(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多層配線層の前記第2部分に配された前記第1電源線の配線はさらに、前記基板を平面視したとき、前記第1配線部分に接続され前記第1配線部分の延伸方向に直交する方向に延伸する第4配線部分を有し、
前記多層配線層の前記第2部分に配された前記第2電源線の配線はさらに、前記基板を平面視したとき、前記第3配線部分に接続され前記第2配線部分の延伸方向と平行に延伸する第5配線部分を有し、
前記第1電源線の前記第4配線部分と、前記第2電源線の第5配線部分とが、前記多層配線層の前記第2部分において、前記多層配線層の異なる層に配線され立体交差する
請求項6に記載の表示パネル。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様に係る表示パネルは、基板と、前記基板上に配され、第1電源線と前記第1電源線に印加される電位とは異なる電位が印加される第2電源線とを含む多層配線層と、前記多層配線層上に配列され、各々が、前記第1電源線に電気的に接続された第1電極と前記第2電源線に電気的に接続された第2電極と前記第1電極および前記第2電極に挟まれた有機発光層とを含む、複数の有機EL素子と、前記多層配線層上に配され、前記複数の有機EL素子の各々の有機発光層が設けられる領域を規定する隔壁と、前記多層配線層上に配され、前記基板の上面からの高さが前記隔壁の頂部よりも高い頂部を有する構造物と、を備え、前記多層配線層は、前記複数の有機EL素子が上面に配列された第1部分と、平面視したとき前記第1部分の周囲にある第2部分とを有し、前記第2部分は、前記第1電源線が前記第2電源線と立体交差する箇所を有し、前記構造物は、前記第2部分上に位置し、かつ、前記第1電源線が前記第2電源線と立体交差する前記箇所を避けた位置にあることを特徴とする。
【0014】
通常、蒸着法、スパッタリング法およびCVD法に利用されるマスクは、多層配線層の第2部分(表示パネルの額縁領域に相当する)を被覆する枠状部分を有する。上記態様によれば、多層配線層の第2部分上に構造物が設けられているので、表示パネルの中間品をマスクで被覆する場合、マスクが構造物に接触することになる。したがって、多層配線層上に意図せず付着した異物のサイズが十分に小さければ、すなわち、異物の頂部の高さが構造物の頂部の高さよりも低ければ、マスクが異物に接触しないので、異物により意図しない箇所が局所的に押し潰されることを避けることができる。また、異物の頂部の高さが構造物の頂部の高さと同程度の場合でも、マスクによる押圧が異物と構造物に分散されるので、異物による押し潰しが軽減される。なお、第1電源線が第2電源線と交差する箇所が押し潰されると、2つの電源線間で短絡が発生することがある。しかし、構造物は、第1電源線が第2電源線と交差する箇所を避けた位置にあるので、第1電源線が第2電源線と交差する箇所を構造物が押し潰すことはない。以上より、多層配線層における第1電源線が第2電源線と交差する箇所が製造過程において押し潰される可能性を低減し、第1電源線と第2電源線とが短絡する可能性を低減することができる。
【0015】
また、前記構造物は、平面視したとき、前記第1電源線に重なる位置および前記第2電源線に重なる位置の少なくとも一方をさけた位置にあるとしてもよい。
上記態様によれば、マスクを構造物に接触させたときに構造物が設けられた位置で多層配線層が押し潰されたとしても、多層配線層の第1電源線が存在する領域および第2電源線が存在する領域の一方または両方が構造物により押し潰される事態を避けることができる。そのため、押し潰しに起因する第1電源線や第2電源線の抵抗値変化や断線を避けることができる。
【0016】
また、前記多層配線層は、さらに、前記複数の有機EL素子の各々の輝度を設定するための信号を伝達する信号線を含み、前記構造物は、さらに、前記基板を平面視したとき、前記信号線に重なる位置を避けた位置にあるとしてもよい。
上記態様によれば、マスクを構造物に接触させたときに構造物が設けられた位置で多層配線層が押し潰されたとしても、多層配線層の信号線が存在する領域が構造物により押し潰される事態を避けることができる。そのため、押し潰しに起因する信号線の抵抗値変化や断線を避けることができる。
【0017】
また、前記多層配線層は、さらに、前記複数の有機EL素子の各々の輝度を設定するための信号を伝達する信号線を含み、前記第2部分は、前記信号線が前記第1電源線または前記第2電源線と立体交差する箇所を有し、前記構造物は、さらに、前記基板を平面視したとき、前記信号線が前記第1電源線または前記第2電源線と立体交差する箇所を避けた位置にあるとしてもよい。
【0018】
上記態様によれば、マスクを構造物に接触させたときに構造物が設けられた位置で多層配線層が押し潰されたとしても、信号線が第1電源線または第2電源線と交差する箇所を構造物が押し潰すことはない。以上より、多層配線層における信号線が第1電源線または第2電源線と交差する箇所が製造過程において押し潰される可能性を低減することができる。そのため、信号線が第1電源線または第2電源線と短絡する可能性を低減することができる。
【0019】
また、前記構造物は、前記多層配線層の前記第2部分において、島状に複数設けられているとしてもよい。
上記態様によれば、構造物が複数あるため、基板を平面視したときにこれらの間に第1電源線と第2電源線とを配することが可能である。そのため、基板を平面視した場合に、構造物を設ける位置と、第1電源線および第2電源線を配する位置とを分けることができる。また、島状に設けられた構造物が複数あることで、マスクを安定した状態で接触させることができる。
【0020】
また、前記多層配線層内にはさらに、複数の層を積層して構成された、前記有機EL素子の発光を制御する薄膜トランジスタが形成されており、前記多層配線層の前記構造物が設けられた位置には、前記薄膜トランジスタを構成する前記複数の層が積層された頂部が平坦なマウント部が形成されており、前記構造物が設けられた位置における前記多層配線層の上面は、前記マウント部が設けられた位置の周囲における前記多層配線層の上面よりも、前記基板の上面からの高さが高いとしてもよい。
【0021】
上記態様によれば、構造物は、形成位置における多層配線層の上面からの高さを抑えつつ、基板の上面からの高さを隔壁よりも高く形成することが容易である。
また、前記多層配線層の前記第2部分に配された前記第1電源線の配線は、前記基板を平面視したとき、前記多層配線層の前記第1部分から直線的に延伸する第1配線部分を有し、前記多層配線層の前記第2部分に配された前記第2電源線の配線は、前記基板を平面視したとき、前記第1配線部分の延伸方向と平行に、前記多層配線層の前記第1部分から直線的に延伸する第2配線部分と、前記第2配線部分に接続され前記第2配線部分の延伸方向に直交する方向に延伸する第3配線部分と、を有し、前記第1電源線の前記第1配線部分と、前記第2電源線の第3配線部分とが、前記多層配線層の前記第2部分において、前記多層配線層の異なる層に配線され立体交差するとしてもよい。
【0022】
また、前記多層配線層の前記第2部分に配された前記第1電源線の配線はさらに、前記基板を平面視したとき、前記第1配線部分に接続され前記第1配線部分の延伸方向に直交する方向に延伸する第4配線部分を有し、前記多層配線層の前記第2部分に配された前記第2電源線の配線はさらに、前記基板を平面視したとき、前記第3配線部分に接続され前記第2配線部分の延伸方向と平行に延伸する第5配線部分を有し、前記第1電源線の前記第4配線部分と、前記第2電源線の第5配線部分とが、前記多層配線層の前記第2部分において、前記多層配線層の異なる層に配線され立体交差するとしてもよい。
【0023】
上記態様によれば、多層配線層の第2部分で第1電源線が第2電源線と交差するが、この交差する箇所を避けた位置に構造物が設けられるので、第1電源線が第2電源線と交差する箇所が製造過程において押し潰される可能性を低減することができる。
また、第1電極と第2電極と前記第1電極および前記第2電極に挟まれた有機発光層とを含む、複数の有機EL素子が配列された表示パネルの製造方法であって、基板上に、第1電源線と前記第1電源線に印加される電位とは異なる電位が印加される第2電源線とを含む多層配線層を形成する工程と、前記多層配線層上に、前記第1電源線に電気的に接続させた前記第1電極と、前記複数の有機EL素子の各々の有機発光層が設けられる領域を規定する隔壁とを形成する工程と、前記多層配線層上に、前記基板の上面からの高さが前記隔壁の頂部よりも高い頂部を有する構造物を形成する工程と、前記隔壁により規定された領域に、前記有機発光層を形成する工程と、少なくとも前記隔壁により規定された領域に対応する窓が開口されたマスクを、前記構造物に接触させた状態で配して、前記窓を介して少なくとも前記隔壁により規定された領域に機能層を成膜する工程と、を有し、前記多層配線層は、前記複数の有機EL素子が上面に配列された第1部分と、平面視したとき前記第1部分の周囲にある第2部分とを有し、前記第2部分は、前記第1電源線が前記第2電源線と立体交差する箇所を有し、前記構造物を形成する工程において、前記構造物は、前記第2部分上に位置し、かつ、前記第1電源線が前記第2電源線と立体交差する前記箇所を避けた位置に形成されるとしてもよい。
【0024】
上記態様によれば、機能層を成膜する工程より前に、多層配線層の第2部分上に構造物が形成されるので、機能層を成膜する工程では、マスクを構造物に接触させた状態で、表示パネルの中間品をマスクで被覆することができる。したがって、異物のサイズが十分に小さければ、すなわち、異物の頂部の高さが構造物の頂部の高さよりも低ければ、マスクが異物に接触しないので、異物により意図しない箇所が局所的に押し潰されることを避けることができる。また、異物の頂部の高さが構造物の頂部の高さと同程度の場合でも、マスクによる押圧が異物と構造物に分散されるので、異物による押し潰しが軽減される。なお、構造物は、第1電源線が第2電源線と交差する箇所を避けた位置にあるので、第1電源線が第2電源線と交差する箇所を構造物が押し潰すことはない。以上より、多層配線層における第1電源線が第2電源線と交差する箇所が製造過程において押し潰される可能性を低減することができる。
【0025】
以下、本発明の各態様である表示パネルの実施の形態について、図を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
[1.表示パネルの構成]
図1(a)は、第1の実施の形態に係る表示パネル100の平面レイアウト図である。表示パネル100は、平面視したときとき、表示領域10と、表示領域10を囲繞する額縁領域20とを有する。
【0026】
表示領域10には、複数の画素がマトリクス状に配列されている。例えば、表示パネル100が4K解像度のパネルである場合は、水平ラインに3840個、垂直ラインに2160個の画素が配列されている。それぞれの画素は色の異なる複数のサブ画素を含み、本実施の形態では、画素が赤色サブ画素、緑色サブ画素、および青色サブ画素を含んでいる。1つのサブ画素が1つの有機EL素子から構成されている。
【0027】
額縁領域20は、長方形の枠状であり、長辺に沿ってV1〜V16の分割領域を有し、短辺に沿ってH1〜H12の分割領域を有する。分割領域V1〜V16、H1〜H12はそれぞれ、外部のドライブ回路に電気的に接続される領域である。
図1の(b)は、分割領域V1を拡大して示している。分割領域V1には、第1電源線である1本の正極電源線114と、第1電源線と異なる電位が与えられる第2電源線である1本の負極電源線119と、複数本のデータ信号線113が存在する。さらに分割領域V1には、複数のマスク受け構造物4が、額縁領域20の長辺方向に沿って互いに間隔をあけて島状に設けられている。
【0028】
分割領域V2〜V16も、分割領域V1と同様の構成であり、正極電源線114および負極電源線119は、分割領域V毎に、複数本の垂直ラインに沿って配列する複数の画素の有機EL素子に電力を供給する。例えば、表示パネル100が4K解像度のパネルであり、かつ、分割領域Vの数量が16である場合、1つの分割領域Vの正極電源線114および負極電源線119から、240本の垂直ラインに沿って配列する画素の有機EL素子に電力が供給される。
【0029】
データ信号線113は、正極電源線114および負極電源線119から電力が供給される有機EL素子の各々の輝度に対応した電圧信号を伝達する。表示パネル100が4K解像度のパネルであり、かつ、分割領域Vの数量が16である場合、1つの分割領域Vに存在するデータ信号線113の数は720本である。
また、分割領域H1〜H12も分割領域V1〜V16と類似の構成であり、領域内に存在する配線の種類のみ相違する。具体的には、分割領域H1〜H12にはそれぞれ、表示領域10の水平ラインを選択するための選択信号を伝達する複数のスキャン信号線が存在する。さらに、複数のマスク受け構造物4が額縁領域20の短辺方向に沿って互いに間隔をあけて島状に設けられている。表示パネル100が4K解像度のパネルであり、かつ、分割領域Hの数量が12である場合、1つの分割領域Hに存在するスキャン信号線の数は180本である。
【0030】
なお、スキャン信号線が伝達する選択信号により水平ラインが選択され、選択された水平ラインの有機EL素子に、データ信号線113から輝度に対応した電圧信号が伝達されることで、有機EL素子の輝度が設定される。これにより、データ信号線113およびスキャン信号線は、有機EL素子の輝度を設定するための信号を伝達する信号線としての役割を果たしている。
【0031】
[1.1.表示領域の構成]
図2は表示領域10における表示パネル100の概略構成を示す部分断面図であり、
図1のA−A線での断面を図示している。表示パネル100の表示領域10は、基板1上に、多層配線層2および有機EL素子3を、この順番で積層させた構造である。本図では、1つのサブ画素を構成する有機EL素子1つ分の範囲だけ示している。
【0032】
[1.1.1.基板]
基板1は、無機材料或いは有機材料からなる。基板1の材料としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料が挙げられる。また、有機樹脂フィルムを用いることもできる。
【0033】
[1.1.2.多層配線層]
基板1上には、ゲート電極102、103が互いに間隔を開けて形成されている。ゲート電極102、103は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のいずれかからなる。また、ゲート電極102、103は、アルミニウム層、アルミニウム合金層、銅層、銅合金層の何れかの単層で構成してもよいし、これらの層に他の金属層を積層した積層構造にしてもよい。例えば、銅層とチタン層の積層構造、銅層とモリブデン層の積層構造、アルミニウム層とチタン層の積層構造としてもよい。
【0034】
基板1上にはさらに、スキャン信号線104が形成されている。スキャン信号線104は、表示パネル100の水平ライン方向に延伸し、同じ水平ラインに属する全てのサブ画素でゲート電極102に電気的に接続されており、額縁領域20まで引き出されている。
ゲート電極102、103、スキャン信号線104、および基板1の表面を被覆するように、ゲート絶縁層105が形成されている。ゲート絶縁層105は、酸化シリコン(SiO)等の公知のゲート絶縁体材料からなる。
【0035】
ゲート絶縁層105上であって、ゲート電極102に対応する部分には、チャネル層106が形成されている。また、ゲート絶縁層105上であって、ゲート電極103に対応する部分には、チャネル層107が形成されている。
チャネル層106、107およびゲート絶縁層105の表面を被覆するように、チャネル保護層108が形成されている。
【0036】
チャネル保護層108上には、ドレイン電極109、111、ソース電極110、112が形成されている。ドレイン電極109、ソース電極110は、チャネル保護層108に挿通されたコンタクトホールを通して、チャネル層106に電気的に接続されている。ドレイン電極111、ソース電極112は、チャネル保護層108に挿通されたコンタクトホールを通して、チャネル層107に電気的に接続されている。ドレイン電極109、111、ソース電極110、112は、モリブデン、タングステン、モリブデンタングステン、バナジウム、ルテニウム、金、銅のいずれか、または、これらの合金からなる。
【0037】
チャネル保護層108上にはさらに、データ信号線113、および正極電源線114の支線部分114aが形成されている。データ信号線113は、表示パネル100の垂直ライン方向に延伸し、同じ垂直ラインに属する同色の全てのサブ画素で有機EL素子3のドレイン電極109と電気的に接続しており、額縁領域20まで引き出されている。正極電源線114の支線部分114aは、表示パネル100の垂直ライン方向に延伸し、同じ垂直ラインに属する同色の全てのサブ画素で有機EL素子3のドレイン電極111と電気的に接続しており、額縁領域20まで引き出されている。
【0038】
ドレイン電極109、111、ソース電極110、112データ信号線113、正極電源線114の支線部分114a、およびチャネル保護層108上を被覆するように、下部パッシベーション層115が形成されている。下部パッシベーション層115は、酸化シリコン(SiO)等の無機材料からなる。下部パッシベーション層115には、ソース電極112の上方にコンタクトホールが開設されている。
【0039】
コンタクトホールの側壁に沿うように接続電極116が形成されている。接続電極116は、下部においてソース電極112に電気的に接続され、上部が下部パッシベーション層115の上に乗り上げた状態となっている。接続電極116は、ソース電極112と共通の材料からなることとしてもよい。
接続電極116および下部パッシベーション層115の表面を被覆するように、上部パッシベーション層117が形成されている。上部パッシベーション層117上には、層間絶縁層118が堆積されている。層間絶縁層118は、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料からなる。
【0040】
上部パッシベーション層117および層間絶縁層118には、コンタクトホール118aが開設されている。コンタクトホール118aの内部において接続電極116が露出している。
層間絶縁層118上には、負極電源線119の支線部分119aが配線されている。支線部分119aは、表示パネル100の垂直ライン方向に延伸し、水平ライン方向に並ぶ3つのサブ画素毎に1本設けられている。
【0041】
このように構成された多層配線層2において、ゲート電極102と、ゲート絶縁層105と、チャネル層106と、ドレイン電極109、ソース電極110によって薄膜トランジスタTr1が構成されている。またゲート電極103と、ゲート絶縁層105と、チャネル層107と、ドレイン電極111、ソース電極112によって薄膜トランジスタTr2が構成されている。薄膜トランジスタTr1は選択トランジスタとして用いられ、薄膜トランジスタTr2は駆動トランジスタとして用いられる。
【0042】
[1.1.3.隔壁]
隔壁122は、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の有機材料、または、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)等の無機材料等で構成されており、サブピクセルを規定している。層間絶縁層118の上面から隔壁122の上面までの高さは、約1[μm]であり、隔壁122により規定された領域がサブ画素領域である。画素領域は、水平ライン方向に並ぶ3つのサブ画素領域からなる。
【0043】
[1.1.4.有機EL素子]
有機EL素子3は、多層配線層2上に、画素電極120、正孔注入層121、正孔輸送層123、有機発光層124、電子輸送層125、および対向電極126を積層させた積層構造となっている。
本開示における第1電極である画素電極120は、多層配線層2の層間絶縁層118上に、ライン状またはマトリックス状に形成され、コンタクトホール118aを通して多層配線層2の接続電極116と電気的に接続されている。画素電極120は、例えば、アルミニウム、銀、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)等の光反射材料で構成されている。
【0044】
層間絶縁層118、支線部分119a、および画素電極120の表面は、正孔注入層121に被覆されている。正孔注入層121は、遷移金属元素を含有する金属、あるいは合金の酸化物からなる遷移金属元素の酸化物で構成されている。ここで、遷移金属元素とは、周期表の第3族元素から第11族元素までの間に存在する元素である。遷移金属元素の中でも、タングステン、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、ハフニウム、タンタル等は、酸化した後に高い正孔注入性を有するため好ましい。特に、タングステン、モリブデン、ニッケルは、酸化した後に高いインギャップ状態を有する為、正孔注入有能力が他の遷移金属元素が酸化した場合に比べて大きい。このことにより表示パネル用の正孔注入層用の金属、あるいは合金として好ましい。
【0045】
隔壁122で規定されたサブ画素領域内には、正孔輸送層123、および有機発光層124が、この順に積層されている。
正孔輸送層123は、例えば、PEDOT−PSS(ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))、PEDOT−PSSの誘導体(共重合体等)等からなり、正孔注入層121から注入された正孔を有機発光層124へ輸送する機能を有する。
【0046】
有機発光層124は、例えば、有機高分子であるF8BT(poly(9,9−di−n−octylfluorene−alt−benzothiadiazole))からなり、電界発光現象を利用して発光する機能を有する。なお、有機発光層124は、F8BTからなる構成に限定されず、公知の有機材料を含むように構成することが可能である。例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質からなることが好ましい。
【0047】
電子輸送層125、対向電極126、および封止層127は、隔壁122で規定された領域を超えて、この順で一様に積層されている。
電子輸送層125は、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、またはこれらの混合物等で構成されており、対向電極126から注入された電子を有機発光層124へ輸送する機能を有する。
【0048】
本開示における第2電極である対向電極126は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等からなり、トップエミッション型の有機EL素子の場合は、光透過性の材料からなることが好ましい。対向電極126の材料として、銀(Ag)、または銀を含む合金を用いる場合は、光を透過する程度の厚みで対向電極126を形成する。具体的には、20nm以上、30nm以下の厚みであることが好ましい。
【0049】
[1.1.5.封止層]
封止層127は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)等の材料からなる。封止層127は、有機EL素子3等が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有する。有機EL素子3がトップエミッション型である場合は、封止層127が光透過性の材料で構成されることが好ましい。
【0050】
[1.2.額縁領域の構成]
図3は額縁領域20における配線レイアウトを示す模式図であり、
図1(b)において、一点鎖線Eで囲んだ範囲内での多層配線層2中の配線を示している。
図3において上側が表示領域10側であり、紙面の上下方向が額縁領域20の短辺方向に沿い、紙面の左右方向が額縁領域20の長辺方向に沿う。
図4は
図3のC−C線での表示パネル100の概略構成を示す部分断面図であり、
図5は
図3のB−B線での表示パネル100の概略構成を示す部分断面図である。
【0051】
図3で示すように、負極電源線119は、複数の支線部分119aと、これらに接続する幹線部分119bと、幹線部分119bから引き出された引出線部分119c、119d、および119eとを有する。
各支線部分119aは、表示領域10側から額縁領域20に直線的に引き出され額縁領域20の短辺方向に平行に延伸する。
【0052】
幹線部分119bは、額縁領域20の長辺方向に平行に延伸し、1つの分割領域V内に配された全ての支線部分119aと接続することで、負極電源線119を集約している。
引出線部分119c、119d、および119eは、額縁領域20の短辺方向に平行に延伸する。なお、引出線部分119c、119d、および119eは、平面視で直線上に並んでいるが、
図4で示すように、それぞれ多層配線層2内の異なる層に配されている。
【0053】
具体的には、基板1の上面を第1階層、チャネル保護層108の上面を第2階層、下部パッシベーション層115の上面を第3階層、層間絶縁層118の上面を第4階層として説明すると、引出線部分119cは、第3階層上に形成されており、第4階層上に形成されている幹線部分119bとコンタクトホール119pを介して電気的に接続されている。引出線部分119dは、第2階層上に形成されており、第3階層上の引出線部分119cとコンタクトホール119qを介して電気的に接続されている。引出線部分119eは、第1階層上に形成されており、第2階層上の引出線部分119dとコンタクトホール119rを介して電気的に接続されている。
【0054】
図3に戻って、正極電源線114は、複数の支線部分114aと、これらに接続する幹線部分114bと、幹線部分114bから引き出された引出線部分114cとを有する。
各支線部分114aは、表示領域10側から額縁領域20に直線的に引き出され額縁領域20の短辺方向に平行に延伸する。
幹線部分114bは、額縁領域20の長辺方向に平行に延伸し、1つの分割領域V内に配された全ての支線部分114aと接続することで、正極電源線114を集約している。
【0055】
引出線部分114cは、額縁領域20の短辺方向に平行に延伸する。なお、幹線部分114bは、第2階層上に形成されており、引出線部分114cは、第1階層上に形成されており、これらはコンタクトホール114pを介して電気的に接続されている。
このような配線レイアウトによると、正極電源線114の支線部分114aは、基板1を平面視したときに負極電源線119の幹線部分119bが配線された位置よりも表示領域10から遠い位置で正極電源線114の幹線部分114bに接続している。そのため、表示領域10側から延伸する正極電源線114の支線部分114aは幹線部分114bに接続する前に、負極電源線119の幹線部分119bと位置30aで立体交差している。また、負極電源線119の幹線部分119bが、正極電源線114の幹線部分114bよりも表示領域10側に配されているため、負極電源線119の幹線部分119bから表示領域10側とは反対側に引き出された引出線部分119cは、正極電源線114の幹線部分114bと位置30bで立体交差している。
【0056】
各データ信号線113は、第2階層上に形成された配線部分113aと第1階層上に形成された配線部分113bとを有し、これらがコンタクトホール113pを介して接続されている。
一部のデータ信号線113において、配線部分113bは、配線部分113aを直線状に延伸した場合よりも、配線密度の疎密に偏りが生じるよう配されている。具体的には、左右に隣接する2画素分の配線部分113bのうち、この2画素の境界線に近い4本が、配線部分113aと接続する側で額縁領域20の短辺方向に沿って延伸した後、この2画素の境界線から離れる向きに屈曲し、額縁領域20の長辺方向に沿って延伸している。2画素の境界線から離れるよう延伸した後、これらの配線部分113bはさらに屈曲して、額縁領域20の短辺方向に沿って延伸する。その後、これらの配線部分113bは屈曲して2画素の境界線に近づくように延伸し、配線部分113aを直線状に延伸した場合の位置で再度屈曲することで、額縁領域20の短辺方向に沿って延伸する。
【0057】
この結果、2画素毎にその境界線付近に正極電源線114、負極電源線119、およびデータ信号線113の何れの配線も存在しない領域が形成される。この配線が存在しない領域の上方に、マスク受け構造物4が形成されている。ここで特に、正極電源線114の幹線部分114b、および負極電源線119の幹線部分119bは、マスク受け構造物4が形成されている位置よりも表示領域10側に配されている。そのため、マスク受け構造物4は、負極電源線119の幹線部分119bと正極電源線114の支線部分114aとが交差する位置30a、および正極電源線114の幹線部分114bと負極電源線119の引出線部分119cとが交差する位置30bの何れも避けた位置にある。
【0058】
具体的には、
図5に示すように、マスク受け構造物4は、第4階層である層間絶縁層118上に形成されている。マスク受け構造物4が設けられている位置の下方では、第1階層、第2階層、第3階層の何れにも、正極電源線114、負極電源線119、およびデータ信号線113が存在していない。また、マスク受け構造物4は、基板1を平面視した場合に約10[μm]四方の四角形をなす。層間絶縁層118の上面からマスク受け構造物4の頂部4aまでの高さは、約10[μm]であり、マスク受け構造物4の頂部4aは、基板1の上面1aからの高さが、隔壁122の頂部122aよりも高く形成されている。
【0059】
なお、表示パネル100の表示領域10を広く形成し、額縁領域20を狭く形成する場合に、位置30aおよび位置30bの上方も開口部となっているマスクが表示パネル100の製造に用いられる場合がある。その場合にも、表示パネル100の端部でドライブ回路に接続するために正極電源線114や負極電源線119を露出させ、この部分をマスクで覆う必要がある。マスク受け構造物4は、位置30aおよび位置30bよりも表示パネル100の端部よりの位置に形成されている。そのため、マスク受け構造物4の位置から表示パネル100の端部側を非開口部としたマスクを用いることで、正極電源線114や負極電源線119の露出部分をマスクで覆いつつ、意図しない箇所が局所的に押し潰されることを避けることができる。
【0060】
[2.表示パネルの製造方法]
本態様に係る表示パネル100の製造方法は、多層配線層2が形成された後、有機EL素子3の形成過程でマスク受け構造物4が形成される工程に特徴を有する。そこで以下では多層配線層2が形成された後からマスク受け構造物4の形成工程までについてのみ説明する。
図6は、表示パネル100の製造過程のうち、多層配線層2の形成が完了後、マスク受け構造物4を形成するまでの工程を模式的に示す図である。本図において左側には、水平ラインに沿った表示領域10における断面を図示し、右側には、垂直ラインに沿った額縁領域20における断面を図示している。
【0061】
マスク受け構造物4の形成工程においては、まず、
図6(a)に示すように、層間絶縁層118上に負極電源線119の支線部分119aおよび幹線部分119bが形成される前の状態である多層配線基板101の中間品を準備する。
次に、
図6(b)に示すように、表示領域10において層間絶縁層118上に画素電極120と負極電源線119の支線部分119aとを形成し、額縁領域20において負極電源線119の幹線部分119bを形成する。画素電極120の形成には、以下の手順を用いることができる。例えば、金属材料のスパッタリング法により層間絶縁層118上に金属材料膜を一様に形成する。さらに成膜した金属材料膜上にレジスト層を形成し、レジスト層上に所定形状の開口部を持つマスクを重ね、マスクの上から感光させる。その後、余分なレジストを現像液(例えばTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)水溶液)で洗い出す。これによりレジスト層のパターニングが完了する。その後、電極材料層をウェットエッチング液でウェットエッチングする。最後に、レジスト層を例えば有機系剥離液で除去する。
【0062】
画素電極120の形成後、画素電極120の材料よりも低抵抗の金属材料を用いて、画素電極120の形成手順と同様の手順により、支線部分119aおよび幹線部分119bを形成する。なお、本図では図示しないが幹線部分119bは、多層配線層2内でコンタクトホール119pを介して引出線部分119cに電気的に接続される。
次に、
図6(c)に示すように、表示領域10において、層間絶縁層118、負極電源線119の支線部分119a、および画素電極120上に正孔注入層121を一様に形成する。このとき額縁領域20においても、負極電源線119の幹線部分119bが形成された位置まで正孔注入層121を成膜する。正孔注入層121の成膜方法としては、例えば、反応性スパッタリング法が利用できる。
【0063】
さらに
図6(d)に示すように、正孔注入層121上に隔壁122を形成する。
隔壁122の形成後、
図6(e)に示すように、額縁領域20において、マスク受け構造物4を形成する。マスク受け構造物4の形成には、例えば、ダイコート法を用いることができる。ダイコート法によるマスク受け構造物4の形成では、層間絶縁層118の上面からマスク受け構造物4の上面までの高さを、約10[μm]に形成することが好ましい。例えば、高粘度のインクを塗布して10[μm]程度の高さのマスク受け構造物4を形成してもよい。他の例として、直径10[μm]程度のスペーサーを含んだインク材を塗布することで高さ10[μm]程度のマスク受け構造物4を形成してもよい。また他の例として、粘度の高いインクを、直径10[μm]程度のノズルから塗布することで、10[μm]程度の高さのマスク受け構造物4を形成してもよい。
【0064】
以上のような工程により本態様に係る表示パネル100の製造方法では、マスク受け構造物4が形成される。
なお、画素電極120を負極電源線119の支線部分119aと同じ金属材料を用いて形成する場合には、多層配線層2の製造過程で支線部分119aと画素電極120とを同一工程で形成してもよい。支線部分119aと画素電極120とを同一工程で形成するには、例えば、金属材料のスパッタリング法により層間絶縁層118上に一様に成膜し、成膜した金属材料膜をウェットエッチングする際に、支線部分119aと画素電極120との形状でレジスト層を一度にパターニングする手法を用いることができる。
【0065】
[2.1.マスク受け構造物形成後の成膜工程]
マスク受け構造物4が形成されたあと、本態様に係る表示パネル100の製造方法では、有機EL素子3の形成が継続される。
マスク受け構造物4の形成後の有機EL素子3の形成過程では、額縁領域20を覆う枠状部分を有するマスクを用いた成膜工程が含まれる。このような成膜工程で形成される有機EL素子3を構成する層としては、例えば、電子輸送層125、対向電極126、封止層127等がある。一般に、電子輸送層125の成膜には蒸着法、対向電極126の成膜にはスパッタリング法または蒸着法、封止層127の成膜にはCVD法またはALD法が用いられる。
【0066】
マスク受け構造物4は、これらの成膜工程においてマスクと接触しマスクからの押圧を受ける役割を果たす。マスク受け構造物4の形成後の成膜工程でのマスク受け構造物4の働きを、マスク受け構造物4の形成後の成膜工程の一例である、電子輸送層125の成膜工程に基づいて説明する。
図7は、電子輸送層125の成膜工程において、表示パネル100の製造過程で電子輸送層125が形成される前の状態である表示パネルの中間品に、マスク200を接触させた状態を示す模式図である。マスク200には、通常、インバー等の金属板をエッチングやレーザー等によりパターニングしたものや、レジストパターンを形成しめっきにより金属を堆積したものが用いられる。
【0067】
図7に示す状態では、額縁領域20の上方がマスク200によって覆われる。この時、マスク200は、マスク受け構造物4の頂部4aに接触するように、基板1と平行に配置される。この状態では、基板1の上面1aから頂部300aまでの高さがマスク受け構造物4の頂部4aよりも低い異物300には、マスク200が接触しない。そのため、異物300を介してマスク200により多層配線層2が押し潰されることがない。
【0068】
特に、
図7に示すように、負極電源線119の幹線部分119bと正極電源線114の支線部分114aとが立体交差する位置30aに異物300が付着した状態であっても、多層配線層2の押し潰しにより負極電源線119と正極電源線114との短絡が発生することを抑制することができる。
なお、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等を利用した成膜工程では、マスクと成膜対象である表示パネルの中間品との間に隙間があくと、マスクの開口部分から隙間に気化した蒸着材料やスパッタ粒子が入り込み、マスクの下方にも成膜されるおそれがある。
図7に示す例では、マスク200がマスク受け構造物4の頂部4aに接触しているため、額縁領域20の上方で、マスク200と隔壁122との間に隙間があいている。
【0069】
しかし、本実施の形態では、隙間の高さがマスク受け構造物4の頂部4aと隔壁122の頂部122aとの高さの差である約9[μm]程度である。この程度の隙間であれば、気化した蒸着材料がマスク200の下方に回り込む回り込み量が十分に小さく、マスク200に覆われた額縁領域20に電子輸送層125が形成されることはない。
つまり、マスク受け構造物4の高さは、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等を利用した成膜工程で、頂部4aにマスク200を接触させたときにマスク200の下方に生じる隙間に気化した蒸着材料やスパッタ粒子が入り込むことのない程度の高さであることが好ましい。
【0070】
以上のような成膜工程により、本態様に係る表示パネル100の製造方法では、額縁領域20の意図しない位置に付着した異物300にマスク200が接触することを避けて、表示パネル100を製造することができる。
なお、
図7では成膜する面を上側に向けて成膜工程を図示したが、実際の蒸着法では、成膜する面を下側に向けた姿勢で表示パネルの中間品にマスク200が固定される。成膜する面を下側に向けた姿勢でのマスク200の固定方法としては、成膜する面を下側に向けた表示パネルの中間品の下方に鉄合金を材料に用いたマスク200を配し、基板1の裏面側からマグネットによりマスク200を吸引する方法等が利用される。
【0071】
スパッタリング法を利用する場合には、成膜する面を上側に向けて表示パネルの中間品上にマスク200を載置して、成膜工程を実施することができる。
[3.効果]
以上の本開示に係る表示パネル100は、額縁領域20において、多層配線層2上にマスク受け構造物4が設けられている。そのため、表示パネル100の製造過程で多層配線層2上に意図しない異物が付着していたとしても、基板1の上面1aからの異物300の頂部300aまでの高さが、マスク受け構造物4の頂部4aより低ければ、基板1と平行に配置されたマスク200はマスク受け構造物4に接触することになる。これによって、マスク200が異物300に接触することにより意図しない位置で多層配線層2が破損することを、避けることができる。
【0072】
さらに、マスク受け構造物4が設けられた位置は、表示パネル100を平面視したときに、正極電源線114と負極電源線119が交差する位置30a、30bを避けた位置であるという特徴を有する。そのため、マスク200をマスク受け構造物4に接触させたときに、マスク受け構造物4が設けられた位置で多層配線層2が押し潰されたとしても、正極電源線114と負極電源線119との短絡や、正極電源線114と負極電源線119との間の距離が縮まり、耐電圧の低下あるいはリーク電流の増大が生じることを避けることができる。
【0073】
さらに、本開示に係る表示パネル100において、マスク受け構造物4は、基板1を平面視したときに正極電源線114に重なる位置および負極電源線119に重なる位置を避けた位置に設けられている。これにより、マスク200をマスク受け構造物4に接触させたときにマスク受け構造物4が設けられた位置で多層配線層2が押し潰されたとしても、正極電源線114に重なる位置および負極電源線119に重なる位置が押し潰されることがない。そのため、押し潰しに起因する正極電源線114や負極電源線119の抵抗値変化や断線を避けることができる。
【0074】
さらに、本開示に係る表示パネル100において、マスク受け構造物4は、基板1を平面視したときにスキャン信号線104に重なる位置およびデータ信号線113に重なる位置を避けた位置に設けられている。これにより、マスク200をマスク受け構造物4に接触させたときにマスク受け構造物4が設けられた位置で多層配線層2が押し潰されたとしても、スキャン信号線104に重なる位置およびデータ信号線113に重なる位置が押し潰されることがない。そのため、押し潰しに起因するスキャン信号線104やデータ信号線113の抵抗値変化や断線を避けることができる。
【0075】
さらに、マスク受け構造物4は、額縁領域20において、島状に複数設けられている。島状に設けられたマスク受け構造物4は互いに間隔があけられており、平面視したときにこれらの間にデータ信号線113、正極電源線114、および負極電源線119を配している。そのため、平面視した場合に、マスク受け構造物4を設ける位置と、データ信号線113や正極電源線114や負極電源線119を配する位置とを分けることができる。
【0076】
なお、マスク受け構造物4が島状に形成されていると、マスク受け構造物4の頂部4aに接触したマスク200が傾くことで、マスク受け構造物4の頂部4aよりも頂部300aの高さが低い異物300にもマスク200が接触する場合が考えられる。しかし、マスク受け構造物4が島状であっても複数設けられているので、異物300の付着位置が複数のマスク受け構造物4の間の位置であれば、傾いたマスク200が異物300に接触することを避けることができる。特に、本開示に係る表示パネル100は、長方形の枠状であり、その短辺と長辺の両方に複数のマスク受け構造物4が設けられている。このように同一直線上にない3個以上のマスク受け構造物4が設けられていることで、複数のマスク受け構造物4に安定した状態でマスク200を接触させることができる。
【0077】
さらに、額縁領域20に配された正極電源線114の配線は、基板1を平面視したとき、多層配線層2の表示領域10から直線的に延伸する支線部分114aを有する。額縁領域20に配された負極電源線119の配線は、基板1を平面視したとき、支線部分114aの延伸方向と平行に、表示領域10から直線的に延伸する支線部分119aと、支線部分119aに接続され支線部分119aの延伸方向に直交する方向に延伸する幹線部分119bとを有する。正極電源線114の支線部分114aと、負極電源線119の幹線部分119bとは、額縁領域20において、多層配線層2の異なる層に配線され立体交差している。
【0078】
また、額縁領域20に配された正極電源線114の配線はさらに、基板1を平面視したとき、支線部分114aに接続され支線部分114aの延伸方向に直交する方向に延伸する幹線部分114bを有する。額縁領域20に配された負極電源線119の配線はさらに、基板1を平面視したとき、幹線部分119bに接続され支線部分119aの延伸方向と平行に延伸する引出線部分119cを有する。正極電源線114の幹線部分114bと、負極電源線119の引出線部分119cとは、額縁領域20において、多層配線層2の異なる層に配線され立体交差している。
【0079】
このように多層配線層2の額縁領域20で正極電源線114が負極電源線119と交差するが、この交差する箇所を避けた位置にマスク受け構造物4が設けられるので、正極電源線114が負極電源線119と交差する箇所が製造過程において押し潰される可能性を低減することができる。
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、有機EL素子3の形成途中に、有機EL素子3の形成工程とは別工程でマスク受け構造物4を形成した表示パネル100について説明した。第2の実施の形態では、多層配線層2の形成工程や有機EL素子3の形成工程と別途工程を設けることなくマスク受け構造物4Aを形成した表示パネル100aについて説明する。
【0080】
[1.表示パネルの構成]
図8は、第2の実施の形態に係る表示パネル100aの額縁領域20における配線レイアウトと、マスク受け構造物4の位置関係を示す模式図である。
図8が配線レイアウトを示す範囲は、
図3と同様に
図1の(b)において、一点鎖線で囲んだ2画素分の配線が含まれる範囲である。
【0081】
第2の実施の形態に係る表示パネル100aでも、第1の実施の形態に係る表示パネル100と同様に、マスク受け構造物4の形成位置を避けるようにデータ信号線113が配線されている。第2の実施の形態に係る表示パネル100aが第1の実施の形態に係る表示パネル100と相違するのは、平面視したとき2画素分のデータ信号線113をずらして設けられた配線が存在しない領域において、多層配線層2中にマウント部40が設けられている点である。
【0082】
例えば表示パネル100aが20型の4K解像度の表示パネルであれば、1画素が115[μm]程度であり、2画素分のデータ信号線113をずらして配線することで、マウント部40を平面視で約100[μm]四方の大きさで形成することができる。
図9は、第2の実施の形態に係る表示パネル100aの額縁領域20における概略構成を示す部分断面図であり、マウント部40およびその上方に形成されたマスク受け構造物4Aを含む
図8のD−D線での断面を示している。
【0083】
表示パネル100aは、額縁領域20において、多層配線層2の構成要素であるゲート絶縁層105、チャネル保護層108、下部パッシベーション層115、上部パッシベーション層117、および層間絶縁層118が一様に形成されている点は、第1の実施の形態に係る表示パネル100と共通している。しかし、第1の実施の形態に係る表示パネル100と以下の点で相違する。
【0084】
基板1上には、ゲート電極102、103と共通の材料からなるゲート電極材料層131が形成されている。
ゲート絶縁層105上には、チャネル層106、107と共通の材料からなるチャネル材料層132が形成されている。
チャネル保護層108上には、ドレイン電極109、111、およびソース電極110、112と共通の材料からなるSD電極材料層133が形成されている。
【0085】
下部パッシベーション層115上には、接続電極116と共通の材料からなる接続電極材料層134が形成されている。
ゲート電極材料層131、チャネル材料層132、SD電極材料層133、接続電極材料層134は、基板1を平面視したときに約100[μm]四方の大きさで、同じ位置に重ねて形成されている。これらの各材料と、各材料層の形成位置におけるゲート絶縁層105、チャネル保護層108、下部パッシベーション層115、および上部パッシベーション層117との積層構造は、頂部40aが平坦なマウント部40を構成している。
【0086】
マウント部40は、その周囲よりも多層配線層2中に多くの層が形成されているため、基板1の上面1aからの高さが周囲よりも高くなっている。
上部パッシベーション層117上には、一様に層間絶縁層118が形成されている。
層間絶縁層118は、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料からなり、通常、上部パッシベーション層117の上面の凹凸を平坦化する役割を担う。層間絶縁層118による平坦化は、均一な厚みで塗布された絶縁材料が流動して、上面の高さが等しくなることにより生じるものである。そのため、表示領域10において個々の薄膜トランジスタが形成された程度の狭い範囲であれば、層間絶縁層118によって、平坦化することができる。しかし、マウント部40は、約100[μm]四方という比較的広い範囲で凸形状をなしている。硬化前の絶縁材料の流動性にも限度があるため50[μm]以上移動することがないため、このような広い範囲の凸形状のマウント部40がある場合、層間絶縁層118となる絶縁材料は、上面の高さが等しくなることなく硬化する。そのため、マウント部40の上方では完全に平坦化されず、層間絶縁層118もマウント部40に沿って凸形状をなしている。
【0087】
なお、完全に平坦化されることなく層間絶縁層118を凸形状に硬化させるためのマウント部40の大きさは、層間絶縁層118の材料となる樹脂の粘性によって定まる。よって、マウント部40の大きさは、層間絶縁層118の材料に用いる樹脂の特性に応じて適宜変更可能である。
層間絶縁層118上には、マウント部40の上方の位置に、負極電源線119の支線部分119aと共通の材料からなる電源線材料層135が形成されている。
【0088】
電源線材料層135上には、電源線材料層135と平面視同一形状で正孔注入層121が形成されている。
層間絶縁層118、および正孔注入層121上には、隔壁122が一様に形成されている。
電源線材料層135および正孔注入層121と、正孔注入層121の形成位置における隔壁122との積層構造は、第2の実施の形態に係るマスク受け構造物4Aを構成している。
【0089】
以上のように構成された表示パネル100aは、マスク受け構造物4A自体の厚みが、その周囲と比較して電源線材料層135および正孔注入層121の厚み分だけ厚く形成されている。しかし、マスク受け構造物4Aが形成された位置では、多層配線層2中にマウント部40が形成されている。そのため、マスク受け構造物4Aの頂部4aは、マウント部40が形成されていない位置での隔壁122の上面122aと比較して、基板1の上面1aからの高さが、電源線材料層135の厚み分以上に高くなっている。
【0090】
具体的には、マスク受け構造物4Aの頂部4aが、マウント部40が形成されていない位置での隔壁122の上面122aよりも、基板1の上面1aからの高さが約10[μm]程度高くなっていることが好ましい。
[2.表示パネルの製造方法]
第2の実施の形態に係る表示パネル100aの製造方法は、マスク受け構造物4Aの形成までの工程に特徴を有する。そこで以下ではマスク受け構造物4Aの形成工程までについてのみ説明する。
図10は、表示パネル100aの製造過程のうち、下部パッシベーション層115を形成するまでの工程を模式的に示す図であり、
図11は、その後、マスク受け構造物4Aを形成するまでの工程を模式的に示す図である。
図10、および
図11において左側には、表示領域10の1サブ画素分の断面を図示し、右側には、額縁領域20における断面を図示している。なお、
図10、および
図11において額縁領域20の断面は、約1/3に幅を縮小して図示している。
【0091】
表示パネル100aの製造過程においては、まず、
図10(a)に示すように、基板1を準備する。
次に、
図10(b)に示すように、表示領域10において基板1上にゲート電極102、103をパターニングして形成し、額縁領域20において基板1上にゲート電極材料層131をパターニングして形成する。ゲート電極102、103とゲート電極材料層131とは、同一の工程で形成する。具体的には、金属材料のスパッタリング法により基板1上に一様に成膜し、成膜した金属材料膜をウェットエッチングする際に、ゲート電極102、103、およびゲート電極材料層131の形状にレジスト層を一度にパターニングする手法を用いることができる。
【0092】
続いて、
図10(c)に示すように、表示領域10、および額縁領域20において、ゲート絶縁層105を一様に成膜する。ゲート絶縁層105の成膜方法としては、例えば、CVD法が利用できる。
次に、
図10(d)に示すように、表示領域10において、ゲート電極102の上方の位置でゲート絶縁層105の表面にチャネル層106をパターニングして形成し、ゲート電極103の上方の位置でゲート絶縁層105にチャネル層107をパターニングして形成する。額縁領域20においては、ゲート電極材料層131の上方の位置でゲート絶縁層105上にチャネル材料層132をパターニングして形成する。チャネル層106、107と、チャネル材料層132とは、同一の工程で形成する。具体的には、CVD法によりゲート絶縁層105上に一様に半導体材料膜を成膜し、この半導体材料膜をウェットエッチングする際に、チャネル層106、107、およびチャネル材料層132の形状にレジスト層を一度にパターニングする手法を用いることができる。
【0093】
次に、
図10(e)に示すように、表示領域10、および額縁領域20において、チャネル保護層108を形成する。この工程では、ゲート絶縁層105、チャネル層106、107、およびチャネル材料層132を覆うように絶縁材料膜を一様に成膜する工程と、成膜した絶縁材料膜の一部をフォトリソグラフィー法に基づき除去し、チャネル層106、107の一部が露出するようにコンタクトホールを形成する工程と、チャネル層106、107の一部を露出させた状態で絶縁材料膜を加熱してチャネル保護層108を形成する工程とを順に実施する。
【0094】
その後、
図10(f)に示すように、表示領域10において、チャネル保護層108上の配線をパターニングして形成し、額縁領域20において、チャネル材料層132の上方の位置でチャネル保護層108上にSD電極材料層133をパターニングして形成する。表示領域10におけるチャネル保護層108上の配線とは、ドレイン電極109、111、ソース電極110、112、データ信号線113、および正極電源線114の支線部分114aである。表示領域10におけるチャネル保護層108上の配線と、SD電極材料層133との形成は、金属材料のスパッタリング法によりチャネル保護層108上に一様に成膜し、成膜した金属材料膜をウェットエッチングする際に、レジスト層を一度にパターニングする手法を用いることができる。
【0095】
次に、
図10(g)に示すように、表示領域10、および額縁領域20において、下部パッシベーション層115を形成する。この工程では、チャネル保護層108と、表示領域10におけるチャネル保護層108上の配線と、SD電極材料層133とを覆うように絶縁材料膜を一様に成膜する工程と、成膜した絶縁材料膜の一部をフォトリソグラフィー法に基づき除去し、ソース電極112の一部が露出するようにコンタクトホールを形成する工程と、ソース電極112の一部を露出させた状態で絶縁材料膜を加熱して下部パッシベーション層115を形成する工程とを順に実施する。
【0096】
次に、下部パッシベーション層115にコンタクトホールが形成された状態で、表示領域10、および額縁領域20において、金属材料のスパッタリング法により基板1上に一様に成膜する。成膜した金属材料膜はウェットエッチングを行う際に、表示領域10における接続電極116の形状と、額縁領域20における接続電極材料層134の形状とを、一度にパターニングする。この結果、
図11(a)に示すように、表示領域10には下部パッシベーション層115上に、コンタクトホールを介してソース電極112と電気的に接続した接続電極116が形成され、額縁領域20には下部パッシベーション層115上に接続電極材料層134が形成される。
【0097】
次に、表示領域10、および額縁領域20において、
図11(b)に示すように、上部パッシベーション層117を形成し、続けて、
図11(c)に示すように、上部パッシベーション層117上に、層間絶縁層118を形成する。
上部パッシベーション層117を形成する工程では、下部パッシベーション層115、接続電極116、および接続電極材料層134を覆うように絶縁材料膜を一様に成膜する工程と、成膜した絶縁材料膜の一部をフォトリソグラフィー法に基づき除去し、接続電極116の一部が露出するようにコンタクトホールを形成する工程とを順に実施する。
【0098】
層間絶縁層118を形成する工程では、上部パッシベーション層117上にポリイミド系樹脂を均一な厚みで塗布する工程と、上部パッシベーション層117に形成されたコンタクトホールの位置でポリイミド系樹脂を除去することで、コンタクトホール118aを形成する工程と、ポリイミド系樹脂層を硬化させることで層間絶縁層118を形成する工程とを順に実施する。
【0099】
ここまでの工程で、額縁領域20には、ゲート電極材料層131、ゲート絶縁層105、チャネル材料層132、チャネル保護層108、SD電極材料層133、下部パッシベーション層115、接続電極材料層134、および上部パッシベーション層117が積層されたマウント部40が形成される。
この状態では、上部パッシベーション層117の上面が、表示領域10における薄膜トランジスタの上方で凹凸のある形状をなす。しかし、
図11(c)で示す表示領域10の範囲は、1サブ画素分の薄膜トランジスタが形成された範囲であり、幅が30[μm]程度と狭い。そのため、表示領域10では、上部パッシベーション層117の上面にみられる凹凸形状が平坦化され、層間絶縁層118の上面の高さが等しくなっている。
【0100】
一方、額縁領域20におけるマウント部40の上方で、上部パッシベーション層117の上面は平坦であるものの、マウント部40の上方とその隣接する位置とでは、上部パッシベーション層117の上面の高さが相違している。また、マウント部40の幅は、100[μm]程度であり、表示領域10で薄膜トランジスタが形成された範囲に比較して広い。そのため、額縁領域20では、マウント部40の上方とその隣接する位置とにおける上部パッシベーション層117の上面の高さの差が完全には平坦化されない。この結果、層間絶縁層118の上面でも、マウント部40の上方とその隣接する位置とで、高さが相違している。
【0101】
次に、
図11(d)に示すように、表示領域10において、層間絶縁層118上に負極電源線119の支線部分119aおよび画素電極120をパターニングして形成し、額縁領域20において、マウント部40の上方の位置で層間絶縁層118上に電源線材料層135をパターニングして形成する。表示領域10における支線部分119aおよび画素電極120と、額縁領域20における電源線材料層135との形成は、金属材料のスパッタリング法により層間絶縁層118上に一様に成膜し、成膜した金属材料膜をウェットエッチングする際に、レジスト層を一度にパターニングする手法を用いることができる。
【0102】
次に、表示領域10、および額縁領域20において、正孔注入層121の材料層を一様に成膜し、さらに、額縁領域20では、正孔注入層121を電源線材料層135と平面視同一形状にパターニングする。その後、表示領域10、および額縁領域20において、隔壁122を形成する。
以上の工程を経ることで、
図11(e)に示すように、額縁領域20では、マウント部40の上方の位置で、電源線材料層135、正孔注入層121、および隔壁122が積層されたマスク受け構造物4Aが形成される。
【0103】
[3.効果]
以上の第2の実施の形態に係る表示パネル100aでは、マウント部40が形成された位置とその周辺の位置とで比較した場合、基板1の上面1aから層間絶縁層118の上面までの高さが、マウント部40が形成された位置で高くなっている。そのため、マウント部40の上方で層間絶縁層118上に設けられたマスク受け構造物4Aは、形成位置での層間絶縁層118の上面からの高さを抑えつつ、基板1の上面1aからの高さを、マウント部40が形成された位置の周辺の位置における隔壁122の頂部122aよりも高く形成することが容易である。
【0104】
このように、形成位置における層間絶縁層118の上面からのマスク受け構造物4Aの高さを抑えることができるので、マスク受け構造物4Aを形成するために、ダイコート法等により高粘度の塗料を嵩高く塗布する必要がない。
特に、第2の実施の形態に係る表示パネル100aの製造方法によると、表示領域10において基板1上に多層配線層2および有機EL素子3を順に形成する製造過程で、新たな工程を追加することなく、額縁領域20において多層配線層2中にマウント部40を形成し多層配線層2上にマスク受け構造物4Aを形成することができる。
【0105】
[4.変形例]
第2の実施の形態では、表示領域10において薄膜トランジスタを構成する複数の層の全てを、額縁領域20において平面視で重なる位置に積層することで、マウント部40を構成している。
しかし、マウント部40は、必ずしも薄膜トランジスタを構成する複数の層の全てを積層する必要はない。基板1の上面1aから層間絶縁層118の上面までの高さがマウント部40の上方で周囲よりも高くなるならば、一部の層を省略してマウント部40を形成してもよい。
【0106】
(その他)
表示パネル100の耐久性を向上させる目的で、表示パネル100の表示面側にガラス等の封止板を張り合わせる場合がある。この場合、表示パネル100と封止板との間隙には、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂等の絶縁材料からなるフィルを充填し、額縁領域20の最も外側の基板1が露出した位置にシール材を設けてフィルを封止する。
【0107】
このフィル、およびシール材が、第1の実施の形態に係る表示パネル100のマスク受け構造物4と相違する点は、マスク受け構造物4が10[μm]程度の高さでありその頂部が封止板に接触することがないのに対し、フィル、およびシール材は表示パネル100および封止板の双方に接触していることである。
また、シール材は、フィルの封止を目的としているので、表示領域を囲んで環状に切れ目なく形成される。この点でも、配線が存在する位置を避けるために島状に形成した第1の実施の形態に係る表示パネル100のマスク受け構造物4は、シール材と相違する。さらに、シール材は、基板1上または多層配線層2上に設けられる。基板1上に設けられた場合、シール材は、多層配線層2上に形成される第1の実施の形態に係る表示パネル100のマスク受け構造物4と相違する。
【0108】
第2の実施の形態に係る表示パネル100aのマスク受け構造物4Aについても、第1の実施の形態に係る表示パネル100のマスク受け構造物4と同様の点で、フィル、およびシール材と相違する。