特許第6476438号(P6476438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6476438缶の印刷用凸版の製造方法及び缶の印刷用凸版
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6476438
(24)【登録日】2019年2月15日
(45)【発行日】2019年3月6日
(54)【発明の名称】缶の印刷用凸版の製造方法及び缶の印刷用凸版
(51)【国際特許分類】
   B41N 3/00 20060101AFI20190225BHJP
   B41N 1/12 20060101ALI20190225BHJP
   B41N 1/22 20060101ALI20190225BHJP
   B41C 1/05 20060101ALI20190225BHJP
【FI】
   B41N3/00
   B41N1/12
   B41N1/22
   B41C1/05
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-40791(P2014-40791)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-166136(P2015-166136A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年12月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩明
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−115792(JP,A)
【文献】 特開2008−230195(JP,A)
【文献】 特開2007−185917(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/030013(WO,A1)
【文献】 特開2011−143615(JP,A)
【文献】 特開2010−064281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/00 − 99/00
B41C 1/00 − 3/08
B41D 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を透過する基材上に、未硬化の紫外線硬化性樹脂層を積層する積層工程と、
前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層に対して、厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側及び前記基材側からそれぞれ紫外線を照射する紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程を経た前記紫外線硬化性樹脂層に対して、レーザー彫刻により画像パターンを形成するレーザー彫刻工程と、を備え、
前記紫外線照射工程では、前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層に対して、紫外線の照射装置の紫外線照射量を、厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側と前記基材側とで、それぞれ調整することにより、厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側から照射する紫外線照射量に比べて、厚さ方向に沿う前記基材側から照射する紫外線照射量を小さくすることを特徴とする缶の印刷用凸版の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の缶の印刷用凸版の製造方法であって、
前記紫外線照射工程では、前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層に対して、
厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側から照射する紫外線照射量を、2000〜5000mJ/cmとし、
厚さ方向に沿う前記基材側から照射する紫外線照射量を、1500〜3000mJ/cmとすることを特徴とする缶の印刷用凸版の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の缶の印刷用凸版の製造方法であって、
前記レーザー彫刻工程では、前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層を、円筒状のスリーブ支持体の外周に装着してレーザー彫刻することを特徴とする缶の印刷用凸版の製造方法。
【請求項4】
紫外線を透過する基材上に、紫外線硬化性樹脂層が積層され、
前記紫外線硬化性樹脂層に対して、レーザー彫刻により画像パターンが形成された缶の印刷用凸版であって、
前記紫外線硬化性樹脂層における、厚さ方向に沿う前記基材とは反対側に位置する端部の硬度に対する、厚さ方向に沿う中央部の硬度の比が、90〜110%であり、
前記画像パターンは、インキが付着する画像部分を有し、
前記画像部分は、複数の突起体が配設された網点部と、前記網点部以外の部分と、を有し、
前記網点部は、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分を有することを特徴とする缶の印刷用凸版。
【請求項5】
請求項に記載の缶の印刷用凸版であって、
前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分の前記突起体の頂部高さが、前記網点部以外の部分の頂部高さに比べて低くされ、かつ、前記網点部以外の部分の頂部高さと前記突起体の頂部高さとの差△hが、0.03mm以下であることを特徴とする缶の印刷用凸版。
【請求項6】
請求項又はに記載の缶の印刷用凸版であって、
前記突起体の外周面が、段差のない円錐面状又は円柱面状をなしていることを特徴とする缶の印刷用凸版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶の印刷用凸版の製造方法及び缶の印刷用凸版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の缶の印刷用凸版として、例えば、鉄板等からなる支持体上に、紫外線硬化性樹脂層(感光性樹脂層)が形成され、該紫外線硬化性樹脂層にレーザー彫刻を施して画像パターンを形成したものが知られている。尚、紫外線硬化性樹脂層に対しては、その厚さ方向の表面側(紫外線硬化性樹脂層の厚さ方向に沿う支持体とは反対側)から紫外線が照射され、紫外線硬化性樹脂層が硬化させられた状態で、レーザー彫刻が施される。
【0003】
ここで、紫外線硬化性樹脂層が十分に硬化されていない場合には、画像パターンの精度を確保することができない。そこで、例えば下記特許文献1においては、紫外線硬化性樹脂層に対して紫外線を照射(前露光)し、画像パターンをレーザー彫刻した後、さらにこの紫外線硬化性樹脂層に対して紫外線を照射(後露光)して硬化を促している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−64401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の缶の印刷用凸版では、下記の課題を有していた。
すなわち、前露光では積算光量を高めても紫外線硬化性樹脂層の表面が内部に比べてしっかり(早期に)硬化してしまい、内部が硬化したときに発生する酸素と水の放出が十分になされず、やはり均一な性質(硬度)の版を得ることができなかった。つまり、前露光及び後露光によっても、紫外線硬化性樹脂層において硬化ムラが生じるため、これを改善することが望まれていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、紫外線硬化性樹脂層を均一に硬化させることができ、これにより高精細な画像パターンを精度よく形成でき、缶の印刷精度を向上できる缶の印刷用凸版の製造方法、及び缶の印刷用凸版を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明に係る缶の印刷用凸版の製造方法は、紫外線を透過する基材上に、未硬化の紫外線硬化性樹脂層を積層する積層工程と、前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層に対して、厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側及び前記基材側からそれぞれ紫外線を照射する紫外線照射工程と、前記紫外線照射工程を経た前記紫外線硬化性樹脂層に対して、レーザー彫刻により画像パターンを形成するレーザー彫刻工程と、を備え、前記紫外線照射工程では、前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層に対して、紫外線の照射装置の紫外線照射量を、厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側と前記基材側とで、それぞれ調整することにより、厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側から照射する紫外線照射量に比べて、厚さ方向に沿う前記基材側から照射する紫外線照射量を小さくすることを特徴とする。
また本発明は、紫外線を透過する基材上に、紫外線硬化性樹脂層が積層され、前記紫外線硬化性樹脂層に対して、レーザー彫刻により画像パターンが形成された缶の印刷用凸版であって、前記紫外線硬化性樹脂層における、厚さ方向に沿う前記基材とは反対側に位置する端部の硬度に対する、厚さ方向に沿う中央部の硬度の比が、90〜110%であり、前記画像パターンは、インキが付着する画像部分を有し、前記画像部分は、複数の突起体が配設された網点部と、前記網点部以外の部分と、を有し、前記網点部は、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る缶の印刷用凸版の製造方法では、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やアクリル樹脂等の紫外線を透過する性質の基材上に、未硬化の紫外線硬化性樹脂層を積層した状態で、これら基材及び紫外線硬化性樹脂層に対して、厚さ方向の両側(表面側及び裏面側)からそれぞれ紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂層を硬化させるようにした。
これにより製造される本発明の缶の印刷用凸版において、紫外線硬化性樹脂層は、その厚さ方向に沿う基材とは反対側に位置する表面近傍のみならず、内部まで硬化させられやすくなり、樹脂層全体が均一に硬化させられることとなって、硬度ムラの少ない均質な版を得ることができる。
【0009】
具体的に従来では、例えば鉄板等からなる支持体上に、未硬化の紫外線硬化性樹脂層を積層しており、該紫外線硬化性樹脂層に対しては、その厚さ方向の表面側(厚さ方向に沿う紫外線硬化性樹脂層側)からのみ、紫外線を照射していた。そのため、紫外線硬化性樹脂層の表面近傍が先に硬化して内部までは十分に硬化させられず、厚さ方向に不均一な性質(硬度)の版となっていた。すなわち、紫外線硬化性樹脂層は、紫外線が照射されることにより架橋が進み、酸素と水を放出しつつ硬化するのだが、樹脂層の表面が早期に硬化した場合には、酸素と水の逃げ場がなくなり、内部の硬化が進みにくくなる。
【0010】
一方、本発明によれば、紫外線硬化性樹脂層に対して厚さ方向の両側から紫外線を照射することができ、該樹脂層の表面近傍、裏面近傍の硬化とともに、内部の硬化も促すことができるので、酸素と水が内部に閉じ込められにくくなるとともに適度に放出されて、樹脂層が厚さ方向全体に均一に架橋され、均質に硬化される。
これにより、樹脂層硬化後にレーザー彫刻した版においては、硬度差に起因する画像パターンの欠けや細線部(細線による線画や文字、記号等)の捩れ等の不具合が発生しにくくなり、高精細な印刷図柄であっても印刷精度を十分に確保することが可能になる。
【0011】
具体的には、上述のように紫外線硬化性樹脂層がその厚さ方向の両側から紫外線に露光(両面露光)された本発明の缶の印刷用凸版では、前記紫外線硬化性樹脂層における、厚さ方向に沿う前記基材とは反対側に位置する端部の硬度に対する、厚さ方向に沿う中央部の硬度の比が、90〜110%である。
すなわち、紫外線硬化性樹脂層における厚さ方向の表面側(基材とは反対側)の端部と、厚さ方向の中央部との硬度比が、上記範囲内にない場合には、該樹脂層の硬度が厚さ方向に均一であるとは言えず、上述した作用効果が安定して得られにくくなる。
尚、より望ましくは、前記紫外線硬化性樹脂層における、厚さ方向に沿う前記基材とは反対側に位置する端部の硬度に対する、厚さ方向に沿う中央部の硬度の比は、95〜105%である。
【0012】
以上より本発明によれば、紫外線硬化性樹脂層を均一に硬化させることができ、これにより高精細な画像パターンを精度よく形成でき、缶の印刷精度を向上できるのである。
【0014】
一般に、紫外線硬化性樹脂層の表面(基材とは反対側を向く面)近傍は、版の印刷精度を確保する観点から、十分に硬化されていることが好ましい。一方、紫外線硬化性樹脂層の裏面(基材側を向く面)近傍は、紫外線照射量が大き過ぎると、逃げ場を失ったオゾンや酸素が樹脂層内を通過することで、該樹脂層の内部に亀裂やひずみが生じやすくなる。このような亀裂やひずみは、画像パターンの網点部や細線部の割れや欠けの原因となり得るため、好ましくない。また、紫外線硬化性樹脂層の裏面近傍に対して紫外線照射量を大きくし過ぎると、上記同様の理由により、紫外線硬化性樹脂層と基材との界面に剥離が生じやすくなるおそれがある。
【0015】
そこで本発明では、上記構成を採用することにより、紫外線硬化性樹脂層の表面近傍では、十分に硬化が促されて印刷精度を確保することができ、かつ、紫外線硬化性樹脂層の裏面近傍では、酸素が発生し過ぎることが抑制されて、樹脂層の内部の亀裂やひずみが防止され、また樹脂層と基材との界面剥離も防止される。
【0016】
すなわち、紫外線硬化性樹脂層に対して照射される、厚さ方向の表面側(厚さ方向に沿う紫外線硬化性樹脂層側)からの紫外線照射量に比べて、厚さ方向の裏面側(厚さ方向に沿う基材側)からの紫外線照射量を同等以下とすることで、紫外線硬化性樹脂層を、厚さ方向の両側から硬度が均一となるように硬化させつつも、印刷精度に影響する亀裂やひずみ、界面剥離等の発生を抑制して、印刷精度をより高品位で安定したものとすることができる
【0017】
また、本発明に係る缶の印刷用凸版の製造方法において、前記紫外線照射工程では、前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層に対して、厚さ方向に沿う前記紫外線硬化性樹脂層側から照射する紫外線照射量を、2000〜5000mJ/cmとし、厚さ方向に沿う前記基材側から照射する紫外線照射量を、1500〜3000mJ/cmとすることとしてもよい。
【0018】
基材及び該基材上の紫外線硬化性樹脂層に対して、厚さ方向に沿う紫外線硬化性樹脂層側(厚さ方向の表面側)から照射する紫外線照射量と、厚さ方向に沿う基材側(厚さ方向の裏面側)からの紫外線照射量とを、それぞれ上記範囲内とすることにより、上述した作用効果がより顕著に得られることになる。
【0019】
具体的に、厚さ方向の表面側から照射する紫外線照射量が、2000mJ/cm未満では、紫外線硬化性樹脂層の表面近傍の硬度不足により、版(画像パターン)の耐摩耗性が十分に得られないおそれがある。また、厚さ方向の表面側から照射する紫外線照射量が、5000mJ/cmを超えると、過露光により版の欠けが生じやすくなるおそれがある。
また、厚さ方向の裏面側から照射する紫外線照射量が、1500mJ/cm未満では、露光不足により紫外線硬化性樹脂層の内部の硬度が不足して、レーザー彫刻した画像パターンに細線部の捩れの問題等が生じやすくなるおそれがある。また、厚さ方向の裏面側から照射する紫外線照射量が、3000mJ/cmを超えると、硬化中に発生するオゾンガスの影響により、版の内部にクラックが生じたり、紫外線硬化性樹脂層と基材との界面に剥離が生じやすくなるおそれがある。
【0020】
また、本発明に係る缶の印刷用凸版の製造方法において、前記レーザー彫刻工程では、前記基材及び前記紫外線硬化性樹脂層を、円筒状のスリーブ支持体の外周に装着してレーザー彫刻することとしてもよい。
【0021】
この場合、スリーブ支持体の外周に、硬化後の版材(基材及び紫外線硬化性樹脂層)を取り付けた状態でレーザー彫刻するので、画像パターンの見当合わせ(位置合わせ)の精度を、容易かつ確実に高めることができる。
【0022】
また、本発明に係る缶の印刷用凸版において、前記突起体の頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分の前記突起体の頂部高さが、前記網点部以外の部分の頂部高さに比べて低くされ、かつ、前記網点部以外の部分の頂部高さと前記突起体の頂部高さとの差△hが、0.03mm以下であることとしてもよい。
【0023】
本発明では上述したように、紫外線硬化性樹脂層の硬度が厚さ方向に均一とされ、該樹脂層の表面近傍及び内部が確実に硬化されることから、画像パターンの画像部分に網点部が設けられた場合において、ドットゲイン(点太り現象)が抑制される。そのため従来のように、ドットゲインを抑制する目的でビローサーフェス(上記差△h)を大きくとる必要はなく、上記構成のように、ビローサーフェスを0.03mm以下に抑えることができる。
【0024】
ここで、従来では、ビローサーフェスを0.03mmよりも大きく設定していたために、下記の問題が生じていた。
すなわち、インキが画像部分に付着させられた状態で、該画像部分にブランケットが押圧される際、ブランケットが強く押圧されるベタ部(網点部以外の部分)に比べて、網点部では、インキをブランケットに転移させるのに十分な押圧力が得られず、網点部のインキの一部が突起体の外周面に残インキとして残ってしまう。このような残インキが網点部に徐々に蓄積していき、目詰まり状態(突起体同士の間に残インキが充満した状態)となり、突起体同士の間に残インキを保持できなくなった時点で、残インキはブランケットにまとめて転移され、網点同士が連結された異常な印刷状態(印刷不良)が発生する。
一方、本発明によれば、ドットゲインを抑えつつビローサーフェスを0.03mm以下に設定できるので、上記目詰まり状態に起因する印刷不良が防止されて、高精細な画像パターンを精度よく安定的に缶に印刷することができる。
【0025】
また、本発明に係る缶の印刷用凸版において、前記突起体の外周面が、段差のない円錐面状又は円柱面状をなしていることとしてもよい。
【0026】
本発明では上述したように、紫外線硬化性樹脂層の硬度が厚さ方向に均一とされ、該樹脂層の表面近傍及び内部が確実に硬化されることから、画像パターンの画像部分に網点部が設けられる場合において、レーザー彫刻された網点部の各突起体の外周面が、段差のない円錐面状又は円柱面状に形成される。
これにより、網点部において隣り合う突起体同士の画像間距離(網点画像間距離)を小さく設定しつつも、レリーフ深度を深くしてインキの目詰まりを防止することが可能になり、より高精細な画像パターンを安定して印刷することができる。
【0027】
具体的に従来では、紫外線硬化性樹脂層の硬度が厚さ方向に不均一であったため、レーザー彫刻された網点部の各突起体の外周面が、段差を有する多段円錐面状や多段円柱面状に形成されていた。そのため、網点部において隣り合う突起体同士の画像間距離を小さく設定した場合に、これら突起体の外周面同士が接近し過ぎて(または一体にくっついて形成されて)、レリーフ深度が浅くなり、インキの目詰まりが生じやすかった。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る缶の印刷用凸版の製造方法、及び缶の印刷用凸版によれば、紫外線硬化性樹脂層を均一に硬化させることができ、これにより高精細な画像パターンを精度よく形成でき、缶の印刷精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】缶に印刷を施すオフセット印刷装置の概略構成を説明する図である。
図2図1のオフセット印刷装置に用いられるスリーブ印刷版を示す斜視図である。
図3図1のオフセット印刷装置に用いられるスリーブ印刷版を軸線方向から見た正面図である。
図4】(a)缶の印刷用凸版の製造方法における積層工程を説明する図、(b)缶の印刷用凸版の製造方法における紫外線照射工程を説明する図、(c)缶の印刷用凸版をスリーブ支持体に接着した状態を表す図、である。
図5】缶の印刷用凸版の要部を拡大して示す側断面図(縦断面図)であり、レーザー彫刻工程により形成された画像パターンを説明する図である。
図6】レーザー彫刻後の突起体の外周面形状を説明する図であり、(a)本発明の一実施形態の突起体、(b)従来例の突起体、を表している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る缶の印刷用凸版40及びその製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態の缶の印刷用凸版40は、図2及び図3に示されるスリーブ印刷版30の外周面に設けられるものであり、該スリーブ印刷版30は、図1に示されるオフセット印刷装置Aのシリンダ6に、着脱可能に嵌合される。
【0031】
図1において、本実施形態のオフセット印刷装置Aは、円筒状の被印刷物である缶20の外周面に印刷を施す缶の印刷装置であり、このオフセット印刷装置Aは、インキ付着機構Bと、缶移動機構Cと、を有している。
インキ付着機構Bは、インキを供給するインカーユニット1と、インカーユニット1に接触してインキを写し取った後、缶(缶胴)20の外周面に接触して該インキを印刷する(転写する)ブランケット9を外周に備えたブランケットホイール8と、を有している。
【0032】
インカーユニット1は、インキ源2と、インキ源2に接触してインキを受け取るダクティングロール3と、ダクティングロール3に接続する複数のローラからなる中間ローラ4と、中間ローラ4に接続するゴムローラ5と、ゴムローラ5に接続するシリンダ6と、を備えており、シリンダ6は、印刷装置Aの不図示のシャフト部に片持ち状態で回転自在に支持されている。
【0033】
シリンダ6は円筒状又は円柱状をなしており、該シリンダ6の外周面には、図2に示される円筒状のスリーブ印刷版30が着脱可能に嵌合している。シリンダ6の外周にスリーブ印刷版30が装着された状態で、これらシリンダ6及びスリーブ印刷版30は、軸線Oを共通軸として互いに同軸に配置されている。
また、スリーブ印刷版30の外周面には、缶20に転写する画像パターンと同形状にレーザー彫刻された画像部分を有する缶の印刷用凸版(以下、凸版又は版と省略することがある)40が、スリーブ印刷版30の軸線O回りに互いに間隔をあけて複数、又は1つのみ設けられている。シリンダ6及びスリーブ印刷版30の詳しい構成については、後述する。
【0034】
図1において、ブランケットホイール8の外周面には、ブランケット9が複数枚設けられており、これらブランケット9は、シリンダ6の外周面に装着されたスリーブ印刷版30の凸版40に接触し、また缶20にも接触するように構成されている。
【0035】
缶移動機構Cは、缶20を印刷装置Aに取り入れる缶シュータ10と、缶シュータ10から供給された缶20を回転自在に保持するマンドレル11と、マンドレル11に装着された缶20を、順次インキ付着機構Bへ向かわせるように回転移動させるマンドレルターレット12と、を有している。
【0036】
このような構成とされたオフセット印刷装置Aにおいては、複数のインカーユニット1のインキ源2から各々異なった色のインキが、ダクティングロール3、中間ローラ4、ゴムローラ5を介して、シリンダ6の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の凸版40に付着させられ、これら各色のインキが、回転するブランケットホイール8上のブランケット9に画像パターンとして乗せられ、この画像パターンがマンドレル11に保持された缶20に接触しつつ印刷されるようになっている。
【0037】
ここで、本明細書においては、シリンダ6及びスリーブ印刷版30の中心軸線(共通軸)を軸線Oという。また、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0038】
図2及び図3において、スリーブ印刷版30は、軸線O方向に沿って延びる円筒状をなすスリーブ支持体31と、スリーブ支持体31の外周側に配設された版材32(凸版40)と、を備えている。尚、本実施形態では、版材32は、スリーブ支持体31に対して両面テープ等により取り外し可能に取り付けられている。
【0039】
スリーブ支持体31は、例えばNiやSUS等の金属材料、又は、繊維強化プラスチック(FRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ塩化ビニル(塩ビ)等の樹脂材料等で形成されている。尚、本実施形態では、スリーブ支持体31は、ニッケル材料からなるシームレスの円筒体で形成されている。
【0040】
本実施形態のスリーブ支持体31は、例えばその外径Dが100mm≦D≦250mm、軸線O方向に沿う長さLが50mm≦L≦500mm、外径Dと軸線O方向長さLとの比L/Dが0.2≦L/D≦2、に設定されている。また、スリーブ支持体31の肉厚tは、例えば0.25mm≦t≦2mmとされている。
【0041】
版材32は、例えば肉厚が0.5〜1.0mmとされた円筒状をなしている。この版材32の外周面には、レーザー彫刻(レーザー加工)によって形成された画像パターン(印刷デザイン)を有する凸版40が、周方向に互いに間隔をあけて複数又は1つ刻設されている。尚、本実施形態では、版材32の外周面に2つの凸版40が設けられており、これら凸版40同士が、軸線Oを挟んで互いに反対側に位置するように背向配置されている。
【0042】
そして、図4(c)に示されるように、凸版40(版材32)は、紫外線を透過する性質の基材15上に、紫外線硬化性樹脂層(感光性樹脂層)16が積層されて形成されている。ここで、本明細書でいう「紫外線を透過する」とは、紫外線硬化性樹脂層16を硬化させる波長領域の紫外線を透過可能であることを指し、具体的には、例えば波長200〜500nmの紫外線を透過可能であることを指す。
【0043】
本実施形態では、このような基材15として、厚さが0.1〜0.8mm、ヤング率(縦弾性係数)が2.3〜5.0GPaのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いている。尚、基材15としては、紫外線を透過する性質を有し、かつ該基材15上に少なくとも硬化前の紫外線硬化性樹脂層16を支持可能な程度の剛性を備えていればよいことから、その材質、厚さ、ヤング率は上述したものに限定されるわけではない。また、PETフィルム以外の基材15として、例えばアクリル樹脂からなるフィルム(シート材)を用いてもよい。
【0044】
紫外線硬化性樹脂層16には、レーザー彫刻により画像パターンが形成されている。画像パターンの詳細については、後述する。
そして、紫外線硬化性樹脂層16の硬度は、凸版40の厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側に位置する端部(紫外線硬化性樹脂層16において径方向外側を向く表面近傍、つまり樹脂層16の外周面近傍)と、厚さ方向Tに沿う中央部(樹脂層16の内部中央)とで、互いに同等とされている。
【0045】
具体的には、紫外線硬化性樹脂層16における、厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側に位置する端部の硬度に対する、厚さ方向Tに沿う中央部の硬度の比が、90〜110%の範囲内である。より望ましくは、紫外線硬化性樹脂層16における、厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側に位置する端部の硬度に対する、厚さ方向Tに沿う中央部の硬度の比は、95〜105%である。
【0046】
本実施形態では、紫外線硬化性樹脂層16の厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側に位置する端部(表面)の硬度が、ショアD(JIS Z 2246)で55〜60HSであり、紫外線硬化性樹脂層16の厚さ方向Tに沿う中央部の硬度が、ショアDで55〜60HSであって、これらの硬度が互いに略同一である。具体的に本実施形態では、紫外線硬化性樹脂層16の厚さが0.6mmであり、その厚さ方向Tに沿う表面(基材15とは反対側を向く面上、深さ0mm)におけるショアD硬さと、厚さ方向Tの中央部(表面から深さ0.3mm)におけるショアD硬さとが、互いに同一となっている。
尚、本実施形態の紫外線硬化性樹脂層16は、厚さ方向Tの全域にわたって均一な硬度を有しているが、上記ショアD硬さの測定においては、該樹脂層16の厚さ方向Tに沿う基材15側に位置する端部(裏面)の硬度について、該端部に近い基材15自体の硬度を拾って(測定して)しまい正確な値が得られにくいことから、特に記載してはいない。
【0047】
また、図4(c)に符号17で示されるものは、凸版40の基材15の裏面(紫外線硬化性樹脂層16とは反対側を向く面、基材15の内周面)と、スリーブ支持体31の外周面との間に介在してこれらを取り外し可能に接着する、接着層である。本実施形態では、この接着層17として、両面テープを用いている。
【0048】
図5に示されるように、凸版40は、その画像パターンとされる版面に、インキが付着される画像部分50と、インキが付着されない非画像部分51と、を有している。
凸版40の画像パターンのうち、インキが付着する画像部分50は、複数の突起体41aが配設された網点部41と、網点部以外の部分42と、を有している。
【0049】
画像部分50のうち、前記網点部以外の部分42には、ベタ部(広範囲にインキが付着されてベタ塗りに用いられる部分)や線画部(線画の中でも太線及び太線による文字や記号等)が配設されている。以下の説明では、前記網点部以外の部分42を、単にベタ部42ということがある。
【0050】
画像部分50において、網点部41の突起体41aは、ベタ部42よりも凸版40の厚さ方向Tに後退させられた基底部43に突設されている。本実施形態では、突起体41aは、基底部43から厚さ方向Tに沿って頂部側(図5における上側、スリーブ印刷版30における径方向の外側)へ向かう従い漸次縮径する円錐台状、又は円柱状をなしており、該突起体41aの頂部は、その上側から見て円形状をなしている。
また、図5及び図6(a)に示されるように、突起体41aの外周面は、段差のない円錐面状又は円柱面状をなしている。
ただし、突起体41aの形状は、本実施形態で説明したものに限定されない。
【0051】
網点部41には、複数の突起体41aが規則的に又は不規則に集合して配置(配列)されており、また突起体41aの集中度が画像部分50の各部で互いに同一とされたり、互いに異なったりして、網点画像が形成されている。
具体的に本実施形態の凸版40は、複数の突起体41aの配列が規則的とされ、突起体41aの頂部(頂点)面積や形状が互いに異なることで濃度が表現される、AMスクリーン印刷用凸版であるが、これに限定されるものではない。すなわち凸版40は、突起体41aの頂部面積や形状が互いに同一で、配列が不規則とされる(集中度(密度)が変化する)ことにより濃度が表現される、FMスクリーン印刷用凸版であってもよい。
【0052】
網点部41には、例えば突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされ、線数(網点線数、スクリーン線数、又は精細度)が80〜250LPIとされ、網点濃度(網点面積率)が0%を超え15%以下(具体的には、0.2〜15%)とされた高精細な画像パターンの部分(以下「高精細な部分」と省略することがある)が含まれている。尚、前記「1.4×10−3mm」は、例えば直径0.04mmの円の面積に相当する。
突起体41aの頂部面積は、例えば、80線・網点濃度10%の時で頂部面積10×10−3mm、250線・網点濃度1%の時で頂部面積0.1×10−3mmとなっている。また、網点部41の前記高精細な部分において、隣り合う突起体41a同士の画像間距離(網点画像間距離)は、0.3mm以下とされている。
【0053】
ここで、前記線数(LPI)とは、版面の1インチ(25.4mm)あたりに網点(突起体41aの頂面)が並ぶ列数(線/インチ)を表している。
また、前記網点濃度とは、単位面積あたりにインキが盛られる面像面積の割合を表している。
また、前記画像間距離とは、隣り合う突起体41aの頂部の周縁同士の間の距離(間隔)を表している。
【0054】
そして図5において、本実施形態では、網点部41のうち、前記高精細な部分における突起体41aの頂部高さ(つまり凸版40の厚さ方向Tに沿う基底部43から突起体41aの頂部(頂面)までの高さ)Hが、ベタ部42の頂部高さ(厚さ方向Tに沿う基底部43からベタ部42の頂部(頂面)までの高さ)Hに比べて低くされ、かつ、ベタ部42の頂部高さHと突起体41aの頂部高さHとの差△h(ビローサーフェス)が、0.03mm以下(つまり0mm<△h≦0.03mm)とされている。
【0055】
また、特に図示していないが、網点部41のうち、前記高精細な部分以外の部分、つまり突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、前記差△hが0mmとされている。
尚、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分は、前記差△hが0mmでなくてもよく、例えば、0mm<△h≦0.03mmであってもよい。ただし、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分の前記差△hが、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分の前記差△hに比べて小さくされていることが好ましい。
【0056】
また本実施形態では、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分(高精細な部分)と、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分(高精細な部分以外の部分)と、が含まれる網点部41について説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた部分のみによって網点部41が形成されていてもよい。
【0057】
また、非画像部分51には、画像部分50よりも高さが低い基底部43が形成されており、上述の網点部41とは異なりこの基底部43には、突起体41aは形成されていない。
【0058】
また凸版40の画像パターンは、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻されて形成されている。
【0059】
次に、このような構成とされた缶の印刷用凸版40を製造する方法について説明する。
本実施形態に係る缶の印刷用凸版40の製造方法は、紫外線を透過する基材15上に、未硬化の紫外線硬化性樹脂層16を積層する積層工程と、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側及び基材15側からそれぞれ紫外線UVを照射する紫外線照射工程と、紫外線照射工程を経た紫外線硬化性樹脂層16に対して、レーザー彫刻により画像パターンを形成するレーザー彫刻工程と、を備えている。
【0060】
図4(a)に示されるように、積層工程では、基材15上に、硬化前の紫外線硬化性樹脂層16を積層する。この状態で、未硬化の紫外線硬化性樹脂層16は、基材15上に単に載せられており、基材15と一体になってはいない。
【0061】
次いで、図4(b)に示されるように、紫外線照射工程において、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、これらが積層する方向(厚さ方向T)の表面(上面)及び裏面(下面)の両側から、それぞれ紫外線UVを照射する。これにより、紫外線硬化性樹脂層16が表面側及び裏面側から内部にわたって硬化して、基材15に一体化される。
【0062】
具体的に、この紫外線照射工程では、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側(つまり表面側)から照射する紫外線UVの照射量に比べて、厚さ方向Tに沿う基材15側(つまり裏面側)から照射する紫外線UVの照射量を同一にするか、又は小さくする。
また、紫外線照射工程では、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側から照射する紫外線UVの照射量を、2000〜5000mJ/cmとし、厚さ方向Tに沿う基材15側から照射する紫外線UVの照射量を、1500〜3000mJ/cmとする。
【0063】
次いで、レーザー彫刻工程では、図4(c)に示されるように、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16(つまり版材32)を、円筒状のスリーブ支持体31の外周に接着層17を介して装着(接着)した状態で、版材32の紫外線硬化性樹脂層16に対して、図5に示される画像パターンのレーザー彫刻を行う。
具体的には、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザー加工が可能なレーザー彫刻機を用いて、スリーブ印刷版30の版材32にレーザー彫刻を施し、画像部分50及び非画像部分51を有する凸版40を形成(刻設)する。
【0064】
このような工程を経て製造された缶の印刷用凸版40は、その紫外線硬化性樹脂層16の硬度が、厚さ方向Tの表面近傍と厚さ方向Tの中央部とで、互いに同等となるのである。
【0065】
以上説明した本実施形態に係る缶の印刷用凸版40の製造方法では、例えば本実施形態で説明したようなポリエチレンテレフタレート(PET)やアクリル樹脂等の紫外線UVを透過する性質の基材15上に、未硬化の紫外線硬化性樹脂層16を積層した状態で、これら基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tの両側(表面側及び裏面側)からそれぞれ紫外線UVを照射して、紫外線硬化性樹脂層16を硬化させるようにしている。
これにより製造される本実施形態の缶の印刷用凸版40において、紫外線硬化性樹脂層16は、その厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側に位置する表面近傍のみならず、内部まで硬化させられやすくなり、樹脂層16全体が均一に硬化させられることとなって、硬度ムラの少ない均質な版を得ることができる。
【0066】
具体的に従来では、例えば鉄板等からなるスリーブ支持体上に、未硬化の紫外線硬化性樹脂層を積層しており、該紫外線硬化性樹脂層に対しては、その厚さ方向の表面側(厚さ方向に沿う紫外線硬化性樹脂層側)からのみ、紫外線を照射していた。そのため、紫外線硬化性樹脂層の表面近傍が先に硬化して内部までは十分に硬化させられず、厚さ方向に不均一な性質(硬度)の版となっていた。すなわち、紫外線硬化性樹脂層は、紫外線が照射されることにより架橋が進み、酸素と水を放出しつつ硬化するのだが、樹脂層の表面が早期に硬化した場合には、酸素と水の逃げ場がなくなり、内部の硬化が進みにくくなる。
ここで、上記従来の構成において、鉄板からなる基材上に、厚さ0.6mmの紫外線硬化性樹脂層が積層され、該樹脂層が厚さ方向の表面側のみから紫外線照射され硬化したものを用意し、この樹脂層における厚さ方向に沿う基材とは反対側の端部(表面、深さ0mm)の硬度と、厚さ方向に沿う中央部(表面から深さ0.3mm)の硬度とを測定したところ、上記表面のショアD硬さが55〜60HSであったのに対して、上記中央部のショアD硬さは45〜54HSと低くなっていた。
【0067】
一方、本実施形態によれば、紫外線硬化性樹脂層16に対して厚さ方向Tの両側から紫外線UVを照射することができ、該樹脂層16の表面近傍、裏面近傍の硬化とともに、内部の硬化も促すことができるので、酸素と水が内部に閉じ込められにくくなるとともに適度に放出されて、樹脂層16が厚さ方向T全体に均一に架橋され、均質に硬化される。
具体的には、紫外線硬化性樹脂層16における厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側の端部(表面、深さ0mm)の硬度と、厚さ方向Tに沿う中央部(表面から深さ0.3mm)の硬度が、上述の通り、ともにショアD硬さ55〜60HSとなり互いに同等である。
これにより、樹脂層16硬化後にレーザー彫刻した版においては、硬度差に起因する画像パターンの欠けや細線部(細線による線画や文字、記号等)の捩れ等の不具合が発生しにくくなり、高精細な印刷図柄であっても印刷精度を十分に確保することが可能になる。
【0068】
具体的には、上述のように紫外線硬化性樹脂層16がその厚さ方向Tの両側から紫外線に露光(両面露光)された本実施形態の缶の印刷用凸版40では、この紫外線硬化性樹脂層16における、厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側に位置する端部の硬度に対する、厚さ方向Tに沿う中央部の硬度の比が、90〜110%である。
すなわち、紫外線硬化性樹脂層16における厚さ方向Tの表面側(基材15とは反対側)の端部と、厚さ方向Tの中央部との硬度比が、上記範囲内にない場合には、該樹脂層16の硬度が厚さ方向Tに均一であるとは言えず、上述した作用効果が安定して得られにくくなる。
尚、前記硬度の比が、95〜105%である場合には、上述した作用効果がさらに格別顕著なものとなり、望ましい。
【0069】
以上より本実施形態によれば、紫外線硬化性樹脂層16を均一に硬化させることができ、これにより高精細な画像パターンを精度よく形成でき、缶20の印刷精度を向上できるのである。
【0070】
また、本実施形態の缶の印刷用凸版40の製造方法では、紫外線照射工程において、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側(表面側)から照射する紫外線UV照射量に比べて、厚さ方向Tに沿う基材15側(裏面側)から照射する紫外線UV照射量を同一、又は小さくしたので、下記の作用効果を奏する。
すなわち、一般に、紫外線硬化性樹脂層16の表面(基材15とは反対側を向く面)近傍は、版の印刷精度を確保する観点から、十分に硬化されていることが好ましい。一方、紫外線硬化性樹脂層16の裏面(基材15側を向く面)近傍は、紫外線UV照射量が大き過ぎると、逃げ場を失ったオゾンや酸素が樹脂層16内を通過することで、該樹脂層16の内部に亀裂やひずみが生じやすくなる。このような亀裂やひずみは、画像パターンの網点部41や細線部の割れや欠けの原因となり得るため、好ましくない。また、紫外線硬化性樹脂層16の裏面近傍に対して紫外線UV照射量を大きくし過ぎると、上記同様の理由により、紫外線硬化性樹脂層16と基材15との界面に剥離が生じやすくなるおそれがある。
【0071】
そこで本実施形態では、上記構成を採用することにより、紫外線硬化性樹脂層16の表面近傍では、十分に硬化が促されて印刷精度を確保することができ、かつ、紫外線硬化性樹脂層16の裏面近傍では、酸素が発生し過ぎることが抑制されて、樹脂層16の内部の亀裂やひずみが防止され、また樹脂層16と基材15との界面剥離も防止される。
【0072】
すなわち、紫外線硬化性樹脂層16に対して照射される、厚さ方向Tの表面側(厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側)からの紫外線UV照射量に比べて、厚さ方向Tの裏面側(厚さ方向Tに沿う基材15側)からの紫外線UV照射量を同等以下とすることで、紫外線硬化性樹脂層16を、厚さ方向Tの両側から硬度が均一となるように硬化させつつも、印刷精度に影響する亀裂やひずみ、界面剥離等の発生を抑制して、印刷精度をより高品位で安定したものとすることができる。
【0073】
また、紫外線照射工程では、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側から照射する紫外線UV照射量を、2000〜5000mJ/cmとし、厚さ方向Tに沿う基材15側から照射する紫外線UV照射量を、1500〜3000mJ/cmとしたので、下記の作用効果を奏する。
すなわち、基材15及び該基材15上の紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側(厚さ方向Tの表面側)から照射する紫外線UV照射量と、厚さ方向Tに沿う基材15側(厚さ方向Tの裏面側)からの紫外線UV照射量とを、それぞれ上記範囲内とすることにより、上述した作用効果がより顕著に得られることになる。
【0074】
具体的に、厚さ方向Tの表面側から照射する紫外線UV照射量が、2000mJ/cm未満では、紫外線硬化性樹脂層16の表面近傍の硬度不足により、版(画像パターン)の耐摩耗性が十分に得られないおそれがある。また、厚さ方向Tの表面側から照射する紫外線UV照射量が、5000mJ/cmを超えると、過露光により版の欠けが生じやすくなるおそれがある。
また、厚さ方向Tの裏面側から照射する紫外線UV照射量が、1500mJ/cm未満では、露光不足により紫外線硬化性樹脂層16の内部の硬度が不足して、レーザー彫刻した画像パターンに細線部の捩れの問題等が生じやすくなるおそれがある。また、厚さ方向Tの裏面側から照射する紫外線UV照射量が、3000mJ/cmを超えると、硬化中に発生するオゾンガスの影響により、版の内部にクラックが生じたり、紫外線硬化性樹脂層16と基材15との界面に剥離が生じやすくなるおそれがある。
【0075】
また、レーザー彫刻工程では、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16を、円筒状のスリーブ支持体31の外周に装着してレーザー彫刻することとしたので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、スリーブ支持体31の外周に、硬化後の版材32(基材15及び紫外線硬化性樹脂層16)を取り付けた状態でレーザー彫刻するので、画像パターンの見当合わせ(位置合わせ)の精度を、容易かつ確実に高めることができる。
【0076】
また、本実施形態の凸版40においては、網点部41の突起体41aの頂部高さHが、ベタ部42の頂部高さHに比べて低くされ、かつ、ベタ部42の頂部高さHと突起体41aの頂部高さHとの差△hが、0.03mm以下であるので、下記の作用効果を奏する。
すなわち、本実施形態では上述したように、紫外線硬化性樹脂層16の硬度が厚さ方向Tに均一とされ、該樹脂層16の表面近傍及び内部が確実に硬化されることから、画像パターンの画像部分50に網点部41が設けられた場合において、ドットゲイン(点太り現象)が抑制される。そのため従来のように、ドットゲインを抑制する目的でビローサーフェス(上記差△h)を大きくとる必要はなく、上記構成のように、ビローサーフェスを0.03mm以下に抑えることができる。
【0077】
ここで、従来では、ビローサーフェスを0.03mmよりも大きく設定していたために、下記の問題が生じていた。
すなわち、インキが画像部分50に付着させられた状態で、該画像部分50にブランケット9(図1参照)が押圧される際、図5において、ブランケット9が強く押圧されるベタ部42に比べて、網点部41では、インキをブランケット9に転移させるのに十分な押圧力が得られず、網点部41のインキの一部が突起体41aの外周面に残インキとして残ってしまう。このような残インキが網点部41に徐々に蓄積していき、目詰まり状態(突起体41a同士の間に残インキが充満した状態)となり、突起体41a同士の間に残インキを保持できなくなった時点で、残インキはブランケット9にまとめて転移され、網点同士が連結された異常な印刷状態(印刷不良)が発生する。
一方、本実施形態によれば、ドットゲインを抑えつつビローサーフェスを0.03mm以下に設定できるので、上記目詰まり状態に起因する印刷不良が防止されて、高精細な画像パターンを精度よく安定的に缶20に印刷することができる。特に、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされた高精細な部分に対して上記構成を用いることで、格別顕著な効果を得ることができる。
【0078】
また本実施形態では、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、上記差△h=0mmとしたので、下記の効果を奏する。
すなわち、網点部41のうち、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mm以下とされる前記高精細な部分に比べて、突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい前記高精細な部分以外の部分では、ドットゲインが生じることや、網点部41の摩耗が早期に進行する可能性は低くなる。
そこで上記構成のように、網点部41のうち突起体41aの頂部面積が1.4×10−3mmよりも大きい部分では、ブランケット9に対する接触面積及び押圧力を安定して確保し、かつインキを確実に転移させる目的で、突起体41aの頂部高さHをベタ部42の頂部高さHに合わせる(つまり△h=0mmに設定する)ことが好ましく、これにより、印刷精度を高品位にさらに安定して維持することができる。
【0079】
また、本実施形態の凸版40では、紫外線硬化性樹脂層16の硬度が厚さ方向Tに均一とされ、該樹脂層16の表面近傍及び内部が確実に硬化されることから、画像パターンの画像部分50に網点部41が設けられる場合において、レーザー彫刻された網点部41の各突起体41aの外周面が、図5及び図6(a)に示されるように、段差のない円錐面状又は円柱面状に形成される。
これにより、網点部41において隣り合う突起体41a同士の画像間距離(網点画像間距離)を小さく設定しつつも、レリーフ深度(頂部高さHに相当)を深くしてインキの目詰まりを防止することが可能になり、より高精細な画像パターンを安定して印刷することができる。
【0080】
具体的に従来では、紫外線硬化性樹脂層の硬度が厚さ方向に不均一であったため、レーザー彫刻された網点部の各突起体の外周面が、図6(b)に示されるように、段差を有する多段円錐面状や多段円柱面状に形成されていた。そのため、網点部において隣り合う突起体同士の画像間距離を小さく設定した場合に、これら突起体の外周面同士が接近し過ぎて(または一体にくっついて形成されて)、レリーフ深度が浅くなり、インキの目詰まりが生じやすかった。
【0081】
また本実施形態の凸版40においては、網点部41を備えた画像パターンが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、及び半導体レーザーのいずれかのレーザーにより彫刻されている。このように、画像部分50の網点部41をレーザー彫刻することで、画像パターンを所期の模様、図柄、文字、記号等に応じて細密に精度よく形成することができる。
【0082】
また本実施形態では、レーザー光を反射しない性質のPETフィルム製の基材15が、レーザー光を反射する性質のニッケル製のスリーブ支持体31と、レーザー加工が施される紫外線硬化性樹脂層16との間に存在することにより、彫刻用レーザーがたとえ紫外線硬化性樹脂層16を貫通してしまった場合でも、基材15によりレーザー光の反射を防止でき、レーザー発振機自体にダメージを与えることがない。
すなわち従来では、紫外線硬化性樹脂層の直下に、レーザー光を反射する性質の金属板が存在したり、紫外線硬化性樹脂層と金属板との間に接着層が設けられていたため、レーザー光の反射を効果的に抑制することはできなかったが、本実施形態の上記構成によれば、レーザー光の反射を効果的に抑制できる。
【0083】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0084】
例えば、前述の実施形態では、凸版40を備えた版材32が、スリーブ支持体31に対して両面テープ等により取り外し可能に装着されていると説明したが、これに限定されるものではなく、版材32が、スリーブ支持体31に対して取り外し不能に接着されていてもよい。ただし前述の実施形態のように、凸版40を備えた版材32が、スリーブ支持体31に対して取り外し可能に装着された構成の場合には、版材32をスリーブ支持体31から取り外して廃棄可能であるとともに、該スリーブ支持体31を再使用(リサイクル)することができ、より好ましい。具体的に、スリーブ支持体31はニッケル等の耐久性のある高価な材料で形成されており、従来ではスリーブ支持体を凸版とともに廃棄する以外になく経済的とはいえなかったが、本発明の上記構成によれば費用を削減でき、経済的である。
【0085】
また、前述の実施形態では、スリーブ支持体31に装着される版材32が、円筒状をなしているとしたが、版材32の形状はこれに限定されるものではなく、例えば版材32は、凸版40の画像パターンの大きさや形状に応じた矩形板状等に形成されて、スリーブ支持体31の外周に取り付けられていてもよい。
また、スリーブ支持体31及び版材32の材質や寸法、スリーブ支持体31に設けられる版材32の数や配置等は、前述の実施形態で説明したものに限定されない。
【0086】
また、前述の実施形態では、凸版40の製造方法の紫外線照射工程において、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側から照射する紫外線UVの照射量に比べて、厚さ方向Tに沿う基材15側から照射する紫外線UVの照射量を同一、又は小さくするとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側から照射する紫外線UVの照射量に比べて、厚さ方向Tに沿う基材15側から照射する紫外線UVの照射量を大きくしてもよい。ただし前述の実施形態のように、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側から照射する紫外線UVの照射量に比べて、厚さ方向Tに沿う基材15側から照射する紫外線UVの照射量を同一、又は小さくすることにより、上述した優れた作用効果(印刷精度の向上等)が得られることから、より好ましい。
【0087】
また、前述の実施形態では、凸版40の製造方法の紫外線照射工程において、基材15及び紫外線硬化性樹脂層16に対して、厚さ方向Tに沿う紫外線硬化性樹脂層16側から照射する紫外線UVの照射量を、2000〜5000mJ/cmとし、厚さ方向Tに沿う基材15側から照射する紫外線UVの照射量を、1500〜3000mJ/cmとするとしたが、これらの紫外線UVの照射量は、上記範囲に限定されない。ただし、上記範囲とすることにより、上述した優れた作用効果(版の耐摩耗性及び印刷精度の向上等)が得られることから、より好ましい。
【0088】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及び尚書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0090】
[印刷精度確認試験]
本発明の実施例と従来の比較例とについて、印刷精度を確認した。
実施例として、前述の実施形態で説明した凸版40を用意した。具体的には、図4(a)〜(c)及び図5に示されるように、積層工程、紫外線照射工程(厚さ方向Tの両側から露光、つまり両面露光)、及びレーザー彫刻工程を経て製造された凸版40を用意した。
【0091】
版材32(紫外線硬化性樹脂層16)には、厚さ0.6mmの富士フィルム社:富士トレリーフ・WF95DT(ポリエステルフィルムベース仕様)を用い、基材15には、厚さ0.3mmで波長200〜500nmの紫外線を透過する性質のPETフィルムを用い、スリーブ支持体31には、厚さ(肉厚)0.8mmのNiからなり、鍍金法により製作されたシームレススリーブ(シームレスの円筒体)を用いて、このスリーブ支持体31の外周面に、硬化した樹脂層16に一体とされた基材15の裏面(内周面)を、両面テープ(接着層17)により接着した。
【0092】
また、紫外線の照射装置は自社製作し、紫外線ランプには、フィリップス社:紫外線ランプ・TLK−40W/10R(波長域350〜400nm、ピーク波長368nm、照度16mW/cm)を用い、露光時間を制御して、実施例1〜5に示されるように、表面側と裏面側とで、それぞれ露光量(紫外線照射量)を調整した。
【0093】
このように製造した各凸版40について、紫外線硬化性樹脂層16の厚さ方向Tに沿う基材15とは反対側の端部(表面上、深さ0mm)の硬度と、厚さ方向Tの中央部(表面から深さ0.3mm)の硬度を測定した(ショアD硬度)。
そして、凸版40を用いて缶20に画像パターンを印刷し、欠けや細線部の捩れ(細線捩れ)の有無について、目視で確認した。
【0094】
一方、比較例として、紫外線照射工程について、基材及び紫外線硬化性樹脂層の厚さ方向に沿う表面側からのみ露光(厚さ方向の片側から露光、つまり片面露光)した凸版を用意した。また基材として、鉄を用いたもの(比較例1)と、PETフィルムを用いたもの(比較例2)を用意した。それ以外の条件については、上記実施例と同様とした。
結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
[評価]
表1に示されるように、本発明の実施例1〜5では、印刷精度が確保された。中でも、実施例1〜3については、欠け及び細線捩れが両方ともに見受けられず、高品位で優れた印刷精度が得られることがわかった。
一方、比較例1、2では、欠け及び細線捩れが両方ともに見受けられ、印刷精度が確保できなかった。
【符号の説明】
【0097】
15 基材
16 紫外線硬化性樹脂層
31 スリーブ支持体
40 缶の印刷用凸版
41 網点部
41a 突起体
42 ベタ部(画像部分のうち網点部以外の部分)
50 画像部分
網点部の突起体の頂部高さ
ベタ部(網点部以外の部分)の頂部高さ
△h ベタ部の頂部高さと、網点部の突起体の頂部高さとの差
T 厚さ方向
UV 紫外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6