(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476345
(24)【登録日】2019年2月8日
(45)【発行日】2019年2月27日
(54)【発明の名称】循環流動床ボイラー設備から発生する煙道ガス中の二酸化硫黄含有量を削減する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20190218BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20190218BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20190218BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20190218BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20190218BHJP
F23C 10/04 20060101ALI20190218BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20190218BHJP
【FI】
B01D53/50 100
B01D53/83ZAB
B01D53/14 100
B01J20/04 A
B01J20/30
F23C10/04
F23J15/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-504905(P2018-504905)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公表番号】特表2018-522726(P2018-522726A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】FI2016050753
(87)【国際公開番号】WO2017077180
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2018年1月30日
(31)【優先権主張番号】20155805
(32)【優先日】2015年11月4日
(33)【優先権主張国】FI
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506425251
【氏名又は名称】スミトモ エスエイチアイ エフダブリュー エナージア オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッカ、アンティ
【審査官】
河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−503707(JP,A)
【文献】
特開平05−309229(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/097976(WO,A1)
【文献】
米国特許第07862789(US,B1)
【文献】
特開2003−292321(JP,A)
【文献】
特開平03−059309(JP,A)
【文献】
特開平03−202127(JP,A)
【文献】
特開平03−202125(JP,A)
【文献】
特開2000−350920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34 − 53/73
B01D 53/74 − 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01J 20/00 − 20/28
B01J 20/30 − 20/34
F23C 10/00 − 10/32
F23C 15/00
F23G 5/30
F23J 13/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有の炭素質燃料の第1流を、第1供給速度でボイラーの炉(12)に供給する工程と、
所定のd50粒径を有する炭酸カルシウム含有吸収剤の第2流を、第2供給速度で前記炉に供給する工程と、
前記炉内に形成する粒子床の流動化を行うため、前記炉に酸素含有ガスを供給する工程と、
前記酸素で燃料を燃焼させることにより、燃料内の硫黄を酸化させて二酸化硫黄を生成する工程と、
炉内で炭酸カルシウムを焼成して酸化カルシウムを生成し、この酸化カルシウムの一部を利用して前記二酸化硫黄の第1部分の硫酸化を行って炉内に硫酸カルシウムを生成する工程と、
二酸化硫黄の第2部分を含む煙道ガスと、前記煙道ガスにより取り込まれた、酸化カルシウムを含む粒子とを、煙道ガスチャネル(18)に沿って前記炉から排出する工程と、
前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の第1部分を含む、前記取り込まれた粒子の第1部分を、カットオフサイズを有する粒子分離器(14)で前記煙道ガスから分離し、この分離された粒子の少なくとも一部を戻りダクト(16)を介して前記炉(12)に戻す工程と、
前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の第2部分を含む、前記取り込まれた粒子の第2部分を、前記煙道ガスと共に、前記炉(12)から、前記炉の下流に配置された半乾式硫黄還元ステージ(38,52)へ搬送する工程と、
前記半乾式硫黄還元ステージ(38,52)において、前記煙道ガスの二酸化硫黄含有量を削減する工程と、
を具備する、循環流動床ボイラー設備(10)の二酸化硫黄排出を削減する方法において、
前記炭酸カルシウム含有吸収剤の前記所定のd50粒径は、10から20μmであり、かつ、前記粒子分離器の前記カットオフサイズの50%より小さいことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記炭酸カルシウム含有吸収剤の前記所定のd50粒径は、前記粒子分離器の前記カットオフサイズの30%より小さいことを特徴とする請求項1に記載の循環流動床ボイラー設備(10)の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項3】
前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の80%超が前記粒子の第2部分にあり、前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の20%未満が前記粒子の第1部分にあることを特徴とする請求項1に記載の循環流動床ボイラー設備(10)の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項4】
前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の90%超が前記粒子の第2部分にあり、前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の10%未満が前記粒子の第1部分にあることを特徴とする請求項3に記載の循環流動床ボイラー設備(10)の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項5】
前記搬送する工程は、前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の粒径を縮小させることなく行われることを特徴とする請求項1に記載の循環流動床ボイラー設備(10)の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項6】
前記搬送する工程は、前記取り込まれた酸化カルシウム粒子の第2部分を消和させることなく行われることを特徴とする請求項1に記載の循環流動床ボイラー設備(10)の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項7】
前記搬送する工程は、前記粒子の物理的又は化学的性質を変える外部処理を施すことなく行われることを特徴とする請求項1に記載の循環流動床ボイラー設備の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項8】
前記第1供給速度の前記第2供給速度に対する比は、前記第2流のカルシウムの前記第1流の硫黄に対するモル比(Ca/Sモル比)が2.5から3.5となるものであり、前記半乾式硫黄還元ステージには追加の吸着剤が供給されないことを特徴とする請求項1に記載の循環流動床ボイラー設備の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項9】
前記第1供給速度の前記第2供給速度に対する比は、前記第2流のカルシウムの前記第1流の硫黄に対するモル比(Ca/Sモル比)が1.5から2.5となるものであり、前記半乾式硫黄還元ステージには追加の吸着剤が供給されないことを特徴とする請求項5に記載の循環流動床ボイラー設備の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【請求項10】
前記第1供給速度の前記第2供給速度に対する比は、前記第2流のカルシウムの前記第1流の硫黄に対するモル比(Ca/Sモル比)が1.0から2.0となるものであり、前記半乾式硫黄還元ステージには追加の吸着剤が供給されることを特徴とする請求項1に記載の循環流動床ボイラー設備の二酸化硫黄排出を削減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の循環流動床ボイラー設備から発生する煙道ガス中の二酸化硫黄含有量を削減する方法に関するものである。特に、本発明は、半乾式スクラバを備えた循環流動床ボイラー設備から発生する煙道ガス中の二酸化硫黄含有量を削減する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硫黄含有燃料を燃焼させると、燃料中の硫黄が硫黄酸化物、主に二酸化硫黄(SO
2)へと変化し、環境に大量に放出されると有害となり得る。循環流動床(CFB)ボイラーの周知の利点は、CaCO
3含有吸収剤、一般的には石灰石をボイラーの炉内へと投入することにより、すでにその炉内にあるSO
2を効率的に捕捉できることである。通常、750℃から950℃である、CFBボイラーの炉内で使用される温度では、CaCO
3が焼成されて酸化カルシウム(CaO)となり、それが硫黄酸化物と反応して硫酸カルシウム(CaSO
4)を生成し、これは燃焼で生成された灰と共に炉から除去可能である。
【0003】
循環流動床ボイラーでは、流動化ガスを比較的高い通常速度、一般には3から10m/sの速度で炉の底部を介して導入することによって床が流動化されている。流動化ガスの上昇流がその床の小さい粒子を取り込むため、CFBボイラーには粒子分離器が備えられている。この粒子分離器は、取り込まれた粒子の一部、通常、粒子分離器のカットオフサイズよりも大きい粒子を、その炉から発生する煙道ガスから分離して再びその炉へと戻す。炉内の石灰石を効率的に利用するためには、石灰石粒子がその床内で十分な滞留時間の間動作可能でなくてはならない。これは、通常、粒子分離器のカットオフサイズより大きいCaO粒子を形成するのに十分な大きさの粒径まで粉砕された石灰石を炉内に投入することによって達成される。これにより、煙道ガスにより取り込まれたCaO粒子は、粒子分離器において何度も煙道ガスから分離され、その粒子分離器から再び炉へと戻される。
【0004】
SO
2がCaO粒子と反応すると、粒子の表面には高密度のCaSO
4層が形成され、これにより粒子のコア部がSO
2と反応できなくなる。従って、一般的には、石灰石粒子には、CFBボイラーの炉へ投入するのに、通常、100から300μmの最適なサイズが存在すると考えられている。本明細書の説明においては、粒径という用語は、一般によく使われる方法、通常、レーザー回折に基づく方法によって定められるような、粒子分布の中位(d50)径を指すものとする。最適な粒径を使用しても、所望のSO
2除去レベルを達成するためには、石灰石を余分に炉内に投入しなければならない。例えば、炉内で98%の硫黄削減効率を達成するためには、通常、3から4と高いCa/Sモル比が必要となる。
【0005】
3から4などの高いCa/S比を使用した場合、炉から排出されたボトムアッシュやフライアッシュには、常に、通常約10%から50%を超える大量のCaOが含まれ、それがアッシュの利用や廃棄を困難にしている。CaCO
3からCaOへの焼成は吸熱反応であるため、過剰な量のCaCO
3の焼成を行うことによってもボイラーの熱効率が低下してしまう。炉内にCaCO
3を大量に供給せずにCFBボイラーの硫黄還元を向上させる好ましい方法では、炉内で必要なSO
2還元の一部のみを行って、炉の下流にある煙道ガスチャネルに配置された、乾式のCFBスクラバやスプレー乾燥機などの、半乾式の二酸化硫黄還元装置でSO
2還元を補完する。
【0006】
特許文献1には、最大でも約1.0のCa/Sモル比が得られるよう循環流動床ボイラーの炉に炭酸カルシウムを供給し、炉の下流に配置された硫黄還元ステージに、例えば、水酸化カルシウムを加えることにより、煙道ガスの硫黄含有量をさらに削減することが提案されている。これに対応して、特許文献2には、循環流動床ボイラーから、いわゆるフラッシュ乾燥吸収装置に煙道ガスを搬送して、このフラッシュ乾燥吸収装置に石灰を導入することが提案されている。
【0007】
乾式CFBスクラバは、一般的に、未使用の消石灰を吸着剤として使用して、燃焼プロセスで生じた煙道ガスを脱硫するのに用いられる。特許文献3には、CFBボイラーの煙道ガスから分離されたCaOを含むフライアッシュ粒子の粉砕及び/又は消和を行い、そのように処理された粒子を乾式CFBスクラバで吸着剤として使用することにより、ボイラーの煙道ガスを脱硫する方法が教示されている。特許文献4には、流動床ボイラーの硫黄還元法が開示されている。この方法では、CaOを含むアッシュを炉から回収し、消和させて、炉の下流にある煙道ガスダクトに配置された、スプレー乾燥機などの、SO
2ストリッピング装置で使用する石灰スラリーを形成する。これらの方法によれば、炉の下流の第2硫黄還元ステージにおいて、CaOを含むフライアッシュを利用することにより、2つの脱硫ステージの統合が改善される。上記方法の欠点は、回収したフライアッシュを第2硫黄還元ステージでの利用に適した形に処理するためのさらなる手段や特別な装置を必要とすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,427,384号明細書
【特許文献2】米国特許第7,862,789号明細書
【特許文献3】独国特許第4104180C1号明細書
【特許文献4】米国特許第4,309,393号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来の方法の欠点の少なくとも一部を最小限に抑えるよう改善された、循環流動床ボイラー設備から発生する煙道ガス中の二酸化硫黄含有量を削減する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、硫黄含有の炭素質燃料の第1流を、第1供給速度でボイラーの炉に供給する工程と、所定のd50粒径を有する炭酸カルシウム含有吸収剤の第2流を、第2供給速度で炉に供給する工程と、炉内に形成する粒子床の流動化を行うため、炉に酸素含有ガスを供給する工程と、酸素で燃料を燃焼させることにより、燃料内の硫黄を酸化させて二酸化硫黄を生成する工程と、炉内で炭酸カルシウムを焼成して酸化カルシウムを生成し、この酸化カルシウムの一部を利用して二酸化硫黄の第1部分の硫酸化を行って炉内に硫酸カルシウムを生成する工程と、二酸化硫黄の第2部分を含む煙道ガスと、この煙道ガスにより取り込まれた、酸化カルシウムを含む粒子とを、煙道ガスチャネルに沿って炉から排出する工程と、取り込まれた酸化カルシウム粒子の第1部分を含む、取り込まれた粒子の第1部分を、カットオフサイズを有する粒子分離器で煙道ガスから分離し、この分離された粒子の少なくとも一部を戻りダクトを介して炉に戻す工程と、取り込まれた酸化カルシウム粒子の第2部分を含む、取り込まれた粒子の第2部分を、煙道ガスと共に、炉から、炉の下流に配置された半乾式硫黄還元ステージへ搬送する工程と、半乾式硫黄還元ステージにおいて、煙道ガスの二酸化硫黄含有量を削減する工程とを具備し、炭酸カルシウム含有吸収剤の所定のd50粒径は、粒子分離器のカットオフサイズの50%より小さいことを特徴とする、循環流動床ボイラー設備の二酸化硫黄排出を削減する方法が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、炭酸カルシウムを含有する吸収剤の流れを、炉へと供給する前に、粒子分離器のカットオフサイズの30%より小さい中位粒径に粉砕する。本発明の特に好ましい実施例によれば、吸収剤は、10から20μmの所定のd50粒径に粉砕される。このような微細な粒径によって、煙道ガスにより粒子分離器に取り込まれた酸化カルシウム粒子の大部分が煙道ガスと共に煙道ガスチャネルへと逃れ、取り込まれた酸化カルシウムのより小さな部分だけが粒子分離器で煙道ガスから分離される。
【0012】
本発明によれば、炉内に供給されたCaCO
3粒子の中位又はd50粒径は、従来のものに比べてはるかに小さい。炭酸カルシウムのいわゆる超微粒子、例えば、約10から約20μmの範囲の中位粒径を有する粒子の使用は、はるかに大きな硫黄削減吸着剤粒子、つまり、粒子分離器のカットオフサイズより大きな粒子を循環流動床ボイラーの炉内に供給するという従来の教示に明らかに反するものである。従来の教示によれば、例えば、中位粒径が150μmの十分に大きな吸着剤粒子を使用することで、粒子分離器から炉へ何度も戻されることによって、最大の効率が得られる。
【0013】
本発明の発明者は、予想外に、本発明は、以下の利点によって、特に効率的かつ経済的な総硫黄量の削減方法を提供することを見出した。
粒径が微細なため、炉内における酸化カルシウムへの炭酸カルシウム粒子の焼成が非常に効率的に行われる。
粒径が微細なため、酸化カルシウム粒子の大部分が、酸化カルシウムの有害な未反応コア部を粒子内に残すことなく、炉内で迅速かつ効率的にSO
2と反応する。
粒径が微細なため、酸化カルシウム粒子が炉から素早く逃げ出すので、炉内に形成されるボトムアッシュにはごく少量の酸化カルシウムしか含まれない。
炉から逃げ出す酸化カルシウム粒子は、その粒径が微細なため、外部保湿装置での粉砕や消和を行うことなく、炉の下流にある半乾式の硫黄還元ステージにおいて吸着剤として容易に使用可能である。
【0014】
微細な炭酸カルシウム粒子をCFBボイラーの炉内に供給することにより、吸着剤粒子の炉内における滞留時間が、通常、約10倍の大きさの吸着剤粒径を用いた従来の方法に比べてかなり短縮される。本発明によれば、煙道ガスによって炉から排出される吸着剤粒子の好ましくは最大でも20%のみ、より好ましくは最大でも10%のみが粒子分離器で煙道ガスから分離される。これに対応して、その好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が、煙道ガスと共に粒子分離器から出てくる。炉内で硫黄還元反応を高速かつ高い効率で行うこと、CaO含有量の少ないボトムアッシュを形成すること、バックエンド硫黄還元ステージにおいて、未処理のフライアッシュを吸着剤として利用可能であることは、炉内の滞留時間が短いことのマイナス効果を打ち消すほどの影響力がある。従来のボトムアッシュよりも害が少なく、場合によってはさらなる用途に容易に利用可能なボトムアッシュを形成することは、硫黄の含有量が多い高灰分燃料の燃焼を行う場合に特に有利である。
【0015】
本発明によれば、石灰石の超微粒子を、1.5から2.5のCa/S比が得られる速度で炉内に供給することにより、炉内で80%より高い硫黄還元を行うことが可能であると推定される。この炉から逃げ出したCaO粒子を、炉の下流にある半乾式の硫黄還元ステージにおいて利用した場合、全硫黄還元量と、炉内に供給される炭酸カルシウムの全使用量が非常に高くなる場合がある。全硫黄還元量は、98%超であってもよく、炉内に供給されるカルシウムの使用量は、70%超であってもよい。
【0016】
上記半乾式の硫黄還元ステージは、通常、コンタクトリアクタと、一般的には繊維性フィルタであるダスト分離器とを備えた乾式のCFBスクラバである。従来のCFBスクラバでは、SO
2を含有する煙道ガスを、コンタクトリアクタに導入された、一般的には消石灰(Ca(OH)
2)である吸着剤材料に接触させることによって、硫黄還元が行われる。浄化された煙道ガスは、その後、ダスト分離機に送られて、反応生成物、未反応吸着剤及びフライアッシュを煙道ガスから分離する。この分離された粒子の一部をシステムから取り除き、その分離された粒子の他の部分を再びコンタクトリアクタへと再循環させて、コンタクトリアクタに進入する煙道ガス流によって流動化される粒子床を形成する。通常、床粒子は、コンタクトリアクタ内又は再循環ループ内に水を供給することによって保湿される。その床温度は管理可能であり、そのように床を保湿することによって硫黄還元反応を高めることができる。
【0017】
本発明の実施例によれば、完成のCFBスクラバに使用する吸着剤材料は、炉内に形成され、煙道ガスによりCFBスクラバに取り込まれたCaO超微粒子のみから成る。その粒径が小さいため、取り込まれたCaO粒子は、上記床内の保湿水やCFBスクラバの粒子循環によって、容易に消和させることができる。本発明の他の実施例によれば、CFBスクラバのコンタクトリアクタには、さらなる吸着剤材料、通常、Ca(OH)
2が供給される。それにより、煙道ガスにより取り込まれたCaO超微粒子によって、コンタクトリアクタに従来の吸着剤材料を供給する必要性が大幅に軽減される。
【0018】
CFBスクラバにさらなる吸着剤が供給された場合、炉に供給された吸着剤によって得られるCa/S比は、1.0から2.0であることが好ましい。CFBスクラバにさらなる吸着剤が供給されなかった場合、炉に供給された吸着剤のCa/S比は、2.0から3.0であることが好ましく、2.5から3.5であることがより好ましい。
【0019】
本発明の他の実施例によれば、炉の下流にある半乾式の硫黄還元ステージは、スプレー乾燥機である。従来のスプレー乾燥機では、吸着剤粒子を含有するスラリーがコンタクトリアクタに供給され、そこで吸着剤粒子は急速に乾燥し、煙道ガス内の二酸化硫黄と結合する。本発明を使用した場合、煙道ガスにより取り込まれたCaO超微粒子が、通常、コンタクトリアクタ内の追加的な吸着剤としての機能を果たす。それによって、コンタクトリアクタに供給されるスラリー量が大幅に削減される。本発明の好適な実施例によれば、第2硫黄還元ステージとしてスプレー乾燥機を使用した場合、炉に供給された吸着剤によって得られるCa/S比は、1.0から2.0であることが好ましい。本発明のさらに好適な実施例によれば、スプレー乾燥機の下流にあるダスト分離器によって回収された粒子によりスラリーを調製する。それによって、スプレー乾燥機に使用されるすべての吸着剤が、炉内に供給されるCaCO
3から生じるものとすることができる。この場合、炉内に供給される吸着剤のCa/S比は、2.0から3.0であることが好ましく、2.5から3.5であることがより好ましい。
【0020】
上記簡単な説明、並びに本発明のさらなる目的、特徴及び利点は、本発明に係る、現時点で好適ではあるが、例示的に過ぎない実施形態に関する、以下の詳細な説明を添付図面と併せて参照することで、より完全に理解されるであろう。
【0021】
以下、例示的かつ概略的な添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例に係る硫黄酸化物排出を削減するための装置を備えた循環流動床ボイラーを示す概略図である。
【
図2】本発明の第2実施例に係る硫黄酸化物排出を削減するための装置を備えた循環流動床ボイラーを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施例に係る方法により操作可能なCFBボイラーシステム10を概略的に示す図である。このボイラーシステムには、炉12と、戻りダクト16を有する粒子分離器14と、炉から排出された煙道ガスを煙突20を介して環境へと移動させる煙道ガスチャネル18とが備えられている。ボイラーシステムには、底部グリッド24を介して流動化ガス、通常、一次空気を炉に供給する従来の手段22と、炉のより高いレベルに二次空気を導入する手段26とが備えられている。また、ボイラーシステムには、石炭、石油コークス、バイオ燃料などの硫黄含有燃料と、必要に応じて、砂などの不活性流動媒体を炉12に供給する従来の手段28も備えられている。この燃料及び不活性流動媒体を供給する手段28には、例えば、送りねじや空気式供給システムなどの供給ホッパー及び供給コンベヤーが含まれる。
【0024】
このCFBボイラーシステム10を使用すると、燃料と不活性流動媒体の流動床において、燃料が流動化空気によって燃焼され、それによって、ボトムアッシュが形成される。このボトムアッシュは、例えば、アッシュコンベヤー及びアッシュ冷却手段を備えた、廃棄又はさらなる使用のために炉からボトムアッシュを排出する従来の手段30を介して炉から排出される。流動化ガスは、比較的高い通常速度、一般には3から10m/sの速度で炉内を上方へと流れ、燃焼で形成された煙道ガスによって流動粒子を取り込む。この流動粒子は、その後、炉から排出される。煙道ガスチャネル18に配置された粒子分離器14は、一般的に約50から100μmのカットオフサイズよりも大きい粒子を煙道ガスから分離し、そして戻りチャネル16を介してそれらを再び炉へと戻す。
【0025】
さらに、このボイラーシステム10には、石灰石などのCaCO
3含有の硫黄削減添加剤を炉内へ供給する手段32も備えられている。この硫黄削減添加剤を供給する手段32は、ホッパー又は容器34と、硫黄削減添加剤の粒子を所望の中位粒径(d50)に粉砕する石灰石粉砕機36とを少なくとも有することが好ましい。石灰石は、従来の方法では、約100から300μmの中位粒径に粉砕されていたが、本発明によれば、本明細書の他の部分で説明する理由により、10から20μmのd50粒径を有する微細粒子に粉砕される。このような硫黄削減添加剤の所望の中位粒径への粉砕は、その添加剤が上記CFBボイラー設備へと運ばれる前に、別の設備において行われてもよい。
【0026】
一般的なCFBボイラー設備には、通常、例えば、蒸気生成、資材運搬、煙道ガス浄化に必要な他の多くの要素がさらに備えられているが、本発明には特に重要ではないので、
図1には図示されていない。
【0027】
硫黄含有燃料を炉12内で燃焼させると、燃料に含まれる硫黄が酸化して硫黄酸化物、主にSO
2となる。一般に750℃から950℃である、CFBボイラーの炉内で使用される温度では、硫黄削減添加剤のCaCO
3が急速に焼成されてCaOとなり、それがSO
2と結合してCaSO
3を形成し、これが再び酸化してCaSO
4となる。このCaSO
4へのSO
2の結合は、比較的ゆっくりとしたプロセスであるので、石灰石は、従来の方法によれば、粒子分離器のカットオフサイズより大きい粒径で炉内へ供給される。それによって、煙道ガスにより取り込まれたCaO粒子は、粒子分離器において何度も煙道ガスから分離され、再び炉へと戻される。本発明の方法は、微細粒径に起因して、煙道ガスにより取り込まれたCaO粒子の好ましくは80%超、より好ましくは90%超が粒子分離器において煙道ガスから分離されずに、その煙道ガスと共に煙道ガスチャネルに沿って進み続けるという点において、上記従来の方法とは異なる。
【0028】
上記手段30によって炉から除去されたボトムアッシュには、一般的に、そのプロセスで形成されたCa含有粒子の第1部分が含まれる。そのCa含有粒子の別の部分は、従来、流動床において、粒子分離器のカットオフサイズより小さいサイズに粒子が粉砕されるまで炉と粒子分離器との間で再利用され、その後、粒子はフライアッシュの一部として炉から排出される。
【0029】
CaSO
4へのCaOの硫酸化は、主に粒子の外面において行われる。従って、CFBボイラーの炉内における従来の硫黄還元によれば、未反応のCaOのコア部の周りに高密度のCaSO
4層を有する粒子が形成される傾向がある。そのため、CaOの利用が不完全であり、フライアッシュやボトムアッシュには未反応のCaOが含まれる。除去されたアッシュの反応性CaOは有害であるため、多くの場合、その除去されたアッシュの廃棄やさらなる使用の準備が整うまで、CaOをCa(OH)
2へと消和させる必要がある。炉内におけるCaOの利用度は比較的低いため、これまでは、3から4などの1よりはるかに高いCa/S比で、炉へとCaCO
3を大量に供給するだけで、炉内の高い硫黄還元レベルが達成された。
【0030】
高いCa/S比の使用に関する問題のため、最近の一部のCFBボイラーでは、炉内における硫黄還元を、炉の下流の煙道ガスチャネルに配置された、スプレー乾燥機や乾式CFBスクラバなどの第2硫黄還元ステージにおけるさらなる硫黄還元によって補完する場合もある。これに対応して、煙道ガスチャネル18に配置された乾式CFBスクラバ38を
図1に示す。
【0031】
炉内の硫黄還元が第2硫黄還元ステージによって補完される場合、炉内に供給されたカルシウムのCa/S比は、必然的に1から2と低くなる。しかしながら、比較的大きな石灰石粒子を炉内に供給する従来の方法では、常に、未反応のCaOコア部の周りに高密度のCaSO
4層を有する上述のCa粒子が生成され、また、上記問題も生じる。
【0032】
本発明の方法は、その粒径が微細であるため、炉内で反応するCaO粒子の硫酸化をほぼ完全に行うことが可能であるという点において、従来の慣例とは異なる。これにより、ボトムアッシュに対する未反応のCaO損失が最小限に抑えられ、上記問題の大部分が解決される。その結果、カルシウム利用が改善される。本発明の方法によれば、石灰石の総消費量を、少なくとも10%、場合によっては20%又はそれ以上削減することが可能であると考えられる。
【0033】
煙道ガスチャネル18に配置されたCFBスクラバ38には、コンタクトリアクタ40と、繊維性フィルタなどのダスト分離器42と、そのダスト分離器42からコンタクトリアクタ40へと戻る再循環チャネル44とが備えられている。このCFBスクラバ38には、コンタクトリアクタ40に形成する流動床の加湿と冷却を行うために、流動床に水を注入する手段46がさらに備えられている。従来のSCBスクラバには、第2の硫黄削減添加剤、一般的には、Ca(OH)
2をコンタクトリアクタ40に注入する手段48も備えられている。煙道ガス内のSO
2は、その後、コンタクトリアクタ40内のCa(OH)
2と結合してCaSO
3とCaSO
4を形成する。このCa(OH)
2と水を注入する手段は、通常、コンタクトリアクタ40に配置されているが、場合によっては、例えば、再循環チャネル44に配置されていてもよい。
【0034】
本発明の方法は、炉内に供給される吸収剤の粒径が微細であるため、CFBスクラバに進入する煙道ガスによって微細CaO粒子を大量に運んで、CFBスクラバで吸着剤として容易に利用することができるという点において、上記従来の補助CFBスクラバの使用とは異なる。CaO粒子の粒径が小さいため、CFBスクラバの上流の煙道ガス流から粒子を分離したり、CFBスクラバにおいて粒子が使用される前に、それらの化学的又は物理的性質を変える、すなわち、CaO粒子を消和させる及び/又は粒径を縮小させる必要はない。炉から生じる微細なCaO粒子を、CFBスクラバで吸着剤として利用することにより、別個の硫黄削減添加剤をCFBスクラバに注入する必要性を排除する又は少なくとも大幅に軽減することができる。
【0035】
フライアッシュを含む粒子、コンタクトリアクタ40に形成された反応生成物及び未反応の試薬は、コンタクトリアクタの下流にあるダスト分離器42で煙道ガスから分離される。コンタクトリアクタ40で十分な粒子床を維持し、試薬の利用を改善するために、ダスト分離器42で分離された粒子の一部を、再循環チャネル44から再びコンタクトリアクタ40へと連続的に再利用する。粒子分離器42で分離された粒子状物質の他の部分は、排出チャネル50に沿ってCFBスクラバから排出される。浄化された煙道ガスは、ダスト分離器からさらに煙突20へと運ばれて、環境に放出される。
【0036】
図2は、第2硫黄還元ステージが、CFBスクラバの代わりに、スプレー乾燥機52を備える点で
図1に示す実施例とは異なる、本発明の他の好適な実施例を示す。
図2では、
図1に示す実施例と同一又は類似の要素はすべて、
図1に示すものと同じ符号が付されている。
【0037】
図2に示す実施例では、煙道ガスダクト18は、スプレー乾燥機52の反応チャンバ54の上部につながっている。この反応チャンバ54では、煙道ガスを含む二酸化硫黄が、加湿した硫黄削減吸着剤と接触する。未反応の吸着剤、反応生成物及びフライアッシュは、煙道ガスによって、スプレー乾燥機52の反応チャンバ54から、ダスト分離器42、好ましくは繊維性フィルタへと搬送される。浄化された煙道ガスは、この繊維性フィルタ42から煙突20を介して環境へと放出され、フライアッシュ、反応生成物及び生じ得る未反応の吸着剤は、アッシュ分離器42の底部から排出ダクト60を介して収集される。
【0038】
加湿した吸着剤は、煙道ガスにより反応チャンバ54に取り込まれたCaO粒子と、水供給部56によって反応チャンバ54の上部に注入された水とからのみ成る場合もある。しかしながら、加湿した硫黄削減吸着剤には、通常、煙道ガスにより取り込まれたCaO粒子に加えて、スラリー調製容器64に形成され、スラリー供給部58によって反応チャンバ54に小さな液滴として注入される吸着剤スラリーが含まれる。このスラリーは、通常、水供給部66からCa(OH)
2又はCaOに水を加えることにより生成され、スラリー調製容器64内でCaOをCa(OH)
2へと消和させる。このCa(OH)
2又はCaOは、少なくともその一部が、ダスト分離器42の底部から排出ダクト60によって、かつ、反応チャンバ54の底部から排出ダクト62によって収集されてもよい。
【0039】
以上のとおり、半乾式硫黄還元ステージで用いられる硫黄削減吸着剤は、ケース別の理由により、
図1に示す実施例と
図2に示す実施例のいずれにおいても、ボイラーの炉内に形成されるCaO粒子のみから、又は、別個の供給部からの追加の吸着剤と共に、ボイラーの炉内に形成されるCaO粒子から生じるものであってもよい。しかしながら、いずれの場合も、炉内に供給される微細な石灰石粒子によって、煙道ガスにより取り込まれた微細なCaO粒子が生成され、それにより、さらなる吸着剤を半乾式硫黄還元ステージに直接供給する必要性が最小限に抑えられる、すなわち、軽減又は完全に排除される。
【0040】
本明細書において、本発明は、現時点では最も好適な実施例であると考えられるものとの関連で例として説明されたが、本発明は、開示された実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定められるような本発明の範囲内に含まれる、その特徴の様々な組み合わせ又は変更及び複数の他の適用をカバーするように意図されている点を理解されたい。上述の実施例の何れかとの関連で言及された詳細は、別の実施例との組み合わせが技術的に実現可能な場合には、その別の実施例と組み合わせて用いられてもよい。