特許第6476336号(P6476336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日精化工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6476336
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】洗浄用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20190218BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20190218BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20190218BHJP
   C11D 1/52 20060101ALI20190218BHJP
   C11D 3/18 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190218BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20190218BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20190218BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   B29C33/72
   C11D3/37
   C11D1/04
   C11D1/52
   C11D3/18
   C08L101/00
   C08K5/098
   C08K5/20
   C08L91/06
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-135538(P2018-135538)
(22)【出願日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年7月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】西川 倫矢
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修平
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−269755(JP,A)
【文献】 特開平09−183133(JP,A)
【文献】 特開平04−246443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/72
C11D1/04,1/52,3/18,3/37
C08L91/06,101/00
C08K5/098,5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料の押出機又は成形機の内部を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物であって、
基材樹脂と、添剤と、を含有し、
前記添加剤が、金属石鹸と、脂肪酸アマイド及び鉱油の少なくともいずれかと、を含み(但し、前記脂肪酸アマイドを含む場合には、前記脂肪酸アマイドの含有量は、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.0質量%以上である)、
前記基材樹脂が、そのメルトフローレートが1.0g/10分以下の熱可塑性樹脂である(但し、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する無機フィラーの含有量が3質量部以上のものを除く)洗浄用樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂のメルトフローレートが、0.6g/10分以下である請求項1に記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸アマイドの融点が、50〜250℃である請求項1又は2に記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項4】
前記金属石鹸の含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、0.5〜6.0質量%である請求項1〜のいずれか一項に記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項5】
前記金属石鹸の含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.5〜5.0質量%である請求項1〜のいずれか一項に記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸アマイド及び前記鉱油の少なくともいずれかの含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.0〜6.0質量%である請求項1〜のいずれか一項に記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項7】
前記脂肪酸アマイド及び前記鉱油の少なくともいずれかの含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.5〜5.0質量%である請求項1〜のいずれか一項に記載の洗浄用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料の押出機又は成形機の内部を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機や成形機の内部には、以前に混練又は成形した樹脂や着色剤等の各種成分が残留することがある。このように各種成分がその内部に残留した押出機等を使用して熱可塑性樹脂を混練等すると、得られる混練物や成形品等の製品に残留した各種成分が不純物として混入しやすく、物性異常や外観不良等の不具合が生ずる可能性がある。したがって、製造しようとする製品を切り替える際には、内部残留物を除去するため、押出機等の装置を分解して掃除する;次に使用する基材樹脂で置換する;洗浄剤で洗浄する;等の対策をとる必要があった。
【0003】
しかしながら、装置を分解して掃除する場合には、装置の分解に手間がかかるため、洗浄時間がかかるといった課題があった。また、次に使用する基材樹脂で置換する場合、十分に置換するのに基材樹脂を大量に使用せざるを得ないとともに、時間もかかるといった課題があった。このため、洗浄剤で押出機等の内部を洗浄する手法が一般的に用いられている。
【0004】
関連する従来技術として、物理的な掻き取り効果を有する無機フィラーを洗浄成分として含有する洗浄用の樹脂組成物が開発されている。例えば、ガラス繊維やゼオライト等の無機フィラーを含有する洗浄用の樹脂組成物が提案されている(特許文献1及び2)。
【0005】
また、樹脂や添加剤の種類等を調整した洗浄用の樹脂組成物が開発されている。例えば、メルトフローレート(MFR)が異なる二種の熱可塑性樹脂と、無機発泡剤とを含有する成形機用の洗浄剤が提案されている(特許文献3)。さらに、熱可塑性樹脂、高級脂肪酸モノグリセライドの硼酸エステルの塩、及び脂肪酸アマイドを含有する洗浄用の樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−201975号公報
【特許文献2】特開平7−278359号公報
【特許文献3】特開2005−231108号公報
【特許文献4】特開平9−216976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2で提案された樹脂組成物は掻き取り効果を有する無機フィラーを含有するため、洗浄性はある程度良好であった。しかしながら、装置内部の部品が摩耗しやすいとともに、無機フィラーが不純物として残留しやすくなるといった課題があった。また、特許文献3及び4で提案された洗浄剤や樹脂組成物は、洗浄に用いた洗浄剤等を置換して除去するために要する後材樹脂の量が多いとともに、洗浄性についても未だ改良の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、洗浄性に優れているとともに、後材樹脂への置換が容易であり、かつ、取り扱いの容易な洗浄用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、メルトフローレートが1.0g/10分以下の熱可塑性樹脂と、金属石鹸、脂肪酸アマイド、及び鉱油のうちの少なくとも二種を含む添加剤とを配合することで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す洗浄用樹脂組成物が提供される。
[1]樹脂材料の押出機又は成形機の内部を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物であって、基材樹脂と、添剤と、を含有し、前記添加剤が、金属石鹸と、脂肪酸アマイド及び鉱油の少なくともいずれかと、を含み(但し、前記脂肪酸アマイドを含む場合には、前記脂肪酸アマイドの含有量は、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.0質量%以上である)、前記基材樹脂が、そのメルトフローレートが1.0g/10分以下の熱可塑性樹脂である(但し、前記熱可塑性樹脂100質量部に対する無機フィラーの含有量が3質量部以上のものを除く)洗浄用樹脂組成物。
[2]前記熱可塑性樹脂のメルトフローレートが、0.6g/10分以下である前記[1]に記載の洗浄用樹脂組成物
[3]前記脂肪酸アマイドの融点が、50〜250℃である前記[1]又は[2]に記載の洗浄用樹脂組成物。
]前記金属石鹸の含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、0.5〜6.0質量%である前記[1]〜[]のいずれかに記載の洗浄用樹脂組成物。
]前記金属石鹸の含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.5〜5.0質量%である前記[1]〜[]のいずれかに記載の洗浄用樹脂組成物。
]前記脂肪酸アマイド及び前記鉱油の少なくともいずれかの含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.0〜6.0質量%である前記[1]〜[]のいずれかに記載の洗浄用樹脂組成物。
]前記脂肪酸アマイド及び前記鉱油の少なくともいずれかの含有量が、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.5〜5.0質量%である前記[1]〜[]のいずれかに記載の洗浄用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄性に優れているとともに、後材樹脂への置換が容易であり、かつ、取り扱いの容易な洗浄用樹脂組成物を提供することができる。本発明の洗浄用樹脂組成物を用いれば、押出機及び成形機を洗浄する際の洗浄時間を削減することができるとともに、後材樹脂の使用量も少なくて済むため、廃棄物を削減することができる。また、本発明の洗浄用樹脂組成物は、無機フィラーを実質的に含有しない組成とした場合であっても、十分な洗浄効果を有する。このため、無機フィラーを実質的に含有しない組成とした本発明の洗浄用樹脂組成物を用いても、押出機及び成形機内部の部品が摩耗することがないとともに、不純物としての無機フィラーが装置内部に残存することがない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の洗浄用樹脂組成物は、樹脂材料の押出機又は成形機の内部を洗浄するために用いる樹脂組成物であり、基材樹脂と、金属石鹸、脂肪酸アマイド、及び鉱油からなる群より選択される少なくとも二種を含む添加剤とを含有する。そして、基材樹脂が、そのメルトフローレートが1.0g/10分以下の熱可塑性樹脂である。以下、本発明の洗浄用樹脂組成物の詳細について説明する。
【0013】
(基材樹脂)
基材樹脂は、そのメルトフローレートが1.0g/10分以下の熱可塑性樹脂である。メルトフローレートが1.0g/10分以下の熱可塑性樹脂を基材樹脂として用いることで、加熱溶融させた場合であってもある程度の粘度が維持され、押出機や成形機等の装置内部の優れた洗浄性が発揮される。なお、本明細書における樹脂の「メルトフローレート(MFR)」は、ISO1133(230℃、21.2N)で規定する試験法に準拠して測定される物性値である。
【0014】
基材樹脂として用いる熱可塑性樹脂のメルトフローレートは1.0g/10分以下であり、好ましくは0.6g/10分以下、さらに好ましくは0.45g/10分以下、特に好ましくは0.18g/10分以下である。メルトフローレートが0.6g/10分以下の熱可塑性樹脂を基材樹脂とすることで、洗浄性をさらに高めることができる。なお、熱可塑性樹脂のメルトフローレートの下限については特に限定されないが、実質的には0.01g/10分以上であればよい。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、射出成形法や押出成形法等の各種成形法に一般的に使用される熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−ブテン共重合体等を挙げることができる。ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等を挙げることができる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル単独重合体、メタクリル酸メチル単独重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等を挙げることができる。
【0017】
(添加剤)
添加剤は、金属石鹸、脂肪酸アマイド、及び鉱油からなる群より選択される少なくとも二種を含む。これらの添加剤を基材樹脂に配合することで、無機フィラーを実質的に含有させなくても、洗浄性に優れているとともに、後材樹脂への置換が容易な洗浄用樹脂組成物とすることができる。さらに、無機フィラーを含有させなくても十分な洗浄性を示すことから、装置内部の部品を摩耗させることがないとともに、装置内部に無機フィラーが残存することもないため、取り扱いの容易な洗浄用樹脂組成物とすることができる。
【0018】
添加剤は、金属石鹸を含むとともに、脂肪酸アマイド及び鉱油の少なくともいずれかをさらに含むことが、洗浄性がさらに向上するとともに、後材樹脂への置換がさらに容易になるために好ましい。
【0019】
[金属石鹸]
金属石鹸は、通常、長鎖脂肪酸の金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩を除く)である。金属塩としては、ベヘン酸金属塩、モンタン酸金属塩、ラウリン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、パルミチン酸金属塩等を挙げることができる。金属塩を構成する金属としては、リチウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、カルシウム等を挙げることができる。押出機や成形機の内部を洗浄する場合には、通常、洗浄用樹脂組成物を適度に加熱して溶融状態とする。このため、洗浄時の加熱温度(溶融温度)で溶融しうる金属石鹸を用いることが好ましい。
【0020】
金属石鹸の含有量は、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、0.5〜6.0質量%とすることが好ましく、1.5〜5.0質量%とすることがさらに好ましい。金属石鹸の含有量を上記の範囲内とすることで、洗浄性をさらに向上させることができる。
【0021】
[脂肪酸アマイド]
脂肪酸アマイドとしては、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド等を挙げることができる。これらの脂肪酸アマイドは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
脂肪酸アマイドとしては、洗浄時の加熱温度(溶融温度)で溶融しうるものを用いることが好ましい。すなわち、洗浄時の加熱温度が高いほど、融点のより高い脂肪酸アマイドを用いることが好ましい。具体的には、脂肪酸アマイドの融点(mp)は、50〜250℃であることが好ましく、100〜250℃であることがさらに好ましく、130〜250℃であることが特に好ましい。
【0023】
添加剤が脂肪酸アマイドを含む場合、脂肪酸アマイドの含有量は、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.0質量%以上であり、好ましくは1.0〜6.0質量%、さらに好ましくは1.5〜5.0質量%である。脂肪酸アマイドを添加剤として用いる場合において、脂肪酸アマイドの含有量が1.0質量%未満であると洗浄性が不十分となり、より多くの洗浄用樹脂組成物を用いる必要があるとともに、洗浄に要する時間を短縮することができない。脂肪酸アマイドの含有量を上記の範囲内とすることで、洗浄性が向上するとともに、後材樹脂への置換が容易になる。
【0024】
[鉱油]
鉱油としては、パラフィン系の鉱油とナフテン系の鉱油のいずれであっても用いることができる。パラフィン系の鉱油としては、パラフィンワックス、流動パラフィン等を挙げることができる。なかでも、パラフィン系の鉱油を用いることが好ましい。
【0025】
鉱油の含有量は、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.0〜6.0質量%とすることが好ましく、1.5〜5.0質量%とすることがさらに好ましい。鉱油の含有量を上記の範囲内とすることで、洗浄性をさらに向上させることができる。
【0026】
(その他の成分)
洗浄用樹脂組成物には、必要に応じて、上記成分以外のその他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、無機フィラー等を挙げることができる。
【0027】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。フェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等を挙げることができる。リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等を挙げることができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン等を挙げることができる。
【0028】
無機フィラーは、押出機や成形機等の装置内部の部品が摩耗せず、かつ、装置内部に不純物として残留しない範囲で含有させてもよい。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス繊維、天然鉱物等を挙げることができる。
【0029】
<洗浄用樹脂組成物の製造方法>
本発明の洗浄用樹脂組成物は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、撹拌混合装置を使用して前述の基材樹脂及び各種添加剤を混合することによって製造することができる。撹拌混合装置としては、樹脂組成物等を製造する際に使用される通常の撹拌混合装置を使用すればよい。押出機を使用して得られた樹脂組成物を適当な温度で溶融混練して押し出し、ペレット状に成形してもよい。押出機としては、一軸押出機、二軸押出機等を使用することができる。押出機から押し出されたストランドを水中カット又は空中カット等することで、ペレット状の洗浄用樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
<押出機又は成形機の内部の洗浄方法>
本発明の洗浄用樹脂組成物を用いれば、樹脂材料の押出機や成形機等の装置の内部を洗浄することができる。押出機等の装置の内部を洗浄するには、洗浄用樹脂組成物を装置に投入し、装置をほぼ通常通りに作動させればよい。なお、洗浄時には、通常、洗浄用樹脂組成物を加熱して溶融状態とする。加熱温度は特に限定されず、洗浄用樹脂組成物に含有される各種成分の融点等を考慮して設定すればよい。洗浄用樹脂組成物で洗浄した後は、洗浄用の樹脂である後材樹脂を流して装置の内部を置換する。後材樹脂による置換は、洗浄用樹脂組成物を用いた洗浄と同様の条件で実施することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0032】
<洗浄用樹脂組成物の調製>
(実施例1)
ポリエチレン(MFR=0.14g/10分)93.6部、ステアリン酸亜鉛(mp=125℃)4.5部、エチレンビスカプリン酸アマイド(mp=161℃)1.5部、フェノール系酸化防止剤0.2部、及びリン酸系酸化防止剤0.2部をミキサーに入れて撹拌し、混合物を得た。得られた混合物を二軸押出機(スクリュー径:30mmφ)に投入し、200℃で溶融混練して押し出してストランドを得た。得られたストランドをペレタイザーでカットし、薄い黄味褐色でペレット状の洗浄用樹脂組成物を得た。
【0033】
(実施例2〜10、比較例1〜3)
表1に示す組成(単位:部)となるように各成分を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてペレット状の洗浄用樹脂組成物を得た。なお、比較例1については、脂肪酸アマイド(エチレンビスカプリン酸アマイド)以外の成分を用いて洗浄用樹脂組成物を調製し、表1に示す量の脂肪酸アマイド(エチレンビスカプリン酸アマイド)を洗浄時に添加した。
【0034】
【0035】
<装置内部の洗浄>
(汚染工程)
スクリュー径30mmφの単軸押出機(L/D≒36)を用意した。用意した単軸押出機に青色マスターバッチ80g及び希釈樹脂1920g(合計2kg)を投入し、210℃で押し出して、押出機内部を汚染させた。なお、希釈樹脂としては、表2に記載の後材樹脂と同様のものを用いた。また、青色マスターバッチは、上記の希釈樹脂(混合樹脂)にシアニンブルー約3.5%及びジメチルキナクリドン約1.4%を配合したものである。
【0036】
(洗浄工程)
調製した各洗浄用樹脂組成物を汚染させた押出機に投入し、表2に示す温度条件(洗浄温度(℃))で押し出してストランドを得た。得られたストランドをペレタイザーでカットして得たペレットを目視で確認し、青色が認められなくなるまでに要した時間(洗浄時間(分))、及び洗浄用樹脂組成物の使用量(kg)を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
(後材置換工程)
洗浄後の押出機に表2に示す種類の後材樹脂を投入し、表2に示す温度条件(置換温度(℃))で押し出してストランドを得た。得られたストランドをペレタイザーでカットして得たペレットを目視で確認し、洗浄用樹脂組成物に由来する薄い黄味褐色が消失して無色透明になるまでに要した時間(置換時間(分))、及び後材樹脂の使用量(kg)を測定した。結果を表2に示す。
【0038】
<洗浄性評価>
以下に示す評価基準にしたがって各洗浄用樹脂組成物の洗浄性を総合的に評価した。結果を表2に示す。
◎:洗浄時間が6分以内、かつ、置換時間が2分以内である。
○:洗浄時間が6分を超えて8分以内、又は、置換時間が2分を超えて4分以内である。
×:洗浄時間が8分を超え、かつ、置換時間が4分を超える。
【0039】
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の洗浄用樹脂組成物は、樹脂材料の押出機又は成形機の内部を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物として有用である。
【要約】
【課題】洗浄性に優れているとともに、後材樹脂への置換が容易であり、かつ、取り扱いの容易な洗浄用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂材料の押出機又は成形機の内部を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物である。基材樹脂と、金属石鹸、脂肪酸アマイド、及び鉱油からなる群より選択される少なくとも二種を含む添加剤(但し、脂肪酸アマイドを含む場合には、脂肪酸アマイドの含有量は、洗浄用樹脂組成物の全質量を基準として、1.0質量%以上である)と、を含有し、基材樹脂が、そのメルトフローレートが1.0g/10分以下の熱可塑性樹脂である。
【選択図】なし