝集し易い問題がある。
【0003】
したがって、費用及び時間の側面で有利で、製造過程で温度などによる物性変化が少ない上、粒度分布が狭くて均一で、優れた物性を示す球形の粉末を製造するための方法が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実現例は、粒度分布が狭いながらも粒子の大きさが一定範囲と均一で、優れた流動性及び応用性を確保できる重合体粉末を提供する。
本発明の他の実現例は、費用及び時間の側面で有利であって、温度などによる物性変化を最小化することができる前記重合体粉末の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明、重合体の溶融物を形成する段階;前記重合体の溶融物に超臨界流体を投入して混合組成物を形成する段階;及び前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階を含む、平均粒径が20μmないし300μmで、粒径が10μm未満の粒子が10質量%以下で、粒径が300μm超過の粒子が10質量%以下であり、重量平均分子量(Mw)が50,000ないし300,000である重合体粉末の製造方法を提供する。
【0009】
前記重合体の溶融物は、重合体を略100℃ないし略290℃で溶融して形成されてもよい。
前記混合組成物を形成する段階は、前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を投入した後で加圧し、前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を分散させる段階を含んでもよい。
【0010】
前記混合組成物を形成する段階は、前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を投入した後、略50barないし略500barの圧力になるように加圧する段階であってもよい。
前記混合組成物は、前記重合体の溶融物100重量部に対して前記超臨界流体略5ないし略15重量部を投入して形成されてもよい。
【0011】
前記超臨界流体は、二酸化炭素、ヘリウム、窒素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メチレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。
前記混合組成物は、粘度が略10−3Pa・sないし略10Pa・sであってもよい。
【0012】
前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階は、前記混合組成物を平均口径が略0.01ないし略3.0mmのノズルを通じて噴射する段階であってもよい。
前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階は、前記混合組成物を噴射と同時に略−30℃ないし略30℃で冷却させる段階であってもよい。
【0013】
前記重合体と前記重合体粉末の重量平均分子量(Mw)の差は、略200,000以下であってもよい。
前記重合体と前記重合体粉末の熱分解温度の差は、略50℃以下であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
前記重合体粉末は、粒度分布が狭いながらも粒子の大きさが小さくて均一であり、優れた流動性及び応用性を確保することができる。
前記重合体粉末の製造方法は、費用及び時間の側面で有利であり、温度などによる物性変化を最小化ふることで、優れた物性を有する前記重合体粉末を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】は本発明の一実現例よって製造された重合体粉末を撮影したSEM写真である。
図1B】は従来の製造方法によって製造された重合体粉末を撮影したSEM写真である。
図2】本発明の一実現例よって製造された重合体粉末の粒径による粒度分布グラフを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実現例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明は制限されないし、本発明は後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。
本発明の一実現例において、平均粒径が略20μmないし略300μmで、粒径が略10μm未満の粒子が略10質量%以下であり、粒径が略300μm超過の粒子が略10質量%以下である重合体粉末を提供する。
【0017】
前記重合体粉末は、平均粒径が略20μmないし略300μmで、前記範囲の平均粒径を有することで粒子の大きさに基づいて内装建築材及びインテリア装飾材などに適用するとき、優れた加工性を確保することができる。
また、前記重合体粉末は、粒径が略10μm未満の粒子と粒径が略300μm超過の粒子がそれぞれ10質量%以下のものであって、例えば、略5質量%以下であってもよい。具体的に、粒径が略10μm未満の粒子は略5質量%以下で、粒径が略300μm超過の粒子は略1質量%以下であってもよい。前記重合体粉末がこのような粒度分布を有することで、内装建築材及びインテリア装飾材などに適用するとき、優れた流動性及び成形性を確保することができる。
【0018】
具体的に、前記重合体粉末は、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレングリコール(PEG)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、耐衝撃ポリスチレン(High
Impact Polystyrene、HIPS)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことができる。
【0019】
例えば、前記重合体粉末はポリ乳酸を含んでもよく、この場合、後述する製造方法によって前記範囲の平均粒径及び粒度分布を有する重合体粉末を製造し易い。また、前記範囲の平均粒径及び粒度分布に起因して優れた流動性及び加工性を確保するだけでなく、ポリ乳酸自体に起因した環境に優しい效果も得られる。
【0020】
前記重合体粉末は、重量平均分子量(Mw)が略10,000ないし略300,000であってもよく、例えば、略50,000ないし略200,000であってもよい。前記重合体粉末が前記範囲の平均粒径及び粒度分布と共に前記範囲の重量平均分子量(Mw)を満たすことで、優れた流動性及び成形性を確保することができると同時に、これを適用した内装材などが優れた強度を確保することができる。
【0021】
前記重合体粉末は、安息角が略45度未満であってもよく、例えば、略40度未満であってもよい。前記「安息角」は、粒子化された材料を平面に自然状態で積み上げた時、その傾斜を維持できる最大傾斜角を意味する。具体的に、前記安息角は、平たい水平面に粒子化された材料を注いで形成された山に対して、山の傾斜面と前記水平面の角度を測定する注入安定角度の測定方法で測定され、これに代わって底が平面である容器に作られた穴を通じて前記材料が排出されながら形成されるカウルヘッドに対して、カウルヘッドの傾斜面と平面である底面が成す角度を測定する排出安定角度の測定方法で測定されてもよい。前記重合体粉末が前記範囲の安息角を示すことで、優れた流動性を確保することができるし、多様な分野における応用性を確保することができる。
【0022】
本発明の他の実現例は、重合体の溶融物を形成する段階;前記重合体の溶融物に超臨界流体を投入して混合組成物を形成する段階;及び前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階を含む、重合体粉末の製造方法を提供する。
【0023】
前記重合体粉末の製造方法は、超臨界流体(SCF、Super
critical fluid)を使うことで、具体的に前記超臨界流体を添加剤として使うことができる。これにより、前記製造方法は、比較的に低い温度で重合体粉末を製造することができるため、原料損失を防止することができるし、前記製造方法で製造された重合体粉末が熱分解特性及び粒度分布、分子量の側面で優れた物性を確保することができる。
【0024】
具体的に、前記製造方法は重合体の溶融物を形成する段階を含んでもよい。前記重合体の溶融物は、重合体で構成された原料を一定温度で溶融して形成されるものであって、前記重合体で構成された原料はペレット(pellet)状の粒子であってもよい。
【0025】
前記重合体の溶融物は、前記重合体を略100℃ないし略290℃で溶融させて形成することができる。前記重合体が前記範囲の温度で溶融されることで、重合体自体の物性を損傷することなく、適切な粘度を有するように溶融されてもよい。
【0026】
前記重合体の溶融物は、粘度が略10−3Pa・sないし略10Pa・sであってもよい。前記重合体の溶融物が前記範囲の粘度を有することで、後続段階で超臨界流体とよく混合することができ、優れた加工性を確保することができる。
【0027】
前記製造方法は、前記重合体の溶融物に超臨界流体を投入して混合組成物を形成する段階を含んでもよい。前記超臨界流体は、前記重合体の溶融物が形成された後で投入されるものであって、これを通じて比較的に低い温度で適切な粘度を有する混合組成物を形成することができる。
【0028】
具体的に、前記混合組成物を形成する段階は、前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を投入した後で加圧し、前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を分散させる段階を含んでもよい。すなわち、前記混合組成物は、前記重合体の溶融物内に前記超臨界流体が分散した状態で混合されたものであってもよい。
【0029】
この時、前記混合組成物を形成する段階は、前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を投入した後、略50barないし略500barの圧力になるように加圧する段階であってもよく、例えば、略50barないし略300barの圧力になるように加圧する段階であってもよい。この段階で、圧力が前記範囲を維持するように加圧することで、前記超臨界流体が前記重合体の溶融物内で均一に分散することができるし、加工に有利な粘度を有する混合組成物を形成してもよい。
【0030】
また、前記混合組成物を形成する段階は、略100℃ないし略290℃で行われてもよい。既存には、重合体または高分子原料を溶融させ、噴射などの方法で粒子形状を製造する際に、略300℃以上の高温に温度を昇温させて溶融物の粘度などを調節した。このように高温で製造過程が進められる場合、原料の損失が大きくなり、製造費用が増加し、製造された粒子形状の結果物の熱的特性が良くない問題があった。これに関して、前記製造方法は、前記混合組成物を形成する段階が前記範囲の温度で行われることで、前記重合体溶融物の物性が損傷されないまま、前記超臨界流体と均一に混合され、適切な粘度を有する混合組成物を形成することができ、結果的に、製造された重合体粉末が優れた熱的特性を示してもよい。
【0031】
前記混合組成物を形成する段階は、前記重合体の溶融物が注入されると同時に、前記超臨界流体が前記重合体の溶融物が投入される段階であってもよい。この時、前記重合体の溶融物は略2ないし略100rpmの速度で注入され、前記超臨界流体は略0.01ないし略40g/lの流量で前記重合体の溶融物が注入されてもよい。前記重合体の溶融物及び前記超臨界流体が前記範囲の速度及び流量で注入されることで、均一に混合及び分散することが可能であり、このように製造された前記混合組成物が加工に有利な粘度を容易に確保することができる。
【0032】
前記混合組成物は、前記重合体の溶融物100重量部に対して前記超臨界流体を略5ないし略15重量部を投入して形成されてもよい。前記超臨界流体は前記重合体溶融物に対して微量添加されるもので、前記重合体溶融物が比較的に低い温度でこれと混合され、熱的特性が変性されない上、加工に有利な点も有する混合組成物を容易に製造することができる。
【0033】
前記超臨界流体が前記重合体の溶融物100重量部対比略5重量部未満に含まれる場合は、前記混合組成物が加工に有利な粘度を確保しにくい問題があって、略15重量部を超過して含まれる場合は超臨界流体の相分離現象が生じる恐れがある。
【0034】
前記超臨界流体は、物質固有の臨界温度及び臨界圧力を超過した状態で存在しながら気体及び液体の属性をいずれも表す流体であって、具体的に二酸化炭素、ヘリウム、窒素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メチレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。例えば、前記超臨界流体は二酸化炭素を含んでもよく、この場合費用が相対的に安価で、前記重合体の溶融物とよく混合される長所を確保することができる。
【0035】
前記重合体の溶融物に前記超臨界流体を投入して製造された混合組成物は、その粘度が略10−3Pa・sないし略10Pa・sであってもよい。前記混合組成物が前記範囲の粘度を有することで、これを噴射することが容易で、重合体粉末の製造において優れた加工性を確保することができるし、これによって製造された前記重合体粉末が均一な大きさ及び狭い粒度分布を有することができる。
【0036】
前記製造方法は、前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階を含んでもよい。具体的に、前記混合組成物は、ノズルを通じて噴射されることができ、具体的に前記ノズルの平均口径が略0.01ないし略3.0mmであってもよい。前記ノズルの平均口径が前記範囲を満たすことで前記混合組成物がよく流入されることができ、これより適切な大きさ及び狭い粒度分布を有する重合体粉末が製造されてもよい。
【0037】
具体的に、前記混合組成物は前記ノズルに空気と共に注入された後で噴射されることができ、このとき注入される空気の温度は、略200℃ないし略500℃で、圧力は略100psiないし略1000psiであってもよい。また、前記空気の注入速度は、略10m/sないし略50m/sであってもよい。前記混合組成物が前記範囲の温度、圧力及び注入速度を満たす空気とともに前記範囲の直径を有するノズルに注入されることで、これを噴射して製造された重合体粉末が適切な大きさ及び狭い粒度分布を容易に確保することができるし、重合体自体の物性を損傷させない。
【0038】
また、前記混合組成物を噴射して重合体粉末を製造する段階は、前記混合組成物を噴射すると同時に略−30℃ないし略30℃の温度で冷却させる段階であってもよい。前記混合組成物が噴射と同時に前記範囲の温度で冷却されることで、前記重合体粉末の大きさの均一性が向上されるし、狭い粒度分布を満たすことができる。また、前記重合体粉末が凝集されずに優れた流動性を確保することができ、球状をよく保つことができる。
【0039】
前記重合体粉末の製造方法は、超臨界流体を利用することで比較的に低い温度で適切な粘度を確保することができる。これにより、前記製造方法は熱による原料損失を最小化することができるし、原料対比前記重合体粉末の熱的特性及び分子量などの物性の変化が少ないため、費用及び優れた物性確保の側面で利点を得ることができる。
【0040】
具体的に、前記重合体粉末を製造するための原料は重合体であり、前記重合体は重合体の溶融物を形成する以前の状態を意味する。このとき、前記重合体と前記重合体粉末の重量平均分子量(Mw)の差は略200,000以下であってもよく、例えば、略150,000以下であってもよいし、例えば、略5,000ないし150,000であってもよい。前記重量平均分子量(Mw)の差が小さいほど前記重合体粉末の製造過程で原料の損失が少ないことを意味し、前記重合体粉末の原料対比重量平均分子量(Mw)の変化が前記範囲を満たすことで、前記重合体粉末が重合体自体の特性に起因した優れた物性を容易に確保することができる。
【0041】
また、前記重合体と前記重合体粉末の熱分解温度の差は、略50℃以下であってもよく、例えば、略20℃以下であってもよいし、例えば、略2℃ないし20℃であってもよい。前記「熱分解温度」は、前記重合体に熱を加えてこれが分解される温度を測定したものであって、具体的に熱分解解釈装置(TGA)を用いて測定することができる。前記熱分解温度の差が小さいほど前記重合体粉末の製造過程で原料の物性変化が少ないことを意味し、前記重合体と前記重合体粉末の熱分解温度の差が前記範囲を満たすことで、前記重合体粉末が重合体自体の特性に起因した優れた物性を容易に確保することができる。
【0042】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、以下に記載した実施例は本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0043】
<実施例及び比較例>
実施例1
ペレット(pellet)形状のポリ乳酸樹脂を圧出機に投入し、前記ポリ乳酸樹脂を250℃の温度で溶融させてポリ乳酸溶融物を製造した。次いで、前記ポリ乳酸溶融物100重量部に対して、5重量部の二酸化炭素超臨界流体を投入した後で加圧し、混合及び分散させることで混合組成物を製造した。次いで、前記混合組成物を噴射ノズルに注入して、温度が20℃であるチャンバー内に噴射させると同時に、冷却させることでポリ乳酸粉末を製造した。
【0044】
比較例1
ペレット(pellet)形状のポリ乳酸樹脂を冷凍粉砕し、ボールミル(ball−mill)工程を通じてポリ乳酸粉末を製造した。
【0045】
比較例2
ペレット(pellet)形状のポリ乳酸樹脂を圧出機に投入し、前記ポリ乳酸樹脂を250℃の温度で溶融させてポリ乳酸溶融物を製造した。前記ポリ乳酸溶融物を400℃まで昇温させ、噴射ノズルに注入して温度が20℃のチャンバー内に噴射させると同時に冷却させることでポリ乳酸粉末を製造した。
【0046】
<評価>
実験例1:平均粒径及び粒度分布の測定
前記実施例1及び比較例1に対して、レーザー回折粒度分布測定機(Microtrac社、S3500 Series)を用いて平均粒径及び粒度分布を測定し、下記表1に記載した。また、前記実施例1によって製造されたポリ乳酸粉末を撮影した写真を図1Aに記載し、前記比較例1によって製造されたポリ乳酸粉末を撮影した写真を図1Bに記載した。また、前記実施例1の重合体粉末の粒径による粒度分布グラフを図2に記載した。
【0047】
【表1】
【0048】
実験例2:重量平均分子量(Mw)及び熱分解温度(Tdec)の差の測定
前記実施例1及び比較例2に対し、原料のペレット(pellet)形状のポリ乳酸樹脂、及び製造されたポリ乳酸粉末それぞれの重量平均分子量(Mw)を測定してその差を導出し、熱重量分析(TGA)を利用して各々の熱分解温度(Tdec)を測定してその差を導出した。その結果は、下記表2に記載した。
【0049】
【表2】
【0050】
前記表1及び図2の結果を参照すれば、本発明の一実現例よって製造された実施例1のポリ乳酸粉末が20μmないし300μmの平均粒径を有しながら、粒径10μm未満の粒子と粒径300μm超過の粒子がいずれも10質量%以下の粒度分布を有することが分かる。
【0051】
また、図1Aおよび図1Bの結果を通じて、実施例1のポリ乳酸粉末は、本発明の一実現例による重合体粉末の製造方法によって製造されることで、球状で前記範囲の平均粒径範囲を表すことが確認できる。
一方、冷凍粉砕及びボールミル工程を通じて製造された比較例1のポリ乳酸粉末は、実施例1に比べて平均粒径が大きくて、粒度分布が均一でないことが分かる。
【0052】
また、前記表2の結果を参照すれば、本発明の一実現例よって製造された実施例1のポリ乳酸粉末は、比較例2に比べて製造過程におけるペレット形態の原料対比重量平均分子量の減少及び熱分解温度の変化が少ないことが分かるし、これによってポリ乳酸自体に起因する優れた物性をよりよく実現することが分かる。

図1A
図1B
図2