【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明に関連する参考発明の波力発電システムは、波力発電システムにおいて、少なくとも、水の波に浮かぶブイ
10と、該ブイ
10に固定された発電機2と、該発電機のロータを回転させて発電させる回転変換部5と、該回転変換部5を回転させる柔軟で細長い伝達体6と、該伝達体6を介して水中に懸垂された錘7と、水中での移動に対し抵抗となるような構造の水中移動抑制体8とを備え、該水中移動抑制体8を水中懸垂タイプとして、水に沈む重量とすると共に錘7より軽くなるようにして水中に懸垂させ、水の抵抗により上下振動し難くさせてあり、上下運動する伝達体6のガイド80、81とを備え、前記伝達体6の一端には、錘7が繋がれ、前記伝達体6の他端には、前記水中移動抑制体8が繋がれ、更に、該水中移動抑制体8と前記錘7とは、所定の長さ以上の距離にならないように、柔軟なワイヤ60で結ばれている構成であり、波のうねり振動と共にブイ
10がうねり振動するときに、前記水中移動抑制体8が水抵抗のためにほとんど動かないので、相対的に前記錘7が主に上下振動をして、前記伝達体6を介して前記発電機2のロータを回転させて発電させるようにしたこと、
発電機(2)を水上に位置するように、回転数変換機構(9)を介して、回転変換部(5)を発電機(2)の下方に位置するように設置したこと、発電機2は、水に晒され難いように、覆い200の中に収納されている構造としたこと、該発電機(2)の覆い(200)をブイ(1)としても使用できるように構成したこと、を特徴とするものである。
【0014】
水の波、例えば、海洋の波は、上下振動と水平振動との合成の結果、水面付近では海水が回転運動して、波のうねりを生じている。従って、この波に浮かぶブイ
1、10も波のうねりと共に、上下振動ばかりでなく往復の水平運動も生じている。海水の波長は、一般に風速にも依るが数十メートルあり、その半波長程度以上の深さの海中では、ほぼ波のうねりの影響を受けない領域であり、このような表面波の影響を受け難い領域に水中での移動に対し抵抗となるような構造の水中移動抑制体8を、ブイ
10に取り付けた発電機からロープ状の達体6を介して海中に懸垂させる。ブイ
1,10が波のうねりと共に主に上下振動しても、水中移動抑制体8は水の抵抗やそれ自体の重量のために動き難く、そのために、ブイ
10に取り付けた発電機からロープ状の伝達体6のうち、水中移動抑制体8とは反対側の端に結ばれ、海中に懸垂した錘7が、ロープ状の伝達体6を介して引き上げられたり、ブイ
10が降下した時には、共に降下する。このとき、伝達体6の往復運動が発電機2のロータを往復回転させて発電させる仕組みである。更に詳細を述べると、上述のように、水中移動抑制体8に対して相対的に発電機2を搭載したブイ
10が、波と共にうねり振動(上下振動ばかりでない)で、波の頂上側に移動すれば、水中移動抑制体8とブイ
10との間隔が大きくなり、ロープ状の伝達体6が水中移動抑制体8側に引っ張られ(このとき、錘7が引き上げられる)、波の谷間にブイ
1,10が入ると、今度は、水中移動抑制体8とブイ
10との間隔が縮み、伝達体6は、錘7側に引っ張られる。このような伝達体6の往復運動が、発電機2を動作させるものである。また、ロープ状の伝達体6には、台風などの荒波でも錘7が異常に前記ブイ
10から離れてしまい発電機2のロータから外れたりしないように、伝達体6の動きを束縛するようなガイド80,81を備えている。
【0015】
ロープ状の伝達体6の往復運動により、発電機2のロータを往復回転させるが、これにより発電される電流は、交流となり、しかも波のうねりの周期により定まるものである。波のうねりの周期も数十秒にもなり、発電機2のロータに取り付けたプーリなどの回転変換部は、一般にはゆっくりした回転となる。そして、その波の高さ(波高)も一般には、1から2メートル(m)程度であり、ロープ状の伝達体6の往復運動も、一般には、この程度の振幅となる。ブイ
1,10が波の谷間で降下するときは、錘7の重さのみで発電機2のロータを回転させることになるが、このロータに取り付けられているプーリの半径が小さいと、このプールに掛けられた伝達体6の曲率半径が小さくなり、スムーズな回転が得られ難くなる。このためには、伝達体6の柔軟性を考慮し、プーリの半径を大きくすることが必要で、直径1メートル程度の大きいプーリを用いることが推奨される。また、プーリのシャフトもブイ
1,10の大きな浮力と錘7の重量などで大きな負荷がかかるので、これらを考慮して、シャフトの直径の選択、両端支持にするなどの配慮が必要である。また、必要に応じて、補助プーリを配置して、ロータへの過剰な負荷を軽減させるようにしても良い。また、錘7の重量も伝達体6の上下移動等に絡む各種の摩擦による力の損失を考慮して設計されるべきである。実際のロータの回転速度が、発電電力を決めるので、ギヤ―比を変えた回転数変換機構を設けて、ロータの回転速度を適切に上昇させることもできる。しかし、波高も時々刻々と変化するものであり、発電量もそれに応じて変化して、時間的に安定な交流電力が発生し難いという問題点がある。このためには、交流の発電電力を整流して直流に変換して、これをバッテリ等に蓄えて、外部に取り出すようにすることが推奨される。
【0016】
波力発電システムは、湖上に浮かべて湖水の波を用いても良いが、その波の振幅が一般に小さいので、望ましくは、海洋に浮かべ、大きな波高のうねりを持ち運動エネルギーが大きい海水の波を利用して発電した方が良い。
【0017】
上述のように水中移動抑制体8を水中に懸垂するようにした水中懸垂タイプでは、錘7が水中移動抑制体8よりも重くしてあるので、波が小さく穏やかな場合には、錘7が水中移動抑制体8を引き上げ、水中移動抑制体8の位置がブイ
10に接近してしまい、水中移動抑制体8が波のうねりに晒されてしまうことが予想される。このためには、錘7と水中移動抑制体8とをワイヤ60で結び、錘7が深い位置に降下しても、水中移動抑制体8に結ばれたワイヤ60によりそれ以上深く降下しないようにしている。すなわち、ワイヤ60の長さの調整により、錘7と水中移動抑制体8の間隔が所定の長さ以上の距離にならないようにしている。
【0018】
水中移動抑制体8は、錘7により柔軟なワイヤ60を通して水中に引き戻される(沈む)ようになるので、その重さは、必ずしも水より重くする必要はないが、ブイ
1,10により上方に引き上げられようとしたときに、水の抵抗でこれに抗する作用が求められるから、水より重くさせ、自重で水中に沈むようにした方が良い。また、水中での錘7の重さは、水中移動抑制体8の水中での重さより十分重くなければ、伝達体6を上下運動させることができない。推奨される形態では、水中移動抑制体8の水中での重さは、水よりも少しだけ重くしておき、水中での錘7の重さは、発電機等を搭載した総合的なブイ
1,10が水上に浮かぶ時の浮力の半分程度の大きさにすると良い。なお、錘7の形状は、錘7の上下運動時に水に対して抵抗になり難いように、流線型にすることが推奨される。
【0019】
水中移動抑制体8が、水上の波に浮かぶブイ
1,10により引き上げられようとしたときに、水中移動抑制体8の下部領域が負圧となり、水中移動抑制体8の周辺から下部領域の負圧部分に水が入り込み、この流れが渦を作り、この渦(カルマン渦)が水中移動抑制体8の上方移動に対する水の抵抗となる。この渦の発生を大きくして、水の抵抗を大きくさせるように、水中移動抑制体8の周辺に、周辺突起部を形成して、水中での上下移動に一層の抑制を与えるようにすることも推奨される。
【0020】
上述の波力発電システムは、基本的には、水上にブイ
10により浮かせておくシステムであるが、海洋に浮かせたときには、海流により流される危険がある。このために、本波力発電システムを、陸地や海底など、海流などにより動かない個所に係留すると良い。このような目的の係留システムでは、海上で船舶を係留するように、錨を用いて係留しても良い。
【0021】
本発明の請求項1に係わる波力発電システムは、少なくとも、水の波に浮かぶブイ
(10)と、該ブイ
(10)に固定された交流の発電機(2)と、該発電機のロータを回転させて発電させる回転変換部(5)と、該回転変換部(5)を回転させる柔軟で細長い伝達体(6)と、該伝達体(6)を介して水中に懸垂された錘(7)と、水中での移動に対し抵抗となるような構造の水中移動抑制体(8)とを備え、該水中移動抑制体(8)を水底設置タイプとして、前記ブイ
(10)の浮力と錘(7)の水中での重さより重くなるようにして海底等の水底に沈ませ、その自重により上下振動し難くさせてあり、上下運動する伝達体(6)のガイド(80、81)とを備え、伝達体(6)の一端には、錘(7)が繋がれ、伝達体(6)の他端には、水中移動抑制体(8)が繋がれ、且つ、波のうねり振動と共に前記ブイ
(10)が上下振動するときに、水中移動抑制体(8)がほとんど動かないので、相対的に錘(7)が伝達体(6)と共に主に上下振動をして、伝達体(6)の上下運動が回転変換部(5)を、直接往復回転させて発電機(2)のロータに伝え、該ロータを往復回転させて発電させるようにした
波力発電システムにおいて、発電機(2)を水上に位置するように、回転数変換機構(9)を介して、回転変換部(5)を発電機(2)の下方に位置するように設置したこと、
発電機(2)は、水に晒され難いように、覆い(200)の中に収納されている構造としたこと、該発電機(2)の覆い(200)をブイ(1)としても使用できるように
構成したこと、を特徴とするものである。
【0022】
水中移動抑制体8を水底設置タイプとして、前記ブイ
1,10の浮力と錘7の水中での重さより重くなるようにして海底等の水底に沈ませ、その自重により上下振動し難くさせた場合であり、上述の水中懸垂タイプの場合と同様、水中移動抑制体8がほとんど動かないので、その波力発電システムの動作は、水中懸垂タイプとしての上述と同様であるので、その詳細な説明はここでは省略する。ただ、水中懸垂タイプの場合は、水中移動抑制体8と前記錘7とは、所定の長さ以上の距離にならないように、柔軟なワイヤ60で結ばれている構成にしてあるが、ここでの水底設置タイプでは、水中移動抑制体8が海底に沈んでおり、これ以上降下がることがほとんどないので、必ずしも柔軟なワイヤ60で結ぶ構成にする必要はない。ただ、海流等でブイ
1、10が流されて、錘7が想定していた深さよりも引き上げ
られてしまうことを避けるために、所定の長さの柔軟なワイヤ60で、水中移動抑制体8と錘7とを結ぶようにすることが推奨される。
【0023】
海洋に設置するようにした波力発電システムは、水深が深い場合(数十メートル以上)は、水中に水中移動抑制体8を懸垂する水中懸垂タイプが最適である。しかしながら、水深が数十メートル程度以下の浅い場合は、海底を利用することができるので、水中移動抑制体8自体の水中での重さが、前記ブイ
10の浮力と錘7の水中での重さより充分重くなるようにした水底設置タイプにすることにより、水中移動抑制体8を海底に沈めておくだけで、波浪の大きさに依らず、ほぼ水中移動抑制体8がほぼ動かない状態を作り出すことができる。もちろん、この場合でも、前記ブイ
1、10の浮力により錘7が、波の上下振動により細長いロープ状伝達体6を介して、持ち上げられたり、降下したりして、これに連結した発電機を動作させるものである。
【0024】
本発明の波力発電システムは、発電機2が水に晒され難いように、覆い200の中に収納されている構造と
している。
【0025】
発電機2は、電気を生み出すので、海水などに晒されると、漏電の危険があり、また、腐食などのために耐久性が顕著に悪くなる。このためには、少なくとも発電機2をカバー等で覆い、海水などに水に晒されないように保護する必要がある。ここでは、少なくとも発電機2をブイ1としても使用できる覆い200の中に収納させた構造にした場合である。もちろん、発電機2ばかりでなく、整流器やバッテリ等も一緒に覆い200の中に収納させても良い。また、補助ブイとして使用することもできる。
【0026】
本発明の請求項2に係わる波力発電システムは、ガイド80、81には、互いに上下振動する伝達体6が所定の範囲内のみ動けるようにする制限機能と、少なくとも1個のガイド80、81には、伝達体6に付着する異物を除去させるようにした異物除去機能を有するようにした場合である。
【0027】
細長い伝達体6には、ガイド80、81を設けて、台風などの荒波で、ブイ
10や錘7が異常に大きく振れ、錘7が前記ブイ
10から離れてしまい、これに結ばれている細長い伝達体6が、発電機2のロータに直結したプーリ等から外れたりしないように、伝達体6の動きを束縛して所定の範囲内のみ動けるようにする制限機能と、海中に延びる部分の細長い伝達体6に、海中の貝などの生物、藻類、海草類や浮遊物などが付着して、発電機2のロータに直結したプーリ等から外れたり、伝達体6のスムーズな動きを妨げたり、また故障の原因にならないような伝達体6に付着する異物を除去させるようにした異物除去機能を持たせるものである。
【0028】
本発明の請求項
3に係わる波力発電システムは、伝達体6を細長いロープ状もしくはベルト状とした場合である。
【0029】
ブイ
10に取り付けた回転変換部5からの伝達体6は、一方の端を水中移動抑制体8に固定し、他方の端に錘7に取り付けて海中に懸垂させ、その波のうねりによるブイ
10の動きと共に、往復運動をして発電機2に取り付けた回転変換部5を往復回転させて、発電に寄与させるものである。伝達体6は、撚り線のナイロンやカーボンファイバのようなロープでも良いし、チェーンにしても良い。耐食性と柔軟性があれば、丈夫な金属性のワイヤでも良い。また、海洋に浮上させた波力発電システムにおいては、台風や暴風にも晒され、ブイ
10も上下振動や水平振動ばかりでなく、回転運動もする。少なくとも錘7を海中に懸垂させているので、ロープ状の伝達体6は、回転運動により捩れながら上下の往復運動をすることになる。このように捩れながら上下の往復運動する伝達体6が、しっかりと回転変換部5のプーリに収まり、回転変換部5をスムーズに回転させるためには、細長いロープ状の伝達体6の断面形状が、その直径方向(太さ方向)に対称性がある略円形であることが望ましい。
【0030】
伝達体6として、ベルト状にしても良い。特に、タイミングベルトとして、プーリに刻んだ凹凸とで、摩擦を大きくさせて接触面で滑り難くすることもできる。
【0031】
本発明の請求項
4に係わる波力発電システムは、回転変換部5をプーリもしくは歯車とした場合である。
【0032】
回転変換部5をプーリとした場合は、伝達体6が滑り難いように、摩擦面を有するようにする必要があり、また、伝達体6が外れないように、プーリの側面に伝達体6用のプーリガイドを設けるようにした方が良い。
【0033】
回転変換部5を歯車やスプロケットとした場合は、歯車やスプロケットのピッチに合うピッチを持つチェーンやタイミングベルトにする必要がある。チェーンは必ずしも金属である必要は無い。
【0034】
本発明の請求項
5に係わる波力発電システムは、発電機2のロータの回転数を、回転変換部5の回転数とは異なるようにする回転数変換機構9を備えた場合である。
【0035】
一般に、海洋の波のうねりの周期は、数十秒であり、波の振幅も2メートル程度である。従って、海上に浮かぶ本波力発電システムのロープ状の伝達体6は、ブイ
10の浮力による大きな力と錘7の重量で、ゆっくりと2メートル程度上下する。このとき回転変換部5のプーリの直径にもよるが、その回転数は、必ずしも大きくはない。発電機2の出力は、ロータの回転数が大きい方が大きくなるので、発電機2のロータの回転数が、回転変換部5の回転数よりも許容される範囲で大きくなるような回転数変換機構9にした方が望ましい。
【0036】
回転数変換機構9では、複数の歯車の直径の大小の組合せにより回転比が調節できるし、ベルトと大小のプーリのサイズを利用して回転比を調節しても良い。歯車を利用した場合でも、大きな力が加わったときには、滑り機構を設けておき、スリップできるようにしておくことも大切である。
【0037】
本発明の請求項
6に係わる波力発電システムは、発電機2からの交流電流を直流電流にする整流器40を備えた場合である。
【0038】
波力発電システムでは、波のうねりに依存し、そのうねり具合が時々刻々と変化するので、発電機2から安定した交流出力を得ることが困難である。本発明では、この発電機2で発生した交流電流を、整流器40を通して直流電流に変換するようにした場合である。整流器40も発電機2と共に、ブイ
10に固定し、覆い200の中に収容するようにした方が良い。
【0039】
本発明の請求項
7に係わる波力発電システムは、整流器40を介した直流電流を蓄積するバッテリ50を搭載した場合である。
【0040】
発電機からの交流電力をそのまま外部に出力したり、整流器40を介した直流電流をそのまま外部に出力するようにしても構わないが、ここでは、バッテリ50をも搭載して、これに蓄電しておき、バッテリ50を介して、外部に直流電力が取り出せるようにしても良いし、蓄電したバッテリ50を未充電のバッテリ50と交換できるようにして、この蓄電したバッテリ50を外部の運び出してこれから電力を取り出すようにしても良い。バッテリ50も上述の整流器40と共に、ブイ
10に固定するようにした方が良い。
【0041】
本発明の請求項
8に係わる波力発電システムは、発電機2で発生した電力を外部に取り出すためのケーブル25を備えた場合である。
【0042】
発電機2で発生した電力を外部に取り出すためには、種々の方法があるが、ここでは、ケーブル25を通して外部に取り出す場合で、発電機2からの交流出力をそのまま外部に取り出す場合と、一旦、直流に変換してから直流出力を外部に取り出す場合がある。ケーブル25は、漏電を起こさないように、その電線の露出個所は、海水などの水に濡れない構造にする必要がある。密閉した覆い200に、防水を施したコネクタ30を取り付けて、そこから外部に取り出すようにすると良い。また、ケーブル25も海底を通す海底ケーブルにしても良いし、水中や水面を浮かせるようにして陸地まで送電させるようにしても良い。
【0043】
本発明の請求項
9に係わる伝達体6は、細長いロープ状の伝達体6の表面形状を、長さ方向に周期的な凹凸を形成したことを特徴とするものである。
【0044】
一般に、ロータが回転すると発電機2の負荷に流れる電流により反作用としての電磁ブレーキが働き、ロータを動かないようにブレーキがかかる。発電とは、この電磁ブレーキに抗してロータを回転させたときに達成されるものである。伝達体6は、回転変換部5を介して、発電機2のロータに回転運動を与えるもので、電磁ブレーキがかかり回転し難くなったロータを回転させるので、伝達体6と回転変換部5との間で、スリップが発生しやすい。このためには、伝達体6の表面と回転変換部5との接触部分を大きくすると共に、摩擦が大きくなりスリップが発生し難い構造にする必要がある。ここでは、伝達体6の表面形状に長さ方向に周期的に凹凸を形成した場合である。この場合、回転変換部5の外周にも、これに合致する周期的な凹凸を形成しておくと良い。
【0045】
本発明の請求項
10に係わる伝達体6は、伝達体6の周期的な凹凸が、伝達体6の長さ方向に垂直な断面の半径方向(直径方向)に対称性があるように、その凹凸の断面が、伝達体6の長さ方向に沿って直径が異なる略円形となるようにした場合である。
【0046】
伝達体6が水中から捩れて引き上げられても、その断面が略円形であるために、回転変換部5の周期的な凹凸形状にフィットして、スリップも起こり難く安定して回転変換部5を回転駆動させることができる。
【0047】
本発明の請求項
11に係わる回転変換部は、伝達体6に適合するように、回転変換部5の外周に沿って、伝達体6の凹凸に対応する周期的な凹凸を形成したことを特徴とするものである。
【0048】
上述のように、回転変換部5としてのプーリと伝達体6とは、スリップがし難くする必要がある。このために、伝達体6にもその長さ方向に周期的な凹凸を施してあるが、これにフィットするようにプーリにも同一の周期的な凹凸を施したものである。これにより、摩擦も大になりスムーズに伝達体6の往復運動がプーリの回転運動に換えることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明に関連する参考発明の波力発電システムは、海洋などの水深が数十メートル以上で深い場合は、水上にブイ
10により浮かせ、このブイ
10に固定された発電機2がブイ
10と共に、波で主に上下運動をして、水中懸垂タイプとして水の抵抗を大きくさせてほぼ静止状態になる水中移動抑制体8に対して、水中に懸垂させているロープ状の伝達体6で錘7を相対的に引き揚げたり、下ろしたりして、この伝達体6を介して回転式の発電機2を駆動するもので、海底等に固定する必要がないという利点がある。
【0050】
本発明の波力発電システムは、海洋などの水深が数十メートル以下で浅い場合は、水上にブイ
10により浮かせ、このブイ
10に固定された発電機2がブイ
10と共に、波で主に上下運動をして、水底設置タイプとして重量を大きくして海底に沈ませたためにほぼ不動の水中移動抑制体8に対して、水中に懸垂させているロープ状の伝達体6で錘7を相対的に引き揚げたり、下ろしたりして、この伝達体6を介して回転式の発電機2を駆動させることができる。従って、海底等に固定する必要がなく、単に自重の大きい水中移動抑制体8を置くだけで済み、水中移動抑制体8がほとんど動かないので、単純な構造で、高効率の発電ができるという利点がある。
【0051】
本発明の波力発電システムでは、発電機2は、ブイ
10に固定され、本質的に水上に位置し、更に覆い200で覆う構造にしているので、水に晒されないで済む構造にしている。従って、漏電の心配が少なく、耐久性も大きいという利点がある。
【0052】
本発明の波力発電システムでは、覆い200を密閉系にするなどして、これもブイ1としても利用できるという利点がある。
【0053】
水上に浮かぶ覆い200(ブイ1に対応)やブイ
10は、波のうねりの一波長に比べて充分小さくできるので、波のうねりと共にほぼ上下運動をしており、台風などの暴風雨に晒されても破壊され難いという利点がある。
【0054】
本発明の波力発電システムでは、錘7を懸垂し、ほとんど動かない水中移動抑制体8に固定している伝達体6は、細長いロープ状もしくはベルト状にしているので、この伝達体6は、ガイド80,81の範囲内で動くことになり(制限機能)、ブイ
10が傾いても発電機2のロータのプーリ等から外れ難くなる。また、更に、伝達体6は、細く柔軟性があるので、波の影響や水の流れの影響なども小さく、また、捩れても復元性に富み、水の抵抗が小さく、水中浮遊物に対しても衝突断面積が小さい。更に、伝達体6は、常に上下振動しているので、貝等の付着物も付き難く、仮に、付着しまっても、伝達体6のガイド80,81を通る時に剥がれるようにしているので(異物除去機能)、長期間スムーズに波と共に上下運動することができるという利点がある。
【0055】
本発明の波力発電システムでは、回転式の発電機2が使用できるので、細長いロープ状もしくはベルト状の伝達体6を介して、容易にロータの回転運動に換えて交流の発電が容易に得られる。従って、敢えて、発電機の回転方向を一方向になるような機構を設ける必要がなく、単純な構成の波力発電システムとなるので、故障が少なく耐久性が向上するという利点がある。
【0056】
本発明の波力発電システムでは、設置場所の波浪の大きさに応じて、錘7と水中移動抑制体8との距離を、細長いロープ状もしくはベルト状の伝達体6の適当な長さの選択により、調節できるという利点がある。
【0057】
本発明の波力発電システムでは、従来の気流によるタービン発電機と異なり、比重の大きい海水などの水による大きな浮力がブイ
10を介して容易に得られることで、エネルギー密度が大きく、その分、小型化できること、また、昼夜を問わず発生している波浪を利用するので、発電電力量が極めて大きくできること、更に、普通の回転式発電機が使用できることで単純な構成で発電できるという利点がある。
【0058】
本発明の波力発電システムでは、海水などの水による大きな浮力が小型のブイ
10を介して容易に得られることで、回転数変換機構9を通して発電機2のロータの回転数を容易に上げることができるという利点がある。
【0059】
本発明の波力発電システムでは、細長いロープ状の伝達体6の表面に、長さ方向に周期的な凹凸を形成させて、更に、回転変換部5にも伝達体6の凹凸にフィットする凹凸を形成し、伝達体6と発電機2の回転変換部5との摩擦を大きくさせて、滑り(スリップ)が小さくなるようにさせることができるので、高効率の発電システムが達成できるという利点がある。
【0060】
本発明の伝達体6では、この伝達体6に施した周期的な凹凸が、伝達体6の長さ方向に垂直な断面の半径方向に対称性があるように、その凹凸の断面が、伝達体6の長さ方向に沿って直径が異なる略円形となるようにしているので、ブイ
10、錘7や水中移動抑制体8などの波などによる回転で伝達体6が捩れても、形状がほぼ変わらない。従って、伝達体6が捩れても、回転変換部5の凹凸にフィットし、回転変換部5から伝達体6が外れないようにすることができるという利点がある。