(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476429
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】可塑性食品用分配容器
(51)【国際特許分類】
A23G 9/28 20060101AFI20190225BHJP
B65D 85/78 20060101ALI20190225BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20190225BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20190225BHJP
B65D 21/08 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
A23G9/28
B65D85/78
B65D83/00 M
B65D1/26 120
B65D21/08
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-193087(P2014-193087)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2016-63751(P2016-63751A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】512262466
【氏名又は名称】株式会社レックス・ベリー
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 敬司
【審査官】
藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−179043(JP,A)
【文献】
国際公開第03/082707(WO,A1)
【文献】
特開2002−179180(JP,A)
【文献】
特開2008−094446(JP,A)
【文献】
特開2001−149021(JP,A)
【文献】
実開平06−071484(JP,U)
【文献】
特開2004−106886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
B65D
CAplus/FSTA/WPIDS/WPIX(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央近傍に吐出口が設けられた底面部と、
下窄まりのテーパー状に形成された円筒部と、
前記円筒部の上端に周設された鍔部と、を有し、
前記円筒部に、上記鍔部から上記底面部への方向において働く力(上方からの圧力)による変形誘導部が設けられており、
前記変形誘導部が、前記円筒部の外側において周方向に沿って設けられた溝であり、
前記円筒部の厚みが前記底面部の厚みより薄く、前記底面部の厚みが前記鍔部の厚みより薄く、
前記円筒部の厚みが0.1mm以上0.3mm以下であり、前記底面部の厚みが0.2mm以上0.5mm以下であり、前記鍔部の厚みが0.35mm以上0.55mm以下であること、
を特徴とする可塑性食品用分配容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にコーンやカップ等の飲食用容器に盛り付けるアイス等の可塑性食品を、所定量収容し、これを分配するための可塑性食品用分配容器に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑性食品用分配容器(以下、単に「分配容器」ともいう。)は、内部にアイス等の可塑性食品が充填されており、冷凍庫等に保管される。そして、購買者の求めがあった際に、この分配容器を押出機にセットし、上方から外圧を加えて分配容器を変形させる(押し潰す)ことにより、分配容器の吐出口からアイスが押出されてコーンやカップ等に盛り付けられるようになっている。
【0003】
このような分配容器は、吐出口からアイス等を均等に押出しするため、変形し易い(押し潰され易い)ものであることが必要である。また、押出し後に、容器内にアイス等が残らないこと、即ち、可塑性食品の残留率を低くすることも求められる。
【0004】
これに関連し、例えば特許文献1においては、開口部を備えた円形状底部と、円弧形状面からなる側面と、各側面と垂直外側に突設される鍔部とからなり、前記側面の肉厚は前記円形状底部の肉厚よりも薄く、前記鍔部の肉厚は前記円形状底部より厚く構成されているアイス等の可塑性食品用分配容器が提案されている。
【0005】
上記特許文献1の分配容器においては、円弧形状面からなる側面を薄く形成することにより、上方から外圧を加えた際に、側面が変形し易くなるため、分配容器を容易に押し潰すことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4072502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の分配容器は、側面が変形し易くなっているとはいうものの、その側面は全体的に一定の厚みを有していることから変形に規則性がなく、そのため、容器が均等に押し潰されにくいという問題があった。このような問題に起因して、押し潰された側面の形状によっては、分配容器の内部に多量の可塑性食品が残存して無駄になることもあり、更なる可塑性食品の残留率の低減が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、容器が全体的にできるだけ規則的かつ均等に押し潰されるようにすることにより、可塑性食品の残留率を極力低減した可塑性食品用分配容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するため、本発明に係る可塑性食品用分配容器は、
中央近傍に吐出口が設けられた底面部と、
下窄まりのテーパー状に形成された円筒部と、
前記円筒部の上端に周設された鍔部と、を有し、
前記円筒部に、上記鍔部から上記底面部への方向において働く力(上方からの圧力)による変形誘導部が設けられていること、を特徴とするものである。
【0010】
上記の変形誘導部は、具体的には、前記円筒部において、間隔をあけて周方向に設けられている複数の段差及び/又は溝であり、その間隔は一定でもそうでなくてもよい。このような構成を有する本発明の可塑性食品用分配容器においては、上記の段差又は溝が存在することにより、上記鍔部から上記底面部に向かう方向において力を加えて押しつぶされた場合に、全体的に規則的かつ均等に押し潰される。
【0011】
そのため、吐出口から可塑性食品がほぼ全て吐出され、その残留率を極力低減することができる。したがって、上記段差又は溝は、上記鍔部から上記底面部に向かう方向に働く力による分配容器の規則的かつ均等な押し潰しを誘導するものであり、変形誘導部と言える。
【0012】
本発明の可塑性食品用分配容器においては、前記変形誘導部が、円筒部の周方向に沿って設けられた段差又は溝であり、当該段差又は溝を境に円筒部が徐々に縮径する構成を有するのが好ましい。
【0013】
また、前記変形誘導部が、円筒部の周方向に沿って設けられた凹溝、又は、ノッチであってもよい。
【0014】
また、前記円筒部の厚みが前記底面部の厚みよりも薄く、前記底面部の厚みが前記鍔部の厚みよりも薄くてもよく、具体的には、例えば、前記円筒部の厚みが0.1mm以上0.3mm以下であり、前記底面部の厚みが0.2mm以上0.5mm以下であり、前記鍔部の厚みが0.35mm以上0.55mm以下である可塑性食品用分配容器が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記のような構成を採用することにより、本発明の可塑性食品用分配容器は、上方からの圧力が加わった際に、容器が全体的にできるだけ規則的かつ均等に押し潰され、内部の可塑性食品の残留率の大幅な低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る可塑性食品用分配容器を示す斜視図である。
【
図4】同分配容器を押出機にセットした状態を示す説明図である。
【
図5】同分配容器の内部に充填された可塑性食品が押出機によって押出された状態を示す説明図である。
【
図6】同分配容器が押し潰され状態を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る可塑性食品用分配容器の円筒部の一部を示す部分拡大断面図である。
【
図8】本発明の更に他の実施形態に係る可塑性食品用分配容器の円筒部の一部を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る可塑性食品用分配容器について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明の可塑性食品用分配容器が図示されるものに限られないことは言うまでもない。また、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0018】
図1に示す本発明の可塑性食品用分配容器10(以下、単に分配容器10という。)は、
図5に示すように、主にコーンやカップ等の飲食用容器6に盛るアイス等の可塑性食品5を、所定分量だけ充填して収容しており、これを別の容器に盛り付けるために分配するものである。
【0019】
この分配容器10は、
図1に示すように、中央近傍の吐出口1aが剥離可能な貼着テープ(不図示)で塞がれる底面部1と、下窄まりのテーパー状に形成された円筒部2と、円筒部2の上端に周設された鍔部3と、鍔部3に貼着されて円筒部2の上部開口を覆う蓋部4と、を含むカップ型容器であって、通常は、底面部1の吐出口1aを剥離可能な貼着テープで塞いで、内部に可塑性食品5を充填した後、蓋部4により上部開口を覆って冷凍庫等に冷凍保存されている。
【0020】
本実施形態における底面部1は、その厚みが0.2mm以上0.5mm以下のものであり、その中央(中心)近傍には、可塑性食品5を押出すための吐出口1aが穿孔されている。可塑性食品5を吐出する吐出口1aは、
図1に示すように、星型をしたものであり、この吐出口1aの形状が、吐出した可塑性食品5の断面形状になる。したがって、可塑性食品5を印象付ける重要な役割を果たすものであるため、可塑性食品5の種類に応じて、星型の他にも適宜形状を変更することができる。例えば、円形や多角形であってもよい。
【0021】
また、上記円筒部2は、
図2に示すように、下窄まりのテーパー状に形成された円筒であり、上記底面部1の周縁から上方に立設されている。この円筒部2の厚みは0.1mm以上0.3mm以下に設定されており、上記底面部1の厚みよりも薄くなっている。
【0022】
上記円筒部2の上端には、
図1及び
図2に示すように、分配容器10の外側方向に向かって鍔部3が周設されている。この鍔部3の厚みは、0.35mm以上0.55mm以下に設定されており、上記底面部1、円筒部2のどちらよりも厚みが厚くなっている。したがって、この鍔部3が分配容器10を構成する部材の中で強度的に最も強く、次いで底面部1、最後に円筒部2の順になっている。
【0023】
上記鍔部3には、
図1及び
図2に示すように、上記円筒部2の上部開口を覆う蓋部4が貼着されている。この蓋部4は薄型のフィルムであって、上記吐出口1aに貼着された貼着テープと共に、内部に充填された可塑性食品5が外気と接触するのを遮断している。また、蓋部4には、張出部4aが分配容器10の外側方向に向かって突設されており、この張出部4aを掴んで上方に捲ることにより、蓋部4を剥がすこともできる。もっとも、本実施形態に係る分配容器10では、吐出口1aから可塑性食品5が押し出されるため、この張出部4aは無くてもよい。
【0024】
本実施形態に係る分配容器10の最大の特徴は、上記円筒部2において、鍔部3から底面部1への方向における圧力に対して強度的に弱い変形誘導部20を設けたことにある。前述したように、分配容器10を主に構成する底面部1、円筒部2、鍔部3においては、鍔部3、底面部1、円筒部2の順に強度が強い(円筒部2の強度が最も弱い)。
【0025】
これに加えて、円筒部2は押出機100の押圧部104に対して略垂直に接する(底面部1及び鍔部3は略平行に接する)ことから、押出機100により分配容器10に上方から外圧を加えると、円筒部2、底面部1、鍔部3の順に変形しながら分配容器10が押し潰されていく。
【0026】
このように本実施形態の分配容器10は、厚みを薄くすることにより円筒部2が押し潰され易くなってはいるが、円筒部2を単に薄くしただけでは、円筒部2の変形に規則性がなく、押し潰された際に、円筒部2がどのような態様で変形して押し潰されるか予測できず、押し潰された円筒部2の形状如何によっては、分配容器10の内部に、大量の可塑性食品5が残存してしまうことがあり、更なる可塑性食品5の残留率の低減が求められていた。
【0027】
そこで、本実施形態の分配容器10は、円筒部2の厚みを薄くすることにより、分配容器10が押し潰され易くすると共に、分配容器10が規則的且つ均等に押し潰されるようにするため、円筒部2に変形誘導部20を設けている。
【0028】
本実施形態における円筒部2の変形誘導部20とは、
図1及び
図2に示すように、円筒部2の周方向に沿って設けられた段差20のことであり、この段差20を、円筒部2の上下方向において一定間隔をあけて複数設けている。そして、この段差20を境にして、円筒部2は、
図2及び
図3に示すように、上方から下方に向かうにつれて徐々に縮径されている。
【0029】
上記のような段差20を円筒部2に設けることにより、押出機100によって分配容器10に上方からの外圧を加えると、変形誘導部である段差20が変形の起点となって、分配容器10が押し潰されていく(座屈していく)。上記のように、この段差20は、円筒部2の上下に一定の間隔をあけて複数設けられているため、円筒部2は規則的かつ均等に折り畳まれるように変形して押し潰されることになる。
【0030】
図6に概念的に示すように、円筒部2が規則的かつ均等に押し潰されると、内部に充填されている可塑性食品5は略全て吐出口1aから吐出されて、可塑性食品5の残留率を大幅に低減することができる。
【0031】
上記のような構成である分配容器10の材質は特に限定されるものではないが、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン等の合成樹脂が好適に用いられる。また、この他にも、トウモロコシ等の生分解性樹脂を用いてもよい。
【0032】
一方、上記分配容器10の内部に充填される可塑性食品5は、本実施形態ではアイスのことを指すが、可塑性食品5は可塑性を有するものであればこれに限定されるものではなく、アイスの他にも、例えば、ムース、ババロア、ホイップクリーム等の食品も対象となる。
【0033】
このような可塑性食品5は、上記分配容器10の内部に充填されて、吐出口1aと円筒部2の上部開口が、剥離可能な貼着テープと蓋部4により塞がれた状態で、冷凍庫等に冷凍保存される。そして、購買者の求めがあった際に、分配容器10を冷凍庫から取り出して、
図4に示すように、貼着テープを剥離した状態の分配容器10を押出機100の容器保持部101にセットする。
【0034】
次いで、
図5に示すように、コーンやカップ等の飲食用容器6を分配容器10の吐出口1aの下方に配置し、レバー102を反時計回りに回転させる。このレバー102は芯棒103と連動しているため、レバー102を回転させると、芯棒103は下方へと移動するようになっている。芯棒103の先端部(下端部)には押圧部104が設けられているため、レバー102を回転させることにより、押圧部104が分配容器10を押圧していく。
【0035】
上記のように、分配容器10に上方より下方に向けて外圧を加えると分配容器10は変形を始め、その内部に充填された可塑性食品5が吐出口1aから押出されて、飲食用容器6に盛り付けられる。可塑性食品5が吐出口1aから押出されると、その分だけ分配容器10の上側に空隙が生じるため、円筒部2は、上側に設けられた段差20から規則的かつ均等に押し潰されていく。
【0036】
上記の工程により、押出機100により分配容器10を押し潰すと、分配容器10の内部に充填された可塑性食品5は略全てが押出されて、分配容器10の内部には可塑性食品5が殆ど残存していない。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の分配容器10は、円筒部2に強度的に弱い変形誘導部20(段差20)を設けることにより、分配容器10が規則的かつ均等に押し潰されるようになって、内部に充填された可塑性食品5の残留率を極力低減するという発明課題を解決し得たのである。
【0038】
ここで、
図7は、本発明の他の実施形態に係る可塑性食品用分配容器の円筒部の一部を示す部分拡大断面図であり、
図8は、本発明の更に他の実施形態に係る可塑性食品用分配容器の円筒部の一部を示す部分拡大断面図である。
【0039】
図7に示す実施形態の分配容器10は、円筒部2の強度的に弱い変形誘導部21が、円筒部の周方向に沿って設けられた、断面形状が略コ字形の凹溝21であり、
図8に示す実施形態の分配容器10は、円筒部2の強度的に弱い変形誘導部22が、円筒部2の周方向に沿って設けられた、断面形状が略V字型のノッチ22である。
図7及び
図8に示す実施形態の分配容器10のその他の構成は、前述した
図1〜
図6に示す分配容器10と同様であるので、同一部材に同一符号を附して、その説明を省略する。
【0040】
図7及び
図8に示す実施形態の分配容器10も、円筒部2の周方向に沿って強度的に弱い凹溝21、或いは、ノッチ22を上下に間隔をあけて複数設けることにより、押出機100で上方から外圧を加えると、凹溝21あるいはノッチ22が起点となって、分配容器10は規則的かつ均等に押し潰されていく。したがって、
図7及び
図8に示す実施形態の分配容器10も、前述した
図1〜
図6に示す実施形態の分配容器10と同様に、内部に充填された可塑性食品5の残留率を極力低減することを可能にしている。
【0041】
以上、本発明の代表的な3つの実施形態を詳述してきたが、本発明の分配容器10はこれらの形態に限定されるものではなく、種々の設計変更を許容し得るものであり、円筒部2に強度的に弱い部位20を設けた形態であれば、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10 可塑性食品用分配容器
1 底部
1a 吐出口
2 円筒部
20 変形誘導部(段差)
21 変形誘導部(凹溝)
22 変形誘導部(ノッチ)
3 鍔部
4 蓋部
4a 張出部
5 可塑性食品
6 飲食用容器
100 押出機
101 容器保持部
102 レバー
103 芯棒
104 押圧部