特許第6476342号(P6476342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476342還元ガス供給装置及び処理済対象物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6476342
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】還元ガス供給装置及び処理済対象物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20190218BHJP
   B23K 31/02 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
   B23K1/00 310B
   B23K31/02 310B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-194006(P2018-194006)
(22)【出願日】2018年10月15日
【審査請求日】2018年10月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100215049
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 豊
(72)【発明者】
【氏名】赤間 広志
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5884448(JP,B2)
【文献】 特許第6322746(JP,B1)
【文献】 特開2018−34162(JP,A)
【文献】 特許第6042956(JP,B1)
【文献】 特開2002−210555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00
B23K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の半田付けが行われる空間を形成するチャンバと;
前記チャンバ内に供給される還元ガスを生成する気化器であって、前記還元ガスとなる前の還元用液体を導入し気化させて前記還元ガスを生成する気化器と;
前記還元用液体が収容された還元用液体ボトル内の前記還元用液体を、前記気化器に導入する前に一旦貯留する中間容器と;
前記還元用液体ボトル内の前記還元用液体を前記中間容器に導く搬送チューブと;
前記中間容器内の前記還元用液体を前記気化器に導く供給チューブと;
前記還元用液体ボトル内の前記還元用液体を前記中間容器に移送する搬送部と;
前記中間容器内の前記還元用液体を前記気化器に移送する供給部とを備える;
還元ガス供給装置。
【請求項2】
前記搬送部が、前記中間容器の内部を負圧にする負圧生成部を含んで構成された;
請求項1に記載の還元ガス供給装置。
【請求項3】
前記供給部が、前記中間容器の内部を加圧する加圧部を含んで構成された;
請求項1又は請求項2に記載の還元ガス供給装置。
【請求項4】
前記還元用液体ボトルの内部が負圧になったときに逆止弁付きフィルタを通して外気を取り込むボトルキャップを有する前記還元用液体ボトルを備える;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の還元ガス供給装置。
【請求項5】
前記中間容器の内部の前記還元用液体の液面があらかじめ設定された高液位に達したことを検知する高液位センサと;
前記高液位センサが前記高液位を検知したときに前記還元用液体ボトル内の前記還元用液体の前記中間容器への移送を停止するように前記搬送部を制御する第1の制御部とを備える;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の還元ガス供給装置。
【請求項6】
前記中間容器の内部の前記還元用液体の液面があらかじめ設定された低液位に達したことを検知する低液位センサと;
前記低液位センサが前記低液位を検知したときに前記中間容器内の前記還元用液体の前記気化器への移送を停止するように前記供給部を制御する第2の制御部とを備える;
請求項5に記載の還元ガス供給装置。
【請求項7】
前記チャンバ内の圧力を検知する圧力センサと;
前記圧力センサで検知された圧力に応じて前記気化器に移送する前記還元用液体の量を調節するように前記供給部を制御する第3の制御部とを備える;
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の還元ガス供給装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の還元ガス供給装置を用いて、前記対象物に半田付けが行われた処理済対象物を製造する方法であって;
前記チャンバ内に前記対象物を供給する工程と;
前記チャンバ内に前記還元ガスを供給しながら前記対象物の半田付けを行う工程と;
前記半田付けが行われた前記対象物を前記チャンバから取り出す工程とを備える;
処理済対象物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は還元ガス供給装置及び処理済対象物の製造方法に関し、特に還元用液体を飛散させずに供給することができる還元ガス供給装置及び処理済対象物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接合対象物の半田付けを行う際、金属表面の酸化物を還元するために、ギ酸ガス等の還元ガスを、接合対象物の半田付けが行われるチャンバ内に供給することが行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6042956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャンバ内に供給される還元ガスは、保存の容易性の観点から液体の状態(以下「還元用液体」ということがある。)で保存され、チャンバに供給される前に気化させるようにするのが一般的である。ボトルに保存された還元用液体を供給する手段として、従来は、還元用液体が収容されたボトルを圧力タンク内に設置し、窒素等の不活性ガスを圧力タンク内に供給して圧力タンク内を加圧することで、ボトル内の還元用液体を送り出すようにするものがあった。しかしながら、この手段では、加圧したときにボトルから還元用液体が吹き出すことがあり、これに伴って、還元用液体の浪費や、ボトル交換の際に飛散した還元用液体に触れてしまうリスクを招来するという不都合があった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、還元用液体を飛散させずに供給することができる還元ガス供給装置及びこの装置を用いた処理済対象物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る還元ガス供給装置は、例えば図1に示すように、対象物Tの半田付けが行われる空間を形成するチャンバ10と;チャンバ10内に供給される還元ガスFGを生成する気化器20であって、還元ガスFGとなる前の還元用液体FLを導入し気化させて還元ガスFGを生成する気化器20と;還元用液体FLが収容された還元用液体ボトル80内の還元用液体FLを、気化器20に導入する前に一旦貯留する中間容器30と;還元用液体ボトル80内の還元用液体FLを中間容器30に導く搬送チューブ51と;中間容器30内の還元用液体FLを気化器20に導く供給チューブ41と;還元用液体ボトル80内の還元用液体FLを中間容器30に移送する搬送部58と;中間容器30内の還元用液体FLを気化器20に移送する供給部48とを備える。
【0007】
このように構成すると、還元用液体を飛散させずに気化器に供給することができ、還元ガスを安定的にチャンバへ供給することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る還元ガス供給装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る還元ガス供給装置1において、搬送部58が、中間容器30の内部を負圧にする負圧生成部55を含んで構成されている。
【0009】
このように構成すると、中間容器の内部を負圧にすることによって中間容器の内部と還元用液体ボトルの内部との圧力差で還元用液体を中間容器に移送することができると共に、中間容器の内部に移送された還元用液体に気泡が混入していた場合にその気泡を除去することが可能になる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る還元ガス供給装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る還元ガス供給装置1において、供給部48が、中間容器30の内部を加圧する加圧部45を含んで構成されている。
【0011】
このように構成すると、中間容器の内部を加圧することによって中間容器の内部の還元用液体を気化器に向けて圧送することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る還元ガス供給装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る還元ガス供給装置1において、還元用液体ボトル80の内部が負圧になったときに逆止弁付きフィルタを通して外気を取り込むボトルキャップ83を有する還元用液体ボトル80を備える。
【0013】
このように構成すると、還元用液体ボトルの内部の還元用液体がなくなったときに、還元用液体が収容された還元用液体ボトルごと交換することで、簡便に還元用液体の供給を継続することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る還元ガス供給装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る還元ガス供給装置1において、中間容器30の内部の還元用液体FLの液面があらかじめ設定された高液位に達したことを検知する高液位センサ35と;高液位センサ35が高液位を検知したときに還元用液体ボトル80内の還元用液体FLの中間容器30への移送を停止するように搬送部58を制御する第1の制御部92とを備える。
【0015】
このように構成すると、中間容器の内部の液面の過度な上昇を抑制することができ、搬送チューブの先端が液没することを抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る還元ガス供給装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第5の態様に係る還元ガス供給装置1において、中間容器30の内部の還元用液体FLの液面があらかじめ設定された低液位に達したことを検知する低液位センサ36と;低液位センサ36が低液位を検知したときに中間容器30内の還元用液体FLの気化器20への移送を停止するように供給部48を制御する第2の制御部93とを備える。
【0017】
このように構成すると、高液位と低液位との間の容積を把握することができるため、気化器へ供給された還元用液体及びチャンバに供給された還元ガスの量を把握することができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る還元ガス供給装置は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る還元ガス供給装置1において、チャンバ10内の圧力を検知する圧力センサ18と;圧力センサ18で検知された圧力に応じて気化器20に移送する還元用液体FLの量を調節するように供給部48を制御する第3の制御部93とを備える。
【0019】
このように構成すると、圧力センサで検知された圧力からチャンバ内の還元ガスの量を推定することができ、チャンバ内の還元ガスの量を適切に調節することで、半田付けが行われる際の還元作用の低下を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第8の態様に係る処理済対象物の製造方法は、例えば図2及び図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つの態様に係る還元ガス供給装置1を用いて、対象物Tに半田付けが行われた処理済対象物を製造する方法であって;チャンバ10内に対象物Tを供給する工程(S3)と;チャンバ10内に還元ガスFGを供給しながら対象物Tの半田付けを行う工程(S8〜S10)と;半田付けが行われた対象物Tをチャンバ10から取り出す工程(S13)とを備える。
【0021】
このように構成すると、還元用液体を飛散させずに気化器に供給して還元ガスを安定的にチャンバへ供給しながら処理済対象物を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、還元用液体を飛散させずに気化器に供給することができ、還元ガスを安定的にチャンバへ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係るギ酸供給装置の概略構成を示す模式的系統図である。
図2】処理済対象物の製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0025】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係るギ酸供給装置1を説明する。図1は、ギ酸供給装置1の概略構成を示す模式的系統図である。ギ酸供給装置1は、主な要素として、対象物Tの半田付けが行われる空間を形成するチャンバ10と、気化器20と、シリンジ30と、加圧ポンプ45と、真空ポンプ55と、制御装置90とを備えている。
【0026】
ギ酸供給装置1は、本実施の形態では、対象物Tに対して、ギ酸ガスFGを供給しながら半田付けを行うことができる装置となっている。対象物Tは、表面に金属部分を有しており、半田付けは、対象物Tの表面の金属部分に対して行われる。対象物Tとして、基板や電子部品を適用することができる。フラックスを使用せずに対象物Tの半田付けを行う際、対象物Tの表面の金属部分の酸化物を除去するために、還元剤で酸化物を還元するとよく、本実施の形態では還元剤としてギ酸を用いることとしている。ギ酸は、保存の利便性の観点から液体(ギ酸液FL)の状態でギ酸液ボトル80に保存され、還元力を発揮させる観点から気体(ギ酸ガスFG)の状態でチャンバ10内に供給されるようにしている。ギ酸は、還元剤として機能するカルボン酸の一種であり、ギ酸ガスFGは還元ガスに相当し、ギ酸液FLは還元用液体に相当する。また、ギ酸供給装置1は還元ガス供給装置に相当する。
【0027】
チャンバ10は、前述のように、対象物Tの半田付けが行われる空間を形成するものである。チャンバ10は、対象物Tを搬入出することができる搬入出口11が形成されている。また、チャンバ10は、搬入出口11を塞ぐことができるように、開閉可能なシャッタ12を有している。チャンバ10は、シャッタ12で搬入出口11を塞ぐことにより、内部の空間を密閉することができるように構成されている。チャンバ10は、内部の空間を所望の圧力(例えば概ね10Pa(絶対圧力))に減圧しても耐えうるような材料や形状が採用されている。また、チャンバ10には、排気管16が接続されている。排気管16には、流路を遮断可能な排気仕切弁17が配設されている。また、チャンバ10には、内部の圧力を検知する圧力センサ18が設けられている。
【0028】
気化器20は、ギ酸液FLを導入してギ酸ガスFGを生成するものである。気化器20は、本実施の形態では、ギ酸液FLよりも熱容量が大きい金属のブロック21にヒーター22が埋め込まれると共にギ酸流体(ギ酸液FL、ギ酸ガスFG、あるいはこれらの混合流体)が流れる流体流路23が形成され、ヒーター22であらかじめ加熱されたブロック21にギ酸液FLを流入させ、ギ酸液FLが流体流路23を流れる際にブロックから受熱して気化してギ酸ガスFGが生成されるように構成されている。気化器20は、本実施の形態では、ギ酸ガスFGの出口20dがチャンバ10内に開口するようにブロック21がチャンバ10の外面に取り付けられているが、ブロック21をチャンバ10から離れた位置に設置して、ブロック21に形成されたギ酸ガスFGの出口とチャンバ10とをチューブで接続するように構成してもよい。いずれにしても、気化器20は、生成したギ酸ガスFGをチャンバ10内に供給することができるように配置されている。なお、気化器20として、上述のブロック21を有する構成のもののほか、ギ酸液FLの中にキャリアガスを供給しバブリングさせてキャリアガスと共にギ酸ガスFGを供給するように構成されたものを用いてもよい。
【0029】
シリンジ30は、ギ酸液ボトル80に保存されているギ酸液FLを気化器20に流入させる前に一旦貯留するものであり、中間容器に相当する。ギ酸液ボトル80のギ酸液FLを気化器20に流入させる前に一旦シリンジ30に貯留することで、ギ酸液ボトル80から気化器20に搬送されるギ酸液FLに含まれ得る気泡の除去を可能にしている。シリンジ30は、本実施の形態では、ギ酸の影響で腐食することを回避又は抑制することができる材料で形成されており、ガラスで円筒状に形成された本体31と、本体31の両端に設けられた蓋32とを有している。本体31は、チャンバ10に供給されるギ酸ガスFGの量を勘案してその容積を決定するとよく、本実施の形態では内容積が概ね10〜50ccになるように形成されている。また、本体31は、ギ酸液FLが貯留されたときに、ギ酸液FLの液面から上端までの空間を確保するために、細長く形成することが好ましい。蓋32は、本実施の形態では、ステンレス板を、フッ素樹脂の一種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングして構成されている。蓋32は、本体31をその両端の開口が鉛直上下になるように配置したときに、本体31の上側の開口を塞ぐものを上蓋32tといい、下側の開口を塞ぐものを下蓋32sということとする。なお、シリンジ30の内部にピストンは設けられていない。
【0030】
シリンジ30には、高液位センサ35と、低液位センサ36とが設けられている。高液位センサ35は、シリンジ30内のギ酸液FLの液位が、あらかじめ設定された高液位に達したことを検知するものである。低液位センサ36は、シリンジ30内のギ酸液FLの液位が、あらかじめ設定された低液位に達したことを検知するものである。高液位センサ35及び低液位センサ36として、ガラス製の本体31を挟むように発光素子と受光素子とを配置して両素子間の光を遮るか否かで液位を検知するものや、本体31の側方からカメラで液面を撮影した画像の処理により液位を検知するもの等、種々のセンサを用いることができる。
【0031】
シリンジ30と気化器20とは、供給チューブ41で接続されている。供給チューブ41は、シリンジ30内のギ酸液FLを気化器20に導く流路を構成する管である。供給チューブ41の一端は、シリンジ30の下蓋32sを貫通して本体31の内部に連通して開口するように下蓋32sに取り付けられている。供給チューブ41の他端は、気化器20のギ酸液導入口20eに接続されている。供給チューブ41には、流路を遮断可能な供給仕切弁43が配設されている。上述した低液位センサ36が検知する低液位は、本体31内と連通して開口する供給チューブ41の一端の最上部よりも高い位置(供給チューブ41の一端の開口がギ酸液FLで満たされる液位)に設定されるようになっている。
【0032】
シリンジ30には、上述の供給チューブ41のほか、搬送チューブ51と、加圧チューブ46と、真空チューブ56とが接続されている。搬送チューブ51、加圧チューブ46、真空チューブ56は、それぞれ、シリンジ30の上蓋32tを貫通して本体31の内部に連通するように上蓋32tに取り付けられている。搬送チューブ51は、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLをシリンジ30に導く流路を構成する管である。搬送チューブ51の一方の端部は、上述のように上蓋32tを貫通し、本体31の内部に中ほどまで延びて、本体31の内部に開口している。本体31の内部にある搬送チューブ51の端部51eは、前述した高液位センサ35が検知する高液位よりも上方に配置されている。搬送チューブ51の他方の端部は、ギ酸液ボトル80に接続されている。搬送チューブ51には、流路を遮断可能な搬送仕切弁53が配設されている。なお、搬送仕切弁53とギ酸液ボトル80との間の搬送チューブ51に、迅速流体継手(カップリング)等の連結器52を設けると、シリンジ30とギ酸液ボトル80との搬送チューブ51を介した着脱が容易になり、ギ酸液ボトル80の交換がしやすくなって好適である。
【0033】
加圧チューブ46は、シリンジ30の内部を加圧するための不活性ガス(本実施の形態では窒素ガス)をシリンジ30に導く流路を構成する管である。加圧チューブ46の一端は、シリンジ30の上蓋32tを貫通して本体31の内部に連通して開口するように上蓋32tに取り付けられている。加圧チューブ46の他端は、窒素ガスタンク等の窒素ガス源(不図示)に接続されている。加圧チューブ46には、窒素ガスを圧送する加圧ポンプ45が配設されている。加圧ポンプ45は、窒素ガスをシリンジ30内に供給することでシリンジ30の内部を加圧することが可能であり、加圧部に相当する。加圧ポンプ45はコンプレッサであってもよい。加圧ポンプ45とシリンジ30との間の加圧チューブ46には、流路を遮断可能な加圧仕切弁47が配設されている。供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を開けた状態で、加圧ポンプ45を起動し、加圧チューブ46を介して窒素ガスをシリンジ30の内部に供給してシリンジ30の内部を加圧すると、シリンジ30内のギ酸液FLを、供給チューブ41を介して気化器20に移送することができるため、供給仕切弁43、加圧ポンプ45、加圧チューブ46、及び加圧仕切弁47は供給部48を構成する。
【0034】
真空チューブ56は、シリンジ30の内部を負圧にするためにシリンジ30内の気体を排出する流路を構成する管である。真空チューブ56の一端は、シリンジ30の上蓋32tを貫通して本体31の内部に連通して開口するように上蓋32tに取り付けられている。真空チューブ56の他端は、シリンジ30の外側で開放されている。真空チューブ56には、真空ポンプ55が配設されている。真空ポンプ55は、シリンジ30内の気体を排出することでシリンジ30の内部を負圧にすることが可能であり、負圧生成部に相当する。真空ポンプ55とシリンジ30との間の真空チューブ56には、流路を遮断可能な真空仕切弁57が配設されている。搬送仕切弁53及び真空仕切弁57を開けた状態で、真空ポンプ55を起動し、真空チューブ56を介してシリンジ30内の気体を外部に排出してシリンジ30の内部を負圧にすると、シリンジ30の内部とギ酸液ボトル80の内部との圧力差により、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLをシリンジ30内に搬送することができるため、搬送仕切弁53、真空ポンプ55、真空チューブ56、及び真空仕切弁57は搬送部58を構成する。なお、前述のように、シリンジ30の本体31の内部にある搬送チューブ51の端部を、高液位センサ35が検知する高液位よりも上方に配置すると、搬送チューブ51の先端の液没を防ぐことができ、これによってシリンジ30の内部を負圧にしたときのギ酸液FLの導入を確保することができる。シリンジ30の内部を負圧にしたときに真空ポンプ55がギ酸液FLを吸引しないように、また、シリンジ30の内部を加圧ポンプ45で加圧したときにギ酸液FLが搬送チューブ51に逆流しないように、高液位は低めに設定するとよい。真空ポンプ55と真空ポンプ55との間の真空チューブ56には、一端がチャンバ10に接続された排気管16の他端が接続されている。この構成により、真空ポンプ55は、シリンジ30内を負圧にする装置とチャンバ10内を負圧にする装置とを兼ねることとなる。
【0035】
ギ酸液ボトル80は、シリンジ30に搬送されるギ酸液FLが収容されたボトルであり、還元用液体ボトルに相当する。ギ酸液ボトル80は、ギ酸液FLが収容された本体81と、本体81の開口を塞ぐボトルキャップ83とを有している。本体81は、ギ酸液FLが瓶に入った状態で市販されている場合にその瓶をそのまま利用することができ、3.8Lや500mL等、種々の大きさのものを用いることができる。ボトルキャップ83は、図示は省略するが、内側面には本体81に螺合するためのネジ山が切ってあり、端面には搬送チューブ51を貫通させる貫通孔が形成されていると共に逆止弁付きフィルタが設けられている。逆止弁付きフィルタは、外部から内部へ空気(外気)を取り入れることができるがその逆(内部から外部)へは空気を通過させないように構成されたフィルタである。ボトルキャップ83は、必要に応じてアダプタを用いることで、本体81として種々の大きさの市販の瓶に螺合することができる。ギ酸液ボトル80は、ロードセル88に載置して用いることで、内部のギ酸液FLの残量管理を行うこととしてもよい。
【0036】
制御装置90は、ギ酸供給装置1の動作を制御する機器である。制御装置90は、受信部91と、真空制御部92と、加圧制御部93と、総合制御部94と、演算部95とを有している。受信部91は、圧力センサ18、高液位センサ35、低液位センサ36のそれぞれと有線又は無線で電気的に接続されており、各センサで検知された結果を信号として受信することができるように構成されている。真空制御部92は、真空ポンプ55と有線又は無線で電気的に接続されており、真空ポンプ55の起動及び停止を制御することができるように構成されている。真空制御部92は第1の制御部に相当する。加圧制御部93は、加圧ポンプ45と有線又は無線で電気的に接続されており、加圧ポンプ45の起動及び停止を制御することができるように構成されている。加圧制御部93は、第2の制御部と第3の制御部とを兼ねている。総合制御部94は、チャンバ10のシャッタ12と有線又は無線で電気的に接続されており、シャッタ12の開閉を制御することができるように構成されている。また、総合制御部94は、気化器20と有線又は無線で電気的に接続されており、気化器20のヒーター22の起動及び停止を制御することができるように構成されている。また、総合制御部94は、排気仕切弁17、供給仕切弁43、加圧仕切弁47、搬送仕切弁53、真空仕切弁57のそれぞれと有線又は無線で電気的に接続されており、各弁の開閉を制御することができるように構成されている。演算部95は、圧力センサ18で検知された圧力に基づいて、チャンバ10内のギ酸ガスFGの量を推定することができるように構成されている。演算部95におけるギ酸ガスFGの量の推定は、チャンバ10内にギ酸ガスFGが多く供給されればチャンバ10内におけるギ酸ガスFGの分圧が上昇してチャンバ10の内圧が上昇することを利用して行われる。なお、制御装置90を構成する受信部91、真空制御部92、加圧制御部93、総合制御部94、演算部95は、図示の例では、機能の観点から別体に構成されていることとしているが、渾然一体に構成されていてもよい。あるいは、各部91、92、93、94、95は、図示のように集合して配置される代わりに分離して配置されていてもよい。
【0037】
引き続き図2を参照して、本発明の実施の形態に係る、対象物Tに半田付け処理が行われた処理済対象物を、ギ酸供給装置1を用いて製造する方法を説明する。図2は、処理済対象物の製造手順を示すフローチャートである。以下のギ酸供給装置1を用いた処理済対象物の製造方法の説明は、ギ酸供給装置1の作用の説明を兼ねている。以下の説明において、ギ酸供給装置1の構成に言及しているときは、適宜図1を参照することとする。
【0038】
ギ酸供給装置1の停止中は、シャッタ12が閉まっており、加圧ポンプ45及び真空ポンプ55が停止しており、各弁(排気仕切弁17、供給仕切弁43、加圧仕切弁47、搬送仕切弁53、真空仕切弁57)が閉となっている。ギ酸供給装置1が起動すると加圧ポンプ45及び真空ポンプ55が起動し、ギ酸供給装置1の作動中は常時加圧ポンプ45及び真空ポンプ55が作動していることとなる。また、本実施の形態では、ギ酸供給装置1を起動したタイミングで、制御装置90が気化器20のヒーター22を起動することとしている。この状態で、まず、ギ酸液ボトル80をセットする(S1)。ギ酸液ボトル80をセットするには、典型的には、市販されている瓶入りのギ酸液FLを入手し、瓶の蓋をボトルキャップ83に付け替え、瓶を本体81として利用する。このようにすると、ギ酸液FLを他の容器に移し替えることなく、ボトルキャップ83を交換するだけで済むので、簡便にギ酸液ボトル80をセットすることができる。なお、ギ酸液ボトル80をセットする工程(S1)は、ギ酸供給装置1の停止中に行ってもよい。ギ酸液ボトル80をセットする工程(S1)では、搬送チューブ51を、ボトルキャップ83の貫通孔を貫通させて、搬送チューブ51の他端が本体81の底部付近に至るまで差し込む。このとき、ギ酸液FLに入れる前の搬送チューブ51内に存在していた空気が、本体81に収容されているギ酸液FLに混入する場合がある。
【0039】
次に、制御装置90は、排気仕切弁17を開にする(S2)。排気仕切弁17を開けると、排気管16及び真空チューブ56の一部を介したチャンバ10内の気体の排気が行われる。シャッタ12を開ける前に排気管16等を介してチャンバ10内の気体をチャンバ10から排出させることで、シャッタ12を開けてもチャンバ10内の気体が搬入出口11を介してチャンバ10の外に流出することを防ぐことができる。排気管16等を介してチャンバ10から排出される気体の流量は、チャンバ10内の気体が搬入出口11から流出しない程度にチャンバ10内を負圧にすることができる流量で足りる。これにより、チャンバ10内にギ酸ガスFGが残存していた場合も、ギ酸ガスFGがそのままチャンバ10の外に流出することを防ぐことができる。次に、チャンバ10のシャッタ12を開け、対象物Tをチャンバ10内に供給する(S3)。シャッタ12の開閉動作は、典型的には、装置の操作者がシャッタ12を開けるボタン(不図示)を押すことにより、制御装置90がシャッタ12の開閉を制御することにより行われる。対象物Tがチャンバ10内に搬入されたら、制御装置90は、シャッタ12を閉じて、チャンバ10内を密閉する。チャンバ10が密閉された後も排気仕切弁17を開の状態に維持することで、チャンバ10内が対象物Tの半田付けに適した真空度(例えば100Pa(絶対圧力)程度)に減圧される。
【0040】
対象物Tをチャンバ10内に供給したら、制御装置90は、搬送仕切弁53及び真空仕切弁57を開にする(S4)。すると、シリンジ30の内部が減圧されて負圧(陰圧)となり、ギ酸液ボトル80内とシリンジ30内との圧力差によって、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLが、飛散することなく、搬送チューブ51を介してシリンジ30内に搬送される。このとき、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLが搬送チューブ51を介して吸引されて、ギ酸液ボトル80内が負圧(陰圧)になると、ボトルキャップ83に設けられた逆止弁付フィルタを通してギ酸液ボトル80内に外気が取り込まれ、ギ酸液ボトル80内の圧力が平衡することとなる。また、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLをシリンジ30内に真空引きすることで、搬送チューブ51をギ酸液ボトル80に入れる際にギ酸液FLに空気が混入した場合でも、シリンジ30内に搬送されたギ酸液FL中の存在し得る気体が真空ポンプ55に吸引され、シリンジ30内のギ酸液FLから気泡を除去することができる。
【0041】
搬送仕切弁53及び真空仕切弁57を開けたら、制御装置90は、高液位センサ35が高液位を検知したか否かを判断する(S5)。高液位を検知しない場合は再び高液位センサ35が高液位を検知したか否かを判断する工程(S5)に戻る。他方、高液位を検知した場合は、搬送仕切弁53及び真空仕切弁57を閉にする(S6)。搬送仕切弁53及び真空仕切弁57を閉じることで、ギ酸液ボトル80からシリンジ30へのギ酸液FLの搬送が停止する。高液位を検知したときにシリンジ30へのギ酸液FLの搬送を停止することで、シリンジ30内の搬送チューブ51がギ酸液FLに没入することを防ぐことができる。搬送仕切弁53及び真空仕切弁57を閉じたら、制御装置90は、排気仕切弁17を閉にする(S7)。
【0042】
次に、制御装置90は、供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を開にする(S8)。供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を開にすると、窒素ガスがシリンジ30の内部の上部に供給されてシリンジ30の内部の気相部分が加圧され、シリンジ30内と気化器20内との圧力差によって、シリンジ30内のギ酸液FLが供給チューブ41を介して気化器20に供給される。ここでのシリンジ30内の加圧は、チャンバ10内の真空(負圧)に対する加圧であり、大気圧以下(例えば0.005MPa程度)である。供給仕切弁43及び加圧仕切弁47の開によって供給チューブ41を流れるギ酸液FLは、気化器20に流入すると、ブロック21内の流路23を流れる際に、ヒーター22で加熱されたブロック21から受熱して、気化器20から流出するまでの間に気化し、ギ酸ガスFGとなってチャンバ10内に供給される。ギ酸ガスFGが供給されたチャンバ10内では、対象物Tの半田付けが行われ、半田付けされた処理済対象物が生成される。
【0043】
供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を開にして、ギ酸液FLを気化器20に供給し、ギ酸ガスFGをチャンバ10内に供給したら、制御装置90は、ギ酸液FLが気化器20に所定の量供給されたか否かを判断する(S9)。所定の量供給されたか否かは、圧力センサ18で検知された圧力から、演算部95が、チャンバ10内に供給されたギ酸ガスFGの量を推定することから把握される。ここで、所定の量は、チャンバ10内における対象物Tの半田付けを適切に行うのに必要な量のギ酸ガスFGをチャンバ10内に供給することができる分の、気化器20に供給されるギ酸液FLの量である。チャンバ10内における対象物Tの半田付けの際に、対象物Tの金属部分の酸化膜の除去に作用するのは、ギ酸液FLではなくギ酸ガスFGである。したがって、仮に気化器20に供給されたギ酸液FLの一部が気化せずにギ酸液FLのままチャンバ10内に供給された場合は、気化されなかったギ酸液FLの分は有効に作用されなかった分となる。この場合は、気化器20に供給されたギ酸液FLのすべてがギ酸ガスFGとなってチャンバ10内に供給された場合に比べて、たとえ気化器20に供給されたギ酸液FLの量が同じであっても、ギ酸液FLの一部が気化しない場合は所定の量のギ酸液FLが気化器20に供給されたとはいえないこととなる。圧力センサ18で検知された圧力の上昇は、チャンバ10内のギ酸ガスFGの分圧の上昇とみることができるので、圧力センサ18で検知された圧力からチャンバ10内に供給されたギ酸ガスFGの量を推定することができる。
【0044】
ギ酸液FLが気化器20に所定の量供給されたか否かを判断する工程(S9)において、所定の量供給されていない場合、制御装置90は、低液位センサ36が低液位を検知したか否かを判断する(S10)。低液位を検知しない場合は再びギ酸液FLが気化器20に所定の量供給されたか否かを判断する工程(S9)に戻る。他方、低液位センサ36が低液位を検知したか否かを判断する工程(S10)において低液位を検知した場合、あるいは、ギ酸液FLが気化器20に所定の量供給されたか否かを判断する工程(S9)において所定の量供給された場合、制御装置90は供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を閉にする(S11)。供給仕切弁43及び加圧仕切弁47の閉により、気化器20へのギ酸液FLの供給が停止する。低液位センサ36が低液位を検知したときに気化器20へのギ酸液FLの供給を停止した場合は、供給チューブ41の入口をギ酸液FLで満たした状態を維持することができ、供給チューブ41に気体が混入することを回避することができる。ギ酸液FLが気化器20に所定の量供給されたときに気化器20へのギ酸液FLの供給を停止した場合は、過剰の量のギ酸液FLを気化器20に供給することを抑制することができる。なお、ギ酸液FLが気化器20に所定の量供給されたか否かを判断する工程(S9)と低液位センサ36が低液位を検知したか否かを判断する工程(S10)とは、順序が逆であってもよく、同時に行われてもよい。
【0045】
供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を閉にしたら、制御装置90は、排気仕切弁17を開にする(S12)。このように、排気仕切弁17を開にしてチャンバ10内をやや負圧にすることでチャンバ10内の気体がチャンバ10外に流出しないようにしてから、シャッタ12を開けて、処理済の対象物Tをチャンバ10から取り出せるようにする(S13)。これで、処理済対象物の製造が完了する。1つの処理済対象物の製造が完了し、次の処理済対象物を製造する際、上述のフローを再度行うことになるが、ギ酸液ボトル80内にギ酸液FLが残っており、ギ酸液ボトル80を新たにセットする必要がない場合は、工程(S13)のときに既に排気仕切弁17が開いているので、上述のフローチャートにおいて、対象物Tをチャンバ10内に供給する工程(S3)から始めればよい。なお、チャンバ10内で対象物Tの半田付けの際に用いられたギ酸ガスFGを含む排出ガスは、排気管16及び真空チューブ56を介して触媒ユニット(不図示)に導かれ、排出ガス中のギ酸の濃度を環境に影響を与えない濃度まで低下させる処理が行われた後、触媒ユニット(不図示)から排出される。
【0046】
以上で説明したように、本実施の形態に係るギ酸供給装置1によれば、搬送チューブ51を介してギ酸液ボトル80に接続されたシリンジ30の内部を負圧にすることでギ酸液ボトル80内のギ酸液FLを一旦シリンジ30に搬送し、その後、シリンジ30の内部を加圧してシリンジ30内のギ酸液FLを供給チューブ41を介して気化器20に供給するので、従来のギ酸液が収容されたボトルが内部に設置された圧力タンク内を加圧した場合に生じ得るギ酸液FLの飛散を生じさせずに、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLを気化器20に供給することができる。また、シリンジ30の内部を負圧にすることでギ酸液ボトル80内のギ酸液FLをシリンジ30に搬送するので、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLに気泡が混入していた場合にその気泡を真空引きにより除去することができる。また、シリンジ30内を加圧することでシリンジ30内のギ酸液FLを気化器20に供給するので、ギ酸液FLを搬送するポンプ(耐ギ酸仕様のポンプ)を設けなくて済む。また、ギ酸液ボトル80内のギ酸液FLがなくなったときに、ギ酸液FLが収容されたギ酸液ボトル80ごと交換することで、簡便かつ安全にギ酸液FLの気化器20への供給を継続することができる。
【0047】
以上の説明では、チャンバ10内へのギ酸ガスFGの供給量の管理を、チャンバ10内に設けられた圧力センサ18で検知された圧力に基づいて行うこととしたが、これに代えて、又はこれと併用して、供給チューブ41に流量計を設けてこの流量計で検知された、気化器20へ供給されるギ酸液FLの流量に基づいて行うこととしてもよく、高液位センサ35で検知される高液位と低液位センサ36で検知される低液位との間のギ酸液FLの量を1回につき気化器20へ供給する量に設定して行うこととしてもよく、加圧ポンプ45の起動による供給チューブ41を介したギ酸液FLの気化器20への定格時の供給流量と送液時間との関係から気化器20へ供給されるギ酸液FLの供給量を演算により求め、この演算された結果に基づいて行うこととしてもよい。
【0048】
以上の説明では、ギ酸供給装置1の作動中は常時加圧ポンプ45及び真空ポンプ55を作動させておき、シリンジ30から気化器20へのギ酸液FLの供給を停止する際に供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を閉にすることとしたが、締切運転による不都合が生じる場合は供給仕切弁43及び加圧仕切弁47を閉じると共に加圧ポンプ45を停止することとしてもよい。また、以上の説明では、排気管16の他端が真空チューブ56に接続されていて、シリンジ30内を負圧にする装置とチャンバ10内を負圧にする装置とを真空ポンプ55が兼ねることとしたが、排気管16の他端を真空チューブ56に接続せずに排気管16を真空チューブ56とは独立した系統として構成したうえでチャンバ10内の気体を排出する排気ポンプ(不図示)を排気管16に設けて、シリンジ30内の負圧化とチャンバ10内の負圧化とを個別に制御できる構成としてもよい。この場合、排気仕切弁17、搬送仕切弁53、真空仕切弁57の作動の際に、上述の加圧ポンプ45の制御の例に倣って、必要に応じて排気ポンプ(不図示)及び/又は真空ポンプ55を発停させることとしてもよい。
【0049】
以上の説明では、還元ガスとしてギ酸ガスFGを用いることとしたが、ギ酸ガスFG以外のカルボン酸ガスや水素等を用いることとしてもよい。しかしながら、入手容易性や半田付け処理の利便性の観点から還元ガスとしてギ酸ガスFGを用いるのが好ましい。
【符号の説明】
【0050】
1 ギ酸供給装置
10 チャンバ
18 圧力センサ
20 気化器
30 シリンジ
35 高液位センサ
36 低液位センサ
41 供給チューブ
45 加圧ポンプ
48 供給部
51 搬送チューブ
55 真空ポンプ
58 搬送部
80 ギ酸液ボトル
83 ボトルキャップ
90 制御装置
92 真空制御部
93 加圧制御部
FG ギ酸ガス
FL ギ酸液
T 対象物
【要約】
【課題】還元用液体を飛散させずに供給する還元ガス供給装置及び処理済対象物の製造方法を提供する。
【解決手段】還元ガス供給装置1は、対象物Tの半田付けが行われる空間を形成するチャンバ10と、チャンバ10内に供給される還元ガスFGとなる前の還元用液体FLを導入し気化させて還元ガスFGを生成する気化器20と、還元用液体ボトル80内の還元用液体FLを気化器20に導入する前に一旦貯留する中間容器30と、搬送チューブ51と、供給チューブ41と、還元用液体ボトル80内の還元用液体FLを中間容器30に移送する搬送部58と、中間容器30内の還元用液体FLを気化器20に移送する供給部48とを備える。処理済対象物の製造方法は、チャンバ10内に対象物Tを供給し、チャンバ10内に還元ガスFGを供給しながら対象物Tの半田付けを行い、半田付けが行われた対象物Tをチャンバ10から取り出す。
【選択図】図1
図1
図2