(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態に係る無線通信タグ1について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る無線通信タグ1は、搭載している無線ICチップ2と、外部の通信リーダ(図示せず)と、が無線通信を行うことにより、情報の授受を行う通信モジュールである。
無線通信タグ1は、無線ICチップ2と、無線ICチップ2を保持する無線通信基板3と、を備えている。無線ICチップ2としては、RFIDシステムにおいて一般的に用いられるものとして、例えばUCODE(登録商標)8チップ等を用いることができる。
【0016】
図1に示すように、無線通信基板3は、無線ICチップ2が搭載される搭載アンテナ部10と、搭載アンテナ部10に対して積層方向に配置されたアンテナ本体部11と、搭載アンテナ部10とアンテナ本体部11との間に積層された絶縁性の第1スペーサ部12と、を備えている。
搭載アンテナ部10、アンテナ本体部11、および第1スペーサ部12は、積層方向から見た平面視(以下、単に平面視という)で、矩形状を呈している。
【0017】
搭載アンテナ部10は、導電性を備えた膜状をなしている。この実施形態では搭載アンテナ部10として金属材料が採用されている。搭載アンテナ部10は、積層方向から見た平面視(以下、上面視という)で全体として短辺と長辺とを備えた長方形状をなしている。
【0018】
搭載アンテナ部10は、厚み9μmのアルミニウム膜と、厚み50μmのPET樹脂膜と、により構成されている。アルミニウム膜は、接着剤によりPET樹脂膜に接着されている。接着層の厚みは5μmとなっている。
なお、アルミニウム膜は他の金属材料に変更してもよいし、PET樹脂膜は他の樹脂材料に変更してもよい。また、それぞれの厚みも任意に変更可能である。
【0019】
搭載アンテナ部10は、間隔をあけて配置された一対の翼部10Aを備えている。一対の翼部10Aは、上面視でアンテナ本体部11の外縁部から突出しない範囲で矩形状をなし、互いに同等の大きさ、又は非対称な矩形の組み合わせをなしている。一対の翼部10Aは、長辺方向に間隔をあけて配置されている。翼部10Aは導電性を有し、実質的に外部と電気信号の授受を行うアンテナとして機能する。
【0020】
一対の翼部10Aの間に、無線ICチップ2が配置され、翼部10Aと無線ICチップ2とが電気的に接続されている。これにより、無線ICチップ2は、一対の翼部10Aを電気的に接続している。
上面視において、無線ICチップ2は、搭載アンテナ部10における短辺方向の一端部に配置されている。なお、搭載アンテナ部10に対する無線ICチップ2の位置は、任意に変更することができる。
【0021】
上面視における翼部10Aの1辺の大きさL(mm)は、下記式(1)を満たしている。ここで、λは無線ICチップ2が使用する電波の波長(mm)を指す。
λ/100≦L≦λ/10…(1)
なお、本実施形態では、無線ICチップ2は周波数920MHzの電波を使用しているが、その他の周波数の電波を使用してもよい。図示の例では、無線ICチップ2が使用する電波の波長λは、326mmであり、翼部10Aの1辺の大きさLは、20mmである。
【0022】
第1スペーサ部12は、上面視で短辺と長辺とを備えた長方形状をなしている。第1スペーサ部12の短辺の大きさは、搭載アンテナ部10の短辺の大きさと同等となっている。第1スペーサ部12の長辺の大きさは、搭載アンテナ部10の長辺の大きさと同等となっている。
なお、第1スペーサ部12における短辺および長辺それぞれの大きさは、搭載アンテナ部10における短辺および長辺それぞれの大きさよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0023】
第1スペーサ部12の積層方向における厚みT(mm)は、下記式(2)を満たしている。ここで、λは無線ICチップ2が使用する電波の波長(mm)を指す。
λ/10000≦L≦λ/100…(2)
図示の例では、無線ICチップ2が使用する電波の波長λは、326mmであり、第1スペーサ部12の積層方向における厚みTは、0.15〜0.2mmである。
【0024】
図2に示すように、アンテナ本体部11は、搭載アンテナ部10の翼部10Aと電界結合がなされる電極11Aと、電極11Aを支持する基材11Bと、を備えている。電極11Aおよび基材11Bは、積層方向に並べて配置され、一体に形成されている。
【0025】
図1に示すように、アンテナ本体部11は、上面視で短辺と長辺とを備えた長方形状をなしている。
アンテナ本体部11の上面視における短辺の大きさは、第1スペーサ部12の短辺の大きさと同等となっている。アンテナ本体部11の上面視における長辺の大きさは、第1スペーサ部12の長辺の大きさよりも大きくなっている。
【0026】
図1および
図2に示すように、電極11Aは、その一部同士が積層方向に間隔をあけて対向するように折り曲げられている。
図2に示すように、電極11Aおよび基材11Bは、短辺に沿う短辺方向から見た正面視で、長辺に沿う長辺方向における中央部を除いて、その一部同士が積層方向に間隔をあけて対向するように折り曲げられている。
【0027】
電極11A及び基材11Bは、正面視において、短辺方向に開口するループ状に形成され、全域にわたって互いに接着されている。図示の通り、電極11Aが基材11Bに対して正面視における外周側に配置されている。電極11Aは、無線ICチップ2が使用する電波の周波数に対応する大きさとなっている。
アンテナ本体部11のうち、内周側に配置された基材11Bにおいて、積層方向に互いに対向する部分同士の間には、隙間CLが形成されている。隙間CLの積層方向の大きさC1は、500〜1000μm程度となっている。
【0028】
電極11Aは厚み9μmのアルミニウム膜により形成され、基材11Bは、厚み50μmのPET樹脂膜により形成されている。電極11Aと基材11Bとを接着する接着層の厚みは5μmとなっている。
なお、アルミニウム膜は他の金属材料に変更してもよいし、PET樹脂膜は他の樹脂材料に変更してもよい。また、それぞれの厚みも任意に変更可能である。
【0029】
ループ状をなす電極11Aは、ループ状の一端部と他端部との間に形成されたスリット11Cを備えている。
図示の例では、アンテナ本体部11のうち、積層方向における第1スペーサ部12側(上側)に、短辺方向に延びるスリット11Cが形成されている。スリット11Cは、短辺方向の全域にわたって延びている。
【0030】
スリット11Cは、電極11Aおよび基材11Bそれぞれに一体に形成されている。スリット11Cの長辺方向の大きさL1は、アンテナ本体部11の長辺方向の大きさL2の1/50〜1/100程度になっている。
図1に示すように、スリット11Cの上方に位置する部分に、無線ICチップ2が配置されている。
【0031】
アンテナ本体部11には、複数の切り欠き部11Dが形成されている。切り欠き部11Dは、アンテナ本体部11の上面から側面にかけて形成されている。切り欠き部11Dは、電極11Aおよび基材11Bの一部を一体に切り欠いている。
【0032】
このように切り欠き部11Dを形成することで、電極11Aにおいて、電流が流れる部分の経路長を、切り欠き部11Dが形成されていない構成と比較して長くすることが可能になる。これにより、アンテナ本体部11の投影面積を小さくしながら、使用する電磁波を低い周波数にすることができる。なお、切り欠き部11Dの形状、大きさ、位置は、任意に変更することができる。
【0033】
無線通信基板3は、アンテナ本体部11を積層方向に挟む搭載アンテナ部10の反対側に積層された導電性の反射材13と、アンテナ本体部11と反射材13との間に積層された第2スペーサ部14と、を備えている。
反射材13は金属材料により形成されている。反射材13の上面視における大きさは、アンテナ本体部11と同等となっている。反射材13を配置することで、仮に金属面にこの無線通信基板3を貼付した際に、無線ICチップ2の通信能力が大きく変化するのを抑えることができる。
【0034】
第2スペーサ部14は、PET樹脂により形成され、絶縁性を備えている。第2スペーサ部14の厚みは、第1スペーサ部12の厚みと同等となっている。第2スペーサ部14の上面視での大きさは、反射材13と同等となっている。
第2スペーサ部14がアンテナ本体部11と反射材13との間に介在していることで、アンテナ本体部11と反射材13とが導通するのを抑えることができる。
【0035】
次に、
図3を用いて、無線通信タグ1の動作について説明する。なお、
図3では、反射材13および第2スペーサ部14の図示を省略している。
まず、
図3(a)に示すように、通信リーダ(図示せず)から照射された電磁波をキャッチする。この際、電磁波により生じ、短辺方向に流れる磁界成分をアンテナ本体部11がキャッチする。
この点について詳述すると、ループ状をなすアンテナ本体部11の内側に、電磁波が通過することで、アンテナ本体部11の電極11Aに電磁誘導が生じる。これにより
図3(b)に示すように、電極11Aに電流が流れる。
【0036】
次に、電極11Aに流れた電流の影響により、電極11Aと電界結合された搭載アンテナ部10の翼部10Aに逆起電力が生じる。
これにより、
図3(c)に示すように、搭載アンテナ部10に、無線ICチップ2を介して電流が流れる。この電流により、無線ICチップ2に電力が供給され、無線ICチップ2が起動する。
【0037】
無線ICチップ2が起動すると、無線ICチップ2は、内部に保有している情報を出力するために、電流を生成する。これにより、
図3(d)に示すように、起動時に搭載アンテナ部10に流れた電流と逆向きの電流が流れる。
この電流には、無線ICチップ2が内部に保有している情報が含まれている。
【0038】
そして、この電流により、アンテナ本体部11の電極11Aに逆起電力が生じ、電極11Aを電流が流れる。
これにより、アンテナ本体部11の内側に電磁波が生じ、外部に向かう磁界成分が形成される。このように生じた電磁波を、通信リーダが読み取ることで、無線ICチップ2内の情報を通信リーダが読み取ることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信基板3によれば、無線ICチップ2が搭載される搭載アンテナ部10と、電極11Aが配置されたアンテナ本体部11と、の間に、第1スペーサ部12が積層され、無線ICチップ2と電極11Aとが別部材としてそれぞれ配置されている。
【0040】
このため、無線通信タグ1への要求仕様の変更により、無線ICチップ2を他の無線ICチップ2と交換したり、電極11Aの形状を変更したりする場合に、搭載アンテナ部10およびアンテナ本体部11のいずれか一方の部品を変更することで足り、他方の部品を変更する必要が無い。
【0041】
すなわち、
図4に示すように、アンテナ本体部11の大きさを変更することにより、アンテナ本体部11がキャッチする電磁波の周波数帯域を自由に変更することができる。なお、
図4では、反射材13および第2スペーサ部14の図示を省略している。
これにより、要求仕様の変更に際して、変更を必要としない部品を新たな仕様の製品に転用することが可能になり、部品の互換性を確保することができる。
【0042】
また、電極11Aが、その一部同士が積層方向に間隔をあけて対向するように折り曲げられている。このため、例えば電極11Aが平板状に形成されているような構成と比較して、電極11Aにより囲まれた空間を形成することで、その内部を通過した電磁波により、電極11Aに電磁誘導を起こすことができる。
これにより、これまでのRFIDシステムにおいて通信が不安定であった非金属物(人体や水分入り容器等の水分量の多いものを含む)であってもアンテナ出力を確保し、安定した通信を行うことができる。
【0043】
また、アンテナ本体部11が、上面視で長方形状をなし、電極11Aは、長辺方向における中央部を除いて、その一部同士が積層方向に間隔をあけて対向するように折り曲げられている。
このため、例えば物体の表面にこの無線通信タグ1を貼付して使用した場合等に、この物体の表面に衝突して、表面に沿って短辺方向に流れる電磁波をアンテナ本体部11の内側でキャッチすることが可能になり、効果的に通信の安定性を確保することができる。
【0044】
また、搭載アンテナ部10における一対の翼部10Aが、上面視で矩形状をなすとともに、その1辺の大きさLが式(1)を満たしている。このため、搭載アンテナ部10とアンテナ本体部11との間に絶縁性の第1スペーサ部12が積層されている構成であっても、無線ICチップ2と電極11Aとの電気的な結合度を確保して、無線ICチップ2と電極11Aとの間における電気的エネルギーの授受を確実に実現することができる。
【0045】
また、第1スペーサ部12の積層方向における厚みTが、式(2)を満たしている。このため、搭載アンテナ部10とアンテナ本体部11との間に絶縁性の第1スペーサ部12が積層されている構成であっても、無線ICチップ2と電極11Aとの電気的な結合度を確保して、無線ICチップ2と電極11Aとの間における電気的エネルギーの授受を確実に実現することができる。
【0046】
また、無線通信基板3が、導電性の反射材13と、アンテナ本体部11と反射材13との間に積層された第2スペーサ部14と、を備えている。このため、例えば反射材13を備えていない構成と比較して、金属面に無線通信基板3を貼付された際に、無線ICチップ2の通信能力が大きく変化するのを抑えることができる。これにより、無線ICチップ2の通信能力の変動を抑え、無線通信基板3が貼付される面の材料を選ぶことなく、汎用性を確保することができる。
【0047】
また、短辺方向に開口したループ状をなす電極11Aが、短辺方向に流れる電磁波をターゲットとしている。
このため、積層方向に流れる電磁波が、仮に反射材13により反射された場合であっても、アンテナ出力が低減するのを抑えることができる。
【0048】
(変形例)
次に、
図5から
図9を用いて、無線通信タグ1の変形例について説明する。なお、
図6および
図9では、反射材13および第2スペーサ部14の図示を省略している。
図5に示す第1変形例に係る無線通信基板3Bでは、アンテナ本体部21において、側面にのみ切り欠き部21Dが形成されている。なお、アンテナ本体部21に切り欠き部を形成しなくてもよい。
【0049】
図6(a)に示す第2変形例に係る無線通信基板3Cでは、アンテナ本体部31の電極31Aにおけるスリット31Cの位置は、正面視における側面になっている。
図6(b)に示す第3変形例に係る無線通信基板3Dでは、アンテナ本体部41におけるスリット41Cの大きさが、第1実施形態と比較して大きくなっている。この無線通信基板3Dでは、スリット41Cの長辺方向の大きさは、アンテナ本体部41の長辺方向の大きさの7割程度になっている。
【0050】
このように、電極におけるスリットの位置および大きさは、任意に変更することができる。すなわち、
図6(c)に示す第4変形例に係る無線通信基板3Eのように、長辺方向の大きさが、アンテナ本体部51の大きさの7割程度のスリット51Cを、正面視における下側に配置してもよい。
【0051】
次に、
図7および
図8に示す第5変形例に係る無線通信基板3Fのように、アンテナ本体部61は、長辺方向からみた側面視で、短辺方向における中央部を除いて、その一部同士が積層方向に間隔をあけて対向するように折り曲げられてもよい。図示の通り、電極61Aが基材61Bに対して側面視における外周側に配置されている。
【0052】
すなわち、
図8に示すように、側面視において、長辺方向に開口するループ状に形成されている。
図9に示すように、無線通信基板3Fにおける搭載アンテナ部10Bでは、翼部10Cが短辺方向に間隔をあけて配置されている。この場合、アンテナ本体部61は、主に長辺方向に流れる電磁波をターゲットとすることになる。
【0053】
次に
図9に示す第6変形例に係る無線通信基板3Gでは、2つのアンテナ本体部71、72が、搭載アンテナ部10を積層方向に挟むように配置されている。
アンテナ本体部71、72と搭載アンテナ部10との間には、第1スペーサ部12が各別に配置されている。2つのアンテナ本体部71、72は、長辺方向の大きさが互いに異なっている。
このように互いに大きさの異なる2つのアンテナ本体部71、72を備えていることで、異なる周波数帯域の電磁波それぞれを用いた通信を行うことができる。
【0054】
なお、上述の実施形態は、本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に対して種々の変形を行ってもよい。
【0055】
例えば、上記実施形態においては、上面視で矩形状をなす一対の翼部10Aにおける1辺の大きさが、式(1)を満たしている構成を示したが、このような態様に限られない。一対の一対の翼部10Aにおける1辺の大きさは、式(1)を満たさなくてもよいし、翼部10Aは上面視で、円形状や三角形状等の矩形状ではない形状であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、第1スペーサ部12の積層方向における厚みTが、式(2)を満たしている構成を示したが、このような態様に限られない。第1スペーサ部12の積層方向における厚みTは、式(2)を満たさなくてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、無線通信基板3が反射材13と第2スペーサ部14とを備えている構成を示したが、このような態様に限られない。無線通信基板3は、反射材13と第2スペーサ部14とを備えなくてもよい。
【0058】
また、前述した変形例に限られず、これらの変形例を選択して適宜組み合わせてもよいし、その他の変形を施してもよい。
無線通信基板は、無線ICチップが搭載される導電性の搭載アンテナ部と、搭載アンテナ部と電界結合がなされる電極が配置され、かつ搭載アンテナ部に対して積層方向に配置されたアンテナ本体部と、搭載アンテナ部とアンテナ本体部との間に積層された絶縁性の第1スペーサ部と、を備えている。