特許第6476326号(P6476326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476326バッテリシステムの温度をモニタするための方法およびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476326
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】バッテリシステムの温度をモニタするための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20190218BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20190218BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20190218BHJP
   G01R 31/36 20190101ALI20190218BHJP
【FI】
   H01M10/48 301
   H02J7/04 L
   H02J7/10 L
   H02J7/10 C
   H01M10/48 P
   G01R31/36 A
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-21767(P2018-21767)
(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公開番号】特開2018-129302(P2018-129302A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】10 2017 102 668.1
(32)【優先日】2017年2月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シュヴィヒテンヘーフェル
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン カウマンス
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン フライ
【審査官】 阿部 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−085071(JP,A)
【文献】 特開2016−014588(JP,A)
【文献】 特開2016−053564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
G01R 31/36
H02J 7/00−7/12;7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリシステム(102)をモニタするための方法であって、
前記バッテリシステム(102)の電池(104、106、...、108)の容量増分に対する比較プロファイルについての情報を決定するステップ(406)と、
基準電池(104)の容量増分に対する基準プロファイルからの前記比較プロファイルの容量増分の偏差についての情報を決定するステップ(408)と、
前記偏差についての情報の関数として前記電池(104、106、...、108)の温度を決定するステップ(410)と
によって特徴付けられる方法。
【請求項2】
前記温度を決定するステップが、前記偏差についての情報を事前に定義された温度値に割り当てるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電池(104、106、...、108)における電圧プロファイル(V1、V2、...、Vn)についての情報を検出するステップ(402)と、
前記電圧プロファイル(V1、V2、...、Vn)の時間微分についての情報を決定するステップ(404)と、
前記電圧プロファイル(V1、V2、...、Vn)の前記時間微分についての情報の関数として前記比較プロファイルについての情報を決定するステップ(406)と
によって特徴付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
電池(104、106、108)における電流プロファイル(I)についての情報を検出するステップ(402)と、
経時的な前記電流プロファイル(I)の積分を通じて前記電池(104、106、108)内の電荷についての情報を決定するステップと、
圧による前記電荷の微分の関数として前記比較プロファイルについての情報を決定するステップと
によって特徴付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記基準電池(104)における基準電圧プロファイル(V1)についての情報を検出するステップ(402)と、
前記基準電圧プロファイル(V1)の基準時間微分についての情報を決定するステップ(404)と、
前記基準電圧プロファイル(V1)の前記基準時間微分についての情報の関数として前記基準プロファイルについての情報を決定するステップ(406)と
によって特徴付けられ、
前記電池(106、...、108)における前記電圧プロファイル(V2、...、Vn)についての情報の前記検出(402)および前記基準電池(104)における前記基準電圧プロファイル(V1)についての情報の前記検出(402)が、前記バッテリシステム(102)の充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記基準電池(104)における基準電流プロファイル(I)についての情報を検出するステップ(402)と、
経時的な前記基準電流プロファイル(I)の積分を通じて電荷についての情報を決定するステップ(404)と、
圧による前記電荷の微分の関数として前記基準プロファイルについての情報を決定するステップ(406)と
によって特徴付けられ、
前記電池(106、...、108)における前記電流プロファイル(I)についての情報の前記検出(402)および前記基準電池(104)における前記基準電流プロファイル(I)についての情報の前記検出(402)が、前記バッテリシステム(102)の充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記基準電池(104)の温度が、前記基準電池(104)における前記基準電圧プロファイル(V1)についての情報の前記検出(402)中に少なくとも1回検出され、および前記電池(108)の温度が、前記基準電池(104)の温度および請求項2に記載の事前に定義された温度値の関数として決定されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記基準プロファイルについての情報が、特に、電池特有の静的に事前に定義されたプロファイルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
バッテリシステム(102)をモニタするためのデバイスであって、前記バッテリシステム(102)の電池(104、106、...、108)の容量増分に対する比較プロファイルについての情報を決定し、基準電池(104)の容量増分に対する基準プロファイルからの前記比較プロファイルの容量増分の偏差についての情報を決定し、および前記偏差についての情報の関数として前記電池(108)の温度を決定するように設計されたコンピューティング装置(114)によって特徴付けられるデバイス。
【請求項10】
事前に定義された温度値を格納するためのメモリによって特徴付けられ、前記温度の前記決定が、前記偏差についての情報を事前に定義された温度値に割り当てるステップを含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
電池(106、...、108)における電圧プロファイル(V2、...、Vn)についての情報を検出するように設計された検出装置(112)によって特徴付けられ、前記コンピューティング装置(114)が、前記電圧プロファイル(V2、...、Vn)の時間微分についての情報を決定し、および前記電圧プロファイル(V1、V2、...、Vn)の前記時間微分についての情報の関数として前記比較プロファイルについての情報を決定するように設計される、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
電池(104、106、108)における電流プロファイル(I)についての情報を検出する(402)ように設計された検出装置(112)によって特徴付けられ、前記コンピューティング装置(114)が、経時的な前記電流プロファイル(I)の積分を通じて前記電池(104、106、108)内の電荷についての情報を決定し、および電圧による前記電荷の微分の関数として前記比較プロファイルについての情報を決定するように設計される、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記検出装置(112)が、前記基準電池(104)における基準電圧プロファイル(V1)についての情報を検出するように設計され、前記コンピューティング装置(114)が、前記基準電圧プロファイル(V1)の基準時間微分についての情報と、前記基準電圧プロファイル(V1)の前記基準時間微分についての情報の関数として前記基準プロファイルについての情報とを決定するように設計され、前記電池(108)における前記電圧プロファイル(V2、...、Vn)についての情報の前記検出および前記基準電池(104)における前記基準電圧プロファイル(V1)についての情報の前記検出が、前記バッテリシステム(102)の充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行されることを特徴とする、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記検出装置(112)が、前記基準電池(104)における基準電流プロファイル(I)についての情報を検出するように設計され、前記コンピューティング装置(114)が、経時的な前記基準電流プロファイル(I)の積分を通じて電荷についての情報を決定し、および電圧による前記電荷の微分の関数として前記基準プロファイルについての情報を決定するように設計され、前記電池(106、...、108)における前記電流プロファイル(I)についての情報の前記検出および前記基準電池(104)における前記基準電流プロファイル(I)についての情報の前記検出が、前記バッテリシステム(102)の充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行されることを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記基準電池(104)の温度を検出するための温度センサ(116)が提供され、温度検出装置(110)が、前記基準電池(104)における前記基準電圧プロファイルについての情報の前記検出中に温度を少なくとも1回検出するように設計され、前記コンピューティング装置(114)が、前記基準電池(104)の温度および請求項10に記載の事前に定義された温度値の関数として前記電池(106、...、108)の温度を決定するように設計されることを特徴とする、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記温度検出装置(110)が、電池における温度を測定する(104)ように設計され、前記コンピューティング装置(114)が、前記バッテリシステムの複数の電池(104、106、...、108)の複数の温度を決定するように設計されることを特徴とする、請求項15に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電プロセスまたは充電プロセス中に、特に複数の電池(battery cells)を有するバッテリシステムの温度をモニタするための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池を有するバッテリシステムでは、電池は、結合層を介して互いに熱的に接続される。以下で説明される電池は、二次電池(すなわち、蓄電池(accumulator cells))である。そのようなバッテリシステムの安全操作のため、個々の電池の温度がモニタされる。この目的のため、可能な限り正確に個々の電池の温度を決定することが望ましい。不均等な温度分布のため、単一の温度センサにより、すべての電池に対してバッテリシステムの個々の電池の温度を確実に検出することはできない。不均衡な温度分布は、モジュールレベルのみならず、電池レベルでも起こる。従って、電池の実際のコア温度を決定するために従来の方法を使用することは可能でない。
【0003】
(特許文献1)は、電池の温度を推定するための方法であって、電池の内部抵抗、充電状態、経年および温度間の関係が電池の基準モデルによってもたらされる、方法を開示している。電池の温度は、実際の内部抵抗を決定し、実際の充電状態を推定し、および電池の経年を推定することにより決定することができる。
【0004】
(特許文献2)は、電池のコア温度のセンサレス推定のための方法であって、電池のコア温度が、電池の内部抵抗を決定することによっておよび電池の熱エネルギーの伝達の関数によって推定される、方法を説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3015835A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102011116779A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、バッテリシステムをモニタするための、上記のものと比較して改善された方法および改善されたデバイスを指定する問題に関係している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この問題は、独立請求項による方法およびデバイスによって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
この問題は、バッテリシステムの電池の容量増分に対する比較プロファイルについての情報を決定するステップと、基準プロファイル(a reference profile)からの比較プロファイルの偏差についての情報を決定するステップと、偏差についての情報の関数として電池の温度を決定するステップとによる方法に関して解決される。従って、バッテリシステムの温度プロファイルの推定(estimation)は、充電プロセスまたは放電プロセスにおける基準プロファイルに対する電池の容量増分を解析することにより、電池の温度が推定されるような方法で実行される。
【0009】
容量増分は、その電池電圧Vにより蓄電池に投入されているか、または蓄電池から抽出されている電荷Qを微分すること(電荷Qの導関数)から計算される変数である。従って、以下のように定義される。
ICA=dQ/dV
【0010】
この変数は、性質(特性)プロファイルおよび極値を有し、性質プロファイルおよび極値は、電池電圧に対して作図され、蓄電池の電気化学プロセスに帰属する。電池特性を決定するための確実な指標は、前記性質プロファイルおよび極値から決定することができる。この方法は、容量増分解析(略してICA解析)と呼ばれる。
【0011】
温度を決定するステップは、好ましくは、偏差についての情報を事前に定義された温度値に割り当てるステップを含む。これにより、特有の偏差を一意的な事前に定義された較正データ値にマッピングすることによって温度の簡単な推定が可能になる。事前に定義された較正データ値は、例えば、電池の温度と基準電池(reference battery cells)で測定された温度との差を指定(特定)する。基準電池は、例えば、同じバッテリシステムの別の電池であり、その温度は温度センサによって測定される。この事例では、電池の温度は、測定温度を補正することによって決定される。また、起動前に個々の電池の較正を実行すること、および容量増分とこの基準プロファイルとの差を考慮することも適切であり得る。その結果、製作公差および容量増分の不均衡な初期のプロファイルが補償される。また、事前に定義された較正データ値は、偏差中の電池の絶対温度を指定することもできる。これらの絶対温度値は、例えばテストベンチトライアルにおいて、同一の設計の電池に対して事前に決定される。この事例では、電池の温度は較正データ値によって決定される。
【0012】
方法は、好ましくは、電池における電圧プロファイルについての情報を検出するステップと、電圧プロファイルの時間微分についての情報を決定するステップと、電圧プロファイルの時間微分についての情報の関数として比較プロファイルについての情報を決定するステップとを含む。これは、容量増分のプロファイルを決定するための第1の可能な方法である。
【0013】
方法は、好ましくは、電池における電流プロファイルについての情報を検出するステップと、経時的な電流プロファイルの積分を通じて電池内の電荷についての情報を決定するステップと、電圧による電荷の微分の関数として比較プロファイルについての情報を決定するステップとを含む。これは、容量増分のプロファイルを決定するための第2可能な方法である。
【0014】
方法は、好ましくは、基準電池における基準(reference)電圧プロファイルについての情報を検出するステップと、基準電圧プロファイルの基準(reference)時間微分についての情報を決定するステップと、基準電圧プロファイルの時間微分についての情報の関数として基準プロファイルについての情報を決定するステップとを含み、電池における電圧プロファイルについての情報の検出および基準電池における基準電圧プロファイルについての情報の検出は、バッテリシステムの充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。その結果、基準プロファイルは、バッテリシステムのモニタリング中に決定される。
【0015】
方法は、好ましくは、基準電池における基準電流プロファイルについての情報を検出するステップと、経時的な基準電流プロファイルの積分を通じて電荷についての情報を決定するステップと、電圧による電荷の微分の関数として基準プロファイルについての情報を決定するステップとを含み、電池における電流プロファイルについての情報の検出および基準電池における基準電流プロファイルについての情報の検出は、バッテリシステムの充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。
【0016】
好ましくは、基準電池の温度は、基準電池における基準電圧プロファイルについての情報の検出中に少なくとも1回検出され、および電池の温度は、基準電池の温度および事前に定義された温度値の関数として決定される。
【0017】
方法は、好ましくは、電池における温度を測定するステップと、バッテリシステムの複数の電池の複数の温度を決定するステップとを含む。従って、バッテリシステムの温度プロファイルのモニタリングまたは推定は、電池(特に単一の電池)の温度が温度センサによって測定され、それに基づき、バッテリシステムの他の電池の温度が、充電または放電プロセスにおける個々の電池の容量増分を解析することによって推定されるような方法で実行される。
【0018】
基準プロファイルについての情報は、好ましくは、特に、電池特有の静的に事前に定義されたプロファイルである。テストベンチトライアルは、事前に定義された基準プロファイルを決定するために使用することができる。次いで、基準電池の温度を検出するための温度センサを省くことができる。
【0019】
デバイスに関し、この問題は、バッテリシステムの電池の容量増分に対する比較プロファイルについての情報を決定し、基準プロファイルからの比較プロファイルの偏差についての情報を決定し、および偏差についての情報の関数として電池の温度を決定するように設計されたコンピューティング装置によって解決される。
【0020】
メモリは、好ましくは、事前に定義された温度値を格納するために提供され、温度の決定は、偏差についての情報を事前に定義された温度値のうちの1つに割り当てるステップを含む。
【0021】
デバイスは、好ましくは、電池における電圧プロファイルについての情報を検出するように設計された検出装置を備え、コンピューティング装置は、電圧プロファイルの時間微分についての情報を決定し、および電圧プロファイルの時間微分についての情報の関数として比較プロファイルについての情報を決定するように設計される。
【0022】
デバイスは、好ましくは、電池における電流プロファイルについての情報を検出するように設計された検出装置を備え、コンピューティング装置は、経時的な電流プロファイルの積分を通じて電池内の電荷についての情報を決定し、および電圧による電荷の微分の関数として比較プロファイルについての情報を決定するように設計される。
【0023】
検出装置は、好ましくは、基準電池における基準電圧プロファイルについての情報を検出するように設計され、コンピューティング装置は、基準電圧プロファイルの基準時間微分についての情報と、基準電圧プロファイルの時間微分についての情報の関数として基準プロファイルについての情報とを決定するように設計され、電池における電圧プロファイルについての情報の検出および基準電池における基準電圧プロファイルについての情報の検出は、バッテリシステムの充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。
【0024】
検出装置は、好ましくは、基準電池における基準電流プロファイルについての情報を検出するように設計され、コンピューティング装置は、経時的な基準電流プロファイルの積分を通じて電荷についての情報を決定し、および電圧による電荷の微分の関数として基準プロファイルについての情報を決定するように設計され、電池における電流プロファイルについての情報の検出および基準電池における基準電流プロファイルについての情報の検出は、バッテリシステムの充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。
【0025】
温度センサは、好ましくは、基準電池の温度を検出するために提供され、温度検出装置は、基準電池における基準電圧プロファイルについての情報の検出中に温度を少なくとも1回検出するように設計され、コンピューティング装置は、基準電池の温度および事前に定義された温度値の関数として電池の温度を決定するように設計される。
【0026】
温度検出装置は、好ましくは、電池における温度を測定するように設計され、コンピューティング装置は、バッテリシステムの複数の電池の複数の温度を決定するように設計される。従って、バッテリシステムの温度プロファイルのモニタリングまたは推定は、電池(特に単一の電池)の温度が温度センサによって測定され、それに基づき、バッテリシステムの他の電池の温度が、充電または放電プロセスにおける個々の電池の容量増分を解析することによって推定されるような方法で実行される。
【0027】
さらなるメモリは、好ましくは、特に、電池特有の静的に事前に定義されたプロファイルとしての基準プロファイルについての情報を格納するために提供される。テストベンチトライアルは、事前に定義された基準プロファイルを決定するために使用することができる。次いで、基準電池の温度を検出するための温度センサを省くことができる。さらなる可能な方法は、個々の電池の各々に対する較正プロファイルと比較した容量増分の偏差を解析することである。次いで、絶対温度値または温度差へのICA情報の割り当ては提供されないが、むしろ、相対もしくは絶対温度値または温度差への相対ICA情報の割り当てが提供される。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、従属請求項、説明および図面において見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】バッテリシステムの一部の概略図である。
図2】9つの電池を有するバッテリシステムおよびバッテリシステムの縦方向におけるバッテリシステムの空間温度分布の概略図である。
図3】電圧に対して作図された、電圧による2つの異なる電池の電荷の2つの微分のプロファイルの概略図である。
図4】バッテリシステムをモニタするための方法の部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図中、同一の参照記号は、同一の、同様のまたは機能的に同一のコンポーネントに関連する。
【0031】
図1は、直列に接続された少なくとも2つの電池104、106、...、108を有するバッテリシステム102をモニタするためのデバイス100の概略図を示す。複数のこれらの直列回路は、並列に接続することもできる。電池104、106、...、108は、瞬時電流Iで充電されるかまたは放電される。また、電池104は、以下では基準電池104とも呼ばれる。また、基準電池104は、電池104、106、...、108のうちの別のものでもあり得る。
【0032】
温度検出装置110および検出装置112は、データ回線を介してコンピューティング装置114に接続される。温度検出装置110は、基準電池104における温度を検出する。この目的のため、温度センサ116は、基準電池104に配置される。温度センサ116と温度検出装置110との間の接続は、図1では一点鎖線によって表されている。
【0033】
検出装置112は、充電または放電中、電池104、106、...、108における電圧V1、...、Vnについての情報を検出するように設計される。例えば、この目的のため、対応する測定回路1121、1122、...、112nを使用することができ、対応する測定回路1121、1122、...、112nは、電池104、106、...、108と並列に接続され、検出装置112に接続される。これに対する電気接続は、図1では破線として示されている。
【0034】
検出装置112は、電池106、...、108における電圧プロファイルについての情報を検出するように設計される。加えて、検出装置112は、基準電池104における基準電圧プロファイルについての情報を検出するように設計される。電池106、...、108における電圧プロファイルについての情報の検出および基準電池104における基準電圧プロファイルについての情報の検出は、バッテリシステム102の充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。検出装置112は、基準電池104における基準電流プロファイルについての情報を検出するように設計することができる。この目的のため、検出装置112は、電池104、106、...、108の少なくとも1つに流れる電流Iを測定するように設計される。
【0035】
コンピューティング装置114は、電圧プロファイルの時間微分についての情報を決定し、および基準電圧プロファイルの基準時間微分についての情報を決定するように設計される。加えて、コンピューティング装置114は、基準電圧プロファイルの基準時間微分についての情報を決定するように設計される。これは、以下で説明する。
【0036】
コンピューティング装置114は、電圧プロファイルの時間微分についての情報の関数として、電圧による電池106、...、108内の電荷の微分の比較プロファイルについての情報を決定するように設計される。加えて、コンピューティング装置114は、基準プロファイルについての情報を決定するように設計される。これも以下で説明する。
【0037】
コンピューティング装置114は、経時的な基準電流プロファイルの積分を通じて電荷についての情報を決定し、および電圧による電荷の微分の関数として基準プロファイルについての情報を決定するように設計することができる。電池106、...、108における電流プロファイルについての情報の検出および基準電池104における基準電流プロファイルについての情報の検出は、好ましくは、バッテリシステム102の充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。
【0038】
コンピューティング装置114は、以下で説明されるように、基準プロファイルから比較プロファイルの偏差についての情報を決定するように設計される。
【0039】
加えて、コンピューティング装置114は、偏差についての情報の関数として電池106、...、108の温度を決定するように設計される。
【0040】
デバイス100は、事前に定義された温度値を格納するためのメモリを備える。事前に定義された温度値は、例えば、基準電池104で測定された温度の補正値である。コンピューティング装置114は、例えば補正値によって電池106、...、108の温度を決定するため、偏差についての情報を事前に定義された温度値のうちの1つに割り当て、測定温度を補正する。
【0041】
温度センサ116は、例えば連続的に基準電池104の温度を測定し、温度検出装置110は、基準電圧プロファイルについての情報の検出中に温度を少なくとも1回検出する。
【0042】
温度検出装置110は、好ましくは、単一の電池104における温度を測定するように設計される。この事例では、コンピューティング装置114は、バッテリシステム102の複数の電池106、...、108の複数の温度を決定するように設計される。従って、バッテリシステム102の温度プロファイルのモニタリングまたは推定は、基準電池104の温度が温度センサ116によって測定され、それに基づき、バッテリシステム102の他の電池106、...、108の温度が、充電または放電プロセスにおける個々の電池の電圧プロファイルを解析することによって推定されるような方法で実行される。
【0043】
図2では、縦方向(a longitudinal direction)xに空間的に広がる9つの電池104、106、...、108を有するバッテリシステム102の空間温度分布200が示されている。縦方向xおよび横方向yにおける電池の空間的配置は、図2の上部に示されている。図2の下部では、縦方向xにわたる温度分布200が作図されている。温度分布200は、基準電池104の温度T1から始まり、温度T1は、温度センサ116によって検出される。バッテリシステム102の中央部に近付くにつれて温度は最大温度T5まで上昇し、次いで、バッテリシステム102の中央部からの距離が増加するにつれて温度T9まで降下する。温度プロファイル200は、個々の電池の純粋な直列接続から構築されたバッテリシステム102に対して示されている。これに関連して、図2の上部の電池104、106、...、108は、1〜9の番号が付けられている。中間層202は、電池1〜9の各々の間に配置される。前記中間層202は、高い熱伝導率での熱的結合をもたらす。熱放散に対する理想的な周辺の条件を想定すると、温度プロファイルTが得られる。それに従って、端部の2つの電池104、108が最も低い温度を有し、中央位置の電池が最も高い温度を有する。温度センサは、電池104における温度T1を測定するために配置される。温度センサ116の設置位置は変えることができ、対応する較正によって補償することができる。
【0044】
図3は、それぞれの電池の電圧Vに対して作図された、電圧Vによる2つの異なる電池の電荷Qの2つの微分dQ/dVのプロファイルの概略図である。これらの微分dQ/dVは、以下ではICA曲線と呼ばれる。
【0045】
ICA曲線は、容量増分解析ICAに基づく。充電または放電プロセス中の電池(特にリチウムイオン電池)の容量増分は、容量増分解析によって表される。ICA曲線は、以下のように電圧曲線の微分の関数として決定することができる。
dQ/dV=I(dV/dt)−1
【0046】
電池の健康状態、電池温度および電池化学に応じて、ICA曲線は、性質(特性)極点を有し、極点は、以下では最大値とも呼ばれる。瞬時電流Iによる充電または放電のプロセス中、前記電流は、既知数であるかまたは検出され得る。瞬時電圧Vが既知数の場合、ICA曲線は、微分演算(例えば、統計的計数法)による充電または放電プロセス中の瞬時電流Iに対する電圧曲線の微分の関数として決定することができる。従って、電圧Vによる電池の電荷Qの微分dQ/dVは、電荷を決定するために、電流を積分することなく決定される。
【0047】
図3では、曲線302は、バッテリシステム102の端部の電池のICA曲線のプロファイルに対応し、曲線304は、バッテリシステム102の中央の設置位置の電池のICA曲線のプロファイルに対応する。第1の極値E1および第2の極値E2を有する典型的なICA曲線(すなわち、微分dQ/dVの典型的なプロファイル)が示されている。第1の極値E1は、第2の極値E2より高い電池の電圧において生じる。特有の電池化学の場合、第1の極値E1が電池の温度の増加と共に減少することを実験的に証明することが可能であった。曲線302を基準プロファイルと見なし、曲線304を比較プロファイルと見なした場合、温度の関数として、基準プロファイルと異なる比較プロファイルの偏差が生じる。第1の極値E1の減少に対する精密な温度影響に関するこの知識および認識により、バッテリシステム102のいかなる電池における温度測定も、ICA曲線の解析によって他の電池における温度を推定するのに十分である。これに関連して、ICA曲線全体を知ることは必要ではないが、むしろ第1の極値E1の領域のみを知ることが必要である。従って、温度を推定するには、特定の状況下における部分的な充電または放電事象で十分である。好ましくは、例えば、瞬時電流I強度または電池の健康状態など、第1の極値E1の実装形態に関するさらなる影響因子が補償される。第1の極値E1の実装形態は、本明細書では、そのdQ/dV値のみならず、第1の極値E1の周囲のICA曲線の形態または形状を意味する。互いの極値の位置および/または極値の異なる形状は、偏差の尺度として使用することができる。あるいは、定義された電圧間隔における、比較された2つのICA曲線の間によって囲まれた、例えば積分によって決定することができるエリアを使用することもできる。
【0048】
図3は、事前に定義された電圧間隔VI、VI1、VI2を示し、電圧間隔VI、VI1、VI2では、ICA曲線は、両方の極値E1、E2、第1の極値E1のみまたは第2の極値E2のみを含む。事前に定義された電圧間隔VI、VI1、VI2は、完全に放電された電池の第1の電圧VoDCHと完全に充電された電池の第2の電圧VoCHとの間の電圧範囲より短い。
【0049】
バッテリシステム102をモニタするための方法は、図4を参照して説明される。方法は、好ましくは、充電プロセスまたは放電プロセス中に第1の電圧VoDCHと第2の電圧VoCHとの間の電圧で起こる。好ましくは、電圧間隔VI、VI1、VI2のうちの1つの電圧のみがモニタされる。
【0050】
開始後、ステップ402では、電池106、...、108における電圧プロファイルV2、...、Vnについての情報が検出される。任意選択により、基準電池104における基準電圧プロファイルV1が検出される。電池106、...、108における電圧プロファイルV2、...、Vnについての情報の検出および基準電池104における基準電圧プロファイルV1についての情報の検出は、バッテリシステムの充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。加えて、電池106、108における電流プロファイルについての情報が検出される。加えて、基準電池104における基準電流プロファイルについての情報の検出を提供することができる。
【0051】
それに続いて、ステップ404では、電圧プロファイルV1、V2、...、Vnの時間微分についての情報が決定される。代替として、基準電圧プロファイルV1の基準時間微分についての情報が決定される。また、経時的な電流プロファイルの積分によって電池106、108内の電荷についての情報の決定を提供することもできる。加えて、経時的な基準電流プロファイルの積分によって電荷についての情報の決定を提供することもできる。
【0052】
それに続いて、ステップ406では、比較プロファイルについての情報が決定される。任意選択により、基準プロファイルについての情報が決定される。比較プロファイルは、例えば、電圧プロファイルV1、V2、...、Vnの時間微分についての情報の関数として決定される。
【0053】
適切な場合、比較プロファイルについての情報は、電圧による電荷の微分の関数として決定される。
【0054】
加えて、電圧による電荷の微分の関数としての基準プロファイルについての情報の決定を提供することができる。
【0055】
電池106、...、108における電流プロファイルについての情報の検出および基準電池104における基準電流プロファイルについての情報の検出は、好ましくは、バッテリシステム102の充電プロセスまたは放電プロセスにより、時間的順序で重複する方式で少なくとも部分的に実行される。
【0056】
それに続いて、ステップ408では、電圧による基準電池における基準電荷の基準微分の基準プロファイルからの比較プロファイルの偏差についての情報が決定される。この目的のため、特に、電池特有の静的に事前に定義されたプロファイルとしての基準プロファイルについての情報を使用することも、代わりに決定された基準プロファイルについての情報を使用することもある。
【0057】
それに続いて、ステップ410では、偏差についての情報の関数として電池104、106、...、108の温度が決定される。この目的のため、偏差についての情報は、事前に定義された温度値に割り当てられる。それに続いて、ステップ402が実行される。
【0058】
基準電池104における温度の測定を提供することができる。この事例では、事前に定義された温度値は、測定温度の補正値である。温度が測定されない場合、事前に定義された温度値は電池の絶対温度である。
【0059】
温度測定が提供される場合、それは、例えば、基準電池104における基準電圧プロファイルについての情報の検出中に少なくとも1回実行される。方法は、基準電池104における温度を測定すること、およびバッテリシステム102の複数の電池106、...、108の複数の温度を決定することを提供し得る。
【0060】
温度を測定する代わりとして、テストベンチトライアルによって十分な較正データが事前に取得されている場合、温度センサ116が省かれる。次いで、一意的に定義されたマッピングが絶対または相対偏差と較正データによる温度との間で起こる。較正データは、例えば、特に、電池特有の静的に事前に定義されたプロファイルとしての基準プロファイルについての情報を含む。
【0061】
デバイス100は、この事例では、特に、電池特有の静的に事前に定義されたプロファイルとしての基準プロファイルについての情報を格納するためのさらなるメモリを備える。
【0062】
従って、バッテリシステムの温度プロファイルのモニタリングまたは推定は、電池(特に単一の電池)の温度が温度センサによって測定され、それに基づき、バッテリシステムの他の電池の温度が、充電または放電プロセスにおける個々の電池の容量増分を解析することによって推定されるような方法で実行される。
【0063】
一般に、異なる電池化学の観点から、方法は、極点E1またはE2を考慮することのみに限定されない。基準曲線に対するICA曲線の変化(その変化は、定義された電池の条件下で記録される)に基づいて電池温度を推定するために同じ手順が可能である。
【0064】
両方の実施形態では、コンピューティング装置114は、事前に定義された電圧間隔VI、VI1、VI2のみでの偏差を決定するように設計することができる。
【符号の説明】
【0065】
102 バッテリシステム
104 電池
106 電池
108 電池
406 ステップ
408 ステップ
410 ステップ
図1
図2
図3
図4